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人権享有主体性(法人) - 解答モード

八幡製鉄事件 最大判昭和45年6月24日

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概要
①会社による政党への寄付は、会社の役割を果たすためになされたものである限り、定款の目的の範囲内の行為である。
②憲法3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄附の自由を有するといわざるを得ず、これをもって国民の参政権を侵害するということはできない。
判例
事案:株式会社(八幡製鉄)による自由民主党に対する350万円の政治献金について株主が損害賠償請求訴訟(旧商法266条)を提起した事案において、①会社の政治献金としての寄附が定款所定の目的の範囲内の行為といえるか、②株主の参政権を侵害する民法90条違反の行為に当たるなどが論点となった。

判旨:①「会社は、一定の営利事業を営むことを本来の目的とするものであるから、会社の活動の重点が、定款所定の目的を遂行するうえに直接必要な行為に存することはいうまでもないところである。しかし、会社は、他面において、自然人とひとしく、国家、地方公共団体、地域社会その他(以下社会等という。)の構成単位たる社会的実在なのであるから、…会社に、社会通念上、期待ないし要請されるものであるかぎり、その期待ないし要請にこたえることは、会社の当然になしうるところであるといわなければならない。そしてまた、会社にとっても、一般に、かかる社会的作用に属する活動をすることは、…間接ではあっても、目的遂行のうえに必要なものであるとするを妨げない。…会社が、その社会的役割を果たすために相当な程度のかかる出捐をすることは、社会通念上、会社としてむしろ当然のことに属するわけであるから、毫も、株主その他の会社の構成員の予測に反するものではなく、したがって、これらの行為が会社の権利能力の範囲内にあると解しても、なんら株主等の利益を害するおそれはないのである。以上の理は、会社が政党に政治資金を寄附する場合においても同様である。憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。そして同時に、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。したがって、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても例外ではないのである。論旨のいうごとく、会社の構成員が政治的信条を同じくするものでないとしても、会社による政治資金の寄附が、特定の構成員の利益を図りまたその政治的志向を満足させるためでなく、社会の一構成単位たる立場にある会社に対し期待ないし要請されるかぎりにおいてなされるものである以上、会社にそのような政治資金の寄附をする能力がないとはいえないのである。上告人のその余の論旨は、すべて独自の見解というほかなく、採用することができない。要するに、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。」
 ②「憲法上の選挙権その他のいわゆる参政権が自然人たる国民にのみ認められたものであることは、所論のとおりである。しかし、会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。のみならず、憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。論旨は、会社が政党に寄附をすることは国民の参政権の侵犯であるとするのであるが、政党への寄附は、事の性質上、国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではないばかりでなく、政党の資金の一部が選挙人の買収にあてられることがあるにしても、それはたまたま生ずる病理的現象に過ぎず、しかも、かかる非違行為を抑制するための制度は厳として存在するのであって、いずれにしても政治資金の寄附が、選挙権の自由なる行使を直接に侵害するものとはなしがたい。会社が政治資金寄附の自由を有することは既に説示したとおりであり、それが国民の政治意思の形成に作用することがあっても、あながち異とするには足りないのである。所論は大企業による巨額の寄附は金権政治の弊を産むべく、また、もし有力株主が外国人であるときは外国による政治干渉となる危険もあり、さらに豊富潤沢な政治資金は政治の腐敗を醸成するというのであるが、その指摘するような弊害に対処する方途は、さしあたり、立法政策にまつべきことであって、憲法上は公共の福祉に反しないかぎり、会社といえども政治資金の寄附の自由を有するといわざるを得ず、これをもって国民の参政権を侵害するとなす論旨は採用のかぎりでない。」
過去問・解説
正答率 : 100.0%

(H20 司法 第13問 ア)
憲法は政党につき明文で規定していないが、政党は国民の政治意思を国政に実現させる最も有効な媒体であり、議会制民主主義は政党を無視してはその円滑な運用を期待することはできない。したがって、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素といえる。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。」としており、また、「政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体である」としていることから、同判決は、政党を国民の政治意思を国政に実現させる最も有効な媒体であり、議会制民主主義を支える不可欠な要素と考えているといえる。


正答率 : 0.0%

(H21 司法 第1問 ア)
憲法第3章の人権規定は、法人についても性質上可能な限り適用される。精神的自由権には、自然人にのみ認められているものと法人にも認められているものがある。信教の自由は、自然人である個人の内面の自由であるから、法人には適用されない。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである」としていることから本肢前段は正しい。しかし、同判決は、信教の自由が自然人にのみ認められるかについては、述べていない。したがって、本肢後段は誤っている。


