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証拠(書証) - 解答モード
書証の成立を認めるということが、書証に書いてあることが客観的に真実であるという事実を認めることになるか 最三小判昭和25年2月28日
概要
判例
判旨:「書証の成立を認めるということはただ其書証の作成名義人が真実作成したもので偽造のものではないということを認めるだけで、その書証に書いてあることが客観的に真実であるという事実を認めることではない。」
過去問・解説
(H25 共通 第68問 ア)
A名義で事件の経過を記載した報告書は、Aの意思に基づいて作成されたことが認められれば、その内容が真実であると推定される。
私文書における二段の推定 最三小判昭和39年5月12日
概要
判例
判旨:「民訴326条(現:228条4項)に『本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ』というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが、文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は、民訴326条(現:228条4項)にいう『本人又ハ其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ』の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることとなるのである。」
過去問・解説
(H18 司法 第60問 ウ)
私文書に作成名義人の印章による印影がある場合、その印影は、法律上、作成名義人の意思に基づいて顕出されたものと推定される。
(正答)✕
(解説)
228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.5.12)は、「民訴326条(現:228条4項)に『本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ』というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが、文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であ…る。」としている。
この推定は、「反証がない限り」されるものであるから、立証責任が転換するものではなく、事実上の推定にとどまる。
したがって、私文書に作成名義人の印章による印影がある場合、その印影は、法律上ではなく、事実上、作成名義人の意思に基づいて顕出されたものと推定される。
(H21 司法 第66問 5)
売買契約に基づく代金支払請求訴訟において、買主の委任状が偽造されたものかどうかが争点とされた場合には、委任状に被告の印章による印影があると当該印影は被告の意思に基づいて顕出されたものと推定されるが、被告は、印章が盗まれた事実を立証して反証に成功すれば、この推定を覆すことができる。
(H25 共通 第68問 エ)
判例の趣旨によれば、Aの氏名が記された印影が私文書中に顕出されている場合には、その文書は、Aを作成者として真正に成立したものと推定される。
(正答)〇
(解説)
228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.5.12)は、「民訴326条(現:228条4項)に『本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ』というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが、文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は、民訴326条(現:228条4項)にいう『本人又ハ其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ』の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることとなるのである。」としている。
したがって、Aの氏名が記された印影が私文書中に顕出されている場合には、その文書は、Aを作成者として真正に成立したものと推定される。
(H30 予備 第40問 3)
成立に争いのある私文書に本人名義の署名が存在する場合には、その署名をしたのが本人であるかどうかかが明らかでないときであっても、その署名は本人の意思に基づいてされたものと事実上推定され、ひいては当該私文書が真正に成立したものと推定される。
(正答)✕
(解説)
228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.5.12)は、「民訴326条(現:228条4項)に『本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ』というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂である。」として、署名が本人または代理人の意思に基づいていなければ民訴326条(現:228条4項)の推定は生じないことを示している。
したがって、署名をしたのが本人であるかどうかかが明らかでないときは、その署名は本人の意思に基づいてされたものと事実上推定されることはなく、民訴326条(現:228条4項)によって成立の真正が推定されることもない。
なお、判例(最判昭39.5.12)は、「文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であ…る。」として、印影の場合に限って、本人または代理人の意思に基づく捺印であるという事実につき、事実上の推定を認めているが、署名の場合はこのような事実上の推定は認められていない。
(H30 予備 第40問 4)
成立に争いのある私文書に本人の印章による印影が存在する場合には、その印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定され、ひいては当該私文書が真正に成立したものと推定される。
(正答)〇
(解説)
