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不法行為
損害賠償請求と主張立証責任 大判明治38年6月19日
総合メモ
不法行為による死亡に基づく損害賠償額から生命保険金を控除することの適否 最二小判昭和39年9月25日
概要
生命保険契約を締結していた被保険者が不法行為により死亡し、被保険者の相続人が当該生命保険契約に基づいて生命保険金の給付を受けた場合において、当該相続人が不法行為者に対して損害賠償請求をしたときは、不法行為による損害賠償額から、当該生命保険金額を控除すべきでない。
判例
事案:生命保険契約を締結していた被保険者が不法行為により死亡し、当該被保険者の相続人が当該生命保険契約に基づいて生命保険金の給付を受けた場合において、不法行為による損害賠償額から、当該生命保険金額を控除すべきかが問題となった。
判旨:「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たるAに保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。」
判旨:「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人たるAに保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 司法 第17問 3)
生命保険契約を締結していた被保険者が、医師の過失による医療事故によって死亡し、被保険者の相続人が当該生命保険契約により死亡保険金の給付を受けた場合において、その相続人が医師に対して債務不履行を理由に損害賠償を請求したときは、賠償されるべき損害額から当該保険金額が控除される。
生命保険契約を締結していた被保険者が、医師の過失による医療事故によって死亡し、被保険者の相続人が当該生命保険契約により死亡保険金の給付を受けた場合において、その相続人が医師に対して債務不履行を理由に損害賠償を請求したときは、賠償されるべき損害額から当該保険金額が控除される。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭39.9.25)は、本肢と同種の事案において、「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人…に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭39.9.25)は、本肢と同種の事案において、「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人…に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。」と判示している。
(R1 共通 第29問 オ)
不法行為により死亡した被害者の相続人が加害者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した場合、裁判所は、生命保険契約に基づいて給付される死亡保険金の額を、損益相殺により損害賠償額から控除することができる。
不法行為により死亡した被害者の相続人が加害者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した場合、裁判所は、生命保険契約に基づいて給付される死亡保険金の額を、損益相殺により損害賠償額から控除することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭39.9.25)は、本肢と同種の事案において、「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人…に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭39.9.25)は、本肢と同種の事案において、「生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為により被保険者が死亡したためにその相続人…に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはないと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
土地の不法占拠と損害賠償請求 最二小判昭和41年6月24日
過去問・解説
(H27 共通 第15問 イ)
家屋の賃借人が賃貸借契約の終了後もその家屋を賃貸人に返還しない場合、賃貸人は、その賃貸借契約で定められた賃料に相当する額の損害賠償を賃借人に請求することができるが、賃貸人がその賃貸借契約の終了後に別の者との間でその家屋の賃貸借契約を締結し、その賃貸借契約で定められた賃料が従前の賃料を上回るときであっても、その新たな賃料に基づく損害賠償を賃借人に請求することはできない。
家屋の賃借人が賃貸借契約の終了後もその家屋を賃貸人に返還しない場合、賃貸人は、その賃貸借契約で定められた賃料に相当する額の損害賠償を賃借人に請求することができるが、賃貸人がその賃貸借契約の終了後に別の者との間でその家屋の賃貸借契約を締結し、その賃貸借契約で定められた賃料が従前の賃料を上回るときであっても、その新たな賃料に基づく損害賠償を賃借人に請求することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.6.24)は、「…土地の不法占拠によって土地所有者の蒙る損害の額は、当該土地を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額にあたるものと解する…。」と判示している。したがって、家屋の賃借人が賃貸借契約の終了後もその家屋を賃貸人に返還しない場合において、その賃貸借契約で定められた賃料に相当する額が、当該家屋を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額を超えるときは、当該賃貸借契約で定められた賃料に相当する額の損害賠償を賃借人に請求することはできない。よって、本肢前段は誤っている。
そして、賃貸人が当該賃貸借契約の終了後に別の者との間でその家屋の賃貸借契約を締結し、その賃貸借契約で定められた賃料が従前の賃料を上回るときであっても、当該新たな賃貸借契約の賃料が、当該家屋を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額の範囲内にとどまる額であれば、賃貸人は、その新たな賃料に基づく損害賠償を賃借人に請求することができる。したがって、本肢後段も誤っている。
判例(最判昭41.6.24)は、「…土地の不法占拠によって土地所有者の蒙る損害の額は、当該土地を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額にあたるものと解する…。」と判示している。したがって、家屋の賃借人が賃貸借契約の終了後もその家屋を賃貸人に返還しない場合において、その賃貸借契約で定められた賃料に相当する額が、当該家屋を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額を超えるときは、当該賃貸借契約で定められた賃料に相当する額の損害賠償を賃借人に請求することはできない。よって、本肢前段は誤っている。
そして、賃貸人が当該賃貸借契約の終了後に別の者との間でその家屋の賃貸借契約を締結し、その賃貸借契約で定められた賃料が従前の賃料を上回るときであっても、当該新たな賃貸借契約の賃料が、当該家屋を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額の範囲内にとどまる額であれば、賃貸人は、その新たな賃料に基づく損害賠償を賃借人に請求することができる。したがって、本肢後段も誤っている。
総合メモ
不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用の賠償 最三小判昭和58年9月6日
概要
不法行為の被害者が支出した当該不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用につき、不法行為の加害者が負担すべき損害賠償債務は、当該不法行為の時に発生し、かつ、遅滞に陥る。
判例
事案:不法行為の被害者が、当該不法行為と相当因果関係に立つ損害である弁護士費用を支出した場合において、当該弁護士費用にかかる加害者の損害賠償債務が、どの時点で発生し、遅滞に陥るかが問題となった。
判旨:「不法行為の被害者が自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害であり、被害者が加害者に対しその賠償を求めることができると解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和41年(オ)第280号同44年2月27日第一小法廷判決・民集23巻2号441頁)とするところである。しかして、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきところ(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)、弁護士費用に関する前記損害は、被害者が当該不法行為に基づくその余の費目の損害の賠償を求めるについて弁護士に訴訟の追行を委任し、かつ、相手方に対して勝訴した場合に限つて、弁護士費用の全部又は一部が損害と認められるという性質のものであるが、その余の費目の損害と同一の不法行為による身体傷害など同一利益の侵害に基づいて生じたものである場合には1個の損害賠償債務の一部を構成するものというべきであるから(最高裁昭和43年(オ)第943号同48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3号419頁参照)、右弁護士費用につき不法行為の加害者が負担すべき損害賠償債務も、当該不法行為の時に発生し、かつ、遅滞に陥るものと解するのが相当である。なお、右損害の額については、被害者が弁護士費用につき不法行為時からその支払時までの間に生ずることのありうべき中間利息を不当に利得することのないように算定すべきものであることは、いうまでもない。」
判旨:「不法行為の被害者が自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害であり、被害者が加害者に対しその賠償を求めることができると解すべきことは、当裁判所の判例(最高裁昭和41年(オ)第280号同44年2月27日第一小法廷判決・民集23巻2号441頁)とするところである。しかして、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥るものと解すべきところ(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)、弁護士費用に関する前記損害は、被害者が当該不法行為に基づくその余の費目の損害の賠償を求めるについて弁護士に訴訟の追行を委任し、かつ、相手方に対して勝訴した場合に限つて、弁護士費用の全部又は一部が損害と認められるという性質のものであるが、その余の費目の損害と同一の不法行為による身体傷害など同一利益の侵害に基づいて生じたものである場合には1個の損害賠償債務の一部を構成するものというべきであるから(最高裁昭和43年(オ)第943号同48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3号419頁参照)、右弁護士費用につき不法行為の加害者が負担すべき損害賠償債務も、当該不法行為の時に発生し、かつ、遅滞に陥るものと解するのが相当である。なお、右損害の額については、被害者が弁護士費用につき不法行為時からその支払時までの間に生ずることのありうべき中間利息を不当に利得することのないように算定すべきものであることは、いうまでもない。」
総合メモ
内縁不当破棄と不法行為の成否 最二小判昭和33年4月11日
概要
内縁が正当の理由なく破棄された場合には、不法行為責任を肯定することができる。
判例
事案:内縁が正当な理由なく破棄された場合において、不法行為責任が認められるかが問題となった。
判旨:「いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては、婚姻関係と異るものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。そして民法709条にいう「権利」は、厳密な意味で権利と云えなくても、法律上保護せらるべき利益があれば足りるとされるのであり(大審院大正14年(オ)第625号、同年11月28日判決、民事判例集4巻670頁、昭和6年(オ)第2771号、同7年10月6日判決、民事判例集11巻2023頁参照)、内縁も保護せられるべき生活関係に外ならないのであるから、内縁が正当の理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるのである。されば、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。」
判旨:「いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては、婚姻関係と異るものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。そして民法709条にいう「権利」は、厳密な意味で権利と云えなくても、法律上保護せらるべき利益があれば足りるとされるのであり(大審院大正14年(オ)第625号、同年11月28日判決、民事判例集4巻670頁、昭和6年(オ)第2771号、同7年10月6日判決、民事判例集11巻2023頁参照)、内縁も保護せられるべき生活関係に外ならないのであるから、内縁が正当の理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるのである。されば、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。」
過去問・解説
(H23 共通 第31問 エ)
判例によれば、内縁の夫婦関係がその一方により正当の理由なく破棄されたため他の一方が精神的損害を被った場合には、当該他の一方は、不法行為を理由として慰謝料の支払を請求することができる。
判例によれば、内縁の夫婦関係がその一方により正当の理由なく破棄されたため他の一方が精神的損害を被った場合には、当該他の一方は、不法行為を理由として慰謝料の支払を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭33.4.11)は、「内縁が正当の理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるのである。されば、内縁を不当に破棄された者は、…不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。」と判示している。
判例(最判昭33.4.11)は、「内縁が正当の理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるのである。されば、内縁を不当に破棄された者は、…不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。」と判示している。
(H25 司法 第31問 イ)
A男とB女は内縁関係にある。Aが内縁関係を正当な理由なく一方的に破棄した場合、Bは、Aに対し、債務不履行を理由として損害賠償を請求することができるが、不法行為を理由として損害賠償を請求することはできない。
A男とB女は内縁関係にある。Aが内縁関係を正当な理由なく一方的に破棄した場合、Bは、Aに対し、債務不履行を理由として損害賠償を請求することができるが、不法行為を理由として損害賠償を請求することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭33.4.11)は、本肢と同種の事案において、「内縁が正当の理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるのである。されば、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。」と判示している。したがって、本肢においても、Bは、Aに対し、債務不履行を理由として損害賠償を請求することができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を請求することもできる。
判例(最判昭33.4.11)は、本肢と同種の事案において、「内縁が正当の理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるのである。されば、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。」と判示している。したがって、本肢においても、Bは、Aに対し、債務不履行を理由として損害賠償を請求することができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を請求することもできる。
総合メモ
謝罪広告と強制執行 最大判昭和31年7月4日
概要
単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度の謝罪広告を新聞紙等に掲載することを命ずる判決がなされた場合、当該判決の執行は代替執行により行うことができる。
判例
事案:単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度の謝罪広告を新聞紙等に掲載することを命ずる判決がされた場合において、当該判決の執行を代替執行によって行うことができるかが問題となった。
判旨:「民法723条にいわゆる「他人の名誉を毀損した者に対して被害者の名誉を回復するに適当な処分」として謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを加害者に命ずることは、従来学説判例の肯認するところであり、また謝罪広告を新聞紙等に掲載することは我国民生活の実際においても行われているのである。尤も謝罪広告を命ずる判決にもその内容上、これを新聞紙に掲載することが謝罪者の意思決定に委ねるを相当とし、これを命ずる場合の執行も債務者の意思のみに係る不代替作為として 民訴734条に基き間接強制によるを相当とするものもあるべく、時にはこれを強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することとなり、いわゆる強制執行に適さない場合に該当することもありうるであろうけれど、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあっては、これが強制執行も代替作為として民訴733条の手続によることを得るものといわなければならない。」
判旨:「民法723条にいわゆる「他人の名誉を毀損した者に対して被害者の名誉を回復するに適当な処分」として謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを加害者に命ずることは、従来学説判例の肯認するところであり、また謝罪広告を新聞紙等に掲載することは我国民生活の実際においても行われているのである。尤も謝罪広告を命ずる判決にもその内容上、これを新聞紙に掲載することが謝罪者の意思決定に委ねるを相当とし、これを命ずる場合の執行も債務者の意思のみに係る不代替作為として 民訴734条に基き間接強制によるを相当とするものもあるべく、時にはこれを強制することが債務者の人格を無視し著しくその名誉を毀損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限することとなり、いわゆる強制執行に適さない場合に該当することもありうるであろうけれど、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあっては、これが強制執行も代替作為として民訴733条の手続によることを得るものといわなければならない。」
総合メモ
近親者の慰謝料請求 最三小判昭和33年8月5日
概要
不法行為により身体に被害を受けた被害者の近親者は、当該被害者が生命を侵害されたときに比肩することができる程度の精神上の苦痛を受けた場合、709条、710条に基づいて、自己の権利として慰謝料を請求することができる。
判例
事案:不法行為により重傷を負ったものの死亡はしていない被害者が存する場合において、当該被害者の近親者が、自己の権利として慰謝料をすることができるかが問題となった。
判旨:「原審の認定するところによれば、A1は、Bの本件不法行為により顔面に傷害を受けた結果、判示のような外傷後遺症の症状となり果ては医療によつて除去しえない著明な瘢痕を遺すにいたり、ために同女の容貌は著しい影響を受け、他面その母親であるA2は、夫を戦争で失い、爾来自らの内職のみによつてA1外1児を養育しているのであり、右不法行為により精神上多大の苦痛を受けたというのである。ところで、民法709条、710条の各規定と対比してみると、所論民法711条が生命を害された者の近親者の慰籍料請求につき明文をもつて規定しているとの一事をもつて、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があつてもその近親者の慰籍料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではなく、むしろ、前記のような原審認定の事実関係によれば、A2はその子の死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められるのであつて、かゝる民法711条所定の場合に類する本件においては、A2は、同法709条、710条に基いて、自己の権利として慰籍料を請求しうるものと解するのが相当である。」
判旨:「原審の認定するところによれば、A1は、Bの本件不法行為により顔面に傷害を受けた結果、判示のような外傷後遺症の症状となり果ては医療によつて除去しえない著明な瘢痕を遺すにいたり、ために同女の容貌は著しい影響を受け、他面その母親であるA2は、夫を戦争で失い、爾来自らの内職のみによつてA1外1児を養育しているのであり、右不法行為により精神上多大の苦痛を受けたというのである。ところで、民法709条、710条の各規定と対比してみると、所論民法711条が生命を害された者の近親者の慰籍料請求につき明文をもつて規定しているとの一事をもつて、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があつてもその近親者の慰籍料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではなく、むしろ、前記のような原審認定の事実関係によれば、A2はその子の死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められるのであつて、かゝる民法711条所定の場合に類する本件においては、A2は、同法709条、710条に基いて、自己の権利として慰籍料を請求しうるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 共通 第30問 ウ)
不法行為により身体に被害を受けた者の近親者がその固有の慰謝料を請求することができるのは、被害者がその不法行為によって死亡した場合に限られる。
不法行為により身体に被害を受けた者の近親者がその固有の慰謝料を請求することができるのは、被害者がその不法行為によって死亡した場合に限られる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭33.8.5)は、不法行為により身体に被害を受けた被害者の近親者は、当該被害者が生命を侵害されたときに比肩することができる程度の精神上の苦痛を受けた場合、709条、710条に基づいて、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
判例(最判昭33.8.5)は、不法行為により身体に被害を受けた被害者の近親者は、当該被害者が生命を侵害されたときに比肩することができる程度の精神上の苦痛を受けた場合、709条、710条に基づいて、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
(H27 司法 第28問 イ)
被害者が死亡していない場合には、被害者の近親者は、慰謝料を請求することができない。
