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行政基準

旧監獄法施行規則120条及び124条の法適合性 最三小判平成3年7月9日

概要
①監獄法施行規則(平成3年法務省令第22号による改正前のもの)120条及び124条の各規定は、未決勾留により拘禁された者と14歳未満の者との接見を許さないとする限度において、監獄法50条の委任の範囲を超え、無効である。
②拘置所長が監獄法45条に違反して未決勾留により拘禁された者と14歳未満の者との接見を許さない旨の処分をした場合において、右処分は監獄法施行規則(平成3年法務省令第22号による改正前のもの)120条に従ってされたものであり、かつ、右規則120条及びその例外を定める124条は明治41年に公布されて以来長きにわたって施行され、その間これらの規定の有効性に実務上特に疑いを差し挟む解釈がされなかったなど判示の事情があるときは、拘置所長が右処分をしたことにつき国家賠償法1条1項にいう過失があったということはできない。
判例
事案:拘置所に未決勾留中のXが、当時10歳の義理の姪との間の面接許可申請をしたところ、拘置所長が監獄法施行規則120条により不許可とする旨の決定をしたため、本件不許可処分は裁量権を濫用した違法なものである等と主張して、上告人国に対し損害賠償を求めた事案において、①監獄法施行規則(平成3年法務省令第22号による改正前のもの)120条及び124条の各規定は有効か、②拘置所長が未決勾留により拘禁された者と14歳未満の者との接見を許さなかったことにつき国家賠償法1条1項にいう過失があるかが問題となった。

判旨:①「被勾留者には一般市民としての自由が保障されるので、法45条は、被勾留者と外部の者との接見は原則としてこれを許すものとし、例外的に、これを許すと支障を来す場合があることを考慮して、(ア)逃亡又は罪証隠滅のおそれが生ずる場合にはこれを防止するために必要かつ合理的な範囲において右の接見に制限を加えることができ、また、(イ)これを許すと監獄内の規律又は秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合には、右の障害発生の防止のために必要な限度で右の接見に合理的な制限を加えることができる、としているにすぎないと解される。この理は、被勾留者との接見を求める者が幼年者であっても異なるところはない。 これを受けて、法50条は、『接見ノ立会……其他接見……ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム』と規定し、命令(法務省令)をもって、面会の立会、場所、時間、回数等、面会の態様についてのみ必要な制限をすることができる旨を定めているが、もとより命令によって右の許可基準そのものを変更することは許されないのである。 ところが、規則120条は、規則121条ないし128条の接見の態様に関する規定と異なり、『14歳未満ノ者ニハ在監者ト接見ヲ為スコトヲ許サス』と規定し、規則124条は『所長ニ於テ処遇上其他必要アリト認ムルトキハ前4条ノ制限ニ依ラサルコトヲ得』と規定している。右によれば、規則120条が原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないこととする一方で、規則124条がその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていることが明らかである。しかし、これらの規定は、たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法50条の委任の範囲を超えるものといわなければならない。」
 ②「規則120条(及び124条)が被勾留者と幼年者との接見を許さないとする限度において法50条の委任の範囲を超えた無効のものであるということ自体は、重大な点で法律に違反するものといわざるを得ない。しかし、規則120条(及び124条)は明治41年に公布されて以来長きにわたって施行されてきたものであって(もっとも、規則124条は、昭和6年司法省令第9号及び昭和41年法務省令第47号によって若干の改正が行われた。)、本件処分当時までの間、これらの規定の有効性につき、実務上特に疑いを差し挟む解釈をされたことも裁判上とりたてて問題とされたこともなく、裁判上これが特に論議された本件においても第1、2審がその有効性を肯定していることはさきにみたとおりである。そうだとすると、規則120条(及び124条)が右の限度において法50条の委任の範囲を超えることが当該法令の執行者にとって容易に理解可能であったということはできないのであって、このことは国家公務員として法令に従ってその職務を遂行すべき義務を負う監獄の長にとっても同様であり、監獄の長が本件処分当時右のようなことを予見し、又は予見すべきであったということはできない。 本件の場合、原審の確定した事実関係によれば、所長は、規則120条に従い本件処分をし、被上告人と幹との接見を許可しなかったというのであるが、右に説示したところによれば、所長が右の接見を許可しなかったことにつき国家賠償法1条1項にいう『過失』があったということはできない。」
過去問・解説
(H29 予備 第13問 ア)
被勾留者の接見について、原則として幼年者との接見を許さないとした上で例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていた旧監獄法施行規則の規定と、旧監獄法との関係が問題とされた最高裁判所平成3年7月9日第三小法廷判決(民集45巻6号1049頁)は、憲法及び旧監獄法による委任の趣旨を踏まえて限定的に解釈すれば、上記施行規則の規定は旧監獄法による委任の範囲を超えていないとしたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.7.9)は、被勾留者と幼年者との接見を原則として許さないこととする規則120条について、「たとえ事物を弁別する能力の夫発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法50条の委任の範囲を超える…。」としている。

