①同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、1個である。
②不法行為に基づく1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができるものと解する。
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民事訴訟法 身体傷害による財産上及び精神上の損害の賠償請求における請求権及び訴訟物の個数 最一小判昭和48年4月5日
概要
判例
事案:原告は、不法行為に基づく損害賠償請求として、療養費、逸失利益、慰謝料の各損害の発生を主張し、療養費、慰謝料の全額と逸失利益のうち150万円の支払いを請求した。原判決は、第1審判決が認定した財産上の損害(療養費、逸失利益)につき同一の割合で過失相殺をしたところ、過失相殺をしたとしても、原告の請求金額のうち財産上の損害として示されていた金額を超えていたという事案において、①同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物の個数や、②過失相殺の基準となる金額が、損害の全額か、原告の請求金額かなどが問題となった。
判旨:①「本件のような同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個であると解すべきである。したがって、第1審判決は、被上告人の1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」
②「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。このように解することが一部請求をする当事者の通常の意思にもそうものというべきであって、所論のように、請求額を基礎とし、これから過失割合による減額をした残額のみを認容すべきものと解するのは、相当でない。したがって、右と同趣旨において前示のような過失相殺をし、被上告人の第1審における請求の範囲内において前示金額の請求を認容した原審の判断は、正当として是認することができる。」
判旨:①「本件のような同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個であると解すべきである。したがって、第1審判決は、被上告人の1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」
②「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。このように解することが一部請求をする当事者の通常の意思にもそうものというべきであって、所論のように、請求額を基礎とし、これから過失割合による減額をした残額のみを認容すべきものと解するのは、相当でない。したがって、右と同趣旨において前示のような過失相殺をし、被上告人の第1審における請求の範囲内において前示金額の請求を認容した原審の判断は、正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H18 司法 第62問 4)
明示的一部請求訴訟において過失相殺がされるべき場合、債権の全額を認定した上で、その全額から過失割合による減額をし、減額後の残額が請求額を超えなければこの残額を認容し、その残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容する判決をするべきである。
明示的一部請求訴訟において過失相殺がされるべき場合、債権の全額を認定した上で、その全額から過失割合による減額をし、減額後の残額が請求額を超えなければこの残額を認容し、その残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容する判決をするべきである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができる…。」としている。
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができる…。」としている。
(H20 司法 第55問 1)
Xが、Yの1個の不法行為によりXの身体に傷害を負ったとして、それによって生じた損害の賠償を1つの訴えによって求めた場合に、Xが損害項目として治療費、逸失利益及び慰謝料を主張しているときは、損害項目ごとに訴訟物を異にする。
Xが、Yの1個の不法行為によりXの身体に傷害を負ったとして、それによって生じた損害の賠償を1つの訴えによって求めた場合に、Xが損害項目として治療費、逸失利益及び慰謝料を主張しているときは、損害項目ごとに訴訟物を異にする。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である。」としている。
本肢において、治療費、遺失利益及び慰謝料は全て同一の事故により生じた同一の損害である。
したがって、損害項目ごとに訴訟物を異にするのではなく、訴訟物は1個である。
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である。」としている。
本肢において、治療費、遺失利益及び慰謝料は全て同一の事故により生じた同一の損害である。
したがって、損害項目ごとに訴訟物を異にするのではなく、訴訟物は1個である。
(H22 共通 第68問 3)
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
Xが、50万円の治療費及び200万円の精神的損害が発生したとして、250万円の損害賠償求めた場合において、証拠調べの結果、60万円の治療費、100万円の精神的損害が発生したと認定したときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じるにとどめなければならない。
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
Xが、50万円の治療費及び200万円の精神的損害が発生したとして、250万円の損害賠償求めた場合において、証拠調べの結果、60万円の治療費、100万円の精神的損害が発生したと認定したときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じるにとどめなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。とした上で、「1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」としている。
本肢において、50万円の治療費及び200万円の精神的損害を合計した250万円全体が1個の訴訟物であるため、250万円を超えて判決しなければよく、60万円の治療費と100万円の精神的損害を合計しても250万円は超えない。
したがって、150万円の支払いを命じるにとどめる必要はなく、160万円の支払いを命じることができる。
判例(最判昭48.4.5)は、本肢と同種の事案において、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。とした上で、「1個の請求のうちでその求める全額を認容したものであって、同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、右請求のうち、第1審判決の審判および上告人の控訴の対象となった範囲内において、その一部を認容したものというべきである。」としている。