被害者が死亡していない場合には、被害者の近親者は、慰謝料を請求することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭33.8.5)は、不法行為により身体に被害を受けた被害者の近親者は、当該被害者が生命を侵害されたときに比肩することができる程度の精神上の苦痛を受けた場合、709条、710条に基づいて、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
判例(最判昭33.8.5)は、不法行為により身体に被害を受けた被害者の近親者は、当該被害者が生命を侵害されたときに比肩することができる程度の精神上の苦痛を受けた場合、709条、710条に基づいて、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
(R2 司法 第29問 ウ)
子が他人の不法行為によって重傷を負った場合、その両親は、そのために子が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときは、自己の権利として加害者に慰謝料を請求することができる。
子が他人の不法行為によって重傷を負った場合、その両親は、そのために子が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときは、自己の権利として加害者に慰謝料を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭33.8.5)は、不法行為により身体に被害を受けた被害者の近親者は、当該被害者が生命を侵害されたときに比肩することができる程度の精神上の苦痛を受けた場合、709条、710条に基づいて、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
判例(最判昭33.8.5)は、不法行為により身体に被害を受けた被害者の近親者は、当該被害者が生命を侵害されたときに比肩することができる程度の精神上の苦痛を受けた場合、709条、710条に基づいて、自己の権利として慰謝料を請求することができる旨判示している。
総合メモ
法人の不法行為に基づく損害賠償請求の可否 最一小判昭和39年1月28日
概要
法人の名誉が侵害され、無形の損害が発生した場合でも、当該損害の金銭的評価が可能である限り、710条が適用され、法人は当該損害の賠償請求をすることができる。
判例
事案:法人に対する名誉侵害が生じた場合において、710条による損害賠償請求が認められるかが問題となった。
判旨:「民法710条は、財産以外の損害に対しても、其賠償を為すことを要すと規定するだけで、その損害の内容を限定してはいない。すなわち、その文面は判示のようにいわゆる慰藉料を支払うことによつて、和らげられる精神上の苦痛だけを意味するものとは受けとり得ず、むしろすべての無形の損害を意味するものと読みとるべきである。従つて右法条を根拠として判示のように無形の損害即精神上の苦痛と解し、延いて法人には精神がないから、無形の損害はあり得ず、有形の損害すなわち財産上の損害に対する賠償以外に法人の名誉侵害の場合において民法723条による特別な方法が認められている外、何等の救済手段も認められていないものと論詰するのは全くの謬見だと云わなければならない。思うに、民法上のいわゆる損害とは、一口に云えば、侵害行為がなかつたならば惹起しなかつたであろう状態(原状)を(a)とし、侵害行為によつて惹起されているところの現実の状態(現状)を(b)としa-b=xそのxを金銭で評価したものが損害である。そのうち、数理的に算定できるものが、有形の損害すなわち財産上の損害であり、その然らざるものが無形の損害である。しかしその無形の損害と雖も法律の上では金銭評価の途が全くとざされているわけのものではない。侵害行為の程度、加害者、被害者の年令資産その社会的環境等各般の情況を斟酌して右金銭の評価は可能である。その顕著な事例は判示にいうところの精神上の苦痛を和らげるであろうところの慰藉料支払の場合である。しかし、無形の損害に対する賠償はその場合以外にないものと考うべきではない。そもそも、民事責任の眼目とするところは損害の填補である。すなわち前段で示したa-b=xの方式におけるxを金銭でカヴアーするのが、損害賠償のねらいなのである。かく観ずるならば、被害者が自然人であろうと、いわゆる無形の損害が精神上の苦痛であろうと、何んであろうとかかわりないわけであり、判示のような法人の名誉権に対する侵害の場合たると否とを問うところではないのである。尤も法人の名誉侵害の場合には民法723条により特別の手段が講じられている。しかし、それは被害者救済の一応の手段であり、それが、損害填補のすべてではないのである。このことは民法723条の文理解釈からも容易に推論し得るところである。そこで、判示にいわゆる慰藉料の支払をもつて、和らげられるという無形の損害以外に、いつたい、どのような無形の損害があるかという難問に逢着するのであるが、それはあくまで純法律的観念であつて、前示のように金銭評価が可能であり、しかもその評価だけの金銭を支払うことが社会観念上至当と認められるところの損害の意味に帰するのである。それは恰も民法709条の解釈に当つて侵害の対象となるものは有名権利でなくとも、侵害されることが社会通念上違法と認められる利益であれば足るという考え方と志向を同じうするものである。以上を要約すれば、法人の名誉権侵害の場合は金銭評価の可能な無形の損害の発生すること必ずしも絶無ではなく、そのような損害は加害者をして金銭でもつて賠償させるのを社会観念上至当とすべきであり、この場合は民法723条に被害者救済の格段な方法が規定されているとの故をもつて、金銭賠償を否定することはできないということに帰結する。」
判旨:「民法710条は、財産以外の損害に対しても、其賠償を為すことを要すと規定するだけで、その損害の内容を限定してはいない。すなわち、その文面は判示のようにいわゆる慰藉料を支払うことによつて、和らげられる精神上の苦痛だけを意味するものとは受けとり得ず、むしろすべての無形の損害を意味するものと読みとるべきである。従つて右法条を根拠として判示のように無形の損害即精神上の苦痛と解し、延いて法人には精神がないから、無形の損害はあり得ず、有形の損害すなわち財産上の損害に対する賠償以外に法人の名誉侵害の場合において民法723条による特別な方法が認められている外、何等の救済手段も認められていないものと論詰するのは全くの謬見だと云わなければならない。思うに、民法上のいわゆる損害とは、一口に云えば、侵害行為がなかつたならば惹起しなかつたであろう状態(原状)を(a)とし、侵害行為によつて惹起されているところの現実の状態(現状)を(b)としa-b=xそのxを金銭で評価したものが損害である。そのうち、数理的に算定できるものが、有形の損害すなわち財産上の損害であり、その然らざるものが無形の損害である。しかしその無形の損害と雖も法律の上では金銭評価の途が全くとざされているわけのものではない。侵害行為の程度、加害者、被害者の年令資産その社会的環境等各般の情況を斟酌して右金銭の評価は可能である。その顕著な事例は判示にいうところの精神上の苦痛を和らげるであろうところの慰藉料支払の場合である。しかし、無形の損害に対する賠償はその場合以外にないものと考うべきではない。そもそも、民事責任の眼目とするところは損害の填補である。すなわち前段で示したa-b=xの方式におけるxを金銭でカヴアーするのが、損害賠償のねらいなのである。かく観ずるならば、被害者が自然人であろうと、いわゆる無形の損害が精神上の苦痛であろうと、何んであろうとかかわりないわけであり、判示のような法人の名誉権に対する侵害の場合たると否とを問うところではないのである。尤も法人の名誉侵害の場合には民法723条により特別の手段が講じられている。しかし、それは被害者救済の一応の手段であり、それが、損害填補のすべてではないのである。このことは民法723条の文理解釈からも容易に推論し得るところである。そこで、判示にいわゆる慰藉料の支払をもつて、和らげられるという無形の損害以外に、いつたい、どのような無形の損害があるかという難問に逢着するのであるが、それはあくまで純法律的観念であつて、前示のように金銭評価が可能であり、しかもその評価だけの金銭を支払うことが社会観念上至当と認められるところの損害の意味に帰するのである。それは恰も民法709条の解釈に当つて侵害の対象となるものは有名権利でなくとも、侵害されることが社会通念上違法と認められる利益であれば足るという考え方と志向を同じうするものである。以上を要約すれば、法人の名誉権侵害の場合は金銭評価の可能な無形の損害の発生すること必ずしも絶無ではなく、そのような損害は加害者をして金銭でもつて賠償させるのを社会観念上至当とすべきであり、この場合は民法723条に被害者救済の格段な方法が規定されているとの故をもつて、金銭賠償を否定することはできないということに帰結する。」
過去問・解説
(H30 共通 第2問 ウ)
法人は財産以外の損害について不法行為に基づき損害賠償を請求することができない。
法人は財産以外の損害について不法行為に基づき損害賠償を請求することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭39.1.28)は、法人の名誉が侵害され、無形の損害が発生した場合でも、当該損害の金銭的評価が可能である限り、710条が適用され、法人は当該損害の賠償請求をすることができる旨判示している。したがって、法人は財産以外の損害について不法行為に基づき損害賠償を請求することができる場合がある。
判例(最判昭39.1.28)は、法人の名誉が侵害され、無形の損害が発生した場合でも、当該損害の金銭的評価が可能である限り、710条が適用され、法人は当該損害の賠償請求をすることができる旨判示している。したがって、法人は財産以外の損害について不法行為に基づき損害賠償を請求することができる場合がある。
(R6 司法 第2問 オ)
法人は、名誉毀損によって受けた無形の損害について、その賠償を請求することができない。
法人は、名誉毀損によって受けた無形の損害について、その賠償を請求することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭39.1.28) は、法人の名誉が侵害され、無形の損害が発生した場合でも、当該損害の金銭的評価が可能である限り、710条が適用され、法人は当該損害の賠償請求をすることができる旨判示している。
判例(最判昭39.1.28) は、法人の名誉が侵害され、無形の損害が発生した場合でも、当該損害の金銭的評価が可能である限り、710条が適用され、法人は当該損害の賠償請求をすることができる旨判示している。
総合メモ
名誉毀損の場合の不法行為 最一小判昭和41年6月23日
概要
民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、当該行為には違法性がなく、不法行為は成立しない。そして、もし、当該事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、当該行為には故意もしくは過失がなく、不法行為は成立しない。
判例
事案:公共の利害に関する事実の摘示をした場合において、どのような要件を満たせば不法行為が成立しないのかが問題となった。
判旨:「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法230条の2の規定の趣旨からも十分窺うことができる。)。」
判旨:「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法230条の2の規定の趣旨からも十分窺うことができる。)。」
過去問・解説
(R2 司法 第29問 イ)
報道により他人の名誉を毀損した報道機関は、その報道が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図ることに出たものであって、摘示した事実が真実であると信ずるにつき相当な理由があったとしても、その事実が真実であると証明できなかったときは、不法行為責任を負う。
報道により他人の名誉を毀損した報道機関は、その報道が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図ることに出たものであって、摘示した事実が真実であると信ずるにつき相当な理由があったとしても、その事実が真実であると証明できなかったときは、不法行為責任を負う。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.6.23)は、「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である…。」と判示している。したがって、報道により他人の名誉を毀損した報道機関は、その報道が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図ることに出たものであって、摘示した事実が真実であると信ずるにつき相当な理由があった場合には、「故意又は過失」(709条)が欠けるため、その事実が真実であると証明できなかったとしても、不法行為責任を負わない。
判例(最判昭41.6.23)は、「民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である…。」と判示している。したがって、報道により他人の名誉を毀損した報道機関は、その報道が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図ることに出たものであって、摘示した事実が真実であると信ずるにつき相当な理由があった場合には、「故意又は過失」(709条)が欠けるため、その事実が真実であると証明できなかったとしても、不法行為責任を負わない。
総合メモ
和解後の後遺症 最二小判昭和43年3月15日
概要
全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであり、示談当事予想できなかった不測の損害については、被害者の損害賠償請求が認められる。
判例
事案:事故の和解後、和解当時予想しなかった後遺症が発生した場合において、被害者が後日その損害の賠償を請求することができるかが問題となった。
判旨:「全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては、示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。」
判旨:「全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては、示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。」
過去問・解説
(H30 司法 第27問 エ)
Aは、Bの運転する自動車と接触し負傷したため、Bに対し損害賠償を請求したところ、AB間で、全損害を把握し難い状況の下において、BがAに対して早急に少額の賠償金を支払い、Aはそれ以外請求しない旨の和解契約が成立した。その後、Aに和解契約の当時は予期し得なかった後遺症が生じた。この場合、Aは、Bに対し、新たに生じた後遺症につき損害賠償を請求することができる。
Aは、Bの運転する自動車と接触し負傷したため、Bに対し損害賠償を請求したところ、AB間で、全損害を把握し難い状況の下において、BがAに対して早急に少額の賠償金を支払い、Aはそれ以外請求しない旨の和解契約が成立した。その後、Aに和解契約の当時は予期し得なかった後遺症が生じた。この場合、Aは、Bに対し、新たに生じた後遺症につき損害賠償を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭43.3.15)は、本肢と同種の事案において、「全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては、示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。」と判示している。したがって、AB間で、全損害を把握し難い状況の下において、BがAに対して早急に少額の賠償金を支払い、Aはそれ以外請求しない旨の和解契約が成立した後、Aに和解契約の当時は予期し得なかった後遺症が生じた場合においては、Aは、Bに対し、新たに生じた後遺症につき損害賠償を請求することができる。
判例(最判昭43.3.15)は、本肢と同種の事案において、「全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては、示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて、その当時予想できなかつた不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。」と判示している。したがって、AB間で、全損害を把握し難い状況の下において、BがAに対して早急に少額の賠償金を支払い、Aはそれ以外請求しない旨の和解契約が成立した後、Aに和解契約の当時は予期し得なかった後遺症が生じた場合においては、Aは、Bに対し、新たに生じた後遺症につき損害賠償を請求することができる。
総合メモ
責任能力のある未成年者の不法行為と監督義務者の責任 最二小判昭和49年3月22日
概要
未成年者が責任能力を有する場合あっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者には709条に基づく不法行為が成立する。
判例
事案:責任能力を有する未成年者が不法行為により他人に損害を生じさせた場合において、当該未成年者の監督義務者に義務違反があったとき、当該監督義務者に不法行為が成立する余地があるかが問題となった。
判旨:「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」
判旨:「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」
過去問・解説
(H22 司法 第29問 イ)
Aは自転車を運転して歩道上を走行中、前方不注視により、歩行者Bに衝突し、Bが負傷した。判例によれば、Aが14歳の中学生である場合、AはBに対して損害賠償義務を負い、Aの親権者であるCはBに対して損害賠償義務を負うことはない。
Aは自転車を運転して歩道上を走行中、前方不注視により、歩行者Bに衝突し、Bが負傷した。判例によれば、Aが14歳の中学生である場合、AはBに対して損害賠償義務を負い、Aの親権者であるCはBに対して損害賠償義務を負うことはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭49.3.22)は、「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」と判示している。したがって、本肢においても、Aの親権者であるCは、Aに対する監督義務違反があり、当該義務違反とCの不法行為によって生じたBの負傷との間に相当因果関係を認めうるときは、Bに対して損害賠償義務を負う。
判例(最判昭49.3.22)は、「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」と判示している。したがって、本肢においても、Aの親権者であるCは、Aに対する監督義務違反があり、当該義務違反とCの不法行為によって生じたBの負傷との間に相当因果関係を認めうるときは、Bに対して損害賠償義務を負う。
(H24 司法 第29問 2)
未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができる。
未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭49.3.22)は、「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」と判示している。
判例(最判昭49.3.22)は、「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」と判示している。
(R2 司法 第29問 エ)
未成年者が責任能力を有し被害者に対する不法行為責任を負う場合であっても、その監督義務者に未成年者に対する監督義務違反があり、その義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときには、監督義務者は被害者に対する不法行為責任を負う。
未成年者が責任能力を有し被害者に対する不法行為責任を負う場合であっても、その監督義務者に未成年者に対する監督義務違反があり、その義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときには、監督義務者は被害者に対する不法行為責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭49.3.22)は、「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」と判示している。
判例(最判昭49.3.22)は、「未成年者が責任能力を有する場合であつても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当であつて、民法714条の規定が右解釈の妨げとなるものではない。」と判示している。
総合メモ
後遺障害による逸失利益の定期金賠償 最一小判令和2年7月9日
概要
交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるときは、当該逸失利益は、定期金による賠償の対象となる。
判例
事案:交通事故の被害者が、後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、同逸失利益が定期金による賠償の対象となるかが問題となった。
判旨:「同一の事故により生じた同一の身体傷害を理由とする不法行為に基づく損害賠償債務は1個であり、その損害は不法行為の時に発生するものと解される(最高裁昭和43年(オ)第943号同48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3号419頁、最高裁昭和55年(オ)第1113号同58年9月6日第三小法廷判決・民集37巻7号901頁等参照)。したがって、被害者が事故によって身体傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働能力の全部又は一部の喪失により将来において取得すべき利益を喪失したという損害についても、不法行為の時に発生したものとして、その額を算定した上、一時金による賠償を命ずることができる。しかし、上記損害は、不法行為の時から相当な時間が経過した後に逐次現実化する性質のものであり、その額の算定は、不確実、不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に行わざるを得ないものであるから、将来、その算定の基礎となった後遺障害の程度、賃金水準その他の事情に著しい変更が生じ、算定した損害の額と現実化した損害の額との間に大きなかい離が生ずることもあり得る。民法は、不法行為に基づく損害賠償の方法につき、一時金による賠償によらなければならないものとは規定しておらず(722条1項、417条参照)、他方で、民訴法117条は、定期金による賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えを提起することができる旨を規定している。同条の趣旨は、口頭弁論終結前に生じているがその具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような性質の損害については、実態に即した賠償を実現するために定期金による賠償が認められる場合があることを前提として、そのような賠償を命じた確定判決の基礎となった事情について、口頭弁論終結後に著しい変更が生じた場合には、事後的に上記かい離を是正し、現実化した損害の額に対応した損害賠償額とすることが公平に適うということにあると解される。そして、不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補塡して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、また、損害の公平な分担を図ることをその理念とするところである。このような目的及び理念に照らすと、交通事故に起因する後遺障害による逸失利益という損害につき、将来において取得すべき利益の喪失が現実化する都度これに対応する時期にその利益に対応する定期金の支払をさせるとともに、上記かい離が生ずる場合には民訴法117条によりその是正を図ることができるようにすることが相当と認められる場合があるというべきである。以上によれば、交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、上記目的及び理念に照らして相当と認められるときは、同逸失利益は、定期金による賠償の対象となるものと解される。」