(H30 予備 第23問 エ)
監獄の長が行った未成年者との面会を拒否する処分が、旧監獄法による委任の範囲を超えた命令に基づいていることを理由として違法とされたとしても、当該命令の適法性につき、長期間にわたって、実務上特に疑いを差し挟む解釈をされたことも裁判上とりたてて問題とされたこともないといった事情があり、監獄の長にとって当該命令が委任の範囲を超えることが容易に理解できなかった場合には、上記の違法を理由とする国家賠償責任は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.7.9)は、「規則120条(及び124条)は明治41年に公布されて以来長きにわたって施行されてきたものであって…、本件処分当時までの間、これらの規定の有効性につき、実務上特に疑いを差し挟む解釈をされたことも裁判上とりたてて問題とされたこともなく、裁判上これが特に論議された本件においても第1、2審がその有効性を肯定している…。そうだとすると、…監獄の長が本件処分当時右のようなことを予見し、又は予見すべきであったということはできない。本件の場合、…所長は、規則120条に従い本件処分をし、被上告人と幹との接見を許可しなかったというのであるが、…所長が右の接見を許可しなかったことにつき国家賠償法1条1項にいう『過失』があったということはできない。」としている。
総合メモ

銃砲刀剣類登録規則4条2項の法適合性 最一小判平成2年2月1日

概要
銃砲刀剣類登録規則4条2項が、銃砲刀剣類所持等取締法14条1項の登録の対象となる刀剣類の鑑定基準として、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定めていることは、同条5項の委任の趣旨を逸脱するものではない。
判例
事案:Xが、銃砲刀剣類所持等取締法14条1項、銃砲刀剣類登録規則1条に基づき、自己所有の外国製刀剣であるサーベルの登録を申請したところ、被上告人都教育委員会が右申請を拒否する旨の処分をした。当該処分の取消訴訟において、同法14条1項で登録の対象となる「刀剣類」を日本刀に限定した登録規則4条2項は、法の委任の範囲を越えた制限を課しているものであり無効であるかが問題となった。

判旨:「銃砲刀剣類所持等取締法(以下『法』という。)14条1項による登録を受けた刀剣類が、法3条1項6号により、刀剣類の同条本文による所持禁止の除外対象とされているのは、刀剣類には美術品として文化財的価値を有するものがあるから、このような刀剣類について登録の途を開くことによって所持を許し、文化財として保存活用を図ることは、文化財保護の観点からみて有益であり、また、このような美術品として文化財的価値を有する刀剣類に限って所持を許しても危害の予防上重大な支障が生ずるものではないとの趣旨によるものと解される。このことは、法4条による刀剣類の所持の許可の場合は、危害予防の観点から、これを所持する者が法5条1項各号に該当しない者でなければ許可を受けることができないものとされているのに対し、法14条1項による登録の場合は、登録を受けようとする者について右のような定めはなく、当該刀剣類それ自体が同項所定の『美術品として価値のある刀剣類』に該当すると認められるときは、その登録を受けることができ、登録を受ければ何人もこれを所持できるものとされており、しかもその登録事務は文化庁長官が所掌していることに照らしても明らかである(最高裁昭和59年(行ツ)第17号同62年11月20日第2小法廷判決・裁判集民事152号209頁参照)。
 そして、このような刀剣類の登録の手続に関しては、法14条3項が『第1項の登録は、登録審査委員の鑑定に基いてしなければならない。』と定めるほか、同条5項が『第1項の登録の方法、第3項の登録審査委員の任命及び職務、同項の鑑定の基準及び手続その他登録に関し必要な細目は、文部省令で定める。』としており、これらの規定を受けて銃砲刀剣類登録規則(昭和33年文化財保護委員会規則第1号。なお、右規則は、昭和43年法律第99号附則5項により、文部省令としての効力を有するものとされている。以下『規則』という。)が制定されている。その趣旨は、どのような刀剣類を我が国において文化財的価値を有するものとして登録の対象とするのが相当であるかの判断には、専門技術的な検討を必要とすることから、登録に際しては、専門的知識経験を有する登録審査委員の鑑定に基づくことを要するものとするとともに、その鑑定の基準を設定すること自体も専門技術的な領域に属するものとしてこれを規則に委任したものというべきであり、したがって、規則においていかなる鑑定の基準を定めるかについては、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、所管行政庁に専門技術的な観点からの一定の裁量権が認められているものと解するのが相当である(前記最高裁判決参照)。
 そして、規則に定められた刀剣類の鑑定の基準をみるに、規則4条2項は、『刀剣類の鑑定は、日本刀であって、次の各号の1に該当するものであるか否かについて行なうものとする。』とした上、同項1号に『姿、鍛え、刃文、彫り物等に美しさが認められ、又は各派の伝統的特色が明らかに示されているもの』を、同項2号に『銘文が資料として価値のあるもの』を、同項3号に『ゆい緒、伝来が史料的価値のあるもの』を、同項4号に『前各号に掲げるものに準ずる刀剣類で、その外装が工芸品として価値のあるもの』をそれぞれ掲げており、これによると、法14条1項の文言上は外国刀剣を除外してはいないものの、右鑑定の基準としては、日本刀であって、美術品として文化財的価値を有するものに限る旨の要件が定められていることが明らかである。
 そこで、右の要件が法の委任の趣旨を逸脱したものであるか否かをみるに、刀剣類の文化財的価値に着目してその登録の途を開いている前記法の趣旨を勘案すると、いかなる刀剣類が美術品として価値があり、その登録を認めるべきかを決する場合にも、その刀剣類が我が国において有する文化財的価値に対する考慮を欠かすことはできないものというべきである。そして、原審の適法に確定するところによると、(1) 我が国がポツダム宣言を受諾して後、連合国占領軍(以下『占領軍』という。)は、日本政府に対し民間の武装解除の一環として昭和20年9月2日付け一般命令第1号11項により一般国民の所有する一切の武器の収集及び占領軍への引渡の準備をすべき旨を命じたが、これに対し、日本政府は愛刀家の鑑賞の対象である日本古来の刀剣類までもが一般の武器を同一視されて接収されることに強く抵抗し、占領軍の理解を求めて折衝した結果、美術品として価値のある刀剣類については、占領軍への引渡の対象から除外されることになり、昭和21年6月15日施行された銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第300号)により、地方長官の許可を得て所持できることとなった(これが本件登録制度の発端である。)、(2)その後、文化財保護法の制定に伴い、昭和25年11月20日施行された銃砲刀剣類等所持取締令(昭和25年政令第334号。以下『旧取締令』という。)により、本件登録制度の前身である文化財保護委員会による登録制度が採用され、銃砲等所持禁止令は廃止されるに至ったが、右制度改正の趣旨は、従来、美術刀剣類をも凶器の一種とみて、治安上の取締りの観点から所持許可の対象としていたが、これを文化財に準ずるものとみて、その保存と活用を図るところにあった、(3)昭和33年4月1日から現行の法(ただし、当時は『銃砲刀剣類等所持取締法』といい、昭和40年法律第47号により現行の題名に改められた。)が施行され、旧取締令は廃止されたが、登録に関する規定の文言は、法と旧取締令とで差異はない(もっとも、その後の法改正により、登録事務は文化庁長官が所掌することとなった。)、(4)法施行後は、外国刀剣の登録例は1件もない(法施行前においては、第1審判決添付の別表記載のとおり、外国刀剣の登録例があるが、これは、旧取締令施行前の銃砲等所持禁止令の時代に許可基準の一部にあいまいな点があったために外国刀剣の所持許可がされたものを、旧取締令の施行に伴い、同令に基づく登録として引き継いだものがほとんどである。)、(5)日本刀は、原材料に玉鋼を主体としたものを用い、折返し鍛練を行い、土取りを施し、焼入れをすることによって製作されるものであり、我が国独自の製作方法と様式美を持った刀剣であるが、その製作方法は奈良時代以後に次第に発達してきたものであって、平安時代以降は刀身に作者名を切るようになり、各派の作風の特徴が刀剣自体に具現されるようになったが、このような様式美を有する日本刀については、古くから我が国において美術品としての鑑賞の対象とされてきた、というのであり、これらの認定事実に照らすと、規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。」
過去問・解説
(H22 司法 第21問 ア)
次の【甲群】に掲げるアの省令の規定の下線を付した部分が、(参照条文)として掲げる法律の委任の範囲を超えており無効であると主張しようとする場合に、次の【乙群】に掲げるAからCまでの主張のうち、どれが最も適切か。

