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窃盗及び強盗の罪
第236条
条文
第236条(強盗)
① 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期拘禁刑に処する。
② 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
① 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期拘禁刑に処する。
② 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
過去問・解説
(H21 司法 第19問 1)
甲は、乙から、報酬を支払うから丙の腕時計を奪ってきてほしい旨の依頼を受け、丙にけん銃を突き付けて同人の腕時計を奪った後、その報酬として乙から現金を受け取った。この場合、甲には腕時計に関する強盗罪が成立するほか、報酬に関する強盗利得罪が成立する。
甲は、乙から、報酬を支払うから丙の腕時計を奪ってきてほしい旨の依頼を受け、丙にけん銃を突き付けて同人の腕時計を奪った後、その報酬として乙から現金を受け取った。この場合、甲には腕時計に関する強盗罪が成立するほか、報酬に関する強盗利得罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
甲が、丙にけん銃を突き付けて同人の腕時計を奪ったことは、「脅迫を用いて他人の財物を強取した」に当たるから、腕時計に関する強盗取得罪(236条1項)が成立する。
これに対し、甲が、腕時計の強盗の報酬として乙から現金を受け取ったことは、「暴行又は脅迫」「により、財産上不法の利益を得…た」には当たらないから、報酬に関する強盗利得罪(236条2項)は成立しない。
甲が、丙にけん銃を突き付けて同人の腕時計を奪ったことは、「脅迫を用いて他人の財物を強取した」に当たるから、腕時計に関する強盗取得罪(236条1項)が成立する。
これに対し、甲が、腕時計の強盗の報酬として乙から現金を受け取ったことは、「暴行又は脅迫」「により、財産上不法の利益を得…た」には当たらないから、報酬に関する強盗利得罪(236条2項)は成立しない。
(H21 司法 第19問 2)
甲は、飲食店で食事をした後、財布がないことに気付いたため、そのまま逃走しようと企て、店員乙のすきを見て店から出たが、店長丙に見付かって飲食代金を請求されるや、同人の首に登山ナイフを突き付けて同人をひるませた上、その場から逃走して行方をくらませた。この場合、甲には強盗利得罪が成立する。
甲は、飲食店で食事をした後、財布がないことに気付いたため、そのまま逃走しようと企て、店員乙のすきを見て店から出たが、店長丙に見付かって飲食代金を請求されるや、同人の首に登山ナイフを突き付けて同人をひるませた上、その場から逃走して行方をくらませた。この場合、甲には強盗利得罪が成立する。
(正答) 〇
(解説)
甲には、店長丙の首に登山ナイフを突きつけるという「脅迫」により、同人をひるませることでその反抗を抑圧し、飲食代金の支払を事実上免れるという「財産上不法の利益を得…た」として、強盗利得罪(236条2項)が成立する。
甲には、店長丙の首に登山ナイフを突きつけるという「脅迫」により、同人をひるませることでその反抗を抑圧し、飲食代金の支払を事実上免れるという「財産上不法の利益を得…た」として、強盗利得罪(236条2項)が成立する。
(H21 司法 第19問 3)
甲は、乙の運転するタクシーに乗車するや、同人の首に出刃包丁を突き付けて行き先を告げ、同所まで乙の意に反してタクシーを走行させた後、タクシー料金を支払わずに逃走して行方をくらませた。この場合、甲には強盗利得罪が成立する。
甲は、乙の運転するタクシーに乗車するや、同人の首に出刃包丁を突き付けて行き先を告げ、同所まで乙の意に反してタクシーを走行させた後、タクシー料金を支払わずに逃走して行方をくらませた。この場合、甲には強盗利得罪が成立する。
(正答) 〇
(解説)
甲には、乙の首に出刃包丁を突き付けるという「暴行」により、同人の反抗を抑圧し、タクシー料金の支払を事実上免れるという「財産上不法の利益を得…た」として、強盗利得罪(236条2項)が成立する。
甲には、乙の首に出刃包丁を突き付けるという「暴行」により、同人の反抗を抑圧し、タクシー料金の支払を事実上免れるという「財産上不法の利益を得…た」として、強盗利得罪(236条2項)が成立する。
(H21 司法 第19問 4)
甲は、乙に金銭を貸し付けていたが、返済期限になっても同人が金銭を返済しないため、その居場所を知る丙の首に出刃包丁を突き付けて乙の所在に関する情報を聞き出し、その情報に基づいて乙の居場所を見付け、同人から貸付金の返済を受けた。この場合、甲には強盗利得罪が成立する。
甲は、乙に金銭を貸し付けていたが、返済期限になっても同人が金銭を返済しないため、その居場所を知る丙の首に出刃包丁を突き付けて乙の所在に関する情報を聞き出し、その情報に基づいて乙の居場所を見付け、同人から貸付金の返済を受けた。この場合、甲には強盗利得罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
甲は、乙に対して「暴行又は脅迫」を行い、乙から貸付金の返済を受けているわけではないから、貸付金を客体とする強盗取得罪(236条1項)が成立するとはいえない。また、甲は、丙に対する「脅迫」を手段として丙から乙の所在に関する情報を聞き出しているが、この情報が「財産上…の利益」に当たるとはいえないから、情報を客体とする強盗利得罪(236条2項)が成立するともいえない。