正答率 : 50.0%

(H22 司法 第1問 ア)
会社が、国民と同様、特定の政党の政策を支持又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有するとしても、政治資金の寄附は政治の動向に影響を与えることがあるから、会社の政治資金の寄附は国民による寄附と別異に扱わなければならない。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。」としていることから、同判決は会社の政治資金の寄附を国民による寄附と別異に扱っていない。


正答率 : 50.0%

(H22 司法 第15問 ア)
日本国憲法には政党にかかわる明文規定はないが、結社の自由が保障され、議院内閣制が採用されていることからすれば、憲法は、国民と議会をつなぐ、言わばパイプ役として、政党の存在を当然予想している。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。」としていることから、同判決は政党の存在を当然に予定していると考えている。


正答率 : 0.0%

(H24 予備 第8問 エ)
憲法は、議会制民主主義を支える不可欠の要素として、政党の存在を当然に予定している。したがって、個人だけでなく、営利法人たる株式会社や特定職業に従事する者についての強制加入団体も、社会的実在として期待される当然の行為として、政党などの政治団体に対して政治資金の寄附を行う権利能力を有する。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない」としていることから、会社には政治資金の寄附を行う自由があるといえる。しかし、南九州税理士会政治献金事件判決(最判平8.3.19)は、「税理士会が政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄附をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、…税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。」としていることから、強制加入団体については、会社同様の政治資金の寄附の自由はないといえる。


正答率 : 100.0%

(H26 共通 第2問 イ)
法人は、現代社会におけるその役割の重要性からすると、全ての人権について、自然人と同程度の保障を受ける。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「憲法上の選挙権その他のいわゆる参政権が自然人たる国民にのみ認められたものである…。」「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである…。」としていることから、法人において、全ての人権が、自然人と同程度の保障を受けるわけではない。


正答率 : 50.0%

(H29 司法 第14問 ア)
憲法には政党について直接規定されていないが、政党は、憲法の定める議会制民主主義を支える上で極めて重要な存在であることから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているとするのが判例の立場である。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。」としていることから、同判決は政党の存在を当然に予定していると考えている。


正答率 : 50.0%

(H30 予備 第9問 イ)
会社は、法令の規定に従い定款で定められた目的の範囲内において権利を有し、義務を負うところ、会社が特定の政党に政治資金を寄付することも、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためにされたものと認められる限りにおいては、定款所定の目的の範囲内の行為とみることができる。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。」としていることから、特定の政党に対する寄付も、会社の社会的役割を果たすためにされたものと認められる限りにおいては、定款の目的の範囲内といえる。


正答率 : 0.0%

(R4 司法 第2問 ア)
最高裁判所は、株式会社による政党への政治資金の寄附が、国民の選挙権の自由な行使を直接に侵害するものであるとしつつ、会社にも政治活動の自由が保障されるため、当該侵害は社会的許容性の限度を超えるものではないと判断されることから、当該寄附が公序良俗に違反すると解することはできないとした。

(正答)  

(解説)
八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)は、「政党への寄附は、事の性質上、国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではないばかりでなく、政党の資金の一部が選挙人の買収にあてられることがあるにしても、それはたまたま生ずる病理的現象に過ぎず、しかも、かかる非違行為を抑制するための制度は厳として存在するのであって、いずれにしても政治資金の寄附が、選挙権の自由なる行使を直接に侵害するものとはなしがたい。」としていることから、同判決は、会社の政党への政治資金の寄付が、国民の選挙権の行使を直接に侵害するとはしていない。したがって、本肢前段は誤っている。


正答率 : 100.0%

(R6 司法 第1問 ウ)
人権の享有主体に関する次の記述について、bの見解がaの見解の批判となっている場合には○を、そうでない場合には✕を選びなさい。

a.判例によれば、会社は、自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、自然人たる国民と同様に政治献金をする自由を有するので、会社による政治献金について、自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請はない。
b.会社等の法人に対して、自然人たる国民と同様に政治献金の自由を保障するとしたら、政治腐敗への対応策として企業・団体献金を法律で禁止することが困難になる。

(正答)

(解説)
aの見解は八幡製鉄事件判決(最大判昭45.6.24)の判例によるものである。
そして、法人を自然人である国民と別異に取り扱わず同様に扱うこととなれば、資金力の差異等があるにもかかわらず法人のみを法律で規制することが困難となり、政治腐敗を引き起こしかねないという批判が妥当する。 

