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証拠能力

同種前科による立証 最二小判平成24年9月7日

概要
前科証拠は、自然的関連性があることに加え、証明しようとする事実について、実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに証拠能力が肯定され、前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合は、前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであるときに証拠能力が肯定される。
判例
事案:現住建造物等放火の罪で起訴された被告人が犯人性を否認したため、検察官が、被告人の犯人性を立証するために、被告人の現住建造物等放火の前科を証拠として使用した事案において、前科証拠を犯人性を立証に用いる場合の証拠能力の有無が問題となった。

判旨:「前科も1つの事実であり、前科証拠は、一般的には犯罪事実について、様々な面で証拠としての価値(自然的関連性)を有している。反面、前科、特に同種前科については、被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく、そのために事実認定を誤らせるおそれがあり、また、これを回避し、同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため、当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど、その取調べに付随して争点が拡散するおそれもある。したがって、前科証拠は、単に証拠としての価値があるかどうか、言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく、前科証拠によって証明しようとする事実について、実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されると解するべきである。本件のように、前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合についていうならば、前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって、初めて証拠として採用できるものというべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第38問 ア)
常習累犯窃盗罪のように前科が構成要件の一部を構成している場合や、常習賭博罪のように構成要件としての常習性を認定する場合でなければ、被告人の同種前科をもって、犯罪事実を立証することは許されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平24.9.7)は、前科証拠について、「前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって、初めて証拠として採用できる...。」としている。
したがって、本肢で列挙された場合のほかにも、被告人の同種前科をもって、犯罪事実を立証することが許される場合がある。
総合メモ

共犯者の自白 最大判昭和33年5月28日

概要
共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であっても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であって、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法第38条2項のごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法第38条第3項にいわゆる「本人の自白」と同一視し、またはこれに準ずるものではない。
判例
事案:傷害致死罪等の共謀共同正犯に問われた被告人と共同被告人の裁判において、共同被告人の自白を、被告人との関係で証拠として採用した事案において、共犯者の自白に補強法則(憲法38条3項、法319条2項)が適用されるか否かが問題となった。

判旨:「憲法38条2項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができないと規定して、かかる自白の証拠能力を否定しているが、然らざる自白の証拠能力を肯定しているのである。しかし、実体的真実でない架空な犯罪事実が時として被告人本人の自白のみによって認定される危険と弊害とを防止するため、特に、同条3項は、何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられないと規定して、被告人本人の自白だけを唯一の証拠として犯罪事実全部を肯認することができる場合であっても、それだけで有罪とされ又は刑罰を科せられないものとし、かかる自白の証明力(すなわち証拠価値)に対する自由心証を制限し、もって、被告人本人を処罰するには、さらに、その自白の証明力を補充し又は強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要するものとしているのである。すなわち、憲法38条3項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定又は制限したものではなく、また、その証明力が犯罪事実全部を肯認できない場合の規定でもなく、かえって、証拠能力ある被告人本人の供述であって、しかも、本来犯罪事実全部を肯認することのできる証明力を有するもの、換言すれば、いわゆる完全な自白のあることを前提とする規定と解するを相当とし、従って、わが刑訴337条(現:318条)で採用している証拠の証明力に対する自由心証主義に対する例外規定としてこれを厳格に解釈すべきであって、共犯者の自白をいわゆる『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない。けだし共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であっても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であって、被害者その他の純然たる証人とその本質を異にするものではないからである。されば、かかる共犯者又は共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法38条2項のごとき証拠能力を有しないものでない限り、自由心証に委かさるべき独立、完全な証明力を有するものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(H26 共通 第30問 エ)
【事例】
 被告人Aと被告人Bは、共謀の上、A方で覚せい剤を所持したとの覚せい剤取締法違反に係る公訴事実で起訴された。公判廷では、Aは、Bと共に犯行に及んだことを認める旨の供述をしているが、Bは、自己の関与を否定する旨の供述をしている。検察官は、A方から押収された覚せい剤、同覚せい剤の鑑定書、A方の捜索差押調書等の証拠調べを請求している。

Bについては、Aの公判廷における自白を根拠に有罪とされることがあるが、Aについては、Bとの共同所持の事実の補強証拠が取調べ請求されていないから、このままでは共同所持の事実で有罪とされることはない。

(正答)

(解説)
Aは、Bと共に犯行に及んだことを認める旨の供述をしており、これはAの自白に当たる。しかし、Aについては、Aの自白の他に補強証拠が存在しない以上、Aについては共同所持の事実で有罪とされることはない。これに対し、Bについては、Aの自白が存在する。
判例(最大判昭33.5.28)は、「共犯者の自白をいわゆる『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない。」としており、被告人との関係で、共犯者の自白に補強証拠は不要である。
したがって、Bについては、Aの公判廷における自白を根拠に有罪とされることがある。

(R6 予備 第14問 オ)
共謀共同正犯における共謀の事実は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」に含まれるから、刑事訴訟法の規定により証拠能力が認められ、かつ、公判廷における適式な証拠調べを経た証拠による証明を要する。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭33.5.28)は、「『共謀』または『謀議』は、共謀共同正犯における『罪となるべき事実』にほかならないから、これを認めるためには厳格な証明によらなければならないこというまでもない。」としている。
したがって、刑事訴訟法の規定により証拠能力が認められ、かつ、公判廷における適式な証拠調べを経た証拠による証明を要する。

(R6 予備 第24問 ア)
【設問】と【結論】を前提とした場合、以下の【記述】は正しいか。

【設問】
①被告人が犯行を否認している場合、被告人と共に犯行を行った旨の共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることが許されるか。
②共犯者だけでなく、被告人も犯行を行ったことを認めている場合、共犯者の自白で被告人の自白を補強して被告人を有罪とすることが許されるか。
【結論】
Ⅰ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許されない。
Ⅱ.①の場合には、被告人を有罪とすることが許されないが、②の場合には、被告人を有罪とす ることが許される。
Ⅲ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許される。
【記述】
共犯者に対しては反対尋問が可能であり、反対尋問を経ない被告人の自白より反対尋問を経 た共犯者の自白の証明力が強いのは当然であると考えると、結論Ⅰに結び付きやすい。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最大判昭33.5.28)は、「共犯者の自白をいわゆる『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない。」として、共犯者の自白と補強証拠の要否について共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることができるとする不要説に立っている。
不要説につき学説は、補強証拠法則は自由心象主義(318条)の例外で限定的に解釈すべき、共犯者に対しては反対尋問が可能で被告人の自白よりも証明力が強い、結局のところ犯罪の証明に至るためにはほかに補強証拠を必要とするこのになるであろうから、必ず必要とする意義は薄いことなどを理由として挙げる。
必要説につき学説は、他に補強証拠がないなら否認した被告人が有罪で自白した共犯者が無罪という非常識な結果となる、共犯者の供述は責任転嫁の危険が大きい、被告人と共犯者の自白を区別する理由に乏しいことなどなどを理由として挙げる。
【記述】アは不要説に基づいているため、結論Ⅲと結びつきやすい。

(R6 予備 第24問 イ)
【設問】と【結論】を前提とした場合、以下の【記述】は正しいか。

【設問】
①被告人が犯行を否認している場合、被告人と共に犯行を行った旨の共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることが許されるか。
②共犯者だけでなく、被告人も犯行を行ったことを認めている場合、共犯者の自白で被告人の自白を補強して被告人を有罪とすることが許されるか。
【結論】
Ⅰ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許されない。
Ⅱ.①の場合には、被告人を有罪とすることが許されないが、②の場合には、被告人を有罪とす ることが許される。
Ⅲ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許される。
【記述】
刑事訴訟法第319条第2項の規定は、自由心証主義の例外であるから限定的に解すべきで あると考えると、結論Ⅰに結び付きやすい。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最大判昭33.5.28)は、「共犯者の自白をいわゆる『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない。」として、共犯者の自白と補強証拠の要否について共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることができるとする不要説に立っている。
不要説につき学説は、補強証拠法則は自由心象主義(318条)の例外で限定的に解釈すべき、共犯者に対しては反対尋問が可能で被告人の自白よりも証明力が強い、結局のところ犯罪の証明に至るためにはほかに補強証拠を必要とするこのになるであろうから、必ず必要とする意義は薄いことなどを理由として挙げる。
必要説につき学説は、他に補強証拠がないなら否認した被告人が有罪で自白した共犯者が無罪という非常識な結果となる、共犯者の供述は責任転嫁の危険が大きい、被告人と共犯者の自白を区別する理由に乏しいことなどなどを理由として挙げる。
【記述】イは不要説に基づいているため、結論Ⅲと結びつきやすい。

(R6 予備 第24問 ウ)
【設問】と【結論】を前提とした場合、以下の【記述】は正しいか。

【設問】
①被告人が犯行を否認している場合、被告人と共に犯行を行った旨の共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることが許されるか。
②共犯者だけでなく、被告人も犯行を行ったことを認めている場合、共犯者の自白で被告人の自白を補強して被告人を有罪とすることが許されるか。
【結論】
Ⅰ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許されない。
Ⅱ.①の場合には、被告人を有罪とすることが許されないが、②の場合には、被告人を有罪とす ることが許される。
Ⅲ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許される。
【記述】
結論Ⅱとする立場は、憲法第38条第3項の「本人の自白」に共犯者の自白も含まれるのは、被告人が否認し、共犯者が自白している場合に限られると考えることになる。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最大判昭33.5.28)は、「共犯者の自白をいわゆる『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない。」として、共犯者の自白と補強証拠の要否について共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることができるとする不要説に立っている。
不要説につき学説は、補強証拠法則は自由心象主義(318条)の例外で限定的に解釈すべき、共犯者に対しては反対尋問が可能で被告人の自白よりも証明力が強い、結局のところ犯罪の証明に至るためにはほかに補強証拠を必要とするこのになるであろうから、必ず必要とする意義は薄いことなどを理由として挙げる。
必要説につき学説は、他に補強証拠がないなら否認した被告人が有罪で自白した共犯者が無罪という非常識な結果となる、共犯者の供述は責任転嫁の危険が大きい、被告人と共犯者の自白を区別する理由に乏しいことなどなどを理由として挙げる。
また、憲法38条3項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」と規定している。
憲法第38条第3項の「本人の自白」に共犯者の自白も含まれるのは、 被告人が否認し、共犯者が自白している場合に限られると考えると、被告人が否認している設問①は被告人を有罪とできないが、被告人が自白している設問②は被告人を有罪とすることが許されることとなる。