【甲群】
銃砲刀剣類登録規則第4条第2項刀剣類の鑑定は、日本刀であって、次の各号の1に該当するものであるか否かについて行なうものとする。(以下略)

【参照条文】銃砲刀剣類所持等取締法
第1条 この法律は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めるものとする。
第2条 (略)
2 この法律において「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣(中略)をいう。
第3条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない。
 一~五 (略)
 六 第14条の規定による登録を受けたもの(中略)を所持する場合
 七~十三 (略)
2~4 (略)
第14条 都道府県の教育委員会は、(中略)美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする。
2 (略)
3 第1項の登録は、登録審査委員の鑑定に基いてしなければならない。
4 (略)
5 第1項の登録の方法、第3項の登録審査委員の任命及び職務、同項の鑑定の基準及び手続その他登録に関し必要な細目は、文部科学省令で定める。

【乙群】
A.政省令への委任を定める法律の規定(以下「委任規定」という。)を文理に即して解釈すると、政省令は法律に違反すると主張する。
B.法律が政省令を定める行政庁に専門技術的な裁量を認めていることを重視して委任規定を解釈すると、政省令は法律に違反すると主張する。
C.法律の趣旨目的に適合するように委任規定を解釈すると、政省令は法律に違反すると主張する。

(正答)A

(解説)
判例(最判平2.2.1)は、「どのような刀剣類を我が国において文化財的価値を有するものとして登録の対象とするのが相当であるかの判断には、専門技術的な検討を必要とすることから、登録に際しては、専門的知識経験を有する登録審査委員の鑑定に基づくことを要するものとするとともに、その鑑定の基準を設定すること自体も専門技術的な領域に属するものとしてこれを規則に委任したものというべきであり、したがって、規則においていかなる鑑定の基準を定めるかについては、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、所管行政庁に専門技術的な観点からの一定の裁量権が認められているものと解するのが相当である」とした上で、「規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。」としている。
したがって、【参照条文】として掲げる法律の委任の範囲を超えており無効であると主張しようとする場合に、BやCの主張をするのが最も適切とはいえない。
そして、上記判例は、反対意見において、「法14条1項にいう刀剣類には、文理上、外国刀剣を含むものと解される(法2条2項参照)。そして、法14条1項に規定する登録制度の趣旨は、日本刀、外国刀剣を区別しないで、美術品として価値のある刀剣類で我が国に存するものを我が国の文化財として保存活用を図ることにあると解するのが相当である。そうだとすると、法の段階では、外国刀剣にも美術品として価値のあるものがあることを認めていることになるから、同条5項の委任に基づいて規則を定める場合にも、日本刀・外国刀剣の両者について、同項所定の事項を定めることこそ法の要請するところというべきであり、規則において外国刀剣を登録の対象から除外することを法が期待し、容認しているとは考えられない。」としている。
したがって、Aの主張、すなわち政省令への委任を定める法律の規定を文理に即して解釈すると、政省令は法律に違反すると主張するのが最も適切である。
総合メモ

