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刑事訴訟法 第89条

条文
第89条(必要的保釈)
 保釈の請求があったときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。        
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
過去問・解説
(H19 司法 第23問 1)
殺人罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求した場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(正答)

(解説)
89条1号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」を掲げている。そして、刑法199条は、殺人罪の法定刑について、「死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑」と規定している。そのため、殺人罪の場合、89条1号に当たることになる。
したがって、殺人罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求した場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(H19 司法 第23問 2)
傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが、甲に殺人罪で有期拘禁刑の実刑判決を受けた前科がある場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(正答)

(解説)
89条2号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。」を掲げている。そして、刑法199条は、殺人罪の法定刑につき、「死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑」と規定している。
本肢における甲は殺人罪で有期拘禁刑の実刑判決を受けているため、89条2号に当たることになる。
したがって、傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが、甲に殺人罪で有期拘禁刑の実刑判決を受けた前科がある場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(H19 司法 第23問 3)
傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが、甲に逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(正答)

(解説)
89条各号は、保釈が必要とならない場合を掲げているものの、「逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある場合」は掲げられていない。
したがって、傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求した際、甲に逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある場合であっても、裁判所は、89条による保釈を許可することができる。

(H19 司法 第23問 4)
被害者を乙とする傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが、甲に乙を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由がある場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(正答)

(解説)
89条5号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。」を掲げている。
そして、甲に乙を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由がある場合、89条5号に当たることになる。
したがって、被害者を乙とする傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが、甲に乙を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由がある場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(H19 司法 第23問 5)
傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが、甲が定まった住居を有しない場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(正答)

(解説)
89条6号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人の氏名又は住居が分からないとき。」を掲げている。
そして、甲が定まった住居を有しない場合、89条6号に当たることになる。
したがって、傷害罪で公訴を提起され、同罪で勾留中の被告人甲が保釈を請求したが、甲が定まった住居を有しない場合、裁判所は、89条による保釈を許可することはできない。

(H22 司法 第27問 ウ)
裁判所は、被告人から保釈の請求があった場合において、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、保釈を許すことができない。

(正答)

(解説)
89条4号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」を掲げている。そして、被告人に罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合、89条4号に当たることになる。
他方、90条は、「裁判所は、…適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と規定し、職権での裁量保釈を認めている。
したがって、裁判所は、被告人から保釈の請求があった場合において、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときであっても、保釈を許すことができる。

(H23 司法 第28問 甲)
甲は、詐欺の罪により拘禁刑8年の刑に処せられ、乙は、強盗致傷の罪により拘禁刑7年の刑に処せられ、丙は、器物損壊の罪により拘禁刑1年の刑に処せられ、いずれも、同じ刑事施設に収容されて顔見知りとなった。甲、乙及び丙は、いずれも平成21年中に刑の執行を終了し、その後、それぞれH市内に住居を定めて生活していた。
 平成22年7月2日、甲及び乙が甲の自宅で住居不定の丁と一緒に食事をしていたところ、丙がH市内に住居を有する戊を連れて遊びに来た。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、雑談をしていたが、その途中、他人の住居に侵入して金品を窃取する旨の謀議が成立した。そして、同日午後10時、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、H市内に所在するVの住居に侵入して金品を窃取したが、Vの住居を出たところで、警察官の職務質問を受けて犯行を自白し、住居侵入、窃盗の事実により緊急逮捕された。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、同月3日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留を請求された上、緊急逮捕された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により勾留され、同月12日、勾留された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により公判請求された。
 甲、乙及び丁の3名には余罪がなかったが、丙には、H市内で連続して車のタイヤをパンクさせた余罪、戊には、知人を包丁で突き刺して傷害を負わせた余罪があった。そのため、丙は、同月13日、暴力行為等処罰に関する法律第1条の3に違反する事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により勾留され、同月23日、勾留された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により公判請求された。一方、戊は、同年7月13日、殺人未遂の事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の殺人未遂の事実により勾留され、同月23日、殺人未遂の事実ではなく、傷害の事実により公判請求された。
 なお、甲、乙及び丙については、前記前科以外の前科がなく、丁及び戊については、前科がないものとし、甲、乙、丙、丁及び戊のいずれについても、逃亡のおそれは認められるが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」及び「被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由」は認められないものとする。
甲には、明らかに権利保釈は認められない。

