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口頭弁論
控訴審における時機に後れた攻撃防御方法 大判昭和8年2月7日
概要
判例
判旨:「案スルニ民事訴訟法第百三十九條(現:157条1項)ニ所謂『時機ニ後レテ』ノ意ハ法文自體必スシモ明瞭ナリト云フヘカラサルモ同條カ總則規定ナルニ何等ノ制限ヲ加ヘサリシ點同條カ訴訟ノ完結遲滯ヲ防止スル目的ヲ以テ設ケラレタル點及控訴審カ第1審ノ續審タル點等ニ鑑レハ或訴訟事件ニシテ控訴審ニ繋屬シタル場合當事者ヨリ第1審ニ提出セサリシ攻撃防禦ノ方法ヲ提出シタルトキハ控訴審トシテハ第1審ニ於ケル訴訟手續ノ經過ヲモ通觀シテ以テ其ノ時機ニ後レタルヤ否ヤヲ決スヘキ法意ナリト解スルヲ相當トス」
過去問・解説
(H25 共通 第73問 3)
裁判所は、控訴審の第1回口頭弁論期日において初めて提出された攻撃又は防御の方法を、時機に後れたものとして却下することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭8.2.7)は第1審における訴訟手続の経過をも通観して、その時機に後れているか否かを決すべきであり、第1審の口頭弁論において提出することのできた攻撃防御方法を、控訴審の第1回口頭弁論において提出した場合、時機に後れたものとなりうることを示している。
したがって、控訴審の第1回口頭弁論期日において初めて提出された攻撃又は防御の方法であっても、時機に後れたものとして却下することはできる。
控訴審において初めて提出した攻撃防禦の方法 最三小判昭和30年4月5日
概要
判例
判旨:「所論引用の大審院判例(昭和8年2月7日判決)が、控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであり、そして時機に後れた攻撃防禦の方法であっても、当事者に故意又は重大な過失が存すること及びこれがため訴訟の完結を延滞せしめる結果を招来するものでなければ、右の攻撃防禦の方法を同条により却下し得ない趣旨を判示していることは所論のとおりであって、この解釈は現在もなお維持せらるべきものと認められる。 記録によって調べてみると、所論の買取請求権行使は、原審第2回の口頭弁論において(第1回は控訴代理人の申請により延期)はじめて陳述されたものであるところ、上告人が第1審第1回口頭弁論において陳述した答弁書によれば、本件賃借権の譲渡について被上告人の承諾を得ないことを認め、右不承諾を以て権利らん用であると抗弁していることがうかがわれるから、すでに第1審において少くとも前記買取請求権行使に関する主張を提出することができたものと認めるのを相当とし、所論のように、上告人が第1審において当初の主張にのみ防禦を集中したというだけの理由をもって、上告人が第2審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。」
過去問・解説
(H18 司法 第63問 3)
攻撃防御方法の提出が時機に後れたかどうかは、第1審及び控訴審を通じて判断されるため、控訴審の第1回期日に提出されても、時機に後れたものとして却下されることがある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴第139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
したがって、攻撃防御方法の提出が時機に後れたかどうかは、第1審及び控訴審を通じて判断されるため、控訴審の第1回期日に提出されても、時機に後れたものとして却下されることがある。
(H20 司法 第63問 イ)
実体法上の形成権を訴訟上行使する旨の主張は、時機に後れた攻撃防御方法の却下の対象とならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「上告人が第2審において始めてなした買取請求権行使に関する主張が、故意又は重大なる過失により時機に後れてなされた防禦方法でないと断定することはできない。」として、当該訴訟で行使された建物買取請求権が時期に後れた攻撃防御方法にあたり、却下されるべきであると示している。
また、建物買取請求権は、形成権の一種である。
したがって、実体法上の形成権を訴訟上行使する旨の主張は、時機に後れた攻撃防御方法の却下の対象となる。
(H20 司法 第63問 エ)
控訴審において初めて提出した攻撃防御方法が時機に後れたものかどうかは、第1審以来の訴訟手続の経過を勘案して判断すべきである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
(R1 予備 第44問 オ)
当事者が控訴審において新たに提出した攻撃防御方法について、控訴裁判所は、控訴審の審理経過だけでなく、第一審における審理経過についても考慮し、時機に後れたものであるか否かを判断する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.4.5)は、「控訴審における民訴139条(現:157条1項)の適用について、第1審における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを考うべきものであ…る。」としている。
