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短答判例

被告人作成の未収金控帳の補強証拠適格 最二小決昭和32年11月2日

概要
被告人が犯罪の嫌疑を受ける前に販売未収金関係を備忘のために作成した未収金控帳は、その記載内容が被告人の自白と目すべきものではない場合、323条2号の書面として証拠能力を有し、被告人の公判廷における自白の補強証拠となり得る。
判例
事案:被告人が、犯罪の嫌疑を受ける前に闇米と配給米とを問わず販売未収金関係を備忘のためにその都度記入した未収金控帳が証拠とされたという事案において、当該未収金控帳を被告人の公判廷における自白の補強証拠とすることができるかが問題となった。

判旨:①「第1審公判廷の自白が、第2審の審理においてはその公判廷の自白に入らない事は、最高裁判所大法廷が昭和24年4月6日判決されたことによつて明らかである。」
 ②「原審は…右自白の補強証拠として第1審が挙示した「未収金控帳」を同じく証拠として挙げられているのであるが、右控帳は次の様な点から被告人の自白と同一性質のものであつて、補強証拠とはなり得ないものである。即ち被告人の第1審公判に於ける自白というものは『右控帳に基いてその記載の通り販売しました』という趣旨に帰するものであつて、要するに控帳なるものは、その自白の内容となるにすぎない事が判るのである。」
 ③「自白は犯罪の嫌疑をうける前後を問わず、自白足り得るものであるから、犯罪の嫌疑を受ける前に記入されていても、自白と言いうる。尤も自己の刑事責任を認める供述を自白という定義に従えば、控帳への記入は自白に当らぬかも知れないが、少くとも自認(又は承認)に当ることは明らかであり、広義には自白を自認をも含めた意味に用いることは、挙説上肯定されている。…備忘のため記入すれば自白に当らぬであろうか。自己に不利益な事実を認めることを自認といわれているのであるが、被告人は登録米穀販売業者である以上、闇米の販売は統制法規上自己に不利益な事実であるから、備忘のため記入することも即ち自認に外ならないのである。自白乃至自認はそれが法律上自白乃至自認であるということを認識して、供述しなければ存在しないという法理はない。以上の如く控帳に記入すること即ち自白乃至自認に外ならないといわざるを得ないのである。
 ④「以上要するに「未収金控帳」なるものは、被告人の自白に対する補強証拠なり得ないものであつて、右控帳をもつて補強証拠たり得るとして判決をした原審は、本人の自白のみで有罪判決をしたことに帰するのである。しかも原審には被告人の自白がない以上、右有罪判決は刑事訴訟法第319条のみならず憲法第38条に違反するのである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 50%

(R8 予備 第22問 ア 改題)
甲は、警察署での取調べにおいて、殺人罪について自白し、甲の自白を内容とする供述調書(以下「本件調書」という。)が作成された。その後、甲は、殺人罪で起訴された。
公判期日における被告人質問に際し、甲が殺人罪について自白した場合、本件調書をこの自白の補強証拠とすることができる。

(正答)✕

(解説)
319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」と規定している。
判例(最決昭32.11.2)は、被告人が犯罪の嫌疑を受ける前に備忘のため作成した未収金控帳について、「その記載内容は被告人の自白と目すべきものではなく、右帳面はこれを刑訴323条2号の書面として証拠能力を有し、被告人の第一審公判廷の自白に対する補強証拠たりうるものと認めるべきである。」としており、当該書面が「被告人の自白と目すべきものではない」ことを理由に、補強証拠たりうるとしている。
これに対し、本件調書は、甲が殺人罪について自白した内容を記載したものであり、甲自身の自白に当たる。
したがって、公判期日における被告人質問に際し、甲が殺人罪について自白した場合、本件調書をこの自白の補強証拠とすることはできない。

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