判旨:「同一の事故により生じた同一の身体傷害を理由とする不法行為に基づく損害賠償債務は1個であり、その損害は不法行為の時に発生するものと解される(最高裁昭和43年(オ)第943号同48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3号419頁、最高裁昭和55年(オ)第1113号同58年9月6日第三小法廷判決・民集37巻7号901頁等参照)。したがって、被害者が事故によって身体傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合において、労働能力の全部又は一部の喪失により将来において取得すべき利益を喪失したという損害についても、不法行為の時に発生したものとして、その額を算定した上、一時金による賠償を命ずることができる。しかし、上記損害は、不法行為の時から相当な時間が経過した後に逐次現実化する性質のものであり、その額の算定は、不確実、不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に行わざるを得ないものであるから、将来、その算定の基礎となった後遺障害の程度、賃金水準その他の事情に著しい変更が生じ、算定した損害の額と現実化した損害の額との間に大きなかい離が生ずることもあり得る。民法は、不法行為に基づく損害賠償の方法につき、一時金による賠償によらなければならないものとは規定しておらず(722条1項、417条参照)、他方で、民訴法117条は、定期金による賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えを提起することができる旨を規定している。同条の趣旨は、口頭弁論終結前に生じているがその具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような性質の損害については、実態に即した賠償を実現するために定期金による賠償が認められる場合があることを前提として、そのような賠償を命じた確定判決の基礎となった事情について、口頭弁論終結後に著しい変更が生じた場合には、事後的に上記かい離を是正し、現実化した損害の額に対応した損害賠償額とすることが公平に適うということにあると解される。そして、不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補塡して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、また、損害の公平な分担を図ることをその理念とするところである。このような目的及び理念に照らすと、交通事故に起因する後遺障害による逸失利益という損害につき、将来において取得すべき利益の喪失が現実化する都度これに対応する時期にその利益に対応する定期金の支払をさせるとともに、上記かい離が生ずる場合には民訴法117条によりその是正を図ることができるようにすることが相当と認められる場合があるというべきである。以上によれば、交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、上記目的及び理念に照らして相当と認められるときは、同逸失利益は、定期金による賠償の対象となるものと解される。」
過去問・解説
(R5 共通 第30問 ア)
不法行為の被害者は、不法行為に起因する後遺障害による逸失利益について、定期金による賠償を求めることができない。
不法行為の被害者は、不法行為に起因する後遺障害による逸失利益について、定期金による賠償を求めることができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判令2.7.9)は、「不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補塡して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、また、損害の公平な分担を図ることをその理念とするところである。」と判示した上で、「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、上記目的及び理念に照らして相当と認められるときは、同逸失利益は、定期金による賠償の対象となるものと解される。」と判示している。
判例(最判令2.7.9)は、「不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補塡して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、また、損害の公平な分担を図ることをその理念とするところである。」と判示した上で、「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、上記目的及び理念に照らして相当と認められるときは、同逸失利益は、定期金による賠償の対象となるものと解される。」と判示している。
総合メモ
生命侵害を受けた者の内縁の妻からの損害賠償請求権 最三小判昭和49年12月17日
概要
文言上711条所定の者に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視できる身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求できる。
判例
事案:不法行為により被害者が死亡した場合において、被害者との関係で、文言上711条所定の者には該当しないが、同条所定の者と実質的に同視できる身分関係にある者が、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求することができるかが問題となった。
判旨:「不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法711条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。」
判旨:「不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法711条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第31問 2)
不法行為による生命侵害の場合、被害者Aの配偶者Bは、Bに対する加害者の故意過失を証明することなく、固有の慰謝料を請求することができるが、被害者Cの内縁配偶者Dは、Dに対する加害者の故意過失を証明した場合に限り、慰謝料を請求することができる。
不法行為による生命侵害の場合、被害者Aの配偶者Bは、Bに対する加害者の故意過失を証明することなく、固有の慰謝料を請求することができるが、被害者Cの内縁配偶者Dは、Dに対する加害者の故意過失を証明した場合に限り、慰謝料を請求することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭49.12.17)は、「不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法711条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。」と判示している。そして、711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と判示している。
したがって、不法行為による生命侵害の場合、被害者Aの配偶者Bは、Bに対する加害者の故意過失を証明することなく、固有の慰謝料を請求することができ、さらに、被害者Cの内縁配偶者Dについても、711条が類推適用されるから、Dに対する加害者の故意過失を証明することなく、慰謝料を請求することができる。
判例(最判昭49.12.17)は、「不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法711条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。」と判示している。そして、711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と判示している。
したがって、不法行為による生命侵害の場合、被害者Aの配偶者Bは、Bに対する加害者の故意過失を証明することなく、固有の慰謝料を請求することができ、さらに、被害者Cの内縁配偶者Dについても、711条が類推適用されるから、Dに対する加害者の故意過失を証明することなく、慰謝料を請求することができる。
総合メモ
精神障害者と同居する配偶者と法定の監督義務者 最三小判平成28年3月1日
概要
精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできない。
判例
事案:精神障害者と同居する配偶者であることを理由として、当該配偶者が714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることができるかが問題となった。
判旨:「民法752条は、夫婦の同居、協力及び扶助の義務について規定しているが、これらは夫婦間において相互に相手方に対して負う義務であって、第三者との関係で夫婦の一方に何らかの作為義務を課するものではなく、しかも、同居の義務についてはその性質上履行を強制することができないものであり、協力の義務についてはそれ自体抽象的なものである。また、扶助の義務はこれを相手方の生活を自分自身の生活として保障する義務であると解したとしても、そのことから直ちに第三者との関係で相手方を監督する義務を基礎付けることはできない。そうすると、同条の規定をもって同法714条1項にいう責任無能力者を監督する義務を定めたものということはできず、他に夫婦の一方が相手方の法定の監督義務者であるとする実定法上の根拠は見当たらない。
したがって、精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできないというべきである。」
判旨:「民法752条は、夫婦の同居、協力及び扶助の義務について規定しているが、これらは夫婦間において相互に相手方に対して負う義務であって、第三者との関係で夫婦の一方に何らかの作為義務を課するものではなく、しかも、同居の義務についてはその性質上履行を強制することができないものであり、協力の義務についてはそれ自体抽象的なものである。また、扶助の義務はこれを相手方の生活を自分自身の生活として保障する義務であると解したとしても、そのことから直ちに第三者との関係で相手方を監督する義務を基礎付けることはできない。そうすると、同条の規定をもって同法714条1項にいう責任無能力者を監督する義務を定めたものということはできず、他に夫婦の一方が相手方の法定の監督義務者であるとする実定法上の根拠は見当たらない。
したがって、精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできないというべきである。」
総合メモ
手形偽造行為の使用者責任 最三小判昭和40年11月30日
概要
715条にいう「事業の執行について」とは、被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合を包含する。
判例
事案:715条にいう「事業の執行について」の意義が問題となった。
判旨:「民法715条にいわゆる「事業ノ執行ニ付キ」とは、被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合をも包含するものと解すべきであり、このことは、すでに当裁判所の判例とするところである(昭和32年7月16日第三小法廷判決、民集11巻7号1254頁、昭和36年6月9日第二小法廷判決、民集15巻6号1546頁)。」
判旨:「民法715条にいわゆる「事業ノ執行ニ付キ」とは、被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合をも包含するものと解すべきであり、このことは、すでに当裁判所の判例とするところである(昭和32年7月16日第三小法廷判決、民集11巻7号1254頁、昭和36年6月9日第二小法廷判決、民集15巻6号1546頁)。」
過去問・解説
(H18 司法 第3問 1)
使用者責任について、被用者の加害行為が使用者の事業の執行についてされたものであることは、被害者が証明する必要があるが、これはその加害行為が外形からしてあたかも被用者の職務の範囲内とみられる場合を含む。
使用者責任について、被用者の加害行為が使用者の事業の執行についてされたものであることは、被害者が証明する必要があるが、これはその加害行為が外形からしてあたかも被用者の職務の範囲内とみられる場合を含む。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭40.11.30)は、「民法715条にいわゆる「事業ノ執行ニ付キ」とは、被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合をも包含する…。」と判示している。そして、715条1項本文は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しているところ、同本文の要件に該当する事実は、使用者責任の発生を主張して、使用者に対して損害賠償請求を行う被害者が主張立証責任を負うと解される。
したがって、使用者責任について、被用者の加害行為が使用者の事業の執行についてされたものであることは、被害者が証明する必要があるが、これはその加害行為が外形からしてあたかも被用者の職務の範囲内とみられる場合を含む。
判例(最判昭40.11.30)は、「民法715条にいわゆる「事業ノ執行ニ付キ」とは、被用者の職務執行行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合をも包含する…。」と判示している。そして、715条1項本文は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しているところ、同本文の要件に該当する事実は、使用者責任の発生を主張して、使用者に対して損害賠償請求を行う被害者が主張立証責任を負うと解される。
したがって、使用者責任について、被用者の加害行為が使用者の事業の執行についてされたものであることは、被害者が証明する必要があるが、これはその加害行為が外形からしてあたかも被用者の職務の範囲内とみられる場合を含む。
総合メモ
法人の代表者と監督責任 最三小判昭和42年5月30日
概要
使用者が法人である場合において、その代表者が715条2項にいう「使用者に代わって事業を監督する者」に当たるというためには、当該代表者が現実に被用者の選任、監督を担当している場合でなければならず、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有するだけでは足りない。
判例
事案:使用者が法人である場合において、その代表者が、どのような場合に715条2項にいう「使用者に代わって事業を監督する者」に当たるということができるかが問題となった。
判旨:「民法715条2項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的に見て、使用者に代り現実に事業を監督する地位にある者を指称するものと解すべきであり(昭和32年(オ)第922号、同35年4月14日第一小法廷判決、民集14巻5号863頁)、使用者が法人である場合において、その代表者が現実に被用者の選任、監督を担当しているときは、右代表者は同条項にいう代理監督者に該当し、当該被用者が事業の執行につきなした行為について、代理監督者として責任を負わなければならないが、代表者が、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有することから、ただちに、同条項を適用してその個人責任を問うことはできないものと解するを相当とする。」
判旨:「民法715条2項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的に見て、使用者に代り現実に事業を監督する地位にある者を指称するものと解すべきであり(昭和32年(オ)第922号、同35年4月14日第一小法廷判決、民集14巻5号863頁)、使用者が法人である場合において、その代表者が現実に被用者の選任、監督を担当しているときは、右代表者は同条項にいう代理監督者に該当し、当該被用者が事業の執行につきなした行為について、代理監督者として責任を負わなければならないが、代表者が、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有することから、ただちに、同条項を適用してその個人責任を問うことはできないものと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H25 司法 第30問 1)
法人Aの使用するBがその事業の執行について第三者Cに損害を与えた場合において、Aの代表者Dが現実にBの選任監督を担当していなかったときは、Dは、Cに対し、Aに代わって事業を監督する者としての責任を負わない。
法人Aの使用するBがその事業の執行について第三者Cに損害を与えた場合において、Aの代表者Dが現実にBの選任監督を担当していなかったときは、Dは、Cに対し、Aに代わって事業を監督する者としての責任を負わない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.5.30)は、「民法715条2項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的に見て、使用者に代り現実に事業を監督する地位にある者を指称するものと解すべきであり…、使用者が法人である場合において、その代表者が現実に被用者の選任、監督を担当しているときは、右代表者は同条項にいう代理監督者に該当し、当該被用者が事業の執行につきなした行為について、代理監督者として責任を負わなければならないが、代表者が、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有することから、ただちに、同条項を適用してその個人責任を問うことはできないものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、Aの代表者Dが現実にBの選任監督を担当していなかったときは、Dは、715条2項にいう「使用者に代わって事業を監督する者」に当たらず、Cに対し、Aに代わって事業を監督する者としての責任を負わない。、
判例(最判昭42.5.30)は、「民法715条2項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的に見て、使用者に代り現実に事業を監督する地位にある者を指称するものと解すべきであり…、使用者が法人である場合において、その代表者が現実に被用者の選任、監督を担当しているときは、右代表者は同条項にいう代理監督者に該当し、当該被用者が事業の執行につきなした行為について、代理監督者として責任を負わなければならないが、代表者が、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有することから、ただちに、同条項を適用してその個人責任を問うことはできないものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、Aの代表者Dが現実にBの選任監督を担当していなかったときは、Dは、715条2項にいう「使用者に代わって事業を監督する者」に当たらず、Cに対し、Aに代わって事業を監督する者としての責任を負わない。、
(H28 司法 第29問 3)
事業の執行について不法行為を行った被用者が損害を賠償する責任を負うときであっても、その被用者を雇用する法人の代表者は、被用者の選任又は監督を現実に担当していなければ、被用者の不法行為について、代理監督者として損害を賠償する責任を負わない。
事業の執行について不法行為を行った被用者が損害を賠償する責任を負うときであっても、その被用者を雇用する法人の代表者は、被用者の選任又は監督を現実に担当していなければ、被用者の不法行為について、代理監督者として損害を賠償する責任を負わない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.5.30)は、「民法715条2項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的に見て、使用者に代り現実に事業を監督する地位にある者を指称するものと解すべきであり…、使用者が法人である場合において、その代表者が現実に被用者の選任、監督を担当しているときは、右代表者は同条項にいう代理監督者に該当し、当該被用者が事業の執行につきなした行為について、代理監督者として責任を負わなければならないが、代表者が、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有することから、ただちに、同条項を適用してその個人責任を問うことはできないものと解するを相当とする。」と判示している。
判例(最判昭42.5.30)は、「民法715条2項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的に見て、使用者に代り現実に事業を監督する地位にある者を指称するものと解すべきであり…、使用者が法人である場合において、その代表者が現実に被用者の選任、監督を担当しているときは、右代表者は同条項にいう代理監督者に該当し、当該被用者が事業の執行につきなした行為について、代理監督者として責任を負わなければならないが、代表者が、単に法人の代表機関として一般的業務執行権限を有することから、ただちに、同条項を適用してその個人責任を問うことはできないものと解するを相当とする。」と判示している。
総合メモ
失火の責任に関する法律と715条 最二小判昭和42年6月30日
概要
被用者が重大な過失により失火したときは、使用者は、被用者の選任又は監督について過失があれば、当該過失が重大な過失でなくても、使用者責任(715条1項)を負う。
判例
事案:被用者が重大な過失により失火した場合において、使用者が使用者責任(715条1項)を負うためには、当該使用者にもその被用者の選任及び監督に重大な過失があることを必要とするかが問題となった。
判旨:「「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではないから、失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法715条により賠償責任を負うものと解すべきであつて、所論のように、選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない(大正2年2月5日大審院判決・民録19輯57頁参照)。」
判旨:「「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではないから、失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法715条により賠償責任を負うものと解すべきであつて、所論のように、選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない(大正2年2月5日大審院判決・民録19輯57頁参照)。」
過去問・解説
(H28 司法 第29問 2)
被用者の重大な過失により火災が発生した場合において、使用者にその被用者の選任及び監督について過失があるときは、使用者は、その選任及び監督についての過失が重大なものではないことを理由として、その火災により生じた損害を賠償する責任を免れることはできない。
被用者の重大な過失により火災が発生した場合において、使用者にその被用者の選任及び監督について過失があるときは、使用者は、その選任及び監督についての過失が重大なものではないことを理由として、その火災により生じた損害を賠償する責任を免れることはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.6.30)は、「「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではないから、失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法715条により賠償責任を負うものと解すべきであつて、所論のように、選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない…。」と判示している。したがって、被用者の重大な過失により火災が発生した場合において、使用者にその被用者の選任及び監督について過失があるときは、使用者は、その選任及び監督についての過失が重大なものではないことを理由として、その火災により生じた損害を賠償する責任を免れることはできない。
