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行政裁量
産米供出個人割当額決定の方法 最二小判昭和30年6月24日
概要
産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合でも、右決定に当る村長は、この点につき一部落内の特定の生産者を何等いわれがなく他の生産者と区別して取り扱う裁量権を有するものではないが、判示の事実関係(判決理由参照)の下では、一部落内の特定の生産者をこの点につき他の生産者と区別して取り扱ったとしても、これをもって、違法の裁量権の行使ということはできない。
判例
事案:Xが、Y村長らに対し、産米供出個人割当通知の取消しを求めて提訴した事案において、産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合における、右決定に当たる村長の裁量権の限界が問題となった。
判旨:「本件供出個人割当通知が行われた当時における法令(食糧管理法3条、同法施行規則1条、3条、昭和23年農林省令一一5号附則2項)によれば、供出割当の方法については、『市町村長が、知事の指示に従い、食糧調整委員会の議決を経て、供出割当数量を定め、遅滞なくこれを生産者に通知する』との趣旨の定めがあるにとどまり、その方法として、いわゆる事前割当の方法(生産開始前に予め部落内の生産者相互の協議を経て割当額を決定通知する方法)によるべきかどうか、また割当通知の時期を何時とすべきか等については、何等具体的な定めがなかったことは明らかである。従って、これらの点についてどのような措置をとるかは、一応、行政庁の裁量に任されていたものと解さざるを得ない。もっとも、かような場合においても、行政庁は、何等いわれがなく特定の個人を差別的に取り扱いこれに不利益を及ぼす自由を有するものではなく、この意味においては、行政庁の裁量権には一定の限界があるものと解すべきである。しかし、原審の認定するところによれば、同じ部落内の上告人以外の生産者に対しては、事前割当の方法により昭和23年5月10日頃に個人割当の通知が行われたに対し、上告人は、従来から供出に非協力であり、これにつき他の部落と協議することは不可能と思われる状況にあったため、上告人に対しては、別に、食糧調整委員会の議決を経て、産米作付反別その他地力等につき所要の調査を遂げ、とくに上告人が本来の農家でないことも考慮してその負担を軽減し、同年12月24日に供出割当数量を通知したというのである。かような事情の下では、上告人が事前割当の手続に参加し協議に与る機会を失ったとしてもやむを得ないところであり、また上告人については個別的に生産の状況を調査するため上記の程度において割当通知が遅延したとしても、強いてこれをとがめ得ない事情にあったものといわねばならない。 しかも、供出割当の制度は、結局において、生産の実情に応じて供出義務を負担させることにあるものと解すべきであるが、原審の認定するところによれば、同年度における上告人の実際の収穫量は、右の割当数量を供出するに十分余裕のある状況にあったというのであるから、前記の措置により上告人が特別に不利益を被ったものとは認められない。以上のような事情を綜合して考えれば、被上告人が供出割当について上告人を前記の程度において区別して取り扱ったとしても、これをもっていわれのない差別取扱による違法処分というには当らず、また右措置が上告人に対する人格蔑視に基く違法処分であるということもできないものといわねばならない。それ故、憲法13条、14条の精神を援用して本件供出割当通知を違法処分と解すべきものとする論旨は採用するに足りず、右割当通知が違法であることを前提とする憲法29条違反の論旨は、前提を欠くものとして採用し得ない。」
判旨:「本件供出個人割当通知が行われた当時における法令(食糧管理法3条、同法施行規則1条、3条、昭和23年農林省令一一5号附則2項)によれば、供出割当の方法については、『市町村長が、知事の指示に従い、食糧調整委員会の議決を経て、供出割当数量を定め、遅滞なくこれを生産者に通知する』との趣旨の定めがあるにとどまり、その方法として、いわゆる事前割当の方法(生産開始前に予め部落内の生産者相互の協議を経て割当額を決定通知する方法)によるべきかどうか、また割当通知の時期を何時とすべきか等については、何等具体的な定めがなかったことは明らかである。従って、これらの点についてどのような措置をとるかは、一応、行政庁の裁量に任されていたものと解さざるを得ない。もっとも、かような場合においても、行政庁は、何等いわれがなく特定の個人を差別的に取り扱いこれに不利益を及ぼす自由を有するものではなく、この意味においては、行政庁の裁量権には一定の限界があるものと解すべきである。しかし、原審の認定するところによれば、同じ部落内の上告人以外の生産者に対しては、事前割当の方法により昭和23年5月10日頃に個人割当の通知が行われたに対し、上告人は、従来から供出に非協力であり、これにつき他の部落と協議することは不可能と思われる状況にあったため、上告人に対しては、別に、食糧調整委員会の議決を経て、産米作付反別その他地力等につき所要の調査を遂げ、とくに上告人が本来の農家でないことも考慮してその負担を軽減し、同年12月24日に供出割当数量を通知したというのである。かような事情の下では、上告人が事前割当の手続に参加し協議に与る機会を失ったとしてもやむを得ないところであり、また上告人については個別的に生産の状況を調査するため上記の程度において割当通知が遅延したとしても、強いてこれをとがめ得ない事情にあったものといわねばならない。 しかも、供出割当の制度は、結局において、生産の実情に応じて供出義務を負担させることにあるものと解すべきであるが、原審の認定するところによれば、同年度における上告人の実際の収穫量は、右の割当数量を供出するに十分余裕のある状況にあったというのであるから、前記の措置により上告人が特別に不利益を被ったものとは認められない。以上のような事情を綜合して考えれば、被上告人が供出割当について上告人を前記の程度において区別して取り扱ったとしても、これをもっていわれのない差別取扱による違法処分というには当らず、また右措置が上告人に対する人格蔑視に基く違法処分であるということもできないものといわねばならない。それ故、憲法13条、14条の精神を援用して本件供出割当通知を違法処分と解すべきものとする論旨は採用するに足りず、右割当通知が違法であることを前提とする憲法29条違反の論旨は、前提を欠くものとして採用し得ない。」
総合メモ
原子炉設置許可処分 最一小判平成4年10月29日
概要
①基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない。
②原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。
②原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。
判例
事案: 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律80号改正前)23条に基づき内閣総理大臣のした原子炉設置許可処分が違法であるとして、Xらが、同設置許可処分の取消しを求めた事案において、①旧原子力基本法等の設置規制手続に関する規定の憲法31条適合性、及び②原子炉設置許可処分の取消訴訟における審理・判断の方法が問題となった。
判旨:①「行政手続は、憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではないと解するのが相当である。そして、原子炉設置許可の申請が規制法24条1項各号所定の基準に適合するかどうかの審査は、原子力の開発及び利用の計画との適合性や原子炉施設の安全性に関する極めて高度な専門技術的判断を伴うものであり、同条2項は、右許可をする場合に、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めている。このことにかんがみると、所論のように、基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない…。 また、規制法24条1項4号は、原子炉設置許可の基準として、原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質…、核燃料物質によって汚染された物…又は原子炉による災害の防止上支障がないものであることと規定しているが、それは、原子炉施設の安全性に関する審査が、後述のとおり、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づいてされる必要がある上、科学技術は不断に進歩、発展しているのであるから、原子炉施設の安全性に関する基準を具体的かつ詳細に法律で定めることは困難であるのみならず、最新の科学技術水準への即応性の観点からみて適当ではないとの見解に基づくものと考えられ、右見解は十分首肯し得るところである。しかも、設置許可に当たっては、申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性に関する審査の適正を確保するため、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を聴き、これを尊重するという、慎重な手続が定められていることを考慮すると、右規定が不合理、不明確であるとの非難は当たらないというべきである。したがって、右規定が不合理、不明確であることを前提とする所論憲法31条違反の主張は、その前提を欠く。」
②「技術的能力を含めた原子炉施設の安全性に関する審査は、当該原子炉施設そのものの工学的安全性、平常運転時における従業員、周辺住民及び周辺環境への放射線の影響、事故時における周辺地域への影響等を、原子炉設置予定地の地形、地質、気象等の自然的条件、人口分布等の社会的条件及び当該原子炉設置者の右技術的能力との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、しかも、右審査の対象には、将来の予測に係る事項も含まれているのであって、右審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。そして、規制法24条2項が、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可をする場合においては、同条1項3号…及び4号所定の基準の適用について、あらかじめ原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めているのは、右のような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し、右各号所定の基準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。 以上の点を考慮すると、右の原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。 原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。」
判旨:①「行政手続は、憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではないと解するのが相当である。そして、原子炉設置許可の申請が規制法24条1項各号所定の基準に適合するかどうかの審査は、原子力の開発及び利用の計画との適合性や原子炉施設の安全性に関する極めて高度な専門技術的判断を伴うものであり、同条2項は、右許可をする場合に、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めている。このことにかんがみると、所論のように、基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない…。 また、規制法24条1項4号は、原子炉設置許可の基準として、原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質…、核燃料物質によって汚染された物…又は原子炉による災害の防止上支障がないものであることと規定しているが、それは、原子炉施設の安全性に関する審査が、後述のとおり、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づいてされる必要がある上、科学技術は不断に進歩、発展しているのであるから、原子炉施設の安全性に関する基準を具体的かつ詳細に法律で定めることは困難であるのみならず、最新の科学技術水準への即応性の観点からみて適当ではないとの見解に基づくものと考えられ、右見解は十分首肯し得るところである。しかも、設置許可に当たっては、申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性に関する審査の適正を確保するため、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を聴き、これを尊重するという、慎重な手続が定められていることを考慮すると、右規定が不合理、不明確であるとの非難は当たらないというべきである。したがって、右規定が不合理、不明確であることを前提とする所論憲法31条違反の主張は、その前提を欠く。」
②「技術的能力を含めた原子炉施設の安全性に関する審査は、当該原子炉施設そのものの工学的安全性、平常運転時における従業員、周辺住民及び周辺環境への放射線の影響、事故時における周辺地域への影響等を、原子炉設置予定地の地形、地質、気象等の自然的条件、人口分布等の社会的条件及び当該原子炉設置者の右技術的能力との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、しかも、右審査の対象には、将来の予測に係る事項も含まれているのであって、右審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。そして、規制法24条2項が、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可をする場合においては、同条1項3号…及び4号所定の基準の適用について、あらかじめ原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めているのは、右のような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し、右各号所定の基準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。 以上の点を考慮すると、右の原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。 原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第37問 エ)
取消訴訟における行政処分の違法判断の基準時は、行政処分がされた時点であると解すべきであるから、処分の適法性の判断に用いられる科学的、専門技術的知見も、処分当時のものに限定される。
取消訴訟における行政処分の違法判断の基準時は、行政処分がされた時点であると解すべきであるから、処分の適法性の判断に用いられる科学的、専門技術的知見も、処分当時のものに限定される。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、処分の適法性の判断に用いられる科学的、専門技術的知見は、処分当時のものに限定されない。
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、処分の適法性の判断に用いられる科学的、専門技術的知見は、処分当時のものに限定されない。
(H20 司法 第28問 ア)
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分の違法性に関する司法審査の方式として、裁判所が処分要件について行政庁と同一の立場に立って判断を行い、それと行政庁の判断とを比較して、行政庁の判断の適否を審査するという方式を採用している。
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分の違法性に関する司法審査の方式として、裁判所が処分要件について行政庁と同一の立場に立って判断を行い、それと行政庁の判断とを比較して、行政庁の判断の適否を審査するという方式を採用している。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、本判例は、本肢のような方式を採用していない。
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、本判例は、本肢のような方式を採用していない。
(H20 司法 第28問 イ)
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分について、処分要件を満たした場合に、処分をするかどうか、するとしてどのような内容の処分をするかという点について、行政庁の裁量を認めたものである。
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分について、処分要件を満たした場合に、処分をするかどうか、するとしてどのような内容の処分をするかという点について、行政庁の裁量を認めたものである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、本判例は、要件裁量について判断しているが、効果裁量については判断していない。
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、本判例は、要件裁量について判断しているが、効果裁量については判断していない。
(H20 司法 第28問 ウ)
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、行政庁の側がその判断に不合理な点がないことの主張、立証責任を負うべきものとしている。
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、行政庁の側がその判断に不合理な点がないことの主張、立証責任を負うべきものとしている。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。」としている。
これは、立証責任の転換ではなく、立証責任の軽減であると解されている。
したがって、行政庁の側ではなく、原告が、その判断に不合理な点がないことの主張、立証責任を負うべきである。
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。」としている。
これは、立証責任の転換ではなく、立証責任の軽減であると解されている。
したがって、行政庁の側ではなく、原告が、その判断に不合理な点がないことの主張、立証責任を負うべきである。
(H29 予備 第16問 イ)
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであるから、その合理性の有無は当該設置許可処分時の科学技術水準に照らして審理、判断されるべきである。
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであるから、その合理性の有無は当該設置許可処分時の科学技術水準に照らして審理、判断されるべきである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、…右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、合理性の有無は、当該設置許可処分時ではなく、現在の科学技術水準に照らして審理、判断されるべきである。
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、…右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、合理性の有無は、当該設置許可処分時ではなく、現在の科学技術水準に照らして審理、判断されるべきである。
(R2 予備 第19問 イ)
取消訴訟の違法判断の基準時は処分時であるから、原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟において、裁判所の審理、判断は、当該処分当時の科学技術水準に照らして行われるべきである。
取消訴訟の違法判断の基準時は処分時であるから、原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟において、裁判所の審理、判断は、当該処分当時の科学技術水準に照らして行われるべきである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、…右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、裁判所の審理、判断は、当該処分当時ではなく、現在の科学技術水準に照らして行われるべきである。
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、…右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、裁判所の審理、判断は、当該処分当時ではなく、現在の科学技術水準に照らして行われるべきである。
(R4 予備 第14問 ウ)
伊方原発訴訟に係る最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁)は、原子炉設置許可の申請に対して行政庁が処分をする際、憲法第31条に基づき、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させることを要求している。
伊方原発訴訟に係る最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁)は、原子炉設置許可の申請に対して行政庁が処分をする際、憲法第31条に基づき、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させることを要求している。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない…。」としている。
したがって、本判決は原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させることを要求していない。
判例(最判平4.10.29)は、「基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない…。」としている。
したがって、本判決は原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させることを要求していない。
総合メモ
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準の改定 最三小判平成24年2月28日
概要
厚生労働大臣が保護基準を具体化する際には国の財政事情も考慮しての政策的裁量が認められているところ、専門委員会は国の財政事情を考慮せずに専門的知見に基づいて検討を行うものであるため、保護基準を具体化する際の考慮事項のすべてについて専門委員会の検討が及んでいるとはいえない。そのため、厚生労働大臣の独自の判断の余地が残るため、専門委員会の判断過程を厚生労働大臣の判断過程に置き換えることはできない。そこで、本判決は、「専門委員会の意見は、厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく、また、社会保障審談会…の正式の意見として集約されたものでもなく、その意見は保護基準の改定に当たっての考慮要素として位置づけられるものである。」として、厚生労働大臣の判断過程を審査対象とした上で、㋐統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠ける専門委員会の意見に沿って厚生労働大臣の判断が行われた点については他事考慮、㋑合理的関連性や専門的知見との整合性を有する専門委員会の意見を考慮することなく厚生労働大臣の判断が行われた点については考慮不尽に位置づけるとともに、㋒専門委員会の判断が及んでいない事項との関係でも厚生労働大臣の他事考慮・考慮不尽・評価の明白な合理性欠如を問題にする、という判断枠組みを採用した。
判例
事案:Xが、生活保護法上の老齢加算が段階的に減額されて廃止されたことに基づいて、所轄の福祉事務所長からそれぞれ生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定を受けたため、保護基準の改定は憲法25条1項、生活保護法3条等に反する違憲、違法なものであるとして、Yに対し、上記各保護変更決定の取消しを求めた事案において、改定に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかどうかが問題となった。
判旨:「生活保護法3条によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護者…の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。そうすると、仮に、老齢加算の一部又は全部についてその支給の根拠となっていた高齢者の特別な需要が認められないというのであれば、老齢加算の減額又は廃止をすることは、同項の規定に沿うところであるということができる。もっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである…。したがって、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである…。 また、老齢加算の全部についてその支給の根拠となる上記の特別な需要が認められない場合であっても、老齢加算の廃止は、これが支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者に関しては、保護基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると、上記のような場合においても、厚生労働大臣は、老齢加算の支給を受けていない者との公平や国の財政事情といった見地に基づく加算の廃止の必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため、その廃止の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否などを含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきである。 そして、老齢加算の減額又は廃止の要否の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、前記…のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、老齢加算の支給根拠及びその額等については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて高齢者の特別な需要に係る推計や加算対象世帯と一般世帯との消費構造の比較検討がされてきたところである。これらの経緯等に鑑みると、老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は、〔1〕当該改定の時点において70歳以上の高齢者には老齢加算に見合う特別な需要が認められず、高齢者に係る当該改定後の生活扶助基準の内容が高齢者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、〔2〕老齢加算の廃止に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものというべきである。 前記事実関係等によれば、専門委員会が中間取りまとめにおいて示した意見は、特別集計等の統計や資料等に基づき、〔1〕無職単身世帯の生活扶助相当消費支出額を比較した場合、いずれの収入階層でも70歳以上の者の需要は60ないし69歳の者のそれより少ないことが示されていたこと、〔2〕70歳以上の単身者の生活扶助額(老齢加算を除く。)の平均は、第〈1〉-5分位の同じく70歳以上の単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていたこと、〔3〕昭和59年度から平成14年度までにおける生活扶助基準の改定率は、消費者物価指数及び賃金の各伸び率を上回っており、特に同7年度以降の比較では後二者がマイナスで推移しているにもかかわらずプラスとなっていたこと、〔4〕昭和58年度以降、被保護勤労者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の消費支出の7割前後で推移していたこと、〔5〕昭和55年と平成12年とを比較すると第〈1〉-10分位及び被保護勤労者世帯の平均のいずれにおいても消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)が低下していることなどが勘案されたものであって、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない。そして、70歳以上の高齢者に老齢加算に見合う特別な需要が認められず、高齢者に係る本件改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持するに足りない程度にまで低下するものではないとした厚生労働大臣の判断は、専門委員会のこのような検討等を経た前記第1の3(5)アの意見に沿って行われたものであり、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があると解すべき事情はうかがわれない。 また、前記事実関係等によれば、本件改定が老齢加算を3年間かけて段階的に減額して廃止したことも、専門委員会の前記第1の3(5)ウの意見に沿ったものであるところ、平成11年度における老齢加算のある被保護者世帯の貯蓄純増は老齢加算の額に近似した水準に達しており、老齢加算のない被保護者世帯の貯蓄純増との差額も月額で5000円を超えていたというのであるから、3年間かけて段階的に老齢加算を減額して廃止することによって被保護者世帯に対する影響は相当程度緩和されたものと評価することができる上、厚生労働省による生活扶助基準の水準の定期的な検証も前記…の意見を踏まえて生活水準の急激な低下を防止すべく配慮したものということができ、その他本件に現れた一切の事情を勘案しても、本件改定に基づく生活扶助額の減額が被保護者世帯の期待的利益の喪失を通じてその生活に看過し難い影響を及ぼしたものとまで評価することはできないというべきである。 以上によれば、本件改定については、前記…のいずれの観点からも裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。」
判旨:「生活保護法3条によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護者…の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。そうすると、仮に、老齢加算の一部又は全部についてその支給の根拠となっていた高齢者の特別な需要が認められないというのであれば、老齢加算の減額又は廃止をすることは、同項の規定に沿うところであるということができる。もっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである…。したがって、保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである…。 また、老齢加算の全部についてその支給の根拠となる上記の特別な需要が認められない場合であっても、老齢加算の廃止は、これが支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者に関しては、保護基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると、上記のような場合においても、厚生労働大臣は、老齢加算の支給を受けていない者との公平や国の財政事情といった見地に基づく加算の廃止の必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため、その廃止の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否などを含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきである。 そして、老齢加算の減額又は廃止の要否の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、前記…のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、老齢加算の支給根拠及びその額等については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて高齢者の特別な需要に係る推計や加算対象世帯と一般世帯との消費構造の比較検討がされてきたところである。これらの経緯等に鑑みると、老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は、〔1〕当該改定の時点において70歳以上の高齢者には老齢加算に見合う特別な需要が認められず、高齢者に係る当該改定後の生活扶助基準の内容が高齢者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、〔2〕老齢加算の廃止に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものというべきである。 前記事実関係等によれば、専門委員会が中間取りまとめにおいて示した意見は、特別集計等の統計や資料等に基づき、〔1〕無職単身世帯の生活扶助相当消費支出額を比較した場合、いずれの収入階層でも70歳以上の者の需要は60ないし69歳の者のそれより少ないことが示されていたこと、〔2〕70歳以上の単身者の生活扶助額(老齢加算を除く。)の平均は、第〈1〉-5分位の同じく70歳以上の単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていたこと、〔3〕昭和59年度から平成14年度までにおける生活扶助基準の改定率は、消費者物価指数及び賃金の各伸び率を上回っており、特に同7年度以降の比較では後二者がマイナスで推移しているにもかかわらずプラスとなっていたこと、〔4〕昭和58年度以降、被保護勤労者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の消費支出の7割前後で推移していたこと、〔5〕昭和55年と平成12年とを比較すると第〈1〉-10分位及び被保護勤労者世帯の平均のいずれにおいても消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)が低下していることなどが勘案されたものであって、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない。そして、70歳以上の高齢者に老齢加算に見合う特別な需要が認められず、高齢者に係る本件改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持するに足りない程度にまで低下するものではないとした厚生労働大臣の判断は、専門委員会のこのような検討等を経た前記第1の3(5)アの意見に沿って行われたものであり、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があると解すべき事情はうかがわれない。 また、前記事実関係等によれば、本件改定が老齢加算を3年間かけて段階的に減額して廃止したことも、専門委員会の前記第1の3(5)ウの意見に沿ったものであるところ、平成11年度における老齢加算のある被保護者世帯の貯蓄純増は老齢加算の額に近似した水準に達しており、老齢加算のない被保護者世帯の貯蓄純増との差額も月額で5000円を超えていたというのであるから、3年間かけて段階的に老齢加算を減額して廃止することによって被保護者世帯に対する影響は相当程度緩和されたものと評価することができる上、厚生労働省による生活扶助基準の水準の定期的な検証も前記…の意見を踏まえて生活水準の急激な低下を防止すべく配慮したものということができ、その他本件に現れた一切の事情を勘案しても、本件改定に基づく生活扶助額の減額が被保護者世帯の期待的利益の喪失を通じてその生活に看過し難い影響を及ぼしたものとまで評価することはできないというべきである。 以上によれば、本件改定については、前記…のいずれの観点からも裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。」