唯一の証拠方法の却下 最大判昭和30年4月27日
概要
判例
判旨:「右訴訟の経緯に徴すれば、原審は時機におくれた攻撃方法として該申請を却下し弁論を終結したものと認めるのを相当とすべく、しかも時機におくれた攻撃方法である以上、たとえ一定の要証事項に対する唯一の証拠方法であっても、これを却下し得べきことは勿論である。」
過去問・解説
(H20 司法 第63問 ウ)
攻撃防御方法の提出が時機に後れたと判断される場合、裁判所は、それが唯一の証拠方法であっても却下することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭30.4.27)は、「時機におくれた攻撃方法である以上、たとえ一定の要証事項に対する唯一の証拠方法であっても、これを却下し得べき…。」としている。
当事者の主張のない所有権喪失の原因となる事実と弁論主義 最三小判昭和41年4月12日
概要
判例
そこで、裁判所が当事者の主張していない所有権喪失の原因となる事実を認定し、判決の基礎とすることが弁論主義に反しないかが問題となった。
判旨:「原判決は、Xにおいて本件土地をYより買戻した旨を認定した以上、Xが現に本件土地所有権を有しないのは、XよりZへ本件土地を譲渡したという理由によるものであつて、YがXより本件土地を代物弁済により取得したという理由によるものではないといわなければならない。しかるに、XよりZへの本件土地譲渡の事実は、原審口頭弁論において当事者の主張のない事実であるから、原判決は、当事者の主張のない事実によりXの前記請求を排斥したものというべく、右違法は判決に影響があること明らかである…。」
過去問・解説
(R8 予備 第36問 イ)
Xは、甲土地につき、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、抗弁として、XがAに対し代物弁済により甲土地を譲渡したと主張し、X及びYは、その他の主張をしなかった。この場合において、裁判所が、XからAへの代物弁済による甲土地の譲渡の事実を認定した上で、さらに、その後、XがAから甲土地を買い戻したことを認定して、Xの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.4.12)は、当事者が主張していない所有権移転の事実について、「原審口頭弁論において当事者の主張のない事実であるから、原判決は、当事者の主張のない事実により上告人の前記請求を排斥したものというべく」として、これを判決の基礎にすることは弁論主義に反する旨判示している。
本肢において、XがAから甲土地を買い戻したとの事実は、代物弁済によって甲土地の所有権を失ったXが、その所有権を再び取得したことを基礎付ける主要事実であるところ、X及びYのいずれもこれを主張していない。
したがって、裁判所が、XからAへの代物弁済による甲土地の譲渡の事実を認定した上で、さらに、その後、XがAから甲土地を買い戻したことを認定して、Xの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反する。
相続財産の所有権喪失と弁論主義 最一小判昭和55年2月7日
概要
判例
そこで、①相続による財産の取得を主張する原告は、被相続人が所有権を取得した後、その所有権を喪失していないことや、当該財産を処分していないことまで主張立証する必要があるか、②相手方が抗弁として主張していない死因贈与の事実を裁判所が認定し、原告の請求を排斥することができるかが問題となった。
判旨:「相続による特定財産の取得を主張する者は、(1)被相続人の右財産所有が争われているときは同人が生前その財産の所有権を取得した事実及び(2)自己が被相続人の死亡により同人の遺産を相続した事実の二つを主張立証すれば足り、(1)の事実が肯認される以上、その後被相続人の死亡時まで同人につき右財産の所有権喪失の原因となるような事実はなかつたこと、及び被相続人の特段の処分行為により右財産が相続財産の範囲から逸出した事実もなかつたことまで主張立証する責任はなく、これら後者の事実は、いずれも右相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきものである。
これを本件についてみると、Xらにおいて、AがCから本件土地を買い受けてその所有権を取得し、Aの死亡によりXらがAの相続人としてこれを共同相続したと主張したのに対し、Yは、前記のとおり、右Xらの所有権取得を争う理由としては、単に右土地を買い受けたのはAではなくBであると主張するにとどまつているのであるから(このような主張は、Aの所有権取得の主張事実に対する積極否認にすぎない。)、原審が証拠調の結果Cから本件土地を買い受けてその所有権を取得したのはAであつてBではないと認定する以上、XらがAの相続人としてその遺産を共同相続したことに争いのない本件においては、Xらの請求は当然認容されてしかるべき筋合である。しかるに、原審は、前記のとおり、Yが原審の口頭弁論において抗弁として主張しないBがAから本件土地の死因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、Xらは右土地の所有権を相続によつて取得することができないとしてその請求を排斥しているのであつて、右は明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。」