(R6 予備 第24問 エ)
【設問】と【結論】を前提とした場合、以下の【記述】は正しいか。

【設問】
①被告人が犯行を否認している場合、被告人と共に犯行を行った旨の共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることが許されるか。
②共犯者だけでなく、被告人も犯行を行ったことを認めている場合、共犯者の自白で被告人の自白を補強して被告人を有罪とすることが許されるか。
【結論】
Ⅰ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許されない。
Ⅱ.①の場合には、被告人を有罪とすることが許されないが、②の場合には、被告人を有罪とす ることが許される。
Ⅲ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許される。
【記述】
自白の証明力の過大評価を防止するという刑事訴訟法第319条第2項の規定の趣旨からすれば、被告人の自白と共犯者の自白を区別する理由がないと考えると、結論Ⅲに結び付きやすい。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最大判昭33.5.28)は、「共犯者の自白をいわゆる『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない。」として、共犯者の自白と補強証拠の要否について共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることができるとする不要説に立っている。
不要説につき学説は、補強証拠法則は自由心象主義(318条)の例外で限定的に解釈すべき、共犯者に対しては反対尋問が可能で被告人の自白よりも証明力が強い、結局のところ犯罪の証明に至るためにはほかに補強証拠を必要とするこのになるであろうから、必ず必要とする意義は薄いことなどを理由として挙げる。
必要説につき学説は、他に補強証拠がないなら否認した被告人が有罪で自白した共犯者が無罪という非常識な結果となる、共犯者の供述は責任転嫁の危険が大きい、被告人と共犯者の自白を区別する理由に乏しいことなどなどを理由として挙げる。
【記述】エは必要説に基づいているため、結論Ⅰ又はⅡと結びつきやすい。

(R6 予備 第24問 オ)
【設問】と【結論】を前提とした場合、以下の【記述】は正しいか。

【設問】
①被告人が犯行を否認している場合、被告人と共に犯行を行った旨の共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることが許されるか。
②共犯者だけでなく、被告人も犯行を行ったことを認めている場合、共犯者の自白で被告人の自白を補強して被告人を有罪とすることが許されるか。
【結論】
Ⅰ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許されない。
Ⅱ.①の場合には、被告人を有罪とすることが許されないが、②の場合には、被告人を有罪とす ることが許される。
Ⅲ.①及び②のいずれの場合も、被告人を有罪とすることが許される。
【記述】
結論Ⅲとする立場に対しては、ほかに補強証拠がない限り、否認した被告人が有罪、自白した共犯者が無罪になるという非常識な結論が生じかねないとの批判がある。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最大判昭33.5.28)は、「共犯者の自白をいわゆる『本人の自白』と同一視し又はこれに準ずるものとすることはできない。」として、共犯者の自白と補強証拠の要否について共犯者の自白のみで被告人を有罪とすることができるとする不要説に立っている。
不要説につき学説は、補強証拠法則は自由心象主義(318条)の例外で限定的に解釈すべき、共犯者に対しては反対尋問が可能で被告人の自白よりも証明力が強い、結局のところ犯罪の証明に至るためにはほかに補強証拠を必要とするこのになるであろうから、必ず必要とする意義は薄いことなどを理由として挙げる。
必要説につき学説は、他に補強証拠がないなら否認した被告人が有罪で自白した共犯者が無罪という非常識な結果となる、共犯者の供述は責任転嫁の危険が大きい、被告人と共犯者の自白を区別する理由に乏しいことなどなどを理由として挙げる。
【記述】エは必要説に基づいているため、結論Ⅲに対する批判になりうる。
総合メモ

盗難に気づいてから作成された被害顛末書 最一小判昭和32年5月23日

概要
犯人みずから当該物件を盗んだことを認めているのであるから、盗難にあったことは間違いないものと思う旨の記載がある被害顛末書でも、それに詳記されている被害物件の保管場所、保管者、保管状況等によっては、その補強証拠としての価値を認めて差支えない。
判例
事案:被告人が窃盗を自白したことから捜査が開始され、捜査が開始されたことをきっかけに被害者が盗難に気づき、被害顛末書を提出した事案において、かかる顛末書が補強証拠たり得るかが問題となった。

判旨:「所論顛末書は、被害物件の保管場所、保管者、保管状況等を詳述し、被告人の公判廷における自白を補強するに足りるものと認められる...。」
過去問・解説
(H24 司法 第32問 エ)
【事例】
 甲は、平成23年4月3日、H警察署を訪れ、同署司法警察員Xに対し、「乙と一緒にV1を殺害する計画を立てた。その計画は、乙がV1をH市内の岸壁に呼び出し、私が普通乗用自動車を運転してV1を跳ね飛ばして殺害し、V1の死体を海に捨てるというものであった。実際、私は、この計画どおり、平成23年2月3日午後9時頃、前記岸壁において、普通乗用自動車を運転し、乙が呼び出したV1を跳ね飛ばして殺害し、乙と一緒にV1の死体を海に捨てた。ちなみに、私は、これまで、一度も運転免許を取得したことがない。また、私は、平成22年12月8日、H市内にあるアパートの一室に侵入して現金10万円と時計1個を盗んだ。その後に確認したところ、私が盗みに入ったアパートの住人はV2だと分かった。」などと、道路交通法違反(無免許運転)、殺人、死体遺棄、住居侵入、窃盗の罪を自白した。そこで、司法警察員Xは、この自白を内容とする供述調書を作成した。その後、甲は、平成23年4月5日、司法警察員Xに述べたことと同じ内容を記載した知人A宛ての手紙を作成した上、これをAに郵送した。

甲を住居侵入、窃盗の罪で有罪とするには、平成23年4月3日より前にV2が前記被害を届けていることについての補強証拠が必要不可欠であり、前記甲の自白を端緒に捜査を開始した結果、V2が前記被害に気付いて被害を届けた場合、甲を住居侵入、窃盗の罪で有罪とする余地はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭32.5.23)は、「所論顛末書は、被害物件の保管場所、保管者、保管状況等を詳述し、被告人の公判廷における自白を補強するに足りるものと認められる...。」として、被告人の自白後に作成された補強証拠に証拠適格を認めている。
したがって、甲の自白を端緒に捜査が開始された結果、V2が被害に気がつき被害届を提出した場合、当該被害届に補強証拠適格が認められるため、甲を住居侵入・窃盗の罪で有罪としうる。
総合メモ

他の機会における自白 最大判昭和25年7月12日

概要
旧刑訴の適用を受ける事件について、第2審の裁判所が、その被告人の第1審公判調書中の供述記載(自白)と司法警察官訊問調書中の供述記載(自白)とを証拠として有罪の認定をすることは、憲法第38条第3項及び刑訴応急措置法第10条第3項に違反する。
判例
事案:第2審は、第1審における被告人の自白と、司法警察官作成供述調書中の被告人の自白のみをもって被告人を有罪とした事案において、同一被告人の異なる時点の自白が補強証拠となるか否かが問題となった。

判旨:「原判決は、判示第1の事実を認定するに当り、(1)第1審公判調書中の被告人の供述記載と(2)被告人に対する司法警察官の尋問調書中の供述記載を証拠として採っている。当該判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいわゆる『本人の自白』に含まれないことは判例の示すとおりである(昭和23年(れ)168号、同年7月29日大法廷、判例集2巻9号1014頁)。しかしながら、第1審の公判廷における被告人の供述は、これと異り前記『本人の自白』に含まれるから、独立して完全な証拠能力を有しないので、有罪を認定するには他の補強証拠を必要とするのである。しかるに、本件においてはこれと司法警察官に対する被告人の供述記載(これも補強証拠を要する)とによって有罪を認定している。かように、互に補強証拠を要する同一被告人の供述を幾ら集めてみたところで所詮有罪を認定するわけにはいかない道理である。」
過去問・解説
(H24 司法 第32問 ウ)
【事例】
 甲は、平成23年4月3日、H警察署を訪れ、同署司法警察員Xに対し、「乙と一緒にV1を殺害する計画を立てた。その計画は、乙がV1をH市内の岸壁に呼び出し、私が普通乗用自動車を運転してV1を跳ね飛ばして殺害し、V1の死体を海に捨てるというものであった。実際、私は、この計画どおり、平成23年2月3日午後9時頃、前記岸壁において、普通乗用自動車を運転し、乙が呼び出したV1を跳ね飛ばして殺害し、乙と一緒にV1の死体を海に捨てた。ちなみに、私は、これまで、一度も運転免許を取得したことがない。また、私は、平成22年12月8日、H市内にあるアパートの一室に侵入して現金10万円と時計1個を盗んだ。その後に確認したところ、私が盗みに入ったアパートの住人はV2だと分かった。」などと、道路交通法違反(無免許運転)、殺人、死体遺棄、住居侵入、窃盗の罪を自白した。そこで、司法警察員Xは、この自白を内容とする供述調書を作成した。その後、甲は、平成23年4月5日、司法警察員Xに述べたことと同じ内容を記載した知人A宛ての手紙を作成した上、これをAに郵送した。

甲を殺人、死体遺棄の罪で有罪とするためには、Aに郵送された手紙以外の補強証拠が必要不可欠であり、甲の供述調書及びAに郵送された手紙以外の証拠がない場合には、甲を殺人、死体遺棄の罪で有罪とする余地はない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭25.7.12)は、「互に補強証拠を要する同一被告人の供述を幾ら集めてみたところで所詮有罪を認定するわけにはいかない道理である。」として、同一人の供述は、他の機会になされたその者の供述の補強証拠とならないことを示している。
本肢におけるAに郵送された手紙、甲の供述調書は、共に甲の自白を内容としているため、共に補強証拠を要する。
したがって、甲の供述調書及びAに郵送された手紙以外の証拠がない場合には、甲を殺人、死体遺棄の罪で有罪とする余地はない。
総合メモ

補強の程度 最二小判昭和24年4月30日

概要
自白を補強する証拠は、必ずしも自白にかかる犯罪構成事実の全部にわたる必要はなく、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りる。
判例
事案:強盗傷害事件において、裁判所が、被告人の自白の他に、被告人が被害者に対して暴行を加え、傷害を負わせたという内容の供述調書しか存在しない場合に、強盗傷害罪で有罪とした事案において、補強法則により要求される補強の程度が問題となった。

判旨:「原判決は、被告人の自白のみによって所論判示事実を認定したものではなく、被告人の自白の外にAに対する司法警察官の聴取書中原判示の供述記載を補強証拠としてこれを綜合して認定したものである。そして右聴取書の記載は、被告人がAに暴行を加え因って同人に傷害を与えたという事実を証するだけであって、原判示の犯罪事実即ち強盗傷人罪の全部を証するものではない。しかし自白を補強すべき証拠は必ずしも自白にかかる犯罪構成事実の全部に亘ってもれなくこれを裏付けするものであることを要しないのであって、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足るのである。」
過去問・解説
(H21 司法 第37問 エ)
被告人は、被害者Dに暴行を加えて金員を強取し、その際、同暴行により被害者Dに傷害を負わせた事実で強盗致傷罪により起訴された。被告人の自白の他に、被告人から暴行を受けて傷害を負った事実についての記載しかない被害者Dの供述調書しかない場合であっても、被告人を、強盗致傷罪で有罪にできる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.4.30)は、本肢と同種の事案において、「自白を補強すべき証拠は必ずしも自白にかかる犯罪構成事実の全部に亘ってもれなくこれを裏付けするものであることを要しないのであって、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足るのである。」として、被害者の供述調書は、被告人の自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであるとしている。
したがって、Dの供述調書も、補強証拠として許容されるから、それのみで被告人を強盗致傷罪で有罪にできる。

