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法律行為(代理)
登記申請の双方代理 最二小判昭和43年3月8日
概要
登記申請について同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、108条1項本文及びその法意に反するものではなく、無効とならない。
判例
事案:登記申請について同一の弁護士が登記権利者、登記義務者双方の代理人となった場合において、108条1項本文により無権代理とならないかが問題となった。
判旨:「登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であって、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとつては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によってなされる場合にも代理人によって新たな利害関係が創造されるものではないのであるから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、民法108条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもって無効となるものではないと解すべきである…。」
判旨:「登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であって、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとつては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によってなされる場合にも代理人によって新たな利害関係が創造されるものではないのであるから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、民法108条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもって無効となるものではないと解すべきである…。」
過去問・解説
(H19 司法 第2問 1)
不動産の売買契約に基づく所有権移転登記申請手続について、司法書士が売主及び買主の双方を代理することは、双方代理の禁止に関する規定に違反しない。
不動産の売買契約に基づく所有権移転登記申請手続について、司法書士が売主及び買主の双方を代理することは、双方代理の禁止に関する規定に違反しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭43.3.8)は、「登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であって、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとつては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によってなされる場合にも代理人によって新たな利害関係が創造されるものではないのであるから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、民法108条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもって無効となるものではないと解すべきである…。」と判示している。したがって、不動産の売買契約に基づく所有権移転登記申請手続きについて、同一の司法書士が売主及び買主の双方を代理することは、双方代理の禁止に関する規定(108条1項本文)に違反しない。
判例(最判昭43.3.8)は、「登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であって、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとつては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によってなされる場合にも代理人によって新たな利害関係が創造されるものではないのであるから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となっても、民法108条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもって無効となるものではないと解すべきである…。」と判示している。したがって、不動産の売買契約に基づく所有権移転登記申請手続きについて、同一の司法書士が売主及び買主の双方を代理することは、双方代理の禁止に関する規定(108条1項本文)に違反しない。
総合メモ
親権者と子の利益相反行為と無権代理 最三小判昭和46年4月20日
総合メモ
外形信頼と民法109条等の法理 最二小判昭和35年10月21日
概要
