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自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

第2条

条文
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条(危険運転致死傷)
 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
 一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
 二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
 三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
 四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
 五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
 六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和32年法律第79号)第4条第1項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和27年法律第180号)第48条の4に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
 七 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
 八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
過去問・解説
(H20 司法 第12問 ア)
甲は、自動車の運転免許を取得したことも運転経験もなく、ハンドル、ブレーキ等の運転装置を操作する初歩的な技能もなかったのに自動車を走行させたため、自車を対向車線に進入させ、対向車に衝突させて同車の運転者を死亡させた。この場合、甲には危険運転致死罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲には、「その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条3号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」として、危険運転致死罪が成立する。

(H20 司法 第12問 イ)
甲は、自動車を運転中に交通違反を犯し、パトカーに追跡されて逃走中、赤色信号に気付かずに交差点に進入したため、青色信号に従って左方道路から同交差点に進入してきた自動二輪車に自車を衝突させ、同二輪車の運転者を死亡させた。この場合、甲には危険運転致死罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲には、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条7号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」として、危険運転致死罪が成立する。

(H20 司法 第12問 ウ)
甲は、自動車を運転中、携帯電話でメールを送信する操作に気をとられ、自車が対向車線に進入しているのに気付かずに進行したため、自車を対向車に衝突させて同車の運転者を死亡させた。この場合、甲には危険運転致死罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲は、「走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条4号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」に当たるから、危険運転致死罪が成立するとも思える。
しかし、同法2条4号を基本行為とする危険運転致死罪は、基本行為において「人又は車の通行を妨害する目的」を主観的要素とする目的犯であるところ、甲は、携帯電話でメールを送信する操作に気をとられたために、上記行為に及んでいるにすぎないから、「車の通行を妨害する目的」が認められず、同法2条4号の基本行為に当たらない。
したがって、甲には危険運転致死罪は成立しない。
甲には、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死」亡「させた者」として、自動車運転過失致死罪(同法5条)が成立するにとどまる。

(H20 司法 第12問 エ)
甲は、覚せい剤を使用した後、自動車の運転を開始したが、運転中、覚せい剤の影響により正常な運転が困難な状態になったのに、それを認識しながらあえて運転を続けたため、自車を電柱に激突させ、同乗者を死亡させた。この場合、甲には危険運転致死罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲には、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条1号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」として、危険運転致死罪が成立する。

(H20 司法 第12問 オ)
甲は、自動車を運転中、長距離運転の過労から眠気を覚えたにもかかわらず、その状態のままあえて運転を続けたため、運転中に眠り込んでしまい、自車を進路左前方の歩道に進入させ、歩道上の歩行者に衝突させて同人を死亡させた。この場合、甲には危険運転致死罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲は、「走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条4号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」に当たるから、危険運転致死罪が成立するとも思える。
しかし、同法2条4号を基本行為とする危険運転致死罪は、基本行為において「人又は車の通行を妨害する目的」を主観的要素とする目的犯であるところ、甲は、自動車を運転中、長距離運転の過労から、無意識のうちに眠り込んでしまっただけだから、「人…の通行を妨害する目的」が認められず、同法2条4号の基本行為に当たらない。
したがって、甲には危険運転致死罪は成立しない。
甲には、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死」亡「させた者」として、自動車運転過失致死罪(同法5条)が成立するにとどまる。

(H23 司法 第5問 1)
甲は、自動車を運転中、前方の交差点に設置された対面信号機が赤色表示に変わったのに気付かず、時速約50キロメートルで同交差点に進入したところ、歩行者用信号機の青色表示に従って前方の横断歩道上を歩行していた乙に自車を衝突させ、乙に傷害を負わせた。この場合、甲に危険運転致傷罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲は、対面信号機が赤色表示に変わったにもかかわらず、時速約50キロメートルで同交差点に進入しているのだから、「赤色信号…を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条7号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」として、危険運転致死罪が成立するとも思える。
しかし、甲は、前方の交差点に設置された対面信号機が赤色表示に変わったのに気付かず、同交差点に進入しているにすぎないから、「赤色信号…を殊更に無視し」たとは認められない。
したがって、甲には危険運転致死罪は成立しない。
甲には、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死」亡「させた者」として、自動車運転過失致死罪(同法5条)が成立するにとどまる。

(H23 司法 第5問 2)
甲は、乙を助手席に同乗させて雨の降る山道を自動車で走行中、指定最高速度が時速40キロメートルであることや、降雨のため路面が滑りやすい状況であることを認識しつつも、対向車もなかったので事故を起こすことはないだろうと思い、時速約100キロメートルの速度で急カーブに進入したところ、後輪が滑走したために同カーブを曲がりきれず、自車を道路脇の樹木に衝突させ、乙に傷害を負わせた。この場合、甲に危険運転致傷罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲には、「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条2号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」として、危険運転致死罪が成立する。

(H23 司法 第5問 3)
甲は、飲酒の影響で歩行が困難な状態であることを認識しながら自動車の運転を開始し、運転開始後も自車が激しく蛇行していることを認識しながらも、運転技術に自信があったので、事故を起こすことはないだろうと思い運転を継続したところ、飲酒の影響により、自車を蛇行させて、道路の右脇を歩行していた乙に衝突させ、乙に傷害を負わせた。この場合、甲に危険運転致傷罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲には、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条1号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」として、危険運転致死罪が成立する。

(H23 司法 第5問 4)
甲は、交通違反を繰り返して自動車運転免許の取消処分を受けていたものの、自動車の運転経験が長く運転技術に自信があったので、事故を起こすことはないだろうと思って自動車の運転を始めたが、運転中脇見をしてハンドル操作を誤り、自車を対向車線に進出させて乙運転の対向車と衝突させ、乙に傷害を負わせた。この場合、甲に危険運転致傷罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲には、「その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条3号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」として、危険運転致死罪が成立する。

(H23 司法 第5問 5)
甲は、片側1車線の道路を自動車を運転して進行中、時速約50キロメートルで走行する乙運転の先行車を追い越すに当たり、対向車両が接近しており、追越しを完了させるには乙車の直前に進入する必要があったので、同車の通行を妨害することになるかもしれないと思いつつ、対向車線に自車を進出させて追越しを開始し、乙車の直前に自車を進入させたところ、乙が驚いてハンドルを左に切り、乙車をガードレールに衝突させ、乙に傷害を負わせた。この場合、甲に危険運転致傷罪が成立する。

(正答)  

(解説)
甲は、「走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」(自動車運転死傷行為処罰法2条4号)を行い、「よって、…人を死亡させた者」に当たるから、危険運転致死罪が成立するとも思える。
しかし、同法2条4号を基本行為とする危険運転致死罪は、基本行為において「人又は車の通行を妨害する目的」を主観的要素とする目的犯であるところ、甲は、乙車の通行を妨害することについて未必的な認識を有するにとどまり、、「車の通行を妨害する目的」までは認められないから、同法2条4号の基本行為に当たらない。
したがって、甲には危険運転致死罪は成立しない。
甲には、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死」亡「させた者」として、自動車運転過失致死罪(同法5条)が成立するにとどまる。
総合メモ