(H24 司法 第32問 イ)
【事例】
 甲は、平成23年4月3日、H警察署を訪れ、同署司法警察員Xに対し、「乙と一緒にV1を殺害する計画を立てた。その計画は、乙がV1をH市内の岸壁に呼び出し、私が普通乗用自動車を運転してV1を跳ね飛ばして殺害し、V1の死体を海に捨てるというものであった。実際、私は、この計画どおり、平成23年2月3日午後9時頃、前記岸壁において、普通乗用自動車を運転し、乙が呼び出したV1を跳ね飛ばして殺害し、乙と一緒にV1の死体を海に捨てた。ちなみに、私は、これまで、一度も運転免許を取得したことがない。また、私は、平成22年12月8日、H市内にあるアパートの一室に侵入して現金10万円と時計1個を盗んだ。その後に確認したところ、私が盗みに入ったアパートの住人はV2だと分かった。」などと、道路交通法違反(無免許運転)、殺人、死体遺棄、住居侵入、窃盗の罪を自白した。そこで、司法警察員Xは、この自白を内容とする供述調書を作成した。その後、甲は、平成23年4月5日、司法警察員Xに述べたことと同じ内容を記載した知人A宛ての手紙を作成した上、これをAに郵送した。

甲を殺人、死体遺棄の罪で有罪とするには、V1の死体を写真撮影した写真撮影報告書等V1の死体の発見を前提とする補強証拠が必要不可欠であり、V1の死体を発見できなかった場合には、甲を殺人、死体遺棄の罪で有罪とする余地はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.4.30)は、本肢と同種の事案において、「自白を補強すべき証拠は必ずしも自白にかかる犯罪構成事実の全部に亘ってもれなくこれを裏付けするものであることを要しないのであって、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足るのである。」としている。
したがって、甲の自白を裏付ける証拠であるV1の死体の発見を前提とする補強証拠が必要不可欠であるというわけではなく、甲の自白にかかる事実の真実性を保障しうる補強証拠があれば足りる。
総合メモ

盗品等関与罪 最三小決昭和29年5月4日

概要
被告人の公判廷における自白と盗難被害届とによって盗品等罪の犯罪事実を認定しても、319条2項に違反しない。
判例
事案:被告人の自白及び盗難被害者の盗難被害届から被告人に盗品等有償譲受けの罪で有罪としたことところ、盗難被害届が同罪の補強証拠たり得るかが問題となった。

判旨:「賍物故買の事実についての被告人の公判廷における自白は、被害者の盗難被害届によって、これを補強することができる...。」
過去問・解説
(H21 司法 第37問 ウ)
被告人は、盗品の時計を、それが盗品であることを知りながら、有償で買い受けた事実で盗品等有償譲受けの罪により起訴された。盗難被害者C作成の当該時計についての盗難被害届の他には被告人の自白しか存在しない場合でも、被告人を、盗品等有償譲受けの罪で有罪にできる。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最決昭29.5.4)は、「賍物故買の事実についての被告人の公判廷における自白は、被害者の盗難被害届によって、これを補強することができる...。」としている。
したがって、盗難被害者C作成の当該時計についての盗難被害届の他には被告人の自白しか存在しない場合でも、被告人を、盗品等有償譲受けの罪で有罪にできる。
総合メモ

無免許運転罪 最一小判昭和42年12月21日

概要
道路交通法64条、118条1項1号のいわゆる無免許運転の犯罪事実を認定するにあたっては、運転行為のみならず、運転免許を受けていなかったという点についても、被告人の自白のほかに、補強証拠の存在することを要するものと解すべきである。
判例
事案:無免許運転の罪において、運転免許を受けていなかったという事実について、自白の他に補強証拠なしに有罪としうるかが争われた。

判旨:「無免許運転の罪においては、運転行為のみならず、運転免許を受けていなかったという事実についても、被告人の自白のほかに、補強証拠の存在することを要するものといわなければならない。」
過去問・解説
(H21 司法 第37問 イ)
被告人は、公安委員会による運転免許を受けないで普通乗用自動車を運転した事実で道路交通法違反の無免許運転の罪により起訴された。被告人の運転行為を目撃した旨の目撃者Bの供述調書の他には被告人の自白しか存在しない場合でも、被告人を、無免許運転の罪により有罪にできる。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最判昭42.12.21)は、「無免許運転の罪においては、運転行為のみならず、運転免許を受けていなかったという事実についても、被告人の自白のほかに、補強証拠の存在することを要する…。」としている。
したがって、目撃者Bの供述調書の他には被告人の自白しか存在しない場合、被告人を無免許運転の罪により有罪にできず、有罪とするには運転免許を受けていなかったことについても補強証拠が要求される。

(H24 司法 第32問 ア)
【事例】
 甲は、平成23年4月3日、H警察署を訪れ、同署司法警察員Xに対し、「乙と一緒にV1を殺害する計画を立てた。その計画は、乙がV1をH市内の岸壁に呼び出し、私が普通乗用自動車を運転してV1を跳ね飛ばして殺害し、V1の死体を海に捨てるというものであった。実際、私は、この計画どおり、平成23年2月3日午後9時頃、前記岸壁において、普通乗用自動車を運転し、乙が呼び出したV1を跳ね飛ばして殺害し、乙と一緒にV1の死体を海に捨てた。ちなみに、私は、これまで、一度も運転免許を取得したことがない。また、私は、平成22年12月8日、H市内にあるアパートの一室に侵入して現金10万円と時計1個を盗んだ。その後に確認したところ、私が盗みに入ったアパートの住人はV2だと分かった。」などと、道路交通法違反(無免許運転)、殺人、死体遺棄、住居侵入、窃盗の罪を自白した。そこで、司法警察員Xは、この自白を内容とする供述調書を作成した。その後、甲は、平成23年4月5日、司法警察員Xに述べたことと同じ内容を記載した知人A宛ての手紙を作成した上、これをAに郵送した。

甲を道路交通法違反(無免許運転)の罪で有罪とするには、甲が無免許であることについての補強証拠が必要不可欠であり、この証拠がない限り、甲を道路交通法違反(無免許運転)の罪で有罪とする余地はない。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最判昭42.12.21)は、「無免許運転の罪においては、運転行為のみならず、運転免許を受けていなかったという事実についても、被告人の自白のほかに、補強証拠の存在することを要する…。」としている。
したがって、甲を道路交通法違反(無免許運転)の罪で有罪とするには、甲が無免許であることについての補強証拠が必要不可欠であり、この証拠がない限り、甲を道路交通法違反(無免許運転)の罪で有罪とする余地はない。
総合メモ

窃盗罪 最二小判昭和26年3月9日

概要
窃盗犯人が被告人であることの証拠は被告人の自白だけであっても、被害者の始末書に窃盗被害の日時及び被害物件等について被告人の自白にかかる事実を裏書するに足りる記載がある以上、右自白と始末書の記載を総合して被告人に窃盗の罪を認めても、違憲違法ではない。
判例
事案:被告人の自白及び被害日時・被害物件等を申告した窃盗被害者Vの窃盗被害始末書から被告人に窃盗の罪で有罪としたところ、かかる被害始末書が補強証拠たり得るかが問題となった。

判旨:「Vの被害始末書には、窃盗被害の日時及び被害物件等につき、被告人の自白にかかる原審認定事実を裏書するに足りる記載があるから、原判決は所論の如く被告人の自白だけで被告人の罪責を認めたものではない。そして、かかる場合犯人が被告人であることの証拠が自白のみであっても違憲違法でないことは当裁判所大法廷判決(昭和23年(れ)1328号、同24年11月2日言渡集3巻11号1691頁)に徴して明かである。」
過去問・解説
(H21 司法 第37問 ア)
被告人は、被害者A所有の現金50万円を窃取した事実で窃盗罪により起訴された。被告人の自白の他には、被害者A作成の現金50万円についての盗難被害届しか存在しない場合でも、被告人を窃盗罪で有罪とすることは許される。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最判昭26.3.9)は、本肢と同種の事案において、「窃盗被害始末書には、窃盗被害の日時及び被害物件等につき、被告人の自白にかかる原審認定事実を裏書するに足りる記載があるから、原判決は...被告人の自白だけで被告人の罪責を認めたものではない...。」としている。
したがって、被害者Aの被害届が出ていれば、補強証拠としては十分である。

(H24 司法 第32問 オ)
【事例】
 甲は、平成23年4月3日、H警察署を訪れ、同署司法警察員Xに対し、「乙と一緒にV1を殺害する計画を立てた。その計画は、乙がV1をH市内の岸壁に呼び出し、私が普通乗用自動車を運転してV1を跳ね飛ばして殺害し、V1の死体を海に捨てるというものであった。実際、私は、この計画どおり、平成23年2月3日午後9時頃、前記岸壁において、普通乗用自動車を運転し、乙が呼び出したV1を跳ね飛ばして殺害し、乙と一緒にV1の死体を海に捨てた。ちなみに、私は、これまで、一度も運転免許を取得したことがない。また、私は、平成22年12月8日、H市内にあるアパートの一室に侵入して現金10万円と時計1個を盗んだ。その後に確認したところ、私が盗みに入ったアパートの住人はV2だと分かった。」などと、道路交通法違反(無免許運転)、殺人、死体遺棄、住居侵入、窃盗の罪を自白した。そこで、司法警察員Xは、この自白を内容とする供述調書を作成した。その後、甲は、平成23年4月5日、司法警察員Xに述べたことと同じ内容を記載した知人A宛ての手紙を作成した上、これをAに郵送した。

甲を現金10万円及び時計1個を窃取した旨の窃盗の罪で有罪とするには、V2が被害直後に現金10万円と時計1個を窃取された旨の被害を届けていた場合であっても、被害金品の所在又は使途についての補強証拠が必要不可欠であり、たとえ、甲から押収した被害に係る時計1個が証拠として存在しても、被害に係る現金10万円の使途を全て明らかにする補強証拠がない限り、甲を現金10万円及び時計1個を窃取した旨の窃盗の罪で有罪とする余地はない。

(正答)

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
これについて、判例(最判昭26.3.9)は、本肢と同種の事案において、「窃盗被害始末書には、窃盗被害の日時及び被害物件等につき、被告人の自白にかかる原審認定事実を裏書するに足りる記載があるから、原判決は...被告人の自白だけで被告人の罪責を認めたものではない...。」としている。
したがって、被害者V2の被害届が出ていれば、補強証拠としては十分である。
総合メモ