一般に官庁の部局をあらわす文字である「部」と名付けられ、裁判所庁舎の一部を使用し、現職の職員が事務を執っていた「東京地方裁判所厚生部」は、東京地方裁判所の一部局としての表示力を有するものと認めるべきであり、東京地方裁判所当局が同部の事業の継続処理を認めた以上、これにより同裁判所は、「厚生部」のする取引が自己の取引であるかのような外形を作出したといえ、善意無過失の相手方に対し、「厚生部」のした取引につき自ら責任を負う。
判例
事案:東京地方裁判所が、「厚生部」が「東京地方裁判所厚生部」という名称を用いて他と取引することを認めていた場合、「厚生部」のする取引について、同裁判所が責任を負うかが問題となった。
判旨:「およそ、一般に、他人に自己の名称、商号等の使用を許し、もしくはその者が自己のために取引する権限ある旨を表示し、もつてその他人のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出した者は、この外形を信頼して取引した第三者に対し、自ら責に任ずべきであって、このことは、民法109条、商法23条等の法理に照らし、これを是認することができる。
本件において、東京地方裁判所は、「厚生部」が「東京地方裁判所厚生部」という名称を用い、その名称のもとに他と取引することを認め、その職員Aらをして「厚生部」の事務を総務課厚生係にあてた部室を使用して処理することを認めていたことは前記のとおりである。
…一般に官庁の部局をあらわす文字である「部」と名付けられ、裁判所庁舎の一部を使用し、現職 の職員が事務を執っている「厚生部」というものが存在するときは、一般人は法令によりそのような部局が定められたものと考えるのがむしろ当然であるから、「厚生部」は、東京地方裁判所の一部局としての表示力を有するものと認めるのが相当である。」
「…東京地方裁判所当局が、「厚生部」の事業の継続処理を認めた以上、これにより、東京地方裁判所は、「厚生部」のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出したものと認めるべきであり、若し、「厚生部」 の取引の相手方であるBが善意無過失でその外形に信頼したものとすれば、同裁判所はCに対し本件取引につき自ら責に任ずべきものと解するのが相当である。」
判旨:「およそ、一般に、他人に自己の名称、商号等の使用を許し、もしくはその者が自己のために取引する権限ある旨を表示し、もつてその他人のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出した者は、この外形を信頼して取引した第三者に対し、自ら責に任ずべきであって、このことは、民法109条、商法23条等の法理に照らし、これを是認することができる。
本件において、東京地方裁判所は、「厚生部」が「東京地方裁判所厚生部」という名称を用い、その名称のもとに他と取引することを認め、その職員Aらをして「厚生部」の事務を総務課厚生係にあてた部室を使用して処理することを認めていたことは前記のとおりである。
…一般に官庁の部局をあらわす文字である「部」と名付けられ、裁判所庁舎の一部を使用し、現職 の職員が事務を執っている「厚生部」というものが存在するときは、一般人は法令によりそのような部局が定められたものと考えるのがむしろ当然であるから、「厚生部」は、東京地方裁判所の一部局としての表示力を有するものと認めるのが相当である。」
「…東京地方裁判所当局が、「厚生部」の事業の継続処理を認めた以上、これにより、東京地方裁判所は、「厚生部」のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出したものと認めるべきであり、若し、「厚生部」 の取引の相手方であるBが善意無過失でその外形に信頼したものとすれば、同裁判所はCに対し本件取引につき自ら責に任ずべきものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 司法 第5問 5)
判例によれば、AがBに代理権を与えないまま「A」という名称の使用を許し、BがAの取引であるように見える外形を作り出して取引をした場合、この取引の効果がAに帰属することはない。
判例によれば、AがBに代理権を与えないまま「A」という名称の使用を許し、BがAの取引であるように見える外形を作り出して取引をした場合、この取引の効果がAに帰属することはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭35.10.21)は、「およそ、一般に、他人に自己の名称…の使用を許し、もしくはその者が自己のために取引する権限ある旨を表示し、もつてその他人のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出した者は、この外形を信頼して取引した第三者に対し、自ら責に任ずべきであって、このことは、民法109条…の法理に照らし、これを是認することができる。」と判示している。したがって、AがBに代理権を与えないまま「A」という名称の使用を許し、BがAの取引であるように見える外形を作り出して取引をした場合、この取引の効果は、Aに帰属する場合がある。
