現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

商法総則・商行為法 第521条

条文
第521条(商人間の留置権)
 商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。
過去問・解説
(H26 司法 第54問 オ)
写真の撮影を業とする商人がその営業の部類に属する取引によって商人でない顧客に対して債権を有し、その弁済期が到来している場合において、その商人がその顧客の物を占有しているときは、当該債権がその物に関して生じたものでなくても、その商人は、当該債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。

(正答)  

(解説)
商事留置権は、「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権」を被担保債権として成立するものである(521条本文)。
本肢の事例では、被担保債権は、写真の撮影を業とする商人がその営業の部類に属する取引によって商人でない顧客に対して有する債権であり、「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権」には当たらないから、商事留置権の成立は認められない。

(H29 予備 第28問 3)
当事者の別段の意思表示がない限り、商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にある場合には、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物であれば、その物の占有取得後に債務者がその物の所有権を失ったときであっても、その物を留置することができる。

(正答)  

(解説)
521条本文は、「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。」と規定しているから、商事留置権が成立する客体は「債務者の所有する物又は有価証券」であることを要する。もっとも、客体が「債務者の所有する物又は有価証券」であることは、留置権の成立要件にとどまり、存続要件ではない。したがって、留置権の成立後に、債務者が客体である「物又は有価証券」の所有権等を失った場合であっても、留置権は消滅しない。そして、この場合、商人は、その留置権を新たに「物又は有価証券」の所有権等を取得した第三者に対しても対抗することができる(物権の絶対性)。

(R6 予備 第28問 イ)
甲社が乙社から買った目的物の代金をその弁済期になっても支払わない場合には、別段の意思表示がない限り、乙社は、甲社から修理のために預かっていた別の動産であって甲社が所有するものの返還を拒むことができる。

(正答)  

(解説)
521条本文は、商人間の留置権について、「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。」と規定しており、民事留置権(民法295条)と異なり、被担保債権と留置権の目的物との間の個別的牽連性を要求していない(弥永真生「リーガルマインド商法総則・商行為法」第3版94頁)。
総合メモ
前の条文 次の条文