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民事訴訟法 金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することの許否 最二小判平成10年6月12日

概要
金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない。
判例
事案:金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が、残部請求の訴えを提起した事案において、かかる残部請求が許されないかが問題となった。

判旨:「1個の金銭債権の数量的一部請求は、当該債権が存在しその額は一定額を下回らないことを主張して右額の限度でこれを請求するものであり、債権の特定の一部を請求するものではないから、このような請求の当否を判断するためには、おのずから債権の全部について審理判断することが必要になる。すなわち、裁判所は、当該債権の全部について当事者の主張する発生、消滅の原因事実の存否を判断し、債権の一部の消滅が認められるときは債権の総額からこれを控除して口頭弁論終結時における債権の現存額を確定し(最高裁平成2年(オ)第1146号同6年11月22日第三小法廷判決・民集48巻7号1355頁参照)、現存額が一部請求の額以上であるときは右請求を認容し、現存額が請求額に満たないときは現存額の限度でこれを認容し、債権が全く現存しないときは右請求を棄却するのであって、当事者双方の主張立証の範囲、程度も、通常は債権の全部が請求されている場合と変わるところはない。数量的一部請求を全部又は一部棄却する旨の判決は、このように債権の全部について行われた審理の結果に基づいて、当該債権が全く現存しないか又は一部として請求された額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものであって、言い換えれば、後に残部として請求し得る部分が存在しないとの判断を示すものにほかならない。したがって、右判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり、前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。以上の点に照らすと、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 共通 第71問 ウ)
XはYと締結した自らを注文主とする建物建築請負契約をYの債務不履行を理由に工事完成前に解除し、Yを被告として、総額1000万円の損害賠償債権のうちの一部であることを明示して400万円の支払を求める訴えを提起した。 
Yの債務不履行が認められないとしてXの請求を棄却する判決が確定したときは、XがYに対し残部の支払を求める訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.6.12)は、「金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない…。」としている。
したがって、Yの債務不履行が認められないとしてXの請求を棄却する判決が確定したときは、XがYに対し残部の支払を求める訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない。

(H30 予備 第41問 2)
XがYに対して1000万円の貸金債権の一部として100万円の支払を求める訴訟において、1000万円の貸付けはあったが940万円は弁済されたとして、60万円の限度で請求を認容する判決が確定した場合に、Xは、Yに対し、貸金1000万円のうち前訴で請求しなかった900万円の支払を求める訴えを提起することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.6.12)は、「金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない…。」としている。
したがって、Xが前訴において請求しなかった900万円の支払を求める訴えを提起することは、特段の事情のない限り、信義則に反して許されない。
総合メモ
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