判例(最判昭35.10.21)は、「およそ、一般に、他人に自己の名称…の使用を許し、もしくはその者が自己のために取引する権限ある旨を表示し、もつてその他人のする取引が自己の取引なるかの如く見える外形を作り出した者は、この外形を信頼して取引した第三者に対し、自ら責に任ずべきであって、このことは、民法109条…の法理に照らし、これを是認することができる。」と判示している。したがって、AがBに代理権を与えないまま「A」という名称の使用を許し、BがAの取引であるように見える外形を作り出して取引をした場合、この取引の効果は、Aに帰属する場合がある。
総合メモ
表見代理と立証責任 最二小判昭和41年4月22日
過去問・解説
(H21 司法 第6問 ウ)
代理権授与の表示による表見代理が成立するためには、相手方が、代理人と称する者が代理権を有すると信じ、かつ、そのように信じたことについて無過失であったことを、その相手方において主張立証しなければならない。
代理権授与の表示による表見代理が成立するためには、相手方が、代理人と称する者が代理権を有すると信じ、かつ、そのように信じたことについて無過失であったことを、その相手方において主張立証しなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.4.22)は、「民法109条にいう代理権授与表示者は、代理行為の相手方の悪意または過失を主張、立証することにより、同条所定の責任を免れることができるものと解すべきである。」と判示している。改正民法下の109条1項ただし書についても、同判例の理解は妥当する。したがって、代理権授与表示者が相手方の悪意有過失を主張立証する責任を負うのであり、相手方は、代理人と称する者が代理権を有すると信じ、かつ、そのように信じたことについて無過失であったことを主張立証する必要はない。
判例(最判昭41.4.22)は、「民法109条にいう代理権授与表示者は、代理行為の相手方の悪意または過失を主張、立証することにより、同条所定の責任を免れることができるものと解すべきである。」と判示している。改正民法下の109条1項ただし書についても、同判例の理解は妥当する。したがって、代理権授与表示者が相手方の悪意有過失を主張立証する責任を負うのであり、相手方は、代理人と称する者が代理権を有すると信じ、かつ、そのように信じたことについて無過失であったことを主張立証する必要はない。
(H27 司法 第4問 1)
AがBに対しA所有の甲土地を売却する代理権を与えていないのに、その代理権を与えた旨をCに表示し、BがAの代理人としてCとの間で甲土地の売買契約を締結した場合、Aは、CがBに代理権がないと知っていたこと、又は過失により知らなかったことを立証しなければ、甲土地の引渡債務を免れることができない。
AがBに対しA所有の甲土地を売却する代理権を与えていないのに、その代理権を与えた旨をCに表示し、BがAの代理人としてCとの間で甲土地の売買契約を締結した場合、Aは、CがBに代理権がないと知っていたこと、又は過失により知らなかったことを立証しなければ、甲土地の引渡債務を免れることができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.4.22)は、「民法109条にいう代理権授与表示者は、代理行為の相手方の悪意または過失を主張、立証することにより、同条所定の責任を免れることができるものと解すべきである。」と判示している。改正民法下の109条1項ただし書についても、同判例の理解は妥当する。したがって、代理権授与表示者であるAは、代理行為の相手方であるCがBに代理権がないと知っていたこと、又は過失により知らなかったことを立証しなければ、甲土地の引渡債務を免れることができない。
判例(最判昭41.4.22)は、「民法109条にいう代理権授与表示者は、代理行為の相手方の悪意または過失を主張、立証することにより、同条所定の責任を免れることができるものと解すべきである。」と判示している。改正民法下の109条1項ただし書についても、同判例の理解は妥当する。したがって、代理権授与表示者であるAは、代理行為の相手方であるCがBに代理権がないと知っていたこと、又は過失により知らなかったことを立証しなければ、甲土地の引渡債務を免れることができない。
総合メモ
110条の権限外の行為の表見代理と本人の過失の要否 最一小判昭和34年2月5日
総合メモ
手形の受取人に表見代理が成立する場合と所持人に対する本人の責任 最一小判昭和35年12月27日
概要
無権代理人の振出した約束手形につき、本人が表見代理に基づき振出人としての責任を負うときは、受取人からその手形の裏書譲渡を受けた者に対しても、その者の善意悪意を問わず、振出人としての責任を免れない。
判例
事案:無権代理人の振り出した約束手形の受取人に表見代理が成立する場合において、当該受取人から裏書譲渡を受けた手形所持人に対して本人が責任を負うかが問題となった。