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南九州税理士会事件 最三小判平成8年3月19日

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概要
税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為である。
判例
事案:強制加入団体である税理士会(公益法人)が、業界に有利な税理士法改正を働きかける運動に要する特別資金として関連する政治団体(税理士政治連盟‐政治資金規正法上の政治団体)への寄付に充てるため、各会員から特別会費5000円を徴収する旨の決議をしたという事案において、当該決議の無効原因として、政治団体に対する寄付が税理士会の目的の範囲外であるかが問題となった。この問題との関係で、①税理士会の目的の範囲、②税理士会員の協力義務の限界が論点になったが、判旨では、②協力義務の限界という論点は①税理士会の目的の範囲という論点に属するものとして議論されている。

判旨:「税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、法49条2項で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、右寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であると解すべきである。…税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であって、その目的の範囲については会社と同一に論ずることはできない…税理士会の目的は、会則の定めをまたず、あらかじめ、法において直接具体的に定められている。すなわち、法49条2項において、税理士会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とするとされ…、法49条の12第1項においては、税理士会は、税務行政その他国税若しくは地方税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができるとされている。…さらに、税理士会は、税理士の入会が間接的に強制されるいわゆる強制加入団体であり、法に別段の定めがある場合を除く外、税理士であって、かつ、税理士会に入会している者でなければ税理士業務を行ってはならないとされている(法52条)。…税理士会は、以上のように、会社とはその法的性格を異にする法人であり、その目的の範囲についても、これを会社のように広範なものと解するならば、法の要請する公的な目的の達成を阻害して法の趣旨を没却する結果となることが明らかである。そして、税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、次のような考慮が必要である。税理士会は、法人として、法及び会則所定の方式による多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動し、その構成員である会員は、これに従い協力する義務を負い、その一つとして会則にしたがって税理士会の経済的基礎を成す会費を納入する義務を負う。しかし、法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。なぜなら、政党など規正法上の政治団体は、政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のため、金員の寄付を含む広範囲な政治活動をすることが当然に予定された政治団体であり(規正法3条等)、これらの団体に金員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題だからである。…そうすると、前記のような公的な性格を有する税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできないというべきであり、税理士会がそのような活動をすることは、法の全く予定していないところである。税理士会が政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、法49条2項所定の税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。以上の判断に照らして本件をみると、本件決議は、被上告人が規正法上の政治団体である南九各県税政へ金員を寄付するために、上告人を含む会員から特別会費として5000円を徴収する旨の決議であり、被上告人の目的の範囲外の行為を目的とするものとして無効であると解するほかはない。」
過去問・解説
正答率 : 100.0%

(H20 司法 第4問 イ)
政治資金規正法上の政治団体に寄附するか否かは選挙における投票の自由と表裏をなし、会員各人が個人的な政治思想等に基づいて自主的に決定すべき事柄である。会員に脱退の自由のない強制加入団体である税理士会が、上記の寄附のために特別会費の納入を会員に強制することは、許されない。

(正答)  

(解説)
南九州税理士会事件判決(最判平8.3.19)は、「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。…そうすると、…税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできないというべき」としている。


正答率 : 50.0%

(H22 司法 第1問 イ)
税理士会は公益法人であり、また、その会員である税理士に実質的に脱退の自由が認められないから、税理士会がする政治資金規正法上の政治団体に対する政治献金は、それが税理士法改正に関わるものであったとしても、税理士会の目的の範囲外の行為と解される。

(正答)  

(解説)
南九州税理士会事件判決(最判平8.3.19)は、「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。…税理士会が政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、法49条2項所定の税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。」としている。


正答率 : 100.0%

(H30 予備 第9問 ウ)
税理士会は、税理士の使命及び職責に鑑み、税理士法に基づき設立された強制加入団体であり、その会員には、実質的には脱退の自由が保障されていないが、税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するために税理士会として政党に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲内の行為であり、そのために会員から特別会費を徴収する決議も有効である。

(正答)  

(解説)
南九州税理士会事件判決(最判平8.3.19)は、「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。…税理士会が政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、法49条2項所定の税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。」としている。


正答率 : 50.0%

(R2 共通 第4問 ウ)
治団体への寄付が強制加入団体である税理士会の目的の範囲内かどうかを判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、その会員には様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されていること、政治団体に寄付するかどうかは選挙における投票の自由と表裏をなすものとして会員各人が個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であることなどを考慮することが必要である。

(正答)  

(解説)
南九州税理士会事件判決(最判平8.3.19)は、「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。…そうすると、…税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできないというべき」としているため、選択肢の考慮要素を考慮して目的の範囲内かを判断している。