228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.5.12)は、「民訴326条(現:228条4項)に『本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ』というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが、文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は、民訴326条(現:228条4項)にいう『本人又ハ其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ』の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることとなるのである。」としている。
したがって、本人の印章による印影が存在する場合には、その印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定され、ひいては当該私文書が真正に成立したものと推定される。
第三者作成文書の成立の真正の認定 最三小判昭和27年10月21日
概要
判例
判旨:「論旨は、原審において、上告人が不知を以て答えた乙第1号証(第三者の作成した手紙)を証拠に採用したことを非難しているが、第三者作成の文書については、特段の立証はなくとも裁判所が弁論の全趣旨によりその成立の真正を認めうるものと解すべきであって、原審が右乙号証は真正に成立したものと認める旨判示したのは、弁論の全趣旨によりこれを認めた趣旨であること明であるから、同号証を証拠に採用したことは何ら違法ではなく、所論は理由がない。」
訴提起後挙証者が係争事実に関して作成した文書の証拠能力 最二小判昭和24年2月1日
概要
判例
判旨:「訴訟提起後に、当事者自身が、係争事実に関して作成した文書であっても、それがために、当然に、証拠能力をもたぬものではない。裁判所は自由の心証をもって、かかる書類の形式的、実質的証拠力を判断して、これを事実認定の資料とすることができるのである。」
民事訴訟法220条3号後段にいう法律関係文書の意義 最一小決平成12年3月10日
概要
判例
判旨:「民訴法220条3号後段の文書には、文書の所持者が専ら自己使用のために作成した内部文書(以下『内部文書』という。)は含まれないと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、本件文書…は、検定意見を通知し必要な修正が行われた後に再度審査を行うのが適当であるとの検定審議会の判定内容を記載した書面及び検定審議会がその旨を記載して文部大臣に提出した報告書を指すものと解されるところ、これらはいずれも、検定審議会が、文部大臣の判断を補佐するため、本件申請図書を調査審議し、議決内容を建議するという所掌事務の遂行過程において、本件申請図書の判定内容の記録として…また、議決した内容を文部大臣に報告する手段として…文部省内部において使用されるために作成された文書であることが明らかである。これらの文書は、その作成について法令上何ら定めるところはなく、これらを作成するか否か、何をどの程度記載するかは、検定審議会に一任されており、また、申請者等の外部の者に交付するなど記載内容を公表することを予定しているとみるべき特段の根拠も存しない。以上のような文書の記載内容、性質、作成目的等に照らせば、本件文書…は、文部大臣が行う本件申請図書の検定申請の合否判定の意思を形成する過程において、諮問機関である検定審議会が、所掌事務の一環として、専ら文部省内部において使用されることを目的として作成した内部文書というべきである。」
過去問・解説
(R3 予備 第40問 3)
裁判所は、専ら所持者の利用に供するための文書に当たる文書について、挙証者と当該文書の所持者との間の法律関係について作成された文書であることを理由として、その提出を命ずることができない。
(正答)〇
(解説)
220条は、柱書において、「次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。」と規定し、3号において、「文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。」を掲げている。
これについて判例(最決平12.3.10)は、「民訴法220条3号後段の文書には、文書の所持者が専ら自己使用のために作成した内部文書…は含まれない…。」としている。
したがって、裁判所は、専ら所持者の利用に供するための文書に当たる文書について、挙証者と当該文書の所持者との間の法律関係について作成された文書であることを理由として、その提出を命ずることができない。
民事訴訟法220条4号ハにいう「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」の意義 最二小判平成11年11月12日
概要
判例
判旨:「ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法220条4号ハ(現:220条4号ニ)所定の『専ら文書の所持者の利用に供するための文書』に当たると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、記録によれば、銀行の貸出稟議書とは、支店長等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について、本部の決裁を求めるために作成されるものであって、通常は、融資の相手方、融資金額、資金使途、担保・保証、返済方法といった融資の内容に加え、銀行にとっての収益の見込み、融資の相手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見などが記載され、それを受けて審査を行った本部の担当者、次長、部長など所定の決裁権者が当該貸出しを認めるか否かについて表明した意見が記載される文書であること、本件文書は、貸出稟議書及びこれと一体を成す本部認可書であって、いずれも抗告人がJに対する融資を決定する意思を形成する過程で、右のような点を確認、検討、審査するために作成されたものであることが明らかである。