判旨:「…本件約束手形振出の当時、A会社には、別に会社を代表すべき取締役が定められていて、本件手形を振出したBには会社を代理してこれを振出す権限はなかったのであるが、当時同人はA会社の取締役であったばかりでなく、その約1ヶ月前までは経理部長の職にあって金銭出納事務を担当し、…、A会社を代理して小切手を振出し、これによって…銀行から預金を引出す等契約所定の当座勘定取引をなす権限を附与されていた上、A会社より右各銀行に対し、BをA会社の代理人とする旨の届出とともに同人の印鑑届が提出されていたこと、しかもその代理権も、その約1ヶ月前、同人が経理部長から企画部長への転出に伴つて消滅していたこと、一方本件手形の受取人であるCは、知人に伴われてA会社に赴き、同所においてBを紹介されて経理部長の肩書ある名剌を貰い受けた上、同人よりA会社のために手形割引による金融を依頼されて本件手形を交付されたのであるが、同人は、念のため人を介して、手形の支払場所であるD銀行E支店について、振出人の資格等を調査したところ、偶々A会社の同銀行に対するBの代理人解任届が遅れていたため、同銀行では、さきにA会社から提出されていた前記代理人届と印鑑届によって照合し、一致することを認めてその旨Cに回答した結果、Cは安心して、本件手形を受取るに至ったというのである。
果して、然りとすれば、本件手形の受取人であるCは、前示Bにおいて何ら手形振出の権限のないものであること、しかもBが有していた前示代理権限も手形振出当時はすでに消滅していたことについて善意無過失であり、Bに手形振出の権限あるものとのみ信じ、かく信ずるについて正当の事由あつたものと認めるを相当とすべく、従ってCから本件手形の裏書譲渡を受けたFに対しA会社は民法110条、112条の法意に従い本件手形につき支払の責を免れ得ない筋合である(昭和30年(オ)第299号、同32年11月29日当裁判所第2小法廷判決、集11巻12号1994頁、昭和18年(オ)第759号同年12月22日大審院民事聯合部判決、民集23巻626頁各参照)。」
「そして右の如き場合本人たるA会社は、民法112条、110条両規定の法意により、Bの振出した本件手形につき、受取人たるCに対し、振出人としての責を免れ得ないものであることは右判示のとおりである…。またA会社が右Cに対し本件手形につき 振出人としての責を免れ得ないものである以上、Cからこれが裏書譲渡を受けたFに対してもまた同様の責を負うべきものと解される…。」
判旨:「…本件約束手形振出の当時、A会社には、別に会社を代表すべき取締役が定められていて、本件手形を振出したBには会社を代理してこれを振出す権限はなかったのであるが、当時同人はA会社の取締役であったばかりでなく、その約1ヶ月前までは経理部長の職にあって金銭出納事務を担当し、…、A会社を代理して小切手を振出し、これによって…銀行から預金を引出す等契約所定の当座勘定取引をなす権限を附与されていた上、A会社より右各銀行に対し、BをA会社の代理人とする旨の届出とともに同人の印鑑届が提出されていたこと、しかもその代理権も、その約1ヶ月前、同人が経理部長から企画部長への転出に伴つて消滅していたこと、一方本件手形の受取人であるCは、知人に伴われてA会社に赴き、同所においてBを紹介されて経理部長の肩書ある名剌を貰い受けた上、同人よりA会社のために手形割引による金融を依頼されて本件手形を交付されたのであるが、同人は、念のため人を介して、手形の支払場所であるD銀行E支店について、振出人の資格等を調査したところ、偶々A会社の同銀行に対するBの代理人解任届が遅れていたため、同銀行では、さきにA会社から提出されていた前記代理人届と印鑑届によって照合し、一致することを認めてその旨Cに回答した結果、Cは安心して、本件手形を受取るに至ったというのである。
果して、然りとすれば、本件手形の受取人であるCは、前示Bにおいて何ら手形振出の権限のないものであること、しかもBが有していた前示代理権限も手形振出当時はすでに消滅していたことについて善意無過失であり、Bに手形振出の権限あるものとのみ信じ、かく信ずるについて正当の事由あつたものと認めるを相当とすべく、従ってCから本件手形の裏書譲渡を受けたFに対しA会社は民法110条、112条の法意に従い本件手形につき支払の責を免れ得ない筋合である(昭和30年(オ)第299号、同32年11月29日当裁判所第2小法廷判決、集11巻12号1994頁、昭和18年(オ)第759号同年12月22日大審院民事聯合部判決、民集23巻626頁各参照)。」
「そして右の如き場合本人たるA会社は、民法112条、110条両規定の法意により、Bの振出した本件手形につき、受取人たるCに対し、振出人としての責を免れ得ないものであることは右判示のとおりである…。またA会社が右Cに対し本件手形につき 振出人としての責を免れ得ないものである以上、Cからこれが裏書譲渡を受けたFに対してもまた同様の責を負うべきものと解される…。」
過去問・解説
(H23 司法 第28問 4)
代理人が本人を売主として権限外の売買契約を締結した場合において、その相手方について権限外の行為の表見代理の要件が充足されているときは、本人は、その相手方からの転得者に対して、当該行為の効果が本人に帰属しないことを主張することができない。
