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刑事訴訟法 脅迫文書の全文とほとんど同様の記載 最三小判昭和33年5月20日

概要
恐喝の手段として被害者に郵送された脅迫文書の趣旨が婉曲暗示的であって、起訴状にこれを要約摘示するには相当詳細にわたるのでなければその文書の趣旨が判明し難いような場合には、起訴状にその文書の全文と殆んど同様の記載がなされても、その起訴状は256条6項に違反しないものと解すべきである。
判例
事案:起訴状に恐喝の手段として利用された脅迫文書の全文とほとんど同様の記載がなされた事案において、恐喝の手段である脅迫文書のほとんど全文を起訴状に記載することが、256条6項に反しないかが問題となった。

判旨:「起訴状に記載された事実がその訴因を明示するため犯罪構成要件にあたる事実若くはこれと密接不可分の事実であって被告人の行為が罪名として記載された罰条にあたる所以を明らかにするため必要であるときはその記載は刑訴256条6項に違反しないこと当裁判所の判例とするところである(昭和25年(あ)992号同26年4月10日第三小法廷判決、集5巻5号842頁)。記録によると、本件起訴状(罪名は恐喝)には公訴事実第2(1)の記載として、『被告人甲は乙と共謀の上V等から金円を不法に領得せんことを企て、被告人甲に於て、昭和23年12月31日炭酸紙及び骨筆を使用し和罫紙3枚に宛 ”拝啓貴下がAに対し従来莫大なる数量の生糸の売買を為し本年下半期のみにても八百数十貫其の価格壱千万円に及び就中弐拾壱中の如き入手困難なるものもあり之等に関し各種脱税に対する第三者申告の対称たるのみならず近日中宇和島市に於て発行の予定なる新日本建設新聞の創刊号に所謂特種としての価値を発揮する次第なる処本件事案の重大性と業界に及ぼす影響不尠点に貴下の御迷惑を考慮し十分慎重なる態度を以て臨み度に付貴下の釈明をも参考に致し度く依って来る1月5日迄に何分の御書面相煩度得貴意候也昭和弐拾参年拾弐月参拾壱日、北宇和郡泉村出目高田克六方甲、宇和島市御殿町員外一、V殿” と複写し、以て同人をして釈明しなければ脱税に対する第三者申告を為し且つ新聞紙上に掲載して刑事処分をも受けしむべく依って同人の自由、名誉、財産に対し害を加るべきことを暗示し暗に之が揉消しのため相当額の金円を提供すべき旨の脅迫文3通を作成し、即日宇和島郵便局から内1通を書留内容証明郵便としてV宛郵送翌昭和24年1月1日同人をして受領畏怖せしめ』たものである、との記載があり、そして右起訴状に記載された右郵送脅迫書翰の記載は後に第1審公判廷に証拠として提出された郵送書翰(押収の証1号手紙1通)の記載と殆んど同様のものであること、しかし記載形式は両者互いに異っていることを認めることができる。
  一般に、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、又はその内容を引用してはならないこと刑訴256条6項の明定するところであるから、本件起訴状において郵送脅迫書翰の記載内容を表示するには例えば第1審判決事実認定の部においてなされているように少しでもこれを要約して摘記すべきである。しかし、起訴状には訴因を明示して公訴事実を記載すべく、訴因を明示するにはできる限り犯罪の方法をも特定して記載しなければならないことも刑訴256条の規定するところであり、そして起訴状における公訴事実の記載は具体的になすべく、恐喝罪においては、被告人が財物の交付を受ける意図をもって他人に対し害を加えるべきことの通告をした事実は犯罪構成事実に属するから、具体的にこれを記載しなければならないこというまでもない。本件公訴事実によればいわゆる郵送脅迫文書は加害の通告の主要な方法であるとみられるのに、その趣旨は婉曲暗示的であって、被告人の右書状郵送が財産的利得の意図からの加害の通告に当るか或は単に平穏な社交的質問書に過ぎないかは主としてその書翰の記載内容の解釈によって判定されるという微妙な関係のあることを窺うことができる。かような関係があって、起訴状に脅迫文書の内容を具体的に真実に適合するように要約摘示しても相当詳細にわたるのでなければその文書の趣旨が判明し難いような場合には、起訴状に脅迫文書の全文と殆んど同様の記載をしたとしても、それは要約摘示と大差なく、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞もなく、刑訴256条6項に従い『裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物の内容を引用し』たものとして起訴を無効ならしめるものと解すべきではない。」
過去問・解説
(H19 司法 第26問 ウ)
恐喝の手段として送付された脅迫状の全文を恐喝罪の公訴事実に引用するのは、起訴状一本主義に反する証拠の引用に該当するので許されることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.5.20)は、「恐喝罪において、...起訴状に脅迫文書の内容を具体的に真実に適合するように要約摘示しても相当詳細にわたるのでなければその文書の趣旨が判明し難いような場合には、起訴状に脅迫文書の全文と殆んど同様の記載をしたとしても、...刑訴256条6項に従い『裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物の内容を引用し』たものとして起訴を無効ならしめるものと解すべきではない。」としている。
したがって、恐喝の手段として送付された脅迫状の全文を恐喝罪の公訴事実に引用することも許されることがある。
総合メモ
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