児童扶養手当法施行令1条の2第3号の「(父から認知された児童を除く。)」とする部分の法適合性 最一小判平成14年1月31日

概要
児童扶養手当法4条1項5号の委任に基づき児童扶養手当の支給対象児童を定める児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号のうち、「母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで懐胎した児童」から「父から認知された児童」を除外している括弧書部分は、同法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効である。
判例
事案:婚姻によらないで子を懐胎、出産、監護し、児童扶養手当法施行令1条の2第3号に該当する児童を監護する母として児童扶養手当の支給を受けていた上告人が、子がその父から認知されたことより児童扶養手当の受給資格が消滅したとして被上告人が行った受給資格喪失処分の取消しを求めた事案において、児童扶養手当法施行令(平成10年政令第224号による改正前のもの)1条の2第3号の「(父から認知された児童を除く。)」とする部分の法適合性が問題となった。

判旨:「法は、父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もって児童の福祉の増進を図ることを目的としている(法1条)が、父と生計を同じくしていない児童すべてを児童扶養手当の支給対象児童とする旨を規定することなく、その4条1項1号ないし4号において一定の類型の児童を掲げて支給対象児童とし、同項5号で『その他前各号に準ずる状態にある児童で政令で定めるもの』を支給対象児童としている。同号による委任の範囲については、その文言はもとより、法の趣旨や目的、さらには、同項が一定の類型の児童を支給対象児童として掲げた趣旨や支給対象児童とされた者との均衡等をも考慮して解釈すべきである。 法は、いわゆる死別母子世帯を対象として国民年金法による母子福祉年金が支給されていたこととの均衡上、いわゆる生別母子世帯に対しても同様の施策を講ずべきであるとの議論を契機として制定されたものであるが、法が4条1項各号で規定する類型の児童は、生別母子世帯の児童に限定されておらず、1条の目的規定等に照らして、世帯の生計維持者としての父による現実の扶養を期待することができないと考えられる児童、すなわち、児童の母と婚姻関係にあるような父が存在しない状態、あるいは児童の扶養の観点からこれと同視することができる状態にある児童を支給対象児童として類型化しているものと解することができる。母が婚姻によらずに懐胎、出産した婚姻外懐胎児童は、世帯の生計維持者としての父がいない児童であり、父による現実の扶養を期待することができない類型の児童に当たり、施行令1条の2第3号が本件括弧書を除いた本文において婚姻外懐胎児童を法4条1項1号ないし4号に準ずる児童としていることは、法の委任の趣旨に合致するところである。一方で、施行令1条の2第3号は、本件括弧書を設けて、父から認知された婚姻外懐胎児童を支給対象児童から除外することとしている。確かに、婚姻外懐胎児童が父から認知されることによって、法律上の父が存在する状態になるのであるが、法4条1項1号ないし4号が法律上の父の存否のみによって支給対象児童の類型化をする趣旨でないことは明らかであるし、認知によって当然に母との婚姻関係が形成されるなどして世帯の生計維持者としての父が存在する状態になるわけでもない。また、父から認知されれば通常父による現実の扶養を期待することができるともいえない。したがって、婚姻外懐胎児童が認知により法律上の父がいる状態になったとしても、依然として法4条1項1号ないし4号に準ずる状態が続いているものというべきである。そうすると、施行令1条の2第3号が本件括弧書を除いた本文において、法4条1項1号ないし4号に準ずる状態にある婚姻外懐胎児童を支給対象児童としながら、本件括弧書により父から認知された婚姻外懐胎児童を除外することは、法の趣旨、目的に照らし両者の間の均衡を欠き、法の委任の趣旨に反するものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(H22 司法 第21問 イ)
次の【甲群】に掲げるア政令の規定の下線を付した部分が、(参照条文)として掲げる法律の委任の範囲を超えており無効であると主張しようとする場合に、次の【乙群】に掲げるAからCまでの主張のうち、どれが最も適切か。

【甲群】
児童扶養手当法施行令第1条の2(平成10年政令第224号による改正前) 法第4条第1項第5号に規定する政令で定める児童は、次の各号のいずれかに該当する児童とする。
 1 父(母が児童を懐胎した当時婚姻の届出をしていないが、その母と事実上婚姻関係と同様の事情にあつ  た者を含む。以下次号において同じ。)が引き続き1年以上遺棄している児童
 2 父が法令により引き続き1年以上拘禁されている児童
 3 母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで  懐胎した児童(父から認知された児童を除く。)
 4 前号に該当するかどうかが明らかでない児童

【参照条文】児童扶養手当法
第1条 この法律は、父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もつて児童の福祉の増進を図ることを目的とする。
第4条 (前略)都道府県知事等(中略)は、次の各号のいずれかに該当する児童の母がその児童を監護するとき(中略)は、その母(中略)に対し、児童扶養手当(以下「手当」という。)を支給する。
 一 父母が婚姻を解消した児童
 二 父が死亡した児童
 三 父が政令で定める程度の障害の状態にある児童
 四 父の生死が明らかでない児童
 五 その他前各号に準ずる状態にある児童で政令で定めるもの
2 前項の規定にかかわらず、手当は、児童が次の各号のいずれかに該当するときは、当該児童については、支給しない。
 一~五 (略)
 六 父と生計を同じくしているとき。ただし、その者が前項第3号に規定する政令で定める程度の障害の状  態にあるときを除く。
 七 (略)
3 (略)