実況見分調書における犯行再現 最二小決平成17年9月27日

概要
捜査官が被害者や被疑者に被害・犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書等で、実質上の要証事実が再現されたとおりの犯罪事実の存在であると解される書証が326条の同意を得ずに証拠能力を具備するためには、321条3項所定の要件が満たされるほか、再現者の供述録取部分については、再現者が被告人以外の者である場合には321条1項2号ないし3号所定の要件が、再現者が被告人である場合には322条1項所定の要件が、写真部分については、署名押印の要件を除き供述録取部分と同様の要件が満たされる必要がある。
判例
事案:痴漢の公判において、検察官から、実況見分調書・写真撮影報告書(以下「本件両書証」という。)が証拠として提出された。ここには、被害再現状況・犯行再現状況として、前者には、被害者と女性警察官が被害を受けた状況を再現し、後者には、被告人と男性警察官が犯行時の状況を再現した状況が記録されており、各再現者の供述録取部分について再現者の署名押印はなかった。弁護人は不同意意見を述べたが、作成者たる警察官の証人尋問を経て、裁判所は321条3項により両書証の証拠調べを決定したという事案において、本件両書証の証拠能力の存否が問題となった。

判旨:「本件両書証は、捜査官が、被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして、これらの者に被害・犯行状況について再現させた結果を記録したものと認められ、立証趣旨が『被害再現状況』、『犯行再現状況』とされていても、実質においては、再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になるものと解される。このような内容の実況見分調書や写真撮影報告書等の証拠能力については、刑訴法326条の同意が得られない場合には、同法321条3項所定の要件を満たす必要があることはもとより、再現者の供述の録取部分及び写真については、再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の、被告人である場合には同法322条1項所定の要件を満たす必要があるというべきである。もっとも、写真については、撮影、現像等の記録の過程が機械的操作によってなされることから前記各要件のうち再現者の署名押印は不要と解される。」
過去問・解説
(H24 司法 第23問 エ)
捜査官が被疑者に犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書で、立証趣旨を「犯行状況」とする書面の写真部分については、弁護人が証拠とすることについて同意しなかった場合であっても、刑事訴訟法第321条第3項所定の要件のほか、同法第322条第1項所定の要件を満たせば証拠能力が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最決平17.9.27)は、捜査官が被疑者に犯行状況を再現させた結果を記録した実況見分調書で、立証趣旨を「犯行状況」とする書面の写真部分について、「捜査官が、被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして、これらの者に被害・犯行状況について再現させた結果を記録したものと認められ、立証趣旨が『被害再現状況』、『犯行再現状況』とされていても、実質においては、再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になるものと解される。このような内容の実況見分調書や写真撮影報告書等の証拠能力については、刑訴法326条の同意が得られない場合には、同法321条3項所定の要件を満たす必要があることはもとより、再現者の供述の録取部分及び写真については、再現者が被告人以外の者である場合には同法321条1項2号ないし3号所定の、被告人である場合には同法322条1項所定の要件を満たす必要があるというべきである。」としている。
総合メモ

裁判官面前調書の範囲 最一小決昭和29年11月11日

概要
321条1項1号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」には、他の事件において作成されたものを含む。
判例
事案:被告人の事件とは別の事件において裁判官の面前で作成された書面が、321条1項1号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」とされた事案において、かかる書面が同号の書面に当たるかが問題となった。

判旨:「刑訴321条1項1号の『裁判官の面前における供述を録取した書面』とは、当該事件において作成されたものであると他の事件において作成されたものであるとを問わないものと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H23 司法 第35問 イ)
刑事訴訟法第321条第1項第1号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」は、当該事件に関して作成されたものに限られるから、他の事件の公判廷における証人の供述を録取したものは含まれない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭29.11.11)は、「刑訴321条1項1号の『裁判官の面前における供述を録取した書面』とは、当該事件において作成されたものであると他の事件において作成されたものであるとを問わないものと解する...。」としている。
したがって、「裁判官の面前における供述を録取した書面」には、他の事件の公判廷における証人の供述を録取したものも含まれる。
総合メモ

実況見分調書における現場写真 最二小決昭和59年12月21日

概要
犯行の状況等を撮影したいわゆる現場写真は、非供述証拠に属し、当該写真自体又は他の証拠により事件との関連性を認めうる限り証拠能力を具備する。
判例
事案:騒乱罪等の犯行の状況を撮影した現場写真が証拠として提出された事案において、実況見分調書の現場写真については関連性が認められる限り証拠能力を有するとして、撮影者の関連性に関する証言を要するかが問題となった。

判旨:「犯行の状況等を撮影したいわゆる現場写真は、非供述証拠に属し、当該写真自体又はその他の証拠により事件との関連性を認めうる限り証拠能力を具備するものであって、これを証拠として採用するためには、必ずしも撮影者らに現場写真の作成過程ないし事件との関連性を証言させることを要するものではない。」
過去問・解説
(H22 司法 第33問 3)
【事例】
 被告人甲は、運転していた普通乗用自動車を歩行中のVに衝突させて傷害を負わせ、前方不注視の過失による自動車運転過失致傷罪で起訴された。第1回公判期日において、甲の弁護人は、事故直後に犯行現場で実施された実況見分に甲が立ち会ったことは争わないものの、前方不注視の過失の有無を争い、検察官から事前に開示されていた同実況見分に係る実況見分調書について不同意の意見を述べた。そこで、検察官は、その作成者である司法警察員Kの証人尋問を請求し、裁判所の採用決定を経て、次のとおりKの証人尋問を行った。
【Kの証人尋問】
検察官. 証人は、本件当時、〇〇警察署交通課に警部補として勤務していましたね。
K.   はい。
検察官. 証人は、平成×年×月×日、本件犯行現場で現場の状況に関する実況見分を行いましたか。
K.   はい。
検察官. 証人は、実況見分の経過と結果を書面にしましたか。
K.   はい。
検察官. (1)検察官請求に係るK作成の実況見分調書を示します。証人が作成した実況見分調書は、これですか。
K.   (2)はい。この実況見分調書は、私が自分で作成したものに間違いありません。
検察官. 実況見分調書に添付された現場の写真を示します。この写真は、証人が撮影しましたか。
K.   (3)いいえ。私が、部下のL巡査部長に命じて撮影させました。

(3)の証言によると、写真の撮影をKがしていないので、写真を証拠とするためには、撮影者であるL巡査部長を証人尋問して、事件との関連性を立証しなければならない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭59.12.21)は、「犯行の状況等を撮影したいわゆる現場写真は、非供述証拠に属し、当該写真自体又はその他の証拠により事件との関連性を認めうる限り証拠能力を具備するものであって、これを証拠として採用するためには、必ずしも撮影者らに現場写真の作成過程ないし事件との関連性を証言させることを要するものではない。」としている。
したがって、関連性の立証は、撮影者であるL巡査部長の証人尋問による必要はない。
総合メモ

実況見分調書の伝聞例外 最一小判昭和35年9月8日

概要
321条3項所定の書面には捜査機関が任意処分として行なう検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も包含する。
判例
事案:実況見分調書の伝聞例外の要件は何条によるかが争われた。

判旨:「刑訴321条3項所定の書面には捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も包含するものと解するを相当と...する。」
過去問・解説
(H22 司法 第33問 2)
【事例】
 被告人甲は、運転していた普通乗用自動車を歩行中のVに衝突させて傷害を負わせ、前方不注視の過失による自動車運転過失致傷罪で起訴された。第1回公判期日において、甲の弁護人は、事故直後に犯行現場で実施された実況見分に甲が立ち会ったことは争わないものの、前方不注視の過失の有無を争い、検察官から事前に開示されていた同実況見分に係る実況見分調書について不同意の意見を述べた。そこで、検察官は、その作成者である司法警察員Kの証人尋問を請求し、裁判所の採用決定を経て、次のとおりKの証人尋問を行った。
【Kの証人尋問】
検察官. 証人は、本件当時、〇〇警察署交通課に警部補として勤務していましたね。
K.   はい。
検察官. 証人は、平成×年×月×日、本件犯行現場で現場の状況に関する実況見分を行いましたか。
K.   はい。
検察官. 証人は、実況見分の経過と結果を書面にしましたか。
K.   はい。
検察官. 検察官請求に係るK作成の実況見分調書を示します。証人が作成した実況見分調書は、これですか。
K.   (2)はい。この実況見分調書は、私が自分で作成したものに間違いありません。

(2)の証言は、実況見分調書の作成者であるKが、公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときに該当するので、実況見分調書を証拠とするには、この証言で足りる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.9.8)は、「刑訴321条3項所定の書面には捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も包含する…。」としている。
本肢の実況見分調書についても、作成者による、いわゆる真正作成供述がなされれば伝聞例外を満たすこととなる。
真正作成供述とは、作成名義が真正であること(作成名義の真正)だけでなく、その検証が正確な観察によること、及びその結果を調書に正確に記載したこと(記載の真正)の供述を意味するところ、(2)の証言は、作成名義の真正を述べるにとどまる。
したがって、伝聞例外の要件を満たしておらず、実況見分調書を証拠とすることはできない。

(H23 司法 第34問 エ)
被告人甲が、被害者V宅において、Vを包丁で突き刺して殺害したという事件に関し、後記cの【証拠】がある。
【証拠】
c.Vの妻A立会いのもとで、司法警察職員が任意処分として行った検証の結果を記載した書面

刑事訴訟法第321条第3項の「検証の結果を記載した書面」とは、裁判官の発する令状により行った検証の結果を記載した書面を意味するから、捜査機関が任意処分として行った検証の結果を記載した書面であるcは、同項の「検証の結果を記載した書面」には該当しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.9.8)は、「刑訴321条3項所定の書面には捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も包含する…。」としている。
したがって、捜査機関が任意処分として行った検証の結果を記載した書面であるcも、同項の「検証の結果を記載した書面」に該当する。
総合メモ

特別の学識経験を有する私人が作成した実験結果を記載した書面 最二小決平成20年8月27日

概要
火災原因の調査、判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した本件書面については、321条3項所定の書面の作成主体が「検察官、検察事務官又は司法警察職員」と規定されていること及びその趣旨に照らし同項の準用はできないが、同条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有する。
判例
事案:非現住建造物等放火被告事件において、火災原因の調査、判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した書面の伝聞例外をどの条項により認めるべきかが問題となった。

