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刑法 伝播可能性の理論 最一小判昭和34年5月7日

概要
特定かつ少数人に事実を摘示した場合、不特定又は多数人に伝播する可能性があるときには名誉毀損罪が成立する。
判例
事案:確証もないのに、Xが庭先の菰に放火したものと思い込み、近所のA、B、C、D等に対し、「Xの放火を見た」、「火が燃えていたのでXを捕えることはできなかった」旨述べ不特定多数の人が視聴できる状態にしたという事案において、名誉棄損罪の成否が問題となった。

判旨:「被告人は不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示したものであり、その摘示が質問に対する答としてなされたものであるかどうかというようなことは、犯罪の成否に影響がないとしているのである。そして、このような事実認定の下においては、被告人は刑法230条1項にいう公然事実を摘示したものということができるのであり、かく解釈したからといってなんら所論憲法各法条の保障する自由を侵害したことにはならないのはもちろん(昭和31年(あ)第3359号、同33年4月10日当小法廷判決・集12巻5号830頁以下参照)、また、所論判例と相反する判断をしたことにもならない。
 …本件火災の放火犯人であると確認することはできないから、被告人についてはその陳述する事実につき真実であることの証明がなされなかったものというべく、被告人は本件につき刑責を免れることができない…。」
過去問・解説
(H21 司法 第13問 2)
名誉毀損罪が成立するためには、公然と事実の摘示が行われる必要があるが、特定かつ少数人に事実を摘示した場合には、その者らを通じて不特定又は多数人に伝播する可能性があったとしても、公然と事実の摘示が行われたとはいえないから、名誉毀損罪が成立する余地はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭34.5.7)は、特定かつ少数人に対して事実の摘示をした名誉毀損の事案において、「被告人は不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示したものであり、…被告人は刑法230条1項にいう公然事実を摘示したものということができる…。」として、事実摘示の直接の相手方が特定かつ少数であっても、その者を通して不特定又は多数人に伝播する可能性があるのであれば、公然性を充足することを示している。

(R2 共通 第16問 3)
特定かつ少数の者に特定人の名誉を毀損する事実を摘示した場合、その内容が拡散する可能性があったとしても、「公然と」事実を摘示したことにはならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭34.5.7)は、特定かつ少数人に対して事実の摘示をした名誉毀損の事案において、「被告人は不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示したものであり、…被告人は刑法230条1項にいう公然事実を摘示したものということができる…。」として、事実摘示の直接の相手方が特定かつ少数であっても、その者を通して不特定又は多数人に伝播する可能性があるのであれば、公然性を充足することを示している。

(R4 共通 第20問 ア)
甲(女性、16歳)は、高校の同級生A(女性、16歳)が非行グループと交際し、飲酒喫煙を繰り返していることを知り、それらのAの具体的行動を、特に口止めもせずに同級生2名に告げたところ、同人らを介して、Aの同行動がクラスの全生徒30名の知るところとなった。甲が、Aの上記行動を同級生2名に告げた行為は、特定かつ少数の者にAの名誉を毀損する事実を摘示したにすぎないことから、名誉毀損罪が成立することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭34.5.7)は、特定かつ少数人に対して事実の摘示をした名誉毀損の事案において、「被告人は不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示したものであり、…被告人は刑法230条1項にいう公然事実を摘示したものということができる…。」として、事実摘示の直接の相手方が特定かつ少数であっても、その者を通して不特定又は多数人に伝播する可能性があるのであれば、公然性を充足することを示している。
甲は、Aの飲酒喫煙等の事実について、特定かつ少数の者たる同級生2名に告げただけであるが、結局特に口止めをしなかったために同人らを介して、Aの同行動がクラスの全生徒30名に伝播している。
したがって、甲の同級生に口止めせずに告げた行為は、不特定又は多数人に伝播する可能性ある特定かつ少数の者に対する摘示にあたり、公然性を充足する。
よって、甲に名誉毀損罪が成立する余地がある。
総合メモ
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