事案:文部科学大臣は、国立大学法人の学長の任命に関し、国立大学法人の申出を拒否することができるかが問題となった。
判旨:①「大学における人事の自治に鑑みれば、前記教特法10条にいう「大学管理機関の申出に基いて」とは、大学管理機関(同法25条1項6号により、当分の間は学長)から申出がなされたときは、任命権者(国立の大学にあつては国家公務員法55条1項により文部大臣、公立の大学にあつては教特法25条2項により当分の間その大学を設置する地方公共団体の長)は、右申出が既に同法4条に準拠して大学の自主的選考を経たものとされる以上、その申出に羈束されて、申出のあつた者(それはおのずから1つの地位に1人だけと解さねばならない。)を任命すべく、そこに選択の余地、拒否の権能はなく、他面、申出がなければ、右の人事を行ない得ないものと解するのが相当である。もつとも、任命権者たる文部大臣あるいは地方公共団体の長は、その権限を適法に行使しなければならないこともいうをまたないから、申出が明らかに違法無効と客観的に認められる場合、例えば、申出が明白に法定の手続に違背しているとき、あるいは申出のあつた者が公務員としての欠格条項にあたるようなときなどは、形式的瑕疵を補正させるために差戻したり、申出を拒否して申出のあつた者を学長等に任用しないことができるといわなければならないが、しからざる限り、その申出に応ずべき義務、すなわち相当の期間内に申出のあつた者を学長、教員および部局長として任命しなければならない職務上の義務を負うものと解すべきである。」
②「国立大学の学長事務取扱として発令する行為は、任命権者である文部大臣が任命権の対象である学長が欠け、またはこれに事故のあるときに、臨時かつ応急にその代理者を指定する行為(指定代理)にほかならず、右の指定は、任命権の一環に含まれ、これに由来するものとして、ひつきよう任命の性質を具えるものと解するのが相当である。この点につき、被告はこれを行組法10条に基づく職務命令であると主張し、…右主張に添う供述をする。…してみれば、国立大学の学長事務取扱に指定し発令するのは、任命行為として、学長等の任用に関する教特法10条の規定が類推適用されるものといわなければならない。」
③「文部省が学長事務取扱について上申書を受理してからその発令に至るまでに通常の手続上必要とされる期間は、最長の期間を考えても、30日あれば十分であると認めざるを得ない。…すなわち、文部大臣は未だ不当に長期に亘つて原告を学長事務取扱に発令しないまま放置したものとは断じ難く、文部大臣の右不作為をとらえて、合理的な期間を超えた違法なものとの法的評価を加えることは相当でないというべきである。」