判旨:「321条3項の書面の作成主体は『検察官、検察事務官又は司法警察職員』とされているのであり、かかる規定の文言及びその趣旨に照らすならば、本件報告書抄本のような私人作成の書面に同項を準用することはできないと解するのが相当である。原判断には、この点において法令の解釈適用に誤りがあるといわざるを得ないが、上記証人尋問の結果によれば、上記作成者は、火災原因の調査、判定に関して特別の学識経験を有するものであり、本件報告書抄本は、同人が、かかる学識経験に基づいて燃焼実験を行い、その考察結果を報告したものであって、かつ、その作成の真正についても立証されていると認められるから、結局、本件報告書抄本は、同法321条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有するというべきであ...る。」
過去問・解説
(H21 司法 第35問 ウ)
火災原因の調査、判定に関して特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行い、その考察結果を報告した書面については、刑事訴訟法第321条第4項の「鑑定の経過及び結果を記載した書面」に準ずるものとして、同項により証拠能力を有する。

(正答)

(解説)
判例(最決平20.8.27)は、私人たる消防士の作成した「燃焼実験報告書」と題する書面について、「作成者は、火災原因の調査、判定に関して特別の学識経験を有するものであり、本件報告書...は、同人が、かかる学識経験に基づいて燃焼実験を行い、その考察結果を報告したものであって、かつ、その作成の真正についても立証されていると認められるから、結局、本件報告書抄本は、同法321条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有する…。」としている。
総合メモ

被告人以外の者に対する事件の公判調書中同人の被告人としての供述を録取した部分 最三小決昭和57年12月17日

概要
被告人以外の者に対する事件の公判調書中同人の被告人としての供述を録取した部分は、刑訴法321条1項1号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」に含まれる。
判例
事案:被告人以外の者に対する事件の公判におけるその者の供述が録取された書面が、被告人の公判との関係で321条1項の裁判官面前調書として証拠採用された事案において、かかる書面が同号の書面に当たるかが問題となった。

判旨:「刑訴法321条1項1号の『裁判官の面前における供述を録取した書面』には、被告人以外の者に対する事件の公判調書中同人の被告人としての供述を録取した部分を含むと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第35問 ア)
甲に対する被告事件における刑事訴訟法第321条第1項第1号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」には、同事件とは別の乙に対する被告事件における公判調書中の被告人乙の供述を録取した部分が含まれる。

(正答)

(解説)
判例(最決昭57.12.17)は、「刑訴法321条1項1号の『裁判官の面前における供述を録取した書面』には、被告人以外の者に対する事件の公判調書中同人の被告人としての供述を録取した部分を含む…。」としている。

(H23 司法 第35問 オ)
被告人には黙秘権の保障があり、かつ、宣誓及び偽証罪の制裁を欠くのであるから、乙を被告人とする贈賄被告事件の公判調書中、被告人としての乙の供述を録取した部分は、甲を被告人とする収賄被告事件において、刑事訴訟法第321条第1項第1号の「裁判官の面前における供述を録取した書面」には該当しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭57.12.17)は、「刑訴法321条1項1号の『裁判官の面前における供述を録取した書面』には、被告人以外の者に対する事件の公判調書中同人の被告人としての供述を録取した部分を含む…。」としている。
総合メモ

現場指示と伝聞例外 最二小判昭和36年5月26日

概要
①捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書は、たとえ被告人側においてこれを証拠とすることに同意しなくても、検証調書について321条3項に規定するところと同一の条件の下に、これを証拠とすることができる。
②実況見分の手段として被疑者、被害者その他の者をこれに立ち会わせ、立会人の指示説明としてそれらの者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述者の署名押印を必要としない。
③右実況見分調書は、あらためてその立会人を公判期日において尋問する機会を被告人に与えなくても、これを証拠とすることができる。
判例
事案:原審が実況見分調書を証拠採用した事案において、①実況見分調書に適用される伝聞例外の条項、②実況見分調書における立会人の供述記載とその署名押印の要否、及び③立会人の供述を記載した実況見分調書を証拠とすることと立会人喚問の要否が問題となった。

判旨:①「捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も刑訴321条3項所定の書面に包含されるものと解するを相当とすることは昭和35年9月8日第一小法廷判決(刑集14巻11号1437頁)の判示するところである。従って、かかる実況見分調書は、たとえ被告人側においてこれを証拠とすることに同意しなくても、検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる...。」
 ②「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としないものと解すべく(昭和5年3月20日大審院判決、刑集9巻4号221頁、同9年1月17日大審院判決、刑集13巻1号1頁参照)、これと同旨に出た原判示(控訴趣意第1点についての判断後段)は正当である。」
 ③「そうして、刑訴321条3項が憲法37条2項前段に違反するものでないことは前掲昭和35年9月8日第一小法廷判決の判示するところであって、既にいわゆる実況見分調書が刑訴321条3項所定の書面に包含されるものと解される以上は、同調書は単にその作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述しさえすれば、それだけでもって、同条1項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができるのであり、従って、たとえ立会人として被疑者又は被疑者以外の者の指示説明を聴き、その供述を記載した実況見分調書を一体として、即ち右供述部分をも含めて証拠に引用する場合においても、右は該指示説明に基く見分の結果を記載した実況見分調書を刑訴321条3項所定の書面として採証するに外ならず、立会人たる被疑者又は被疑者以外の者の供述記載自体を採証するわけではないから。更めてこれらの立会人を証人として公判期日に喚問し、被告人に尋問の機会を与えることを必要としないと解すべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第34問 ア)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(a)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(a).甲は、同現場交差点南側の街灯を指さして「事故当時、この街灯は点灯していませんでした。」と説明した。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(a)の記載を、当該街灯が事故当時点灯していなかったという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
まず、判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
また、同判例は、「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としない…。」としている。
ここから、(a)の記載を、単に、「この街頭」を実況見分の対象とするための現場指示として用いるのであれば、実況見分調書自体の伝聞例外を満たせば足りるということになる。
しかし、本肢のように、当該街灯が事故当時点灯していなかったという事実を証明するために用いるのであれば、甲の、(a)における供述内容の真実性が問題になることから、322条1項の伝聞例外の要件を満たさなければならないということになる。
したがって、本肢では、甲の署名押印を欠く以上、322条1項の要件を満たすことはない。
よって、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(a)の記載を、当該街灯が事故当時点灯していなかったという事実の認定に用いることは伝聞法則に反し許されない。

(H19 司法 第34問 イ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(b)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(b).甲は、「私が被害者を初めて発見した場所は①地点でした。その時、被害者が立っていた場所は②地点でした。」と説明した。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(b)の記載を、甲が初めて被害者を発見したときに、被害者は②地点に立っていたという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
まず、判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
また、同判例は、「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としない…。」としている。
ここから、(b)の記載を、単に、①地点と②地点を実況見分の対象とするための現場指示として用いるのであれば、実況見分調書自体の伝聞例外を満たせば足りるということになる。
しかし、本肢のように、甲が初めて被害者を発見したときに、被害者は②地点に立っていたという事実を証明するために用いるのであれば、甲の、(b)における供述内容の真実性が問題になることから、322条1項の伝聞例外の要件を満たさなければならないということになる。
したがって、本肢では、甲の署名押印を欠く以上、322条1項の要件を満たすことはない。
よって、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(b)の記載を、甲が初めて被害者を発見したときに、被害者は②地点に立っていたという事実の認定に用いることは、伝聞法則に反し許されない。

(H19 司法 第34問 ウ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(b)および(c)の各記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(b).甲は、「私が被害者を初めて発見した場所は①地点でした。その時、被害者が立っていた場所は②地点でした。」と説明した。
(c).Kが、①地点と②地点の間の距離を測定したところ、10.7メートルであった。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(b)及び(c)の記載を、甲が初めて被害者を発見した場所として指示した地点とその際に被害者が立っていた場所として指示した地点の間の距離が10.7メートルであるという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
まず、判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
また、同判例は、「捜査機関は任意処分として検証(実況見分)を行うに当り必要があると認めるときは、被疑者、被害者その他の者を立ち会わせ、これらの立会人をして実況見分の目的物その他必要な状態を任意に指示、説明させることができ、そうしてその指示、説明を該実況見分調書に記載することができるが、右の如く立会人の指示、説明を求めるのは、要するに、実況見分の1つの手段であるに過ぎず、被疑者及び被疑者以外の者を取り調べ、その供述を求めるのとは性質を異にし、従って、右立会人の指示、説明を実況見分調書に記載するのは結局実況見分の結果を記載するに外ならず、被疑者及び被疑者以外の者の供述としてこれを録取するのとは異なるのである。従って、立会人の指示説明として被疑者又は被疑者以外の者の供述を聴きこれを記載した実況見分調書には右供述をした立会人の署名押印を必要としない…。」としている。
そして、(b)の記載は、(c)の記載にある距離を測るための現場指示であり、(c)の記載は、実況見分の結果であるところ、本肢の事実を認定するにあたっては、実況見分調書の伝聞例外を満たせば足りる。

(H19 司法 第34問 エ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(d)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(d).Kが、①地点の運転席に着席した甲の目の高さに視線を置き、②地点方向を見たところ、道路脇に設置された看板の陰になって、②地点の路面は見えなかったが、高さ80センチメートルを超える部分は見えた。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(d)の記載を、①地点の運転席に着席していた甲からは②地点の路面を見通すことができないという事実の認定に用いることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
(d)の記載は、まさに実況見分の結果を記載したものである。
したがって、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(d)の記載を、①地点の運転席に着席していた甲からは②地点の路面を見通すことができないという事実の認定に用いることができる。

(H19 司法 第34問 オ)
【事例】
 甲は、午後6時30分ころ、X交差点において、自動車を運転中に交通事故を起こして被害者を死亡させた。司法警察員Kは、甲を被疑者とする業務上過失致死被疑事件について、犯行現場の状況を明らかにするために、同現場において、事故直後の午後7時から40分間にわたり、甲を立ち会わせて実況見分を行った。Kは、その後、その経過と結果を正確に記載した実況見分調書を作成した。この実況見分調書には、次の(e)の記載があり、現場見取図が添付されているが、甲の署名押印はない。
(e).実況見分を実施している間、本件現場付近の人通りは多かった。

この実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(e)の記載を、事故直後の午後7時から40分間、本件現場付近の人通りは多かったという事実の認定に用いることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.5.26)は、実況見分調書が満たすべき伝聞例外について、「検証調書について刑訴321条3項に規定するところと同一の条件の下に、すなわち実況見分調書の作成者が公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述したときは、これを証拠とすることができる。」としている。
(e)の記載は、まさに実況見分の結果を記載したものである。
したがって、実況見分調書の伝聞例外を満たせば、実況見分調書が321条3項による書面として証拠調べされた場合、この実況見分調書中の(e)の記載を、事故直後の午後7時から40分間、本件現場付近の人通りは多かったという事実の認定に用いることができる。
総合メモ