(正答)

(解説)
89条1号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」を掲げている。そして、刑法130条前段は、住居侵入罪の法定刑について、「3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金」と規定し、刑法235条は、窃盗罪の法定刑について、「10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」と規定しており、刑事訴訟法89条1号に当たらない。
さらに、同条2号は、保釈が必要とはならない場合の1つとして、「被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。」を掲げている。
そして、刑法246条は、詐欺罪の法定刑につき、「10年以下の拘禁刑」と規定しており、89条2号に当たらない。また、89条3号ないし6号に当たる事情はない。
したがって、甲に権利保釈は認められ得る。

(H23 司法 第28問 乙)
甲は、詐欺の罪により拘禁刑8年の刑に処せられ、乙は、強盗致傷の罪により拘禁刑7年の刑に処せられ、丙は、器物損壊の罪により拘禁刑1年の刑に処せられ、いずれも、同じ刑事施設に収容されて顔見知りとなった。甲、乙及び丙は、いずれも平成21年中に刑の執行を終了し、その後、それぞれH市内に住居を定めて生活していた。
 平成22年7月2日、甲及び乙が甲の自宅で住居不定の丁と一緒に食事をしていたところ、丙がH市内に住居を有する戊を連れて遊びに来た。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、雑談をしていたが、その途中、他人の住居に侵入して金品を窃取する旨の謀議が成立した。そして、同日午後10時、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、H市内に所在するVの住居に侵入して金品を窃取したが、Vの住居を出たところで、警察官の職務質問を受けて犯行を自白し、住居侵入、窃盗の事実により緊急逮捕された。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、同月3日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留を請求された上、緊急逮捕された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により勾留され、同月12日、勾留された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により公判請求された。
 甲、乙及び丁の3名には余罪がなかったが、丙には、H市内で連続して車のタイヤをパンクさせた余罪、戊には、知人を包丁で突き刺して傷害を負わせた余罪があった。そのため、丙は、同月13日、暴力行為等処罰に関する法律第1条の3に違反する事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により勾留され、同月23日、勾留された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により公判請求された。一方、戊は、同年7月13日、殺人未遂の事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の殺人未遂の事実により勾留され、同月23日、殺人未遂の事実ではなく、傷害の事実により公判請求された。
 なお、甲、乙及び丙については、前記前科以外の前科がなく、丁及び戊については、前科がないものとし、甲、乙、丙、丁及び戊のいずれについても、逃亡のおそれは認められるが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」及び「被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由」は認められないものとする。
乙には、明らかに権利保釈は認められない。

(正答)

(解説)
89条2号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。」を掲げている。
そして、刑法240条前段は、強盗致傷罪の法定刑について、「無期又は6年以上の拘禁刑」と規定しており、89条2号に当たる。
したがって、乙には、明らかに権利保釈は認められない。