【乙群】
A.政省令への委任を定める法律の規定(以下「委任規定」という。)を文理に即して解釈すると、政省令は法律に違反すると主張する。
B.法律が政省令を定める行政庁に専門技術的な裁量を認めていることを重視して委任規定を解釈すると、政省令は法律に違反すると主張する。
C.法律の趣旨目的に適合するように委任規定を解釈すると、政省令は法律に違反すると主張する。

(正答)C

(解説)
判例(最判平14.1.31)は、児童扶養手当法4条1項5号による委任の範囲について、「その文言はもとより、法の趣旨や目的、さらには、同項が一定の類型の児童を支給対象児童として掲げた趣旨や支給対象児童とされた者との均衡等をも考慮して解釈すべきである。」とした上で、「施行令1条の2第3号が本件括弧書を除いた本文において、法4条1項1号ないし4号に準ずる状態にある婚姻外懐胎児童を支給対象児童としながら、本件括弧書により父から認知された婚姻外懐胎児童を除外することは、法の趣旨、目的に照らし両者の間の均衡を欠き、法の委任の趣旨に反するものといわざるを得ない。」としている。
したがって、法律の趣旨目的に適合するように委任規定を解釈すると、政省令は法律に違反すると主張するCの主張が最も適切である。

(H29 予備 第13問 イ)
父から認知された婚姻外懐胎児童を児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外した児童扶養手当法施行令の規定の一部と、児童扶養手当法との関係が問題とされた最高裁判所平成14年1月31日第一小法廷判決(民集56巻1号246頁)は、児童扶養手当法による委任の範囲を逸脱したものとして、上記施行令の規定の一部を違法無効と判断したものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.1.31)は、「父から認知された婚姻外懐胎児童を除外することは、法の趣旨、目的に照らし両者の間の均衡を欠き、法の委任の趣旨に反するものといわざるを得ない。」として、施工令の一部を無効としている。
総合メモ

旧薬事法施行規則による第一類医薬品・第二類医薬品の郵便等販売の一律禁止の法適合性 最二小判平成25年1月11日

概要
薬事法施行規則15条の4第1項1号(同規則142条において準用する場合)、159条の14第1項及び2項本文、159条の15第1項1号並びに159条の17第1号及び2号の各規定は、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品につき、店舗販売業者による店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による販売又は授与を一律に禁止することとなる限度において、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。
判例
事案:薬事法施行規則等の一部を改正する省令により、郵便等販売を行う場合は、第一類・第二類医薬品の販売又は授与は行わない旨の規定が設けられたことについて、インターネットを通じた医薬品販売を行う事業者であるXが、上記改正省令は、新薬事法の委任の範囲外の規制を定めるものであって違法である等として、Yに対し、第一類・第二類医薬品につき郵便等販売をすることができる権利の確認等を求めた事案において、上記改正省令が新薬事法の委任の範囲内であるかどうかが問題となった。

判旨:「新薬事法成立の前後を通じてインターネットを通じた郵便等販売に対する需要は現実に相当程度存在していた上、郵便等販売を広範に制限することに反対する意見は一般の消費者のみならず専門家・有識者等の間にも少なからず見られ、また、政府部内においてすら、一般用医薬品の販売又は授与の方法として安全面で郵便等販売が対面販売より劣るとの知見は確立されておらず、薬剤師が配置されていない事実に直接起因する一般用医薬品の副作用等による事故も報告されていないとの認識を前提に、消費者の利便性の見地からも、一般用医薬品の販売又は授与の方法を店舗における対面によるものに限定すべき理由には乏しいとの趣旨の見解が根強く存在していたものといえる。しかも、憲法22条1項による保障は、狭義における職業選択の自由のみならず職業活動の自由の保障をも包含しているものと解されるところ(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)、旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかである。これらの事情の下で、厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が、これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの(行政手続法38条1項)であり、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。
 しかるところ、新施行規則による規制は、前記…のとおり一般用医薬品の過半を占める第1類医薬品及び第2類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する内容のものである。これに対し、新薬事法36条の5及び36条の6は、いずれもその文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売、授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより、その必要性等について明示的に触れているわけでもなく、医薬品に係る販売又は授与の方法等の制限について定める新薬事法37条1項も、郵便等販売が違法とされていなかったことの明らかな旧薬事法当時から実質的に改正されていない。また、新薬事法の他の規定中にも、店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与やその際の情報提供の方法を原則として店舗における対面によるものに限るべきであるとか、郵便等販売を規制すべきであるとの趣旨を明確に示すものは存在しない。なお、検討部会における議論及びその成果である検討部会報告書並びにこれらを踏まえた新薬事法に係る法案の国会審議等において、郵便等販売の安全性に懐疑的な意見が多く出されたのは上記事実関係等のとおりであるが、それにもかかわらず郵便等販売に対する新薬事法の立場は上記のように不分明であり、その理由が立法過程での議論を含む上記事実関係等からも全くうかがわれないことからすれば、そもそも国会が新薬事法を可決するに際して第1類医薬品及び第2類医薬品に係る郵便等販売を禁止すべきであるとの意思を有していたとはいい難い。そうすると、新薬事法の授権の趣旨が、第1類医薬品及び第2類医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止する旨の省令の制定までをも委任するものとして、上記規制の範囲や程度等に応じて明確であると解するのは困難であるというべきである。
 したがって、新施行規則のうち、店舗販売業者に対し、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品について、① 当該店舗において対面で販売させ又は授与させなければならない(159条の14第1項、2項本文)ものとし、② 当該店舗内の情報提供を行う場所において情報の提供を対面により行わせなければならない(159条の15第1項1号、159条の17第1号、2号)ものとし、③郵便等販売をしてはならない(142条、15条の4第1項1号)ものとした各規定は、いずれも上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。」
過去問・解説
(H28 予備 第13問 ア)
最高裁判所平成25年1月11日第2小法廷判決(民集67巻1号1頁。以下「本判決」という。)は、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品について、インターネット販売を含む郵便等販売を規制する薬事法施行規則(平成26年厚生労働省令第8号による改正前のもの。以下「本件施行規則」という。)の薬事法(平成25年法律第103号による改正前のもの。以下同じ。)への適合性について判断した判決である。問題となった本件施行規則は、第1類医薬品及び第2類医薬品につき、店舗販売業者による店舗以外の場所にいる者に対する郵便等販売を一律に禁止するものであった。
本判決は、当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条後段)として、原告が第1類医薬品及び第2類医薬品につき郵便等販売をすることができる権利(地位)を有することの確認を求める訴えを適法に提起することができることを前提としたものである。

