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行政法 宅地建物取引業者に対する知事の監督処分権限の不行使 最二小判平成元年11月24日

概要
知事が宅地建物取引業者に対し宅地建物取引業法65条2項による業務停止処分ないし同法66条9号による免許取消処分をしなかった場合であっても、知事の右監督処分権限の不行使は、具体的事情の下において、右権限が付与された趣旨・目的に照らして著しく不合理と認められるときでない限り、右業者の不正な行為により損害を被った取引関係者に対する関係において国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けない。
判例
事案:詐欺的不動産取引によって損害を被ったXが、Y知事は宅地建物取引業法に違反して加害者たるAに免許を付与し、これを取り消さず、かつ更新したとして、Y県に対し国家賠償法に基づく損害賠償を請求した事案において、宅地建物取引業者に対する知事の監督処分権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるかが問題となった。

判旨:「宅地建物取引業法(昭和55年法律第56号による改正前のもの。以下『法』という。)は、第2章において、宅地建物取引業を営む者(以下『宅建業者』という。)につき免許制度を設け、その事務所の設置場所が2以上の都道府県にわたるか否かにより免許権者を建設大臣又は都道府県知事(以下『知事等』という。)に区分し(3条1項)、免許の欠格要件を定め(5条1項)、この基準に従って免許を付与し、3年ごとにその更新を受けさせ(3条2項)、免許を受けない者の営業等を禁止し(12条)、第6章において、免許を付与された宅建業者に対する知事等の監督処分を定め、右業者が免許制度を定めた法の趣旨に反する一定の事由に該当する場合において、業務の停止(65条2項)、免許の取消(66条)をはじめ、必要な指導、助言及び勧告(71条)、立入検査等(72条)を行う権限を知事等に付与し、業務の停止又は免許の取消を行うに当たっては、公開の聴聞(69条)及び公告(70条1項)の手続を義務づけている。法がかかる免許制度を設けた趣旨は、直接的には、宅地建物取引の安全を害するおそれのある宅建業者の関与を未然に排除することにより取引の公正を確保し、宅地建物の円滑な流通を図るところにあり、監督処分権限も、この免許制度及び法が定める各種規制の実効を確保する趣旨に出たものにほかならない。もっとも、法は、その目的の1つとして購入者等の利益の保護を掲げ(1条)、宅建業者が業務に関し取引関係者に損害を与え又は与えるおそれが大であるときに必要な指示をする権限を知事等に付与し(65条1項1号)、営業保証金の供託を義務づける(25条、26条)など、取引関係者の利益の保護を顧慮した規定を置いており、免許制度も、究極的には取引関係者の利益の保護に資するものではあるが、前記のような趣旨のものであることを超え、免許を付与した宅建業者の人格・資質等を一般的に保証し、ひいては当該業者の不正な行為により個々の取引関係者が被る具体的な損害の防止、救済を制度の直接的な目的とするものとはにわかに解し難く、かかる損害の救済は一般の不法行為規範等に委ねられているというべきであるから、知事等による免許の付与ないし更新それ自体は、法所定の免許基準に適合しない場合であっても、当該業者との個々の取引関係者に対する関係において直ちに国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるものではないというべきである。また、業務の停止ないし免許の取消は、当該宅建業者に対する不利益処分であり、その営業継続を不能にする事態を招き、既存の取引関係者の利害にも影響するところが大きく、そのゆえに前記のような聴聞、公告の手続が定められているところ、業務の停止に関する知事等の権限がその裁量により行使されるべきことは法65条2項の規定上明らかであり、免許の取消については法66条各号の1に該当する場合に知事等がこれをしなければならないと規定しているが、業務の停止事由に該当し情状が特に重いときを免許の取消事由と定めている同条9号にあっては、その要件の認定に裁量の余地があるのであって、これらの処分の選択、その権限行使の時期等は、知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられているというべきである。したがって、当該業者の不正な行為により個々の取引関係者が損害を被った場合であっても、具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないといわなければならない。」
過去問・解説
(H18 司法 第21問 エ)
宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者の不正な行為により個々の取引関係者が被る損害の防止・救済を目的とするものではないから、当該業者に対する行政庁の監督処分権限の不行使が著しく不合理と認められる場合でも、当該権限の不行使は国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受けるものではない。

(正答)

(解説)
判例(最判平元.11.24)は、「法は、…免許を付与した宅建業者の人格・資質等を一般的に保証し、ひいては当該業者の不正な行為により個々の取引関係者が被る具体的な損害の防止、救済を制度の直接的な目的とするものとはにわかに解し難く、かかる損害の救済は一般の不法行為規範等に委ねられているというべきである…。」とした上で、「当該業者の不正な行為により個々の取引関係者が損害を被った場合であっても、具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないといわなければならない。」としている。
したがって、行政庁の監督処分権限の不行使が著しく不合理と認められる場合には、当該権限の不行使が国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受け得る。

(H26 共通 第24問 ウ)
規制を目的とする不利益処分について、処分の根拠法令が処分を行うか否かの点で行政庁に効果裁量を認めている場合には、処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判平1.11.24)は、「業務の停止に関する知事等の権限がその裁量により行使されるべきことは法65条2項の規定上明らかであり、免許の取消については法66条各号の1に該当する場合に知事等がこれをしなければならないと規定しているが、業務の停止事由に該当し情状が特に重いときを免許の取消事由と定めている同条9号にあっては、その要件の認定に裁量の余地があるのであって、これらの処分の選択、その権限行使の時期等は、知事等の専門的判断に基づく合理的裁量に委ねられているというべきである。」として、処分の根拠法令に効果裁量を認めた上で、「当該業者の不正な行為により個々の取引関係者が損害を被った場合であっても、具体的事情の下において、知事等に監督処分権限が付与された趣旨・目的に照らし、その不行使が著しく不合理と認められるときでない限り、右権限の不行使は、当該取引関係者に対する関係で国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないといわなければならない。」としている。
したがって、規制を目的とする不利益処分について、処分の根拠法令が処分を行うか否かの点で行政庁に効果裁量を認めている場合であっても、処分を行わないという行政庁の不作為が違法となることがある。
総合メモ
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