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刑法 事後強盗罪と公務執行妨害罪 大判明治43年2月15日
概要
窃盗をした直後の者が、公務員に対して逮捕を免れる目的でその反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた場合、事後強盗罪だけでなく、公務執行妨害罪も成立し、両者は観念的競合となる。
判例
事案:窃盗をしたAが、それを目撃した警察官に追跡されたため、警察官に対し、逮捕を免れる目的で、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた事案において、事後強盗罪と公務執行妨害罪の成立関係が問題となった。
判旨:「刑法第九十五條即チ公務員職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ云云…本件ヲシテ假リニ犯罪ヲ構成スルモノトセンカ然ラハ創傷ヲ受ケタリト云フ者ハ即チ刑事巡査ニシテ直接ノ關係ヲ有スヘキ被害者ニアラサル事ハ爭フ可カラサル事實ニシテ公務員ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ臨時暴行ナシタルモノナレハ本條ヲ適用ス可キハ當然ノ理由ナルニ拘ハラス原院ハ迂遠ニモ刑法第二百四十條前段即チ單純ナル強盜傷人罪ニ問擬シ之ヲ適用シタルカ如キ所謂法則ヲ不當ニ適用シタルモノニシテ刑事訴訟法第二百六十八條同第二百六十九條第九竝ニ第十ニ該當スル失當アリテ何レモ瑕瑾ヲ免カレサルモノト信ス若シ夫レ被告本件ニシテ假リニ強盜ヲ以テ之ヲ論ス可キモノトセンカ然ラハ刑法第二百三十八條即チ竊盜財物ヲ得テ其取還ヲ拒キ逮捕ヲ免カレ若クハ罪迹ヲ湮滅スル爲メ暴行脅迫ヲ爲シタルモノハ強盜ヲ以テ論ス即チ本條ヲ適用セサル可カラス然リ而シテ本條ハ一般竊盜被害者ニ對スル行爲ニシテ會テハ貴院ノ判決録ヲ以テ前例ヲ示サレタル如ク所謂居直強盜トシテ論セラレタルヲ見ルモ被害者ニアラサル逮捕官吏ニ其職務ヲ執行スルニ當リ抗拒行爲ヲ敢テシタルモノニシテ是亦直ニ本條ヲ適用ス可キモノニアラス」
判旨:「刑法第九十五條即チ公務員職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ云云…本件ヲシテ假リニ犯罪ヲ構成スルモノトセンカ然ラハ創傷ヲ受ケタリト云フ者ハ即チ刑事巡査ニシテ直接ノ關係ヲ有スヘキ被害者ニアラサル事ハ爭フ可カラサル事實ニシテ公務員ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ臨時暴行ナシタルモノナレハ本條ヲ適用ス可キハ當然ノ理由ナルニ拘ハラス原院ハ迂遠ニモ刑法第二百四十條前段即チ單純ナル強盜傷人罪ニ問擬シ之ヲ適用シタルカ如キ所謂法則ヲ不當ニ適用シタルモノニシテ刑事訴訟法第二百六十八條同第二百六十九條第九竝ニ第十ニ該當スル失當アリテ何レモ瑕瑾ヲ免カレサルモノト信ス若シ夫レ被告本件ニシテ假リニ強盜ヲ以テ之ヲ論ス可キモノトセンカ然ラハ刑法第二百三十八條即チ竊盜財物ヲ得テ其取還ヲ拒キ逮捕ヲ免カレ若クハ罪迹ヲ湮滅スル爲メ暴行脅迫ヲ爲シタルモノハ強盜ヲ以テ論ス即チ本條ヲ適用セサル可カラス然リ而シテ本條ハ一般竊盜被害者ニ對スル行爲ニシテ會テハ貴院ノ判決録ヲ以テ前例ヲ示サレタル如ク所謂居直強盜トシテ論セラレタルヲ見ルモ被害者ニアラサル逮捕官吏ニ其職務ヲ執行スルニ當リ抗拒行爲ヲ敢テシタルモノニシテ是亦直ニ本條ヲ適用ス可キモノニアラス」
過去問・解説
(R7 司法 第9問 イ)
甲は、通行人のバッグをひったくり窃取したが、これを目撃した制服警察官Aから追跡されたため、逮捕を免れる目的で、Aに対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。この場合、甲に事後強盗罪が成立するから、公務執行妨害罪は成立しない。
甲は、通行人のバッグをひったくり窃取したが、これを目撃した制服警察官Aから追跡されたため、逮捕を免れる目的で、Aに対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。この場合、甲に事後強盗罪が成立するから、公務執行妨害罪は成立しない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明43.2.15)は、本肢と同種の事案において、「刑法第95條即チ公務員職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ云云…本件ヲシテ假リニ犯罪ヲ構成スルモノトセンカ然ラハ創傷ヲ受ケタリト云フ者ハ即チ刑事巡査ニシテ直接ノ關係ヲ有スヘキ被害者ニアラサル事ハ爭フ可カラサル事實ニシテ公務員ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ臨時暴行ナシタルモノナレハ本條ヲ適用ス可キハ當然ノ理由ナル」として、窃盗犯人が逮捕を免れる目的で公務員に暴行を加えた場合、事後強盗罪に加えて公務執行妨害罪も成立することを示している。
したがって、甲には事後強盗罪及び公務執行妨害罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
判例(大判明43.2.15)は、本肢と同種の事案において、「刑法第95條即チ公務員職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ云云…本件ヲシテ假リニ犯罪ヲ構成スルモノトセンカ然ラハ創傷ヲ受ケタリト云フ者ハ即チ刑事巡査ニシテ直接ノ關係ヲ有スヘキ被害者ニアラサル事ハ爭フ可カラサル事實ニシテ公務員ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シテ臨時暴行ナシタルモノナレハ本條ヲ適用ス可キハ當然ノ理由ナル」として、窃盗犯人が逮捕を免れる目的で公務員に暴行を加えた場合、事後強盗罪に加えて公務執行妨害罪も成立することを示している。
したがって、甲には事後強盗罪及び公務執行妨害罪が成立し、両罪は観念的競合となる。