【参照条文】薬事法(平成25年法律第103号による改正前のもの)
(一般用医薬品の区分)
第36条の3 一般用医薬品(専ら動物のために使用されることが目的とされているものを除く。)は、次のように区分する。
 一 第1類医薬品その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうちその使用に関し特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの及びその製造販売の承認の申請に際して第14条第8項第1号に該当するとされた医薬品(注:既に製造販売の承認を与えられている医薬品と、有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なるとされた医薬品)であつて当該申請に係る承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないもの
 二 第2類医薬品その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品(第1類医薬品を除く。)であつて厚生労働大臣が指定するもの
 三 第3類医薬品第1類医薬品及び第2類医薬品以外の一般用医薬品
2、3 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平25.1.11)は、「新施行規則の上記各規定にかかわらず第一類医薬品及び第二類医薬品に係る郵便等販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認を求める被上告人らの請求を認容した原審の判断は、結論において是認することができる。」としている。
認容判決をすることが是認されているということは、訴訟要件も満たしているということである。
したがって、本判決は、当事者訴訟として、原告が第1類医薬品及び第2類医薬品につき郵便等販売をすることができる権利(地位)を有することの確認を求める訴えを適法に提起することができることを前提としたものであるといえる。

(H28 予備 第13問 イ)
最高裁判所平成25年1月11日第2小法廷判決(民集67巻1号1頁。以下「本判決」という。)は、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品について、インターネット販売を含む郵便等販売を規制する薬事法施行規則(平成26年厚生労働省令第8号による改正前のもの。以下「本件施行規則」という。)の薬事法(平成25年法律第103号による改正前のもの。以下同じ。)への適合性について判断した判決である。問題となった本件施行規則は、第1類医薬品及び第2類医薬品につき、店舗販売業者による店舗以外の場所にいる者に対する郵便等販売を一律に禁止するものであった。
本判決は、一般用医薬品の郵便等販売の規制を本件施行規則に委任することについて、授権する薬事法の規定がある程度不明確であったとしても、行政庁には専門技術的な観点からの一定の裁量権が認められているから、一般用医薬品の郵便等販売を規制する本件施行規則を制定することが許されるとしたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平25.1.11)は、「厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が、これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの(行政手続法38条1項)であり、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。」としている。
したがって、授権する薬事法の規定がある程度不明確であった場合、一般用医薬品の郵便等販売を規制する本件施行規則を制定することは許されない。

(H28 予備 第13問 ウ)
最高裁判所平成25年1月11日第2小法廷判決(民集67巻1号1頁。以下「本判決」という。)は、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品について、インターネット販売を含む郵便等販売を規制する薬事法施行規則(平成26年厚生労働省令第8号による改正前のもの。以下「本件施行規則」という。)の薬事法(平成25年法律第103号による改正前のもの。以下同じ。)への適合性について判断した判決である。問題となった本件施行規則は、第1類医薬品及び第2類医薬品につき、店舗販売業者による店舗以外の場所にいる者に対する郵便等販売を一律に禁止するものであった。
本判決は、薬事法の規定の趣旨を考慮する際には、薬事法の立法過程で一般用医薬品を店舗において対面で販売する必要性が強調されていたなどの立法過程における議論を考慮してはならないとしたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平25.1.11)は、「厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が、これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するもの(行政手続法38条1項)であり、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである。」として、立法過程における議論も考慮している。
したがって、薬事法の規定の趣旨を考慮する際には、立法過程における議論を考慮することができる。

(H28 予備 第13問 エ)
最高裁判所平成25年1月11日第2小法廷判決(民集67巻1号1頁。以下「本判決」という。)は、一般用医薬品のうち第1類医薬品及び第2類医薬品について、インターネット販売を含む郵便等販売を規制する薬事法施行規則(平成26年厚生労働省令第8号による改正前のもの。以下「本件施行規則」という。)の薬事法(平成25年法律第103号による改正前のもの。以下同じ。)への適合性について判断した判決である。問題となった本件施行規則は、第1類医薬品及び第2類医薬品につき、店舗販売業者による店舗以外の場所にいる者に対する郵便等販売を一律に禁止するものであった。
本判決は、従前違法とされていなかった第1類医薬品及び第2類医薬品の郵便等販売を一律に禁止する本件施行規則は、職業活動の自由を相当程度制約するものであるから、憲法第22条第1項に違反すると判示したものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平25.1.11)は、「新施行規則のうち、店舗販売業者に対し、一般用医薬品のうち第一類医薬品及び第二類医薬品について、…郵便等販売をしてはならない(142条、15条の4第1項1号)ものとした各規定は、…上記各医薬品に係る郵便等販売を一律に禁止することとなる限度において、新薬事法の趣旨に適合するものではなく、新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。」としている。
したがって、本件施行規則は、憲法第22条第1項に違反するとまではいえない。
総合メモ