過去問・解説
(H28 予備 第15問 エ)
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準の改定については、厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な裁量に委ねられている。したがって、裁判所は、厚生労働大臣による最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められることを理由に、当該保護の基準の改定を違法とすることはできない。
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準の改定については、厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な裁量に委ねられている。したがって、裁判所は、厚生労働大臣による最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められることを理由に、当該保護の基準の改定を違法とすることはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平24.2.28)は、「保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである…。」とした上で、「老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は、…厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、…に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となる…。」としている。
したがって、裁判所は、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められることを理由に、当該保護の基準の改定を違法とすることができる。
判例(最判平24.2.28)は、「保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである…。」とした上で、「老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は、…厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、…に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となる…。」としている。
したがって、裁判所は、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められることを理由に、当該保護の基準の改定を違法とすることができる。
(R6 予備 第14問 ア)
母がした子の住民票作成の申出に対し、市町村長が住民票を作成しない旨の応答をすることは、母又は子の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであるから、行政事件訴訟法第3条第2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たる。
母がした子の住民票作成の申出に対し、市町村長が住民票を作成しない旨の応答をすることは、母又は子の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであるから、行政事件訴訟法第3条第2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平21.4.17)は、本肢と同種の事案において、「本件応答は、法令に根拠のない事実上の応答にすぎず、これにより上告人子又は上告人父の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない…。」としている。
判例(最判平21.4.17)は、本肢と同種の事案において、「本件応答は、法令に根拠のない事実上の応答にすぎず、これにより上告人子又は上告人父の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない…。」としている。
(R6 予備 第16問 ア)
厚生労働大臣が、生活保護法に基づいて定める保護の基準中の老齢加算に係る部分の改定に際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たっては、同大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。
厚生労働大臣が、生活保護法に基づいて定める保護の基準中の老齢加算に係る部分の改定に際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否かを判断するに当たっては、同大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平24.2.28)は、「保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである…。」としている。
判例(最判平24.2.28)は、「保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し、最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである…。」としている。
総合メモ
公立学校施設の目的外使用の許否の判断 最三小判平成18年2月7日
概要
公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられており、学校教育上支障がない場合であっても、行政財産である学校施設の目的及び用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。
判例
事案:教職員団体であるXが、本件集会の会場として、本件中学校の体育館等の学校施設の使用を申し出たところ、いったんは口頭でこれを了承する返事を校長から得たのに、その後、市教育委員会から不当にその使用を拒否されたとして、Yに対し、損害賠償を求めた事案において、公立学校施設の目的外使用の許否の判断と管理者の裁量権が問題となった。
判旨:「地方公共団体の設置する公立学校は、地方自治法244条にいう『公の施設』として設けられるものであるが、これを構成する物的要素としての学校施設は同法238条4項にいう行政財産である。したがって、公立学校施設をその設置目的である学校教育の目的に使用する場合には、同法244条の規律に服することになるが、これを設置目的外に使用するためには、同法238条の4第4項に基づく許可が必要である。教育財産は教育委員会が管理するとされているため(地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条2号)、上記の許可は本来教育委員会が行うこととなる。 学校施設の確保に関する政令(昭和24年政令第34号。以下『学校施設令』という。)3条は、法律又は法律に基づく命令の規定に基づいて使用する場合及び管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合を例外として、学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除き、使用してはならないとし(1項)、上記の同意を与えるには、他の法令の規定に従わなければならないとしている(2項)。同意を与えるための『他の法令の規定』として、上記の地方自治法238条の4第4項は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができると定めており、その趣旨を学校施設の場合に敷えんした学校教育法85条は、学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができると規定している。本件使用規則も、これらの法令の規定を受けて、市教委において使用許可の方法、基準等を定めたものである。 地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条の上記文言に加えて、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。学校教育上の支障とは、物理的支障に限らず、教育的配慮の観点から、児童、生徒に対し精神的悪影響を与え、学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ、現在の具体的な支障だけでなく、将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる。また、管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。 教職員の職員団体は、教職員を構成員とするとはいえ、その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって、学校における教育活動を直接目的とするものではないから、職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。また、従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのことから直ちに、従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも、従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。
…本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」
判旨:「地方公共団体の設置する公立学校は、地方自治法244条にいう『公の施設』として設けられるものであるが、これを構成する物的要素としての学校施設は同法238条4項にいう行政財産である。したがって、公立学校施設をその設置目的である学校教育の目的に使用する場合には、同法244条の規律に服することになるが、これを設置目的外に使用するためには、同法238条の4第4項に基づく許可が必要である。教育財産は教育委員会が管理するとされているため(地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条2号)、上記の許可は本来教育委員会が行うこととなる。 学校施設の確保に関する政令(昭和24年政令第34号。以下『学校施設令』という。)3条は、法律又は法律に基づく命令の規定に基づいて使用する場合及び管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合を例外として、学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除き、使用してはならないとし(1項)、上記の同意を与えるには、他の法令の規定に従わなければならないとしている(2項)。同意を与えるための『他の法令の規定』として、上記の地方自治法238条の4第4項は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができると定めており、その趣旨を学校施設の場合に敷えんした学校教育法85条は、学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができると規定している。本件使用規則も、これらの法令の規定を受けて、市教委において使用許可の方法、基準等を定めたものである。 地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条の上記文言に加えて、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。学校教育上の支障とは、物理的支障に限らず、教育的配慮の観点から、児童、生徒に対し精神的悪影響を与え、学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ、現在の具体的な支障だけでなく、将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる。また、管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。 教職員の職員団体は、教職員を構成員とするとはいえ、その勤務条件の維持改善を図ることを目的とするものであって、学校における教育活動を直接目的とするものではないから、職員団体にとって使用の必要性が大きいからといって、管理者において職員団体の活動のためにする学校施設の使用を受忍し、許容しなければならない義務を負うものではないし、使用を許さないことが学校施設につき管理者が有する裁量権の逸脱又は濫用であると認められるような場合を除いては、その使用不許可が違法となるものでもない。また、従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのことから直ちに、従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも、従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。
…本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」
過去問・解説
(H22 司法 第31問 ア)
地方自治法第238条の4第7項は、地方公共団体の行政財産の管理者が、行政財産の用途又は目的を妨げる場合にはその使用を許可してはならない旨を定めているが、行政財産の使用を許可するために考慮すべき事項は定めていない。したがって、最高裁判所の判例によれば、裁判所が、地方公共団体の行政財産の管理者が考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、同項による使用不許可処分を違法と判断することはできない。
【参照条文】地方自治法
第238条の4 1~6 (略)
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8、9 (略)
地方自治法第238条の4第7項は、地方公共団体の行政財産の管理者が、行政財産の用途又は目的を妨げる場合にはその使用を許可してはならない旨を定めているが、行政財産の使用を許可するために考慮すべき事項は定めていない。したがって、最高裁判所の判例によれば、裁判所が、地方公共団体の行政財産の管理者が考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、同項による使用不許可処分を違法と判断することはできない。
【参照条文】地方自治法
第238条の4 1~6 (略)
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8、9 (略)
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」とした上で、「本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」としている。
したがって、裁判所は、地方公共団体の行政財産の管理者が考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げておらず、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いていることを理由として、当該処分を違法と判断している。
判例(最判平18.2.7)は、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」とした上で、「本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。」としている。
したがって、裁判所は、地方公共団体の行政財産の管理者が考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げておらず、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いていることを理由として、当該処分を違法と判断している。
(H23 司法 第25問 ア)
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
【判示】
「地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条の上記文言に加えて、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」
【参照条文】地方自治法(平成18年法律第53号による改正前のもの)
第238条の4 1~3 (略)
4 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
5、6 (略)
【参照条文】学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)
第85条 学校教育上支障のない限り、(中略)学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。
【参照条文】学校施設の確保に関する政令(上記判示中に「学校施設令」として引かれているもの)
第3条 学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除く外、使用してはならない。但し、左の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一 法律又は法律に基く命令の規定に基いて使用する場合
二 管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合
2 管理者又は学校の長は、前項第二号の同意を与えるには、他の法令の規定に従わなければならない。
【記述】
管理者は、学校教育上支障があれば使用を許可することができない。
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
【判示】
「地方自治法238条の4第4項、学校教育法85条の上記文言に加えて、学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」
【参照条文】地方自治法(平成18年法律第53号による改正前のもの)
第238条の4 1~3 (略)
4 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
5、6 (略)
【参照条文】学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)
第85条 学校教育上支障のない限り、(中略)学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。
【参照条文】学校施設の確保に関する政令(上記判示中に「学校施設令」として引かれているもの)
第3条 学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除く外、使用してはならない。但し、左の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一 法律又は法律に基く命令の規定に基いて使用する場合
二 管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合
2 管理者又は学校の長は、前項第二号の同意を与えるには、他の法令の規定に従わなければならない。
【記述】
管理者は、学校教育上支障があれば使用を許可することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設は、…本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができない…。」としている。
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設は、…本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができない…。」としている。
(H23 司法 第25問 イ)
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
*【判示】【参照条文】は、(H23 司法 第25問 ア)を参照。
【記述】
管理者は、学校教育上の支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる。
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、それぞれ正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
*【判示】【参照条文】は、(H23 司法 第25問 ア)を参照。
【記述】
管理者は、学校教育上の支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる…。」としている。
判例(最判平18.2.7)は、「学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる…。」としている。
(H23 司法 第25問 ウ)
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
*【判示】【参照条文】は、(H23 司法 第25問 ア)を参照。
【記述】
管理者の裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものである。
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
*【判示】【参照条文】は、(H23 司法 第25問 ア)を参照。
【記述】
管理者の裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「管理者の…裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
判例(最判平18.2.7)は、「管理者の…裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
(H23 司法 第25問 エ)
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
*【判示】【参照条文】は、(H23 司法 第25問 ア)を参照。
【記述】
従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのような従前の許可の運用が裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となるということはできない。
次の文章は、公立学校施設の目的外使用の許可に関する最高裁判所の判決(最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決、民集60巻2号401頁)の判示の一部である。以下の記述について、同判決がこの文章を踏まえてその後に判示している内容として、正しい場合には〇を、誤っている場合には×を選びなさい。
*【判示】【参照条文】は、(H23 司法 第25問 ア)を参照。
【記述】
従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのような従前の許可の運用が裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となるということはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのことから直ちに、従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも、従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。」としている。
したがって、従前の許可の運用は、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となる。
判例(最判平18.2.7)は、「従前、同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても、そのことから直ちに、従前と異なる取扱いをすることが裁量権の濫用となるものではない。もっとも、従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。」としている。
したがって、従前の許可の運用は、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となる。
(H25 共通 第26問 イ)
学校施設の目的外使用許可に関し、「本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる」とした最高裁判所の判決は、学校施設の目的外使用許可の判断が管理者の裁量に委ねられることを前提として、裁量処分をする際の考慮事項に着目した司法審査の在り方を示したものといえる。
学校施設の目的外使用許可に関し、「本件中学校及びその周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障を来すことが予想されるとの理由で行われた本件不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる」とした最高裁判所の判決は、学校施設の目的外使用許可の判断が管理者の裁量に委ねられることを前提として、裁量処分をする際の考慮事項に着目した司法審査の在り方を示したものといえる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」とした上で、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。」とした上で、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
(H29 予備 第16問 ウ)
公立学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量に委ねられているものと解されるが、学校施設の設置目的に照らせば、学校教育上支障がない場合には原則として許可すべきものであり、学校教育上の支障がないにもかかわらず不許可とすることは管理者の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用となる。
公立学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量に委ねられているものと解されるが、学校施設の設置目的に照らせば、学校教育上支障がない場合には原則として許可すべきものであり、学校教育上の支障がないにもかかわらず不許可とすることは管理者の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、…行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」とした上で、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、…その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
したがって、学校教育上支障がない場合には原則として許可すべきとはいえず、学校教育上の支障がないにもかかわらず不許可とすることも、管理者の裁量権の範囲内となりうる。
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、…行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」とした上で、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、…その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
したがって、学校教育上支障がない場合には原則として許可すべきとはいえず、学校教育上の支障がないにもかかわらず不許可とすることも、管理者の裁量権の範囲内となりうる。
(R4 予備 第15問 ア)
公立学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該学校施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる。
公立学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該学校施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」としている。
判例(最判平18.2.7)は、「学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている(学校施設令1条、3条)ことからすれば、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。」としている。
(R5 予備 第15問 ア)
公立学校施設の管理者がした目的外使用の許否に係る裁量処分の司法審査に関する最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決(民集60巻2号401頁。以下「本判決」という。)の次の判示を読み、本判決に関する後記の記述について、正しいものに〇、誤っているものに×を選びなさい。
【判示】
「管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。」
【記述】
本判決による審査方法は、裁判所が裁量処分について、全面的にその当否を審査し直し、裁判所が出した結論と行政庁の処分内容とが異なる場合に、当該裁量処分が違法となると判断するもので、これにより密度の高い審査を行うことができるという特徴がある。
公立学校施設の管理者がした目的外使用の許否に係る裁量処分の司法審査に関する最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決(民集60巻2号401頁。以下「本判決」という。)の次の判示を読み、本判決に関する後記の記述について、正しいものに〇、誤っているものに×を選びなさい。
【判示】
「管理者の裁量判断は、許可申請に係る使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障又は許可をした場合の弊害若しくは影響の内容及び程度、代替施設確保の困難性など許可をしないことによる申請者側の不都合又は影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべきものと解するのが相当である。」
【記述】
本判決による審査方法は、裁判所が裁量処分について、全面的にその当否を審査し直し、裁判所が出した結論と行政庁の処分内容とが異なる場合に、当該裁量処分が違法となると判断するもので、これにより密度の高い審査を行うことができるという特徴がある。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
したがって、本判決の審査方法は、全面的にその当否を審査し直し、裁判所が出した結論と行政庁の処分内容とが異なる場合に、当該裁量処分が違法となると判断するものではない。
判例(最判平18.2.7)は、「その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となるとすべき…。」としている。
したがって、本判決の審査方法は、全面的にその当否を審査し直し、裁判所が出した結論と行政庁の処分内容とが異なる場合に、当該裁量処分が違法となると判断するものではない。
(R5 予備 第15問 イ)
公立学校施設の管理者がした目的外使用の許否に係る裁量処分の司法審査に関する最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決(民集60巻2号401頁。以下「本判決」という。)の次の判示を読み、本判決に関する後記の記述について、正しいものに〇、誤っているものに×を選びなさい。
*【判示】は、(R5予備 第15問 ア)を参照。
【記述】
本判決による審査方法については、いかなる判断要素を選択し、その評価をどのように行うのかという点に関し、基準が明確ではないという問題点が指摘できる。
公立学校施設の管理者がした目的外使用の許否に係る裁量処分の司法審査に関する最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決(民集60巻2号401頁。以下「本判決」という。)の次の判示を読み、本判決に関する後記の記述について、正しいものに〇、誤っているものに×を選びなさい。
*【判示】は、(R5予備 第15問 ア)を参照。
【記述】
本判決による審査方法については、いかなる判断要素を選択し、その評価をどのように行うのかという点に関し、基準が明確ではないという問題点が指摘できる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、考慮事項に着目した判断過程審査を行っているところ、この審査方法については、「考慮事項に着目した審査が行われる場合に、いかなる事項が考慮されるべきなのか(あるいは、いかなる事項が考慮されるべきではないのか)は、どのようにして導き出すのか、という問題がある。その導出方法が曖昧だと、恣意的な考慮事項の設定や、恣意的な重み付けの設定を許することとなり、当該審査方法の適正さを確保できなくなるため、問題となる。この点について、考慮事項や重み付けの設定は法を基準として行われるべきであることが、近年、強調されている(「行政判例百選Ⅰ」第8版・事件70解説5[土田伸也])との指摘がある。したがって、本判決による審査方法については、いかなる判断要素を選択し、その評価をどのように行うのかという点に関し、基準が明確ではないという問題点が指摘できる。
