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民事訴訟法 数量的一部請求における訴訟物 最三小判昭和42年7月18日
概要
不法行為によって受傷した被害者が、その受傷について、相当期間経過後に、受傷当時には医学的に通常予想しえなかった治療が必要となり、その治療のため費用を支出することを余儀なくされるに至った場合には、かかる費用の損害賠償請求権について前訴の既判力は及ばない。
判例
事案:不法行為によって受傷した被害者が、相当期間経過後に、受傷当時に予想しえなかった治療が必要となったため、治療費用にかかる損害賠償を求めて訴えを提起した事案において、前訴の既判力が及ぶかが問題となった。
判旨:「1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合には、訴訟物は、右債権の一部の存否のみであって全部の存否ではなく、従って、右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である(当裁判所昭和35年(オ)第359号、同37年8月10日言渡第二小法廷判決、民集16巻8号1720頁参照)。ところで、記録によれば、所論の前訴…における被上告人の請求は、被上告人主張の本件不法行為により惹起された損害のうち、右前訴の最終口頭弁論期日たる同35年5月25日までに支出された治療費を損害として主張しその賠償を求めるものであるところ、本件訴訟における被上告人の請求は、前記の口頭弁論期日後にその主張のような経緯で再手術を受けることを余儀なくされるにいたったと主張し、右治療に要した費用を損害としてその賠償を請求するものであることが明らかである。右の事実によれば、所論の前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべきであり、原判決に所論の違法は存しない。」
判旨:「1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合には、訴訟物は、右債権の一部の存否のみであって全部の存否ではなく、従って、右一部の請求についての確定判決の既判力は残部の請求に及ばないと解するのが相当である(当裁判所昭和35年(オ)第359号、同37年8月10日言渡第二小法廷判決、民集16巻8号1720頁参照)。ところで、記録によれば、所論の前訴…における被上告人の請求は、被上告人主張の本件不法行為により惹起された損害のうち、右前訴の最終口頭弁論期日たる同35年5月25日までに支出された治療費を損害として主張しその賠償を求めるものであるところ、本件訴訟における被上告人の請求は、前記の口頭弁論期日後にその主張のような経緯で再手術を受けることを余儀なくされるにいたったと主張し、右治療に要した費用を損害としてその賠償を請求するものであることが明らかである。右の事実によれば、所論の前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべきであり、原判決に所論の違法は存しない。」
過去問・解説
(H21 司法 第69問 5)
交通事故による受傷に関して口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴判決が確定した後、前訴の原告が、前訴の口頭弁論終結時には医学的に予想できなかった後遺症が現れ、手術を余儀なくされたとして、当該手術による治療費についての損害賠償を求めて提起した後訴について、前訴確定判決の既判力は後訴の請求に関する判断に作用しない。
交通事故による受傷に関して口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴判決が確定した後、前訴の原告が、前訴の口頭弁論終結時には医学的に予想できなかった後遺症が現れ、手術を余儀なくされたとして、当該手術による治療費についての損害賠償を求めて提起した後訴について、前訴確定判決の既判力は後訴の請求に関する判断に作用しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴確定判決の既判力は、後遺症の請求に関する後訴の判断に作用しない。
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、口頭弁論終結時までに支出した治療費につき損害賠償を命じる前訴確定判決の既判力は、後遺症の請求に関する後訴の判断に作用しない。
(H30 予備 第41問 3)
XがYに対して交通事故による損害賠償として1000万円の支払を求める訴訟において、400万円の限度で請求を認容する判決が確定した場合に、XがYに対してその後に同一の交通事故による損害賠償を求めて提起した訴えにおいて、前訴の事実審の口頭弁論終結時までに予見することができなかった後遺障害がその後に発生したと主張することは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。
XがYに対して交通事故による損害賠償として1000万円の支払を求める訴訟において、400万円の限度で請求を認容する判決が確定した場合に、XがYに対してその後に同一の交通事故による損害賠償を求めて提起した訴えにおいて、前訴の事実審の口頭弁論終結時までに予見することができなかった後遺障害がその後に発生したと主張することは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、前訴の既判力は後訴に及ばないため、Xが後遺障害の事実を主張することも許される。
判例(最判昭42.7.18)は、本肢と同種の事案において、「前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばないというべき…。」としている。
したがって、前訴の既判力は後訴に及ばないため、Xが後遺障害の事実を主張することも許される。