正答率 : 100.0%

(R6 予備 第2問 ウ)
税理士会が強制加入団体であり、その会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されているから、税理士会の活動の範囲にも、税理士会の活動への会員の協力義務にも、限界があり、政党など政治資金規正法上の政治団体に対する金員の寄付は、その寄付が税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであった場合を除き、税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。

(正答)  

(解説)
南九州税理士会事件判決(最判平8.3.19 )は、税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為であるとしており、政党など政治資金規正法上の政治団体に対する金員の寄付は、その寄付が税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであった場合を除くとはしていない。

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群馬司法書士会事件 最一小判平成14年4月25日

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概要
阪神・淡路大震災により被災した兵庫県司法書士会に3000万円の復興支援拠出金を寄付することは、他県の司法書士会の権利能力の範囲内にある。
判例
事案:群馬司法書士会が、阪神・淡路大震災で被災した兵庫県司法書士会に3000万円の復興支援拠出金を寄付するために、会員から登記申請1件あたり50円の復興支援特別負担金を徴収する旨の決議をしたという事案において、①復興支援拠出金寄付が司法書士会の目的の範囲外であるか、②仮に目的の範囲内であるとしても、公序良俗違反など会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるかということが論点となった。なお、判旨では、南九州税理士会事件判決(最判平8.3.19)と異なり、②協力義務の限界は、②目的の範囲の内外という論点から区別された論点として位置づけられている。

判旨:「…本件拠出金は、被災した兵庫県司法書士会及び同会所属の司法書士の個人的ないし物理的被害に対する直接的な金銭補てん又は見舞金という趣旨のものではなく、被災者の相談活動等を行う同司法書士会ないしこれに従事する司法書士への経済的支援を通じて司法書士の業務の円滑な遂行による公的機能の回復に資することを目的とする趣旨のものであった…。
 司法書士会は、司法書士の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とするものであるが(司法書士法14条2項)、その目的を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲で、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることもその活動範囲に含まれるというべきである。そして、3000万円という本件拠出金の額については、それがやや多額にすぎるのではないかという見方があり得るとしても、阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったことなどの事情を考慮すると、その金額の大きさをもって直ちに本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできない。したがって、兵庫県司法書士会に本件拠出金を寄付することは、被上告人の権利能力の範囲内にあるというべきである。
 そうすると、被上告人は、本件拠出金の調達方法についても、それが公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情がある場合を除き、多数決原理に基づき自ら決定することができるものというべきである。これを本件についてみると、被上告人がいわゆる強制加入団体であること(同法19条)を考慮しても、本件負担金の徴収は、会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、また、本件負担金の額も、登記申請事件1件につき、その平均報酬約2万1000円の0.2%強に当たる50円であり、これを3年間の範囲で徴収するというものであって、会員に社会通念上過大な負担を課するものではないのであるから、本件負担金の徴収について、公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。したがって、本件決議の効力は被上告人の会員である上告人らに対して及ぶものというべきである。」
過去問・解説
正答率 : 0.0%

(H20 司法 第4問 ウ)
大震災で被災した他県の司法書士会へ復興支援拠出金寄附のための負担金の徴収は、司法書士会の目的の範囲を逸脱するものではない。司法書士会が強制加入団体であることを考慮しても、本件会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。

(正答)  

(解説)
群馬司法書士会事件判決(最判平14.4.25)は、「被上告人がいわゆる強制加入団体であること(同法19条)を考慮しても、本件負担金の徴収は、会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、また、本件負担金の額も、登記申請事件1件につき、その平均報酬約2万1000円の0.2%強に当たる50円であり、これを3年間の範囲で徴収するというものであって、会員に社会通念上過大な負担を課するものではないのであるから、本件負担金の徴収について、公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。」としている。


正答率 : 100.0%

(H30 司法 第3問 イ)
司法書士会が大震災で被災した他県の司法書士会に復興支援拠出金を寄付することは、司法書士会の目的の範囲を逸脱せず、また、司法書士会がその寄付のために会員から負担金を徴収することは、強制加入団体であることを考慮しても、会員の政治的又は宗教的立場や思想、信条の自由を害するものではない。

(正答)  