判例(最判平18.2.7)は、考慮事項に着目した判断過程審査を行っているところ、この審査方法については、「考慮事項に着目した審査が行われる場合に、いかなる事項が考慮されるべきなのか(あるいは、いかなる事項が考慮されるべきではないのか)は、どのようにして導き出すのか、という問題がある。その導出方法が曖昧だと、恣意的な考慮事項の設定や、恣意的な重み付けの設定を許することとなり、当該審査方法の適正さを確保できなくなるため、問題となる。この点について、考慮事項や重み付けの設定は法を基準として行われるべきであることが、近年、強調されている(「行政判例百選Ⅰ」第8版・事件70解説5[土田伸也])との指摘がある。したがって、本判決による審査方法については、いかなる判断要素を選択し、その評価をどのように行うのかという点に関し、基準が明確ではないという問題点が指摘できる。
(R5 予備 第15問 ウ)
公立学校施設の管理者がした目的外使用の許否に係る裁量処分の司法審査に関する最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決(民集60巻2号401頁。以下「本判決」という。)の次の判示を読み、本判決に関する後記の記述について、正しいものに〇、誤っているものに×を選びなさい。
*【判示】は、(R5予備 第15問 ア)を参照。
【記述】
本判決による審査方法によれば、従来の裁量処分の審査において用いられてきた平等原則や比例原則の観点は、裁量処分の審査に当たり考慮すべき要素にはならない。
公立学校施設の管理者がした目的外使用の許否に係る裁量処分の司法審査に関する最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決(民集60巻2号401頁。以下「本判決」という。)の次の判示を読み、本判決に関する後記の記述について、正しいものに〇、誤っているものに×を選びなさい。
*【判示】は、(R5予備 第15問 ア)を参照。
【記述】
本判決による審査方法によれば、従来の裁量処分の審査において用いられてきた平等原則や比例原則の観点は、裁量処分の審査に当たり考慮すべき要素にはならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.2.7)は、「従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。」としている。
したがって、平等原則や比例原則の観点は、裁量処分の審査に当たり考慮すべき要素になりうる。
判例(最判平18.2.7)は、「従前の許可の運用は、使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となったりすることは否定できない。」としている。
したがって、平等原則や比例原則の観点は、裁量処分の審査に当たり考慮すべき要素になりうる。
総合メモ
村外業者であることを理由に入札に参加させないこと 最一小判平成18年10月26日
概要
村の発注する公共工事の指名競争入札に昭和60年ころから平成10年度まで指名を受けて継続的に参加し工事を受注してきていた建設業者に対し、村が、村外業者に当たること等を理由に、同12年度以降全く指名せず入札に参加させない措置を採った場合において、(1)村内業者で対応できる工事の指名競争入札では村内業者のみを指名するという実際の運用基準は村の要綱等に明定されておらず、村内業者であるか否かの客観的で具体的な判定基準も明らかにされていなかったこと、(2)上記業者は、平成6年に代表者らが同村から県内の他の町へ転居した後も、登記簿上の本店所在地を同村内とし、同所に代表者の母である監査役が居住し、上記業者の看板を掲げるなどしており、平成10年度までは指名を受け、受注した工事において施工上の支障を生じさせたこともうかがわれないことなど判示の事情の下では、指名についての上記運用及び上記業者が村外業者に当たるという判断が合理的であるとし、そのことのみを理由として、村の上記措置が違法であるとはいえないとした原審の判断には違法がある。
判例
事案: A村の発注する公共工事の指名競争入札に平成10年度まで継続的に参加していたXが、同11年度から同16年度までの間、村長から違法に指名を回避されたとして、国家賠償法1条1項に基づき、合併によりA村の地位を承継したYに対し、逸失利益等の損害賠償を求めた事案において、村の発注する公共工事の指名競争入札に長年指名を受けて継続的に参加していた建設業者を特定年度以降全く指名せず入札に参加させなかった村の措置に、裁量権の逸脱又は濫用が認められるかどうかが問題となった。
判旨:「地方自治法234条1項は『売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。』とし、同条2項は『前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。』としており、例えば、指名競争入札については、契約の性質又は目的が一般競争入札に適しない場合などに限り、これによることができるものとされている(地方自治法施行令167条)。このような地方自治法等の定めは、普通地方公共団体の締結する契約については、その経費が住民の税金で賄われること等にかんがみ、機会均等の理念に最も適合して公正であり、かつ、価格の有利性を確保し得るという観点から、一般競争入札の方法によるべきことを原則とし、それ以外の方法を例外的なものとして位置付けているものと解することができる。また、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律は、公共工事の入札等について、入札の過程の透明性が確保されること、入札に参加しようとする者の間の公正な競争が促進されること等によりその適正化が図られなければならないとし(3条)、前記のとおり、指名競争入札の参加者の資格についての公表や参加者を指名する場合の基準を定めたときの基準の公表を義務付けている。以上のとおり、地方自治法等の法令は、普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき、機会均等、公正性、透明性、経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしているものということができる。
前記事実関係等によれば、木屋平村においては、従前から、公共工事の指名競争入札につき、村内業者では対応できない工事についてのみ村外業者を指名し、それ以外は村内業者のみを指名するという運用が行われていたというのである。確かに、地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができるものの、①又は②の観点からは村内業者と同様の条件を満たす村外業者もあり得るのであり、価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば、考慮すべき他の諸事情にかかわらず、およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について、常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない。また、前記事実関係等によれば、木屋平村では、平成13年度までは、本件資格審査要綱、本件指名基準及び本件運用基準は制定されておらず、本件指名停止等要綱を除いて、指名に関する基準は明定されていなかった。さらに、平成14年4月以降施行された上記の本件資格審査要綱等をみても、本件資格審査要綱において村内業者と村外業者とが定義上区別されているものの、その外に上記のような村内業者で対応できる工事の指名競争入札では村内業者のみを指名するという実際の運用基準は定められておらず、しかも、村内業者とは、木屋平村の区域内に主たる営業所を有する業者をいうとされているにとどまり、主たる営業所あるいは村内業者の要件をどのように判定するのかに関する客観的で具体的な基準も明らかにされていなかった。このような状況の下における木屋平村の上記のような運用は、村内業者で対応できる工事はすべて指名競争入札とした上で、村内業者か否かの判断を適当に行うなどの方法を採ることにより、し意的運用が可能となるものであって、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の定める公表義務に反し、同法及び地方自治法の趣旨にも反するものといわざるを得ない。一方、上告人は、昭和60年ころから木屋平村が発注する公共工事の指名競争入札に継続的に参加し、工事を受注してきており、木屋平村内の住所ないし事務所所在地を登記簿上の本店所在地としていた。平成6年3月に、上告人の実質的経営者と代表者の夫婦が脇町内に住居を構え、同敷地内に上告人の事務所を設けるなどした後も、上告人の登記簿上の本店所在地は木屋平村のままであり、同所には上告人代表者の母でもある監査役が住み、『有限会社X』の看板を掲げ、そこにある電話の番号を『X』の名義で電話帳に掲載している。そして、平成10年度までは、木屋平村の指名競争入札において指名を受けていたというのである。また、平成12年度以降指名をされないでいることについて、木屋平村から上告人にその理由が明らかにされていたという事情もうかがわれない。そうすると、上告人は、平成6年の代表者等の転居後も含めて長年にわたり村内業者として指名及び受注の実績があり、同年以降も、木屋平村から受注した工事において施工上の支障を生じさせたこともうかがわれず、地元企業としての性格を引き続き有していたともいえる。また、村内業者と村外業者の客観的で具体的な判断基準も明らかではない状況の下では、上告人について、村内業者か村外業者かの判定もなお微妙であったということができるし、仮に形式的には村外業者に当たるとしても、工事内容その他の条件いかんによっては、なお村内業者と同様に扱って指名をすることが合理的であった工事もあり得たものと考えられる。このような上告人につき、上記のような法令の趣旨に反する運用基準の下で、主たる営業所が村内にないなどの事情から形式的に村外業者に当たると判断し、そのことのみを理由として、他の条件いかんにかかわらず、およそ一切の工事につき平成12年度以降全く上告人を指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば、それは、考慮すべき事項を十分考慮することなく、一つの考慮要素にとどまる村外業者であることのみを重視している点において、極めて不合理であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず、そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用があったとまではいえないと判断することはできない。
以上によれば、木屋平村における指名についての前記運用と上告人が村外業者に当たるという判断が合理的であるとし、そのことのみを理由として、平成12年度以降上告人を公共工事の指名競争入札において指名しなかった木屋平村の措置が違法であるとはいえないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
判旨:「地方自治法234条1項は『売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。』とし、同条2項は『前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。』としており、例えば、指名競争入札については、契約の性質又は目的が一般競争入札に適しない場合などに限り、これによることができるものとされている(地方自治法施行令167条)。このような地方自治法等の定めは、普通地方公共団体の締結する契約については、その経費が住民の税金で賄われること等にかんがみ、機会均等の理念に最も適合して公正であり、かつ、価格の有利性を確保し得るという観点から、一般競争入札の方法によるべきことを原則とし、それ以外の方法を例外的なものとして位置付けているものと解することができる。また、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律は、公共工事の入札等について、入札の過程の透明性が確保されること、入札に参加しようとする者の間の公正な競争が促進されること等によりその適正化が図られなければならないとし(3条)、前記のとおり、指名競争入札の参加者の資格についての公表や参加者を指名する場合の基準を定めたときの基準の公表を義務付けている。以上のとおり、地方自治法等の法令は、普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき、機会均等、公正性、透明性、経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしているものということができる。
前記事実関係等によれば、木屋平村においては、従前から、公共工事の指名競争入札につき、村内業者では対応できない工事についてのみ村外業者を指名し、それ以外は村内業者のみを指名するという運用が行われていたというのである。確かに、地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができるものの、①又は②の観点からは村内業者と同様の条件を満たす村外業者もあり得るのであり、価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば、考慮すべき他の諸事情にかかわらず、およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について、常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない。また、前記事実関係等によれば、木屋平村では、平成13年度までは、本件資格審査要綱、本件指名基準及び本件運用基準は制定されておらず、本件指名停止等要綱を除いて、指名に関する基準は明定されていなかった。さらに、平成14年4月以降施行された上記の本件資格審査要綱等をみても、本件資格審査要綱において村内業者と村外業者とが定義上区別されているものの、その外に上記のような村内業者で対応できる工事の指名競争入札では村内業者のみを指名するという実際の運用基準は定められておらず、しかも、村内業者とは、木屋平村の区域内に主たる営業所を有する業者をいうとされているにとどまり、主たる営業所あるいは村内業者の要件をどのように判定するのかに関する客観的で具体的な基準も明らかにされていなかった。このような状況の下における木屋平村の上記のような運用は、村内業者で対応できる工事はすべて指名競争入札とした上で、村内業者か否かの判断を適当に行うなどの方法を採ることにより、し意的運用が可能となるものであって、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の定める公表義務に反し、同法及び地方自治法の趣旨にも反するものといわざるを得ない。一方、上告人は、昭和60年ころから木屋平村が発注する公共工事の指名競争入札に継続的に参加し、工事を受注してきており、木屋平村内の住所ないし事務所所在地を登記簿上の本店所在地としていた。平成6年3月に、上告人の実質的経営者と代表者の夫婦が脇町内に住居を構え、同敷地内に上告人の事務所を設けるなどした後も、上告人の登記簿上の本店所在地は木屋平村のままであり、同所には上告人代表者の母でもある監査役が住み、『有限会社X』の看板を掲げ、そこにある電話の番号を『X』の名義で電話帳に掲載している。そして、平成10年度までは、木屋平村の指名競争入札において指名を受けていたというのである。また、平成12年度以降指名をされないでいることについて、木屋平村から上告人にその理由が明らかにされていたという事情もうかがわれない。そうすると、上告人は、平成6年の代表者等の転居後も含めて長年にわたり村内業者として指名及び受注の実績があり、同年以降も、木屋平村から受注した工事において施工上の支障を生じさせたこともうかがわれず、地元企業としての性格を引き続き有していたともいえる。また、村内業者と村外業者の客観的で具体的な判断基準も明らかではない状況の下では、上告人について、村内業者か村外業者かの判定もなお微妙であったということができるし、仮に形式的には村外業者に当たるとしても、工事内容その他の条件いかんによっては、なお村内業者と同様に扱って指名をすることが合理的であった工事もあり得たものと考えられる。このような上告人につき、上記のような法令の趣旨に反する運用基準の下で、主たる営業所が村内にないなどの事情から形式的に村外業者に当たると判断し、そのことのみを理由として、他の条件いかんにかかわらず、およそ一切の工事につき平成12年度以降全く上告人を指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば、それは、考慮すべき事項を十分考慮することなく、一つの考慮要素にとどまる村外業者であることのみを重視している点において、極めて不合理であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず、そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用があったとまではいえないと判断することはできない。
以上によれば、木屋平村における指名についての前記運用と上告人が村外業者に当たるという判断が合理的であるとし、そのことのみを理由として、平成12年度以降上告人を公共工事の指名競争入札において指名しなかった木屋平村の措置が違法であるとはいえないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
過去問・解説
(H26 司法 第26問 イ)
地方公共団体が公共工事の指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、地元企業か否かを考慮することは、価格の有利性確保という入札制度の趣旨とは無関係の観点を考慮に入れるものであるから、許されない。
地方公共団体が公共工事の指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、地元企業か否かを考慮することは、価格の有利性確保という入札制度の趣旨とは無関係の観点を考慮に入れるものであるから、許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.10.26)は、「地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができる…。」としている。
判例(最判平18.10.26)は、「地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができる…。」としている。
(R2 予備 第14問 イ)
地方公共団体が、公共工事の契約に関する指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことは、その合理性を肯定することができる。
地方公共団体が、公共工事の契約に関する指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことは、その合理性を肯定することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.10.26)は、「地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができる…。」としている。
判例(最判平18.10.26)は、「地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を肯定することができる…。」としている。
総合メモ
都市計画の変更の裁量逸脱・濫用 最一小判平成18年11月2日
概要
都知事が行った都市高速鉄道に係る都市計画の変更は、鉄道の構造として高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえない。
判例
事案:鉄道事業認可の前提となる都市計画に係る平成5年決定が、周辺地域の環境に与える影響等の面で優れた代替案である地下式を理由もなく不採用として、高架式を採用した点で違法であるなどとして、建設大臣の事務承継者であるYに対し、Xが本件鉄道事業認可の取消しを求めた事案において、都市計画事業認可の前提となる都市計画決定に、裁量権の範囲の逸脱またはその濫用があるかどうかが問題となった。
判旨:「都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)は、都市計画事業認可の基準の1つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから(61条)、都市計画事業認可が適法であるためには、その前提となる都市計画が適法であることが必要である。都市計画法は、都市計画について、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条)、都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず、当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書)、都市施設について、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号)、このような基準に従って都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであって、裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。
…以上のとおり、平成5年決定が本件高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるということはできないから、これを基礎としてされた本件鉄道事業認可が違法となるということもできない。」
判旨:「都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの。以下同じ。)は、都市計画事業認可の基準の1つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから(61条)、都市計画事業認可が適法であるためには、その前提となる都市計画が適法であることが必要である。都市計画法は、都市計画について、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条)、都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを一体的かつ総合的に定めなければならず、当該都市について公害防止計画が定められているときは当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書)、都市施設について、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号)、このような基準に従って都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきであって、裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。
…以上のとおり、平成5年決定が本件高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるということはできないから、これを基礎としてされた本件鉄道事業認可が違法となるということもできない。」
過去問・解説
(H22 司法 第24問 ア)
都市計画法に基づいて都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるが、このような決定をする行政庁に広範な裁量までは認められていない。
都市計画法に基づいて都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるが、このような決定をする行政庁に広範な裁量までは認められていない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.11.2)は、「都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられている…。」としている。
判例(最判平18.11.2)は、「都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられている…。」としている。
(H22 司法 第31問 イ)
最高裁判所の判例によれば、裁判所は、地方公共団体が判断の過程において考慮すべき事情を考慮していないことを理由に挙げて、地方公共団体による都市施設に関する都市計画の決定の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠き違法であると判断することができる。
最高裁判所の判例によれば、裁判所は、地方公共団体が判断の過程において考慮すべき事情を考慮していないことを理由に挙げて、地方公共団体による都市施設に関する都市計画の決定の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠き違法であると判断することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.11.2)は、「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる…。」としている。
判例(最判平18.11.2)は、「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる…。」としている。
(H27 予備 第16問 ウ)
都市施設に係る都市計画決定に当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であり、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量に委ねられている。したがって、裁判所は、行政庁が判断の過程において考慮すべき事項を考慮せずに都市計画決定を行ったことを理由に挙げて、当該決定を違法とすることはできない。
都市施設に係る都市計画決定に当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であり、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量に委ねられている。したがって、裁判所は、行政庁が判断の過程において考慮すべき事項を考慮せずに都市計画決定を行ったことを理由に挙げて、当該決定を違法とすることはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.11.2)は、「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべき…。」としている。
したがって、裁判所は、行政庁が判断の過程において考慮すべき事項を考慮せずに都市計画決定を行ったことを理由に挙げて、当該決定を違法とすることができる。
判例(最判平18.11.2)は、「裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべき…。」としている。
したがって、裁判所は、行政庁が判断の過程において考慮すべき事項を考慮せずに都市計画決定を行ったことを理由に挙げて、当該決定を違法とすることができる。
(R1 予備 第17問 ウ)
都市計画法第61条第1号は、同法第59条の規定による都市計画事業認可の基準の一つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているが、同号は、都市計画決定と事業内容との適合性のみを求める趣旨であり、都市計画決定自体が適法であることまでも必要とする趣旨ではない。
都市計画法第61条第1号は、同法第59条の規定による都市計画事業認可の基準の一つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているが、同号は、都市計画決定と事業内容との適合性のみを求める趣旨であり、都市計画決定自体が適法であることまでも必要とする趣旨ではない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.11.2)は、「都市計画法…は、都市計画事業認可の基準の一つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから(61条)、都市計画事業認可が適法であるためには、その前提となる都市計画が適法であることが必要である。」としている。
したがって、都市計画法61条1号は、都市計画決定自体が適法であることまで必要とする趣旨である。
判例(最判平18.11.2)は、「都市計画法…は、都市計画事業認可の基準の一つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから(61条)、都市計画事業認可が適法であるためには、その前提となる都市計画が適法であることが必要である。」としている。
したがって、都市計画法61条1号は、都市計画決定自体が適法であることまで必要とする趣旨である。
総合メモ
出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無についての判断 最大判昭和53年10月4日
概要
裁判所は、出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するに当たっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であるとすることができる。
判例
事案:在留資格を持ち、在留期間を1年とする許可を受けて日本に入国していたXが、法務大臣YがXの1年間の在留期間の更新申請に対し、出国準備期間分の在留を許可した後にその後の再更新を不許可とした処分について、Xがその取消しを請求した事案において、不許可更新処分に法務大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるか問題となった。
判旨:「法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたっては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立って、申請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしゃくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならないのであるが、このような判断は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなければとうてい適切な結果を期待することができないものと考えられる。このような点にかんがみると、出入国管理令21条3項所定の『在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由』があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が広汎なものとされているのは当然のことであって、所論のように上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許されないと解すべきものではない。
…行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。処分が違法となるのは、それが法の認める裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限られるのであり、また、その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができるものであって、行政事件訴訟法30条の規定はこの理を明らかにしたものにほかならない。もっとも、法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨、目的、範囲は各種の処分によって一様ではなく、これに応じて裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり、各種の処分ごとにこれを検討しなければならないが、これを出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の『在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由』があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となるものというべきである。したがって、裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。
…前述の上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。しかしながら、上告人の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリカ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとって好ましいものではないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分を違法であると判断することはできないものといわなければならない。」
判旨:「法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたっては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立って、申請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしゃくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならないのであるが、このような判断は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなければとうてい適切な結果を期待することができないものと考えられる。このような点にかんがみると、出入国管理令21条3項所定の『在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由』があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が広汎なものとされているのは当然のことであって、所論のように上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許されないと解すべきものではない。