判例(最判昭42.6.30)は、「「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではないから、失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法715条により賠償責任を負うものと解すべきであつて、所論のように、選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない…。」と判示している。したがって、被用者の重大な過失により火災が発生した場合において、使用者にその被用者の選任及び監督について過失があるときは、使用者は、その選任及び監督についての過失が重大なものではないことを理由として、その火災により生じた損害を賠償する責任を免れることはできない。
(R5 共通 第30問 イ)
被用者が使用者の事業の執行について重大な過失により失火して第三者に損害を加えた場合には、使用者は、被用者の選任監督について重大な過失があるときに限り、損害賠償の責任を負う。
被用者が使用者の事業の執行について重大な過失により失火して第三者に損害を加えた場合には、使用者は、被用者の選任監督について重大な過失があるときに限り、損害賠償の責任を負う。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭42.6.30)は、「「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではないから、失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法715条により賠償責任を負うものと解すべきであつて、所論のように、選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない…。」と判示している。
判例(最判昭42.6.30)は、「「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではないから、失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法715条により賠償責任を負うものと解すべきであつて、所論のように、選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない…。」と判示している。
総合メモ
被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでない行為についての被害者の悪意・重過失と715条 最一小判昭和42年11月2日
概要
被用者の取引行為がその外形からみて使用者の事業の範囲内に属すると認められる場合であっても、それが被用者の職務権限内において適法に行われたたものではなく、かつその相手方がこの事情を知り、又は少なくとも重大な過失によってこれを知らないものであるときは、その相手方である被害者は、715条により使用者に対してその取引行為に基づく損害の賠償を請求することができない。
判例
事案:被用者の取引行為がその外形からみて使用者の事業の範囲内に属すると認められるが、それが被用者の職務権限内において適法に行われたものではなく、かつその相手方がこの事情を知り、又は少なくとも重大な過失によってこれを知らない場合において、その相手方である被害者が使用者に対して715条1項に基づく損害賠償請求をすることができるかが問題となった。
判旨:「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」
判旨:「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第3問 3)
使用者は、被用者の加害行為が被用者の職務権限内で適法に行われたものでないこと及び加害行為時に被害者がそのことを知っていたか、知らないことに過失があったことを証明すれば、責任を免れる。
使用者は、被用者の加害行為が被用者の職務権限内で適法に行われたものでないこと及び加害行為時に被害者がそのことを知っていたか、知らないことに過失があったことを証明すれば、責任を免れる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭42.11.2)は、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭42.11.2)は、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。
(H20 司法 第30問 ウ)
被用者のした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合であっても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行われたものでなく、かつ、その行為の相手方がその事情を知りながら、又は、重大な過失によりそれを知らないで、取引をしたときは、取引の相手方である被害者は、使用者に対し、その損害の賠償を請求することができない。
被用者のした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合であっても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行われたものでなく、かつ、その行為の相手方がその事情を知りながら、又は、重大な過失によりそれを知らないで、取引をしたときは、取引の相手方である被害者は、使用者に対し、その損害の賠償を請求することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.11.2)は、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭42.11.2)は、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。
(H25 司法 第30問 2)
Aの使用するBが、その外形からみてAの事業の範囲内に属すると認められる行為によって第三者Cに損害を与えた場合であっても、Bの加害行為がBの職務権限内で適法に行われたものでないことをCが知っていたとき、又は知らなかったことについて重大な過失があったときは、Aは、Cに対し、損害賠償の責任を負わない。
Aの使用するBが、その外形からみてAの事業の範囲内に属すると認められる行為によって第三者Cに損害を与えた場合であっても、Bの加害行為がBの職務権限内で適法に行われたものでないことをCが知っていたとき、又は知らなかったことについて重大な過失があったときは、Aは、Cに対し、損害賠償の責任を負わない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.11.2)は、本肢と同種の事案において、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢においても、Bの加害行為がBの職務権限内で適法に行われたものでないことをCが知っていたとき、又は知らなかったことについて重大な過失があったときは、Aは、Cに対し、損害賠償の責任を負わない。
判例(最判昭42.11.2)は、本肢と同種の事案において、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢においても、Bの加害行為がBの職務権限内で適法に行われたものでないことをCが知っていたとき、又は知らなかったことについて重大な過失があったときは、Aは、Cに対し、損害賠償の責任を負わない。
(R6 司法 第31問 ア)
被用者が取引行為によってその相手方に損害を加えた場合において、その行為が外形からみて使用者の事業の範囲内に属すると認められるときであっても、それが被用者の職務権限内で適法に行われたものでなく、かつ、相手方がその事情を知り、又は、知らないことについて過失があれば、使用者は、使用者責任を負わない。
被用者が取引行為によってその相手方に損害を加えた場合において、その行為が外形からみて使用者の事業の範囲内に属すると認められるときであっても、それが被用者の職務権限内で適法に行われたものでなく、かつ、相手方がその事情を知り、又は、知らないことについて過失があれば、使用者は、使用者責任を負わない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭42.11.2)は、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭42.11.2)は、「被用者のなした取引行為が、その行為の外形からみて、使用者の事業の範囲内に属するものと認められる場合においても、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、その行為の相手方が右の事情を知りながら、または、少なくとも重大な過失により右の事情を知らないで、当該取引をしたと認められるときは、その行為にもとづく損害は民法715条にいわゆる「被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害」とはいえず、したがつてその取引の相手方である被害者は使用者に対してその損害の賠償を請求することができないものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
使用者の被用者に対する損害賠償・求償の請求と信義則 最一小判昭和51年7月8日
概要
使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し当該損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
判例
事案:使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合において、使用者の被用者に対する求償権(715条3項)が制限されることがあるかが問題となった。
判旨:「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」
判旨:「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第3問 5)
責任を負った使用者又は代理監督者は、被用者に対して求償し得るが、被用者がこの求償権を信義則上制限すべきことを基礎付ける事実を証明すれば、この求償権は制限される。
責任を負った使用者又は代理監督者は、被用者に対して求償し得るが、被用者がこの求償権を信義則上制限すべきことを基礎付ける事実を証明すれば、この求償権は制限される。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭51.7.8)は、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。したがって、責任を負った使用者又は代理監督者は、被用者に対して求償し得る(715条3項)が、被用者がこの求償権を信義則上制限すべきことを基礎付ける事実を証明すれば、この求償権は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に制限される。
判例(最判昭51.7.8)は、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。したがって、責任を負った使用者又は代理監督者は、被用者に対して求償し得る(715条3項)が、被用者がこの求償権を信義則上制限すべきことを基礎付ける事実を証明すれば、この求償権は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に制限される。
(H22 司法 第29問 ウ)
Aは自転車を運転して歩道上を走行中、前方不注視により、歩行者Bに衝突し、Bが負傷した。判例によれば、AがD社の従業員であり、D社の業務中に自転車を運転していた場合、D社がBに対して損害額全額を賠償したときは、D社はAに対して信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
Aは自転車を運転して歩道上を走行中、前方不注視により、歩行者Bに衝突し、Bが負傷した。判例によれば、AがD社の従業員であり、D社の業務中に自転車を運転していた場合、D社がBに対して損害額全額を賠償したときは、D社はAに対して信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭51.7.8)は、本肢と同種の事案において、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、D社がBに対して損害額全額を賠償したときは、D社はAに対して信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
判例(最判昭51.7.8)は、本肢と同種の事案において、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、D社がBに対して損害額全額を賠償したときは、D社はAに対して信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
(H29 共通 第30問 エ)
Aが運転するタクシーとBが運転するタクシーが衝突する交通事故(以下「本件事故」という。)が発生し、Aが運転するタクシーの乗客Cが負傷し、Cに300万円の損害が生じた。本件事故についての過失割合は、Aが4割で、Bが6割であり、Cに過失はなかった。Aに使用者Dがおり、Dが本件事故について使用者責任を負う場合において、DがCに対して損害賠償債務の弁済として300万円を支払ったときは、Dは、Aに対し、信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
Aが運転するタクシーとBが運転するタクシーが衝突する交通事故(以下「本件事故」という。)が発生し、Aが運転するタクシーの乗客Cが負傷し、Cに300万円の損害が生じた。本件事故についての過失割合は、Aが4割で、Bが6割であり、Cに過失はなかった。Aに使用者Dがおり、Dが本件事故について使用者責任を負う場合において、DがCに対して損害賠償債務の弁済として300万円を支払ったときは、Dは、Aに対し、信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭51.7.8)は、本肢と同種の事案において、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、Aに使用者Dがおり、Dが本件事故について使用者責任を負う場合において、DがCに対して損害賠償債務の弁済として300万円を支払ったときは、Dは、Aに対し、信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
判例(最判昭51.7.8)は、本肢と同種の事案において、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、Aに使用者Dがおり、Dが本件事故について使用者責任を負う場合において、DがCに対して損害賠償債務の弁済として300万円を支払ったときは、Dは、Aに対し、信義則上相当と認められる限度において求償することができる。
(R6 司法 第31問 イ)
使用者が被害者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合に、使用者の被用者に対する求償権の行使は、信義則上相当と認められる限度に制限されることがある。
使用者が被害者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合に、使用者の被用者に対する求償権の行使は、信義則上相当と認められる限度に制限されることがある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭51.7.8)は、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。
判例(最判昭51.7.8)は、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」と判示している。
総合メモ
被用者の使用者に対する逆求償 最二小判令和2年2月28日
概要
被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、使用者の事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる。
判例
事案:被用者が使用者の事業の執行について第三者に加えた損害を賠償した場合において、被用者が使用者に対し逆求償をすることができる場合があるかが問題となった。
判旨:「民法715条1項が規定する使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである(最高裁昭和30年(オ)第199号同32年4月30日第三小法廷判決・民集11巻4号646頁、最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁参照)。このような使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。
また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができると解すべきところ(最高裁昭和49年(オ)第1073号同51年7月8日第一小法廷判決・民集30巻7号689頁)、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。
以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。」
判旨:「民法715条1項が規定する使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである(最高裁昭和30年(オ)第199号同32年4月30日第三小法廷判決・民集11巻4号646頁、最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁参照)。このような使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。
また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができると解すべきところ(最高裁昭和49年(オ)第1073号同51年7月8日第一小法廷判決・民集30巻7号689頁)、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。
以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。」
過去問・解説
(R5 共通 第30問 ウ)
被用者が、使用者の事業の執行について第三者に損害を加えた場合において、その損害を賠償したときは、被用者は、使用者に対して求償権を行使することができない。
被用者が、使用者の事業の執行について第三者に損害を加えた場合において、その損害を賠償したときは、被用者は、使用者に対して求償権を行使することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判令2.2.28)は、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、使用者の事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる旨判示している。
判例(最判令2.2.28)は、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、使用者の事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる旨判示している。
総合メモ
土地の工作物等の占有者及び所有者の責任 大判昭和3年6月7日
概要
土地の工作物の設置または保存についての瑕疵が、前所有者が所有していた際に生じたものである場合であっても、現所有者は、717条1項により、当該瑕疵によって生じた損害について責任を負担する。
判例
事案:土地の工作物の設置又は保存についての瑕疵が、前所有者が所有していた際に生じたものである場合において、現所有者が、当該瑕疵により生じた損害について所有者責任(717条1項)を負うかが問題となった。
判旨:「然レトモ土地ノ工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵アルニ因リテ他人ニ損害ヲ生シタルトキハ第1次ニ其ノ占有者ニ於テ第二次ニ其ノ所有者ニ於テ之カ賠償ノ責ニ任スヘキモノナルコトハ民法第717条第1項ノ規定スル所ニシテ占有者ハ損害ノ発生ヲ防止スルニ必要ナル注意ヲ為シタルコトヲ立証シテ其ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ルモ所有者ハ斯ル瑕疵アル工作物ヲ所有スルコトニ因リテ其ノ責ニ任スヘキモノニシテ其ノ瑕疵ヲ生シタルコトニ付過失ナカリシコトヲ立証シテ責ヲ免カルルコトヲ得サルモノトス是民法第714条第1項第715条第1項第718条第1項ニ各但書ノ規定アルモ第717条ニ斯ル規定ナキニ依リテ明ナリ故ニ工作物ノ所有者ハ自ラ之ヲ設置セス従テ其ノ設置又ハ保存ニ因ル瑕疵カ前所有者ノ所有シタル際ニ生シタル場合ニ於テモ現ニ該工作物ヲ所有スルノ一事ニ因リテ其ノ瑕疵ニ対スル責任ヲ負担スヘキモノト謂ハサルヲ得ス。」
判旨:「然レトモ土地ノ工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵アルニ因リテ他人ニ損害ヲ生シタルトキハ第1次ニ其ノ占有者ニ於テ第二次ニ其ノ所有者ニ於テ之カ賠償ノ責ニ任スヘキモノナルコトハ民法第717条第1項ノ規定スル所ニシテ占有者ハ損害ノ発生ヲ防止スルニ必要ナル注意ヲ為シタルコトヲ立証シテ其ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ルモ所有者ハ斯ル瑕疵アル工作物ヲ所有スルコトニ因リテ其ノ責ニ任スヘキモノニシテ其ノ瑕疵ヲ生シタルコトニ付過失ナカリシコトヲ立証シテ責ヲ免カルルコトヲ得サルモノトス是民法第714条第1項第715条第1項第718条第1項ニ各但書ノ規定アルモ第717条ニ斯ル規定ナキニ依リテ明ナリ故ニ工作物ノ所有者ハ自ラ之ヲ設置セス従テ其ノ設置又ハ保存ニ因ル瑕疵カ前所有者ノ所有シタル際ニ生シタル場合ニ於テモ現ニ該工作物ヲ所有スルノ一事ニ因リテ其ノ瑕疵ニ対スル責任ヲ負担スヘキモノト謂ハサルヲ得ス。」
過去問・解説
(R1 司法 第28問 ウ)
Aが所有する甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合には、その瑕疵がAの前の所有者が甲建物を所有していた時期に生じたものであるときであっても、Aは、甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う。
Aが所有する甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合には、その瑕疵がAの前の所有者が甲建物を所有していた時期に生じたものであるときであっても、Aは、甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(大判昭3.6.7)は、本肢と同種の事案において、土地の工作物の設置または保存についての瑕疵が、前所有者が所有していた際に生じたものである場合であっても、現所有者は、717条1項により、当該瑕疵によって生じた損害について責任を負担する旨判示している。したがって、Aが所有する甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合には、その瑕疵がAの前の所有者が甲建物を所有していた時期に生じたものであるときであっても、Aは、甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う。