過去問・解説
(R8 予備 第36問 ア)
Xは、甲土地につき、AがBから買い受け、Aの死亡によりXが相続したと主張して、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、甲土地につき、YがBから買い受けたものであると主張し、X及びYは、その他の主張をしなかった。この場合において、裁判所が、甲土地につき、AがBから買い受けた後にYに死因贈与したとの事実を認定し、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭55.2.7)は、同種の事案において、被相続人が財産の所有権を取得した後、その所有権を喪失した事実について、「これら…の事実は、いずれも右相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきものである。」とした上で、被告が抗弁として主張していない死因贈与の事実を裁判所が認定して原告の請求を排斥したことについて、「明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。」としている。
本肢において、Yは、甲土地を買い受けたのはAではなくYであると主張するにとどまり、AがBから甲土地を買い受けた後にYに死因贈与したとの事実を主張していない。そして、この死因贈与の事実は、Xの相続による甲土地の所有権取得を争うYにおいて抗弁として主張されるべき事実である。
したがって、裁判所が、甲土地につき、AがBから買い受けた後にYに死因贈与したとの事実を認定し、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。
公序良俗違反の主張と弁論主義 最一小判昭和36年4月27日
概要
判例
判旨:「裁判所は当事者が特に民法90条による無効の主張をしなくとも同条違反に該当する事実の陳述さえあれば、その有効無効の判断をなしうるものと解するを相当とする。そして、原告(被控訴人、被上告人)は、1審以来大久保貞良と被告長野は共謀の上本件不動産を横領して刑事訴追をうけその他原判示のごとき仮処分に関する不法行為をした旨の主張をしていることが明らかであるから、原審が判示事実認定の下にこれを公の秩序、善良の風俗に反し無効であると判断したからといつて、所論の違法あるということはできない。」
過去問・解説
(R8 予備 第36問 ウ)
Xは、甲土地につき、Aから買い受けたと主張して、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であるとの主張をしていなかったが、それを基礎付ける事実を主張していた。この場合において、裁判所が、公序良俗違反を基礎付ける事実を認定した上で、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であると判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭36.4.27)は、「裁判所は当事者が特に民法90条による無効の主張をしなくとも同条違反に該当する事実の陳述さえあれば、その有効無効の判断をなしうるものと解するを相当とする。」としている。
本肢において、Yは、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であるとの主張はしていないものの、公序良俗違反を基礎付ける事実を主張している。
したがって、裁判所が、公序良俗違反を基礎付ける事実を認定した上で、AX間の売買契約が公序良俗に反し無効であると判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反しない。
当事者の主張した自己に不利益な事実で相手方の援用しないものが訴訟資料となるか 最一小判昭和41年9月8日
概要
判例
判旨:「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきであると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第70問 2)
Xは、「甲建物は、かつてAが所有していたが、同人が死亡し、同人の子で唯一の相続人であるXが相続した。しかるに、Yは何らの権原もなく、同建物を占有している。」と主張し、同建物の所有権に基づいて、Yに対して、同建物の明渡しを求める訴えを提起した。Yは、「元所有者のAは、生前Yに甲建物を賃貸し、同建物を引き渡した。」と主張した。Xは、このYの主張を否認し、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡したが、Yの居住の目的に従った使用収益をするのに足りる期間は経過した。」と主張した。Yは、このXの主張を全部否認した。裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告Xが主張している、「AはYに、甲建物を、期間の定めなくYの居住のため無償で利用させる旨約束して、これを引き渡した。」という事実は、被告Yが主張すべき事実である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