…行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。処分が違法となるのは、それが法の認める裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限られるのであり、また、その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができるものであって、行政事件訴訟法30条の規定はこの理を明らかにしたものにほかならない。もっとも、法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨、目的、範囲は各種の処分によって一様ではなく、これに応じて裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり、各種の処分ごとにこれを検討しなければならないが、これを出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の『在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由』があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となるものというべきである。したがって、裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。
…前述の上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。しかしながら、上告人の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリカ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとって好ましいものではないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分を違法であると判断することはできないものといわなければならない。」
過去問・解説
(H18 司法 第29問 ウ)
行政庁が裁量の基準を設けている場合、その基準に従わないでした行政処分であっても、当然に違法ということにはならない。
行政庁が裁量の基準を設けている場合、その基準に従わないでした行政処分であっても、当然に違法ということにはならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭53.10.4)は、「行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。」としている。
判例(最大判昭53.10.4)は、「行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。」としている。
(H23 共通 第24問 ウ)
行政庁は、処分基準に従わない行政処分を行うことができないから、裁判所が処分基準に従って行われた行政処分を違法として取り消すためには、処分基準が無効であるか、又は違法として取り消される必要がある。
行政庁は、処分基準に従わない行政処分を行うことができないから、裁判所が処分基準に従って行われた行政処分を違法として取り消すためには、処分基準が無効であるか、又は違法として取り消される必要がある。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭53.10.4)は、「行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。」としている。
したがって、行政庁は、処分基準に従わない行政処分を行うこともできる。
判例(最大判昭53.10.4)は、「行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を定めることがあっても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保するためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。」としている。
したがって、行政庁は、処分基準に従わない行政処分を行うこともできる。
(H24 予備 第15問 イ)
在留外国人の在留期間の更新不許可処分については、更新事由の有無の判断は法務大臣の裁量に任され、その裁量権の範囲は広汎なものとされているから、判断の基礎となる事実認定については、それが社会通念に照らし著しく不合理な場合に限り、司法判断の対象となる。
在留外国人の在留期間の更新不許可処分については、更新事由の有無の判断は法務大臣の裁量に任され、その裁量権の範囲は広汎なものとされているから、判断の基礎となる事実認定については、それが社会通念に照らし著しく不合理な場合に限り、司法判断の対象となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭53.10.4)は、「出入国管理令21条3項所定の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が広汎なものとされているのは当然のことであって、所論のように上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許されないと解すべきものではない。」としている。
そして、本判例は、続けて、「裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法である…。」としている。
したがって、判断の基礎となる事実は、社会通念に照らし著しく不合理な場合でなくても、司法判断の対象となる。
判例(最大判昭53.10.4)は、「出入国管理令21条3項所定の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が広汎なものとされているのは当然のことであって、所論のように上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許されないと解すべきものではない。」としている。
そして、本判例は、続けて、「裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたっては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法である…。」としている。
したがって、判断の基礎となる事実は、社会通念に照らし著しく不合理な場合でなくても、司法判断の対象となる。
(H25 共通 第26問 ア)
外国人の在留期間の更新の許可に関する法務大臣の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断に関し、「法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となる」とした最高裁判所の判決は、効果裁量を承認する趣旨であると解されている。
【参照条文】出入国管理及び難民認定法
第21条 本邦に在留する外国人は、現に有する在留資格を変更することなく、在留期間の更新を受けることができる。
2 前項の規定により在留期間の更新を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留期間の更新を申請しなければならない。
3 前項の規定による申請があった場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。
4 (略)
外国人の在留期間の更新の許可に関する法務大臣の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断に関し、「法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となる」とした最高裁判所の判決は、効果裁量を承認する趣旨であると解されている。
【参照条文】出入国管理及び難民認定法
第21条 本邦に在留する外国人は、現に有する在留資格を変更することなく、在留期間の更新を受けることができる。
2 前項の規定により在留期間の更新を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留期間の更新を申請しなければならない。
3 前項の規定による申請があった場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。
4 (略)
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭53.10.4)は、「法務大臣の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となる…。」としており、法務大臣の要件裁量を認めている一方、効果裁量については判断していない。
判例(最大判昭53.10.4)は、「法務大臣の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となる…。」としており、法務大臣の要件裁量を認めている一方、効果裁量については判断していない。
(H25 司法 第30問 イ)
外国人は、我が国に在留する権利や引き続き在留することを要求する権利を保障されているものではないから、在留期間の更新許可申請をした外国人に更新不許可の取消しを求める利益はない。
外国人は、我が国に在留する権利や引き続き在留することを要求する権利を保障されているものではないから、在留期間の更新許可申請をした外国人に更新不許可の取消しを求める利益はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭53.10.4)は、「憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。」としている。
他方、在留期間の更新許可申請をした外国人の、更新不許可の取消しを求める利益については何ら言及していない。
また、学説上、在留期間の更新許可申請をした外国人に更新不許可の取消しを求める利益はあるものと解されている。
判例(最大判昭53.10.4)は、「憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。」としている。
他方、在留期間の更新許可申請をした外国人の、更新不許可の取消しを求める利益については何ら言及していない。
また、学説上、在留期間の更新許可申請をした外国人に更新不許可の取消しを求める利益はあるものと解されている。
(H27 予備 第19問 ア)
憲法上、外国人は、在留の権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されていないため、出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間の更新を法務大臣が拒否する行為には、処分性が認められない。
憲法上、外国人は、在留の権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されていないため、出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間の更新を法務大臣が拒否する行為には、処分性が認められない。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭53.10.4)は、「各種の処分ごとにこれを検討しなければならないが、これを出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の『在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由』があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となる…。」として、実体法上の違法事由の判断をしており、訴訟要件である処分性が認められることを前提としている。
したがって、出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間の更新を法務大臣が拒否する行為には、処分性が認められる。
判例(最大判昭53.10.4)は、「各種の処分ごとにこれを検討しなければならないが、これを出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の『在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由』があるかどうかの判断の場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法となる…。」として、実体法上の違法事由の判断をしており、訴訟要件である処分性が認められることを前提としている。
したがって、出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間の更新を法務大臣が拒否する行為には、処分性が認められる。
総合メモ
公務員に対する懲戒免職処分 最三小判昭和52年12月20日
概要
裁判所が懲戒権者の裁量権の行使としてされた公務員に対する懲戒処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と右処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、それが社会観念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきものである。
判例
事案:Xが勤務評定反対闘争として勤務状況報告書の組合保管等の争議行為をしたことを理由に、Yがした懲戒免職処分について、Xがその取消しを求めた事案において、公務員に対する懲戒処分の適否ついて裁判所はどう審査すべきかが問題となった。
判旨:「国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、その判断が、懲戒事由に該当すると認められる行為の性質、態様等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、広範な事情を総合してされるべきものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝にあたる懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきであり、懲戒権者が右の裁量権を行使してした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがって、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである…。 本件についてこれをみると、…被上告人の本件各行為は、昭和37年度のいわゆる勤務評定反対闘争において、『オールA・公開』等現行法規のもとでは許されない要求を貫徹するため、同年9月下旬から10月中旬にかけて10数日間にわたり繰り返して続けられた違法行為であって、これによって四国財務局における職場秩序及び職場の平穏が著しく乱されたものであり、殊に勤務状況報告書の組合保管という行為は、既に係長である第1次評定者において被評定者の人物、能力、適性をはじめとするその勤務状況を記入した極秘の公文書である勤務状況報告書を当局の意思に反し組合側において占有保管するという、悪質なものであり、その違法性が重大なものであること、また、被上告人の右一連の行為のなかには、10月5日の局長退出妨害行為のように単なる不謹慎の程度を超え粗暴性を帯びた行為として国公法99条所定の信用失墜行為にあたるものがあり、更に10月10日及び12日の総務課長に対する抗議要求も多数の勢いを借りた粗暴な行為であったこと、が認められ、これら被上告人の行為は、いずれも決して情状が軽いものということができない。 以上に判示した被上告人の本件各行為の性質、態様等を考慮すれば、原審の確定した次の諸事実、すなわち、前記勤務状況報告書の組合側保管がかなり切迫した状況のもとでされ、いずれも封をした袋に収めた状態で保管されたこと、右組合側保管は約1日程度のものであり、したがって右報告書の提出遅延も丸1日程度にとどまること、沼田中央執行委員長に対する懲戒処分が停職3月、大塚文男高松支部長に対する懲戒処分が停職9月であることなどの諸事実を勘案しても、本件処分が社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えたものということはできない。」
判旨:「国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、その判断が、懲戒事由に該当すると認められる行為の性質、態様等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、広範な事情を総合してされるべきものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝にあたる懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきであり、懲戒権者が右の裁量権を行使してした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがって、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである…。 本件についてこれをみると、…被上告人の本件各行為は、昭和37年度のいわゆる勤務評定反対闘争において、『オールA・公開』等現行法規のもとでは許されない要求を貫徹するため、同年9月下旬から10月中旬にかけて10数日間にわたり繰り返して続けられた違法行為であって、これによって四国財務局における職場秩序及び職場の平穏が著しく乱されたものであり、殊に勤務状況報告書の組合保管という行為は、既に係長である第1次評定者において被評定者の人物、能力、適性をはじめとするその勤務状況を記入した極秘の公文書である勤務状況報告書を当局の意思に反し組合側において占有保管するという、悪質なものであり、その違法性が重大なものであること、また、被上告人の右一連の行為のなかには、10月5日の局長退出妨害行為のように単なる不謹慎の程度を超え粗暴性を帯びた行為として国公法99条所定の信用失墜行為にあたるものがあり、更に10月10日及び12日の総務課長に対する抗議要求も多数の勢いを借りた粗暴な行為であったこと、が認められ、これら被上告人の行為は、いずれも決して情状が軽いものということができない。 以上に判示した被上告人の本件各行為の性質、態様等を考慮すれば、原審の確定した次の諸事実、すなわち、前記勤務状況報告書の組合側保管がかなり切迫した状況のもとでされ、いずれも封をした袋に収めた状態で保管されたこと、右組合側保管は約1日程度のものであり、したがって右報告書の提出遅延も丸1日程度にとどまること、沼田中央執行委員長に対する懲戒処分が停職3月、大塚文男高松支部長に対する懲戒処分が停職9月であることなどの諸事実を勘案しても、本件処分が社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えたものということはできない。」
過去問・解説
(H19 司法 第37問 ウ)
国家公務員に対する懲戒処分の取消訴訟において、国家公務員法上の懲戒事由があると認められる場合、裁判所は、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、その処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したか否かについて判断すべきである。
国家公務員に対する懲戒処分の取消訴訟において、国家公務員法上の懲戒事由があると認められる場合、裁判所は、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、その処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したか否かについて判断すべきである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
(H20 司法 第24問 イ)
国家公務員法第82条第1項の定める懲戒処分について懲戒権者に裁量が認められる理由の一つは、懲戒処分の決定に当たっては、公務員の非行の原因、動機、性質等のほか、当該公務員の行為の前後における態度、処分歴、選択する処分が他の公務員や社会に及ぼす影響など、諸般の事情が総合的に考慮される必要があり、こうした判断は平素から庁内事情に通じ、部下職員の指揮監督に当たる者に任せるのでなければ適切な結果を期待できないことにある。
【参照条文】国家公務員法
第82条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、 減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第5条第3項 の規定に基づく訓令及び同条第4項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
2 (略)
国家公務員法第82条第1項の定める懲戒処分について懲戒権者に裁量が認められる理由の一つは、懲戒処分の決定に当たっては、公務員の非行の原因、動機、性質等のほか、当該公務員の行為の前後における態度、処分歴、選択する処分が他の公務員や社会に及ぼす影響など、諸般の事情が総合的に考慮される必要があり、こうした判断は平素から庁内事情に通じ、部下職員の指揮監督に当たる者に任せるのでなければ適切な結果を期待できないことにある。
【参照条文】国家公務員法
第82条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、 減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第5条第3項 の規定に基づく訓令及び同条第4項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
2 (略)
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭52.12.20)は、「国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、その判断が、懲戒事由に該当すると認められる行為の性質、態様等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、広範な事情を総合してされるべきものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝にあたる懲戒権者の裁量に任されている…。」としている。
判例(最判昭52.12.20)は、「国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、その判断が、懲戒事由に該当すると認められる行為の性質、態様等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、広範な事情を総合してされるべきものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝にあたる懲戒権者の裁量に任されている…。」としている。
(H24 司法 第25問 ウ)
公務員の懲戒処分について法令により行政裁量が認められる場合において、裁判所は、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったか、又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果が懲戒権者の行った懲戒処分と異なるときは、その処分を取り消すことができる。
公務員の懲戒処分について法令により行政裁量が認められる場合において、裁判所は、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったか、又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果が懲戒権者の行った懲戒処分と異なるときは、その処分を取り消すことができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、裁判所の判断の結果が懲戒権者の行った懲戒処分と異なるときにその処分を取り消すことができるわけではない。
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、裁判所の判断の結果が懲戒権者の行った懲戒処分と異なるときにその処分を取り消すことができるわけではない。
(H25 共通 第26問 ウ)
公務員の懲戒処分に関し、裁判所が当該処分の適否を審査するに当たっては、「懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである」とした最高裁判所の判決は、裁判所が行政庁と同一の立場に立ってした判断と行政庁がした判断との間に食い違いがあれば行政庁の判断を違法と判定する方法を採ったものといえる。
公務員の懲戒処分に関し、裁判所が当該処分の適否を審査するに当たっては、「懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである」とした最高裁判所の判決は、裁判所が行政庁と同一の立場に立ってした判断と行政庁がした判断との間に食い違いがあれば行政庁の判断を違法と判定する方法を採ったものといえる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、本判例は、裁判所が行政庁と同一の立場に立ってした判断と行政庁がした判断との間に食い違いがあれば行政庁の判断を違法と判定する方法を採ったとはいえない。
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、本判例は、裁判所が行政庁と同一の立場に立ってした判断と行政庁がした判断との間に食い違いがあれば行政庁の判断を違法と判定する方法を採ったとはいえない。
(H27 予備 第16問 イ)
国家公務員に対する懲戒処分について規定する国家公務員法第82条第1項は、懲戒権者に要件裁量を認める趣旨の規定であり、効果裁量を認める趣旨の規定ではない。
【参照条文】国家公務員法
第82条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(中略)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
2(略)
国家公務員に対する懲戒処分について規定する国家公務員法第82条第1項は、懲戒権者に要件裁量を認める趣旨の規定であり、効果裁量を認める趣旨の規定ではない。
【参照条文】国家公務員法
第82条 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(中略)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合
2(略)
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭52.12.20)は、「国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、…懲戒権者の裁量に任されている…。」として、懲戒権者に効果裁量を認めている。
判例(最判昭52.12.20)は、「国家公務員につき懲戒事由がある場合において、懲戒権者が懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかは、…懲戒権者の裁量に任されている…。」として、懲戒権者に効果裁量を認めている。
(R4 予備 第15問 イ)
懲戒権者が国家公務員に対して行う懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるが、免職処分は、著しい不利益を伴うものであることから、裁判所が当該処分の適否を審査するに当たり、懲戒権者と同一の立場に立って、懲戒処分として免職処分を選択すべきと認められないと判断した場合は、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められ、違法となる。
懲戒権者が国家公務員に対して行う懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるが、免職処分は、著しい不利益を伴うものであることから、裁判所が当該処分の適否を審査するに当たり、懲戒権者と同一の立場に立って、懲戒処分として免職処分を選択すべきと認められないと判断した場合は、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められ、違法となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、懲戒権者と同一の立場に立って、懲戒処分として免職処分を選択すべきと認められないと判断した場合に、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められ、違法となるわけではない。
判例(最判昭52.12.20)は、「裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、懲戒権者と同一の立場に立って、懲戒処分として免職処分を選択すべきと認められないと判断した場合に、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められ、違法となるわけではない。
総合メモ
公務員に対する懲戒処分 最一小判平成24年1月16日
概要
公務員に対する懲戒処分について、懲戒権者は、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される。もっとも、不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下、併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要するとされ、戒告については違法と判断されなかった一方、減給処分については違法と判断された。
判例
事案:東京都立学校の教職員であったXらが、卒業式等に際して、国歌斉唱時に国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること等を命ずる職務命令に従わなかったことを理由として、戒告の懲戒処分を受けたのに対し、懲戒処分の取消と損害賠償を請求した事案において、校長の職務命令に従わなかったことを理由とする戒告処分が、裁量権の範囲を超え又はこれを濫用するものとして違法であるかどうかが問題となった。
判旨:「公務員に対する懲戒処分について、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される…。 本件において、上記…の諸事情についてみるに、不起立行為等の性質、態様は、全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒業式等の式典において行われた教職員による職務命令違反であり、当該行為は、その結果、影響として、学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって、それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い。 他方、不起立行為等の動機、原因は、当該教職員の歴史観ないし世界観等に由来する『君が代』や『日の丸』に対する否定的評価等のゆえに、本件職務命令により求められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動とが相違することであり、個人の歴史観ないし世界観等に起因するものである。また、不起立行為等の性質、態様は、上記…のような面がある一方で、積極的な妨害等の作為ではなく、物理的に式次第の遂行を妨げるものではない。そして、不起立行為等の結果、影響も、上記…のような面がある一方で、当該行為のこのような性質、態様に鑑み、当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかは客観的な評価の困難な事柄であるといえる…。 本件職務命令は、前記…のとおり憲法19条に違反するものではなく、学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義、在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って、地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ、生徒等への配慮を含め、教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって…、このような観点から、その遵守を確保する必要性があるものということができる。このことに加え、前記…においてみた事情によれば、本件職務命令の違反に対し、教職員の規律違反の責任を確認してその将来を戒める処分である戒告処分をすることは、学校の規律や秩序の保持等の見地からその相当性が基礎付けられるものであって、法律上、処分それ自体によって教職員の法的地位に直接の職務上ないし給与上の不利益を及ぼすものではないことも併せ考慮すると、将来の昇給等への影響や前記…の本件における条例及び規則による勤勉手当への影響を勘案しても、過去の同種の行為による懲戒処分等の処分歴の有無等にかかわらず、基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する事柄ということができると解される。前記…においてみた事情に関しては、不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについて、本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮を必要とする事情であるとはいえるものの、このことを勘案しても、本件職務命令の違反に対し懲戒処分の中で最も軽い戒告処分をすることが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとは解し難い。また、本件職務命令の違反に対し1回目の違反であることに鑑みて訓告や指導等にとどめることなく戒告処分をすることに関しては、これを裁量権の範囲内における当不当の問題として論ずる余地はあり得るとしても、その一事をもって直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法の問題を生ずるとまではいい難い…。 以上によれば、本件職務命令の違反を理由として、第1審原告らのうち過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。 他方、前示のように、前記…においてみた事情によれば、不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては、本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。そして、減給処分は、処分それ自体によって教職員の法的地位に一定の期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び、将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上、本件通達を踏まえて毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくこと等を勘案すると、上記のような考慮の下で不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下、併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。したがって、不起立行為等に対する懲戒において減給処分を選択することについて、上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには、例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に、これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず、上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど、過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである。 これを本件についてみるに、前記…のとおり、第1審原告X4については、都教委において、過去の懲戒処分の対象とされた非違行為と同様の非違行為を再び行った場合には量定を加重するという処分量定の方針に従い、過去に同様の非違行為による戒告処分を受けているとして、量定を加重して減給処分がされたものである。しかし、過去の懲戒処分の対象は、約2年前に入学式の際の服装及びその後の事実確認に関する校長の職務命令に違反した行為であって積極的に式典の進行を妨害する行為ではなく、当該1回のみに限られており、本件の不起立行為の前後における態度において特に処分の加重を根拠付けるべき事情もうかがわれないこと等に鑑みると、同第1審原告については、上記…において説示したところに照らし、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、なお減給処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があったとまでは認め難いというべきである。そうすると、上記のように過去に入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に同第1審原告に対する懲戒処分として減給処分を選択した都教委の判断は、減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。」