右に述べた文書作成の目的や記載内容等からすると、銀行の貸出稟議書は、銀行内部において、融資案件についての意思形成を円滑、適切に行うために作成される文書であって、法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も記載されることが予定されているものである。したがって、貸出稟議書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情がない限り、『専ら文書の所持者の利用に供するための文書』に当たると解すべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第64問 2)
銀行の貸出稟議書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情がない限り、専ら文書の所持者の利用に供するための文書に該当することから、所持者はその提出を拒むことができる。
(H24 共通 第66問 ウ)
判例によれば、株式会社の社内文書で外部の者への開示が予定されていないものであっても、その文書を開示することにより当該株式会社に看過し難い不利益を生ずるおそれがないときには、文書提出命令の対象となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平11.11.12)は、「ある文書が…専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法220条4号ハ所定の『専ら文書の所持者の利用に供するための文書』に当たる…。」としている。
したがって、その文書を開示することにより当該株式会社に看過し難い不利益を生ずるおそれがないときには、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(220条4号ニ)には当たらないため、文書提出命令の対象となる。
民事訴訟法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密」と公務員が職務上知ることができた私人の秘密 最三小決平成17年10月14日
概要
②220条4号ロにいう「その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」とは、単に文書の性格から公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずる抽象的なおそれがあることが認められるだけでは足りず、その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要である。
③労働災害が発生した際に労働基準監督官等の調査担当者が労働災害の発生原因を究明し同種災害の再発防止策等を策定するために調査結果等を踏まえた所見を取りまとめて作成した災害調査復命書に、(1)当該調査担当者が事業者や労働者らから聴取した内容、事業者から提供を受けた関係資料、当該事業場内での計測、見分等に基づいて推測、評価、分析した事項という当該調査担当者が職務上知ることができた当該事業者にとっての私的な情報のほか、(2)再発防止策、行政指導の措置内容についての当該調査担当者の意見、署長判決及び意見等の行政内部の意思形成過程に関する情報が記載されていること、(1)の情報に係る部分の中には、上記聴取内容がそのまま記載されたり、引用されたりしている部分はなく、当該調査担当者において、他の調査結果を総合し、その判断により上記聴取内容を取捨選択して、その分析評価と一体化させたものが記載されていること、調査担当者には、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査するなどの権限があることなど判示の事情の下においては、上記災害調査復命書のうち、(2)の情報に係る部分は民訴法220条4号ロ所定の文書に該当しないとはいえないが、(1)の情報に係る部分は同号ロ所定の文書に該当しない。
判例
判旨:①「民訴法220条4号ロにいう『公務員の職務上の秘密』とは、公務員が職務上知り得た非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいうと解すべきである(最高裁昭和48年(あ)第2716号同52年12月19日第二小法廷決定・刑集31巻7号1053頁、最高裁昭和51年(あ)第1581号同53年5月31日第一小法廷決定・刑集32巻3号457頁参照)。そして、上記『公務員の職務上の秘密』には、公務員の所掌事務に属する秘密だけでなく、公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密であって、それが本案事件において公にされることにより、私人との信頼関係が損なわれ、公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるものも含まれると解すべきである。…本件文書は、〔1〕本件調査担当者が職務上知ることができた本件事業場の安全管理体制、本件労災事故の発生状況、発生原因等の被告会社にとっての私的な情報(以下「〔1〕の情報」という。)と、〔2〕再発防止策、行政上の措置についての本件調査担当者の意見、署長判決及び意見等の行政内部の意思形成過程に関する情報(以下「〔2〕の情報」という。)が記載されているものであり、かつ、厚生労働省内において組織的に利用される内部文書であって、公表を予定していないものと認められる。そして、本件文書のうち、〔2〕の情報に係る部分は、公務員の所掌事務に属する秘密が記載されたものであると認められ、また、〔1〕の情報に係る部分は、公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密が記載されたものであるが、これが本案事件において提出されることにより、調査に協力した関係者との信頼関係が損なわれ、公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるということができるから、〔1〕、〔2〕の情報に係る部分は、いずれも、民訴法220条4号ロにいう『公務員の職務上の秘密に関する文書』に当たるものと認められる。
②次に、民訴法220条4号ロにいう『その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある』とは、単に文書の性格から公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずる抽象的なおそれがあることが認められるだけでは足りず、その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要であると解すべきである。
