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刑法 インスリンの不投与による間接正犯の成否(R6) 最二小決令和2年8月24日
概要
不保護の故意のある父親と共謀の上、母親を介して被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させた被告人には殺人罪が成立する。
判例
事案:生命維持のためにインスリンの投与が必要な1型糖尿病にり患した幼年の被害者の治療をその両親から依頼された者が、両親に指示してインスリンの投与をさせず被害者が死亡したという事案において、殺人罪の成否が問題となった。
判旨:「母親は、被害者が難治性疾患の1型糖尿病にり患したことに強い精神的衝撃を受けていたところ、被告人による上記のような働きかけを受け、被害者を何とか完治させたいとの必死な思いとあいまって、被害者の生命を救い、1型糖尿病を完治させるためには、インスリンの不投与等の被告人の指導に従う以外にないと一途に考えるなどして、本件当時、被害者へのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥っていたものであり、被告人もこれを認識していたと認められる。また、被告人は、被告人の治療法に半信半疑の状態ながらこれに従っていた父親との間で、母親を介し、被害者へのインスリンの不投与について相互に意思を通じていたものと認められる。
以上のような本件の事実関係に照らすと、被告人は、未必的な殺意をもって、母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ、被告人には殺人罪が成立する。」
判旨:「母親は、被害者が難治性疾患の1型糖尿病にり患したことに強い精神的衝撃を受けていたところ、被告人による上記のような働きかけを受け、被害者を何とか完治させたいとの必死な思いとあいまって、被害者の生命を救い、1型糖尿病を完治させるためには、インスリンの不投与等の被告人の指導に従う以外にないと一途に考えるなどして、本件当時、被害者へのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥っていたものであり、被告人もこれを認識していたと認められる。また、被告人は、被告人の治療法に半信半疑の状態ながらこれに従っていた父親との間で、母親を介し、被害者へのインスリンの不投与について相互に意思を通じていたものと認められる。
以上のような本件の事実関係に照らすと、被告人は、未必的な殺意をもって、母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ、被告人には殺人罪が成立する。」
過去問・解説
(R6 司法 第2問 イ)
非科学的な力による難病治療を標ぼうしていた甲は、小児Aがインスリンを定期的に摂取しなければ死亡する現実的な危険性がある重度の糖尿病患者であることを認識しながら、甲を信頼するAの母親Bに対し、Aへのインスリンの不投与を執ようかつ強度に働き掛けた。Bは、Aを完治させるためには甲の指導に従う以外に方法はないといちずに考え、Aへのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥り、甲から言われるがままAへのインスリン投与を中止したため、Aはその後間もなく死亡した。この場合、甲に殺人罪が成立する。
非科学的な力による難病治療を標ぼうしていた甲は、小児Aがインスリンを定期的に摂取しなければ死亡する現実的な危険性がある重度の糖尿病患者であることを認識しながら、甲を信頼するAの母親Bに対し、Aへのインスリンの不投与を執ようかつ強度に働き掛けた。Bは、Aを完治させるためには甲の指導に従う以外に方法はないといちずに考え、Aへのインスリンの投与という期待された作為に出ることができない精神状態に陥り、甲から言われるがままAへのインスリン投与を中止したため、Aはその後間もなく死亡した。この場合、甲に殺人罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決令2.8.24)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、未必的な殺意をもって、母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ,被告人には殺人罪が成立する。」としている。
甲は、Bに働きかけることで、Bが自分の意思で母親として期待された作為に出れない精神状態に陥らせることで、甲がBを道具として支配しており、Aへのインスリン投与の中止により、Aはその後間もなく死亡している。
したがって、甲に殺人罪の間接正犯が成立する。
判例(最決令2.8.24)は、本肢と同種の事案において、「被告人は、未必的な殺意をもって、母親を道具として利用するとともに、不保護の故意のある父親と共謀の上、被害者の生命維持に必要なインスリンを投与せず、被害者を死亡させたものと認められ,被告人には殺人罪が成立する。」としている。
甲は、Bに働きかけることで、Bが自分の意思で母親として期待された作為に出れない精神状態に陥らせることで、甲がBを道具として支配しており、Aへのインスリン投与の中止により、Aはその後間もなく死亡している。
したがって、甲に殺人罪の間接正犯が成立する。