判旨:「公務員に対する懲戒処分について、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される…。 本件において、上記…の諸事情についてみるに、不起立行為等の性質、態様は、全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒業式等の式典において行われた教職員による職務命令違反であり、当該行為は、その結果、影響として、学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらすものであって、それにより式典に参列する生徒への影響も伴うことは否定し難い。 他方、不起立行為等の動機、原因は、当該教職員の歴史観ないし世界観等に由来する『君が代』や『日の丸』に対する否定的評価等のゆえに、本件職務命令により求められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動とが相違することであり、個人の歴史観ないし世界観等に起因するものである。また、不起立行為等の性質、態様は、上記…のような面がある一方で、積極的な妨害等の作為ではなく、物理的に式次第の遂行を妨げるものではない。そして、不起立行為等の結果、影響も、上記…のような面がある一方で、当該行為のこのような性質、態様に鑑み、当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかは客観的な評価の困難な事柄であるといえる…。 本件職務命令は、前記…のとおり憲法19条に違反するものではなく、学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義、在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って、地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ、生徒等への配慮を含め、教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって…、このような観点から、その遵守を確保する必要性があるものということができる。このことに加え、前記…においてみた事情によれば、本件職務命令の違反に対し、教職員の規律違反の責任を確認してその将来を戒める処分である戒告処分をすることは、学校の規律や秩序の保持等の見地からその相当性が基礎付けられるものであって、法律上、処分それ自体によって教職員の法的地位に直接の職務上ないし給与上の不利益を及ぼすものではないことも併せ考慮すると、将来の昇給等への影響や前記…の本件における条例及び規則による勤勉手当への影響を勘案しても、過去の同種の行為による懲戒処分等の処分歴の有無等にかかわらず、基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する事柄ということができると解される。前記…においてみた事情に関しては、不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについて、本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮を必要とする事情であるとはいえるものの、このことを勘案しても、本件職務命令の違反に対し懲戒処分の中で最も軽い戒告処分をすることが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとは解し難い。また、本件職務命令の違反に対し1回目の違反であることに鑑みて訓告や指導等にとどめることなく戒告処分をすることに関しては、これを裁量権の範囲内における当不当の問題として論ずる余地はあり得るとしても、その一事をもって直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法の問題を生ずるとまではいい難い…。 以上によれば、本件職務命令の違反を理由として、第1審原告らのうち過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は、社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず、上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。 他方、前示のように、前記…においてみた事情によれば、不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては、本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。そして、減給処分は、処分それ自体によって教職員の法的地位に一定の期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び、将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上、本件通達を踏まえて毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくこと等を勘案すると、上記のような考慮の下で不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下、併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。したがって、不起立行為等に対する懲戒において減給処分を選択することについて、上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには、例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に、これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず、上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど、過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである。 これを本件についてみるに、前記…のとおり、第1審原告X4については、都教委において、過去の懲戒処分の対象とされた非違行為と同様の非違行為を再び行った場合には量定を加重するという処分量定の方針に従い、過去に同様の非違行為による戒告処分を受けているとして、量定を加重して減給処分がされたものである。しかし、過去の懲戒処分の対象は、約2年前に入学式の際の服装及びその後の事実確認に関する校長の職務命令に違反した行為であって積極的に式典の進行を妨害する行為ではなく、当該1回のみに限られており、本件の不起立行為の前後における態度において特に処分の加重を根拠付けるべき事情もうかがわれないこと等に鑑みると、同第1審原告については、上記…において説示したところに照らし、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、なお減給処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があったとまでは認め難いというべきである。そうすると、上記のように過去に入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に同第1審原告に対する懲戒処分として減給処分を選択した都教委の判断は、減給の期間の長短及び割合の多寡にかかわらず、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H28 予備 第15問 ア)
不利益処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも、処分の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められることを要するとされることがある。
不利益処分を行う行政庁に裁量権が認められる場合でも、処分の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められることを要するとされることがある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平24.1.16)は、「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下、併せて『過去の処分歴等』という。)に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要する…。」としている。
判例(最判平24.1.16)は、「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下、併せて『過去の処分歴等』という。)に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要する…。」としている。
総合メモ
地方公務員法28条1項3号該当を理由とする分限処分が降任である場合 最二小判昭和48年9月14日
概要
地方公務員法28条1項3号に該当することを理由とする分限処分(公務員における降格等の一定の処分)が降任である場合には、それが免職である場合に比して、適格性の有無についての任命権者の裁量的判断の余地を比較的広く認めても差支えない。
判例
事案:公立小学校の校長の職にあったXが、地方公務員法28条1項3号に基づく分限処分として降任処分を受けたところ、同処分は違法であって取消しを免れないと主張して、Y教育委員会に対し、降任処分の取消しを求めた事案において、分限処分が降任である場合の教育委員会の裁量権が問題となった。
判旨:「地方公務員法28条所定の分限制度は、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動しうる場合を限定したものである。分限制度の右のような趣旨・目的に照らし、かつ、同条に掲げる処分事由が被処分者の行動、態度、性格、状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認められるけれども、もとよりその純然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限制度の上記目的と関係のない目的や動機に基づいて分限処分をすることが許されないのはもちろん、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることを許されず、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断するとか、また、その判断が合理性をもつ判断として許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤った違法のものであることを免れないというべきである。そして、任命権者の分限処分が、このような違法性を有するかどうかは、同法8条8項にいう法律問題として裁判所の審判に服すべきものであるとともに、裁判所の審査権はその範囲に限られ、このような違法の程度に至らない判断の当不当には及ばないといわなければならない。これを同法28条1項3号所定の処分事由についてみるに、同号にいう『その職に必要な適格性を欠く場合』とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解されるが、この意味における適格性の有無は、当該職員の外部にあらわれた行動、態度に徴してこれを判断するほかはない。その場合、個々の行為、態度につき、その性質、態様、背景、状況等の諸般の事情に照らして評価すべきことはもちろん、それら一連の行動、態度については相互に有機的に関連づけてこれを評価すべく、さらに当該職員の経歴や性格、社会環境等の一般的要素をも考慮する必要があり、これら諸般の要素を総合的に検討したうえ、当該職に要求される一般的な適格性の要件との関連においてこれを判断しなければならないのである。そしてこの場合、ひとしく適格性の有無の判断であっても、分限処分が降任である場合と免職である場合とでは、前者がその職員が現に就いている特定の職についての適格性であるのに対し、後者の場合は、現に就いている職に限らず、転職の可能な他の職をも含めてこれらすべての職についての適格性である点において適格性の内容要素に相違があるのみならず、その結果においても、降任の場合は単に下位の職に降るにとどまるのに対し、免職の場合には公務員としての地位を失うという重大な結果になる点において大きな差異があることを考えれば、免職の場合における適格性の有無の判断については、特に厳密、慎重であることが要求されるのに対し、降任の場合における適格性の有無については、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的に照らして裁量的判断を加える余地を比較的広く認めても差支えないものと解される。」
判旨:「地方公務員法28条所定の分限制度は、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動しうる場合を限定したものである。分限制度の右のような趣旨・目的に照らし、かつ、同条に掲げる処分事由が被処分者の行動、態度、性格、状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認められるけれども、もとよりその純然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限制度の上記目的と関係のない目的や動機に基づいて分限処分をすることが許されないのはもちろん、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることを許されず、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断するとか、また、その判断が合理性をもつ判断として許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤った違法のものであることを免れないというべきである。そして、任命権者の分限処分が、このような違法性を有するかどうかは、同法8条8項にいう法律問題として裁判所の審判に服すべきものであるとともに、裁判所の審査権はその範囲に限られ、このような違法の程度に至らない判断の当不当には及ばないといわなければならない。これを同法28条1項3号所定の処分事由についてみるに、同号にいう『その職に必要な適格性を欠く場合』とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解されるが、この意味における適格性の有無は、当該職員の外部にあらわれた行動、態度に徴してこれを判断するほかはない。その場合、個々の行為、態度につき、その性質、態様、背景、状況等の諸般の事情に照らして評価すべきことはもちろん、それら一連の行動、態度については相互に有機的に関連づけてこれを評価すべく、さらに当該職員の経歴や性格、社会環境等の一般的要素をも考慮する必要があり、これら諸般の要素を総合的に検討したうえ、当該職に要求される一般的な適格性の要件との関連においてこれを判断しなければならないのである。そしてこの場合、ひとしく適格性の有無の判断であっても、分限処分が降任である場合と免職である場合とでは、前者がその職員が現に就いている特定の職についての適格性であるのに対し、後者の場合は、現に就いている職に限らず、転職の可能な他の職をも含めてこれらすべての職についての適格性である点において適格性の内容要素に相違があるのみならず、その結果においても、降任の場合は単に下位の職に降るにとどまるのに対し、免職の場合には公務員としての地位を失うという重大な結果になる点において大きな差異があることを考えれば、免職の場合における適格性の有無の判断については、特に厳密、慎重であることが要求されるのに対し、降任の場合における適格性の有無については、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的に照らして裁量的判断を加える余地を比較的広く認めても差支えないものと解される。」
過去問・解説
(H20 司法 第24問 エ)
地方公務員法第28条第1項に基づく分限処分には、降任と免職とがあるが、両者は、職に必要な適格性を判断するという点において共通するので、降任の場合と免職の場合とで裁量的判断を加える余地に差異はない。
【参照条文】地方公務員法
第28条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績が良くない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2~4 (略)
地方公務員法第28条第1項に基づく分限処分には、降任と免職とがあるが、両者は、職に必要な適格性を判断するという点において共通するので、降任の場合と免職の場合とで裁量的判断を加える余地に差異はない。
【参照条文】地方公務員法
第28条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績が良くない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2~4 (略)
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.9.14)は、「ひとしく適格性の有無の判断であっても、…免職の場合における適格性の有無の判断については、特に厳密、慎重であることが要求されるのに対し、降任の場合における適格性の有無については、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的に照らして裁量的判断を加える余地を比較的広く認めても差支えない…。」としている。
したがって、降任の場合と免職の場合とで、裁量的判断を加える余地に差異がある。
判例(最判昭48.9.14)は、「ひとしく適格性の有無の判断であっても、…免職の場合における適格性の有無の判断については、特に厳密、慎重であることが要求されるのに対し、降任の場合における適格性の有無については、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的に照らして裁量的判断を加える余地を比較的広く認めても差支えない…。」としている。
したがって、降任の場合と免職の場合とで、裁量的判断を加える余地に差異がある。
(H22 司法 第24問 エ)
地方公務員法第28条所定の分限制度は、公務の能率の維持及びその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動し得る場合を限定したものである。分限制度のこのような趣旨・目的に照らし、かつ、同条に掲げる処分事由が被処分者の行動、態度、性格、状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮すると、同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権が認められている。
地方公務員法第28条所定の分限制度は、公務の能率の維持及びその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動し得る場合を限定したものである。分限制度のこのような趣旨・目的に照らし、かつ、同条に掲げる処分事由が被処分者の行動、態度、性格、状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮すると、同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権が認められている。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.9.14)は、「地方公務員法28条所定の分限制度は、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動しうる場合を限定したものである。分限制度の右のような趣旨・目的に照らし、かつ、同条に掲げる処分事由が被処分者の行動、態度、性格、状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認められる…。」としている。
判例(最判昭48.9.14)は、「地方公務員法28条所定の分限制度は、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動しうる場合を限定したものである。分限制度の右のような趣旨・目的に照らし、かつ、同条に掲げる処分事由が被処分者の行動、態度、性格、状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権は認められる…。」としている。
総合メモ
毒物及び劇物取締法所定の劇物を霧状に噴射させる護身用具の輸入業の登録申請に対し登録拒否事由に関する同法等の規定を類推適用して登録を拒否することの許否 最一小判昭和56年2月26日
概要
毒物及び劇物取締法所定の劇物を霧状に噴射させる護身用具の輸入業の登録申請に対し、同法5条及び毒物及び劇物取締法施行規則4条の4所定の登録拒否事由に該当する事実がないにもかかわらず、これらの規定を類推適用し、右護身用具は専ら劇物の有する催涙作用が人体に開眼不能等の機能障害を生じさせることをその用途とするものであって保健衛生上の危険性が顕著である、との理由により登録を拒否することは許されない。
判例
事案:Xが、劇物を噴霧させて用いる護身用具を輸入するために輸入業の登録申請をしたところ、厚生大臣Yがその登録を拒否する旨の処分をしたため、その処分は違法であるとしてその取消等を求めた事案において、登録拒否事由に関する規定を類推適用して登録を拒否することの許否が問題となった。
判旨:「本件拒否処分は、ストロングライフは、専ら、劇物であるブロムアセトンの有する催涙作用が人体に開眼不能等の機能障害を生じさせることをその用途とするものであり、保健衛生上の危険性が顕著であるからという理由により、毒物及び劇物取締法の解釈上設備に関する法定の登録拒否事由がなくてもその輸入業の登録を拒否することができるとの見解の下にされたものである。しかしながら、同法は、毒物及び劇物の製造業、輸入業、販売業の登録については、登録を受けようとする者が前に登録を取り消されたことを一定の要件のもとに欠格事由としているほかは、登録を拒否しうる場合をその者の設備が毒物及び劇物取締法施行規則4条の4で定める基準に適合しないと認めるときだけに限定しており(5条)、毒物及び劇物の具体的な用途については、同法2条3項にいう特定毒物につき、特定毒物研究者は特定毒物を学術研究以外の用途に供してはならない旨(3条の2第4項)、及び、特定毒物使用者は特定毒物を品目ごとに政令で定める用途以外の用途に供してはならない旨(3条の2第5項)を定めるほかには、特段の規制をしていないことが明らかであり、他方、人の身体に有害あるいは危険な作用を及ぼす物質が用いられた製品に対する危害防止の見地からの規制については、他の法律においてこれを定めたいくつかの例が存するのである(例えば、食品衛生法、薬事法、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律、消費生活用製品安全法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律等においてその趣旨の規定が見られる。)。これらの点をあわせ考えると、毒物及び劇物取締法それ自体は、毒物及び劇物の輸入業等の営業に対する規制は、専ら設備の面から登録を制限することをもって足りるものとし、毒物及び劇物がどのような目的でどのような用途の製品に使われるかについては、前記特定毒物の場合のほかは、直接規制の対象とせず、他の個々の法律がそれぞれの目的に応じて個別的に取上げて規制するのに委ねている趣旨であると解するのが相当である。そうすると、本件ストロングライフがその用途に従って使用されることにより人体に対する危害が生ずるおそれがあることをもってその輸入業の登録の拒否事由とすることは、毒物及び劇物の輸入業等の登録の許否を専ら設備に関する基準に適合するか否かにかからしめている同法の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。」
判旨:「本件拒否処分は、ストロングライフは、専ら、劇物であるブロムアセトンの有する催涙作用が人体に開眼不能等の機能障害を生じさせることをその用途とするものであり、保健衛生上の危険性が顕著であるからという理由により、毒物及び劇物取締法の解釈上設備に関する法定の登録拒否事由がなくてもその輸入業の登録を拒否することができるとの見解の下にされたものである。しかしながら、同法は、毒物及び劇物の製造業、輸入業、販売業の登録については、登録を受けようとする者が前に登録を取り消されたことを一定の要件のもとに欠格事由としているほかは、登録を拒否しうる場合をその者の設備が毒物及び劇物取締法施行規則4条の4で定める基準に適合しないと認めるときだけに限定しており(5条)、毒物及び劇物の具体的な用途については、同法2条3項にいう特定毒物につき、特定毒物研究者は特定毒物を学術研究以外の用途に供してはならない旨(3条の2第4項)、及び、特定毒物使用者は特定毒物を品目ごとに政令で定める用途以外の用途に供してはならない旨(3条の2第5項)を定めるほかには、特段の規制をしていないことが明らかであり、他方、人の身体に有害あるいは危険な作用を及ぼす物質が用いられた製品に対する危害防止の見地からの規制については、他の法律においてこれを定めたいくつかの例が存するのである(例えば、食品衛生法、薬事法、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律、消費生活用製品安全法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律等においてその趣旨の規定が見られる。)。これらの点をあわせ考えると、毒物及び劇物取締法それ自体は、毒物及び劇物の輸入業等の営業に対する規制は、専ら設備の面から登録を制限することをもって足りるものとし、毒物及び劇物がどのような目的でどのような用途の製品に使われるかについては、前記特定毒物の場合のほかは、直接規制の対象とせず、他の個々の法律がそれぞれの目的に応じて個別的に取上げて規制するのに委ねている趣旨であると解するのが相当である。そうすると、本件ストロングライフがその用途に従って使用されることにより人体に対する危害が生ずるおそれがあることをもってその輸入業の登録の拒否事由とすることは、毒物及び劇物の輸入業等の登録の許否を専ら設備に関する基準に適合するか否かにかからしめている同法の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。」
過去問・解説
(R2 予備 第14問 エ)
毒物及び劇物取締法に基づく毒物及び劇物の輸入業や販売業の登録は、登録を受けようとする者の設備の面から規制を加えるものであるが、行政庁には、専門技術的な裁量が認められていることから、設備だけではなく、登録の対象となる製品の用途や目的を考慮し、当該製品による人の生命身体への危険が予測できる場合には、登録を拒否することができる。
毒物及び劇物取締法に基づく毒物及び劇物の輸入業や販売業の登録は、登録を受けようとする者の設備の面から規制を加えるものであるが、行政庁には、専門技術的な裁量が認められていることから、設備だけではなく、登録の対象となる製品の用途や目的を考慮し、当該製品による人の生命身体への危険が予測できる場合には、登録を拒否することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭56.2.26)は、「毒物及び劇物取締法それ自体は、毒物及び劇物の輸入業等の営業に対する規制は、専ら設備の面から登録を制限することをもって足りるものとし、毒物及び劇物がどのような目的でどのような用途の製品に使われるかについては、前記特定毒物の場合のほかは、直接規制の対象とせず、他の個々の法律がそれぞれの目的に応じて個別的に取上げて規制するのに委ねている趣旨である…。」としている。
したがって、当該製品による人の生命身体への危険予測において考慮できるのは、設備面のみである。
判例(最判昭56.2.26)は、「毒物及び劇物取締法それ自体は、毒物及び劇物の輸入業等の営業に対する規制は、専ら設備の面から登録を制限することをもって足りるものとし、毒物及び劇物がどのような目的でどのような用途の製品に使われるかについては、前記特定毒物の場合のほかは、直接規制の対象とせず、他の個々の法律がそれぞれの目的に応じて個別的に取上げて規制するのに委ねている趣旨である…。」としている。
したがって、当該製品による人の生命身体への危険予測において考慮できるのは、設備面のみである。
総合メモ
教科用図書の検定における文部大臣の裁量的判断と国家賠償法上の違法性判断 最三小判平成5年3月16日
概要
高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等の判断は、文部大臣の合理的な裁量にゆだねられているが、文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、申請原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況等についての認識や、検定基準に違反するとの評価等に関して看過し難い過誤があり、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、その判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる。
判例
事案:日本史の学者であるXが執筆した高等学校用日本史教科書が1962年度の検定において不合格、1963年度の検定において条件付合格とされたため、教科書検定制度は憲法26条、23条、21条等及び教育基本法10条等に違反するとして、国家賠償法1条に基づき損害賠償を求めた事案において、高等学校用の教科用図書の検定における文部大臣の裁量的判断がどのような場合に国家賠償法上違法となるのか問題となった。
判旨:「本件検定の審査基準等を直接定めた法律はないが、文部大臣の検定権限は、前記…の憲法上の要請にこたえ、教育基本法、学校教育法の趣旨に合致するように行使されなければならないところ、前記のとおり、検定の具体的内容等を定めた旧検定規則、旧検定基準は右の要請及び各法条の趣旨を具現したものであるから、右検定権限は、これらの検定関係法規の趣旨にそって行使されるべきである。そして、これらによる本件検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。したがって、合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程(検定意見の付与を含む)に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となると解するのが相当である。 なお、検定意見は、原稿の個々の記述に対して旧検定基準の各必要条件ごとに具体的理由を付して欠陥を指摘するものであるから、各検定意見ごとに、その根拠となるべき学説状況や教育状況等も異なるものである。例えば、正確性に関する検定意見は、申請図書の記述の学問的な正確性を問題とするものであって、検定当時の学界における客観的な学説状況を根拠とすべきものであるが、検定意見には、その実質において、(1)原稿記述が誤りであるとして他説による記述を求めるものや、(2)原稿記述が一面的、断定的であるとして両説併記等を求めるものなどがある。そして、検定意見に看過し難い過誤があるか否かについては、右(1)の場合は、検定意見の根拠となる学説が通説、定説として学界に広く受け入れられており、原稿記述が誤りと評価し得るかなどの観点から、右(2)の場合は、学界においていまだ定説とされる学説がなく、原稿記述が一面的であると評価し得るかなどの観点から、判断すべきである。また、内容の選択や内容の程度等に関する検定意見は、原稿記述の学問的な正確性ではなく、教育的な相当性を問題とするものであって、取り上げた内容が学習指導要領に規定する教科の目標等や児童、生徒の心身の発達段階等に照らして不適切であると評価し得るかなどの観点から判断すべきものである。」
判旨:「本件検定の審査基準等を直接定めた法律はないが、文部大臣の検定権限は、前記…の憲法上の要請にこたえ、教育基本法、学校教育法の趣旨に合致するように行使されなければならないところ、前記のとおり、検定の具体的内容等を定めた旧検定規則、旧検定基準は右の要請及び各法条の趣旨を具現したものであるから、右検定権限は、これらの検定関係法規の趣旨にそって行使されるべきである。そして、これらによる本件検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。したがって、合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程(検定意見の付与を含む)に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となると解するのが相当である。 なお、検定意見は、原稿の個々の記述に対して旧検定基準の各必要条件ごとに具体的理由を付して欠陥を指摘するものであるから、各検定意見ごとに、その根拠となるべき学説状況や教育状況等も異なるものである。例えば、正確性に関する検定意見は、申請図書の記述の学問的な正確性を問題とするものであって、検定当時の学界における客観的な学説状況を根拠とすべきものであるが、検定意見には、その実質において、(1)原稿記述が誤りであるとして他説による記述を求めるものや、(2)原稿記述が一面的、断定的であるとして両説併記等を求めるものなどがある。そして、検定意見に看過し難い過誤があるか否かについては、右(1)の場合は、検定意見の根拠となる学説が通説、定説として学界に広く受け入れられており、原稿記述が誤りと評価し得るかなどの観点から、右(2)の場合は、学界においていまだ定説とされる学説がなく、原稿記述が一面的であると評価し得るかなどの観点から、判断すべきである。また、内容の選択や内容の程度等に関する検定意見は、原稿記述の学問的な正確性ではなく、教育的な相当性を問題とするものであって、取り上げた内容が学習指導要領に規定する教科の目標等や児童、生徒の心身の発達段階等に照らして不適切であると評価し得るかなどの観点から判断すべきものである。」