代理人が本人を売主として権限外の売買契約を締結した場合において、その相手方について権限外の行為の表見代理の要件が充足されているときは、本人は、その相手方からの転得者に対して、当該行為の効果が本人に帰属しないことを主張することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.12.27)は、無権代理人の振出した約束手形につき、本人が表見代理に基づき振出人としての責任を負うときは、受取人からその手形の裏書譲渡を受けた者に対しても、その者の善意悪意を問わず、振出人としての責任を免れない旨判示している。この判例の理解は、代理人が本人を売主として権限外の売買契約を締結した場合においても妥当する。したがって、売買契約の相手方について権限外の行為の表見代理の要件が充足されているときは、本人は、その相手方からの転得者に対して、当該行為の効果が本人に帰属しないことを主張することができない。
判例(最判昭35.12.27)は、無権代理人の振出した約束手形につき、本人が表見代理に基づき振出人としての責任を負うときは、受取人からその手形の裏書譲渡を受けた者に対しても、その者の善意悪意を問わず、振出人としての責任を免れない旨判示している。この判例の理解は、代理人が本人を売主として権限外の売買契約を締結した場合においても妥当する。したがって、売買契約の相手方について権限外の行為の表見代理の要件が充足されているときは、本人は、その相手方からの転得者に対して、当該行為の効果が本人に帰属しないことを主張することができない。
総合メモ
110条の第三者 最三小判昭和36年12月12日
概要
110条の「第三者」は無権代理行為の直接の相手方に限られる。
判例
事案:振出人が正当な権限なく約束手形を振り出し、無権代理の事実について当該手形の受取人が悪意の場合、当該受取人から無権代理の事実について善意無過失で裏書譲渡を受けた手形所持人に対して、本人は手形上の責任を負うかが問題となった。
判旨:「約束手形が代理人によりその権限を踰越して振出された場合、民法110条によりこれを有効とするには、受取人が右代理人に振出の権限あるものと信ずべき正当の理由あるときに限るものであつて、かゝる事由のないときは、縦令、その後の手形所持人が、右代理人にかゝる権限あるものと信ずべき正当の理由を有して居つたものとしても、同条を適用して、右所持人に対し振出人をして手形上の責任を負担せしめ得ない…。」
判旨:「約束手形が代理人によりその権限を踰越して振出された場合、民法110条によりこれを有効とするには、受取人が右代理人に振出の権限あるものと信ずべき正当の理由あるときに限るものであつて、かゝる事由のないときは、縦令、その後の手形所持人が、右代理人にかゝる権限あるものと信ずべき正当の理由を有して居つたものとしても、同条を適用して、右所持人に対し振出人をして手形上の責任を負担せしめ得ない…。」
過去問・解説
(H25 共通 第4問 エ)
本人からその所有する不動産に抵当権を設定する代理権を与えられた者が、本人を代理して当該不動産を売却した場合、売買契約の相手方がその権限の逸脱の事実を知り、又はそれを知らないことについて過失があったときでも、転得者が善意無過失であるときは、表見代理が成立する。
本人からその所有する不動産に抵当権を設定する代理権を与えられた者が、本人を代理して当該不動産を売却した場合、売買契約の相手方がその権限の逸脱の事実を知り、又はそれを知らないことについて過失があったときでも、転得者が善意無過失であるときは、表見代理が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭36.12.12)は、110条の「第三者」は無権代理行為の直接の相手方に限られる旨判示している。したがって、転得者自身は「第三者」に当たらないため、110条の適用はない。売買契約の相手方がその権限の逸脱の事実を知り、又はそれを知らないことについて過失があったときは、転得者が善意無過失であっても、当該売買契約の相手方、転得者ともに110条は適用されないから、表見代理は成立しない。
判例(最判昭36.12.12)は、110条の「第三者」は無権代理行為の直接の相手方に限られる旨判示している。したがって、転得者自身は「第三者」に当たらないため、110条の適用はない。売買契約の相手方がその権限の逸脱の事実を知り、又はそれを知らないことについて過失があったときは、転得者が善意無過失であっても、当該売買契約の相手方、転得者ともに110条は適用されないから、表見代理は成立しない。
(R6 司法 第4問 ウ)
AからA所有の甲土地に抵当権を設定する代理権を与えられていたBが、Aに無断で、Aの代理人としてCに甲土地を売却し、Cは、甲土地を更にDに売却した。Bに甲土地の売却についての権限があったとDが信ずべき正当な理由があるときは、CがBにその権限がないことを知っていたときであっても、Aは、Dに対して当該行為についての責任を負う。