判例(大判昭3.6.7)は、本肢と同種の事案において、土地の工作物の設置または保存についての瑕疵が、前所有者が所有していた際に生じたものである場合であっても、現所有者は、717条1項により、当該瑕疵によって生じた損害について責任を負担する旨判示している。したがって、Aが所有する甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合には、その瑕疵がAの前の所有者が甲建物を所有していた時期に生じたものであるときであっても、Aは、甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う。
総合メモ
建物の占有者の責任 最三小判昭和31年12月18日
概要
717条1項の「占有者」には、間接占有者も含む。
判例
事案:土地の工作物たる土地上の建物をその所有者から賃借し、これを転貸した場合において、当該転貸人が、当該建物の設置または保存に関する瑕疵によって生じた損害について、占有者責任(717条1項)を負うかが問題となった。
判旨:「国が連合国占領軍の接収通知に応じ建物をその所有者より借り受けた場合においては、たといこれを同軍の使用に供し同軍が事実上右建物を占有支配している場合においても国は依然としてなお右建物の賃借人であることに変りはなく、従つてまた右建物についても当然に間接占有を有するものと解さなければならない。そして民法717条にいわゆる占有者には特に間接占有者を除外すべき法文上の根拠もなくまたこれを首肯せしむベき実質上の理由もないから、国は右建物の設置保存に関する瑕疵に基因する損害については当然に右法条における占有者としてその責に任ずべきものと解するを至当とする。」
判旨:「国が連合国占領軍の接収通知に応じ建物をその所有者より借り受けた場合においては、たといこれを同軍の使用に供し同軍が事実上右建物を占有支配している場合においても国は依然としてなお右建物の賃借人であることに変りはなく、従つてまた右建物についても当然に間接占有を有するものと解さなければならない。そして民法717条にいわゆる占有者には特に間接占有者を除外すべき法文上の根拠もなくまたこれを首肯せしむベき実質上の理由もないから、国は右建物の設置保存に関する瑕疵に基因する損害については当然に右法条における占有者としてその責に任ずべきものと解するを至当とする。」
過去問・解説
(R1 司法 第28問 エ)
Aがその所有する甲建物をBに賃貸し、Bが甲建物をCに転貸し、それぞれ引渡しがされた場合には、甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによって第三者に生じた損害について、Bが占有者として損害賠償の責任を負うことはない。
Aがその所有する甲建物をBに賃貸し、Bが甲建物をCに転貸し、それぞれ引渡しがされた場合には、甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによって第三者に生じた損害について、Bが占有者として損害賠償の責任を負うことはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭31.12.18)は、本肢と同種の事案において、「民法717条にいわゆる占有者には特に間接占有者を除外すべき法文上の根拠もなくまたこれを首肯せしむベき実質上の理由もない」と判示している。したがって、本肢においても、Aがその所有する甲建物をBに賃貸し、Bが甲建物をCに転貸し、それぞれ引渡しがされた場合、Bは717条1項にいう「占有者」に当たるから、甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによって第三者に生じた損害について、Bは占有者として損害賠償の責任を負う。
判例(最判昭31.12.18)は、本肢と同種の事案において、「民法717条にいわゆる占有者には特に間接占有者を除外すべき法文上の根拠もなくまたこれを首肯せしむベき実質上の理由もない」と判示している。したがって、本肢においても、Aがその所有する甲建物をBに賃貸し、Bが甲建物をCに転貸し、それぞれ引渡しがされた場合、Bは717条1項にいう「占有者」に当たるから、甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによって第三者に生じた損害について、Bは占有者として損害賠償の責任を負う。
総合メモ
共同行為者の流水汚染により惹起された損害と各行為者の賠償すべき損害の範囲 最三小判昭和43年4月23日
概要
共同行為者各自の行為が客観的に関連し、共同して違法に他人に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が、当該違法な加害行為と相当因果関係にある全損害について賠償責任を負う。
判例
事案:共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自が責任を負う損害の範囲を判断する基準が問題となった。
判旨:「共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法を加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべきであ…ると解するのが相当である。」
判旨:「共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法を加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべきであ…ると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第30問 ア)
Aが所有し運転するタクシーに、Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し、AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により、Aには50万円の損害が、Bには80万円の損害が、Cには100万円の損害が、それぞれ生じ、当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で、Bが8割であり、また、Cの負傷にはCの過失がない。Cは、その損害額である100万円全額を、Aに対しても、Bに対しても請求することができる。
Aが所有し運転するタクシーに、Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し、AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により、Aには50万円の損害が、Bには80万円の損害が、Cには100万円の損害が、それぞれ生じ、当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で、Bが8割であり、また、Cの負傷にはCの過失がない。Cは、その損害額である100万円全額を、Aに対しても、Bに対しても請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭43.4.23)は、「共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法を加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべきであ…ると解するのが相当である。」と判示している。本肢においては、AとBの行為は客観的に関連し共同して違法にCに損害を加えたといえ、それぞれ独立に不法行為の要件を備えているといえる。したがって、Cは、その損害額である100万円全額を、Aに対しても、Bに対しても請求することができる。
判例(最判昭43.4.23)は、「共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が右違法を加害行為と相当因果関係にある損害についてその賠償の責に任ずべきであ…ると解するのが相当である。」と判示している。本肢においては、AとBの行為は客観的に関連し共同して違法にCに損害を加えたといえ、それぞれ独立に不法行為の要件を備えているといえる。したがって、Cは、その損害額である100万円全額を、Aに対しても、Bに対しても請求することができる。
総合メモ
後遺障害慰謝料の算定 最二小判平成8年5月31日
概要
交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合、後遺障害による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができる。
判例
事案:交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合において、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たって、死亡後の生活費を控除することができるかが問題となった。
判旨:「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができると解するのが相当である。けだし、交通事故と死亡との間の相当因果関係が認められない場合には、被害者が死亡により生活費の支出を必要としなくなったことは、損害の原因と同一原因により生じたものということができず、両者は損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との関係にないからである。」
判旨:「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができると解するのが相当である。けだし、交通事故と死亡との間の相当因果関係が認められない場合には、被害者が死亡により生活費の支出を必要としなくなったことは、損害の原因と同一原因により生じたものということができず、両者は損益相殺の法理又はその類推適用により控除すべき損失と利得との関係にないからである。」
過去問・解説
(H28 司法 第29問 4)
交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後、別の原因により死亡した場合、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができる。
交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後、別の原因により死亡した場合、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平8.5.31)は、「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができると解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平8.5.31)は、「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合、労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り、死亡後の生活費を控除することができると解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
事故と共同不法行為 最三小判平成13年3月13日
概要
①それぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した場合においても、当該各不法行為が不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にあれば、当該各不法行為の間に共同不法行為(719条)が成立し、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負う。
②各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合を確定することができる場合であっても、被害者の被った損害の額を当該寄与の割合で按分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されない。
②各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合を確定することができる場合であっても、被害者の被った損害の額を当該寄与の割合で按分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されない。
判例
事案:①それぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した場合において、当該各不法行為者の間に共同不法行為が成立し、被害者の被った損害について連帯して賠償する責任を負うことがあるかが問題となった。
②各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合を確定することができる場合において、被害者の被った損害の額を当該寄与の割合で按分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することができるかが問題となった。
判旨:①「本件交通事故により、Aは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの、事故後搬入されたB病院において、Aに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもってAを救命できたということができるから、本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、Aの死亡という不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。
②「本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。けだし、共同不法行為によって被害者の被った損害は、各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして、各不法行為者はその全額を負担すべきものであり、各不法行為者が賠償すべき損害額を案分、限定することは連帯関係を免除することとなり、共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し、これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり、損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。」
②各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合を確定することができる場合において、被害者の被った損害の額を当該寄与の割合で按分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することができるかが問題となった。
判旨:①「本件交通事故により、Aは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの、事故後搬入されたB病院において、Aに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもってAを救命できたということができるから、本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、Aの死亡という不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。
②「本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。けだし、共同不法行為によって被害者の被った損害は、各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして、各不法行為者はその全額を負担すべきものであり、各不法行為者が賠償すべき損害額を案分、限定することは連帯関係を免除することとなり、共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し、これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり、損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。」
過去問・解説
(H24 司法 第29問 5)
暴行を受けて傷害を負った被害者が損害賠償を請求する場合において、被害者の治療を行った医師に診療上の過失があり、そのために被害者の症状が悪化したときであっても、暴行を加えた者と医師は、被害者に対し連帯して損害を賠償する責任を負うことはない。
暴行を受けて傷害を負った被害者が損害賠償を請求する場合において、被害者の治療を行った医師に診療上の過失があり、そのために被害者の症状が悪化したときであっても、暴行を加えた者と医師は、被害者に対し連帯して損害を賠償する責任を負うことはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平13.3.13)は、それぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した場合においても、当該各不法行為が不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にあれば、当該各不法行為の間に共同不法行為(719条)が成立し、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負う旨判示している。本肢においても、暴行と医師の診療上の過失のいずれもが、被害者の症状の悪化という不可分の1個の結果を招来し、当該結果について相当因果関係を有する関係にある場合には、暴行を加えた者と医師との間には共同不法行為が成立するから、被害者に対し連帯して損害を賠償する責任を負うことがあるといえる。
判例(最判平13.3.13)は、それぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した場合においても、当該各不法行為が不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にあれば、当該各不法行為の間に共同不法行為(719条)が成立し、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負う旨判示している。本肢においても、暴行と医師の診療上の過失のいずれもが、被害者の症状の悪化という不可分の1個の結果を招来し、当該結果について相当因果関係を有する関係にある場合には、暴行を加えた者と医師との間には共同不法行為が成立するから、被害者に対し連帯して損害を賠償する責任を負うことがあるといえる。
(H26 共通 第29問 1)
Aの前方不注意による自動車の運転によってBが重傷を負い、Bを治療したCの過失によってBが死亡した場合において、ACの各行為が共同不法行為となるときであっても、Bの死亡という結果の発生に対するA及びCの寄与の割合をそれぞれ確定することができるときは、Aは、Bの死亡による損害の全額を賠償する責任を負わない。
Aの前方不注意による自動車の運転によってBが重傷を負い、Bを治療したCの過失によってBが死亡した場合において、ACの各行為が共同不法行為となるときであっても、Bの死亡という結果の発生に対するA及びCの寄与の割合をそれぞれ確定することができるときは、Aは、Bの死亡による損害の全額を賠償する責任を負わない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平13.3.13)は、本肢と同種の事案において、「被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、ACの各行為が共同不法行為となるときは、Bの死亡という結果の発生に対するA及びCの寄与の割合をそれぞれ確定することができるときであっても、Aは、当該寄与の割合をもってBの被った損害の額を按分し、責任を負うべき損害額を限定することは許されないから、Aは、Bの死亡による損害の全額を賠償する責任を負う。
判例(最判平13.3.13)は、本肢と同種の事案において、「被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、ACの各行為が共同不法行為となるときは、Bの死亡という結果の発生に対するA及びCの寄与の割合をそれぞれ確定することができるときであっても、Aは、当該寄与の割合をもってBの被った損害の額を按分し、責任を負うべき損害額を限定することは許されないから、Aは、Bの死亡による損害の全額を賠償する責任を負う。
(H30 司法 第29問 オ)
交通事故により傷害を受けた者が搬送先の医師の診療上の過失により死亡した場合には、交通事故の加害者と医師が被害者の被った損害について連帯して賠償する責任を負うことはない。
交通事故により傷害を受けた者が搬送先の医師の診療上の過失により死亡した場合には、交通事故の加害者と医師が被害者の被った損害について連帯して賠償する責任を負うことはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平13.3.13)は、本肢と同種の事案において、「本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、Aの死亡という不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。」と判示している。したがって、本肢においても、交通事故の加害者と医師が被害者の被った損害について連帯して賠償する責任を負うことがあるといえる。
判例(最判平13.3.13)は、本肢と同種の事案において、「本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、Aの死亡という不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。」と判示している。したがって、本肢においても、交通事故の加害者と医師が被害者の被った損害について連帯して賠償する責任を負うことがあるといえる。
総合メモ
交通事故における過失相殺 最二小判平成15年7月11日
概要
複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。
判例
事案:複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、いわゆる絶対的過失割合を認定することができる場合に、過失相殺をする基準として、絶対的過失割合を用いるべきかが問題となった。
判旨:「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。」
判旨:「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。」
過去問・解説
(H26 共通 第29問 3)
複数の加害者であるABの過失と被害者Cの過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となった全ての過失の割合を認定することができ、A、B及びCの過失割合が順次5:3:2である場合には、ABは、Cに対し、連帯して、その損害の8割に相当する額を賠償する責任を負う。
複数の加害者であるABの過失と被害者Cの過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となった全ての過失の割合を認定することができ、A、B及びCの過失割合が順次5:3:2である場合には、ABは、Cに対し、連帯して、その損害の8割に相当する額を賠償する責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平15.7.11)は、「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである」 と判示している。したがって、A、B及びCの過失割合が順次5:3:2である場合には、ABの責任は、Cの絶対的過失割合である2割に相当する額分、過失相殺がされるから、ABは、Cに対し、連帯して、その損害の8割に相当する額を賠償する責任を負う。