過去問・解説
(H30 予備 第15問 イ)
高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等に係る文部科学大臣の判断について、教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、検定の基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部科学大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、上記判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる。
高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等に係る文部科学大臣の判断について、教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、検定の基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部科学大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、上記判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平5.3.16)は、「合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程…に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる…。」としている。
判例(最判平5.3.16)は、「合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程…に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる…。」としている。
総合メモ
信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した市立高等専門学校の学生に対する原級留置処分及び退学処分 最二小判平成8年3月8日
概要
信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した市立高等専門学校の学生に対する原級留置処分及び退学処分は、校長の裁量権の範囲を超える違法なものである。
判例
事案:エホバの証人の信者であるXは、高等専門学校の体育科目の履修において、信仰上の理由から格技である剣道実技への参加を拒否したところ、それにより体育科目に成績が修得認定されなかった。学校長Yは、Xについて、2年とも、必修である体育科目の成績が修得認定されなかったことを理由に、2年連続して原級留置処分をし、学校規則等に従い退学事由に該当するとして退学処分にした。これに対してXが国家賠償請求をした事案において、公立学校の校長による生徒に対して行われた原級留置処分及び退学処分で裁量の逸脱・濫用が認められるか問題となった。
判旨:「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである…。しかし、退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であり、学校教育法施行規則13条3項も4個の退学事由を限定的に定めていることからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものである…。また、原級留置処分も、学生にその意に反して1年間にわたり既に履修した科目、種目を再履修することを余儀なくさせ、上級学年における授業を受ける時期を延期させ、卒業を遅らせる上、神戸高専においては、原級留置処分が2回連続してされることにより退学処分にもつながるものであるから、その学生に与える不利益の大きさに照らして、原級留置処分の決定に当たっても、同様に慎重な配慮が要求されるものというべきである。そして、前記事実関係の下においては、以下に説示するとおり、本件各処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超えた違法なものといわざるを得ない。 公教育の教育課程において、学年に応じた一定の重要な知識、能力等を学生に共通に修得させることが必要であることは、教育水準の確保等の要請から、否定することができず、保健体育科目の履修もその例外ではない。しかし、高等専門学校においては、剣道実技の履修が必須のものとまではいい難く、体育科目による教育目的の達成は、他の体育種目の履修などの代替的方法によってこれを行うことも性質上可能というべきである。 他方、前記事実関係によれば、被上告人が剣道実技への参加を拒否する理由は、被上告人の信仰の核心部分と密接に関連する真しなものであった。被上告人は、他の体育種目の履修は拒否しておらず、特に不熱心でもなかったが、剣道種目の点数として35点中のわずか2.5点しか与えられなかったため、他の種目の履修のみで体育科目の合格点を取ることは著しく困難であったと認められる。したがって、被上告人は、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否の結果として、他の科目では成績優秀であったにもかかわらず、原級留置、退学という事態に追い込まれたものというべきであり、その不利益が極めて大きいことも明らかである。また、本件各処分は、その内容それ自体において被上告人に信仰上の教義に反する行動を命じたものではなく、その意味では、被上告人の信教の自由を直接的に制約するものとはいえないが、しかし、被上告人がそれらによる重大な不利益を避けるためには剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせられるという性質を有するものであったことは明白である。 上告人の採った措置が、信仰の自由や宗教的行為に対する制約を特に目的とするものではなく、教育内容の設定及びその履修に関する評価方法についての一般的な定めに従ったものであるとしても、本件各処分が右のとおりの性質を有するものであった以上、上告人は、前記裁量権の行使に当たり、当然そのことに相応の考慮を払う必要があったというべきである。また、被上告人が、自らの自由意思により、必修である体育科目の種目として剣道の授業を採用している学校を選択したことを理由に、先にみたような著しい不利益を被上告人に与えることが当然に許容されることになるものでもない。
被上告人は、レポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨繰り返し申入れていたのであって、剣道実技を履修しないまま直ちに履修したと同様の評価を受けることを求めていたものではない。これに対し、神戸高専においては、被上告人ら『エホバの証人』である学生が、信仰上の理由から格技の授業を拒否する旨の申出をするや否や、剣道実技の履修拒否は認めず、代替措置は採らないことを明言し、被上告人及び保護者からの代替措置を採って欲しいとの要求も一切拒否し、剣道実技の補講を受けることのみを説得したというのである。本件各処分の前示の性質にかんがみれば、本件各処分に至るまでに何らかの代替措置を採ることの是非、その方法、態様等について十分に考慮するべきであったということができるが、本件においてそれがされていたとは到底いうことができない。 所論は、神戸高専においては代替措置を採るにつき実際的な障害があったという。しかし、信仰上の理由に基づく格技の履修拒否に対して代替措置を採っている学校も現にあるというのであり、他の学生に不公平感を生じさせないような適切な方法、態様による代替措置を採ることは可能であると考えられる。また、履修拒否が信仰上の理由に基づくものかどうかは外形的事情の調査によって容易に明らかになるであろうし、信仰上の理由に仮託して履修拒否をしようという者が多数に上るとも考え難いところである。さらに、代替措置を採ることによって神戸高専における教育秩序を維持することができないとか、学校全体の運営に看過することができない重大な支障を生ずるおそれがあったとは認められないとした原審の認定判断も是認することができる。そうすると、代替措置を採ることが実際上不可能であったということはできない。 …以上によれば、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、体育科目を不認定とした担当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに、不認定の主たる理由及び全体成績について勘案することなく、2年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規に従って学則にいう『学力劣等で成業の見込みがないと認められる者』に当たるとし、退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。」
判旨:「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである…。しかし、退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であり、学校教育法施行規則13条3項も4個の退学事由を限定的に定めていることからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものである…。また、原級留置処分も、学生にその意に反して1年間にわたり既に履修した科目、種目を再履修することを余儀なくさせ、上級学年における授業を受ける時期を延期させ、卒業を遅らせる上、神戸高専においては、原級留置処分が2回連続してされることにより退学処分にもつながるものであるから、その学生に与える不利益の大きさに照らして、原級留置処分の決定に当たっても、同様に慎重な配慮が要求されるものというべきである。そして、前記事実関係の下においては、以下に説示するとおり、本件各処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超えた違法なものといわざるを得ない。 公教育の教育課程において、学年に応じた一定の重要な知識、能力等を学生に共通に修得させることが必要であることは、教育水準の確保等の要請から、否定することができず、保健体育科目の履修もその例外ではない。しかし、高等専門学校においては、剣道実技の履修が必須のものとまではいい難く、体育科目による教育目的の達成は、他の体育種目の履修などの代替的方法によってこれを行うことも性質上可能というべきである。 他方、前記事実関係によれば、被上告人が剣道実技への参加を拒否する理由は、被上告人の信仰の核心部分と密接に関連する真しなものであった。被上告人は、他の体育種目の履修は拒否しておらず、特に不熱心でもなかったが、剣道種目の点数として35点中のわずか2.5点しか与えられなかったため、他の種目の履修のみで体育科目の合格点を取ることは著しく困難であったと認められる。したがって、被上告人は、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否の結果として、他の科目では成績優秀であったにもかかわらず、原級留置、退学という事態に追い込まれたものというべきであり、その不利益が極めて大きいことも明らかである。また、本件各処分は、その内容それ自体において被上告人に信仰上の教義に反する行動を命じたものではなく、その意味では、被上告人の信教の自由を直接的に制約するものとはいえないが、しかし、被上告人がそれらによる重大な不利益を避けるためには剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせられるという性質を有するものであったことは明白である。 上告人の採った措置が、信仰の自由や宗教的行為に対する制約を特に目的とするものではなく、教育内容の設定及びその履修に関する評価方法についての一般的な定めに従ったものであるとしても、本件各処分が右のとおりの性質を有するものであった以上、上告人は、前記裁量権の行使に当たり、当然そのことに相応の考慮を払う必要があったというべきである。また、被上告人が、自らの自由意思により、必修である体育科目の種目として剣道の授業を採用している学校を選択したことを理由に、先にみたような著しい不利益を被上告人に与えることが当然に許容されることになるものでもない。
被上告人は、レポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨繰り返し申入れていたのであって、剣道実技を履修しないまま直ちに履修したと同様の評価を受けることを求めていたものではない。これに対し、神戸高専においては、被上告人ら『エホバの証人』である学生が、信仰上の理由から格技の授業を拒否する旨の申出をするや否や、剣道実技の履修拒否は認めず、代替措置は採らないことを明言し、被上告人及び保護者からの代替措置を採って欲しいとの要求も一切拒否し、剣道実技の補講を受けることのみを説得したというのである。本件各処分の前示の性質にかんがみれば、本件各処分に至るまでに何らかの代替措置を採ることの是非、その方法、態様等について十分に考慮するべきであったということができるが、本件においてそれがされていたとは到底いうことができない。 所論は、神戸高専においては代替措置を採るにつき実際的な障害があったという。しかし、信仰上の理由に基づく格技の履修拒否に対して代替措置を採っている学校も現にあるというのであり、他の学生に不公平感を生じさせないような適切な方法、態様による代替措置を採ることは可能であると考えられる。また、履修拒否が信仰上の理由に基づくものかどうかは外形的事情の調査によって容易に明らかになるであろうし、信仰上の理由に仮託して履修拒否をしようという者が多数に上るとも考え難いところである。さらに、代替措置を採ることによって神戸高専における教育秩序を維持することができないとか、学校全体の運営に看過することができない重大な支障を生ずるおそれがあったとは認められないとした原審の認定判断も是認することができる。そうすると、代替措置を採ることが実際上不可能であったということはできない。 …以上によれば、信仰上の理由による剣道実技の履修拒否を、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、代替措置が不可能というわけでもないのに、代替措置について何ら検討することもなく、体育科目を不認定とした担当教員らの評価を受けて、原級留置処分をし、さらに、不認定の主たる理由及び全体成績について勘案することなく、2年続けて原級留置となったため進級等規程及び退学内規に従って学則にいう『学力劣等で成業の見込みがないと認められる者』に当たるとし、退学処分をしたという上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(H22 司法 第24問 イ)
公立学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものである。しかし、退学処分は、学生の身分をはく奪する重大な措置であることなどからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものである。
公立学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものである。しかし、退学処分は、学生の身分をはく奪する重大な措置であることなどからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平8.3.8)は、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであ…る…。しかし、退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であ…ることからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要する…。」としている。
判例(最判平8.3.8)は、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであ…る…。しかし、退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であ…ることからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要する…。」としている。
(H27 予備 第16問 ア)
公立学校の校長が行った学生に対する退学処分の適否を裁判所が審査するに当たっては、裁判所が校長と同一の立場に立ってした判断と校長がした判断との間に食い違いがあれば、当該処分は違法とされる。
公立学校の校長が行った学生に対する退学処分の適否を裁判所が審査するに当たっては、裁判所が校長と同一の立場に立ってした判断と校長がした判断との間に食い違いがあれば、当該処分は違法とされる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平8.3.8)は、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、裁判所は、校長と同一の立場に立ってした判断と校長がした判断との間に食い違いがあれば当該処分を違法とするものではない。
判例(最判平8.3.8)は、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するに当たっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではなく、校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべき…。」としている。
したがって、裁判所は、校長と同一の立場に立ってした判断と校長がした判断との間に食い違いがあれば当該処分を違法とするものではない。
(H29 予備 第16問 ア)
公立高等専門学校の校長が学生に対し退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量に委ねられるべきものであるが、退学処分は、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って選択されるべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮が要請される。
公立高等専門学校の校長が学生に対し退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量に委ねられるべきものであるが、退学処分は、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って選択されるべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮が要請される。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平8.3.8)は、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべき…。」とした上で、「しかし、退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であ…ることからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要する…。」としている。
判例(最判平8.3.8)は、「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分又は退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべき…。」とした上で、「しかし、退学処分は学生の身分をはく奪する重大な措置であ…ることからすると、当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要する…。」としている。
(R4 予備 第15問 エ)
宗教的信条と相容れないことから剣道実技に参加しなかったことにより体育科目の成績が認定されなかった学生に対する市立高等専門学校の校長の原級留置処分及び退学処分は、代替措置を採ることが実際上可能であった場合であっても、当該学生が、剣道実技が必修でない学校を選択することができ、かつ、当該学校の入学手続時に剣道実技が必修であることを知っていた場合は、その裁量権の範囲を超える違法なものとはならない。
宗教的信条と相容れないことから剣道実技に参加しなかったことにより体育科目の成績が認定されなかった学生に対する市立高等専門学校の校長の原級留置処分及び退学処分は、代替措置を採ることが実際上可能であった場合であっても、当該学生が、剣道実技が必修でない学校を選択することができ、かつ、当該学校の入学手続時に剣道実技が必修であることを知っていた場合は、その裁量権の範囲を超える違法なものとはならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平8.3.8)は、「被上告人が、自らの自由意思により、必修である体育科目の種目として剣道の授業を採用している学校を選択したことを理由に、先にみたような著しい不利益を被上告人に与えることが当然に許容されることになるものでもない。」とした上で、「上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。」としている。
したがって、当該学生が、剣道実技が必修でない学校を選択することができ、かつ、当該学校の入学手続時に剣道実技が必修であることを知っていたとしても、その裁量権の範囲を超える違法なものとなる。
判例(最判平8.3.8)は、「被上告人が、自らの自由意思により、必修である体育科目の種目として剣道の授業を採用している学校を選択したことを理由に、先にみたような著しい不利益を被上告人に与えることが当然に許容されることになるものでもない。」とした上で、「上告人の措置は、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、本件各処分は、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ない。」としている。
したがって、当該学生が、剣道実技が必修でない学校を選択することができ、かつ、当該学校の入学手続時に剣道実技が必修であることを知っていたとしても、その裁量権の範囲を超える違法なものとなる。
総合メモ
協定永住資格を有していた韓国人に対する指紋押なつ拒否を理由とする再入国不許可処分 最二小判平成10年4月10日
概要
法務大臣が、本邦で永住することができる地位を有していた者に対し、外国人登録法(昭和62年法律第102号による改正前のもの)14条1項に基づく指紋の押なつを拒否していることを理由としてした再入国不許可処分は、当時の社会情勢や指紋押なつ制度の維持による在留外国人及びその出入国の公正な管理の必要性など判示の諸事情に加えて、再入国の許否の判断に関する法務大臣の裁量権の範囲がその性質上広範なものとされている趣旨にもかんがみると、右不許可処分が右の者に与えた不利益の大きさ等を考慮してもなお、違法であるとまでいうことはできない。
判例
事案:法務大臣が、いわゆる協定永住許可を受けていたXに対し、指紋の押なつを拒否していることを理由として法務大臣がした再入国不許可処分に対し、Xが処分の取消しを求めた事案において、法務大臣の判断に裁量の逸脱・濫用が認められるか問題となった。
判旨:「一般に、出入国に関する事務は国際法上国内事項とされていて、外国人の入国にいかなる条件を課するかは専らその国の立法政策にゆだねられているところ、我が国の出入国管理及び難民認定法は、再入国の許可を受けて本邦から出国した外国人に限って、当該外国人の有していた在留資格のままで本邦に再び入国することを認めるものとしている。そして、再入国の許可の要件について、同法26条1項は、法務大臣は、本邦に在留する外国人(同法13条から18条までに規定する上陸の許可を受けている者を除く。)がその在留期間(在留期間の定めのない者にあっては、本邦に在留し得る期間)の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる旨規定するのみで、右許可の判断基準について特に規定していないが、右は、再入国の許否の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨からであると解される。なぜならば、法務大臣は、再入国の許可申請があったときは、我が国の国益を保持し出入国の公正な管理を図る観点から、申請者の在留状況、渡航目的、渡航の必要性、渡航先国と我が国との関係、内外の諸情勢等を総合的に勘案した上、その許否につき判断すべきであるが、右判断は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなければ到底適切な結果を期待することができないものだからである。右のような再入国の許否の判断に関する法務大臣の裁量権の性質にかんがみると、再入国の許否に関する法務大臣の処分は、その判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして違法となるものというべきである…。 以上の見地に立って、本件不許可処分に係る法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であるか否かにつき検討する。
前記事実関係等によれば、本件不許可処分は、協定永住資格を有する上告人が、渡航先国である米国における大学留学を旅行目的として本件許可申請をしたのに対し、被上告人が指紋押なつ拒否者の増加という事態に対する対応策として打ち出した指紋押なつ拒否者に対しては原則として再入国の許可を与えないという方針に基づき、上告人が外国人登録法(昭和62年法律第102号による改正前のもの)14条1項の規定に違反して指紋の押なつを拒否していることを専らその理由としてされたものであって、他に法務大臣が上告人の右許可申請に対する許否の判断に当たり右申請を許可することが相当でない事由として考慮した事情の存在はうかがわれない。 出入国管理特別法1条の規定に基づき本邦で永住することを許可されている大韓民国国民については、日韓地位協定3条、出入国管理特別法6条1項所定の事由に該当する場合に限って、出入国管理及び難民認定法24条の規定による退去強制をすることができるものとされていることに加えて、日韓地位協定4条(a)の規定により、日本国政府は我が国における教育、生活保護及び国民健康保険に関する事項について妥当な考慮を払うものとされ、右規定の趣旨に沿って行政運用上日本国民と同等の取扱いがされているのであって、このような協定永住資格を有する者による再入国の許可申請に対する法務大臣の許否の判断に当たっては、その者の本邦における生活の安定という観点をもしんしゃくすべきである。しかるところ、本件不許可処分がされた結果、上告人は、協定永住資格を保持したまま留学を目的として米国へ渡航することが不可能となり、協定永住資格を保持するために右渡航を断念するか又は右渡航を実現するために協定永住資格を失わざるを得ない状況に陥ったものということができるのであって、本件不許可処分によって上告人の受けた右の不利益は重大である。 しかしながら、そもそも、外国人登録法が定める指紋押なつ制度は、本邦に在留する外国人の登録を実施することによって外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もって在留外国人の公正な管理に資するという目的を達成するため、戸籍制度のない外国人の人物特定につき最も確実な制度として規定されたものであって、出入国の公正な管理を図るという出入国管理行政の目的にも資するものであるから、法務大臣が、指紋押なつの拒否が出入国管理行政にもたらす弊害にかんがみ、再入国の許可申請に対する許否の判断に当たって、右申請をした外国人が同法の規定に違反して指紋の押なつを拒否しているという事情を右申請を許可することが相当でない事由として考慮すること自体は、法務大臣の前記裁量権の合理的な行使として許容し得るものというべきである。のみならず、その後の推移はともかく、本件不許可処分がされた当時は、指紋押なつ拒否運動が全国的な広がりを見せ、指紋の押なつを留保する者が続出するという社会情勢の下にあって、出入国管理行政に少なからぬ弊害が生じていたとみられるのであり、被上告人において、指紋押なつ制度を維持して在留外国人及びその出入国の公正な管理を図るため、指紋押なつ拒否者に対しては再入国の許可を与えないという方針で臨んだこと自体は、その必要性及び合理性を肯定し得るところであり、その結果、外国人の在留資格いかんを問わずに右方針に基づいてある程度統一的な運用を行うことになったとしても、それなりにやむを得ないところがあったというべきである。他方で、前記事実関係等によれば、上告人は、本件不許可処分の前のみならずその後も指紋押なつの拒否を繰り返しており、上告人が外国人登録制度を遵守しないことを表明し、これを実施したものと被上告人に受け止められても無理からぬ面があったといえなくもない。 右のような本件不許可処分がされた当時の社会情勢や指紋押なつ制度の維持による在留外国人及びその出入国の公正な管理の必要性その他の諸事情に加えて、前示のとおり、再入国の許否の判断に関する法務大臣の裁量権の範囲がその性質上広範なものとされている趣旨にもかんがみると、協定永住資格を有する者についての法務大臣の右許否の判断に当たってはその者の本邦における生活の安定という観点をもしんしゃくすべきであることや、本件不許可処分が上告人に与えた不利益の大きさ、本件不許可処分以降、在留外国人の指紋押なつ義務が軽減され、協定永住資格を有する者についてはさらに指紋押なつ制度自体が廃止されるに至った経緯等を考慮してもなお、右処分に係る法務大臣の判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいまだ断ずることができないものというべきである。したがって、右判断は、裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして違法であるとまでいうことはできない。」
判旨:「一般に、出入国に関する事務は国際法上国内事項とされていて、外国人の入国にいかなる条件を課するかは専らその国の立法政策にゆだねられているところ、我が国の出入国管理及び難民認定法は、再入国の許可を受けて本邦から出国した外国人に限って、当該外国人の有していた在留資格のままで本邦に再び入国することを認めるものとしている。そして、再入国の許可の要件について、同法26条1項は、法務大臣は、本邦に在留する外国人(同法13条から18条までに規定する上陸の許可を受けている者を除く。)がその在留期間(在留期間の定めのない者にあっては、本邦に在留し得る期間)の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる旨規定するのみで、右許可の判断基準について特に規定していないが、右は、再入国の許否の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨からであると解される。なぜならば、法務大臣は、再入国の許可申請があったときは、我が国の国益を保持し出入国の公正な管理を図る観点から、申請者の在留状況、渡航目的、渡航の必要性、渡航先国と我が国との関係、内外の諸情勢等を総合的に勘案した上、その許否につき判断すべきであるが、右判断は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなければ到底適切な結果を期待することができないものだからである。右のような再入国の許否の判断に関する法務大臣の裁量権の性質にかんがみると、再入国の許否に関する法務大臣の処分は、その判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして違法となるものというべきである…。 以上の見地に立って、本件不許可処分に係る法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であるか否かにつき検討する。
前記事実関係等によれば、本件不許可処分は、協定永住資格を有する上告人が、渡航先国である米国における大学留学を旅行目的として本件許可申請をしたのに対し、被上告人が指紋押なつ拒否者の増加という事態に対する対応策として打ち出した指紋押なつ拒否者に対しては原則として再入国の許可を与えないという方針に基づき、上告人が外国人登録法(昭和62年法律第102号による改正前のもの)14条1項の規定に違反して指紋の押なつを拒否していることを専らその理由としてされたものであって、他に法務大臣が上告人の右許可申請に対する許否の判断に当たり右申請を許可することが相当でない事由として考慮した事情の存在はうかがわれない。 出入国管理特別法1条の規定に基づき本邦で永住することを許可されている大韓民国国民については、日韓地位協定3条、出入国管理特別法6条1項所定の事由に該当する場合に限って、出入国管理及び難民認定法24条の規定による退去強制をすることができるものとされていることに加えて、日韓地位協定4条(a)の規定により、日本国政府は我が国における教育、生活保護及び国民健康保険に関する事項について妥当な考慮を払うものとされ、右規定の趣旨に沿って行政運用上日本国民と同等の取扱いがされているのであって、このような協定永住資格を有する者による再入国の許可申請に対する法務大臣の許否の判断に当たっては、その者の本邦における生活の安定という観点をもしんしゃくすべきである。しかるところ、本件不許可処分がされた結果、上告人は、協定永住資格を保持したまま留学を目的として米国へ渡航することが不可能となり、協定永住資格を保持するために右渡航を断念するか又は右渡航を実現するために協定永住資格を失わざるを得ない状況に陥ったものということができるのであって、本件不許可処分によって上告人の受けた右の不利益は重大である。 しかしながら、そもそも、外国人登録法が定める指紋押なつ制度は、本邦に在留する外国人の登録を実施することによって外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もって在留外国人の公正な管理に資するという目的を達成するため、戸籍制度のない外国人の人物特定につき最も確実な制度として規定されたものであって、出入国の公正な管理を図るという出入国管理行政の目的にも資するものであるから、法務大臣が、指紋押なつの拒否が出入国管理行政にもたらす弊害にかんがみ、再入国の許可申請に対する許否の判断に当たって、右申請をした外国人が同法の規定に違反して指紋の押なつを拒否しているという事情を右申請を許可することが相当でない事由として考慮すること自体は、法務大臣の前記裁量権の合理的な行使として許容し得るものというべきである。のみならず、その後の推移はともかく、本件不許可処分がされた当時は、指紋押なつ拒否運動が全国的な広がりを見せ、指紋の押なつを留保する者が続出するという社会情勢の下にあって、出入国管理行政に少なからぬ弊害が生じていたとみられるのであり、被上告人において、指紋押なつ制度を維持して在留外国人及びその出入国の公正な管理を図るため、指紋押なつ拒否者に対しては再入国の許可を与えないという方針で臨んだこと自体は、その必要性及び合理性を肯定し得るところであり、その結果、外国人の在留資格いかんを問わずに右方針に基づいてある程度統一的な運用を行うことになったとしても、それなりにやむを得ないところがあったというべきである。他方で、前記事実関係等によれば、上告人は、本件不許可処分の前のみならずその後も指紋押なつの拒否を繰り返しており、上告人が外国人登録制度を遵守しないことを表明し、これを実施したものと被上告人に受け止められても無理からぬ面があったといえなくもない。 右のような本件不許可処分がされた当時の社会情勢や指紋押なつ制度の維持による在留外国人及びその出入国の公正な管理の必要性その他の諸事情に加えて、前示のとおり、再入国の許否の判断に関する法務大臣の裁量権の範囲がその性質上広範なものとされている趣旨にもかんがみると、協定永住資格を有する者についての法務大臣の右許否の判断に当たってはその者の本邦における生活の安定という観点をもしんしゃくすべきであることや、本件不許可処分が上告人に与えた不利益の大きさ、本件不許可処分以降、在留外国人の指紋押なつ義務が軽減され、協定永住資格を有する者についてはさらに指紋押なつ制度自体が廃止されるに至った経緯等を考慮してもなお、右処分に係る法務大臣の判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいまだ断ずることができないものというべきである。したがって、右判断は、裁量権の範囲を超え、又はその濫用があったものとして違法であるとまでいうことはできない。」