321条1項2号但書の「特に信用すべき情況」の判断において供述内容を考慮することの可否 最三小判昭和30年1月11日

概要
①321条1項2号後段の調書の証拠調をその証人尋問期日の後の期日に行ったところで憲法37条2項に反しない。
②同号但書にいわゆる「前の供述を信用すべき特別の情況」は必ずしも外部的な特別の事情によらなくても、その供述の内容自体によって判断することができる。
判例
事案:321条1項2号但書の「特に信用すべき情況」の判断において、供述がなされた際の外部的事情を推知させる事由として供述内容が考慮された事案において、①同号後段の調書の取調時期、及び②同号但書の「前の供述を信用すべき特別の状況」の判断基準が問題となった。

判旨:①「各証人に対する検察官の面前調書の証拠調が、これら各証人を尋問した公判期日の後の公判期日で行われたからといって憲法37条2項の保障する被告人らの反対尋問権を奪ったことにならないことは既に当裁判所大法廷判例の趣旨とするところである(昭和24年(つ)93号同25年3月6日・刑事判例集4巻3号308頁)。しかも、本件における主要な争点たる金銭供与の趣旨、検察官に対する供述の任意性の有無については、既に先の証人尋問に際し、反対尋問権の行使の機会が与えられているに止まらず、記録に徴すると充分に反対尋問が行われているのである。また証拠調に当って当事者に異議があったからといってその意見を聴いた上で決定をし、適法に証拠調をした以上、証拠調手続が違法となるの理はなく、更に第1審裁判所がこれら証人の再尋問の請求を却下したからといって先に適法になされた証拠調が遡って不適法になる理由もない。所論は採用できない(昭和27年(あ)6704号同29年5月11日第三小法廷判決参照)。」
 ②「刑訴321条1項2号は、伝聞証拠排斥に関する同320条の例外規定の1つであって、このような供述調書を証拠とする必要性とその証拠について反対尋問を経ないでも充分の信用性ある情況の存在をその理由とするものである。そして証人が検察官の面前調書と異った供述をしたことによりその必要性は充たされるし、また必ずしも外部的な特別の事情でなくても、その供述の内容自体によってそれが信用性ある情況の存在を推知せしめる事由となると解すべきものである。」
過去問・解説
(H19 司法 第33問 5)
321条1項2号ただし書の「前の供述を信用すべき特別の情況」は、供述がなされた際の外部的な事情のみを判断資料とすべきであり、この「特別の情況」を推知させる事由として、その供述内容を考慮することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭30.1.11)は、321条1項2号但書の「前の供述を信用すべき特別の情況」の判断について、「必ずしも外部的な特別の事情でなくても、その供述の内容自体によってそれが信用性ある情況の存在を推知せしめる事由となる...。」としている。
したがって、「特別の情況」を推知させる事由として、その供述内容を考慮することも可能である。
総合メモ

退去強制の321条1項2号前段の「国外にいる」該当性 最三小判平成7年6月20日

概要
①退去強制によって出国した者の検察官に対する供述調書については、検察官において供述者がいずれ国外に退去させられ公判準備又は公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更そのような事態を利用しようとした場合や、裁判官又は裁判所がその供述者について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合など、その供述調書を321条1項2号前段書面として証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともある。
②検察官において本件供述者が強制送還され将来公判準備又は公判期日に供述することができなくなるような事態を殊更利用しようとしたとは認められず、本件に関連して同時期に強制送還された他の供述者については証拠保全としての証人尋問が行われており、本件供述者のうち、証拠保全請求があった1名については請求時に既に強制送還されており、その余の者については証拠保全の請求がないまま強制送還が行われたなどの判示の事実関係の下においては、本件供述者の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くとは認められず、これを事実認定の証拠とすることは許容される。
判例
事案:証人が国外強制送還されたため、検察官が同証人の検察官面前調書を証拠調べ請求した事案において、このような場合に321条2項2号前段の要件を満たすかが問題となった。

判旨:①「321条1項2号前段は、検察官面前調書について、その供述者が国外にいるため公判準備又は公判期日に供述することができないときは、これを証拠とすることができると規定し、右規定に該当すれば、証拠能力を付与すべきものとしている。しかし、右規定が同法320条の伝聞証拠禁止の例外を定めたものであり、憲法37条2項が被告人に証人審問権を保障している趣旨にもかんがみると、検察官面前調書が作成され証拠請求されるに至った事情や、供述者が国外にいることになった事由のいかんによっては、その検察官面前調書を常に右規定により証拠能力があるものとして事実認定の証拠とすることができるとすることには疑問の余地がある。
 本件の場合、供述者らが国外にいることになった事由は退去強制によるものであるところ、退去強制は、出入国の公正な管理という行政目的を達成するために、入国管理当局が出入国管理及び難民認定法に基づき一定の要件の下に外国人を強制的に国外に退去させる行政処分であるが、同じく国家機関である検察官において当該外国人がいずれ国外に退去させられ公判準備又は公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更そのような事態を利用しようとした場合はもちろん、裁判官又は裁判所が当該外国人について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合など、当該外国人の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともあり得るといわなければならない。」
 ②「これを本件についてみるに、検察官において供述者らが強制送還され将来公判準備又は公判期日に供述することができなくなるような事態を殊更利用しようとしたとは認められず、また、本件では、前記13名のタイ国女性と同時期に収容されていた同国女性1名(同じく被告人らの下で就労していた者)について、弁護人の証拠保全請求に基づき裁判官が証人尋問の決定をし、その尋問が行われているのであり、前記13名のタイ国女性のうち弁護人から証拠保全請求があった1名については、右請求時に既に強制送還されており、他の12名の女性については、証拠保全の請求がないまま強制送還されたというのであるから、本件検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くとは認められないのであって、これを事実認定の証拠とすることが許容されないものとはいえない。」
過去問・解説
(H19 司法 第33問 4)
退去強制によって出国した外国人の検察官に対する供述調書については、321条1項2号前段のその供述者が「国外にいる」という要件を満たすので、常に、事実認定の証拠として許容される。

(正答)

(解説)
321条1項は、柱書において、「被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。」と規定し、2号前段において、「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。」を掲げている。
これについて、判例(最判平7.6.20)は、「退去強制は、出入国の公正な管理という行政目的を達成するために、入国管理当局が出入国管理及び難民認定法に基づき一定の要件の下に外国人を強制的に国外に退去させる行政処分であるが、同じく国家機関である検察官において当該外国人がいずれ国外に退去させられ公判準備又は公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更そのような事態を利用しようとした場合はもちろん、裁判官又は裁判所が当該外国人について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合など、当該外国人の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともあり得るといわなければならない。」としている。
したがって、退去強制によって出国した外国人の検察官に対する供述調書についても、事実認定の証拠として許容されない場合がある。

(H23 司法 第35問 エ)
裁判所が証人尋問の決定をした外国人について、証人尋問の実施前に退去強制が行われた場合、その者の検察官に対する供述調書を刑事訴訟法第321条第1項第2号前段に基づいて証拠とすることは、許容されないことがある。

(正答)

(解説)
321条1項は、柱書において、「被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。」と規定し、2号前段において、「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。」を掲げている。
これについて、判例(最判平7.6.20)は、「退去強制は、出入国の公正な管理という行政目的を達成するために、入国管理当局が出入国管理及び難民認定法に基づき一定の要件の下に外国人を強制的に国外に退去させる行政処分であるが、同じく国家機関である検察官において当該外国人がいずれ国外に退去させられ公判準備又は公判期日に供述することができなくなることを認識しながら殊更そのような事態を利用しようとした場合はもちろん、裁判官又は裁判所が当該外国人について証人尋問の決定をしているにもかかわらず強制送還が行われた場合など、当該外国人の検察官面前調書を証拠請求することが手続的正義の観点から公正さを欠くと認められるときは、これを事実認定の証拠とすることが許容されないこともあり得るといわなければならない。」としている。
したがって、裁判所が証人尋問の決定をした外国人について、証人尋問の実施前に退去強制が行われた場合、その者の検察官に対する供述調書を刑事訴訟法第321条第1項第2号前段に基づいて証拠とすることは、許容されないことがある。
総合メモ

検面調書の321条1項2号後段の「前の供述」の意義 最二小決昭和58年6月30日

概要
すでに公判期日において証人として尋問された者を同一事項につき検察官が取り調べて作成した供述調書であっても、その後の公判準備若しくは公判期日において、その者が右供述調書の内容と相反するか若しくは実質的に異なった供述をした以上、321条1項2号にいう「前の供述」の要件を欠くものではない。
判例
事案:公判期日において証人尋問が行われた証人について、検察が、公判外で取り調べを行い検面調書を作成した。その後の公判期日において、証人が相反供述をしたため、検面調書を321条1項2号後段の「前の供述」として取り調べ請求した事案において、「前の供述」の意義が問題になった。

判旨:「昭和56年11月4日の原審第3回公判期日において本件詐欺の被害事実につき壺山宗慶の証人尋問が行われたのち、昭和57年1月9日検察官が同人を右事実につき取り調べて供述調書を作成し、同年6月1日の第8回公判期日及び同年7月13日の第9回公判期日において再び同人を右事実につき証人として尋問したところ、右検察官に対する供述調書の記載と異なる供述をしたため、検察官が刑訴法321条1項2号の書面として右調書の取調を請求し、原審はこれを採用して取り調べた事実が認められる。このように、すでに公判期日において証人として尋問された者に対し、捜査機関が、その作成する供述調書をのちの公判期日に提出することを予定して、同一事項につき取調を行うことは、現行刑訴法の趣旨とする公判中心主義の見地から好ましいことではなく、できるだけ避けるべきではあるが、右証人が、供述調書の作成されたのち、公判準備若しくは公判期日においてあらためて尋問を受け、供述調書の内容と相反するか実質的に異なった供述をした以上、同人が右供述調書の作成される以前に同一事項について証言をしたことがあるからといって、右供述調書が刑訴法321条1項2号にいう『前の供述』の要件を欠くことになるものではないと解するのが相当である(ただし、その作成の経過にかんがみ、同号所定のいわゆる特信情況について慎重な吟味が要請されることは、いうまでもない。)。」
過去問・解説
(H19 司法 第33問 3)
既に公判期日において証人として尋問された者に対し、検察官が、後の公判期日に提出することを予定して、その尋問内容と同一事項につき取り調べて作成した供述調書は、その後の公判期日において、その者が前記供述調書の内容と相反する供述をしても、321条1項2号後段にいう「前の供述」に当たらない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭58.6.30)は、「すでに公判期日において証人として尋問された者に対し、捜査機関が、その作成する供述調書をのちの公判期日に提出することを予定して、同一事項につき取調を行うことは、現行刑訴法の趣旨とする公判中心主義の見地から好ましいことではなく、できるだけ避けるべきではあるが、右証人が、供述調書の作成されたのち、公判準備若しくは公判期日においてあらためて尋問を受け、供述調書の内容と相反するか実質的に異なった供述をした以上、同人が右供述調書の作成される以前に同一事項について証言をしたことがあるからといって、右供述調書が刑訴法321条1項2号にいう『前の供述』の要件を欠くことになるものではない…。」としている。
総合メモ