判例(最判平15.7.11)は、「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである」 と判示している。したがって、A、B及びCの過失割合が順次5:3:2である場合には、ABの責任は、Cの絶対的過失割合である2割に相当する額分、過失相殺がされるから、ABは、Cに対し、連帯して、その損害の8割に相当する額を賠償する責任を負う。
(R1 共通 第29問 ウ)
複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となった全ての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。
複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となった全ての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平15.7.11)は、「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。」と判示している。
判例(最判平15.7.11)は、「複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する1つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。」と判示している。
総合メモ
胎児固有の慰謝料請求 大判昭和7年10月6日
概要
①胎児がその出生前に有する固有の慰謝料請求権(721条)を、胎児の親族が代理行使することはできない。
②胎児の損害賠償請求権につき、その親族が胎児のために加害者と行った和解は、出生後の子を拘束しない。
②胎児の損害賠償請求権につき、その親族が胎児のために加害者と行った和解は、出生後の子を拘束しない。
判例
事案:①胎児が有する固有の慰謝料請求権(721条)を、胎児の親族が代理行使することができるかが問題となった。
②胎児の損害賠償請求権につき、その親族が胎児のために加害者と和解を行った場合において、当該和解が出生後の子を拘束するかが問題となった。
判旨:「AハBカCト和解ノ交渉ヲ為シタル際未タ出生セスDノ胎内ニ在リタルモノニシテ民法ハ胎児ハ損害賠償請求権ニ付キ既ニ生レタルモノト看做シタルモ右ハ胎児カ不法行為ノアリタル後生キテ生レタル場合ニ不法行為ニ因ル損害賠償請求権ノ取得ニ付キテハ出生ノ時ニ遡リテ権利能力アリタルモノト看做サルヘシト云フニ止マリ胎児ニ対シ此ノ請求権ヲ出生前ニ於テ処分シ得ヘキ能力ヲ与ヘントスルノ主旨ニアラサルノミナラス仮令此ノ如キ能力ヲ有シタルモノトスルモ我民法上出生以前ニ其ノ処分行為ヲ代行スヘキ機関ニ関スル規定ナキヲ以テ前示Bノ交渉ハ之ヲ以テAヲ代理シテ為シタル有効ナル処分ト認ムルニ由ナク又仮ニ原判決ノ趣旨ニシテBカ親族ノD等ヲ代理シ又ハ自ラ将来出生スヘキAノ為ニ叙上ノ和解契約ヲ為シタルコトヲ認メタルニアリト解スルモCハAノ出生後同人ノ為ニAノ為シタル処置ニ付キAニ於テ契約ノ利益ヲ享受スル意思ノ表示セラレタル事実ヲ主張セス原審モ亦此ノ如キ事実ヲ認定セサリシモノナルヲ以テBノ為シタル前記和解契約ハAニ対シテハ何等ノ効力ナキモノト云ハサルヘカラス。」
②胎児の損害賠償請求権につき、その親族が胎児のために加害者と和解を行った場合において、当該和解が出生後の子を拘束するかが問題となった。
判旨:「AハBカCト和解ノ交渉ヲ為シタル際未タ出生セスDノ胎内ニ在リタルモノニシテ民法ハ胎児ハ損害賠償請求権ニ付キ既ニ生レタルモノト看做シタルモ右ハ胎児カ不法行為ノアリタル後生キテ生レタル場合ニ不法行為ニ因ル損害賠償請求権ノ取得ニ付キテハ出生ノ時ニ遡リテ権利能力アリタルモノト看做サルヘシト云フニ止マリ胎児ニ対シ此ノ請求権ヲ出生前ニ於テ処分シ得ヘキ能力ヲ与ヘントスルノ主旨ニアラサルノミナラス仮令此ノ如キ能力ヲ有シタルモノトスルモ我民法上出生以前ニ其ノ処分行為ヲ代行スヘキ機関ニ関スル規定ナキヲ以テ前示Bノ交渉ハ之ヲ以テAヲ代理シテ為シタル有効ナル処分ト認ムルニ由ナク又仮ニ原判決ノ趣旨ニシテBカ親族ノD等ヲ代理シ又ハ自ラ将来出生スヘキAノ為ニ叙上ノ和解契約ヲ為シタルコトヲ認メタルニアリト解スルモCハAノ出生後同人ノ為ニAノ為シタル処置ニ付キAニ於テ契約ノ利益ヲ享受スル意思ノ表示セラレタル事実ヲ主張セス原審モ亦此ノ如キ事実ヲ認定セサリシモノナルヲ以テBノ為シタル前記和解契約ハAニ対シテハ何等ノ効力ナキモノト云ハサルヘカラス。」
過去問・解説
(H23 共通 第30問 ア)
胎児の父が他人の不法行為によって死亡した場合、胎児の母は、子の出生前であっても、その代理人として子の固有の慰謝料請求権を行使することができる。
胎児の父が他人の不法行為によって死亡した場合、胎児の母は、子の出生前であっても、その代理人として子の固有の慰謝料請求権を行使することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭7.10.6)は、胎児がその出生前に有する固有の慰謝料請求権(721条)を、胎児の親族が代理行使することはできない旨判示している。したがって、胎児の父が他人の不法行為によって死亡した場合であっても、胎児の母は、子の出生前は、その代理人として子の固有の慰謝料請求権を行使することができない。
判例(大判昭7.10.6)は、胎児がその出生前に有する固有の慰謝料請求権(721条)を、胎児の親族が代理行使することはできない旨判示している。したがって、胎児の父が他人の不法行為によって死亡した場合であっても、胎児の母は、子の出生前は、その代理人として子の固有の慰謝料請求権を行使することができない。
(H30 司法 第1問 オ)
胎児のときに不法行為を受けた者は、出生前にその父母が胎児を代理して加害者とした和解に拘束される。
胎児のときに不法行為を受けた者は、出生前にその父母が胎児を代理して加害者とした和解に拘束される。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭7.10.6)は、本肢と同種の事案において、胎児の損害賠償請求権につき、その親族が胎児のために加害者と行った和解は、出生後の子を拘束しない旨判示している。したがって、胎児のときに不法行為を受けた者は、出生前にその父母が胎児を代理して加害者とした和解に拘束されない。
判例(大判昭7.10.6)は、本肢と同種の事案において、胎児の損害賠償請求権につき、その親族が胎児のために加害者と行った和解は、出生後の子を拘束しない旨判示している。したがって、胎児のときに不法行為を受けた者は、出生前にその父母が胎児を代理して加害者とした和解に拘束されない。
(R4 司法 第29問 エ)
胎児Aの父が不法行為により死亡した場合、Aの母は、Aが生まれる前であっても、Aの代理人として、加害者に対し、Aの固有の慰謝料を請求することができる。
胎児Aの父が不法行為により死亡した場合、Aの母は、Aが生まれる前であっても、Aの代理人として、加害者に対し、Aの固有の慰謝料を請求することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭7.10.6)は、胎児がその出生前に有する固有の慰謝料請求権(721条)を、胎児の親族が代理行使することはできない旨判示している。したがって、胎児Aの父が不法行為により死亡した場合であっても、Aの母は、Aが生まれる前は、Aの代理人として、加害者に対し、Aの固有の慰謝料を請求することができない。
判例(大判昭7.10.6)は、胎児がその出生前に有する固有の慰謝料請求権(721条)を、胎児の親族が代理行使することはできない旨判示している。したがって、胎児Aの父が不法行為により死亡した場合であっても、Aの母は、Aが生まれる前は、Aの代理人として、加害者に対し、Aの固有の慰謝料を請求することができない。
総合メモ
父母の過失と722条2項 最一小判昭和34年11月26日
過去問・解説
(H24 司法 第29問 4)
交通事故の被害者である幼児に過失がなかったときは、その父又は母に過失があったとしても、それを理由として賠償額が減額されることはない。
交通事故の被害者である幼児に過失がなかったときは、その父又は母に過失があったとしても、それを理由として賠償額が減額されることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭34.11.26)は、「民法722条にいわゆる過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解するを相当とする。」と判示している。そして、722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定している。
本肢においては、交通事故の被害者である幼児に過失がなかったとしても、その父又は母に過失があったときは、当該過失は被害者側の過失として、同項にいう「過失」に当たるといえる。したがって、当該過失を理由として、同項により、賠償額が減額されることがある。
判例(最判昭34.11.26)は、「民法722条にいわゆる過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解するを相当とする。」と判示している。そして、722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定している。
本肢においては、交通事故の被害者である幼児に過失がなかったとしても、その父又は母に過失があったときは、当該過失は被害者側の過失として、同項にいう「過失」に当たるといえる。したがって、当該過失を理由として、同項により、賠償額が減額されることがある。
総合メモ
被害者の過失と弁識能力の程度 最大判昭和39年6月24日
概要
722条2項により被害者の過失を斟酌するには、被害者たる未成年者が、事理を弁識するに足る知能を具えていれば足り、行為の責任を弁識するに足る知能を具えていることを要しない。
判例
事案:722条2項により被害者の過失を斟酌して過失相殺をする場合において、被害者がどの程度の弁識能力を備えていれば足りるかが問題となった。
判旨:「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」
判旨:「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第29問 イ)
被害者が未成年である場合、その過失を斟酌するには、被害者たる未成年者に行為の責任を弁識する能力が必要である。
被害者が未成年である場合、その過失を斟酌するには、被害者たる未成年者に行為の責任を弁識する能力が必要である。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
(H23 共通 第30問 エ)
不法行為による身体傷害の場合、被害者に責任能力が備わっていないときは、その過失を考慮して損害賠償の額を決めることができない。
不法行為による身体傷害の場合、被害者に責任能力が備わっていないときは、その過失を考慮して損害賠償の額を決めることができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
(R1 共通 第29問 ア)
被害者の過失を考慮するためには、被害者に自己の行為の責任を弁識するに足りる知能が備わっていることを要する。
被害者の過失を考慮するためには、被害者に自己の行為の責任を弁識するに足りる知能が備わっていることを要する。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
(R5 共通 第30問 オ)
損害賠償の額を定めるに当たり、被害を受けた未成年者の過失を考慮するためには、その未成年者に事理を弁識するに足りる知能が備わっていれば足りる。
損害賠償の額を定めるに当たり、被害を受けた未成年者の過失を考慮するためには、その未成年者に事理を弁識するに足りる知能が備わっていれば足りる。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最大判昭39.6.24)は、「民法722条2項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
722条第2項にいう被害者の範囲 最三小判昭和42年6月27日
概要
722条2項に定める被害者の過失とは、単に被害者本人の過失のみではなく、ひろく被害者側の過失をも包含するが、被害者本人が幼児である場合において、被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいう。
判例
事案:不法行為の被害者本人が幼児である場合において、当該幼児の両親により当該幼児の監護を委託された者の被用者の過失が、722条2項の「過失」に当たるかが問題となった。
判旨:「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するを相当とし、所論のように両親より幼児の監護を委託された者の被用者のような被害者と一体をなすとみられない者の過失はこれに含まれないものと解すべきである。けだし、同条項が損害賠償の額を定めるにあたつて被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは、発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものである以上、被害者と一体をなすとみられない者の過失を斟酌することは、第三者の過失によつて生じた損害を被害者の負担に帰せしめ、加害者の負担を免ずることとなり、却つて公平の理念に反する結果となるからである。」
判旨:「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するを相当とし、所論のように両親より幼児の監護を委託された者の被用者のような被害者と一体をなすとみられない者の過失はこれに含まれないものと解すべきである。けだし、同条項が損害賠償の額を定めるにあたつて被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは、発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものである以上、被害者と一体をなすとみられない者の過失を斟酌することは、第三者の過失によつて生じた損害を被害者の負担に帰せしめ、加害者の負担を免ずることとなり、却つて公平の理念に反する結果となるからである。」
過去問・解説
(H20 司法 第29問 ウ)
被害者が幼児である場合における被害者側の過失とは、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうのであり、両親より幼児の監護を委託された保育園の被用者の過失は含まれない。
被害者が幼児である場合における被害者側の過失とは、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうのであり、両親より幼児の監護を委託された保育園の被用者の過失は含まれない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.6.27)は、本肢と同種の事案において、「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するを相当とし、所論のように両親より幼児の監護を委託された者の被用者のような被害者と一体をなすとみられない者の過失はこれに含まれないものと解すべきである。」と判示している。
判例(最判昭42.6.27)は、本肢と同種の事案において、「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するを相当とし、所論のように両親より幼児の監護を委託された者の被用者のような被害者と一体をなすとみられない者の過失はこれに含まれないものと解すべきである。」と判示している。
(H26 共通 第29問 4)
Aの不法行為により未成年者Bが重傷を負った場合において、Bが事理弁識能力を有していなかったときであっても、その損害の発生についてBの親に監督上の過失が認められるときには、Aは、過失相殺による損害額の減額を主張することができる。
Aの不法行為により未成年者Bが重傷を負った場合において、Bが事理弁識能力を有していなかったときであっても、その損害の発生についてBの親に監督上の過失が認められるときには、Aは、過失相殺による損害額の減額を主張することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.6.27)は、本肢と同種の事案において、「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解する…。」と判示している。したがって、Aの不法行為により未成年者Bが重傷を負った場合において、Bが事理弁識能力を有していなかったときであっても、その損害の発生についてBの親に監督上の過失が認められるときには、当該過失は被害者側の過失として、722条2項の「過失」に当たるといえるから、Aは、過失相殺による損害額の減額を主張することができる。
判例(最判昭42.6.27)は、本肢と同種の事案において、「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解する…。」と判示している。したがって、Aの不法行為により未成年者Bが重傷を負った場合において、Bが事理弁識能力を有していなかったときであっても、その損害の発生についてBの親に監督上の過失が認められるときには、当該過失は被害者側の過失として、722条2項の「過失」に当たるといえるから、Aは、過失相殺による損害額の減額を主張することができる。
(R6 司法 第31問 オ)
自動車の運転者の過失による事故の被害者が幼児である場合において、両親より幼児の監護を委託された保育園の被用者の過失が事故の発生に寄与しているとしても、裁判所は、その者の過失を考慮して過失相殺による賠償額の減額をすることができない。
自動車の運転者の過失による事故の被害者が幼児である場合において、両親より幼児の監護を委託された保育園の被用者の過失が事故の発生に寄与しているとしても、裁判所は、その者の過失を考慮して過失相殺による賠償額の減額をすることができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.6.27)は、本肢と同種の事案において、「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するを相当とし、所論のように両親より幼児の監護を委託された者の被用者のような被害者と一体をなすとみられない者の過失はこれに含まれないものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、両親より幼児の監護を委託された保育園の被用者の過失が事故の発生に寄与しているとしても、裁判所は、その者の過失を考慮して過失相殺による賠償額の減額をすることができない。
判例(最判昭42.6.27)は、本肢と同種の事案において、「民法722条2項に定める被害者の過失とは単に被害者本人の過失のみでなく、ひろく被害者側の過失をも包含する趣旨と解すべきではあるが、本件のように被害者本人が幼児である場合において、右にいう被害者側の過失とは、例えば被害者に対する監督者である父母ないしはその被用者である家事使用人などのように、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうものと解するを相当とし、所論のように両親より幼児の監護を委託された者の被用者のような被害者と一体をなすとみられない者の過失はこれに含まれないものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、両親より幼児の監護を委託された保育園の被用者の過失が事故の発生に寄与しているとしても、裁判所は、その者の過失を考慮して過失相殺による賠償額の減額をすることができない。
総合メモ
交通事故と被害者側の過失相殺 最一小判昭和51年3月25日
概要
夫の運転する自動車に同乗する妻が、当該自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被った場合において、衝突につき夫にも過失があるときは、夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り、第三者の負担すべき損害賠償額を定めるにつき、夫の過失を722条2項にいう「過失」として斟酌することができる。
判例
事案:夫の運転する自動車に同乗する妻が、当該自動車と第三者の運転する自動車との衝突により損害を被った場合において、妻が当該第三者に対して損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについて、夫の過失を722条2項にいう「過失」として斟酌することができるかが問題となった。
判旨:「民法722条2項が不法行為による損害賠償の額を定めるにつき被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは、不法行為によつて発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものであると考えられるから、右被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失、すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。したがつて、夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を被つた妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについては、右夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とする。このように解するときは、加害者が、いつたん被害者である妻に対して全損害を賠償した後、夫にその過失に応じた負担部分を求償するという求償関係をも一挙に解決し、紛争を1回で処理することができるという合理性もある。」
判旨:「民法722条2項が不法行為による損害賠償の額を定めるにつき被害者の過失を斟酌することができる旨を定めたのは、不法行為によつて発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものであると考えられるから、右被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失、すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。したがつて、夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を被つた妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについては、右夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とする。このように解するときは、加害者が、いつたん被害者である妻に対して全損害を賠償した後、夫にその過失に応じた負担部分を求償するという求償関係をも一挙に解決し、紛争を1回で処理することができるという合理性もある。」
過去問・解説
(H20 司法 第29問 ア)
夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、第三者と夫の双方の過失が競合して衝突したため、負傷した妻が第三者に対し損害賠償を請求した場合には、特段の事情のない限り、第三者の賠償額を定めるにつき夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができる。
夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、第三者と夫の双方の過失が競合して衝突したため、負傷した妻が第三者に対し損害賠償を請求した場合には、特段の事情のない限り、第三者の賠償額を定めるにつき夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭51.3.25)は、「夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を被った妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについては、右夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とする。」と判示している。