③本件文書のうち、〔2〕の情報に係る部分は、上記のとおり、行政内部の意思形成過程に関する情報が記載されたものであり、その記載内容に照らして、これが本案事件において提出されると、行政の自由な意思決定が阻害され、公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが具体的に存在することが明らかである。しかしながら…〔1〕の情報に係る部分が本案事件において提出されても、関係者の信頼を著しく損なうことになるということはできないし、以後調査担当者が労働災害に関する調査を行うに当たって関係者の協力を得ることが著しく困難となるということもできない。また、上記部分の提出によって災害調査復命書の記載内容に実質的な影響が生ずるとは考えられない。したがって、〔1〕の情報に係る部分が本案事件において提出されることによって公務の遂行に著しい支障が生ずるおそれが具体的に存在するということはできない。 そうすると、本件文書のうち、〔2〕の情報に係る部分は民訴法220条4号ロ所定の『その提出により(中略)公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの』に該当しないとはいえないが、〔1〕の情報に係る部分はこれに該当しないというべきであるから、本件文書のうち、〔2〕の情報に係る部分については同号に基づく提出義務が認められないが、〔1〕の情報に係る部分については上記提出義務が認められなければならない。」
過去問・解説
(H23 共通 第68問 1)
Aは、Y会社で工員として勤務していたが、工場で就業中に事故に遭って死亡した。Aの遺族であるXは、Y会社を被告として損害賠償を求める訴えを提起したが、事故の状況を立証するため、国の機関である労働基準監督署において保管されている調査報告書の提出を求める文書提出命令の申立てを検討している。
労働基準監督官が作成した調査報告書にY会社やその関係者の私人の秘密に関する記載があったとしても、これは公務員の職務上の秘密には当たらないので、国には同報告書を提出する義務がある。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平17.10.14)は、本肢と同種の事案において、「民訴法220条4号ロにいう『公務員の職務上の秘密』とは、公務員が職務上知り得た非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいうと解すべきである。そして、上記『公務員の職務上の秘密』には…公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密であって、それが本案事件において公にされることにより、私人との信頼関係が損なわれ、公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるものも含まれる。」とした上で、「本件文書は…これが本案事件において提出されることにより、調査に協力した関係者との信頼関係が損なわれ、公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるということができるから…民訴法220条4号ロにいう『公務員の職務上の秘密に関する文書』に当たるものと認められる。」としている。
労働基準監督官が作成した調査報告書にY会社やその関係者の私人の秘密に関する記載がある場合、これは公務員の職務上の秘密には当たるので、「公務員の職務上の秘密に関する文書」に該当し、国には同報告書を提出する義務はない。
(H23 共通 第68問 2)
Aは、Y会社で工員として勤務していたが、工場で就業中に事故に遭って死亡した。Aの遺族であるXは、Y会社を被告として損害賠償を求める訴えを提起したが、事故の状況を立証するため、国の機関である労働基準監督署において保管されている調査報告書の提出を求める文書提出命令の申立てを検討している。
労働基準監督官が作成した調査報告書中の調査担当者の意見が公務員の職務上の秘密に当たり、かつ、これが提出されると公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが具体的に存在する場合には、国には同報告書を提出する義務はない。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平17.10.14)は、本肢と同種の事案において、災害調査復命書について「公務員の職務上の秘密に関する文書」(220条4号ロ)にあたるとした上で、「民訴法220条4号ロにいう『その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある』とは、単に文書の性格から公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずる抽象的なおそれがあることが認められるだけでは足りず、その文書の記載内容からみてそのおそれの存在することが具体的に認められることが必要である。」としている。
労働基準監督官が作成した調査報告書中の調査担当者の意見が公務員の職務上の秘密に当たり、かつ、これが提出されると公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが具体的に存在する場合、当該報告書は、「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たるため、国には同報告書を提出する義務はない。
証拠調べの必要性を欠くことを理由とする文書提出命令申立却下決定に対する抗告の可否 最一小判平成12年3月10日
概要
判例
判旨:「証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第64問 4)
証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、その必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできない。
(H30 予備 第43問 イ)
地方裁判所が文書提出命令の申立てについてその文書の証拠調べをする必要性がないという理由でこれを却下するとした決定に対しては、その必要性があることを理由として、即時抗告をすることができる。
(R3 予備 第40問 5)