したがって、裁判所は、証拠調べの結果、AY間において使用貸借契約が成立したが、Xの主張する期間の経過は認められないと判断した場合、Yの使用借権の存在を理由として、Xの請求を棄却することができる。
(H23 共通 第66問 オ)
所有権に基づく建物明渡請求訴訟の原告が、被告との間で当該建物について使用貸借契約を締結したがその契約は終了した旨の陳述をしたのに対し、被告は、当該建物はもともと自己の所有する建物であったと主張し、口頭弁論の終結に至るまで、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実を援用しなかった。この場合、裁判所は、証拠調べの結果、当該使用貸借契約締結の事実が認められるとの心証を得ても、この事実を判決の基礎とすることができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述した使用貸借契約締結の事実は、被告が主張すべき事実である。かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
(R2 予備 第39問 2)
所有権に基づく建物明渡請求訴訟において、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」との事実を原告が陳述した場合には、被告がその援用をしないときであっても、裁判所は、原告と被告との間でその建物の使用貸借契約が成立したことを判決の基礎とすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.9.8)は、「被控訴人の本訴請求については、被控訴人が控訴人に対し本件宅地の使用を許したとの事実は、元来、控訴人の主張立証すべき事項であるが、控訴人においてこれを主張しなかったところ、かえって被控訴人においてこれを主張し、原審が被控訴人のこの主張に基づいて右事実を確定した以上、控訴人において被控訴人の右主張事実を自己の利益に援用しなかったにせよ、原審は右本訴請求の当否を判断するについては、この事実を斟酌すべきである。」としている。
本肢において、原告が陳述していた、「原告は、被告に対してその建物を無償で使用させていた。」という事実は、被告が主張立証すべき事項である。もっとも、かかる事実を被告が自己の利益に援用しなかった場合であっても、裁判所がかかる事実が認められるとの心証を得た場合、これを判決の基礎とすることができる。
相手方の援用しない自己に不利益な事実の陳述(主張共通の原則) 最一小判平成9年7月17日
概要
判例
判旨:「原審の確定したところによれば、定次は昭和29年4月5日に死亡し、定次には妻田辺正美及び上告人を含む6人の子があったというのである。したがって、原審の認定するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのが定次であるとすれば、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権は定次の遺産であり、これを右7人が相続したことになる。そして、上告人の法定相続分は9分の1であるから、これと異なる遺産分割がされたなどの事実がない限り、上告人は、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことが明らかである。
上告人が、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各9分の1の持分を取得したことを前提として、予備的に右持分の確認等を請求するのであれば、定次が本件土地を賃借し、本件建物を建築したとの事実がその請求原因の一部となり、この事実については上告人が主張立証責任を負担する。本件においては、上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和38年(オ)第1227号同41年9月8日第一小法廷判決・民集20巻7号1314頁参照)。」
過去問・解説
(R5 予備 第39問 3)
Xは、Yに対し、300万円を貸し付けたと主張して、消費貸借契約に基づく貸金返還請求として300万円の支払を求める訴えを甲裁判所に提起した(以下、この消費貸借契約を「本件消費貸借契約」といい、この訴えを「本件訴え」という。)。
Xは、Yが貸付けの事実を認めた上で、消滅時効の抗弁を主張したため、時効の更新の再抗弁として、Yから300万円のうち100万円の弁済を受けた事実を主張したところ、Yはこの弁済の事実を否認した。Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)
本肢において、Yが弁済したという事実は、消滅時効の抗弁が認められなかった場合に、一部弁済の抗弁となり、予備的な主張となる。かかる予備的主張をする場合、一部弁済の事実はYが主張立証責任を負う。
したがって、原告Xが弁済の事実を主張し、被告Yがこれを否認したとしても、弁済の抗弁を認定することができるから、Xが当初の300万円の貸金返還請求を維持している場合において、甲裁判所は、証拠調べの結果、100万円の弁済の事実が認められると判断したときは、Xの請求について、200万円の支払を求める限度で認容し、その余を棄却することができる。