本肢において、50万円の治療費及び200万円の精神的損害を合計した250万円全体が1個の訴訟物であるため、250万円を超えて判決しなければよく、60万円の治療費と100万円の精神的損害を合計しても250万円は超えない。
したがって、150万円の支払いを命じるにとどめる必要はなく、160万円の支払いを命じることができる。
(H22 共通 第68問 4)
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
事故の発生について自己に2割の過失があったと考えたXが、300万円の損害の一部請求である旨を明示して240万円の損害賠償を求めた場合において、裁判所が、Xには300万円の損害が発生していること及びXに5割の過失があることを認定するときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じなければならない。
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
事故の発生について自己に2割の過失があったと考えたXが、300万円の損害の一部請求である旨を明示して240万円の損害賠償を求めた場合において、裁判所が、Xには300万円の損害が発生していること及びXに5割の過失があることを認定するときは、裁判所は、Yに150万円の支払を命じなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
したがって、裁判所は、損害全額の300万円から過失割合5割の150万円を減額して、残額が請求額240万円を超えないため、その残額である150万円について、Yに支払を命じなければならない。
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
したがって、裁判所は、損害全額の300万円から過失割合5割の150万円を減額して、残額が請求額240万円を超えないため、その残額である150万円について、Yに支払を命じなければならない。
(R1 予備 第42問 1)
不法行為による人身に係る損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び休業損害300万円の支払を求める請求に対し、裁判所は、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決をすることができる。
不法行為による人身に係る損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び休業損害300万円の支払を求める請求に対し、裁判所は、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決をすることができる。
(正答)〇
(解説)
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて、判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢においては、400万円の請求額に対して350万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決は「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、処分権主義に反しないため、かかる判決をすることができる。
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて、判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は1個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢においては、400万円の請求額に対して350万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、慰謝料150万円及び休業損害200万円の支払を命ずる判決は「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、処分権主義に反しないため、かかる判決をすることができる。
(R4 予備 第42問 5)
同一事故により生じた不法行為による損害賠償請求権に基づき、治療費200万円、逸失利益500万円、慰謝料300万円の合計1000万円の支払を求める訴訟において、裁判所は、治療費を150万円、逸失利益を400万円、慰謝料を400万円とそれぞれ認定して合計950万円の支払を命ずる判決をすることはできない。
同一事故により生じた不法行為による損害賠償請求権に基づき、治療費200万円、逸失利益500万円、慰謝料300万円の合計1000万円の支払を求める訴訟において、裁判所は、治療費を150万円、逸失利益を400万円、慰謝料を400万円とそれぞれ認定して合計950万円の支払を命ずる判決をすることはできない。
(正答)✕
(解説)
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢は、1000万円の請求額に、950万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、合計950万円の支払を命ずる判決は、「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、許される。
246条は、「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」として、処分権主義について規定している。
これについて判例(最判昭48.4.5)は、「同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせて請求する場合にも、訴訟物は1個である…。」としている。
本肢は、1000万円の請求額に、950万円の支払を命じるに過ぎず、判決の総額が請求額を超えていない。
したがって、合計950万円の支払を命ずる判決は、「当事者が申し立てていない事項について」判決をしたことにならず、許される。
(R6 予備 第34問 2)
不法行為による損害賠償請求権に基づいて損害の総額1000万円から2割の過失相殺をした800万円の支払を求めることが明示された訴訟において、裁判所は、総額1000万円の損害が認められ、5割の過失相殺をすべきときは、請求額800万円から5割の過失相殺をした400万円の支払を命ずる判決をしなければならない。
不法行為による損害賠償請求権に基づいて損害の総額1000万円から2割の過失相殺をした800万円の支払を求めることが明示された訴訟において、裁判所は、総額1000万円の損害が認められ、5割の過失相殺をすべきときは、請求額800万円から5割の過失相殺をした400万円の支払を命ずる判決をしなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
本肢の場合、総額から過失相殺の額である500万円を減額した残額は500万円である。
したがって、一部請求の額800万円が残額の500万円を超えるから、裁判所は、残額500万円の限度で請求を認容すべきである。
判例(最判昭48.4.5)は、「1個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額を超えないときは右残額を認容し、残額が請求額を超えるときは請求の全額を認容することができる。」としている。
本肢の場合、総額から過失相殺の額である500万円を減額した残額は500万円である。
したがって、一部請求の額800万円が残額の500万円を超えるから、裁判所は、残額500万円の限度で請求を認容すべきである。