証人の証言拒絶 最大判昭和27年4月9日

概要
証人が証言を拒絶する場合、321条1項2号前段の「公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」に当たる。
判例
事案:証人が証言拒絶したため、検察官が同人の検察官面前調書を証拠として提出した事案において、かかる場合が321条1項2号前段の「公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」に当たるかが問題となった。

判旨:①「憲法37条2項は、裁判所が尋問すべきすべての証人に対して被告人にこれを審問する機会を充分に与えなければならないことを規定したものであって、被告人にかかる審問の機会を与えない証人の供述には絶対的に証拠能力を認めないとの法意を含むものではない(昭和23年(れ)833号同24年5月18日大法廷判決判例集3巻6号789頁以下参照)。されば被告人のため反対尋問の機会を与えていない証人の供述又はその供述を録取した書類であっても、現にやむことを得ない事由があって、その供述者を裁判所において尋問することが妨げられ、これがために被告人に反対尋問の機会を与え得ないような場合にあっては、これを裁判上証拠となし得べきものと解したからとて、必ずしも前記憲法の規定に背反するものではない。刑訴321条1項2号が、検察官の面前における被告人以外の者の供述を録取した書面について、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明、若しくは国外にあるため、公判準備若しくは公判期日において供述することができないときは、これを証拠とすることができる旨規定し、その供述について既に被告人のため反対尋問の機会を与えたか否かを問わないのも、全く右と同一見地に出た立法ということができる。そしてこの規定にいわゆる『供述者が...供述することができないとき』としてその事由を掲記しているのは、もとよりその供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したものに外ならないのであるから、これと同様又はそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨ぐるものではない。」
 ②「されば本件におけるが如く、Wが第1審裁判所に証人として喚問されながらその証言を拒絶した場合にあっては、検察官の面前における同人の供述につき被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは右規定にいわゆる供述者の死亡した場合と何等選ぶところはないのであるから、原審が所論のWの検察官に対する供述調書の記載を、事実認定の資料に供した第1審判決を是認したからといって、これを目して所論の如き違法があると即断することはできない。尤も証言拒絶の場合においては、一旦証言を拒絶しても爾後その決意を翻して任意証言をする場合が絶無とはいい得ないのであって、この点においては供述者死亡の場合とは必ずしも事情を同じくするものではないが、現にその証言を拒絶している限りにおいては被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは全く同様であり、むしろ同条項にいわゆる供述者の国外にある場合に比すれば一層強き意味において、その供述を得ることができないものといわなければならない。」
過去問・解説
(H19 司法 第33問 2)
証人が公判廷において証言を拒絶した場合は、321条1項2号前段の「公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」に当たらない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭27.4.9)は、「321条1項2号...は、...その供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したものに外ならないのであるから、これと同様又はそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨ぐるものではない。」とした上で、「証人として喚問されながらその証言を拒絶した場合にあっては、検察官の面前における同人の供述につき被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは右規定にいわゆる供述者の死亡した場合と何等選ぶところはない...。」としている。
したがって、証言拒絶も、「公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」に当たる場合がある。

(H23 司法 第35問 ウ)
刑事訴訟法第321条第1項の「その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」とは、供述不能の制限的な事由ではなく、例示的な事由であるから、証人が、公判期日に証言拒絶権を行使して証言を拒んだときも、これに該当する。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭27.4.9)は、「321条1項2号...は、...その供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したものに外ならないのであるから、これと同様又はそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨ぐるものではない。」とした上で、「証人として喚問されながらその証言を拒絶した場合にあっては、検察官の面前における同人の供述につき被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは右規定にいわゆる供述者の死亡した場合と何等選ぶところはない...。」とした上で、「『供述者が...供述することができないとき』としてその事由を掲記しているのは、もとよりその供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したものに外ならないのであるから、これと同様又はそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨ぐるものではない。」としている。
総合メモ

共犯者たる相被告人の検察官に対する供述調書 最一小決昭和27年12月11日

概要
検察官の面前において相被告人のした供述を録取した調書は、被告人との関係においては、321条1項2号の書面としての証拠能力を有する。
判例
事案:共同被告人の検察官面前調書が、被告人との関係において321条1項2号の書面として証拠採用された事案において、かかる調書が同号の書面に当たるかが問題となった。

判旨:「第1審判決が証拠とした所論相被告人Bの検察官に対する供述調書は、被告に対する関係においては刑訴321条1項2号の書面と見るべく、しかも、相被告人は公判期日において前の供述と異った供述をしており、且つ、審理の経過に照し前の供述を信用すべき特別の情況の存すること明らかであり、そして、相被告人自己に対する関係においては他の証拠が取り調べられた後に取り調べたものであるから、証拠としても少しも違法ではない。」
過去問・解説
(H19 司法 第33問 1)
共同被告人は、被告人との関係においては、被告人以外の者であって、被害者その他の純然たる証人とその本質を異にするものではないから、共同被告人の検察官に対する供述調書は、321条1項2号にいう「検察官の面前における供述を録取した書面」に当たる。

(正答)

(解説)
321条1項は、柱書において、「被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。」と規定し、2号本文において、「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なった供述をしたとき。」を掲げている。
これについて、判例(最決昭27.12.11)は、「相被告人...の検察官に対する供述調書は、被告に対する関係においては刑訴321条1項2号の書面と見る...。」としている。

(H21 司法 第35問 イ)
共同被告人乙の検察官に対する供述調書は、被告人甲との関係において、刑事訴訟法第321条第1項第2号の「検察官の面前における供述を録取した書面」には当たらない。

(正答)

(解説)
321条1項は、柱書において、「被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。」と規定し、2号本文において、「検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なった供述をしたとき。」を掲げている。
これについて、判例(最決昭27.12.11)は、「相被告人…の検察官に対する供述調書は、被告に対する関係においては刑訴321条1項2号の書面と見る..。」としている。
総合メモ

証明力を争うための証拠と意義 最三小判平成18年11月7日

概要
328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。
判例
事案:証人Aの証人尋問後、弁護人が消防司令補B作成に係る「聞込み状況書」を328条により証拠調べ請求したところ、同条により許容される証拠の意義及びその立証方法が争われた。

判旨:「刑訴法328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、刑訴法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。
 そうすると、刑訴法328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られるというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第36問 カ)
【事例】
 被告人甲は、Vを殺害した殺人被告事件で起訴されたが、同被告事件の第一回公判期日において、犯行日のアリバイを主張し、自分は犯人ではない旨述べた。
 同被告事件の第×回公判期日において、検察官が、「被告人がVを殺害したこと」を立証趣旨として、Aを証人尋問したところ、Aは、「事件のあった翌日、甲が私に対し、Vを殺したと言った。」と証言した(A証言)。
 次に、同被告事件の第×回公判期日において、検察官が、「Wが犯行時間帯に犯行現場付近で被告人を目撃したこと」を立証趣旨として、Bを証人尋問したところ、Bは、「友人のWが私に対し、事件直後に現場付近で甲を見たと言っていた。」と証言した(B証言)。
 次に、同被告事件の第×回公判期日において、弁護人が、「被告人が犯行日に旅行中でアリバイがあること」を立証趣旨として、Cを証人尋問したところ、Cは、「甲が私に対し、事件があった日には旅行中であったと言っていた。」と証言した(C証言)。
 なお、弁護人は、Aの証人尋問の終了までに前記A証言を、Bの証人尋問終了までに前記B証言をそれぞれ証拠とすることに異議を申し立て、また、検察官は、Cの証人尋問の終了までに前記C証言を証拠とすることに異議を申し立てた。

C証言は、被告人が犯行日に旅行中でアリバイがあることを立証するための証拠とはなり得ないが、A証言中の被告人のAに対する供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。

(正答)

(解説)
328条は、「第321条乃至第324条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であっても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。」として、弾劾証拠について規定している。
これについて、判例(最判平18.11.7)は、「328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであ...る。」としている。
したがって、A証言中の被告人のAに対する供述の証明力を争うためにはAの自己矛盾供述である必要があり、Cの供述を用いることはできない。

(R6 予備 第20問 ア)
以下の【証拠】は、【見解】に照らし、刑事訴訟法第328条の趣旨によって許容される証拠に当たるか。当たる場合には1を、当たらない場合には2を選びなさい。なお、被告人AがVを包丁で刺して殺害したとする殺人被告事件の公判期日において、本件犯行当日に犯行を目撃したとするWが、「Vを包丁で刺したのはAでした。」と証言しているものとする。また、同法第326条の同意はなされていないものとする。 
【見解】 
「刑事訴訟法第328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、同法が定める厳格な証明 を要する趣旨であると解するのが相当である。 
そうすると、同条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(同法が定める要件を満たすものに限る。)又は同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述の中に現れている部分に限られるというべきである。」 
【証拠】
Wの知人Zによる、「Wは、本件の翌日に、『私は昨日BがVを包丁で刺すのを見た。』と 言っていた。」とする公判期日の供述

(正答)1

(解説)
328条は、「第321条乃至第324条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であっても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。」として、弾劾証拠について規定している。
これについて、判例(最判平18.11.7)は、「328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。」としている。
【見解】はこれと同趣旨である。
そして、Wの知人Zによる、「Wは、本件の翌日に、『私は昨日BがVを包丁で刺すのを見た。』と 言っていた。」とする公判期日の供述はW自身の供述と矛盾するから自己矛盾供述に当たる。
したがって、【見解】によると、Zの上記供述は328条の趣旨によって許容される証拠に当たる。

(R6 予備 第20問 イ)
以下の【証拠】は、【見解】に照らし、刑事訴訟法第328条の趣旨によって許容される証拠に当たるか。当たる場合には1を、当たらない場合には2を選びなさい。なお、被告人AがVを包丁で刺して殺害したとする殺人被告事件の公判期日において、本件犯行当日に犯行を目撃したとするWが、「Vを包丁で刺したのはAでした。」と証言しているものとする。また、同法第326条の同意はなされていないものとする。
【見解】
「刑事訴訟法第328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、同法が定める厳格な証明 を要する趣旨であると解するのが相当である。 
そうすると、同条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(同法が定める要件を満たすものに限る。)又は同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述の中に現れている部分に限られるというべきである。」 
【証拠】
本件当日の日付のWの日記で、「今日BがVを包丁で刺すのを見てしまった。」との記載があるもの

(正答)1

(解説)
328条は、「第321条乃至第324条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であっても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。」として、弾劾証拠について規定している。
これについて、判例(最判平18.11.7)は、「328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。」としている。
【見解】はこれと同趣旨である。
そして、本件当日の日付のWの日記で、「今日BがVを包丁で刺すのを見てしまった。」との記載があるものはWの供述書であり、W自身の供述と矛盾するから自己矛盾供述に当たる。
したがって、【見解】によると、Wの日記は328条の趣旨によって許容される証拠に当たる。