(H23 司法 第28問 丙)
甲は、詐欺の罪により拘禁刑8年の刑に処せられ、乙は、強盗致傷の罪により拘禁刑7年の刑に処せられ、丙は、器物損壊の罪により拘禁刑1年の刑に処せられ、いずれも、同じ刑事施設に収容されて顔見知りとなった。甲、乙及び丙は、いずれも平成21年中に刑の執行を終了し、その後、それぞれH市内に住居を定めて生活していた。
 平成22年7月2日、甲及び乙が甲の自宅で住居不定の丁と一緒に食事をしていたところ、丙がH市内に住居を有する戊を連れて遊びに来た。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、雑談をしていたが、その途中、他人の住居に侵入して金品を窃取する旨の謀議が成立した。そして、同日午後10時、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、H市内に所在するVの住居に侵入して金品を窃取したが、Vの住居を出たところで、警察官の職務質問を受けて犯行を自白し、住居侵入、窃盗の事実により緊急逮捕された。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、同月3日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留を請求された上、緊急逮捕された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により勾留され、同月12日、勾留された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により公判請求された。
 甲、乙及び丁の3名には余罪がなかったが、丙には、H市内で連続して車のタイヤをパンクさせた余罪、戊には、知人を包丁で突き刺して傷害を負わせた余罪があった。そのため、丙は、同月13日、暴力行為等処罰に関する法律第1条の3に違反する事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により勾留され、同月23日、勾留された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により公判請求された。一方、戊は、同年7月13日、殺人未遂の事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の殺人未遂の事実により勾留され、同月23日、殺人未遂の事実ではなく、傷害の事実により公判請求された。
 なお、甲、乙及び丙については、前記前科以外の前科がなく、丁及び戊については、前科がないものとし、甲、乙、丙、丁及び戊のいずれについても、逃亡のおそれは認められるが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」及び「被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由」は認められないものとする。
丙には、明らかに権利保釈は認められない。

(正答)

(解説)
89条3号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」を掲げている。そして、暴力行為等処罰に関する法律1条の3は、「常習トシテ刑法第204条、第208条、第222条又ハ第261条ノ罪ヲ犯シタル者人ヲ傷害シタルモノナルトキハ1年以上15年以下ノ懲役ニ処シ其ノ他ノ場合ニ在リテハ3月以上5年以下ノ懲役ニ処ス」と規定している。本肢における丙はH市内で連続して車のタイヤをパンクさせており、常習として器物損害罪(刑法261条)を犯したものとして、丙には暴力行為等処罰に関する法律1条の3の罪が成立する。そのため、89条3号に当たる。
したがって、丙には、明らかに権利保釈は認められない。

(H23 司法 第28問 丁)
甲は、詐欺の罪により拘禁刑8年の刑に処せられ、乙は、強盗致傷の罪により拘禁刑7年の刑に処せられ、丙は、器物損壊の罪により拘禁刑1年の刑に処せられ、いずれも、同じ刑事施設に収容されて顔見知りとなった。甲、乙及び丙は、いずれも平成21年中に刑の執行を終了し、その後、それぞれH市内に住居を定めて生活していた。
 平成22年7月2日、甲及び乙が甲の自宅で住居不定の丁と一緒に食事をしていたところ、丙がH市内に住居を有する戊を連れて遊びに来た。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、雑談をしていたが、その途中、他人の住居に侵入して金品を窃取する旨の謀議が成立した。そして、同日午後10時、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、H市内に所在するVの住居に侵入して金品を窃取したが、Vの住居を出たところで、警察官の職務質問を受けて犯行を自白し、住居侵入、窃盗の事実により緊急逮捕された。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、同月3日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留を請求された上、緊急逮捕された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により勾留され、同月12日、勾留された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により公判請求された。
 甲、乙及び丁の3名には余罪がなかったが、丙には、H市内で連続して車のタイヤをパンクさせた余罪、戊には、知人を包丁で突き刺して傷害を負わせた余罪があった。そのため、丙は、同月13日、暴力行為等処罰に関する法律第1条の3に違反する事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により勾留され、同月23日、勾留された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により公判請求された。一方、戊は、同年7月13日、殺人未遂の事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の殺人未遂の事実により勾留され、同月23日、殺人未遂の事実ではなく、傷害の事実により公判請求された。
 なお、甲、乙及び丙については、前記前科以外の前科がなく、丁及び戊については、前科がないものとし、甲、乙、丙、丁及び戊のいずれについても、逃亡のおそれは認められるが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」及び「被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由」は認められないものとする。
丁には、明らかに権利保釈は認められない。