国家公務員法の規定による公務員の政治活動禁止の憲法適合性 最二小判平成24年12月7日

概要
国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号、国家公務員法102条1項、人事院規則14−7第6項7号による政党の機関紙の配布の禁止は、憲法21条1項、15条、19条、31条、41条、73条6号に違反しない。
判例
事案:厚生労働省事務官であった被告人が、日本共産党を支持する目的で、勤務時間外である休日に、東京世田谷区所在の警視庁職員住宅に同党の機関誌を投函して配布したことについて、国家公務員法違反で起訴された事案において、政党の機関紙の配布の禁止が憲法21条1項に違反するか問題となった。

判旨:「本件罰則規定の目的は、前記のとおり、公務員の職務の遂行の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することにあるところ、これは、議会制民主主義に基づく統治機構の仕組みを定める憲法の要請にかなう国民全体の重要な利益というべきであり、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為を禁止することは、国民全体の上記利益の保護のためであって、その規制の目的は合理的であり正当なものといえる。他方、本件罰則規定により禁止されるのは、民主主義社会において重要な意義を有する表現の自由としての政治活動の自由ではあるものの、前記アのとおり、禁止の対象とされるものは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られ、このようなおそれが認められない政治的行為や本規則が規定する行為類型以外の政治的行為が禁止されるものではないから、その制限は必要やむを得ない限度にとどまり、前記の目的を達成するために必要かつ合理的な範囲のものというべきである。そして、上記の解釈の下における本件罰則規定は、不明確なものとも、過度に広汎な規制であるともいえないと解される。また、既にみたとおり、本法102条1項が人事院規則に委任しているのは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為の行為類型を規制の対象として具体的に定めることであるから、同項が懲戒処分の対象と刑罰の対象とで殊更に区別することなく規制の対象となる政治的行為の定めを人事院規則に委任しているからといって、憲法上禁止される白紙委任に当たらないことは明らかである。なお、このような禁止行為に対しては、服務規律違反を理由とする懲戒処分のみではなく、刑罰を科すことをも制度として予定されているが、これは常に刑罰を科すという趣旨ではなく、国民全体の上記利益を損なう影響の重大性等に鑑みて禁止行為の内容、態様等が懲戒処分等では対応しきれない場合も想定されるためであり、あり得べき対応というべきであって、刑罰を含む規制であることをもって直ちに必要かつ合理的なものであることが否定されるものではない。 以上の諸点に鑑みれば、本件罰則規定は憲法21条1項、15条、19条、31条、41条、73条6号に違反するものではないというべきであ…る。」
過去問・解説
(H29 予備 第13問 ウ)
国家公務員に禁止される「政治的行為」の具体的内容を定めた人事院規則の規定と、国家公務員法との関係が問題とされた最高裁判所平成24年12月7日第二小法廷判決(刑集66巻12号1722頁)は、憲法の規定及び国家公務員法の委任の趣旨を踏まえて、上記規則の規定を限定的に解釈したものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平24.12.7)は、「国民は、憲法上、表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており、この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利であることに鑑みると、上記の目的に基づく法令による公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきものである。」としている。
その上で、「本法の委任の趣旨及び本規則の性格に照らすと、本件罰則規定に係る本規則6項7号、13号(5項3号)については、それぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを当該各号の禁止の対象となる政治的行為と規定したもの…。」としている。
このように、本判決は、憲法の規定及び国家公務員法の委任の趣旨を踏まえて、上記規則の規定を限定的に解釈している。
総合メモ

通達の解釈の妥当性と通達を契機とする課税処分の適法性 最二小判昭和33年3月28日

概要
①パチンコ球遊器が物品税法上の「遊戯具」のうちに含まれるとする通達の解釈は、妥当である。
②課税処分がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、課税処分は法の根拠に基づく処分といえるから、憲法30条にも反しない。
判例
事案:パチンコ球遊器の製造を業とする上告人らが、各税務署長が各上告人に対してした本件各物品税賦課処分がいずれも無効であることの確認を求めた事案において、①通達が示した法律解釈の適法性(パチンコ球遊器は物品税法第1条にいう遊戯具にあたるか)、②通達を契機として行われた課税処分の憲法30条適合性が問題となった。

判旨:①「物品税は物品税法が施行された当初(昭和4年4月1日)においては消費税として出発したものであるが、その後次第に生活必需品その他いわゆる資本的消費財も課税品目中に加えられ、現在の物品税法(昭和15年法律第40号)が制定された当時、すでに、一部生活必需品(たとえば燐寸)(第1条第3種1)や『撞球台』(第1条第2種甲類11)『乗用自動車』(第1条第2種甲類14)等の資本財もしくは資本財たり得べきものも課税品目として掲げられ、その後の改正においてさらにこの種の品目が数多く追加されたこと、いわゆる消費的消費財と生産的消費財との区別はもともと相対的なものであって、パチンコ球遊器も自家用消費財としての性格をまったく持っていないとはいい得ないこと、その他第1、2審判決の掲げるような理由にかんがみれば、社会観念上普通に遊戯具とされているパチンコ球遊器が物品税法上の『遊戯具』のうちに含まれないと解することは困難であり、原判決も、もとより、所論のように、単に立法論としてパチンコ球遊器を課税品目に加えることの妥当性を論じたものではなく、現行法の解釈として『遊戯具』中にパチンコ球遊器が含まれるとしたものであって、右判断は、正当である。」
 ②「なお、論旨は、通達課税による憲法違反を云為しているが、本件の課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げがなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提とするものであって、採用し得ない。」
過去問・解説
(H20 司法 第26問 イ)
パチンコ球遊器について約10年間にわたり非課税の取扱いが続いた後に、法定の課税対象物品に該当する旨の通達が発せられた場合、通達の内容が法律の正しい解釈に合致するとしても、通達が発せられた後にされる課税処分は、非課税の継続に寄せられた納税者の信頼を損なうものであり、違法である。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.3.28)は、本肢と同種の事案において、「本件の課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げがな…い。」としている。

