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短答判例

横領罪と背任罪 大判明治44年10月13日

概要
質権者が質物として受け取り置いた物件を質権者の委託を受け保管中であったが、質物の所有者の要請を受け入れこれを質物の所有者に交付した行為は質権に侵害を加えるものとして247条の犯罪を構成する。
判例
事案:質権者が質物として受け取り置いた物件を質権者の委託を受け保管中であったが、質物の所有者の要請を受け入れこれを質物の所有者に交付したという事案において、横領罪と背任罪のいずれが成立するかが問題となった。

要旨:質権者カ質物トシテ受取リ置キタル物件ヲ質権者ノ委託ヲ受ケ保管中質物所有者ノ請ヲ容レ擅ニ之ヲ交付シタル所為ハ質権ニ侵害ヲ加ヘタルモノナルヲ以テ刑法第二百四十七条ノ犯罪ヲ構成スルモノトス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説
(H18 司法 第5問 イ)
甲は、乙から、乙がAに金員を貸し付けて質物として交付を受けたA所有の高級腕時計の鑑定を頼まれ、乙のためにその時計を保管していたが、Aから返還を求められたことに応じ、乙に無断で、その時計をAに交付した。甲に背任罪が成立する。

(正答)〇

(解説)
判例(大判明44.10.13)は、本肢と同種の事案において、質権者が質物を質物所有者に交付した場合、質権者の所有権ではなく質権を侵害する行為であるから、背任罪が成立するとしている。
甲は、質権者乙に無断でその保管の任務に背き、所有者Aへ時計を返還することで、質権を侵害を加えたといえるから、甲に背任罪が成立する。

(H22 司法 第11問 ア)
甲は、質権者乙の委託を受けて質物である高級腕時計を保管していたが、乙に無断で、これを、質権の被担保債権の債務者で同腕時計の所有者でもある丙に返した。甲に背任罪が成立する。

(正答)〇

(解説)
判例(大判明44.10.13)は、本肢と同種の事案において、質権者が質物を質物所有者に交付した場合、質権者の所有権ではなく質権を侵害する行為であるから、背任罪が成立するとしている。
甲は、質権者乙に無断でその保管の任務に背き、所有者丙へ時計を返還することで、質権を侵害を加えたといえるから、甲に背任罪が成立する。

(R4 予備 第4問 イ)
甲は、乙から頼まれ、乙が丙に対する貸金債権の質物として提供を受けていた丙所有の絵画を甲の自宅倉庫で保管していたが、乙に嫌がらせをする目的で、同絵画を乙に無断で丙に返還した。この場合、甲に背任罪が成立する。

(正答)〇

(解説)
判例(大判明44.10.13)は、本肢と同種の事案において、質権者が質物を質物所有者に交付した場合、質権者の所有権ではなく質権を侵害する行為であるから、背任罪が成立するとしている。
甲は、質権者乙に無断でその保管の任務に背き、所有者丙へ絵画を返還することで、質権を侵害を加えたといえるから、甲に背任罪が成立する。

(R8 司法 第4問 改題)
甲が自己の土地に対する抵当権設定契約をXとの間で締結し、抵当権設定登記に必要な書類をXに交付してXから融資を受けた後、抵当権設定登記完了前に、Yから融資を得るためにYとの間でその土地に対する抵当権設定契約を締結してYのための登記を完了した、いわゆる二重抵当の事案の場合について、判例と同様、甲が「他人のためにその事務を処理する者」に当たると考える見解は、背任罪の本質について、 本人との信任関係に違背して財産を侵害する点にあると考えている。

(正答)〇

(解説)
判例(大判明44.10.13)は、質権者から質物の保管を委託された者が、質権者に無断で質物をその所有者に交付した場合、質権者の質権に侵害を加える行為であるとして、背任罪の成立を認めている。このように、判例は、法律上の処分権限の濫用に限らず、本人との信任関係に違背する事実行為についても背任罪の成立を認めていることから、背任罪の本質を、本人との信任関係に違背して財産を侵害する点にあると考えているといえる(背信説)。
総合メモ