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刑法 偽造の本質 最一小決平成11年12月20日

概要
虚偽の氏名等を記載した履歴書及び雇用契約書等を作成行使した行為は、たとえ自己の顔写真がはり付けられ、あるいは各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、有印私文書偽造、同行使罪に当たる。
判例
事案:虚偽の氏名等を記載した履歴書等を作成行使した事案において、有印私文書偽造、同行使罪に当たるかが問題となった。

判旨:「私文書偽造の本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあると解されるところ(最高裁昭和58年(あ)第257号同59年2月17日第二小法廷判決・刑集38巻3号336頁、最高裁平成5年(あ)第135号同年10月5日第一小法廷決定・刑集47巻8号7頁)、原判決の認定によれば、被告人は、Aの偽名を用いて就職しようと考え、虚偽の氏名、生年月日、住所、経歴等を記載し、被告人の顔写真をはり付けた押印のあるA名義の履歴書及び虚偽の氏名等を記載した押印のあるA名義の雇用契約書等を作成して提出行使したものであって、これらの文書の性質、機能等に照らすと、たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第9問 2)
甲は、氏名を隠してA会社に就職しようと考え、同社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空の氏名として「乙」などと記載し、その氏名の横に「乙」と刻した印鑑を押した上、甲自身の顔写真をはり付けた履歴書を作成した。甲がA会社に就職して勤務する意思を有していた場合でも、履歴書の作成名義人と作成者との人格の同一性にそごがあるので、甲には有印私文書偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平11.12.20)は、本肢と同種の事案において、「たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」としている。
甲は、A社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空の氏名として「乙」などと記載し、その氏名の横に「乙」と刻した印鑑を押した上、甲自身の顔写真をはり付けた履歴書を作成しているから、作成名義人と作成者との人格の同一性を偽っているといえる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。

(H30 共通 第4問 3)
甲は、偽名を用いて会社に就職しようと考え、同会社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空人Aの氏名を記載し、その氏名の横にAと刻した印鑑を押印するとともに、自己の顔写真を貼り付けて履歴書を作成した。同履歴書の作成名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせるものとは認められないから、甲には有印私文書偽造罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決平11.12.20)は、本肢と同種の事案において、「たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」としている。
甲は、会社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空人Aの氏名を記載し、その氏名の横にAと刻した印鑑を押印するとともに、自己の顔写真を貼り付けて履歴書を作成しているから、作成名義人と作成者との人格の同一性を偽っているといえる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。

(R4 共通 第13問 エ)
指名手配され逃走中の甲は、本名を隠してA会社に正社員として就職しようと考え、同社に提出する目的で、履歴書用紙の氏名欄にBという架空の氏名を記載し、その横にBの姓を刻した印鑑を押印した上、真実と異なる生年月日、住所及び経歴を記載して履歴書を作成したが、その顔写真欄には甲自身の顔写真を貼付していた。この場合、甲には、有印私文書偽造罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平11.12.20)は、本肢と同種の事案において、「たとえ被告人の顔写真がはり付けられ、あるいは被告人が右各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、これらの文書に表示された名義人は、被告人とは別人格の者であることが明らかであるから、名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせたものというべきである。したがって、被告人の各行為について有印私文書偽造、同行使罪が成立するとした原判断は、正当である。」としている。
甲は、A会社に提出する目的で、履歴書用紙に、架空人Bの氏名を記載し、その氏名の横にBと刻した印鑑を押印するとともに、自己の顔写真を貼り付けて履歴書を作成しているから、作成名義人と作成者との人格の同一性を偽っているといえる。
したがって、甲に有印私文書偽造罪が成立する。
総合メモ
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