(正答)

(解説)
89条6号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人の氏名又は住居が分からないとき。」を掲げている。
そして、丁は住居不定であるので、89条6号に当たることになる。
したがって、丁には、明らかに権利保釈は認められない。

(H23 司法 第28問 戊)
甲は、詐欺の罪により拘禁刑8年の刑に処せられ、乙は、強盗致傷の罪により拘禁刑7年の刑に処せられ、丙は、器物損壊の罪により拘禁刑1年の刑に処せられ、いずれも、同じ刑事施設に収容されて顔見知りとなった。甲、乙及び丙は、いずれも平成21年中に刑の執行を終了し、その後、それぞれH市内に住居を定めて生活していた。
 平成22年7月2日、甲及び乙が甲の自宅で住居不定の丁と一緒に食事をしていたところ、丙がH市内に住居を有する戊を連れて遊びに来た。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、雑談をしていたが、その途中、他人の住居に侵入して金品を窃取する旨の謀議が成立した。そして、同日午後10時、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、H市内に所在するVの住居に侵入して金品を窃取したが、Vの住居を出たところで、警察官の職務質問を受けて犯行を自白し、住居侵入、窃盗の事実により緊急逮捕された。その後、甲、乙、丙、丁及び戊の5名は、同月3日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留を請求された上、緊急逮捕された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により勾留され、同月12日、勾留された事実と同一の住居侵入、窃盗の事実により公判請求された。
 甲、乙及び丁の3名には余罪がなかったが、丙には、H市内で連続して車のタイヤをパンクさせた余罪、戊には、知人を包丁で突き刺して傷害を負わせた余罪があった。そのため、丙は、同月13日、暴力行為等処罰に関する法律第1条の3に違反する事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により勾留され、同月23日、勾留された事実と同一の同法律第1条の3に違反する事実により公判請求された。一方、戊は、同年7月13日、殺人未遂の事実で逮捕され、同月14日中にH地方検察庁検察官に送致されて勾留請求された上、逮捕された事実と同一の殺人未遂の事実により勾留され、同月23日、殺人未遂の事実ではなく、傷害の事実により公判請求された。
 なお、甲、乙及び丙については、前記前科以外の前科がなく、丁及び戊については、前科がないものとし、甲、乙、丙、丁及び戊のいずれについても、逃亡のおそれは認められるが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」及び「被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由」は認められないものとする。
戊には、明らかに権利保釈は認められない。

(正答)

(解説)
89条1号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」を掲げている。
ここでいう「罪を犯したものであるとき」とは、現にその罪の訴因で起訴されていることを意味する(酒巻匡「刑事訴訟法」第2版363頁)と解されている。
そして、刑法204条は、傷害罪の法定刑につき、「15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」と規定しており、89条1号には当たらない。また、89条2号ないし6号に当たる事情はない。
したがって、戊には権利保釈が認められ得る。

(H24 司法 第27問 イ)
定まった住居を有する被告人が、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるということのみを理由に勾留されている場合、被告人から保釈の請求があったときは、裁判所は保釈を許さなければならない。

(正答)

(解説)
89条6号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人の氏名又は住居が分からないとき。」を掲げている。
本肢における被告人は、定まった住居を有するので、89条6号には当たらない。しかし、保釈が必要とはならない事由は、89条各号に他にも掲げられており、被告人が定まった住居を有することから直ちに権利保釈が認められることにはならない。
したがって、定まった住居を有する被告人が、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるということのみを理由に勾留されている場合、被告人から保釈の請求があったときは、裁判所は保釈を許さなければならないというわけではない。

(H25 共通 第29問 イ)
裁判員裁判対象事件は、刑事訴訟法第89条第1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは拘禁刑に当たる罪」に該当するから、保釈は認められない。

(正答)