証拠調べの必要性がないことを理由とする文書提出命令の申立ての却下決定に対しては、証拠調べの必要性があることを理由として即時抗告をすることはできないが、文書提出命令に対して、証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることはできる。
(正答)✕
(解説)
223条7項は、「文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。」と規定しているところ、判例(最決平12.3.10)は、「証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできない。」としている。また、別の判例(最決平12.12.14)は、「文書提出命令に対し証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることは許されない…。」としている。
したがって、証拠調べの必要性がないことを理由とする文書提出命令の申立ての却下決定に対しては、証拠調べの必要性があることを理由として即時抗告をすることができず、かつ、文書提出命令に対しても、証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることができない。
共犯者の捜査段階における供述調書が民事訴訟法220条3号後段にいう法律関係文書に該当することを理由とする文書提出命令 最三小決平成16年5月25日
概要
②既に自己の有罪判決が確定した刑事事件の公判に提出されなかった共犯者の捜査段階における供述調書につき、民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由としてされた文書提出命令の申立ては、刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」である当該供述調書を本案訴訟において証拠として取り調べることが申立人の主張事実の立証に必要不可欠なものとはいえないこと、当該供述調書が開示されることによって当該共犯者や第三者の名誉、プライバシーが侵害されるおそれがないとはいえないことなど判示の事情の下では、保管者である検察官の提出拒否の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえず、理由がない。
判例
判旨:①「刑訴法47条は、その本文において、『訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない』と定め、そのただし書において、『公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない』と定めている。同条所定の『訴訟に関する書類』には、本件各文書のように、捜査段階で作成された供述調書で公判に提出されなかったものも含まれると解すべきである。 同条本文が『訴訟に関する書類』を公にすることを原則として禁止しているのは、それが公にされることにより、被告人、被疑者及び関係者の名誉、プライバシーが侵害されたり、公序良俗が害されることになったり、又は捜査、刑事裁判が不当な影響を受けたりするなどの弊害が発生するのを防止することを目的とするものであること、同条ただし書が、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合における例外的な開示を認めていることにかんがみると、同条ただし書の規定による『訴訟に関する書類』を公にすることを相当と認めることができるか否かの判断は、当該『訴訟に関する書類』を公にする目的、必要性の有無、程度、公にすることによる被告人、被疑者及び関係者の名誉、プライバシーの侵害等の上記の弊害発生のおそれの有無等諸般の事情を総合的に考慮してされるべきものであり、当該『訴訟に関する書類』を保管する者の合理的な裁量にゆだねられているものと解すべきである。 そして、民事訴訟の当事者が、民訴法220条3号後段の規定に基づき、刑訴法47条所定の『訴訟に関する書類』に該当する文書の提出を求める場合においても、当該文書の保管者の上記裁量的判断は尊重されるべきであるが、当該文書が法律関係文書に該当する場合であって、その保管者が提出を拒否したことが、民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無、程度、当該文書が開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし、その裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用するものであると認められるときは、裁判所は、当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相当である。」
②「本件申立ては、既に有罪判決が確定している相手方が、本件本案訴訟において、本件刑事公判において採用されなかった主張と同様の主張をして、その主張事実を立証するために本件刑事公判に提出されなかった本件共犯者らの捜査段階における供述調書(本件各文書)の提出を求めるというものであるが、相手方が、その主張事実を立証するためには、本件各文書が提出されなくても、本件共犯者らの証人尋問の申出や、本件刑事公判において提出された証拠等を書証として提出すること等が可能であって、本件本案訴訟において本件各文書を証拠として取り調べることが、相手方の主張事実の立証に必要不可欠なものとはいえないというべきである(なお、記録によれば、相手方は、現在提出されている証拠だけでも十分に自己の主張を立証することができると考えている旨、及び本件申立ての主たる目的は、上記の確定した有罪判決に対して自己が申し立てている再審請求の裁判に有利に働くようにするためである旨の書面を原々審に提出していることが明らかである。)。また、本件各文書が開示されることによって、本件共犯者らや第三者の名誉、プライバシーが侵害されるおそれがないとはいえない。 そうすると、本件においては、相手方及び本件共犯者らの有罪判決が既に確定していることを考慮に入れても、本件各文書を開示することが相当でないとして本件各文書の提出を拒否した抗告人の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであるということはできない。 以上によれば、本件各文書が法律関係文書に該当するか否かについて判断するまでもなく、民訴法220条3号後段の規定に基づく本件申立ては、その理由がないことは明らかである。 また、上記の事実関係によれば、本件各文書が、民訴法220条2号及び3号前段(民訴法220条3号後段以外の同号の部分をいう。)に該当するものでないことは明らかである。」