AからA所有の甲土地に抵当権を設定する代理権を与えられていたBが、Aに無断で、Aの代理人としてCに甲土地を売却し、Cは、甲土地を更にDに売却した。Bに甲土地の売却についての権限があったとDが信ずべき正当な理由があるときは、CがBにその権限がないことを知っていたときであっても、Aは、Dに対して当該行為についての責任を負う。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭36.12.12)は、110条の「第三者」は無権代理行為の直接の相手方に限られる旨判示している。したがって、転得者Dは「第三者」に当たらず、110条は適用されない。よって、CがBにその権限がないことを知っていたときは、Bに甲土地の売却についての権限があったとDが信ずべき正当な理由があったとしても、C、D両者ともに110条は適用されず、Aは、Dに対して当該行為について責任を負わない。
判例(最判昭36.12.12)は、110条の「第三者」は無権代理行為の直接の相手方に限られる旨判示している。したがって、転得者Dは「第三者」に当たらず、110条は適用されない。よって、CがBにその権限がないことを知っていたときは、Bに甲土地の売却についての権限があったとDが信ずべき正当な理由があったとしても、C、D両者ともに110条は適用されず、Aは、Dに対して当該行為について責任を負わない。
総合メモ
110条の類推適用 最二小判昭和44年12月19日
概要
代理人が直接本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、110条の規定が類推適用され、本人はその責任を負う。
判例
事案:代理人が直接本人の名で権限外の行為をした場合、110条の類推適用が認められるかが問題となった。
判旨:「代理人が本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、代理人の代理権を信じたものではないが、その信頼が取引上保護に値する点においては、代理人の代理権限を信頼した場合と異なるところはないから、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、民法110条の規定を類推適用して、本人がその責に任ずるものと解するのが相当である。」
判旨:「代理人が本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、代理人の代理権を信じたものではないが、その信頼が取引上保護に値する点においては、代理人の代理権限を信頼した場合と異なるところはないから、本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由がある場合にかぎり、民法110条の規定を類推適用して、本人がその責に任ずるものと解するのが相当である。」
総合メモ
公法上の行為への110条の適用 最一小判昭和46年6月3日
概要
公法上の行為は110条の表見代理の基本代理権に当たらないとしても、その行為が特定の私法上の取引行為の一環としてなされているときは、受任者の外観に対する第三者の信頼を保護する必要があり、110条の表見代理の成立が認められる。
判例
事案:公法上の行為の権限を与えらえている者が、権限を逸脱した代理行為を行った場合において、当該公法上の行為の権限が基本代理権となり、110条が適用されるかが問題となった。
判旨:「単なる公法上の行為についての代理権は民法110条の規定による表見代理の成立の要件たる基本代理権にあたらないと解すべきであるとしても、その行為が特定の私法上の取引行為の一環としてなされるものであるときは、右規定の適用に関しても、その行為の私法上の作用を看過することはできないのであつて、実体上登記義務を負う者がその登記申請行為を他人に委任して実印等をこれに交付したような場合に、その受任者の権限の外観に対する第三者の信頼を保護する必要があることは、委任者が一般の私法上の行為の代理権を与えた場合におけると異なるところがないものといわなければならない。したがつて、本人が登記申請行為を他人に委任してこれにその権限を与え、その他人が右権限をこえて第三者との間に行為をした場合において、その登記申請行為が本件のように私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との間の行為につき民法110条を適用し、表見代理の成立を認めることを妨げないものと解するのが相当である。」
判旨:「単なる公法上の行為についての代理権は民法110条の規定による表見代理の成立の要件たる基本代理権にあたらないと解すべきであるとしても、その行為が特定の私法上の取引行為の一環としてなされるものであるときは、右規定の適用に関しても、その行為の私法上の作用を看過することはできないのであつて、実体上登記義務を負う者がその登記申請行為を他人に委任して実印等をこれに交付したような場合に、その受任者の権限の外観に対する第三者の信頼を保護する必要があることは、委任者が一般の私法上の行為の代理権を与えた場合におけると異なるところがないものといわなければならない。したがつて、本人が登記申請行為を他人に委任してこれにその権限を与え、その他人が右権限をこえて第三者との間に行為をした場合において、その登記申請行為が本件のように私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との間の行為につき民法110条を適用し、表見代理の成立を認めることを妨げないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第25問 ウ)
