①特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺の抗弁に理由がある場合には、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、請求額が残存額の範囲内であるときは請求の全額を、残存額を超えるときは残存額の限度で認容すべきである。
②特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺のため主張された自働債権の存否の判断は、金銭債権の総額から一部請求の額を控除した残額部分に対応する範囲については既判力を生じない。
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民事訴訟法 数量的一部請求と相殺の抗弁 最三小判平成6年11月22日
概要
判例
事案:金銭債権の一部を請求する訴訟の中で、相殺が主張された事案において、①いかなる額から控除すべきか及びいかなる範囲で請求を認容すべきか、②金銭債権の一部を請求する訴訟の中で、相殺のため主張された自働債権の存否の判断にいかなる範囲で既判力が生じるかなどが問題となった。
判旨:①「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。けだし、一部請求は、特定の金銭債権について、その数量的な一部を少なくともその範囲においては請求権が現存するとして請求するものであるので、右債権の総額が何らかの理由で減少している場合に、債権の総額からではなく、一部請求の額から減少額の全額又は債権総額に対する一部請求の額の割合で案分した額を控除して認容額を決することは、一部請求を認める趣旨に反するからである。」
②「一部請求において、確定判決の既判力は、当該債権の訴訟上請求されなかった残部の存否には及ばないとすること判例であり(最高裁昭和35年(オ)第359号同37年8月10日第二小法廷判決・民集16巻8号1720頁)、相殺の抗弁により自働債権の存否について既判力が生ずるのは、請求の範囲に対して『 相殺ヲ以テ対抗シタル額』に限られるから、当該債権の総額から自働債権の額を控除した結果残存額が一部請求の額を超えるときは、一部請求の額を超える範囲の自働債権の存否については既判力を生じない。したがって、一部請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第一審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」
判旨:①「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。けだし、一部請求は、特定の金銭債権について、その数量的な一部を少なくともその範囲においては請求権が現存するとして請求するものであるので、右債権の総額が何らかの理由で減少している場合に、債権の総額からではなく、一部請求の額から減少額の全額又は債権総額に対する一部請求の額の割合で案分した額を控除して認容額を決することは、一部請求を認める趣旨に反するからである。」
②「一部請求において、確定判決の既判力は、当該債権の訴訟上請求されなかった残部の存否には及ばないとすること判例であり(最高裁昭和35年(オ)第359号同37年8月10日第二小法廷判決・民集16巻8号1720頁)、相殺の抗弁により自働債権の存否について既判力が生ずるのは、請求の範囲に対して『 相殺ヲ以テ対抗シタル額』に限られるから、当該債権の総額から自働債権の額を控除した結果残存額が一部請求の額を超えるときは、一部請求の額を超える範囲の自働債権の存否については既判力を生じない。したがって、一部請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第一審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」
過去問・解説
(H18 司法 第62問 3)
明示的一部請求訴訟において、被告が相殺の抗弁を提出した場合は、一部請求額から反対債権の全額を控除し、控除後の残額があるときはその残額を算定して請求認容額を決めるべきである。
明示的一部請求訴訟において、被告が相殺の抗弁を提出した場合は、一部請求額から反対債権の全額を控除し、控除後の残額があるときはその残額を算定して請求認容額を決めるべきである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
(H26 共通 第71問 イ)
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。
裁判所は、Yの債務不履行に基づくXの1000万円の損害賠償債権は認められるが、Yから提出されたXに対する売買代金債権400万円を自働債権とする相殺の抗弁に理由があるとの心証を得たときは、Xの請求を棄却すべきである。
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。
裁判所は、Yの債務不履行に基づくXの1000万円の損害賠償債権は認められるが、Yから提出されたXに対する売買代金債権400万円を自働債権とする相殺の抗弁に理由があるとの心証を得たときは、Xの請求を棄却すべきである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
本肢において、総額の1000万円から自働債権の400万円を控除した残存額は600万円であり、請求額である400万円はこの範囲内である。
したがって、Xの請求を棄却すべきではなく、そのまま認容すべきである。
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
本肢において、総額の1000万円から自働債権の400万円を控除した残存額は600万円であり、請求額である400万円はこの範囲内である。
したがって、Xの請求を棄却すべきではなく、そのまま認容すべきである。
(H29 予備 第41問 オ)
裁判所は、特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺の抗弁に理由があると認めるときは、請求額から自働債権の額を控除した残存額の限度で請求を認容する判決をしなければならない。
裁判所は、特定の金銭債権の一部を請求する訴訟において、相殺の抗弁に理由があると認めるときは、請求額から自働債権の額を控除した残存額の限度で請求を認容する判決をしなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
判例(最判平6.11.22)は、「特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。」としている。
(R6 予備 第44問 イ)
明示的一部請求を認容した第1審判決に対して被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁に理由がある場合に、控訴裁判所が、債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却することは、不利益変更禁止の原則に反して許されない。
明示的一部請求を認容した第1審判決に対して被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁に理由がある場合に、控訴裁判所が、債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却することは、不利益変更禁止の原則に反して許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.11.22)は、「一部請求を認容した第1審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」としている。
判例(最判平6.11.22)は、「一部請求を認容した第1審判決に対し、被告のみが控訴し、控訴審において新たに主張された相殺の抗弁が理由がある場合に、控訴審において、まず当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額が第1審で認容された一部請求の額を超えるとして控訴を棄却しても、不利益変更禁止の原則に反するものではない。」としている。