過去問・解説
(H24 共通 第66問 エ)
判例によれば、刑事事件に係る訴訟に関する書類は、文書提出命令の対象となることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平16.5.25)は、「民事訴訟の当事者が、民訴法220条3号後段の規定に基づき、刑訴法47条所定の『訴訟に関する書類』に該当する文書の提出を求める場合においても…当該文書が法律関係文書に該当する場合であって、その保管者が提出を拒否したことが、民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無、程度、当該文書が開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし、その裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用するものであると認められるときは、裁判所は、当該文書の提出を命ずることができる…。」として、刑事事件に係る訴訟に関する書類であっても、文書提出命令の対象となり得ることを示している。
証拠調べの必要性を欠くことを理由とする文書提出命令申立却下決定に対する抗告の可否 最一小決平成12年3月10日
概要
判例
判旨:「証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 共通 第66問 ア)
文書提出命令の申立ては、その対象となった文書について証拠調べの必要性を欠くことを理由として却下することはできない。
文書提出命令の申立てについての決定に対して即時抗告をすることができる者の範囲 最一小判平成12年12月14日
概要
判例
判旨:「文書提出命令は、ある事実を立証しようとする当事者が自ら証拠を提出する代わりに、裁判所の命令により文書の所持者にその提出を求めるものであり、文書提出命令が発せられた場合には、これに従わない所持者は、文書の記載に関する相手方の主張を真実と認められるなどの不利益を受け、あるいは過料の制裁を受けることがある。そこで、民訴法223条4項は、文書提出命令の申立てについての決定に対しては、申立人とその名あて人である所持者との間で文書提出義務の存否について争う機会を付与したものと解される。また、文書提出命令は、文書の所持者に対してその提出を命ずるとともに、当該文書の証拠申出を採用する証拠決定の性質を併せ持つものであるが、文書提出命令に対し証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることは許されない(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照)。そうすると、文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は、抗告の利益を有せず、本案事件の当事者であっても、即時抗告をすることができないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第64問 5)
本案訴訟の原告が申し立て、文書の所持者である第三者に対してされた文書提出命令に対し、本案訴訟の被告は不服の申立てをすることができる。
(H23 共通 第68問 4)
Aは、Y会社で工員として勤務していたが、工場で就業中に事故に遭って死亡したAの遺族であるXは、Y会社を被告として損害賠償を求める訴えを提起したが、事故の状況を立証するため、国の機関である労働基準監督署において保管されている調査報告書の提出を求める文書提出命令の申立てを検討している。
調査報告書について文書提出命令が出された場合、Y会社は、証拠調べの必要性がないことを理由として、即時抗告をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平12.12.14)は、「文書提出命令に対し証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることは許されない。」とした上で、「文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は、抗告の利益を有せず、本案事件の当事者であっても、即時抗告をすることができない。」としている。
Y社は調査報告書の所持者でも申立人でもないため、抗告の利益を有さず、当事者ではあるものの、即時抗告をすることはできない。
したがって、文書提出命令に対し証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることは許されないが、そもそもY社は即時抗告自体ができない。
(H27 予備 第42問 5)
判例によれば、第三者に対してされた文書提出命令に対し、文書提出命令の申立人ではない本案訴訟の当事者は、即時抗告をすることができない。
(R2 予備 第45問 5)
当事者は、第三者に対してされた文書提出命令に対して、即時抗告をすることができない。
(R3 予備 第40問 5)
証拠調べの必要性がないことを理由とする文書提出命令の申立ての却下決定に対しては、証拠調べの必要性があることを理由として即時抗告をすることはできないが、文書提出命令に対して、証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることはできる。
(正答)✕
(解説)
223条7項は、「文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。」と規定している。
これについて、判例(最決平12.3.10)は、「証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできない。」としている。
また、判例(最決平12.12.14)は、「文書提出命令に対し証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることは許されない…。」としている。
したがって、文書提出命令に対しても、証拠調べの必要性がないことを理由として即時抗告をすることはできない。