権限外の行為の表見代理の規定は、公法上の行為を委託された場合であっても、それが私法上の契約による義務の履行のためのものであるときは、適用することができる。
権限外の行為の表見代理の規定は、公法上の行為を委託された場合であっても、それが私法上の契約による義務の履行のためのものであるときは、適用することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.6.3)は、「本人が登記申請行為を他人に委任してこれにその権限を与え、その他人が右権限をこえて第三者との間に行為をした場合において、その登記申請行為が本件のように私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との間の行為につき民法110条を適用し、表見代理の成立を認めることを妨げないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭46.6.3)は、「本人が登記申請行為を他人に委任してこれにその権限を与え、その他人が右権限をこえて第三者との間に行為をした場合において、その登記申請行為が本件のように私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との間の行為につき民法110条を適用し、表見代理の成立を認めることを妨げないものと解するのが相当である。」と判示している。
(H25 共通 第4問 ア)
本人から登記申請を委任された者が、その権限を越えて、本人を代理して第三者と取引行為をした場合において、その登記申請の権限が本人の私法上の契約による義務を履行するために付与されたものであり、第三者が代理人に権限があると信ずべき正当な理由があるときは、委任された登記申請の権限を基本代理権とする表見代理が成立する。
本人から登記申請を委任された者が、その権限を越えて、本人を代理して第三者と取引行為をした場合において、その登記申請の権限が本人の私法上の契約による義務を履行するために付与されたものであり、第三者が代理人に権限があると信ずべき正当な理由があるときは、委任された登記申請の権限を基本代理権とする表見代理が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭46.6.3)は、本肢と同種の事案において、「本人が登記申請行為を他人に委任してこれにその権限を与え、その他人が右権限をこえて第三者との間に行為をした場合において、その登記申請行為が本件のように私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との間の行為につき民法110条を適用し、表見代理の成立を認めることを妨げないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢においても、第三者が代理人に権限があると信ずべき正当な理由があるときは、110条が適用されるため、委任された登記申請の権限を基本代理権とする表見代理が成立する。
判例(最判昭46.6.3)は、本肢と同種の事案において、「本人が登記申請行為を他人に委任してこれにその権限を与え、その他人が右権限をこえて第三者との間に行為をした場合において、その登記申請行為が本件のように私法上の契約による義務の履行のためになされるものであるときは、その権限を基本代理権として、右第三者との間の行為につき民法110条を適用し、表見代理の成立を認めることを妨げないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢においても、第三者が代理人に権限があると信ずべき正当な理由があるときは、110条が適用されるため、委任された登記申請の権限を基本代理権とする表見代理が成立する。
総合メモ
代理権消滅後の表見代理 最三小判昭和44年7月25日
総合メモ
無権代理行為の追認行為 大判大正8年10月23日
概要
無権代理人が行った契約の追認又は追認拒絶を、当該無権代理人に対抗するためには、契約の相手方に対して追認又は追認拒絶をする必要はなく、代理人に対して追認又は追認拒絶をすることで足りる。
判例
事案:無権代理人が行った契約の追認又は追認拒絶を、当該無権代理人に対して対抗するためには、契約の相手方に対して追認又は追認拒絶をする必要があるかが問題となった。
判旨:「民法第113条第2項ハ無権代理人ノ為シタル契約ノ追認又ハ拒絶ヲ以テ相手方ニ対抗スル場合ニ関スル規定ニシテ代理人ニ対抗スルニモ尚ホ相手方ニ対シテ追認又ハ拒絶ヲ為スコトヲ必要トセス従テ代理人ニ対抗スルニハ代理人ニ対シテ追認又ハ拒絶ヲ為スヲ以テ足ルモノトス。」