甲は、乙に対して「暴行又は脅迫」を行い、乙から貸付金の返済を受けているわけではないから、貸付金を客体とする強盗取得罪(236条1項)が成立するとはいえない。また、甲は、丙に対する「脅迫」を手段として丙から乙の所在に関する情報を聞き出しているが、この情報が「財産上…の利益」に当たるとはいえないから、情報を客体とする強盗利得罪(236条2項)が成立するともいえない。
総合メモ
第238条
条文
第238条(事後強盗)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
過去問・解説
(H27 共通 第16問 2)
事後強盗罪は、強盗罪と同様、財物と財産上の利益について成立する。
事後強盗罪は、強盗罪と同様、財物と財産上の利益について成立する。
(正答) ✕
(解説)
窃盗罪は、「財物」のみを客体とする犯罪であるから、財産上の利益を客体とする場合は成立しない。そうである以上、財産上の利益を客体とする場合、「窃盗が」という要件を満たさないから、事後強盗罪(238条)も成立しない。
窃盗罪は、「財物」のみを客体とする犯罪であるから、財産上の利益を客体とする場合は成立しない。そうである以上、財産上の利益を客体とする場合、「窃盗が」という要件を満たさないから、事後強盗罪(238条)も成立しない。
(R1 司法 第2問 ア)
甲及び乙は、宝石商の丙から宝石を奪うことを計画した。その計画は、甲が、宝石取引のあっせんにかこつけてホテルの一室に丙を呼び出し、別室の顧客に見せる必要があるとうそを言って丙から宝石を受領し、甲の退室後に、乙が同室に入って丙を殺害するという内容であった。
甲は、計画に従って、ホテルの一室で丙から宝石を受領して退室し、それと入れ替わりに同室に立ち入った乙が丙の腹部を包丁で刺し、丙に重傷を負わせたが、殺害には至らなかった。
この事例で、甲が丙から宝石を受領した行為について詐欺罪が成立すると考えた場合、甲及び乙に、事後強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。
甲及び乙は、宝石商の丙から宝石を奪うことを計画した。その計画は、甲が、宝石取引のあっせんにかこつけてホテルの一室に丙を呼び出し、別室の顧客に見せる必要があるとうそを言って丙から宝石を受領し、甲の退室後に、乙が同室に入って丙を殺害するという内容であった。
甲は、計画に従って、ホテルの一室で丙から宝石を受領して退室し、それと入れ替わりに同室に立ち入った乙が丙の腹部を包丁で刺し、丙に重傷を負わせたが、殺害には至らなかった。
この事例で、甲が丙から宝石を受領した行為について詐欺罪が成立すると考えた場合、甲及び乙に、事後強盗による強盗殺人未遂罪が成立することはない。
(正答) 〇
(解説)
甲が丙から宝石を受領した行為について詐欺罪が成立すると考えた場合、甲及び乙は、詐欺罪の共犯にとどまり、「窃盗が」という要件を満たさないから、事後強盗(238条)による強盗殺人未遂罪(240条後段、243条)は成立しない。この場合、甲及び乙には、詐取した宝石の返還請求を免れるという「財産上…利益」を客体として、究極的な反抗抑圧手段である殺害という「暴行」を行ったとして、強盗利得罪(236条2項)による強盗殺人未遂罪が成立する。
甲が丙から宝石を受領した行為について詐欺罪が成立すると考えた場合、甲及び乙は、詐欺罪の共犯にとどまり、「窃盗が」という要件を満たさないから、事後強盗(238条)による強盗殺人未遂罪(240条後段、243条)は成立しない。この場合、甲及び乙には、詐取した宝石の返還請求を免れるという「財産上…利益」を客体として、究極的な反抗抑圧手段である殺害という「暴行」を行ったとして、強盗利得罪(236条2項)による強盗殺人未遂罪が成立する。
(R3 共通 第18問 4)
甲は、窃盗の目的で乙宅に侵入し、金品を物色中、乙に発見されたため、この機会に乙に暴行を加えて金品を奪おうと考え、乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え、金品を奪った。この場合、甲には、事後強盗罪が成立する。
甲は、窃盗の目的で乙宅に侵入し、金品を物色中、乙に発見されたため、この機会に乙に暴行を加えて金品を奪おうと考え、乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え、金品を奪った。この場合、甲には、事後強盗罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防」ぐためにというには、先行する窃盗が既遂に達していることが必要である。
甲は、金品を物色中であり、窃盗は既遂に達していないから、乙に対する暴行は、「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防」ぐために行われたものであるとはいえず、事後強盗罪(238条)は成立しない。本肢の事例では、強盗取得罪(236条1項)が成立する。
「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防」ぐためにというには、先行する窃盗が既遂に達していることが必要である。
甲は、金品を物色中であり、窃盗は既遂に達していないから、乙に対する暴行は、「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防」ぐために行われたものであるとはいえず、事後強盗罪(238条)は成立しない。本肢の事例では、強盗取得罪(236条1項)が成立する。
