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併合罪

第45条

条文
第45条(併合罪)
 確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
過去問・解説
(H18 司法 第12問 エ)
甲は、通り掛かった乙と丙のうちの乙と肩が触れたことから口論になり、憤激のあまり、その腹部を足で蹴った。この様子を見た丙が文句を言ったので、甲は丙にも憤激し、その顔面をこぶしで殴って傷害を負わせた。甲には、乙に対する暴行罪と丙に対する傷害罪が成立し、両罪は併合罪である。

(正答)  

(解説)
45条前段は、「確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。」と規定している。本肢の事例では、乙に対する暴行罪と丙に対する傷害罪は、包括一罪にも牽連犯(54条1項後段)でもなく、行為の一個性もないので観念的競合(54条1項前段)でもないから、「確定裁判を経ていない2個以上の罪」として、「併合罪」となる。
総合メモ

第47条

条文
第47条(有期拘禁刑の加重)
 併合罪のうちの2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
過去問・解説
(H19 司法 第8問 1)
殺人と傷害の併合罪を犯した者について、殺人につき有期拘禁刑、傷害につき拘禁刑をそれぞれ選択した場合、処断刑は、5年以上30年以下の拘禁刑となる。

(正答)  

(解説)
199条は、殺人罪の有期拘禁刑について「5年以上の拘禁刑」と規定しており、204条は、傷害罪の有期拘禁刑について「15年以下の拘禁刑」と規定している。殺人罪の有期拘禁刑である「5年以上の拘禁刑」とは、5年以上20年以下の拘禁刑を意味する(12条1項)。そして、47条本文は、有期拘禁刑の併合罪加重について、「併合罪のうちの2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。」と規定している。したがって、「最も重い罪」である殺人罪における刑の長期である拘禁刑20年にその2分の1を加えたものである拘禁刑30年が、処断刑の上限となる。

(H22 司法 第19問 2)
甲は、併合罪関係にあるA罪(法定刑は10年以下の拘禁刑)とB罪(法定刑は3年以下の拘禁刑)を犯して両罪で起訴された。この場合、裁判所は、甲に対し、拘禁刑15年の判決を言い渡すことができる。

(正答)  

(解説)
47条は、有期拘禁刑の併合加重について、本文において「併合罪のうちの2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。」と規定する一方で、但書において「ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。」と規定している。
本肢の事例では、「最も重い罪」であるA罪における法定刑の上限である拘禁刑10年にその2分の1を加えたものは拘禁刑15年となるが、これはA罪及びB罪「それぞれの罪について定めた刑の長期の合計」である拘禁刑13年を超えることとなる。したがって、47条但書の適用により、併合罪加重による拘禁刑の上限は13年となる。よって、裁判所は、甲に対し、拘禁刑15年の判決を言い渡すことができない。

(H24 司法 第5問 ⑤)
前科のない犯人が路上で被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立ち、お金を盗んだ事案の処断刑の上限は、それぞれの罪について有期拘禁刑を選択した場合には、拘禁刑30年となる。

(正答)  

(解説)
本肢の事例では、犯人は路上で被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立ち、お金を盗んでいるから、強盗殺人罪(240条後段)ではなく、殺人罪(199条)と窃盗罪(235条)が成立し、両者は併合罪(45条前段)として処理される。また、犯人には前科がないから、再犯加重(57条)はない。以上を前提として、47条による併合加重が行われる。
199条は、殺人罪の有期拘禁刑について「5年以上の拘禁刑」と規定しており、235条は、窃盗罪の有期拘禁刑について「10年以下の拘禁刑」と規定している。殺人罪の有期拘禁刑である「5年以上の拘禁刑」とは、5年以上20年以下の拘禁刑を意味する(12条1項)。
47条は、有期拘禁刑の併合罪加重について、本文において「併合罪のうちの2個以上の罪について有期拘禁刑に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。」と規定する一方で、但書において「ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。」と規定している。
「最も重い罪」である殺人罪における法定刑の上限である拘禁刑20年にその2分の1を加えたものは拘禁刑30年となり、これは殺人罪及び窃盗罪「それぞれの罪について定めた刑の長期の合計」である拘禁刑30年を超えるものではない。
したがって、殺人罪及び窃盗罪それぞれについて有期拘禁刑を選択した場合には、処断刑の上限は拘禁刑30年となる。
総合メモ

第48条

条文
第48条(罰金の併科等)
① 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第46条第1項の場合は、この限りでない。
② 併合罪のうちの2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
過去問・解説
(H22 司法 第19問 1)
甲は、併合罪関係にあるA罪(法定刑は5年以下の拘禁刑)とB罪(法定刑は20万円以下の罰金)を犯して両罪で起訴された。この場合、裁判所は、甲に対し、拘禁刑2年及び罰金10万円の判決を言い渡すことができる。

(正答)  

(解説)
48条1項本文は、「罰金と他の刑とは、併科する。」と規定している。そして、有期拘禁刑の下限は「1か月」であり(12条1項)、罰金刑の下限は「1万円」である(15条本文)。
したがって、裁判所は、甲に対し、拘禁刑2年及び罰金10万円の判決を言い渡すことができる。
総合メモ

第54条

条文
第54条(一部の行為が2個以上の罪名に触れる場合等の処理)
① 1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
② 第49条第2項の規定は、前項の場合にも、適用する。
過去問・解説
(H18 司法 第12問 オ)
甲は、一緒にいた乙と丙を同時に殺害する目的で、両名に向けて爆弾1個を投げ付けて爆発させ、両名を死亡させた。甲には、乙に対する殺人罪と丙に対する同罪が成立し、両罪は観念的競合である。

(正答)  

(解説)
乙に対する殺人罪と丙に対する殺人罪は、両名に向けて爆弾1個を投げて爆発させるという社会的見解上一個の行為によって実現されたものである。
したがって、両罪は「1個の行為が2個以上の罪名に触れ…るとき」として、観念的競合(54条1項前段)となる。

(H20 司法 第19問 3)
牽連犯について有期拘禁刑に処するとき、その刑は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。

(正答)  

(解説)
54条1項後段は、牽連犯について、「その最も重い刑により処断する。」と規定している。
2個以上の罪のうち「重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする」のは、併合罪加重(45条前段、47条)の場合である。

(H24 予備 第8問 エ)
自動車を盗み、これを売却した場合、窃盗罪と盗品等関与罪もしくは詐欺罪とは、それぞれ牽連犯の関係になる。

(正答)  

(解説)
自転車を盗んだ者が、盗品であることを秘してこれを第三者に売却した場合、詐欺罪(246条1項)が成立し得る。
もっとも、ある犯罪行為が「犯罪の手段若しくは結果である」といえるためには、①犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の関係において実行したこと(主観的牽連性)に加え、②その数罪間にその罪質上通例手段結果の関係が存在すること(客観的牽連性)も必要であるところ、本肢の事例において、窃盗罪と詐欺罪とは、①を満たす一方で②を欠くから、牽連犯(54条1項後段)ではなく、併合罪(45条前段)となる。

(H30 司法 第9問 エ)
1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合、それらの罪についていずれも有期拘禁刑に処するとき、その刑は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。

(正答)  

(解説)
54条1項前段は、観念的競合について、「その最も重い刑により処断する。」と規定している。
2個以上の罪のうち「重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする」のは、併合罪加重(45条前段、47条)の場合である。
総合メモ