(R8 予備 第36問 エ)
Xは、甲建物につき、Xが甲建物を建築してその所有権を取得したと主張して、Yに対し、その所有権の確認を求める訴えを提起し、Yは、Xによる甲建物の所有権取得の事実を否認し、その理由として、甲建物を建築してその所有権を取得したのはAであると主張し、また、Aが死亡し、Aの子であるX及びYがAを相続したことも主張していた。この場合において、Xが、Aが甲建物の所有権を取得したとの事実を自己の利益に援用していなかったときに、裁判所が、Aが甲建物を建築してその所有権を取得したことを認定した上で、X及びYが相続により甲建物の共有持分権をそれぞれ取得したと判断して、当該共有持分権の確認を求める限度でXの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.7.17)は、「上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべき…である。」として、主張責任を負わない当事者から主張された事実であっても、当事者の主張責任が果たされているといえ、裁判所はこれを判決の基礎とすることができるという考えを採用している(これを「主張共通の原則」という。)。
本肢において、Aが甲建物を建築してその所有権を取得した事実及びAの死亡によりX及びYがAを相続した事実は、Yが主張している。したがって、Xが、Aが甲建物の所有権を取得したとの事実を自己の利益に援用していなかったとしても、裁判所は、これらの事実を判決の基礎とすることができる。
よって、裁判所が、Aが甲建物を建築してその所有権を取得したことを認定した上で、X及びYが相続により甲建物の共有持分権をそれぞれ取得したと判断して、当該共有持分権の確認を求める限度でXの請求を認容する判決をすることは、弁論主義に反しない。
当事者から主張されない消極的間接事実を認定すること 最三小判昭和46年6月29日
概要
判例
判旨:「被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもっぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかったためであって、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。」
過去問・解説
(R2 予備 第39問 4)
保証債務履行請求訴訟において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合には、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所は、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.6.29)は、本肢と同種の事案において、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。なぜならば、ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。
本肢において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合に、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所が、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることは、弁論主義に違反するものではなく、許される。弁済の抗弁の主要事実は、「訴求債権に対する弁済」であり、「訴求債権に対する弁済はない」との事実は、弁済の抗弁の主要事実との関係で否認の理由たる消極的間接事実にすぎないからである。
(R8 予備 第36問 オ)
Xは、甲土地につき、Aから買い受けたと主張して、登記名義人であるYに対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起し、これに対し、Yは、AX間の甲土地の売買の事実を否認した。この場合において、裁判所が、Aから甲土地を買い受けたのはXではなくXの妻のBであるという、XもYも主張していない事実を認定し、その結果、Xが主張するXがAから甲土地を買い受けたとの事実は認められないと判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭46.6.29)は、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。本肢において、Aから甲土地を買い受けたのはXではなくXの妻のBであるという事実は、Xが主張するAX間の売買の事実を否認するための間接事実にすぎない。そのため、X及びYが当該事実を主張していない場合であっても、裁判所は、これを認定して、XがAから甲土地を買い受けたとの事実の立証がないと判断することができる。したがって、裁判所が、Aから甲土地を買い受けたのはXではなくXの妻のBであるという、XもYも主張していない事実を認定し、その結果、Xが主張するXがAから甲土地を買い受けたとの事実は認められないと判断して、Xの請求を棄却する判決をすることは、弁論主義に反しない。