判例(最判昭51.3.25)は、「夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を被った妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについては、右夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解するのを相当とする。」と判示している。
総合メモ
被害者の心因的要因につていの722条2項の類推適用 最一小判昭和63年4月21日
概要
身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害が加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであつて、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害賠償額を定めるにつき、722条2項を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の事情を斟酌することができる。
判例
事案:身体に対する加害行為によって生じた損害についての損害賠償請求がされた場合において、その損害賠償の額を定めるに当たり、被害者の心因的要因を斟酌することができるかが問題となった。
判旨:「身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによつて通常発生する程度、範囲を超えるものであつて、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。」
判旨:「身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによつて通常発生する程度、範囲を超えるものであつて、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第29問 エ)
身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害が加害行為のみによって通常発生する程度や範囲を超えるものであり、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害賠償額を定めるにつき、過失相殺の規定を類推適用して、損害の拡大に寄与した被害者の心因的要因を斟酌することができる。
身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害が加害行為のみによって通常発生する程度や範囲を超えるものであり、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害賠償額を定めるにつき、過失相殺の規定を類推適用して、損害の拡大に寄与した被害者の心因的要因を斟酌することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭63.4.21)は、「身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭63.4.21)は、「身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
被害者の疾患と損害賠償の過失相殺 最一小判平成4年6月25日
概要
被害者に対する加害行為と被害者が罹患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、722条2項の規定を類推適用して、被害者の疾患を斟酌することができる。
判例
事案:被害者に対する加害行為と被害者が罹患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、損害賠償額の算定に当たり、加害行為前から存在した被害者の疾患を斟酌することができるかが問題となった。
判旨:「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においてもなお、被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである。」
判旨:「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においてもなお、被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである。」
過去問・解説
(R1 共通 第29問 エ)
被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、過失相殺の規定を類推適用して、被害者の疾患を考慮することができる。
被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、過失相殺の規定を類推適用して、被害者の疾患を考慮することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平4.6.25)は、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平4.6.25)は、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
内縁関係にある者の被害者側の過失 最三小判平成19年4月24日
概要
内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と、第三者が運転する自動車とが衝突し、それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。
判例
事案:内縁の夫の運転する自動車に同乗中に、第三者の運転する自動車との衝突事故により傷害を負った内縁の妻が、第三者に対して損害賠償を請求する場合において、当該事故の発生につき内縁の夫にも過失があるとき、その賠償額を定めるに当たって、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができるかが問題となった。
判旨:「不法行為に基づき被害者に対して支払われるべき損害賠償額を定めるに当たっては、被害者と身分上、生活関係上一体を成すとみられるような関係にある者の過失についても、民法722条2項の規定により、いわゆる被害者側の過失としてこれを考慮することができる(最高裁昭和40年(オ)第1056号同42年6月27日第三小法廷判決・民集21巻6号1507頁、最高裁昭和47年(オ)第457号同51年3月25日第一小法廷判決・民集30巻2号160頁参照)。内縁の夫婦は、婚姻の届出はしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり、身分上、生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。そうすると、内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し、それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当である。」
判旨:「不法行為に基づき被害者に対して支払われるべき損害賠償額を定めるに当たっては、被害者と身分上、生活関係上一体を成すとみられるような関係にある者の過失についても、民法722条2項の規定により、いわゆる被害者側の過失としてこれを考慮することができる(最高裁昭和40年(オ)第1056号同42年6月27日第三小法廷判決・民集21巻6号1507頁、最高裁昭和47年(オ)第457号同51年3月25日第一小法廷判決・民集30巻2号160頁参照)。内縁の夫婦は、婚姻の届出はしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり、身分上、生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。そうすると、内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し、それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当である。」
過去問・解説
(R1 共通 第29問 イ)
内縁の夫が運転する自動車に同乗していた者が、内縁の夫と第三者の双方の過失による交通事故で負傷し、第三者に対し損害賠償を請求する場合において、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することはできない。
内縁の夫が運転する自動車に同乗していた者が、内縁の夫と第三者の双方の過失による交通事故で負傷し、第三者に対し損害賠償を請求する場合において、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平19.4.24)は、「内縁の夫婦は、婚姻の届出はしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり、身分上、生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。そうすると、内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し、それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平19.4.24)は、「内縁の夫婦は、婚姻の届出はしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり、身分上、生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。そうすると、内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し、それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
723条の「名誉」と名誉感情 最二小判昭和45年12月18日
概要
723条にいう「名誉」とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであって、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まない。
判例
事案:723条の「名誉」に、名誉感情が含まれるかが問題となった。
判旨:「民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解するのが相当である。けだし、同条が、名誉を毀損された被害者の救済処分として、損害の賠償のほかに、それに代えまたはそれとともに、原状回復処分を命じうることを規定している趣旨は、その処分により、加害者に対して制裁を加えたり、また、加害者に謝罪等をさせることにより被害者に主観的な満足を与えたりするためではなく、金銭による損害賠償のみでは填補されえない、毀損された被害者の人格的価値に対する社会的、客観的な評価自体を回復することを可能ならしめるためであると解すべきであり、したがつて、このような原状回復処分をもつて救済するに適するのは、人の社会的名誉が毀損された場合であり、かつ、その場合にかぎられると解するのが相当であるからである。」
判旨:「民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解するのが相当である。けだし、同条が、名誉を毀損された被害者の救済処分として、損害の賠償のほかに、それに代えまたはそれとともに、原状回復処分を命じうることを規定している趣旨は、その処分により、加害者に対して制裁を加えたり、また、加害者に謝罪等をさせることにより被害者に主観的な満足を与えたりするためではなく、金銭による損害賠償のみでは填補されえない、毀損された被害者の人格的価値に対する社会的、客観的な評価自体を回復することを可能ならしめるためであると解すべきであり、したがつて、このような原状回復処分をもつて救済するに適するのは、人の社会的名誉が毀損された場合であり、かつ、その場合にかぎられると解するのが相当であるからである。」
過去問・解説
(R4 司法 第29問 ウ)
名誉感情を侵害された場合、被害者は、これを理由として、名誉感情を回復するのに適当な処分を請求することができない。
名誉感情を侵害された場合、被害者は、これを理由として、名誉感情を回復するのに適当な処分を請求することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭45.12.18)は、「民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであって、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解するのが相当である。」と判示している。そして、723条は、「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。」と規定している。したがって、名誉感情を侵害された場合、被害者は、これを理由として、名誉感情を回復するのに適当な処分を請求することができない。
判例(最判昭45.12.18)は、「民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであって、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解するのが相当である。」と判示している。そして、723条は、「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。」と規定している。したがって、名誉感情を侵害された場合、被害者は、これを理由として、名誉感情を回復するのに適当な処分を請求することができない。
総合メモ
石に泳ぐ魚事件 最三小判平成14年9月24日
概要
公共の利害にかかわらない者のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む小説の公表により、同人の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害された場合は、これらの利益を保護するため、裁判所に適当な処分を請求することができる。
判例
事案:公共の利害にかかわらない者のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む小説の公表により、同人の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害された場合において、これらの利益を保護するため、裁判所に適当な処分を請求することができるかが問題となった。
判旨:「公共の利益に係わらない被上告人のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む本件小説の公表により公的立場にない被上告人の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害されたものであって、本件小説の出版等により被上告人に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるというべきである。したがって、人格権としての名誉権等に基づく被上告人の各請求を認容した判断に違法はなく、この判断が憲法21条1項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和41年(あ)第2472号同44年6月25日大法廷判決・刑集23巻7号975頁、最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)の趣旨に照らして明らかである。」
判旨:「公共の利益に係わらない被上告人のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む本件小説の公表により公的立場にない被上告人の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害されたものであって、本件小説の出版等により被上告人に重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるというべきである。したがって、人格権としての名誉権等に基づく被上告人の各請求を認容した判断に違法はなく、この判断が憲法21条1項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和41年(あ)第2472号同44年6月25日大法廷判決・刑集23巻7号975頁、最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)の趣旨に照らして明らかである。」
過去問・解説
(H22 司法 第8問 ア)
裁判所は、他人のプライバシーを侵害した者に対し、被害者の請求により、損害賠償に代え、プライバシーを保護するのに適当な処分を命ずることができる。
裁判所は、他人のプライバシーを侵害した者に対し、被害者の請求により、損害賠償に代え、プライバシーを保護するのに適当な処分を命ずることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平14.9.24)は、公共の利害にかかわらない者のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む小説の公表により、同人の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害された場合は、これらの利益を保護するため、裁判所に適当な処分を請求することができる旨判示している。したがって、裁判所は、他人のプライバシーを侵害した者に対し、被害者の請求により、損害賠償に代え、プライバシーを保護するのに適当な処分を命ずることができる。
判例(最判平14.9.24)は、公共の利害にかかわらない者のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む小説の公表により、同人の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害された場合は、これらの利益を保護するため、裁判所に適当な処分を請求することができる旨判示している。したがって、裁判所は、他人のプライバシーを侵害した者に対し、被害者の請求により、損害賠償に代え、プライバシーを保護するのに適当な処分を命ずることができる。
総合メモ
遅延損害金債権への724条の適用 大連判昭和11年7月15日
概要
不法行為に基づく損害賠償債務の不履行により生じた遅延損害金債権の消滅時効には、724条が適用される。
判例
事案:不法行為に基づく損害賠償債務により生じた遅延損害金債権についての消滅時効に、724条が適用されるかが問題となった。
判旨:「基本タル債権カ短期時効ニ因リテ消滅スルニ拘ラス其ノ不履行ニ基ク遅延利息ノ債権ノミカ10年ノ時効ニ罹ル迄残存スト云フカ如キハ法律カ或種ノ債権ニ付特ニ短期時効ノ規定ヲ設ケテ速ニ当事者ノ権利関係ヲ確定セントシタル趣旨ニ合セス加之遅延利息ノ債権ハ本来基本債権ノ拡張トモ云フヘキモノナルカ故ニ此ノ性質ヨリ見ルモ其ノ消滅時効ノ如キハ総テ基本債権ノ時効ニ関スル規定ニ従フモノト解スルヲ相当トスサレハ不法行為ニ基ク損害賠償債権ノ不履行ヲ原因トスル本訴債権カ民法第724条ノ適用ヲ受クヘキモノト為シタル原判旨ハ相当ニシテ之ニ反スル論旨ノ見解ハ採用シ難ク論旨ト同趣旨ノ所論判例ハ之ヲ変更スヘキモノトス。」
判旨:「基本タル債権カ短期時効ニ因リテ消滅スルニ拘ラス其ノ不履行ニ基ク遅延利息ノ債権ノミカ10年ノ時効ニ罹ル迄残存スト云フカ如キハ法律カ或種ノ債権ニ付特ニ短期時効ノ規定ヲ設ケテ速ニ当事者ノ権利関係ヲ確定セントシタル趣旨ニ合セス加之遅延利息ノ債権ハ本来基本債権ノ拡張トモ云フヘキモノナルカ故ニ此ノ性質ヨリ見ルモ其ノ消滅時効ノ如キハ総テ基本債権ノ時効ニ関スル規定ニ従フモノト解スルヲ相当トスサレハ不法行為ニ基ク損害賠償債権ノ不履行ヲ原因トスル本訴債権カ民法第724条ノ適用ヲ受クヘキモノト為シタル原判旨ハ相当ニシテ之ニ反スル論旨ノ見解ハ採用シ難ク論旨ト同趣旨ノ所論判例ハ之ヲ変更スヘキモノトス。」
過去問・解説
(H19 司法 第29問 エ)
不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、遅延損害金債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効消滅する。
不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、遅延損害金債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効消滅する。
(正答)✕
(解説)
判例(大連判昭11.7.15)は、不法行為に基づく損害賠償債務の不履行により生じた遅延損害金債権の消滅時効には、724条が適用される旨判示している。そして、724条は、その柱書において「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。」と規定しており、1号において「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。」と規定し、2号において「不法行為の時から20年間行使しないとき。」と規定している。
判例(大連判昭11.7.15)は、不法行為に基づく損害賠償債務の不履行により生じた遅延損害金債権の消滅時効には、724条が適用される旨判示している。そして、724条は、その柱書において「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。」と規定しており、1号において「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。」と規定し、2号において「不法行為の時から20年間行使しないとき。」と規定している。
総合メモ
継続的不法行為の消滅時効の起算点 大連判昭和15年12月14日
概要
継続的不法行為により発生する損害賠償請求権の消滅時効は、加害行為が止んだ時から進行するのではなく、それぞれの損害を知った時から別個に進行する。
判例
事案:継続的不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効が、いつの時点を基準として進行を始めるかが問題となった。
判旨:「不法行為ニ因ル損害賠償ノ請求権ハ被害者又ハ其法定代理人カ損害及加害者ヲ知リタル時ヨリ3年ノ短期時効ニ因リ消滅スヘキハ民法第724条ノ規定スルトコロニシテ被害者カ其損害ヲ知ルトハ必スシモ損害ノ全範囲若クハ損害額ノ全部ヲ知ルヲ要スルモノニアラス苟クモ不法行為ニ基ク損害ノ発生ヲ知リタル以上其損害ト牽聯一体ヲ為セル損害ニシテ当時ニ於テ其発生ヲ予想シ得ヘキモノト為スコト社会通念上妥当トセラルルモノニ在リテハ凡テ被害者之カ認識アリタルモノトシテ同条所定ノ短期時効ハ其全損害ニ付キ此時ヨリシテ進行ヲ始ムルモノト解スヘキコト洵ニ同条立法ノ本旨ニ合スルモノト云フヘク而シテ右ハ不法行為アリタル後ニ於テ其行為ノ結果タル損害カ長期ニ亙リテ継続シテ発生スル場合ニ於テモ其理ヲ一ニスルモノト為ササルヘカラス然レトモ均シク損害カ継続シテ発生スル場合ナルモ加害行為カ終止シタル後ニ於テ損害ノミカ継続スル場合ニアラスシテ不法行為ソレ自体カ継続シテ行ハレソレカ為メニ損害モ亦継続シテ発生スルカ如キ場合ハ前叙ノ法理ニ従フヲ得ス其損害ノ継続発生スル限リ日ニ新ナル不法行為ニ基ク損害トシテ民法第724条ノ適用ニ関シテハ其各損害ヲ知リタル時ヨリ別個ニ消滅時効ハ進行スルモノト解セサルヘカラス蓋シカクノ如キ不法行為ニ在リテハ当初其損害ノ発生ヲ知ルモ将来継続シテ損害ノ発生スルヤハ必スシモ之ヲ予想シ得ルトコロニアラス不法行為ノ継続スルハ一ニ加害者カ其加害行為ヲ廃止セサルニ由ルモノニシテ損害ノ発生モ亦之ニ伴フテ生スルニ過キス行為者ハ之ヲ廃止スヘキ法律上ノ義務アルニ拘ラス此義務ニ背反シテ之ヲ廃止セサル為メ之ニ基因シテ損害ハ発生スルモノニシテカクノ如キ損害ヲモ被害者ニ於テ当初ヨリ予想シ得ヘキモノト為スカ如キハ社会通念上当ヲ得タルモノト為シ難キノミナラス若シカクノ如キ損害ニ付テモ当初其損害ノ一端ヲ知リタル時ヨリ時効進行スルモノトセンカ不法行為ハ尚現ニ継続セラルルニ拘ラスソノ日々ニ発生スル損害ハ既ニ時効完成ノ為メ之カ賠償ヲ求ムルヲ得サルノ結論ニ達シ其不合理ナル結果ハ到底之ヲ忍容シ得ヘキトコロニアラスカクノ如キハ同法ノ短期時効制定ノ趣旨ニモ背馳スルコト固ヨリ多言ヲ要セサレハナリ。」
