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民事訴訟法 当事者から主張されない消極的間接事実を認定すること 最三小判昭和46年6月29日
概要
請求原因事実または抗弁事実の存否に争いがある場合に、裁判所が右主張事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張責任のない事実を認定し、もって右請求原因事実または抗弁事実の立証なしとして排斥することは、認定された事実が当事者によって主張されていない場合でも、弁論主義に違反しない。
判例
事案:被告が主張した抗弁について、かかる抗弁事実と両立せず、かつ、原告に主張責任のない事実を認定してかかる抗弁を排斥した事案において、当事者の一定の主張を排斥するために当事者から主張されない他の事実を認定することと弁論主義の関係が問題となった。
判旨:「被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもっぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかったためであって、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。」
判旨:「被告が原告の主張する請求原因事実を否認し、または原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が右請求原因または抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって右請求原因たる主張または抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。けだし、右の場合に主張者たる当事者が不利益を受けるのはもっぱら自己の主張にかかる請求原因事実または抗弁事実の立証ができなかったためであって、別個の事実が認定されたことの直接の結果ではないからである。」
過去問・解説
(R2 予備 第39問 4)
保証債務履行請求訴訟において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合には、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所は、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることができる。
保証債務履行請求訴訟において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合には、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所は、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.6.29)は、本肢と同種の事案において、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。なぜならば、ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。
本肢において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合に、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所が、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることは、弁論主義に違反するものではなく、許される。弁済の抗弁の主要事実は、「訴求債権に対する弁済」であり、「訴求債権に対する弁済はない」との事実は、弁済の抗弁の主要事実との関係で否認の理由たる消極的間接事実にすぎないからである。
判例(最判昭46.6.29)は、本肢と同種の事案において、「原告が被告の抗弁事実を否認している場合に、事実審裁判所が…抗弁として主張された事実を証拠上肯認することができない事情として、右事実と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実を認定し、もって…抗弁の立証なしとして排斥することは、その認定にかかる事実が当事者によって主張されていない場合でも弁論主義に違反するものではない。」としている。なぜならば、ここでいう「抗弁として主張された事実…と両立せず、かつ、相手方に主張立証責任のない事実」とは、抗弁事実を否認するための消極的間接事実にすぎず、弁論主義の適用がないからである。
本肢において、被告が主張した弁済の事実を原告が否認している場合に、当事者が原告の被告に対する別の債権の存在を主張していないときであっても、裁判所が、その別の債権に対して被告による弁済がされたものであるとして、「請求債権に対する弁済はない。」との事実を判決の基礎とすることは、弁論主義に違反するものではなく、許される。弁済の抗弁の主要事実は、「訴求債権に対する弁済」であり、「訴求債権に対する弁済はない」との事実は、弁済の抗弁の主要事実との関係で否認の理由たる消極的間接事実にすぎないからである。