留置権の抗弁 最一小判昭和27年11月27日
概要
判例
判旨:「記録によると、原審で上告人は被上告人に対し所論のように借地法10条による建物買収請求の意思表示をしたことは認め得るけれど、その代金の支払あるまで当該建物を留置する旨の抗弁を主張したことを認むべき証跡は存在しない。さればたとい右建物の買収請求により上告人と被上告人との間に当該建物につき売買契約をしたのと同様の法律上の効果を生じ、建物の所有権は被上告人に移転し、上告人は被上告人に対しこれが引渡義務を、また被上告人は上告人に対しこれが代金支払義務をそれぞれ負担することとなり、従って当然に上告人において被上告人がその代金の支払をなすまで右建物の上に留置権を取得するに至ったとしても、前説示のように上告人において該権利を行使した形跡のない以上、原審がこれを斟酌しなかったのはむしろ当然であり原判決には所論第一点のような違法があるとはいえない、けだし、権利は権利者の意思によって行使されその権利行使によって権利者はその権利の内容たる利益を享受するのである。それ故留置権のような権利抗弁にあっては、弁済免除等の事実抗弁が苟くもその抗弁を構成する事実関係の主張せられた以上、それが抗弁により利益を受ける者により主張せられたると、その相手方により主張せられたるとを問わず、常に裁判所においてこれを斟酌しなければならないのと異なり、たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者において権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできないのである…。そしてまた当事者の一方が或る権利を取得したことを窺わしめるような事実が訴訟上あらわれたに拘わらず、その当事者がこれを行使しない場合にあっても、裁判所はその者に対しその権利行使の意思の有無をたしかめ、或はその権利行使を促すべき責務あるものではない。」
過去問・解説
(R2 予備 第39問 1)
所有権に基づく動産引渡請求訴訟において、被告が留置権の発生の原因となる事実を主張した場合には、被告が留置権を行使する意思を表明していないときであっても、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭27.11.27)は、「留置権のような権利抗弁にあっては、…たとい抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張せられたとしても権利者においてその権利を行使する意思を表明しない限り裁判所においてこれを斟酌することはできない…。」としている。
したがって、被告が留置権を行使する意思を表明していないとき、裁判所は、被告が留置権を有することを判決の基礎とすることができない。
不法行為を理由とする損害賠償請求における過失相殺と当事者による主張の要否 最三小判昭和41年6月21日
概要
判例
判旨:「不法行為による損害賠償の額を定めるにあたり、被害者に過失のあるときは、裁判所がこれをしんしゃくすることができることは民法722条の規定するところである。この規定によると、被害者の過失は賠償額の範囲に影響を及ぼすべき事実であるから、裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しないものである(大審院判昭和2年(オ)802号・同3年8月1日民集7巻648頁参照)。
したがって、これと異なり、過失相殺にもいわゆる弁論主義の適用のあることを主張する論旨は、失当として排斥を免れない。」
過去問・解説
(R2 予備 第39問 5)
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、被告が原告に損害の発生に関する過失があることの根拠となる事実を主張した場合には、被告が過失相殺を主張していないときであっても、裁判所は、過失相殺の結果を判決の基礎とすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.6.21)は、本肢と同種の事案において、「裁判所は訴訟にあらわれた資料にもとづき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を判定するについて職権をもってこれをしんしゃくすることができると解すべきであって、賠償義務者から過失相殺の主張のあることを要しない…。」としている。
釈明の内容が別個の請求原因にわたる場合と裁判所の釈明権能 最一小判昭和45年6月11日
概要
判例
判旨:「釈明の制度は、弁論主義の形式的な適用による不合理を修正し、訴訟関係を明らかにし、できるだけ事案の真相をきわめることによって、当事者間における紛争の真の解決をはかることを目的として設けられたものであるから、原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」
過去問・解説
(H28 予備 第39問 2)
