①故小倉清三郎研究報告顕彰会復刻「相対会研究報告」なる書名で、その冒頭に執筆者同人名義の性研究に関する題名「性的経験概論」という論文が掲載されている部分のある文書であっても、その余の大部分には男女性交の状態を露骨詳細に描写し、人をして羞恥嫌悪の念を生じさせる記述のある短篇数篇が資料の部として掲載されているときには、全体としてわいせつ物頒布罪の猥褻文書に当たる。
②わいせつ物所持罪の「有償で頒布」とは、不定または多数の人に対する有償譲渡をいう。
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刑法 文書のわいせつ性、「有償で頒布」の意義 最一小判昭和34年3月5日
概要
判例
事案:性研究に関する題名を付したわいせつ文書を販売したという事案において、①性科学書ではなくわいせつ物頒布罪の猥褻文書に当たるか、②わいせつ物所持罪の「有償で頒布」の意義などが問題となった。
判旨:「所論は、結局本件文書は、性科学書であって、…原判決が本件文書各号を検討していずれも全体として刑法175条の猥褻文書に該ると判断したのは正当であって、かかる文書の販売等が憲法21条の表現の自由に属しないことは、当裁判所大法廷の判例(判例集11巻3号997頁以下参照)に照し明白である。
…所論は、判例違反をいうが、所論引用の大審院判例にいわゆる『不定多衆』とは、原判決説示のこどく不定または多衆の意義に解するを相当とする。けだし、不定人に販売又は頒布するときは、結局多数人に行き渡る虞があるからである。されば、原判決は、所論大審院の判例と相反する判断をしていない。」
判旨:「所論は、結局本件文書は、性科学書であって、…原判決が本件文書各号を検討していずれも全体として刑法175条の猥褻文書に該ると判断したのは正当であって、かかる文書の販売等が憲法21条の表現の自由に属しないことは、当裁判所大法廷の判例(判例集11巻3号997頁以下参照)に照し明白である。
…所論は、判例違反をいうが、所論引用の大審院判例にいわゆる『不定多衆』とは、原判決説示のこどく不定または多衆の意義に解するを相当とする。けだし、不定人に販売又は頒布するときは、結局多数人に行き渡る虞があるからである。されば、原判決は、所論大審院の判例と相反する判断をしていない。」
過去問・解説
(H23 司法 第15問 5)
甲は、わいせつな映像が録画されたDVDを販売する目的で雑誌に広告を出し、申し込んできた複数の客から代金の振込みを受け、宅配便で配送する手続を採ったが、配送するトラックが途中で事故を起こしたため、同DVDは、客に届かなかった。この場合、甲にわいせつ物販売罪は成立しない。
甲は、わいせつな映像が録画されたDVDを販売する目的で雑誌に広告を出し、申し込んできた複数の客から代金の振込みを受け、宅配便で配送する手続を採ったが、配送するトラックが途中で事故を起こしたため、同DVDは、客に届かなかった。この場合、甲にわいせつ物販売罪は成立しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭34.3.5)は、「いわゆる『不定多衆』とは、原判決説示のこどく不定または多衆の意義に解するを相当とする。けだし、不定人に販売又は頒布するときは、結局多数人に行き渡る虞があるからである…。」として、わいせつ物を交付する約束では足りず、現実に交付されたことを必要とすることを示している。
配送するトラックが途中で事故を起こしたため、同DVDは、客に届かなかったから現実に頒布されていない。
したがって、甲にわいせつ物販売罪は成立しない。
判例(最判昭34.3.5)は、「いわゆる『不定多衆』とは、原判決説示のこどく不定または多衆の意義に解するを相当とする。けだし、不定人に販売又は頒布するときは、結局多数人に行き渡る虞があるからである…。」として、わいせつ物を交付する約束では足りず、現実に交付されたことを必要とすることを示している。
配送するトラックが途中で事故を起こしたため、同DVDは、客に届かなかったから現実に頒布されていない。
したがって、甲にわいせつ物販売罪は成立しない。