判旨:「不法行為ニ因ル損害賠償ノ請求権ハ被害者又ハ其法定代理人カ損害及加害者ヲ知リタル時ヨリ3年ノ短期時効ニ因リ消滅スヘキハ民法第724条ノ規定スルトコロニシテ被害者カ其損害ヲ知ルトハ必スシモ損害ノ全範囲若クハ損害額ノ全部ヲ知ルヲ要スルモノニアラス苟クモ不法行為ニ基ク損害ノ発生ヲ知リタル以上其損害ト牽聯一体ヲ為セル損害ニシテ当時ニ於テ其発生ヲ予想シ得ヘキモノト為スコト社会通念上妥当トセラルルモノニ在リテハ凡テ被害者之カ認識アリタルモノトシテ同条所定ノ短期時効ハ其全損害ニ付キ此時ヨリシテ進行ヲ始ムルモノト解スヘキコト洵ニ同条立法ノ本旨ニ合スルモノト云フヘク而シテ右ハ不法行為アリタル後ニ於テ其行為ノ結果タル損害カ長期ニ亙リテ継続シテ発生スル場合ニ於テモ其理ヲ一ニスルモノト為ササルヘカラス然レトモ均シク損害カ継続シテ発生スル場合ナルモ加害行為カ終止シタル後ニ於テ損害ノミカ継続スル場合ニアラスシテ不法行為ソレ自体カ継続シテ行ハレソレカ為メニ損害モ亦継続シテ発生スルカ如キ場合ハ前叙ノ法理ニ従フヲ得ス其損害ノ継続発生スル限リ日ニ新ナル不法行為ニ基ク損害トシテ民法第724条ノ適用ニ関シテハ其各損害ヲ知リタル時ヨリ別個ニ消滅時効ハ進行スルモノト解セサルヘカラス蓋シカクノ如キ不法行為ニ在リテハ当初其損害ノ発生ヲ知ルモ将来継続シテ損害ノ発生スルヤハ必スシモ之ヲ予想シ得ルトコロニアラス不法行為ノ継続スルハ一ニ加害者カ其加害行為ヲ廃止セサルニ由ルモノニシテ損害ノ発生モ亦之ニ伴フテ生スルニ過キス行為者ハ之ヲ廃止スヘキ法律上ノ義務アルニ拘ラス此義務ニ背反シテ之ヲ廃止セサル為メ之ニ基因シテ損害ハ発生スルモノニシテカクノ如キ損害ヲモ被害者ニ於テ当初ヨリ予想シ得ヘキモノト為スカ如キハ社会通念上当ヲ得タルモノト為シ難キノミナラス若シカクノ如キ損害ニ付テモ当初其損害ノ一端ヲ知リタル時ヨリ時効進行スルモノトセンカ不法行為ハ尚現ニ継続セラルルニ拘ラスソノ日々ニ発生スル損害ハ既ニ時効完成ノ為メ之カ賠償ヲ求ムルヲ得サルノ結論ニ達シ其不合理ナル結果ハ到底之ヲ忍容シ得ヘキトコロニアラスカクノ如キハ同法ノ短期時効制定ノ趣旨ニモ背馳スルコト固ヨリ多言ヲ要セサレハナリ。」
総合メモ
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効 最三小判昭和42年7月18日
概要
不法行為によって受傷した被害者が、その受傷について、相当期間経過後に、受傷当時には医学的に通常予想しえなかった治療が必要となり、治療のため費用を支出することを余儀なくされるに至った等の事実がある場合、後日その治療を受けるまでは、治療に要した費用について724条の消滅時効は進行しない。
判例
事案:不法行為によって受傷した被害者が、その受傷について、相当期間経過後に、受傷当時には医学的に通常予想しえなかった治療が必要となり、治療のため費用を支出することを余儀なくされるに至った等の事実がある場合において、治療に要した費用についての損害賠償請求権に関する724条の消滅時効は、いつの時点を基準として進行を始めるかが問題となった。
判旨:「被害者が不法行為に基づく損害の発生を知つた以上、その損害と牽連一体をなす損害であつて当時においてその発生を予見することが可能であつたものについては、すべて被害者においてその認識があつたものとして、民法724条所定の時効は前記損害の発生を知つた時から進行を始めるものと解すべきではあるが、本件の場合のように、受傷時から相当期間経過後に原判示の経緯で前記の後遺症が現われ、そのため受傷時においては医学的にも通常予想しえなかつたような治療方法が必要とされ、右治療のため費用を支出することを余儀なくされるにいたつた等、原審認定の事実関係のもとにおいては、後日その治療を受けるようになるまでは、右治療に要した費用すなわち損害については、同条所定の時効は進行しないものと解するのが相当である。けだし、このように解しなければ、被害者としては、たとい不法行為による受傷の事実を知つたとしても、当時においては未だ必要性の判明しない治療のための費用について、これを損害としてその賠償を請求するに由なく、ために損害賠償請求権の行使が事実上不可能なうちにその消滅時効が開始することとなつて、時効の起算点に関する特則である民法724条を設けた趣旨に反する結果を招来するにいたるからである。」
判旨:「被害者が不法行為に基づく損害の発生を知つた以上、その損害と牽連一体をなす損害であつて当時においてその発生を予見することが可能であつたものについては、すべて被害者においてその認識があつたものとして、民法724条所定の時効は前記損害の発生を知つた時から進行を始めるものと解すべきではあるが、本件の場合のように、受傷時から相当期間経過後に原判示の経緯で前記の後遺症が現われ、そのため受傷時においては医学的にも通常予想しえなかつたような治療方法が必要とされ、右治療のため費用を支出することを余儀なくされるにいたつた等、原審認定の事実関係のもとにおいては、後日その治療を受けるようになるまでは、右治療に要した費用すなわち損害については、同条所定の時効は進行しないものと解するのが相当である。けだし、このように解しなければ、被害者としては、たとい不法行為による受傷の事実を知つたとしても、当時においては未だ必要性の判明しない治療のための費用について、これを損害としてその賠償を請求するに由なく、ために損害賠償請求権の行使が事実上不可能なうちにその消滅時効が開始することとなつて、時効の起算点に関する特則である民法724条を設けた趣旨に反する結果を招来するにいたるからである。」
過去問・解説
(H19 司法 第29問 イ)
交通事故による受傷の当時医学的に通常予想できなかった後遺症が後日生じた場合であっても、後遺症の治療費の損害賠償債権の消滅時効は、被害者又はその法定代理人が当該事故による傷害と加害者を知った時から起算される。
交通事故による受傷の当時医学的に通常予想できなかった後遺症が後日生じた場合であっても、後遺症の治療費の損害賠償債権の消滅時効は、被害者又はその法定代理人が当該事故による傷害と加害者を知った時から起算される。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭42.7.18)は、「被害者が不法行為に基づく損害の発生を知つた以上、その損害と牽連一体をなす損害であつて当時においてその発生を予見することが可能であつたものについては、すべて被害者においてその認識があつたものとして、民法724条所定の時効は前記損害の発生を知つた時から進行を始めるものと解すべきではあるが、…受傷時から相当期間経過後に…後遺症が現われ、そのため受傷時においては医学的にも通常予想しえなかったような治療方法が必要とされ、右治療のため費用を支出することを余儀なくされるにいたつた等…の事実関係のもとにおいては、後日その治療を受けるようになるまでは、右治療に要した費用すなわち損害については、同条所定の時効は進行しないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭42.7.18)は、「被害者が不法行為に基づく損害の発生を知つた以上、その損害と牽連一体をなす損害であつて当時においてその発生を予見することが可能であつたものについては、すべて被害者においてその認識があつたものとして、民法724条所定の時効は前記損害の発生を知つた時から進行を始めるものと解すべきではあるが、…受傷時から相当期間経過後に…後遺症が現われ、そのため受傷時においては医学的にも通常予想しえなかったような治療方法が必要とされ、右治療のため費用を支出することを余儀なくされるにいたつた等…の事実関係のもとにおいては、後日その治療を受けるようになるまでは、右治療に要した費用すなわち損害については、同条所定の時効は進行しないものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
後見開始の審判と724条2号の期間 最二小判平成10年6月12日
概要
不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において、当該不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6か月内に不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、158条の法意に照らし、当該損害賠償請求権は、724条2号の規定により消滅しない。
判例
事案:不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において、当該不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後、禁治産宣告を受け、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6か月内に当該不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなどの事情があるとき、当該請求権が724条2号の規定により消滅するかが問題となった。
判旨:「民法158条は、時効の期間満了前6箇月内において未成年者又は禁治産者が法定代理人を有しなかったときは、その者が能力者となり又は法定代理人が就職した時から6箇月内は時効は完成しない旨を規定しているところ、その趣旨は、無能力者は法定代理人を有しない場合には時効中断の措置を執ることができないのであるから、無能力者が法定代理人を有しないにもかかわらず時効の完成を認めるのは無能力者に酷であるとして、これを保護するところにあると解される。
これに対し、民法724条後段の規定の趣旨は、前記のとおりであるから、右規定を字義どおりに解すれば、不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6箇月内において心神喪失の常況にあるのに後見人を有しない場合には、右20年が経過する前に右不法行為による損害賠償請求権を行使することができないまま、右請求権が消滅することとなる。しかし、これによれば、その心神喪失の常況が当該不法行為に起因する場合であっても、被害者は、およそ権利行使が不可能であるのに、単に20年が経過したということのみをもって一切の権利行使が許されないこととなる反面、心神喪失の原因を与えた加害者は、20年の経過によって損害賠償義務を免れる結果となり、著しく正義・公平の理念に反するものといわざるを得ない。そうすると、少なくとも右のような場合にあっては、当該被害者を保護する必要があることは、前記時効の場合と同様であり、その限度で民法724条後段の効果を制限することは条理にもかなうというべきである。
したがって、不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6か月内に右損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。」
判旨:「民法158条は、時効の期間満了前6箇月内において未成年者又は禁治産者が法定代理人を有しなかったときは、その者が能力者となり又は法定代理人が就職した時から6箇月内は時効は完成しない旨を規定しているところ、その趣旨は、無能力者は法定代理人を有しない場合には時効中断の措置を執ることができないのであるから、無能力者が法定代理人を有しないにもかかわらず時効の完成を認めるのは無能力者に酷であるとして、これを保護するところにあると解される。
これに対し、民法724条後段の規定の趣旨は、前記のとおりであるから、右規定を字義どおりに解すれば、不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6箇月内において心神喪失の常況にあるのに後見人を有しない場合には、右20年が経過する前に右不法行為による損害賠償請求権を行使することができないまま、右請求権が消滅することとなる。しかし、これによれば、その心神喪失の常況が当該不法行為に起因する場合であっても、被害者は、およそ権利行使が不可能であるのに、単に20年が経過したということのみをもって一切の権利行使が許されないこととなる反面、心神喪失の原因を与えた加害者は、20年の経過によって損害賠償義務を免れる結果となり、著しく正義・公平の理念に反するものといわざるを得ない。そうすると、少なくとも右のような場合にあっては、当該被害者を保護する必要があることは、前記時効の場合と同様であり、その限度で民法724条後段の効果を制限することは条理にもかなうというべきである。
したがって、不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6か月内に右損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第31問 3)
不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において、当該不法行為を原因とする精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合には、その後、後見開始の審判を受け、成年後見人が選任された時から、民法第724条2号の期間が新たに進行する。
不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において、当該不法行為を原因とする精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合には、その後、後見開始の審判を受け、成年後見人が選任された時から、民法第724条2号の期間が新たに進行する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平10.6.12)は、本肢と同様の事案において、「後見人に就職した者がその時から6か月内に右損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。」と判示している。もっとも、この判例は、「民法724条後段の規定は、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであ」ると判示しているところ、改正民法下における724条2号は、消滅時効期間を定めたものと解されてるから、改正民法下においては、158条が直接適用されることとなる。
そして、同条1項は、「時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。」と規定している。したがって、本肢においても、不法行為の被害者が後見開始の審判を受け、成年後見人が選任された時から、民法第724条2号の期間が新たに進行するのではなく、選任の時から6箇月を経過するまでの間、724条2号による消滅時効の完成が猶予されるにとどまる。
判例(最判平10.6.12)は、本肢と同様の事案において、「後見人に就職した者がその時から6か月内に右損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。」と判示している。もっとも、この判例は、「民法724条後段の規定は、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであ」ると判示しているところ、改正民法下における724条2号は、消滅時効期間を定めたものと解されてるから、改正民法下においては、158条が直接適用されることとなる。
そして、同条1項は、「時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。」と規定している。したがって、本肢においても、不法行為の被害者が後見開始の審判を受け、成年後見人が選任された時から、民法第724条2号の期間が新たに進行するのではなく、選任の時から6箇月を経過するまでの間、724条2号による消滅時効の完成が猶予されるにとどまる。
総合メモ
被害者が損害を知った時(724条1号)の意義 最三小判平成14年1月29日
概要
724条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。
判例
事案:724条にいう被害者が損害を知った時に当たるというためには、被害者が損害の発生を現実に認識することまで要するかが問題となった。
判旨:「民法724条は、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に、予期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ、被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたのであるから、同条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するものと解するのが相当である(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)。そして、次に述べるところに照らすと、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである。
不法行為の被害者は、損害の発生を現実に認識していない場合がある。特に、本件のような報道による名誉毀損については、被害者がその報道に接することなく、損害の発生をその発生時において現実に認識していないことはしばしば起こり得ることであるといえる。被害者が、損害の発生を現実に認識していない場合には、被害者が加害者に対して損害賠償請求に及ぶことを期待することができないが、このような場合にまで、被害者が損害の発生を容易に認識し得ることを理由に消滅時効の進行を認めることにすると、被害者は、自己に対する不法行為が存在する可能性のあることを知った時点において、自己の権利を消滅させないために、損害の発生の有無を調査せざるを得なくなるが、不法行為によって損害を被った者に対し、このような負担を課することは不当である。他方、損害の発生や加害者を現実に認識していれば、消滅時効の進行を認めても、被害者の権利を不当に侵害することにはならない。民法724条の短期消滅時効の趣旨は、損害賠償の請求を受けるかどうか、いかなる範囲まで賠償義務を負うか等が不明である結果、極めて不安定な立場に置かれる加害者の法的地位を安定させ、加害者を保護することにあるが(最高裁昭和49年(オ)第768号同年12月17日第三小法廷判決・民集28巻10号2059頁参照)、それも、飽くまで被害者が不法行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しながら3年間も放置していた場合に加害者の法的地位の安定を図ろうとしているものにすぎず、それ以上に加害者を保護しようという趣旨ではないというべきである。」
判旨:「民法724条は、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に、予期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ、被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたのであるから、同条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するものと解するのが相当である(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)。そして、次に述べるところに照らすと、同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである。
不法行為の被害者は、損害の発生を現実に認識していない場合がある。特に、本件のような報道による名誉毀損については、被害者がその報道に接することなく、損害の発生をその発生時において現実に認識していないことはしばしば起こり得ることであるといえる。被害者が、損害の発生を現実に認識していない場合には、被害者が加害者に対して損害賠償請求に及ぶことを期待することができないが、このような場合にまで、被害者が損害の発生を容易に認識し得ることを理由に消滅時効の進行を認めることにすると、被害者は、自己に対する不法行為が存在する可能性のあることを知った時点において、自己の権利を消滅させないために、損害の発生の有無を調査せざるを得なくなるが、不法行為によって損害を被った者に対し、このような負担を課することは不当である。他方、損害の発生や加害者を現実に認識していれば、消滅時効の進行を認めても、被害者の権利を不当に侵害することにはならない。民法724条の短期消滅時効の趣旨は、損害賠償の請求を受けるかどうか、いかなる範囲まで賠償義務を負うか等が不明である結果、極めて不安定な立場に置かれる加害者の法的地位を安定させ、加害者を保護することにあるが(最高裁昭和49年(オ)第768号同年12月17日第三小法廷判決・民集28巻10号2059頁参照)、それも、飽くまで被害者が不法行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しながら3年間も放置していた場合に加害者の法的地位の安定を図ろうとしているものにすぎず、それ以上に加害者を保護しようという趣旨ではないというべきである。」
総合メモ
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点 最三小判平成16年4月27日
概要
不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が724条2号の消滅時効の起算点となる
判例
事案:不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合において、当該不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点が、いつの時点となるかが問題となった。
判旨:「民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、「不法行為ノ時」と規定されており、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のように、当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである。なぜなら、このような場合に損害の発生を待たずに除斥期間の進行を認めることは、被害者にとって著しく酷であるし、また、加害者としても、自己の行為により生じ得る損害の性質からみて、相当の期間が経過した後に被害者が現れて、損害賠償の請求を受けることを予期すべきであると考えられるからである。」
判旨:「民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、「不法行為ノ時」と規定されており、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のように、当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである。なぜなら、このような場合に損害の発生を待たずに除斥期間の進行を認めることは、被害者にとって著しく酷であるし、また、加害者としても、自己の行為により生じ得る損害の性質からみて、相当の期間が経過した後に被害者が現れて、損害賠償の請求を受けることを予期すべきであると考えられるからである。」
過去問・解説
(H19 司法 第29問 オ)
不法行為による損害賠償債権の20年の期間制限については、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合であっても、加害行為の時から起算される。
不法行為による損害賠償債権の20年の期間制限については、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合であっても、加害行為の時から起算される。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平16.4.27)は、「当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである。」と判示しており、改正民法下における724条2号の適用においても同様に解されている。したがって、不法行為による損害賠償債権の20年の期間制限については、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時から起算される。
判例(最判平16.4.27)は、「当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである。」と判示しており、改正民法下における724条2号の適用においても同様に解されている。したがって、不法行為による損害賠償債権の20年の期間制限については、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時から起算される。