具体的な法律構成を示唆して訴えの変更を促す釈明権の行使は、許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭45.6.11)は、「原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、それ自体正当ではあるが、証拠資料によって認定される事実関係との間に喰い違いがあって、その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ、当事者間における紛争の根本的な解決が期待できるにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許されるものと解すべきであり、場合によっては、発問の形式によって具体的な法律構成を示唆してその真意を確めることが適当である場合も存するのである。」として、具体的な法律構成を示唆する形での釈明権の行使を認めている。
(R7 予備 第38問 ウ)
原告が主張する請求原因によっては原告の請求を認容することができないが、従前の訴訟の経過や訴訟資料からみて、別個の法律構成に基づく請求原因が主張されれば原告の請求を認容することができるにもかかわらず、原告が明らかに誤解又は不注意によりそのような主張をしていないと認められる場合に、裁判長が原告に対して釈明権の行使としてその別個の法律構成を示唆することは、釈明権行使の範囲を逸脱した違法なものではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭45.6.11)は、「原告の申立に対応する請求原因として主張された事実関係とこれに基づく法律構成が、…その請求を認容することができないと判断される場合においても、その訴訟の経過やすでに明らかになった訴訟資料、証拠資料からみて、別個の法律構成に基づく事実関係が主張されるならば、原告の請求を認容することができ…るにかかわらず、原告においてそのような主張をせず、かつ、そのような主張をしないことが明らかに原告の誤解または不注意と認められるようなときは、その釈明の内容が別個の請求原因にわたる結果となる場合でも、事実審裁判所としては、その権能として、原告に対しその主張の趣旨とするところを釈明することが許される…。」として、裁判長が原告に対して釈明権の行使としてその別個の法律構成を示唆することを認めている。
債権者代位訴訟の原告である債権者が被告である第三債務者の提出した抗弁に対し自己独自の事情に基づく再抗弁を提出することの可否 最二小判昭和54年3月16日
概要
判例
判旨:「債権者代位訴訟における原告は、その債務者に対する自己の債権を保全するため債務者の第三債務者に対する権利について管理権を取得し、その管理権の行使として債務者に代り自己の名において債務者に属する権利を行使するものであるから、その地位はあたかも債務者になり代るものであって、債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく、したがって、被告となった第三債務者は、債務者がみずから原告になった場合に比べて、より不利益な地位に立たされることがないとともに、原告となった債権者もまた、その債務者が現に有する法律上の地位に比べて、より有利な地位を享受しうるものではないといわなければならない。そうであるとするならば、第三債務者である被告の提出した債務者に対する債権を自働債権とする相殺の抗弁に対し、代位債権者たる原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできないものと解さざるをえない。」
過去問・解説
(H19 司法 第61問 1)
YはAに建物新築工事を注文した。Aはこれを請け負い、同建物の左官工事についてはXがAから下請けした。建物は完成してYに引き渡されたものの、AのYに対する請負代金債権(以下「甲債権」という。)についても、XのAに対する下請工事代金債権(以下「乙債権」という。)についても弁済がなされないまま、Aが経営に行き詰まり、無資力となった。そこで、Xは、Aから乙債権について弁済を受けられないとして、債権者代位権に基づき、Yを被告として甲債権について支払を求める訴えを提起した。Yは、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺すると主張し、そのことをXの請求に対する抗弁とすることはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭54.3.16)は、「債権者代位訴訟における原告は、…債務者自身が原告になった場合と同様の地位を有するに至るものというべく…原告の提出することのできる再抗弁は、債務者自身が主張することのできる再抗弁事由に限定されるべきであって、債務者と関係のない、原告の独自の事情に基づく抗弁を提出することはできない…。」としている。
そうすると、被告が提出できる抗弁も、債務者に対して主張できるものでなくてはならず、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁は提出できない。
本肢の事案において、Yの、YがXに対して有する債権をもって甲債権と相殺するとの主張は、債務者Aに対して主張できないものであり、債務者と関係のない、債権者と第三債務者間の事情に基づく抗弁である。
したがって、Yの上記主張は、Xの請求に対する抗弁とすることができない。
法的観点指摘義務 最一小判平成22年10月14日
概要
判例