(R6 予備 第20問 ウ)
以下の【証拠】は、【見解】に照らし、刑事訴訟法第328条の趣旨によって許容される証拠に当たるか。当たる場合には1を、当たらない場合には2を選びなさい。なお、被告人AがVを包丁で刺して殺害したとする殺人被告事件の公判期日において、本件犯行当日に犯行を目撃したとするWが、「Vを包丁で刺したのはAでした。」と証言しているものとする。また、同法第326条の同意はなされていないものとする。 
【見解】 
「刑事訴訟法第328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、同法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。 
そうすると、同条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(同法が定める要件を満たすものに限る。)又は同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述の中に現れている部分に限られるというべきである。」 
【証拠】
Wが本件の捜査段階において司法警察員Kの聞き込みに応じてした「私はBがVを包丁で刺すのを見た。」という供述が記載されている、K作成に係る捜査報告書で、Wの署名及び押印がないもの

(正答)2

(解説)
328条は、「第321条乃至第324条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であっても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。」として、弾劾証拠について規定している。
これについて、判例(最判平18.11.7)は、「328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。」としている。
【見解】はこれと同趣旨である。
そして、Wが本件の捜査段階において司法警察員Kの聞き込みに応じてした「私はBがVを包丁で刺すのを見た。」という供述はW自身の供述と矛盾するから自己矛盾供述に当たる。
しかし、当該供述が記載された捜査報告書はWの署名及び押印がなく、321条1項3号の要件を満たさないため、録取の過程の伝聞性が払拭されていない。
したがって、【見解】によると、K作成の捜査報告書は、328条の趣旨によって許容される証拠に当たらない。

(R6 予備 第20問 エ)
以下の【証拠】は、【見解】に照らし、刑事訴訟法第328条の趣旨によって許容される証拠に当たるか。当たる場合には1を、当たらない場合には2を選びなさい。なお、被告人AがVを包丁で刺して殺害したとする殺人被告事件の公判期日において、本件犯行当日に犯行を目撃したとするWが、「Vを包丁で刺したのはAでした。」と証言しているものとする。また、同法第326条の同意はなされていないものとする。 
【見解】 
「刑事訴訟法第328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、同法が定める厳格な証明 を要する趣旨であると解するのが相当である。 
そうすると、同条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(同法が定める要件を満たすものに限る。)又は同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述の中に現れている部分に限られるというべきである。」 
【証拠】
Wが本件の捜査段階において司法警察員の取調べを受けてした「私はBがVを包丁で刺すのを見た。」という供述を録取した書面で、Wの署名及び押印があるもの

(正答)1

(解説)
328条は、「第321条乃至第324条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であっても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。」として、弾劾証拠について規定している。
これについて、判例(最判平18.11.7)は、「328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。」としている。
【見解】はこれと同趣旨である。
そして、Wが本件の捜査段階において司法警察員の取調べを受けてした「私はBがVを包丁で刺すの を見た。」という供述は、W自身の供述と矛盾するから自己矛盾供述に当たり、当該書面はWの署名及び押印があるものは321条1項3号の要件を満たすから、録取の過程の伝聞性も払拭されている。
したがって、【見解】によると、Wの供述録取書は、328条の趣旨によって許容される証拠に当たる。

(R6 予備 第20問 オ)
以下の【証拠】は、【見解】に照らし、刑事訴訟法第328条の趣旨によって許容される証拠に当たるか。当たる場合には1を、当たらない場合には2を選びなさい。なお、被告人AがVを包丁で刺して殺害したとする殺人被告事件の公判期日において、本件犯行当日に犯行を目撃したとするWが、「Vを包丁で刺したのはAでした。」と証言しているものとする。また、同法第326条の同意はなされていないものとする。 
【見解】 
「刑事訴訟法第328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、同法が定める厳格な証明 を要する趣旨であると解するのが相当である。 
そうすると、同条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(同法が定める要件を満たすものに限る。)又は同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述の中に現れている部分に限られるというべきである。」 
【証拠】
Wとは別の地点から本件を目撃したとするYが本件の捜査段階において検察官の取調べを受けてした「私はBがVを包丁で刺すのを見た。」という供述を録取した書面で、Yの署名及び押印があるもの

(正答)2

(解説)
328条は、「第321条乃至第324条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であっても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。」として、弾劾証拠について規定している。
これについて、判例(最判平18.11.7)は、「328条により許容される証拠は、信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が、同人の供述書、供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)、同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。」としている。
【見解】はこれと同趣旨である。そして、Yが本件の捜査段階において検察官の取調べを受けてした「私はBがVを包丁で刺すのを見た。」という供述はWの自己矛盾供述に当たらない。
したがって、【見解】によると、Yの供述録取書は、328条の趣旨によって許容される証拠に当たらない。
総合メモ

日本語を理解しない外国人の日本語による供述調書 東京高判昭和51年11月24日

概要
日本語を理解しない外国人の日本語による供述調書の証拠能力が認められる。
判例
事案:日本語を理解しない外国人の日本語による供述調書の証拠能力について、その内容を被疑者の理解できる言語に翻訳した文書を同時に作成し、かつ、これに被疑者の確認の署名または押印を得ておかなくても、証拠能力が認められるかが問題となった。

判旨:「日本語を理解しない被疑者の取調にあたり立会わせた通訳人をして被疑者の供述を日本語に通訳させ、さらに日本語で記載された供述調書の内容を被疑者に通訳させてこれを理解させ、日本語の記載が被疑者の供述に符合していることを確認させて日本文調書に署名等を求めるという方式にとどめる場合には、右の過程で供述と記載の間に二重のそごが生じる可能性があり、しかもその発生原因となると思われる当該通訳人の通訳人としての一般的能力や通訳時における通訳の正確性あるいは通訳人としての公平性などを供述調書と翻訳文のそれぞれの記載自体を対比するという方法によって事後に吟味をすることができないという問題があって、この点から完壁さを欠くことになることは否み得ないところではあるけれども、他面、通訳が多分に機械的、技術的な性質のものであることを考えると、これら通訳人の能力や通訳時の正確性さらには公平性などは、当該通訳人や取調官などを証人として尋問し、あるいは被疑者に対する本人質問を行うなどの方法によって事後的に吟味・確認することができるものであるから、翻訳文を欠くからといって、ただちに通訳の正確性などは事後の確認が不可能であるとして被疑者調書としての証拠能力自体を否定し去るのは相当ではなく、翻訳文を欠く日本語の供述調書であっても、事後の吟味、検討によってその作成時の通訳の正確性等に疑問のないことが確認できた場合には、所定の要件を備えているかぎりこれに刑訴法322条1項に定める調書としての証拠能力を認めることができるものというべきである。」
過去問・解説
(R6 予備 第23問 オ)
司法警察職員は、日本語に通じない被疑者を通訳を介して取り調べる場合、その供述録取書を日本語で作成しても違法ではない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭51.11.24)は、「日本語を理解しない被疑者の取調にあたり立会わせた通訳人をして被疑者の供述を日本語に通訳させ、さらに日本語で記載された供述調書の内容を被疑者に通訳させてこれを理解させ、日本語の記載が被疑者の供述に符合していることを確認させて日本文調書に署名等を求めるという方式にとどめる場合...であっても、事後の吟味、検討によってその作成時の通訳の正確性等に疑問のないことが確認できた場合には、所定の要件を備えているかぎりこれに刑訴法322条1項に定める調書としての証拠能力を認めることができる…。」としている。
総合メモ

違法収集証拠排除法則 最一小判昭和53年9月7日

概要
証拠物の押収等の手続に憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるべきである。
判例
事案:被告人の所持していた覚せい剤様の粉末(以下、「本件証拠物」という。)が、被告人に対する覚せい剤取締法違反の公判において証拠請求されたが、本件証拠物は職務質問に際して行われた違法な所持品検査を経て、無令状で差し押さえられたものであったという事案において、本件証拠物が違法収集証拠として証拠排除されるか否かが問題となった。

判旨:「違法に収集された証拠物の証拠能力については、憲法及び刑訴法になんらの規定もおかれていないので、この問題は、刑訴法の解釈に委ねられているものと解するのが相当であるところ、刑訴法は、『刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。』(同法1条)ものであるから、違法に収集された証拠物の証拠能力に関しても、かかる見地からの検討を要するものと考えられる。ところで、刑罰法令を適正に適用実現し、公の秩序を維持することは、刑事訴訟の重要な任務であり、そのためには事案の真相をできる限り明らかにすることが必要であることはいうまでもないところ、証拠物は押収手続が違法であっても、物それ自体の性質・形状に変異をきたすことはなく、その存在・形状等に関する価値に変りのないことなど証拠物の証拠としての性格にかんがみると、その押収手続に違法があるとして直ちにその証拠能力を否定することは、事案の真相の究明に資するゆえんではなく、相当でないというべきである。しかし、他面において、事案の真相の究明も、個人の基本的人権の保障を全うしつつ、適正な手続のもとでされなければならないものであり、ことに憲法35条が、憲法33条の場合及び令状による場合を除き、住居の不可侵、捜索及び押収を受けることのない権利を保障し、これを受けて刑訴法が捜索及び押収等につき厳格な規定を設けていること、また、憲法31条が法の適正な手続を保障していること等にかんがみると、証拠物の押収等の手続に、憲法35条及びこれを受けた刑訴法218条1項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである。
 これを本件についてみると、原判決の認定した前記事実によれば、被告人の承諾なくその上衣左側内ポケツトから本件証拠物を取り出したB巡査の行為は、職務質問の要件が存在し、かつ、所持品検査の必要性と緊急性が認められる状況のもとで、必ずしも諾否の態度が明白ではなかった被告人に対し、所持品検査として許容される限度をわずかに超えて行われたに過ぎないのであって、もとより同巡査において令状主義に関する諸規定を潜脱しようとの意図があったものではなく、また、他に右所持品検査に際し強制等のされた事跡も認められないので、本件証拠物の押収手続の違法は必ずしも重大であるとはいいえないのであり、これを被告人の罪証に供することが、違法な捜査の抑制の見地に立ってみても相当でないとは認めがたいから、本件証拠物の証拠能力はこれを肯定すべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第25問 エ)
被疑者に対する任意同行の時点で実質的な逮捕があったと認定された場合、そのことのみで被疑者の供述調書の証拠能力は当然に否定される。

(正答)

(解説)
任意同行の時点で実質的な逮捕があったと認定された場合、その実質的な逮捕は逮捕状に基づかないものであるから、令状主義に反し違法である。
しかし、判例(最判昭53.9.7)は、「手続に、...令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定される...。」としている。
したがって、手続が違法であることから直ちに証拠物の証拠能力が否定されるということにはならない。
総合メモ