(解説)
89条1号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」を掲げている。
そして、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律は、裁判員裁判対象事件として、「死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件」(同法2条1項1号)、「裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの」(同法2条1項2号)を掲げている。ここでいう「裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件」とは、「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪…に係る事件」を指す。
そのため、裁判員裁判対象事件は、刑事訴訟法89条1号に当たる。もっとも、刑事訴訟法90条は、「裁判所は、…適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と規定し、職権での裁量保釈を認めている。
したがって、裁判員裁判対象事件は、刑事訴訟法第89条第1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは拘禁刑に当たる罪」に該当するが、保釈は認められ得る。

(H26 共通 第38問 ウ)
裁判所は、第1審の公判審理中に保釈の請求があったときは、刑事訴訟法第89条各号所定の事由がある場合を除いて、保釈を許さなければならない。

(正答)

(解説)
89条各号は、権利保釈の例外として、保釈が必要とならない場合を掲げている。
したがって、裁判所は、第1審の公判審理中に保釈の請求があったときは、刑事訴訟法第89条各号所定の事由がある場合を除いて、保釈を許さなければならない。

(H26 司法 第39問 エ)
外国人である被告人が日本に適法に在留する資格を有しない場合でも、同被告人の保釈を許すことは違法ではない。

(正答)

(解説)
89条各号は、保釈が必要とならない場合を掲げているものの、「外国人である被告人が日本に適法に在留する資格を有しない場合」は掲げられていない。
したがって、外国人である被告人が日本に適法に在留する資格を有しない場合でも、同被告人の保釈を許すことは違法ではない。

(H27 予備 第25問 イ)
殺人の公訴事実により勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許される。

(正答)

(解説)
89条1号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」を掲げている。そして、刑法199条は、殺人罪の法定刑について、「死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑」と規定している。そのため、殺人罪の場合、89条1号に当たり、89条1号による保釈は許されない。もっとも、90条は、「裁判所は、…適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と規定し、職権での裁量保釈を認めている。また、91条は、「勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。」と規定し、義務的保釈を認めている。
したがって、殺人の公訴事実により勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許される。

(H27 予備 第25問 ウ)
逃亡のおそれがある勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許される。

(正答)

(解説)
89条各号は、保釈が必要とならない場合を掲げているものの、「逃亡のおそれがある場合」は掲げられていない。90条は、「裁判所は、…適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と規定し、職権での裁量保釈を認めている。他にも、91条は、「勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。」と規定し、義務的保釈を認めている。
したがって、逃亡のおそれがある勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許される。

(H27 予備 第25問 エ)
保釈の請求がないまま、勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許される。

(正答)

(解説)
90条は、「裁判所は、…適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と規定し、91条は、「勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、…職権で、…保釈を許さなければならない。」と規定している。
したがって、保釈の請求がないまま、勾留中の被告人について、保釈を許可することは、法律上許される。

(H30 予備 第22問 エ)
勾留されている被告人につき、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、保釈は一切許されない。

(正答)

(解説)
89条4号は、保釈が必要とならない場合の1つとして、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」を掲げている。そのため、被告人に罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合、89条4号に当たり、権利保釈による保釈はできない。
もっとも、90条は、「裁判所は、…適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と規定し、職権での裁量保釈を認めている。また、91条は、「勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。」と規定し、義務的保釈を認めている。
したがって、勾留されている被告人につき、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときであっても、保釈は許される場合っがある。

(R3 予備 第20問 イ)
必要的保釈(権利保釈)の可否については、刑事訴訟法上、法定刑の軽重により差異はない。

(正答)

(解説)
89条1号ないし3号は、保釈が必要とならない場合として、「被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」(1号)「被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。」(2号)「被告人が常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。」(3号)を掲げている。
したがって、必要的保釈(権利保釈)の可否については、刑事訴訟法上、法定刑の軽重により差異はある。
総合メモ
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