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取締役(取締役の競業取引)

競業取引該当性 東京地判昭和56年3月26日

概要
①取締役が競業他社の代表取締役でなくても、その会社の株式の大部分を取得し事実上の主宰者として経営を支配した場合には、競業取引となる。
②会社が現に行っていない事業であっても、会社が進出を考え調査等を行っていた地域における同一商品の販売は、競業取引となる。
判例
事案:①X社の代表取締役Yが、競業他社であるA社の株式の大部分を取得し、A社の経営を意のままにしてきたという事案において、Yが競業取引を行ったといえるか、②関東地区で事業を行うX社が関西地区への進出を考え調査等を行っていたところ、X社の代表取締役YがB社を設立し、B社の代表取締役として関西地区でX社の競業を行ったという事案において、Yが競業取引を行ったといえるかが問題となった。

判旨:①「Yが…A社の事実上の主宰者として、これを経営してきた…。Yの…行為は、第三者であるA社のために、X社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、このことは、…X社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。」 ②「YがXの代表取締役でありながら、B社…の代表取締役として、…これらの会社を経営したことは、第三者であるこれらの会社のために、X社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、X社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。」
過去問・解説
(H29 予備 第22問 ウ)
取締役会設置会社であるA株式会社(以下「A社」という。)は、事業として甲県内においてトラックによる陸上貨物運送を行っている。A社の取締役であるBの行為に関し、A社が、その事業計画及び市場調査に基づき、甲県に隣接する乙県内においてトラックによる陸上貨物運送を開始することを取締役会の決議によって決定し、乙県内においてトラックターミナル用の不動産を取得した後、Bが、営業として乙県内においてトラックによる陸上貨物運送を行おうとする場合には、A社が乙県内においてトラックによる陸上貨物運送をいまだ開始していないときであっても、Bは、A社の取締役会において、当該運送に係る取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京地判昭56.3.26)は、本肢と同種の事案において、「YがXの代表取締役でありながら、B社…の代表取締役として、…これらの会社を経営したことは、第三者であるこれらの会社のために、X社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、X社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。」として、会社がいまだ開始していない事業についても、会社が当該事業について進出を考え調査等を行っていたという事情から、競業性を肯定している。
したがって、Bは、A社の取締役会において、当該運送に係る取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない(356条1項1号、365条1項)。

(H29 予備 第22問 オ)
取締役会設置会社であるA株式会社(以下「A社」という。)は、事業として甲県内においてトラックによる陸上貨物運送を行っている。A社の取締役であるBの行為に関し、Bが、トラックによる陸上貨物運送を行うことを事業の目的とするD株式会社(以下「D社」という。)を設立し、その発行する全部の株式を保有する場合において、自らはD社の代表取締役でないときは、甲県内における陸上貨物運送に係る取引について継続的に自ら決定してD社の代表取締役に指示しているときであっても、Bは、A社の取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けることを要しない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京地判昭56.3.26)は、「Yが…A社の事実上の主宰者として、これを経営してきた…。Yの…行為は、第三者であるA社のために、X社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、このことは、…X社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。」として、取締役が競業他社の代表取締役でなくても、その会社の株式の大部分を取得し事実上の主宰者として経営を支配した場合には、競業取引となることを示している。
したがって、Bは、A社の取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けることを要する(356条1項1号、365条1項)。
総合メモ

競業取引該当性 最二小判昭和24年6月4日

概要
木工品の製作及びこれに附帯する事業を目的とする会社において、取締役の競合取引該当性を判断する際には、資材原料である立木伐木等の買入先の競合も考慮される。
判例
事案:木工品の製作及びこれに附帯する事業を目的とする会社において、取締役の競合取引該当性を判断する際には、資材原料である立木伐木等の買入先の競合も考慮されるのかが問題となった。

判旨:「被上告会社において新に追加した目的は木工品の製作及びこれに附帯する事業である、そして附帯事業というのは主たる目的事業に関連のある各種の事業をいうのであって木工品の製作を主たる目的とする事業の附帯事業のうちにはその資材原料たる立木伐木等の買入をする事業をも包含するものと解するのが正当である…。」
過去問・解説
(H21 司法 第42問 イ)
判例によれば、株式会社の事業の部類に属する取引に当たるか否かを判断する場合には、株式会社が現に行っている事業との市場での競合性を基準として判断し、仕入先の競合を考慮する必要はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.6.4)は、「被上告会社において新に追加した目的は木工品の製作及びこれに附帯する事業である、そして附帯事業というのは主たる目的事業に関連のある各種の事業をいうのであって木工品の製作を主たる目的とする事業の附帯事業のうちにはその資材原料たる立木伐木等の買入をする事業をも包含するものと解するのが正当である…。」と判示し、木工品の製作及びこれに附帯する事業を目的とする会社において、取締役の競合取引該当性を判断する際に、資材原料である立木伐木等の買入先の競合も考慮している。
したがって、判例によれば、株式会社の事業の部類に属する取引に当たるか否かを判断する場合には、仕入先の競合も考慮する。
総合メモ