過去問・解説
(H20 司法 第24問 ア)
出入国管理及び難民認定法第26条第1項が外国人の再入国許可に関して許可の判断基準を特に規定していないのは、再入国の許否の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨であると解されている。
【参照条文】出入国管理及び難民認定法
第26条 法務大臣は、本邦に在留する外国人(中略)がその在留期間(在留期間の定めのない者にあっては、本邦に在留し得る期間)の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる。この場合において、法務大臣は、その者の申請に基づき、相当と認めるときは、当該許可を数次再入国の許可とすることができる。
2~7 (略)
出入国管理及び難民認定法第26条第1項が外国人の再入国許可に関して許可の判断基準を特に規定していないのは、再入国の許否の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨であると解されている。
【参照条文】出入国管理及び難民認定法
第26条 法務大臣は、本邦に在留する外国人(中略)がその在留期間(在留期間の定めのない者にあっては、本邦に在留し得る期間)の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる。この場合において、法務大臣は、その者の申請に基づき、相当と認めるときは、当該許可を数次再入国の許可とすることができる。
2~7 (略)
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.4.10)は、「再入国の許可の要件について、同法26条1項は、法務大臣は、本邦に在留する外国人…がその在留期間…の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる旨規定するのみで、右許可の判断基準について特に規定していないが、右は、再入国の許否の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨からである…。」としている。
判例(最判平10.4.10)は、「再入国の許可の要件について、同法26条1項は、法務大臣は、本邦に在留する外国人…がその在留期間…の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる旨規定するのみで、右許可の判断基準について特に規定していないが、右は、再入国の許否の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨からである…。」としている。
総合メモ
法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をした場合 東京高裁平成11年3月31日
概要
法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならないというべきである。
判例
事案:Xが営業するパチンコ店につき、営業許可取消処分が行われたことについて、Xが処分の取消を求めた事案において、①風営法8条が公安委員会に裁量権を認めているか否か、及び②処分に裁量権の行使又は不行使について違法があるか否かが問題となった。
判旨:①「風営法8条は、風俗営業者らが当該営業に関し法令等に違反した場合等に制裁措置としての行政処分の1つとして法26条1項により当該許可が取り消されるのとは異なり、風俗営業の許可がなされた後に、当該許可を行うべきでなかったことが事後になって判明したとき(1号、2号)、あるいは、事後に不許可の事由に該当する事情が生じるなど事情の変化により許可を存続させることが公共の利益に適合しないような事情に立ち至ったとき若しくは許可を受けた者が許可に基づく営業をせず許可を無意味ならしめているとき(2ないし4号)等の場合の一般的取消事由を定めているところ、特に後者の場合にはその取消しはいったん有効に成立した営業許可を将来に向かって廃止するもので講学上『撤回』に当たるものと解される。そして、そのような行政処分の撤回(法文上は『取消し』)がどのような場合に許されるか、またその撤回が必要的か裁量的かなどについては、それぞれの法令の規定、趣旨、目的に従って判断されるべきである。ところで、 1の風俗営業者が複数の営業所についてそれぞれ公安委員会の許可を受けて風俗営業を営む場合、1営業所について風営法26条項に基づき風俗営業の許可の取消しがされたときは、元来そのようなことは法4条の許可の基準においては当該取消しの日から5年間の欠格事由となるものであり、一般には風俗営業の営業主体としてふさわしくない人的悪性を示すものといえるから、公安委員会…としては、これを契機として当該1営業所のみならず当該風俗営業者の営む者の営業所に係る風俗営業の許可についても見直す必要があり、場合によっては当該営業所にかかる許可を取り消す(撤回)必要が生ずることは当然考えられるところであり、法8条2号は、このような場合に、公安委員会に、管轄する当該風俗営業者の他の営業所の風俗営業の許可について取消し(撤回)の権限を付与した規定であるとみることができる。 しかし、このことは、法8条2号による許可取消しについて、公安委員会に裁量の余地を認めないことを必ずしも意味するものではない。たしかに、風俗営業の性格、同一の営業主体による複数の営業所での営業の一体性などから、1営業所について法26条1項により営業許可の取消しが行われたという場合には、当該風俗営業者の営む他の営業所についても風俗営業を営むにふさわしくない人的悪性が示されたものとみて、多くの場分他の営業所についても風俗営業の許可が取り消されることになったとしてもやむを得ないであろうが、一般的に、法26条により1営業所についての許可取消しがされる場合でも、それぞれの違反事由ごとに営業者の悪性の程度、同一の違反が他の営業所においても繰り返されることの危険性は異なる場合があり得るし、許可後の取消し(撤回)の場合には、当初の許可の是非の判断と異なり、当初の許可を前提として新たな法律秩序が次々と形成されているから、違反行為の性質、態様などに伴う取消し(撤回)の必要性、取消し(撤回)による相手方への影響の程度も比較考量の上、取消し(撤回)の是非を判断するのが相当であると解される。また、法8条の法文は『取り消すことができる。』という規定となっているところ、法8条各号のうち、特に3、4号の取消原因(許可を受けた者が『許可を受けてから6月以内に営業を開始せず、又は引き続き6月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないこと』、『3月以上所在不明であること』が判明したとき)については、公安委員会の適切な裁量による取消権の行使が期待されていると考えられ(右要件については、昭和59年改正前の風営法の下でも、各都道府県条例において同旨の規定が設けられていたが、これらの各例においては『正当な理由がなく』許可の日から6月以内に開業せず、又は引き続き6月以上休業したときを取消事由とするのが一般であった経過に照らせば、『正当の事由』の文言の有無にかかわらず、現行法においても、右3、4号の要件については、正当な理由の有無等について公安委員会の適切な裁量を予定しているとみるべきである。)、法8条の他の号についても、同条の『取り消すことができる。』との規定振りは公安委員会の権限を示すのみでなくその裁量の余地を示した規定とみることが相当である。なお、現行質屋営業法225条2項は、『2以上の営業所を有する質屋が、1の営業所につき、前項の規定により質屋の許可を取り消され、又は質屋営業の停止を命じられた場合においては、他の営業所についても、その所在地を管轄する公安委員会は、情状により、その質屋の許可を取消し、又はその質屋営業の停止を命ずることができる。この場合においては、前者の所在地が当該公安委員会の管轄に属すると否とを問わない。』旨規定しているところ(平成7年改正前の『古物営業法』24条2項にも同様の規定があった。)、風営法の場合にもこれと同様営業所ごとの許可制が採用されており、1の営業所において法26条の許可取消しがされた場合の他の営業所の許可の是非については、質屋営業法の場合と同様に、他の営業所を管轄する公安委員会を含む公安委員会の適切な裁量による取消し(撤回)の運用による立法目的の達成が期待されているとみても不合理とはいえない。以上のとおりであるから、法8条2号の場合には必要的取消しであって、公安委員会に営業許可を取り消すべきかどうかについて裁量の余地はないとの控訴人の主張は採用できない。」
②「行政事件訴訟法30条は、『行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。』と定めている。ところで、法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(当該処分が不正な動機に基づいていたり、処分の性質上考慮すべき事項を考慮せず、若しくは考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されるなど裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならないというべきである。 換言すれば、行政庁が処分に当たり、裁量の余地があるのに裁量の余地がないものとして一定の処分をしたという場合においても、当該処分が行政庁の権限行使の一環として行われたことに変わりはない以上、処分の取消しを求める者は、行政庁が与えられた裁景権を行使しなかったというだけでは処分の取消し事由としては十分でなく、その不行使の結果としての当該処分が、裁量権あるものとして行われたとしても実質的に裁量の範囲を超え、又は裁量権の濫用に当たることを主張、立証しなければならないというべきである。」
判旨:①「風営法8条は、風俗営業者らが当該営業に関し法令等に違反した場合等に制裁措置としての行政処分の1つとして法26条1項により当該許可が取り消されるのとは異なり、風俗営業の許可がなされた後に、当該許可を行うべきでなかったことが事後になって判明したとき(1号、2号)、あるいは、事後に不許可の事由に該当する事情が生じるなど事情の変化により許可を存続させることが公共の利益に適合しないような事情に立ち至ったとき若しくは許可を受けた者が許可に基づく営業をせず許可を無意味ならしめているとき(2ないし4号)等の場合の一般的取消事由を定めているところ、特に後者の場合にはその取消しはいったん有効に成立した営業許可を将来に向かって廃止するもので講学上『撤回』に当たるものと解される。そして、そのような行政処分の撤回(法文上は『取消し』)がどのような場合に許されるか、またその撤回が必要的か裁量的かなどについては、それぞれの法令の規定、趣旨、目的に従って判断されるべきである。ところで、 1の風俗営業者が複数の営業所についてそれぞれ公安委員会の許可を受けて風俗営業を営む場合、1営業所について風営法26条項に基づき風俗営業の許可の取消しがされたときは、元来そのようなことは法4条の許可の基準においては当該取消しの日から5年間の欠格事由となるものであり、一般には風俗営業の営業主体としてふさわしくない人的悪性を示すものといえるから、公安委員会…としては、これを契機として当該1営業所のみならず当該風俗営業者の営む者の営業所に係る風俗営業の許可についても見直す必要があり、場合によっては当該営業所にかかる許可を取り消す(撤回)必要が生ずることは当然考えられるところであり、法8条2号は、このような場合に、公安委員会に、管轄する当該風俗営業者の他の営業所の風俗営業の許可について取消し(撤回)の権限を付与した規定であるとみることができる。 しかし、このことは、法8条2号による許可取消しについて、公安委員会に裁量の余地を認めないことを必ずしも意味するものではない。たしかに、風俗営業の性格、同一の営業主体による複数の営業所での営業の一体性などから、1営業所について法26条1項により営業許可の取消しが行われたという場合には、当該風俗営業者の営む他の営業所についても風俗営業を営むにふさわしくない人的悪性が示されたものとみて、多くの場分他の営業所についても風俗営業の許可が取り消されることになったとしてもやむを得ないであろうが、一般的に、法26条により1営業所についての許可取消しがされる場合でも、それぞれの違反事由ごとに営業者の悪性の程度、同一の違反が他の営業所においても繰り返されることの危険性は異なる場合があり得るし、許可後の取消し(撤回)の場合には、当初の許可の是非の判断と異なり、当初の許可を前提として新たな法律秩序が次々と形成されているから、違反行為の性質、態様などに伴う取消し(撤回)の必要性、取消し(撤回)による相手方への影響の程度も比較考量の上、取消し(撤回)の是非を判断するのが相当であると解される。また、法8条の法文は『取り消すことができる。』という規定となっているところ、法8条各号のうち、特に3、4号の取消原因(許可を受けた者が『許可を受けてから6月以内に営業を開始せず、又は引き続き6月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないこと』、『3月以上所在不明であること』が判明したとき)については、公安委員会の適切な裁量による取消権の行使が期待されていると考えられ(右要件については、昭和59年改正前の風営法の下でも、各都道府県条例において同旨の規定が設けられていたが、これらの各例においては『正当な理由がなく』許可の日から6月以内に開業せず、又は引き続き6月以上休業したときを取消事由とするのが一般であった経過に照らせば、『正当の事由』の文言の有無にかかわらず、現行法においても、右3、4号の要件については、正当な理由の有無等について公安委員会の適切な裁量を予定しているとみるべきである。)、法8条の他の号についても、同条の『取り消すことができる。』との規定振りは公安委員会の権限を示すのみでなくその裁量の余地を示した規定とみることが相当である。なお、現行質屋営業法225条2項は、『2以上の営業所を有する質屋が、1の営業所につき、前項の規定により質屋の許可を取り消され、又は質屋営業の停止を命じられた場合においては、他の営業所についても、その所在地を管轄する公安委員会は、情状により、その質屋の許可を取消し、又はその質屋営業の停止を命ずることができる。この場合においては、前者の所在地が当該公安委員会の管轄に属すると否とを問わない。』旨規定しているところ(平成7年改正前の『古物営業法』24条2項にも同様の規定があった。)、風営法の場合にもこれと同様営業所ごとの許可制が採用されており、1の営業所において法26条の許可取消しがされた場合の他の営業所の許可の是非については、質屋営業法の場合と同様に、他の営業所を管轄する公安委員会を含む公安委員会の適切な裁量による取消し(撤回)の運用による立法目的の達成が期待されているとみても不合理とはいえない。以上のとおりであるから、法8条2号の場合には必要的取消しであって、公安委員会に営業許可を取り消すべきかどうかについて裁量の余地はないとの控訴人の主張は採用できない。」
②「行政事件訴訟法30条は、『行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。』と定めている。ところで、法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(当該処分が不正な動機に基づいていたり、処分の性質上考慮すべき事項を考慮せず、若しくは考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されるなど裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならないというべきである。 換言すれば、行政庁が処分に当たり、裁量の余地があるのに裁量の余地がないものとして一定の処分をしたという場合においても、当該処分が行政庁の権限行使の一環として行われたことに変わりはない以上、処分の取消しを求める者は、行政庁が与えられた裁景権を行使しなかったというだけでは処分の取消し事由としては十分でなく、その不行使の結果としての当該処分が、裁量権あるものとして行われたとしても実質的に裁量の範囲を超え、又は裁量権の濫用に当たることを主張、立証しなければならないというべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第31問 ウ)
行政処分を行う行政庁に裁量が法律上認められているにもかかわらず、行政庁が裁量の余地はないと判断して行政処分を行った場合、行政庁が裁量権を行使したわけではない。したがって、この場合において、裁判所が、行政庁が裁量権の行使に当たり考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、行政処分を違法と判断することはできない。
行政処分を行う行政庁に裁量が法律上認められているにもかかわらず、行政庁が裁量の余地はないと判断して行政処分を行った場合、行政庁が裁量権を行使したわけではない。したがって、この場合において、裁判所が、行政庁が裁量権の行使に当たり考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、行政処分を違法と判断することはできない。
(正答)✕
(解説)
裁判例(東京高判平11.3.31)は、「法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(当該処分が不正な動機に基づいていたり、処分の性質上考慮すべき事項を考慮せず、若しくは考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されるなど裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならない…。」としている。
したがって、裁判所は、行政庁が裁量権の行使に当たり考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、行政処分を違法と判断することができる。
裁判例(東京高判平11.3.31)は、「法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(当該処分が不正な動機に基づいていたり、処分の性質上考慮すべき事項を考慮せず、若しくは考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されるなど裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならない…。」としている。
したがって、裁判所は、行政庁が裁量権の行使に当たり考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、行政処分を違法と判断することができる。
総合メモ
一般乗用旅客自動車運送事業者の道路運送法9条1項に基づく運賃変更の認可申請を却下した地方運輸局長の処分 最一小判平成11年7月19日
概要
道路運送法(平成12年法律第86号による改正前のもの)第9条第2項第1号の趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたものである。同号の基準は抽象的、概括的なものであり、右基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。
判例
事案:一般乗用旅客自動車運送事業者の道路運送法9条1項に基づく運賃変更の認可申請を却下した地方運輸局長の処分について、裁量権の逸脱・濫用した違法があった否かが問題となった。
判旨:「法は、タクシー事業を含む一般旅客自動車運送事業につき、4条ないし7条において、その事業の経営についての免許制を規定するとともに、9条1項において、一般旅客自動車運送事業者は、運賃を定め、又はこれを変更しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならないとし、同条2項において、その認可基準を定めている…。そして、法9条2項1号は、運賃の設定及び変更の認可基準の1として前記基準を定めているが、その趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたものと解するのが相当である。 右のような同号の趣旨にかんがみると、運賃の値上げを内容とする運賃変更の認可申請がされた場合において、変更に係る運賃の額が能率的な経営の下における適正な原価を償うことができないときは、たとい右値上げにより一定の利潤を得ることができるとしても、同号の基準に適合しないものと解すべきである。そして、同号の基準は抽象的、概括的なものであり、右基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。 ところで、本件申請がされた当時、タクシー事業の運賃変更の認可について、『一般乗用旅客自動車運送事業の運賃改定要否の検討基準及び運賃原価算定基準について』(昭和48年7月26日付け自旅第273号自動車局長から各陸運局長あて依命通達。以下『本件通達』という。)が定められており、各地方運輸局においては、本件通達に定められた方式に従った事務処理が行われていた。その概要は、地方運輸局長は、同一運賃を適用する事業区域を定め、当該区域の事業者の中から不適当な者を除外して標準能率事業者を選定し、さらに、標準能率事業者の中からその実績加重平均収支率が標準能率事業者のそれを下回らないように原価計算対象事業者を選定し、右事業者について本件通達別紙(2)の『一般乗用旅客自動車運送事業の運賃原価算定基準』(以下『運賃原価算定基準』という。)に従って適正利潤を含む運賃原価を人件費等の原価要素の分類に従って算定した上、その平均値を基に運賃の値上げ率を算定する(この算定方式を『平均原価方式』という。)、というものである。 本件通達の定める運賃原価算定基準に示された原価計算の方法は、法9条2項1号の基準に適合するか否かの具体的判断基準として合理性を有するといえる。そして、タクシー事業は運賃原価を構成する要素がほぼ共通と考えられる上、その中でも人件費が原価の相当部分を占めるものであり、また、同じ地域では賃金水準や一般物価水準といった経済情勢はほぼ同じであると考えられるから、当該同一地域内では、同号にいう『能率的な経営の下における適正な原価』は各事業者にとってほぼ同じようなものになると考えられる。したがって、平均原価方式に従って算定された額をもって当該同一地域内のタクシー事業者に対する運賃の設定又は変更の認可の基準とし、右の額を変更後の運賃の額とする運賃変更の認可申請については、特段の事情のない限り同号の基準に適合しているものと判断することも、地方運輸局長の前記裁量権の行使として是認し得るところである。もっとも、タクシー事業者が平均原価方式により算定された額と異なる運賃額を内容とする運賃の設定又は変更の認可申請をし、右運賃額が同号の基準に適合することを明らかにするため道路運送法施行規則(平成7年運輸省令第14号による改正前のもの)10条2項所定の原価計算書その他運賃の額の算出の基礎を記載した書類を提出した場合には、地方運輸局長は、当該申請について法9条2項1号の基準に適合しているか否かを右提出書類に基づいて個別に審査判断すべきであることはいうまでもない。 前記事実関係等によれば、被上告人らの本件申請に係る運賃の額は、本件申請の直前に近畿運輸局長が同業他社に対してした認可に係る運賃の額…を下回るものであったが、同局長は、本件申請に係る運賃の額が右認可に係る運賃の額に達しないものであることのみを理由として直ちに本件却下決定をしたのではなく、本件申請に対する許否の判断に当たり、被上告人らの提出する原価計算書その他の書類に基づき、本件申請に係る運賃の変更が法9条2項1号の基準に適合するか否かを運賃原価算定基準に準拠して個別に審査しようとしたものと解される。前示のとおり、運賃原価算定基準に示された原価計算の方法は、同号の基準に適合するか否かの具体的判断基準として、合理性を有するものであるから、同局長において本件申請に係る運賃の変更が同号の基準に適合するか否かを運賃原価算定基準に準拠して個別に審査しようとしたことは、相当な措置であったというべきである。しかるに、前記事実関係等によれば、同局長が右審査のために被上告人らに対して右原価計算書に記載された原価計算の算定根拠等について説明を求めたにもかかわらず、被上告人らは、運賃変更の理由は消費税の転嫁である旨の陳述をしたのみで、右原価計算の算定根拠等を明らかにしなかったというのであるから、同局長において被上告人らの提出した書類によっては被上告人らの採用した原価計算の合理性について審査判断することができなかったものということができる。そうであるとすれば、本件申請について、同号の基準に適合するか否かを判断するに足りるだけの資料の提出がないとして、本件却下決定をした同局長の判断に、その裁量権を逸脱し、又はこれを濫用した違法はないというべきである。」
判旨:「法は、タクシー事業を含む一般旅客自動車運送事業につき、4条ないし7条において、その事業の経営についての免許制を規定するとともに、9条1項において、一般旅客自動車運送事業者は、運賃を定め、又はこれを変更しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならないとし、同条2項において、その認可基準を定めている…。そして、法9条2項1号は、運賃の設定及び変更の認可基準の1として前記基準を定めているが、その趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたものと解するのが相当である。 右のような同号の趣旨にかんがみると、運賃の値上げを内容とする運賃変更の認可申請がされた場合において、変更に係る運賃の額が能率的な経営の下における適正な原価を償うことができないときは、たとい右値上げにより一定の利潤を得ることができるとしても、同号の基準に適合しないものと解すべきである。そして、同号の基準は抽象的、概括的なものであり、右基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。 ところで、本件申請がされた当時、タクシー事業の運賃変更の認可について、『一般乗用旅客自動車運送事業の運賃改定要否の検討基準及び運賃原価算定基準について』(昭和48年7月26日付け自旅第273号自動車局長から各陸運局長あて依命通達。以下『本件通達』という。)が定められており、各地方運輸局においては、本件通達に定められた方式に従った事務処理が行われていた。その概要は、地方運輸局長は、同一運賃を適用する事業区域を定め、当該区域の事業者の中から不適当な者を除外して標準能率事業者を選定し、さらに、標準能率事業者の中からその実績加重平均収支率が標準能率事業者のそれを下回らないように原価計算対象事業者を選定し、右事業者について本件通達別紙(2)の『一般乗用旅客自動車運送事業の運賃原価算定基準』(以下『運賃原価算定基準』という。)に従って適正利潤を含む運賃原価を人件費等の原価要素の分類に従って算定した上、その平均値を基に運賃の値上げ率を算定する(この算定方式を『平均原価方式』という。)、というものである。 本件通達の定める運賃原価算定基準に示された原価計算の方法は、法9条2項1号の基準に適合するか否かの具体的判断基準として合理性を有するといえる。そして、タクシー事業は運賃原価を構成する要素がほぼ共通と考えられる上、その中でも人件費が原価の相当部分を占めるものであり、また、同じ地域では賃金水準や一般物価水準といった経済情勢はほぼ同じであると考えられるから、当該同一地域内では、同号にいう『能率的な経営の下における適正な原価』は各事業者にとってほぼ同じようなものになると考えられる。したがって、平均原価方式に従って算定された額をもって当該同一地域内のタクシー事業者に対する運賃の設定又は変更の認可の基準とし、右の額を変更後の運賃の額とする運賃変更の認可申請については、特段の事情のない限り同号の基準に適合しているものと判断することも、地方運輸局長の前記裁量権の行使として是認し得るところである。もっとも、タクシー事業者が平均原価方式により算定された額と異なる運賃額を内容とする運賃の設定又は変更の認可申請をし、右運賃額が同号の基準に適合することを明らかにするため道路運送法施行規則(平成7年運輸省令第14号による改正前のもの)10条2項所定の原価計算書その他運賃の額の算出の基礎を記載した書類を提出した場合には、地方運輸局長は、当該申請について法9条2項1号の基準に適合しているか否かを右提出書類に基づいて個別に審査判断すべきであることはいうまでもない。 前記事実関係等によれば、被上告人らの本件申請に係る運賃の額は、本件申請の直前に近畿運輸局長が同業他社に対してした認可に係る運賃の額…を下回るものであったが、同局長は、本件申請に係る運賃の額が右認可に係る運賃の額に達しないものであることのみを理由として直ちに本件却下決定をしたのではなく、本件申請に対する許否の判断に当たり、被上告人らの提出する原価計算書その他の書類に基づき、本件申請に係る運賃の変更が法9条2項1号の基準に適合するか否かを運賃原価算定基準に準拠して個別に審査しようとしたものと解される。前示のとおり、運賃原価算定基準に示された原価計算の方法は、同号の基準に適合するか否かの具体的判断基準として、合理性を有するものであるから、同局長において本件申請に係る運賃の変更が同号の基準に適合するか否かを運賃原価算定基準に準拠して個別に審査しようとしたことは、相当な措置であったというべきである。しかるに、前記事実関係等によれば、同局長が右審査のために被上告人らに対して右原価計算書に記載された原価計算の算定根拠等について説明を求めたにもかかわらず、被上告人らは、運賃変更の理由は消費税の転嫁である旨の陳述をしたのみで、右原価計算の算定根拠等を明らかにしなかったというのであるから、同局長において被上告人らの提出した書類によっては被上告人らの採用した原価計算の合理性について審査判断することができなかったものということができる。そうであるとすれば、本件申請について、同号の基準に適合するか否かを判断するに足りるだけの資料の提出がないとして、本件却下決定をした同局長の判断に、その裁量権を逸脱し、又はこれを濫用した違法はないというべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第24問 ウ)
道路運送法(平成12年法律第86号による改正前のもの)第9条第2項第1号は、運賃の設定及び変更の認可基準の一として、「能率的な経営の下における適正な原価を償い、かつ、適正な利潤を含むものであること。」との基準を定めているが、その趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたものである。同号の基準は抽象的、概括的なものであり、同基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とするから、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。
道路運送法(平成12年法律第86号による改正前のもの)第9条第2項第1号は、運賃の設定及び変更の認可基準の一として、「能率的な経営の下における適正な原価を償い、かつ、適正な利潤を含むものであること。」との基準を定めているが、その趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたものである。同号の基準は抽象的、概括的なものであり、同基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とするから、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平11.7.19)は、「法9条2項1号は、運賃の設定及び変更の認可基準の1として前記基準を定めているが、その趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたもの…。」とした上で、「同号の基準は抽象的、概括的なものであり、右基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。」としている。
判例(最判平11.7.19)は、「法9条2項1号は、運賃の設定及び変更の認可基準の1として前記基準を定めているが、その趣旨は、一般旅客自動車運送事業の有する公共性ないし公益性にかんがみ、安定した事業経営の確立を図るとともに、利用者に対するサービスの低下を防止することを目的としたもの…。」とした上で、「同号の基準は抽象的、概括的なものであり、右基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない。」としている。
(H28 予備 第15問 ウ)
申請に対する裁量処分を行うかどうかを判断するための審査基準となる通達があるときは、行政庁は、当該通達に拘束されるから、事案の性質に応じて当該通達の定めと異なる内容の処分をすることは許されない。
申請に対する裁量処分を行うかどうかを判断するための審査基準となる通達があるときは、行政庁は、当該通達に拘束されるから、事案の性質に応じて当該通達の定めと異なる内容の処分をすることは許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平11.7.19)は、「タクシー事業者が平均原価方式により算定された額と異なる運賃額を内容とする運賃の設定又は変更の認可申請をし、右運賃額が同号の基準に適合することを明らかにするため道路運送法施行規則…10条2項所定の原価計算書その他運賃の額の算出の基礎を記載した書類を提出した場合には、地方運輸局長は、当該申請について法9条2項1号の基準に適合しているか否かを右提出書類に基づいて個別に審査判断すべきであることはいうまでもない。」として、通達の内容に適合しない申請についても、法令の許可要件に適合しているかどうかを個別に審査すべきであることを示している。
したがって、事案の性質に応じて当該通達の定めと異なる内容の処分をすることも許される。