(解説)
群馬司法書士会事件判決(最判平14.4.25)は、「司法書士会は、司法書士の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とするものであるが(司法書士法14条2項)、その目的を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲で、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることもその活動範囲に含まれるというべきである。そして、…阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったことなどの事情を考慮すると、その金額の大きさをもって直ちに本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできない。したがって、兵庫県司法書士会に本件拠出金を寄付することは、被上告人の権利能力の範囲内にあるというべきである。」とした上で、「被上告人がいわゆる強制加入団体であること(同法19条)を考慮しても、本件負担金の徴収は、会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、また、本件負担金の額も、登記申請事件1件につき、その平均報酬約2万1000円の0.2%強に当たる50円であり、これを3年間の範囲で徴収するというものであって、会員に社会通念上過大な負担を課するものではないのであるから、本件負担金の徴収について、公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。」としている。


正答率 : 100.0%

(R5 司法 第2問 イ)
司法書士の業務の円滑な遂行による公的機能の回復に資するため、大震災により被災した他県の司法書士会に支援金を寄付することは、司法書士会の権利能力の範囲内にあるというべきであり、このような支援金寄付のため、司法書士会が会員から負担金を徴収することは、司法書士会が強制加入団体であることを考慮しても、会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではない。

(正答)  

(解説)
群馬司法書士会事件判決(最判平14.4.25)は、「司法書士会は、司法書士の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とするものであるが(司法書士法14条2項)、その目的を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲で、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることもその活動範囲に含まれるというべきである。そして、…阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったことなどの事情を考慮すると、その金額の大きさをもって直ちに本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできない。したがって、兵庫県司法書士会に本件拠出金を寄付することは、被上告人の権利能力の範囲内にあるというべきである。」とした上で、「被上告人がいわゆる強制加入団体であること(同法19条)を考慮しても、本件負担金の徴収は、会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、また、本件負担金の額も、登記申請事件1件につき、その平均報酬約2万1000円の0.2%強に当たる50円であり、これを3年間の範囲で徴収するというものであって、会員に社会通念上過大な負担を課するものではないのであるから、本件負担金の徴収について、公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。」としている。

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入会権者資格差別事件 最二小判平成18年3月17日

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概要
入会権を男子孫に限るとした慣例は合理性を有さず、公序良俗に反して無効である。
判例
事案:入会権者の資格を世帯主及び男子孫に限り、A部落民以外の男性と結婚した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り資格を認めないとする部分が公序良俗に反して無効であるかが問題となった。

判旨:「入会権は、一般に、一定の地域の住民が一定の山林原野等において共同して雑草、まぐさ、薪炭用雑木等の採取をする慣習上の権利であり(民法263条、294条)、この権利は、権利者である入会部落の構成員全員の総有に属し、個々の構成員は、共有におけるような持分権を有するものではなく、入会権そのものの管理処分については入会部落の一員として参与し得る資格を有するのみである。他方、入会権の内容である使用収益を行う権能は、入会部落内で定められた規律に従わなければならないという拘束を受けるものの、構成員各自が単独で行使することができる。このような入会権の内容、性質等や、原審も説示するとおり、本件入会地の入会権が家の代表ないし世帯主としての部落民に帰属する権利として当該入会権者からその後継者に承継されてきたという歴史的沿革を有するものであることなどにかんがみると、各世帯の構成員の人数にかかわらず各世帯の代表者にのみ入会権者の地位を認めるという慣習は、入会団体の団体としての統制の維持という点からも、入会権行使における各世帯間の平等という点からも、不合理ということはできず、現在においても、本件慣習のうち、世帯主要件を公序良俗に反するものということはできない。しかしながら、本件慣習のうち、男子孫要件は、専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり、遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては、性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。男子孫要件は、世帯主要件とは異なり、入会団体の団体としての統制の維持という点からも、入会権の行使における各世帯間の平等という点からも、何ら合理性を有しない。このことは、A部落民会の会則においては、会員資格は男子孫に限定されていなかったことや、被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体では会員資格を男子孫に限定していないものもあることからも明らかである。…本件入会地の入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても、男子孫要件による女子孫に対する差別を正当化することはできない。」
過去問・解説
正答率 : 100.0%

(H28 共通 第1問 ウ)
長期間にわたり形成された地方の慣習に根ざした権利である入会権については、その慣習が存続しているときは最大限尊重すべきであるから、権利者の資格を原則として男子孫に限る旨の特定の地域団体における慣習も、直ちに公序良俗に反するとはいえない。

(正答)  

(解説)
入会権者資格差別事件判決(最判平18.3.17)は、入会権者を男子孫に限るとする慣習が、「本件入会地の入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても、男子孫要件による女子孫に対する差別を正当化することはできない。」としており、公序良俗に反し無効とされた。

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