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刑法 詐欺罪の成否 大判昭和12年7月5日

概要
建物保存登記抹消請求事件の民事訴訟において、原告の勝訴を予断しがたいにも関わらず、欺罔手段によって被告に右請求に応じさせたときは、詐欺罪が成立する。
判例
事案:被害者を欺いて、被害者の不動産の建物保存登記を抹消させたという事案において、詐欺罪の成否が問題となった。

判旨:「建物ニ付所有権保存登記ヲ為シ居ルコトハ夫レ自体財産上ノ利益ヲ有スルモノナルコト勿論ナリ而シテ建物保存登記抹消請求事件ノ民事訴訟ニ於テ原告ト被告トカ建物所有権ノ帰属ヲ争ヒ輙ク原告ノ勝訴ヲ予断シ難キ状勢ニ在ル場合ハ原告ノ請求権ハ訴訟ノ終了スル迄ハ未確定ノ状態ニ存スルモノナル
 …保存登記ヲ為シタル場合ニ於テハ未確定ナル利益ヲ有スルニ過キサル原告ヲシテ既ニ早ク確定的ニ之カ利益ヲ取得セシメ民事訴訟ノ被告トシテハ訴訟ノ結果ニヨルニアラサレハ喪失スルコトナカルヘキ利益ヲ今ニシテ既ニ取リ去ラレタルニ外ナラサルヲ以テ前示建物所有権カ右原被両造ノ何レニ属スルカハ之ヲ決定スル迄モナク被告人ハ人ヲ欺罔シテ他人ヲシテ財産上不法ノ利益ヲ得セシメタルモノト云フヘク原審カ之ヲ以テ詐欺罪ニ問擬シタルハ固ヨリ正当」
過去問・解説
(H19 司法 第5問 ア)
甲は、乙がAを欺いて、乙の不動産に設定していたAの抵当権の設定登記を抹消させたことを知りながら、乙の不動産を譲り受けた。この場合、甲には盗品等有償譲受け罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭12.7.5)は、本肢と同種の事案において、「保存登記ヲ為シタル場合ニ於テハ未確定ナル利益ヲ有スルニ過キサル原告ヲシテ既ニ早ク確定的ニ之カ利益ヲ取得セシメ民事訴訟ノ被告トシテハ訴訟ノ結果ニヨルニアラサレハ喪失スルコトナカルヘキ利益ヲ今ニシテ既ニ取リ去ラレタルニ外ナラサルヲ以テ前示建物所有権カ右原被両造ノ何レニ属スルカハ之ヲ決定スル迄モナク被告人ハ人ヲ欺罔シテ他人ヲシテ財産上不法ノ利益ヲ得セシメタルモノト云フヘク原審カ之ヲ以テ詐欺罪ニ問擬シタルハ固ヨリ正当」として、欺罔を用いて建物保存登記を抹消させた場合、2項詐欺罪が成立することを示している。
したがって、乙には2項詐欺罪が成立する。
そして、2項詐欺罪によって取得した財産上の利益は、盗品等譲受け罪における「盗品等」には含まれない。
よって、甲には盗品等有償譲受け罪が成立しない。
総合メモ
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