判例(最判平11.7.19)は、「タクシー事業者が平均原価方式により算定された額と異なる運賃額を内容とする運賃の設定又は変更の認可申請をし、右運賃額が同号の基準に適合することを明らかにするため道路運送法施行規則…10条2項所定の原価計算書その他運賃の額の算出の基礎を記載した書類を提出した場合には、地方運輸局長は、当該申請について法9条2項1号の基準に適合しているか否かを右提出書類に基づいて個別に審査判断すべきであることはいうまでもない。」として、通達の内容に適合しない申請についても、法令の許可要件に適合しているかどうかを個別に審査すべきであることを示している。
したがって、事案の性質に応じて当該通達の定めと異なる内容の処分をすることも許される。
総合メモ
公有水面の埋立てが公有水面埋立法4条1項1号の要件に適合するとした県知事の判断 最二小判平成28年12月20日
概要
公有水面埋立法第4条第1項第1号の判断につき、総合的な考慮をした上での判断が事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものでない限り、公有水面の埋立てが第1号要件に適合するとの判断に瑕疵があるとはいい難い。
判例
事案:公有水面の埋立てが公有水面埋立法4条1項1号の要件に適合するとした県知事の判断について、裁量の範囲の逸脱又はその濫用が認められ、違法であるかが問題となった。
判旨:「一般に、その取消しにより名宛人の権利又は法律上の利益が害される行政庁の処分につき、当該処分がされた時点において瑕疵があることを理由に当該行政庁が職権でこれを取消した場合において、当該処分を職権で取り消すに足りる瑕疵があるか否かが争われたときは、この点に関する裁判所の審理判断は、当該処分がされた時点における事情に照らし、当該処分に違法又は不当(以下『違法等』という。)があると認められるか否かとの観点から行われるべきものであり、そのような違法等があると認められないときには、行政庁が当該処分に違法等があることを理由としてこれを職権により取り消すことは許されず、その取消しは違法となるというべきである。
したがって、本件埋立承認取消しの適否を判断するに当たっては、本件埋立承認取消しに係る上告人の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるか否かではなく、本件埋立承認がされた時点における事情に照らし、前知事がした本件埋立承認に違法等が認められるか否かを審理判断すべきであり、本件埋立承認に違法等が認められない場合には、上告人による本件埋立承認取消しは違法となる。
公有水面埋立法は、42条1項において、国が行う埋立てにつき、当該事業を施行する官庁が都道府県知事から承認を受けるべきことを定め、その承認の要件が同条3項において準用する同法4条1項により定められているところ、同項が、同項各号の要件に適合すると認められる場合を除いては埋立ての承認又は免許(以下『承認等』という。)をすることができない旨を定めていることなどに照らすと、同項各号は、上記承認等が都道府県知事の裁量的な判断であることを前提に、上記承認等をするための最小限の要件を定めたものと解されるのであって、同項各号の規定はこのことを踏まえて解釈されるべきである。
公有水面埋立法4条1項1号の『国土利用上適正且合理的ナルコト』という要件(第1号要件)は、承認等の対象とされた公有水面の埋立てや埋立地の用途が国土利用上の観点から適正かつ合理的なものであることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての目的及び埋立地の用途に係る必要性及び公共性の有無や程度に加え、埋立てを実施することにより得られる国土利用上の効用、埋立てを実施することにより失われる国土利用上の効用等の諸般の事情を総合的に考慮することが不可欠であり、また、前記…で述べたところに照らせば、第1号要件においては当該埋立てや埋立地の用途が当該公有水面の利用方法として最も適正かつ合理的なものであることまでが求められるものではないと解される。そうすると、上記のような総合的な考慮をした上での判断が事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものでない限り、公有水面の埋立てが第1号要件に適合するとの判断に瑕疵があるとはいい難いというべきである。
これを本件についてみるに、本件埋立事業は普天間飛行場の代替施設(本件新施設等)を設置するために実施されるものであり、前知事は、同飛行場の使用状況や、同飛行場の返還及び代替施設の設置に関する我が国と米国との間の交渉経過等を踏まえた上で、前記…のとおり、騒音被害等により同飛行場の周辺住民の生活に深刻な影響が生じていることや、同飛行場の危険性の除去が喫緊の課題であることを前提に、〔1〕本件新施設等の面積や埋立面積が同飛行場の施設面積と比較して相当程度縮小されること、〔2〕沿岸域を埋め立てて滑走路延長線上を海域とすることにより航空機が住宅地の上空を飛行することが回避されること及び本件新施設等が既に米軍に提供されているキャンプ・シュワブの一部を利用して設置されるものであること等に照らし、埋立ての規模及び位置が適正かつ合理的であるなどとして、本件埋立事業が第1号要件に適合すると判断しているところ、このような前知事の判断が事実の基礎を欠くものであることや、その内容が社会通念に照らし明らかに妥当性を欠くものであるという事情は認められない。
したがって、本件埋立事業が第1号要件に適合するとした前知事の判断に違法等があるということはできない。
また、公有水面埋立法4条1項2号の『其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト』という要件(第2号要件)は、公有水面の埋立て自体により生じ得る環境保全及び災害防止上の問題を的確に把握するとともに、これに対する措置が適正に講じられていることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての実施が環境に及ぼす影響について適切に情報が収集され、これに基づいて適切な予測がされているか否かや、事業の実施により生じ得る環境への影響を回避又は軽減するために採り得る措置の有無や内容が的確に検討され、かつ、そのような措置を講じた場合の効果が適切に評価されているか否か等について、専門技術的な知見に基づいて検討することが求められるということができる。そうすると、裁判所が、公有水面の埋立てが第2号要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法等があるか否かを審査するに当たっては、専門技術的な知見に基づいてされた上記都道府県知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであると解される。
これを本件についてみるに、前記…のとおり、本件埋立事業が第2号要件に適合するか否かは沖縄県が定めた審査基準に基づいて検討されているところ、この審査基準に特段不合理な点があることはうかがわれない。また、前記…のとおり、前知事は、関係市町村長及び関係機関からの回答内容や沖縄防衛局からの回答内容を踏まえた上で、本件埋立事業が第2号要件に適合するか否かを専門技術的な知見に基づいて審査し、〔1〕護岸その他の工作物の施工、〔2〕埋立てに用いる土砂等の性質への対応、〔3〕埋立土砂等の採取,運搬及び投入、〔4〕埋立てによる水面の陸地化において、現段階で採り得ると考えられる工法、環境保全措置及び対策が講じられており、更に災害防止にも十分配慮されているとして、第2号要件に適合すると判断しているところ、その判断過程及び判断内容に特段不合理な点があることはうかがわれない。
したがって、本件埋立事業が第2号要件に適合するとした前知事の判断に違法等があるということはできない。」
判旨:「一般に、その取消しにより名宛人の権利又は法律上の利益が害される行政庁の処分につき、当該処分がされた時点において瑕疵があることを理由に当該行政庁が職権でこれを取消した場合において、当該処分を職権で取り消すに足りる瑕疵があるか否かが争われたときは、この点に関する裁判所の審理判断は、当該処分がされた時点における事情に照らし、当該処分に違法又は不当(以下『違法等』という。)があると認められるか否かとの観点から行われるべきものであり、そのような違法等があると認められないときには、行政庁が当該処分に違法等があることを理由としてこれを職権により取り消すことは許されず、その取消しは違法となるというべきである。
したがって、本件埋立承認取消しの適否を判断するに当たっては、本件埋立承認取消しに係る上告人の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるか否かではなく、本件埋立承認がされた時点における事情に照らし、前知事がした本件埋立承認に違法等が認められるか否かを審理判断すべきであり、本件埋立承認に違法等が認められない場合には、上告人による本件埋立承認取消しは違法となる。
公有水面埋立法は、42条1項において、国が行う埋立てにつき、当該事業を施行する官庁が都道府県知事から承認を受けるべきことを定め、その承認の要件が同条3項において準用する同法4条1項により定められているところ、同項が、同項各号の要件に適合すると認められる場合を除いては埋立ての承認又は免許(以下『承認等』という。)をすることができない旨を定めていることなどに照らすと、同項各号は、上記承認等が都道府県知事の裁量的な判断であることを前提に、上記承認等をするための最小限の要件を定めたものと解されるのであって、同項各号の規定はこのことを踏まえて解釈されるべきである。
公有水面埋立法4条1項1号の『国土利用上適正且合理的ナルコト』という要件(第1号要件)は、承認等の対象とされた公有水面の埋立てや埋立地の用途が国土利用上の観点から適正かつ合理的なものであることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての目的及び埋立地の用途に係る必要性及び公共性の有無や程度に加え、埋立てを実施することにより得られる国土利用上の効用、埋立てを実施することにより失われる国土利用上の効用等の諸般の事情を総合的に考慮することが不可欠であり、また、前記…で述べたところに照らせば、第1号要件においては当該埋立てや埋立地の用途が当該公有水面の利用方法として最も適正かつ合理的なものであることまでが求められるものではないと解される。そうすると、上記のような総合的な考慮をした上での判断が事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものでない限り、公有水面の埋立てが第1号要件に適合するとの判断に瑕疵があるとはいい難いというべきである。
これを本件についてみるに、本件埋立事業は普天間飛行場の代替施設(本件新施設等)を設置するために実施されるものであり、前知事は、同飛行場の使用状況や、同飛行場の返還及び代替施設の設置に関する我が国と米国との間の交渉経過等を踏まえた上で、前記…のとおり、騒音被害等により同飛行場の周辺住民の生活に深刻な影響が生じていることや、同飛行場の危険性の除去が喫緊の課題であることを前提に、〔1〕本件新施設等の面積や埋立面積が同飛行場の施設面積と比較して相当程度縮小されること、〔2〕沿岸域を埋め立てて滑走路延長線上を海域とすることにより航空機が住宅地の上空を飛行することが回避されること及び本件新施設等が既に米軍に提供されているキャンプ・シュワブの一部を利用して設置されるものであること等に照らし、埋立ての規模及び位置が適正かつ合理的であるなどとして、本件埋立事業が第1号要件に適合すると判断しているところ、このような前知事の判断が事実の基礎を欠くものであることや、その内容が社会通念に照らし明らかに妥当性を欠くものであるという事情は認められない。
したがって、本件埋立事業が第1号要件に適合するとした前知事の判断に違法等があるということはできない。
また、公有水面埋立法4条1項2号の『其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト』という要件(第2号要件)は、公有水面の埋立て自体により生じ得る環境保全及び災害防止上の問題を的確に把握するとともに、これに対する措置が適正に講じられていることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての実施が環境に及ぼす影響について適切に情報が収集され、これに基づいて適切な予測がされているか否かや、事業の実施により生じ得る環境への影響を回避又は軽減するために採り得る措置の有無や内容が的確に検討され、かつ、そのような措置を講じた場合の効果が適切に評価されているか否か等について、専門技術的な知見に基づいて検討することが求められるということができる。そうすると、裁判所が、公有水面の埋立てが第2号要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法等があるか否かを審査するに当たっては、専門技術的な知見に基づいてされた上記都道府県知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであると解される。
これを本件についてみるに、前記…のとおり、本件埋立事業が第2号要件に適合するか否かは沖縄県が定めた審査基準に基づいて検討されているところ、この審査基準に特段不合理な点があることはうかがわれない。また、前記…のとおり、前知事は、関係市町村長及び関係機関からの回答内容や沖縄防衛局からの回答内容を踏まえた上で、本件埋立事業が第2号要件に適合するか否かを専門技術的な知見に基づいて審査し、〔1〕護岸その他の工作物の施工、〔2〕埋立てに用いる土砂等の性質への対応、〔3〕埋立土砂等の採取,運搬及び投入、〔4〕埋立てによる水面の陸地化において、現段階で採り得ると考えられる工法、環境保全措置及び対策が講じられており、更に災害防止にも十分配慮されているとして、第2号要件に適合すると判断しているところ、その判断過程及び判断内容に特段不合理な点があることはうかがわれない。
したがって、本件埋立事業が第2号要件に適合するとした前知事の判断に違法等があるということはできない。」
過去問・解説
(R6 予備 第16問 ウ)
公有水面埋立法第4条第1項第1号が定める要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法があるか否かに関する裁判所の審査は、専門技術的な知見に基づいてされた当該知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われる。
【参照条文】公有水面埋立法第4条 都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ許ヲ為スコトヲ得ズ
一 国土利用上適正且合理的ナルコト
二 其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
三~六 (略)
2、3 (略)
公有水面埋立法第4条第1項第1号が定める要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法があるか否かに関する裁判所の審査は、専門技術的な知見に基づいてされた当該知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われる。
【参照条文】公有水面埋立法第4条 都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ許ヲ為スコトヲ得ズ
一 国土利用上適正且合理的ナルコト
二 其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
三~六 (略)
2、3 (略)
(正答)✕
(解説)
判例(最判平28.12.20)は、「公有水面埋立法4条1項1号の『国土利用上適正且合理的ナルコト』という要件(第1号要件)は、承認等の対象とされた公有水面の埋立てや埋立地の用途が国土利用上の観点から適正かつ合理的なものであることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての目的及び埋立地の用途に係る必要性及び公共性の有無や程度に加え、埋立てを実施することにより得られる国土利用上の効用、埋立てを実施することにより失われる国土利用上の効用等の諸般の事情を総合的に考慮することが不可欠であり、また、前記…で述べたところに照らせば、第1号要件においては当該埋立てや埋立地の用途が当該公有水面の利用方法として最も適正かつ合理的なものであることまでが求められるものではないと解される。そうすると、上記のような総合的な考慮をした上での判断が事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものでない限り、公有水面の埋立てが第1号要件に適合するとの判断に瑕疵があるとはいい難いというべきである。」としている。
したがって、公有水面埋立法第4条第1項第1号が定める要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法があるか否かに関する裁判所の審査は、専門技術的な知見に基づいてされた当該知事の判断に不合理な点があるか否かという観点ではなく、総合的な考慮をした上での判断が事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものであるか否かという観点で行われる。
判例(最判平28.12.20)は、「公有水面埋立法4条1項1号の『国土利用上適正且合理的ナルコト』という要件(第1号要件)は、承認等の対象とされた公有水面の埋立てや埋立地の用途が国土利用上の観点から適正かつ合理的なものであることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての目的及び埋立地の用途に係る必要性及び公共性の有無や程度に加え、埋立てを実施することにより得られる国土利用上の効用、埋立てを実施することにより失われる国土利用上の効用等の諸般の事情を総合的に考慮することが不可欠であり、また、前記…で述べたところに照らせば、第1号要件においては当該埋立てや埋立地の用途が当該公有水面の利用方法として最も適正かつ合理的なものであることまでが求められるものではないと解される。そうすると、上記のような総合的な考慮をした上での判断が事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものでない限り、公有水面の埋立てが第1号要件に適合するとの判断に瑕疵があるとはいい難いというべきである。」としている。
したがって、公有水面埋立法第4条第1項第1号が定める要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法があるか否かに関する裁判所の審査は、専門技術的な知見に基づいてされた当該知事の判断に不合理な点があるか否かという観点ではなく、総合的な考慮をした上での判断が事実の基礎を欠いたり社会通念に照らし明らかに妥当性を欠いたりするものであるか否かという観点で行われる。
(R6 予備 第16問 エ)
公有水面埋立法第4条第1項第2号が定める要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法があるか否かに関する裁判所の審査は、専門技術的な知見に基づいてされた当該知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われる。
【参照条文】公有水面埋立法第4条 都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ許ヲ為スコトヲ得ズ
一 国土利用上適正且合理的ナルコト
二 其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
三~六 (略)
2、3 (略)
公有水面埋立法第4条第1項第2号が定める要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法があるか否かに関する裁判所の審査は、専門技術的な知見に基づいてされた当該知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われる。
【参照条文】公有水面埋立法第4条 都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ許ヲ為スコトヲ得ズ
一 国土利用上適正且合理的ナルコト
二 其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト
三~六 (略)
2、3 (略)
(正答)〇
(解説)
判例(最判平28.12.20)は、「公有水面埋立法4条1項2号の『其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト』という要件(第2号要件)は、公有水面の埋立て自体により生じ得る環境保全及び災害防止上の問題を的確に把握するとともに、これに対する措置が適正に講じられていることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての実施が環境に及ぼす影響について適切に情報が収集され、これに基づいて適切な予測がされているか否かや、事業の実施により生じ得る環境への影響を回避又は軽減するために採り得る措置の有無や内容が的確に検討され、かつ、そのような措置を講じた場合の効果が適切に評価されているか否か等について、専門技術的な知見に基づいて検討することが求められるということができる。そうすると、裁判所が、公有水面の埋立てが第2号要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法等があるか否かを審査するに当たっては、専門技術的な知見に基づいてされた上記都道府県知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべき…。」としている。
判例(最判平28.12.20)は、「公有水面埋立法4条1項2号の『其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト』という要件(第2号要件)は、公有水面の埋立て自体により生じ得る環境保全及び災害防止上の問題を的確に把握するとともに、これに対する措置が適正に講じられていることを承認等の要件とするものと解されるところ、その審査に当たっては、埋立ての実施が環境に及ぼす影響について適切に情報が収集され、これに基づいて適切な予測がされているか否かや、事業の実施により生じ得る環境への影響を回避又は軽減するために採り得る措置の有無や内容が的確に検討され、かつ、そのような措置を講じた場合の効果が適切に評価されているか否か等について、専門技術的な知見に基づいて検討することが求められるということができる。そうすると、裁判所が、公有水面の埋立てが第2号要件に適合するとした都道府県知事の判断に違法等があるか否かを審査するに当たっては、専門技術的な知見に基づいてされた上記都道府県知事の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべき…。」としている。
総合メモ
国による教育内容統制の限界と教育権 最大判昭和51年5月21日
概要
昭和36年度全国中学校一せい学力調査は、教育基本法10条1項にいう教育に対する「不当な支配」として同条に違反するものではない。
判例
事案:文部省実施の学力テストによる学力調査に反対するXらが右調査の実施を阻止しようと決意し、説得隊員70名と共謀の上校舎内に立入り、校長を取り囲んでその行動の自由を束縛したとして起訴された事案において、全国中学校一せい学力調査は教育の地方自治を定める教育基本法10条に違反しないかが問題となった。
判旨:「子どもの教育が、教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ、子どもの個性に応じて弾力的に行われなければならず、そこに教師の自由な創意と工夫の余地が要請されることは原判決の説くとおりであるし、また、教基法が前述のように戦前における教育に対する過度の国家的介入、統制に対する反省から生まれたものであることに照らせば、同法10条が教育に対する権力的介入、特に行政権力によるそれを警戒し、これに対して抑制的態度を表明したものと解することは、それなりの合理性を有するけれども、このことから、教育内容に対する行政の権力的介入が一切排除されているものであるとの結論を導き出すことは、早計である。さきにも述べたように、憲法上、国は、適切な教育政策を樹立、実施する権能を有し、国会は、国の立法機関として、教育の内容及び方法についても、法律により、直接に又は行政機関に授権して必要かつ合理的な規制を施す権限を有するのみならず、子どもの利益のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益のためにそのような規制を施すことが要請される場合もありうるのであり、国会が教基法においてこのような権限の行使を自己限定したものと解すべき根拠はない。むしろ教基法10条は、国の教育統制権能を前提としつつ、教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き、その整備確立のための措置を講ずるにあたっては、教育の自主性尊重の見地から、これに対する『不当な支配』となることのないようにすべき旨の限定を付したところにその意味があり、したがって、教育に対する行政権力の不当、不要の介入は排除されるべきであるとしても、許容される目的のために心要かつ合理的と認められるそれは、たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても、必ずしも同条の禁止するところではないと解するのが、相当である。
もっとも、原判決も、教育の内容及び方法に対する教育行政機関の介入が一切排除されていると解しているわけではなく、前述のように、権力的介入としては教育機関の種類等に応じた大綱的基準の設定を超えることができないとするにとどまっている。原判決が右にいう大綱的基準としてどのようなものを考えているかは必ずしも明らかでないが、これを国の教育行政機関についていえば、原判決において、前述のような教師の自由な教育活動の要請と現行教育法体制における教育の地方自治の原則に照らして設定されるべき基準は全国的観点からする大綱的なものに限定されるべきことを指摘し、かつ、後述する文部大臣の定めた中学校学習指導要領を右の大綱的基準の限度を超えたものと断じているところからみれば、原判決のいう大綱的基準とは、弁護人の主張するように、教育課程の構成要素、教科名、授業時数等のほか、教科内容、教育方法については、性質上全国的画一性を要する度合が強く、指導助言行政その他国家立法以外の手段ではまかないきれない、ごく大綱的な事項を指しているもののように考えられる。
思うに、国の教育行政機関が法律の授権に基づいて義務教育に属する普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には、教師の創意工夫の尊重等教基法10条に関してさきに述べたところのほか、後述する教育に関する地方自治の原則をも考慮し、右教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的なそれにとどめられるべきものと解しなければならないけれども、右の大綱的基準の範囲に関する原判決の見解は、狭きに失し、これを採用することはできないと考える。これを前記学習指導要領についていえば、文部大臣は、学校教育法38条、106条による中学校の教科に関する事項を定める権限に基づき、普通教育に属する中学校における教育の内容及び方法につき、上述のような教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準を設定することができるものと解すべきところ、本件当時の中学校学習指導要領の内容を通覧するのに、おおむね、中学校において地域差、学校差を超えて全国的に共通なものとして教授されることが必要な最小限度の基準と考えても必ずしも不合理とはいえない事項が、その根幹をなしていると認められるのであり、その中には、ある程度細目にわたり、かつ、詳細に過ぎ、また、必ずしも法的拘束力をもって地方公共団体を制約し、又は教師を強制するのに適切でなく、また、はたしてそのように制約し、ないしは強制する趣旨であるかどうか疑わしいものが幾分含まれているとしても、右指導要領の下における教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や、地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されており、全体としてはなお全国的な大綱的基準としての性格をもつものと認められるし、また、その内容においても、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていないのである。それ故、上記指導要領は、全体としてみた場合、教育政策上の当否はともかくとして、少なくとも法的見地からは、上記目的のために必要かつ合理的な基準の設定として是認することができるものと解するのが、相当である。」
判旨:「子どもの教育が、教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ、子どもの個性に応じて弾力的に行われなければならず、そこに教師の自由な創意と工夫の余地が要請されることは原判決の説くとおりであるし、また、教基法が前述のように戦前における教育に対する過度の国家的介入、統制に対する反省から生まれたものであることに照らせば、同法10条が教育に対する権力的介入、特に行政権力によるそれを警戒し、これに対して抑制的態度を表明したものと解することは、それなりの合理性を有するけれども、このことから、教育内容に対する行政の権力的介入が一切排除されているものであるとの結論を導き出すことは、早計である。さきにも述べたように、憲法上、国は、適切な教育政策を樹立、実施する権能を有し、国会は、国の立法機関として、教育の内容及び方法についても、法律により、直接に又は行政機関に授権して必要かつ合理的な規制を施す権限を有するのみならず、子どもの利益のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益のためにそのような規制を施すことが要請される場合もありうるのであり、国会が教基法においてこのような権限の行使を自己限定したものと解すべき根拠はない。むしろ教基法10条は、国の教育統制権能を前提としつつ、教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き、その整備確立のための措置を講ずるにあたっては、教育の自主性尊重の見地から、これに対する『不当な支配』となることのないようにすべき旨の限定を付したところにその意味があり、したがって、教育に対する行政権力の不当、不要の介入は排除されるべきであるとしても、許容される目的のために心要かつ合理的と認められるそれは、たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても、必ずしも同条の禁止するところではないと解するのが、相当である。
もっとも、原判決も、教育の内容及び方法に対する教育行政機関の介入が一切排除されていると解しているわけではなく、前述のように、権力的介入としては教育機関の種類等に応じた大綱的基準の設定を超えることができないとするにとどまっている。原判決が右にいう大綱的基準としてどのようなものを考えているかは必ずしも明らかでないが、これを国の教育行政機関についていえば、原判決において、前述のような教師の自由な教育活動の要請と現行教育法体制における教育の地方自治の原則に照らして設定されるべき基準は全国的観点からする大綱的なものに限定されるべきことを指摘し、かつ、後述する文部大臣の定めた中学校学習指導要領を右の大綱的基準の限度を超えたものと断じているところからみれば、原判決のいう大綱的基準とは、弁護人の主張するように、教育課程の構成要素、教科名、授業時数等のほか、教科内容、教育方法については、性質上全国的画一性を要する度合が強く、指導助言行政その他国家立法以外の手段ではまかないきれない、ごく大綱的な事項を指しているもののように考えられる。
思うに、国の教育行政機関が法律の授権に基づいて義務教育に属する普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には、教師の創意工夫の尊重等教基法10条に関してさきに述べたところのほか、後述する教育に関する地方自治の原則をも考慮し、右教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的なそれにとどめられるべきものと解しなければならないけれども、右の大綱的基準の範囲に関する原判決の見解は、狭きに失し、これを採用することはできないと考える。これを前記学習指導要領についていえば、文部大臣は、学校教育法38条、106条による中学校の教科に関する事項を定める権限に基づき、普通教育に属する中学校における教育の内容及び方法につき、上述のような教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準を設定することができるものと解すべきところ、本件当時の中学校学習指導要領の内容を通覧するのに、おおむね、中学校において地域差、学校差を超えて全国的に共通なものとして教授されることが必要な最小限度の基準と考えても必ずしも不合理とはいえない事項が、その根幹をなしていると認められるのであり、その中には、ある程度細目にわたり、かつ、詳細に過ぎ、また、必ずしも法的拘束力をもって地方公共団体を制約し、又は教師を強制するのに適切でなく、また、はたしてそのように制約し、ないしは強制する趣旨であるかどうか疑わしいものが幾分含まれているとしても、右指導要領の下における教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や、地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されており、全体としてはなお全国的な大綱的基準としての性格をもつものと認められるし、また、その内容においても、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていないのである。それ故、上記指導要領は、全体としてみた場合、教育政策上の当否はともかくとして、少なくとも法的見地からは、上記目的のために必要かつ合理的な基準の設定として是認することができるものと解するのが、相当である。」
過去問・解説
(R6 予備 第24問 ウ)
地方の実情に適応した教育を行わせることを旨とする教育に関する地方自治の原則によれば、国の行政機関は、地方公共団体で設置される教育委員会が有する教育に関する固有の権限に対して介入することができない。
地方の実情に適応した教育を行わせることを旨とする教育に関する地方自治の原則によれば、国の行政機関は、地方公共団体で設置される教育委員会が有する教育に関する固有の権限に対して介入することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭51.5.21)は、「教育に対する行政権力の不当、不要の介入は排除されるべきであるとしても、許容される目的のために心要かつ合理的と認められるそれは、たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても、必ずしも同条の禁止するところではない…。」としている。
したがって、教育委員会が有する教育に関する固有の権限に対する介入も、許される場合がある。
判例(最大判昭51.5.21)は、「教育に対する行政権力の不当、不要の介入は排除されるべきであるとしても、許容される目的のために心要かつ合理的と認められるそれは、たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても、必ずしも同条の禁止するところではない…。」としている。
したがって、教育委員会が有する教育に関する固有の権限に対する介入も、許される場合がある。