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取締役(取締役の利益相反取引)

無利息無担保の金銭消費貸借の直接取引該当性 最二小判昭和38年12月6日

概要
株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、356条1項2号にいう取引に当たらない。
判例
事案:株式会社に対しその取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為が、356条1項2号にいう取引に当たるかが問題となった。

判旨:「商法265条(現:会社法356条1項2号、365条1項)が、取締役が自己又は第三者のためにその会社と取引をなすには取締役会の承認を要する旨規定するのは、会社と取締役個人との間の利害衝突から会社の利益を保護することをその目的とするものであるところ、取締役がその会社に対し無利息、無担保で金員を貸付ける行為は、特段の事情のない限り会社の利益にこそなれ不利益であるとはいえないから、取締役会の承認を要しないものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H25 予備 第21問 エ)
取締役会設置会社である甲株式会社(以下「甲社」という。)の代表取締役Aが、甲社を代表して、甲社の取締役Bとの間で取引(以下「本件取引」という。)を行う場合に関し、判例によれば、本件取引の内容が、Bが甲社に対して無利息かつ無担保で金銭を貸し付けるものである場合には、利益相反取引として甲社の取締役会の承認を受ける必要はない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭38.12.6)は、「商法265条(現:会社法356条1項2号、365条1項)が、取締役が自己又は第三者のためにその会社と取引をなすには取締役会の承認を要する旨規定するのは、会社と取締役個人との間の利害衝突から会社の利益を保護することをその目的とするものであるところ、取締役がその会社に対し無利息、無担保で金員を貸付ける行為は、…取締役会の承認を要しない…。」としている。
したがって、Bは、本件取引に当たって甲社の承認を受ける必要はない。
総合メモ

取締役と会社との利益相反取引が株主全員の合意によってされた場合における取締役会の承認の要否 最一小判昭和49年9月26日

概要
取締役と会社との利益相反取引が株主全員の合意によってされた場合には、取締役会の承認を要しない。
判例
事案:取締役と会社との取引が株主全員の合意によってされた場合に、取締役会の承認を要するかが問題となった。

判旨:「商法265条(現:会社法356条1項2号、365条1項)が取締役と会社との取引につき取締役会の承認を要する旨を定めている趣旨は、取締役がその地位を利用して会社と取引をし、自己又は第三者の利益をはかり、会社ひいて株主に不測の損害を蒙らせることを防止することにあると解されるところ、…株主全員の合意がある以上、別に取締役会の承認を要しないことは、上述のように会社の利益保護を目的とする商法265条(現:会社法356条1項2号、365条1項)の立法趣旨に照らし当然であ…る…。」
過去問・解説
(H21 司法 第42問 ア)
判例によれば、取締役会設置会社において、取締役と会社との間の取引が株主全員の合意によってされた場合には、利益相反取引としての取締役会の承認を受けることを要しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.9.26)は、本肢と同種の事案において、「株主全員の合意がある以上、別に取締役会の承認を要しないことは、上述のように会社の利益保護を目的とする商法265条(現:会社法356条1項2号、365条1項)の立法趣旨に照らし当然であ…る…。」としている。
総合メモ

会社一任会社と一人株主である取締役との間での直接取引における取締役会の承認の要否 最一小判昭和45年8月20日

概要
会社と取締役間に356条1項2号所定の取引がなされる場合でも、取締役が会社の全株式を所有し、会社の営業が実質上取締役の個人経営にすぎないとき(一人会社と一人株主との間における利益相反取引の場合)は、取引によって両者の間に実質的に利害相反関係が生じないから、取締役会の承認は不要である。
判例
事案:会社と取締役間に356条1項2号所定の取引がなされる場合において、両者の間に実質的に利害相反関係が生じないときに、取締役会の承認が必要であるかが問題となった。

判旨:「本件売買契約締結当時には、被上告会社は株式会社の形態をとっているとはいえ、その営業は実質上、上告人…の個人経営のものにすぎないから、被上告会社の利害得失は実質的には上告人…の利害得失となるものであり、その間に利害相反する関係はない。したがって、上告人…がその所有の本件土地を被上告会社に売り渡すことについて、両者の間に実質的に利害相反の関係を生じるものではないというべきである。…商法265条(現:会社法356条、365条)が、会社と取締役との間の同条所定の取引について取締役会の承認を要するものとしている趣旨は、取締役個人と株式会社との利害相反する場合において取締役個人の利益を図り、会社に不利益な行為が行なわれることを防止するにあるのであるから、会社と取締役間に商法265条(現:会社法356条、365条)所定の取引がなされた場合でも、…実質的に会社と当該取締役との間に利害相反する関係がないときには、同条所定の取締役会の承認は必要ないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第43問 4)
取締役会設置会社の取締役に対する金銭の貸付けに関し、判例によれば、株式会社の取締役が当該株式会社の全株式を所有し、当該株式会社の営業が実質上当該取締役の個人経営のものにすぎないときであっても、当該株式会社が当該取締役に対して金銭の貸付けをするためには、当該貸付けに関する取締役会の承認が必要である。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.8.20)は、「会社と取締役間に商法265条(現:会社法356条、365条)所定の取引がなされた場合でも、…実質的に会社と当該取締役との間に利害相反する関係がないときには、同条所定の取締役会の承認は必要ない…。」としている。
したがって、株式会社の取締役が当該株式会社の全株式を所有し、当該株式会社の営業が実質上当該取締役の個人経営のものにすぎないときは、実質的に会社と当該取締役との間に利害相反関係がないから、取締役会の承認は不要である。
総合メモ