(H24 予備 第13問 イ)
過去約10年間にわたり物品税が賦課されていなかったパチンコ球遊器につき、物品税法上の課税対象物品に当たる旨の通達が発せられたために、税務署長が法令の解釈を変更して行った物品税賦課処分は、法律の改正又は制定によらずに通達に基づいて国民に新たな不利益を課すものであるから、法律の留保原則に違反する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.3.28)は、「原判決も…現行法の解釈として『遊戯具』中にパチンコ球遊器が含まれるとしたものであって、右判断は、正当である。」とした上で、「本件の課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げがな…い。」いとしている。
したがって、通達に基づいて税務署長が法令の解釈を変更して行った物品税賦課処分も、法の正しい解釈に合致するのであれば法の根拠に基づく処分であるから、法律の留保原則に反しない。
総合メモ

公害健康被害の補償等に関する法律4条2項に基づく水俣病の認定の申請を棄却する処分の取消訴訟における審理及び判断の方法 最三小判平成25年4月16日

概要
公害健康被害の補償等に関する法律4条2項に基づく水俣病の認定の申請を棄却する処分の取消訴訟における裁判所の審理及び判断は、処分行政庁の判断の基準とされた運用の指針に現在の最新の医学水準に照らして不合理な点があるか否か、公害健康被害認定審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があってこれに依拠してされた処分行政庁の判断に不合理な点があるか否かといった観点から行われるべきものではなく、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべきものである。
判例
事案:亡Aが水俣病認定申請をしたところ、Y県がこれを棄却する処分をし、審査請求についても棄却裁決がなされたことから、亡Aの子であるXが、本件処分の取消及び、Y県知事において水俣病認定をすることの義務付けを求めた事案において、公害健康被害の補償等に関する法律4条2項に基づく水俣病の認定の申請を棄却する処分の取消訴訟における審理及び判断の方法はいかにすべきかが問題となった。

判旨:「上記の認定自体は、前記…のような客観的事象としての水俣病のり患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないというべきであり、前記…のとおり処分行政庁の審査の対象を殊更に狭義に限定して解すべきものともいえない以上、上記のような処分行政庁の判断の適否に関する裁判所の審理及び判断は、原判決のいうように、処分行政庁の判断の基準とされた昭和52年判断条件に現在の最新の医学水準に照らして不合理な点があるか否か、公害健康被害認定審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があってこれに依拠してされた処分行政庁の判断に不合理な点があるか否かといった観点から行われるべきものではなく、裁判所において、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべきものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H30 予備 第16問 ウ)
公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定の申請を棄却する処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、処分行政庁の判断の基準とされた認定の基準に現在の最新の医学水準に照らして不合理な点があるか否か、公害健康被害認定審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があってこれに依拠してされた処分行政庁の判断に不合理な点があるか否かといった観点から行われるべきものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平25.4.16)は、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定の申請を棄却する処分の取消訴訟が提起された事案において、「処分行政庁の判断の適否に関する裁判所の審理及び判断は、…裁判所において、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべき…。」としている。

(R4 予備 第15問 ウ)
公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定は、水俣病のり患の有無という客観的事実を確認する行為であり、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではなく、上記水俣病認定の申請に対する処分行政庁の判断の適否に関する裁判所の審理及び判断は、裁判所において、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべきである。

(正答)

(解説)
判例(最判平25.4.16)は、「水俣病である旨の認定…自体は、…客観的事象としての水俣病のり患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない…。」とした上で、「処分行政庁の判断の適否に関する裁判所の審理及び判断は、…裁判所において、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべき…。」としている。
総合メモ

高等学校学習指導要領の性質 最一小判平成2年1月18日

概要
高等学校学習指導要領は法規としての性質を有する。
判例
事案:県教育委員会が、担当教科の授業で所定の教科書を使用せず、学習指導要領を逸脱した指導を行ったこと等を理由に県立高校の社会科担当教諭である被上告人らを懲戒免職処分にしたのに対し、被上告人らが右処分の取消を求めた事案において、高等学校学習指導要領は法規としての性質を有するか否かが問題となった。

判旨:「高等学校学習指導要領(昭和35年文部省告示第94号)は法規としての性質を有するとした原審の判断は、正当として是認することができ右学習指導要領の性質をそのように解することが憲法23条、26条に違反するものでないことは、最高裁昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決(刑集30巻5号615頁)の趣旨とするところである。」
過去問・解説
(R3 予備 第13問 イ)
各省大臣の発する告示は、必要な事項を国民に公示するものにすぎず、文部科学大臣の発する告示である学習指導要領は、法規としての性質を有しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.1.18)は、「高等学校学習指導要領…は法規としての性質を有する…。」としている。
総合メモ