総合メモ
第244条
条文
第244条(親族間の犯罪に関する特例)
① 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
② 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
③ 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
① 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
② 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
③ 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
過去問・解説
(R2 司法 第10問 4)
甲が、友人乙を教唆して、乙の実父丙が所有し、管理している自動車を窃取させた場合、甲の窃盗教唆行為について刑は免除されない。
甲が、友人乙を教唆して、乙の実父丙が所有し、管理している自動車を窃取させた場合、甲の窃盗教唆行為について刑は免除されない。
(正答) 〇
(解説)
244条は、親族による犯罪に関する特例として、1項において「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。」と規定し、3項において「前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」と規定している。
乙には窃盗罪(235条)が成立するところ、丙は乙の実父であるため、乙については、「直系血族…との間で第235条の罪…を犯した者」として、244条1項の適用により、その刑が免除される。
これに対し、窃盗罪の教唆犯(61条1項、235条)が成立するところ、甲と丙は親族関係にないため、甲は、「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪…を犯した者」に当たらないし、244条3項は、「前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」と規定している。したがって、甲については、刑は免除されない。なお、244条1項の「刑を免除」の法的性格を一身的処罰阻却事由と解する立場からは、244条3項は当然の注意規定であると解することになる。
244条は、親族による犯罪に関する特例として、1項において「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。」と規定し、3項において「前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」と規定している。
乙には窃盗罪(235条)が成立するところ、丙は乙の実父であるため、乙については、「直系血族…との間で第235条の罪…を犯した者」として、244条1項の適用により、その刑が免除される。
これに対し、窃盗罪の教唆犯(61条1項、235条)が成立するところ、甲と丙は親族関係にないため、甲は、「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪…を犯した者」に当たらないし、244条3項は、「前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。」と規定している。したがって、甲については、刑は免除されない。なお、244条1項の「刑を免除」の法的性格を一身的処罰阻却事由と解する立場からは、244条3項は当然の注意規定であると解することになる。
総合メモ
第245条
条文
第245条(電気)
この章の罪については、電気は、財物とみなす。
この章の罪については、電気は、財物とみなす。
過去問・解説
(H22 司法 第11問 オ)
甲は、乙社の出張所に一人で勤務し、所長として同出張所の電気機器の使用・管理や光熱費の支払事務などを任されていた。甲は、毎夜、趣味の夜釣りをするため、乙社の承諾を得ずに、同出張所のコンセントに自己の集魚灯の電源コードを差し込んで電気を使用した。甲には業務上横領罪が成立する。
甲は、乙社の出張所に一人で勤務し、所長として同出張所の電気機器の使用・管理や光熱費の支払事務などを任されていた。甲は、毎夜、趣味の夜釣りをするため、乙社の承諾を得ずに、同出張所のコンセントに自己の集魚灯の電源コードを差し込んで電気を使用した。甲には業務上横領罪が成立する。
(正答) ✕
(解説)
窃盗罪(235条)及び強盗罪(236条ないし242条)においては、「この章の罪については、電気は、財物とみなす。」と規定する245条の適用により、電気は「財物」とみなされ、その客体となる。
これに対し、横領罪(252条以下)では、245条が準用されていないから、電機は「財物」とみなされず、その客体とならない。
したがって、甲には業務上横領罪(253条)は成立しない。
窃盗罪(235条)及び強盗罪(236条ないし242条)においては、「この章の罪については、電気は、財物とみなす。」と規定する245条の適用により、電気は「財物」とみなされ、その客体となる。
これに対し、横領罪(252条以下)では、245条が準用されていないから、電機は「財物」とみなされず、その客体とならない。
したがって、甲には業務上横領罪(253条)は成立しない。