取締役会の承認を得ない利益相反取引の効力 最大判昭和43年12月25日

概要
①取締役が会社法356条1項2号又は3号に違反して、取締役会の承認を受けることなく、利益相反取引をなしたときは、本来、その取引は無効と解すべきである。
②取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反する取引(直接取引)にあっては、会社は、当該取締役に対して、取締役会の承認を受けなかったことを理由として、その行為の無効を主張し得ることは、前述のとおり当然である(絶対的無効説)。
③会社以外の第三者と取締役が会社を代表して自己のためにした取引(間接取引)については、取引の安全の見地より、善意の第三者を保護する必要があるから、会社は、その取引について取締役会の承認を受けなかったことのほか、相手方である第三者が悪意(その旨を知っていること)であることを主張し、立証して始めて、その無効をその相手方である第三者に主張し得る(相対的無効説)。
判例
事案:利益相反取引が行われた場合に、会社が取締役、第三者に対して無効を主張できるかが問題となった。

判旨:「商法265条(現:会社法356条1項2号、3号)は、取締役個人と株式会社との利害相反する場合において、取締役個人の利益を図り、会社に不利益な行為が濫りに行なわれることを防止しようとする法意に外ならないのであるから、同条にいわゆる取引中には、取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反の行為のみならず、取締役個人の債務につき、その取締役が会社を代表して、債権者に対し債務引受をなすが如き、取締役個人に利益にして、会社に不利益を及ぼす行為も、取締役の自己のためにする取引として、これに包含されるものと解すべきである…。 そして、取締役が右規定に違反して、取締役会の承認を受けることなく、右の如き行為をなしたときは、本来、その行為は無効と解すべきである。このことは、同条は、取締役会の承認を受けた場合においては、民法108条の規定を適用しない旨規定している反対解釈として、その承認を受けないでした行為は、民法108条違反の場合と同様に、一種の無権代理人の行為として無効となることを予定しているものと解すべきであるからである。 取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反する取引にあっては、会社は、当該取締役に対して、取締役会の承認を受けなかったことを理由として、その行為の無効を主張し得ることは、前述のとおり当然であるが、会社以外の第三者と取締役が会社を代表して自己のためにした取引については、取引の安全の見地より、善意の第三者を保護する必要があるから、会社は、その取引について取締役会の承認を受けなかったことのほか、相手方である第三者が悪意(その旨を知っていること)であることを主張し、立証して始めて、その無効をその相手方である第三者に主張し得るものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第43問 2)
取締役会設置会社の取締役に対する金銭の貸付けに関し、金銭の貸付けが取締役会の承認を受けずにされた場合には、株式会社は、金銭の貸付けを受けた取締役に対して、当該貸付けに係る契約の無効を主張することができる。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭43.12.25)は、「取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反する取引にあっては、会社は、当該取締役に対して、取締役会の承認を受けなかったことを理由として、その行為の無効を主張し得ることは、…当然である…。」として、取締役会の承認を得ない直接取引の効力について、会社と当該取締役との間においては、絶対的無効説を採用している。
本肢の事例における利益相反取引は直接取引であるから、株式会社は、金銭の貸付けを受けた取締役に対して、当該貸付けに係る契約の無効を主張することができる。

(H25 予備 第21問 ウ)
取締役会設置会社である甲株式会社(以下「甲社」という。)の代表取締役Aが、甲社を代表して、甲社の取締役Bとの間で取引(以下「本件取引」という。)を行う場合に関し、判例によれば、本件取引が利益相反取引であるにもかかわらず、取締役会の承認を受けずにされた場合でも、Bが有効な取締役会の承認があったと信じて取引をしていたときは、甲社は、Bに対し、本件取引の無効を主張することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭43.12.25)は、「取締役と会社との間に直接成立すべき利益相反する取引にあっては、会社は、当該取締役に対して、取締役会の承認を受けなかったことを理由として、その行為の無効を主張し得ることは、…当然である…。」として、取締役会の承認を得ない直接取引の効力について、会社と当該取締役との間においては、絶対的無効説を採用している。
本肢の事例における利益相反取引は直接取引であるから、Bが有効な取締役会の承認があったと信じて取引をしていたときであっても、甲社は、Bに対し、本件取引の無効を主張することができる。

(H25 司法 第44問 エ)
取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)の取締役が行った取引に関し、代表取締役GがHに対して負担する債務について、Gが、会社を代表して、取締役会の承認を受けないで、その債務を引き受けた場合において、Hが取締役会の承認を受けていないことを知っていたときは、その債務引受けの効力は、会社には及ばない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭43.12.25)は、「会社以外の第三者と取締役が会社を代表して自己のためにした取引については、取引の安全の見地より、善意の第三者を保護する必要があるから、会社は、その取引について取締役会の承認を受けなかったことのほか、相手方である第三者が悪意(その旨を知っていること)であることを主張し、立証して始めて、その無効をその相手方である第三者に主張し得るものと解するのが相当である。」として、取締役会の承認を得ない間接取引の効力について、会社と相手方である第三者との間においては、相対的無効説を採用している。
本肢の事例における利益相反取引は間接取引であるから、Hが取締役会の承認を受けていないことを知っていたときは、その債務引受けの効力は、会社には及ばない。
総合メモ