判旨:「記録によれば、本件訴訟の経過として、…本件は、第1審の第2回口頭弁論期日において弁論準備手続に付され、弁論準備手続期日において本件の争点は本件合意の存否である旨が確認され、第3回口頭弁論期日において、弁論準備手続の結果が陳述されるとともに、被上告人本人及び2名の証人の尋問が行われ、第4回口頭弁論期日において口頭弁論が終結されたこと、…第1審判決は、本件合意があったとは認められないとして被上告人の請求を棄却するものであったところ、これに対し、被上告人から控訴が提起されたこと、…原審の第1回口頭弁論期日において、控訴状、被上告人の準備書面(控訴理由が記載されたもの)及び上告人の答弁書が陳述されて口頭弁論が終結されたところ、控訴理由もそれに対する答弁も、専ら本件合意の存否に関するものであったこと、以上の事実が認められる。
…上記…のような訴訟の経過の下において、前記…のように信義則違反の点についての判断をするのであれば、原審としては、適切に釈明権を行使して、被上告人に信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。とりわけ、原審の採った法律構成は、…上告人には、被上告人に対し、定年退職の1年前までに、定年規程を厳格に適用し、かつ、再雇用をしない旨を告知すべき信義則上の義務があったとした上、さらに、…具体的な告知の時から1年を経過するまでは、賃金支払義務との関係では、信義則上、定年退職の効果を主張することができないとする法律効果を導き出すというもので、従前の訴訟の経過等からは予測が困難であり、このような法律構成を採るのであれば、なおさら、その法律構成の適否を含め、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものといわなければならない。
原審が、上記…のような訴訟の経過の下において、上記…のような措置をとることなく前記…のような判断をしたことには、釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
過去問・解説
(R7 予備 第38問 イ)
裁判所が、判決において、原告と被告が共に主張しておらず、従前の訴訟の経過からは予測が困難な法律構成である信義則上の義務違反を認める判断をする場合に、当該信義則上の義務違反を基礎付ける事実が主張されていれば、原告に信義則上の義務違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促す措置がとられていなくても、釈明権の行使を怠った違法があるとはいえない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平22.10.14)は、本肢と同種の事案において、「信義則違反の点についての判断をするのであれば、原審としては、適切に釈明権を行使して、被上告人に信義則違反の点について主張するか否かを明らかにするよう促すとともに、上告人に十分な反論及び反証の機会を与えた上で判断をすべきものである。」として、釈明権の行使を怠った違法があるとしている。
口頭弁論の再開の申請に対する裁判の要否 最一小判昭和23年11月25日
概要
判例
判旨:「所論証人加藤策士の訊問申請は、原審が口頭弁論を終結した後に弁論再開の申請と同時に為されたものである。一旦終結した弁論を再開すると否とは当該裁判所の自由裁量により決し得るところであつて、当事者は権利として裁判所に対して弁論の再開を請求し得るものではない。所謂弁論再開の申請なるものは唯裁判所の職権発動を促すものたるに過ぎないのであるから裁判所は再開を適当と認めた場合には再開し,又再開の要なしと認めた場合にはかかる申請に対して特に答えることなく、そのまま判決の言渡を為し得る訳である。このことは裁判所のために決して専横を許したものではなく、裁判所が事件につき裁判を為すに熟したと認めて一旦弁論を終結すれば、爾後訴訟資料提出の機会を失う危険あることを当事者に警告してその勤勉なる訴訟遂行を期待し、以て訴訟遅延を防止せんとする立法者の意図に外ならない。この間の裁量は、一に当該裁判所の自由と責任と良心に委ねられている。されば、本件において原審が上告人の弁論再開の申請並びにこれと同時に為された所論証拠申請を顧みることなく、原判決をなしたとしても原判決に所論のような違法があるとはいい得ないのである。論旨は理由がない。」
過去問・解説
(R8 予備 第37問 ア)
裁判所は、当事者が終結した口頭弁論の再開を申請したときは、その申請について裁判をしなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭23.11.25)は、「一旦終結した弁論を再開すると否とは当該裁判所の自由裁量により決し得るところであつて、当事者は権利として裁判所に対して弁論の再開を請求し得るものではない。」とした上で、「所謂弁論再開の申請なるものは唯裁判所の職権発動を促すものたるに過ぎないのであるから裁判所は再開を適当と認めた場合には再開し,又再開の要なしと認めた場合にはかかる申請に対して特に答えることなく、そのまま判決の言渡を為し得る訳である。」としている。
したがって、当事者が終結した口頭弁論の再開を申請したときであっても、裁判所は、その申請について裁判をしなければならないものではない。