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憲法 即決裁判における上訴制限 最三小判平成21年7月14日

概要
刑訴法403条の2第1項は、憲法32条に違反しない。
判例
事案:刑訴法403条2第1項は、「即決裁判手続においてされた判決に対する控訴の申立ては、第384条の規定にかかわらず、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について第382条に規定する事由があることを理由としては、これをすることができない。」としており、即決裁判手続においては事実誤認を理由とする控訴はできない旨を定めている。本事件では、刑訴法403条の2第1項が憲法32条に違反するかが問題となった。

判旨:「審級制度については、憲法81条に規定するところを除いては、憲法はこれを法律の定めるところにゆだねており、事件の類型によって一般の事件と異なる上訴制限を定めても、それが合理的な理由に基づくものであれば憲法32条に違反するものではないとするのが当裁判所の判例とするところである。
 そこで即決裁判手続について見るに、同手続は、争いがなく明白かつ軽微であると認められた事件について、簡略な手続によって証拠調べを行い、原則として即日判決を言い渡すものとするなど、簡易かつ迅速に公判の審理及び裁判を行うことにより、手続の合理化、効率化を図るものである。そして、同手続による判決に対し、犯罪事実の誤認を理由とする上訴ができるものとすると、そのような上訴に備えて、必要以上に証拠調べが行われることになりかねず、同手続の趣旨が損なわれるおそれがある。他方、即決裁判手続により審判するためには、被告人の訴因についての有罪の陳述(刑訴法350条の8)と、同手続によることについての被告人及び弁護人の同意とが必要であり(同法350条の2第2項、4項、350条の6、350条の8第1号、2号)、この陳述及び同意は、判決の言渡しまではいつでも撤回することができる(同法350条の11第1項1号、2号)。したがって、即決裁判手続によることは、被告人の自由意思による選択に基づくものであるということができる。また、被告人は、手続の過程を通して、即決裁判手続に同意するか否かにつき弁護人の助言を得る機会が保障されている(同法350条の3、350条の4、350条の9)。加えて、即決裁判手続による判決では、懲役又は禁錮の実刑を科すことができないものとされている(同法350条の14)。
 刑訴法403条の2第1項は、上記のような即決裁判手続の制度を実効あらしめるため、被告人に対する手続保障と科刑の制限を前提に、同手続による判決において示された罪となるべき事実の誤認を理由とする控訴の申立てを制限しているものと解されるから、同規定については、相応の合理的な理由があるというべきである。
 そうすると、刑訴法403条の2第1項が、憲法32条に違反するものでないことは、当裁判所の前記各大法廷判例の趣旨に徴して明らかであって、所論は理由がない。」
過去問・解説
(H24 司法 第9問 イ)
即決裁判手続は、争いがなく明白かつ軽微な事件について、簡易かつ迅速に公判の審理及び裁判を行うことにより、手続の合理化や効率化を図るものであり、一般の事件と異なる上訴制限を定めることに合理的理由があるから、裁判を受ける権利を侵害しているとはいえない。

(正答)  

(解説)
判例(最判平21.7.14)は、「刑訴法403条の2第1項は、上記のような即決裁判手続の制度を実効あらしめるため、被告人に対する手続保障と科刑の制限を前提に、同手続による判決において示された罪となるべき事実の誤認を理由とする控訴の申立てを制限しているものと解されるから、同規定については、相応の合理的な理由があるというべきである。そうすると、刑訴法403条の2第1項が、憲法32条に違反するものでないことは、当裁判所の前記各大法廷判例の趣旨に徴して明らかであって、所論は理由がない。」としている。
総合メモ
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