現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください
行政法 産米供出個人割当額決定の方法 最二小判昭和30年6月24日
概要
産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合でも、右決定に当る村長は、この点につき一部落内の特定の生産者を何等いわれがなく他の生産者と区別して取り扱う裁量権を有するものではないが、判示の事実関係(判決理由参照)の下では、一部落内の特定の生産者をこの点につき他の生産者と区別して取り扱ったとしても、これをもって、違法の裁量権の行使ということはできない。
判例
事案:Xが、Y村長らに対し、産米供出個人割当通知の取消しを求めて提訴した事案において、産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合における、右決定に当たる村長の裁量権の限界が問題となった。
判旨:「本件供出個人割当通知が行われた当時における法令(食糧管理法3条、同法施行規則1条、3条、昭和23年農林省令一一5号附則2項)によれば、供出割当の方法については、『市町村長が、知事の指示に従い、食糧調整委員会の議決を経て、供出割当数量を定め、遅滞なくこれを生産者に通知する』との趣旨の定めがあるにとどまり、その方法として、いわゆる事前割当の方法(生産開始前に予め部落内の生産者相互の協議を経て割当額を決定通知する方法)によるべきかどうか、また割当通知の時期を何時とすべきか等については、何等具体的な定めがなかったことは明らかである。従って、これらの点についてどのような措置をとるかは、一応、行政庁の裁量に任されていたものと解さざるを得ない。もっとも、かような場合においても、行政庁は、何等いわれがなく特定の個人を差別的に取り扱いこれに不利益を及ぼす自由を有するものではなく、この意味においては、行政庁の裁量権には一定の限界があるものと解すべきである。しかし、原審の認定するところによれば、同じ部落内の上告人以外の生産者に対しては、事前割当の方法により昭和23年5月10日頃に個人割当の通知が行われたに対し、上告人は、従来から供出に非協力であり、これにつき他の部落と協議することは不可能と思われる状況にあったため、上告人に対しては、別に、食糧調整委員会の議決を経て、産米作付反別その他地力等につき所要の調査を遂げ、とくに上告人が本来の農家でないことも考慮してその負担を軽減し、同年12月24日に供出割当数量を通知したというのである。かような事情の下では、上告人が事前割当の手続に参加し協議に与る機会を失ったとしてもやむを得ないところであり、また上告人については個別的に生産の状況を調査するため上記の程度において割当通知が遅延したとしても、強いてこれをとがめ得ない事情にあったものといわねばならない。 しかも、供出割当の制度は、結局において、生産の実情に応じて供出義務を負担させることにあるものと解すべきであるが、原審の認定するところによれば、同年度における上告人の実際の収穫量は、右の割当数量を供出するに十分余裕のある状況にあったというのであるから、前記の措置により上告人が特別に不利益を被ったものとは認められない。以上のような事情を綜合して考えれば、被上告人が供出割当について上告人を前記の程度において区別して取り扱ったとしても、これをもっていわれのない差別取扱による違法処分というには当らず、また右措置が上告人に対する人格蔑視に基く違法処分であるということもできないものといわねばならない。それ故、憲法13条、14条の精神を援用して本件供出割当通知を違法処分と解すべきものとする論旨は採用するに足りず、右割当通知が違法であることを前提とする憲法29条違反の論旨は、前提を欠くものとして採用し得ない。」
判旨:「本件供出個人割当通知が行われた当時における法令(食糧管理法3条、同法施行規則1条、3条、昭和23年農林省令一一5号附則2項)によれば、供出割当の方法については、『市町村長が、知事の指示に従い、食糧調整委員会の議決を経て、供出割当数量を定め、遅滞なくこれを生産者に通知する』との趣旨の定めがあるにとどまり、その方法として、いわゆる事前割当の方法(生産開始前に予め部落内の生産者相互の協議を経て割当額を決定通知する方法)によるべきかどうか、また割当通知の時期を何時とすべきか等については、何等具体的な定めがなかったことは明らかである。従って、これらの点についてどのような措置をとるかは、一応、行政庁の裁量に任されていたものと解さざるを得ない。もっとも、かような場合においても、行政庁は、何等いわれがなく特定の個人を差別的に取り扱いこれに不利益を及ぼす自由を有するものではなく、この意味においては、行政庁の裁量権には一定の限界があるものと解すべきである。しかし、原審の認定するところによれば、同じ部落内の上告人以外の生産者に対しては、事前割当の方法により昭和23年5月10日頃に個人割当の通知が行われたに対し、上告人は、従来から供出に非協力であり、これにつき他の部落と協議することは不可能と思われる状況にあったため、上告人に対しては、別に、食糧調整委員会の議決を経て、産米作付反別その他地力等につき所要の調査を遂げ、とくに上告人が本来の農家でないことも考慮してその負担を軽減し、同年12月24日に供出割当数量を通知したというのである。かような事情の下では、上告人が事前割当の手続に参加し協議に与る機会を失ったとしてもやむを得ないところであり、また上告人については個別的に生産の状況を調査するため上記の程度において割当通知が遅延したとしても、強いてこれをとがめ得ない事情にあったものといわねばならない。 しかも、供出割当の制度は、結局において、生産の実情に応じて供出義務を負担させることにあるものと解すべきであるが、原審の認定するところによれば、同年度における上告人の実際の収穫量は、右の割当数量を供出するに十分余裕のある状況にあったというのであるから、前記の措置により上告人が特別に不利益を被ったものとは認められない。以上のような事情を綜合して考えれば、被上告人が供出割当について上告人を前記の程度において区別して取り扱ったとしても、これをもっていわれのない差別取扱による違法処分というには当らず、また右措置が上告人に対する人格蔑視に基く違法処分であるということもできないものといわねばならない。それ故、憲法13条、14条の精神を援用して本件供出割当通知を違法処分と解すべきものとする論旨は採用するに足りず、右割当通知が違法であることを前提とする憲法29条違反の論旨は、前提を欠くものとして採用し得ない。」