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刑法 窃盗罪の成否(現金自動支払機) 東京高判平成6年9月12日
概要
預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属する。
判例
事案:送金銀行の手違いで自己の普通預金口座に過剰入金された金員を自己のキャッシュカードを用いて現金自動支払機から引き出したという事案において、窃盗罪の成否が問題となった。
判旨:「もともと、預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属すると解するのが相当である。もっとも、横領罪との関係においては、預金口座の名義人に正当な払戻し権限がある場合に、預金債権に対する管理、占有ひいては銀行が事実上占有する金銭に対する預金額の限度での法律上の占有という観念を容れる余地がある。しかし、本件は、送金した銀行側の手違いにより、誤って被告人の預金口座に入金があったに過ぎず、被告人に右預金について正当な払戻し権限のない場合であるから(このことは、受入れ銀行の側に何らの過誤がない場合も同様である。)、自動支払機内の現金について、所論のいうように、被告人が管理者であるとか、被告人がこれを所持(支配)していたということのできないことはもとより、被告人が法律上の占有を取得することもないと解される。したがって、本件については、横領罪の成立する余地はなく、詐欺罪が問題とならないことも明らかであり、銀行の現金に対する占有を侵害したものとして、窃盗罪が成立するというべきである。そうすると、被告人がキャッシュカードで引き出した現金について、A銀行a支店長等の管理に属すると認めた上、窃盗罪の成立を認めた原判断は正当であり…。」
判旨:「もともと、預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属すると解するのが相当である。もっとも、横領罪との関係においては、預金口座の名義人に正当な払戻し権限がある場合に、預金債権に対する管理、占有ひいては銀行が事実上占有する金銭に対する預金額の限度での法律上の占有という観念を容れる余地がある。しかし、本件は、送金した銀行側の手違いにより、誤って被告人の預金口座に入金があったに過ぎず、被告人に右預金について正当な払戻し権限のない場合であるから(このことは、受入れ銀行の側に何らの過誤がない場合も同様である。)、自動支払機内の現金について、所論のいうように、被告人が管理者であるとか、被告人がこれを所持(支配)していたということのできないことはもとより、被告人が法律上の占有を取得することもないと解される。したがって、本件については、横領罪の成立する余地はなく、詐欺罪が問題とならないことも明らかであり、銀行の現金に対する占有を侵害したものとして、窃盗罪が成立するというべきである。そうすると、被告人がキャッシュカードで引き出した現金について、A銀行a支店長等の管理に属すると認めた上、窃盗罪の成立を認めた原判断は正当であり…。」
過去問・解説
(H26 共通 第2問 2)
送金銀行の手違いで、自己名義の預金口座に誤って入金されたことを知った者が、これを自分のものにしようと考え、同口座のキャッシュカードを用いて現金自動預払機から全額を引き出した行為には、窃盗罪は成立しない。
送金銀行の手違いで、自己名義の預金口座に誤って入金されたことを知った者が、これを自分のものにしようと考え、同口座のキャッシュカードを用いて現金自動預払機から全額を引き出した行為には、窃盗罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
裁判例(東京高判平6.9.12)は、本肢と同種の事案において、「預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属する…。」として、窃盗罪が成立することを示している。
裁判例(東京高判平6.9.12)は、本肢と同種の事案において、「預金口座の名義人と銀行との関係は、前者に正当な払戻し権限がある場合であっても、債権債務関係が成立しているだけであって、銀行の現金自動支払機内の現金について預金口座の名義人が事実上これを管理するとか、所持するとか、占有するとかいう立場にはなく、右現金は、銀行(現実には、当該銀行の支店長)の管理ないしは占有に属する…。」として、窃盗罪が成立することを示している。