判旨:「民法第113条第2項ハ無権代理人ノ為シタル契約ノ追認又ハ拒絶ヲ以テ相手方ニ対抗スル場合ニ関スル規定ニシテ代理人ニ対抗スルニモ尚ホ相手方ニ対シテ追認又ハ拒絶ヲ為スコトヲ必要トセス従テ代理人ニ対抗スルニハ代理人ニ対シテ追認又ハ拒絶ヲ為スヲ以テ足ルモノトス。」
総合メモ
無権代理行為と相続 最二小判昭和37年4月20日
概要
本人が無権代理人を相続した場合、被相続人の無権代理行為は、相続により当然には有効となるものではない。
判例
事案:本人が無権代理人を相続した場合において、被相続人の無権代理行為が当然に有効となるかが問題となった。
判旨:「無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。」
判旨:「無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第33問 3)
本人は、無権代理人の地位を単独相続した場合、無権代理行為の追認を拒絶することができる。
本人は、無権代理人の地位を単独相続した場合、無権代理行為の追認を拒絶することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭37.4.20)は、本肢と同種の事案において、「相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本人は、無権代理人の地位を単独相続した場合、無権代理行為の追認を拒絶することができる。
判例(最判昭37.4.20)は、本肢と同種の事案において、「相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本人は、無権代理人の地位を単独相続した場合、無権代理行為の追認を拒絶することができる。
(R2 司法 第4問 オ)
Aは、Bの代理人と称して、Cとの間でBの所有する土地をCに売却する旨の売買契約を締結したが、実際にはその契約を締結する代理権を有していなかった。売買契約の締結後にBがAを単独で相続した場合、売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない。
Aは、Bの代理人と称して、Cとの間でBの所有する土地をCに売却する旨の売買契約を締結したが、実際にはその契約を締結する代理権を有していなかった。売買契約の締結後にBがAを単独で相続した場合、売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭37.4.20)は「被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本人Bが無権代理人Aを単独で相続したとしても、無権代理行為たる売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない。
判例(最判昭37.4.20)は「被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本人Bが無権代理人Aを単独で相続したとしても、無権代理行為たる売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない。
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無権代理行為と相続 最三小判昭和48年7月3日
概要
無権代理人を相続した本人は、無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったことを理由として、117条による無権代理人の債務を免れることはできない。
判例
事案:無権代理人を相続した本人が、無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったことを理由として、117条による無権代理人の債務を免れることができるかが問題となった。
判旨:「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」
判旨:「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第33問 4)
本人は、無権代理人の地位を単独相続した場合、無権代理人の相手方に対する責任を承継する。
本人は、無権代理人の地位を単独相続した場合、無権代理人の相手方に対する責任を承継する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.7.3)は、「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」と判示している。
判例(最判昭48.7.3)は、「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」と判示している。
(H26 共通 第4問 ウ)
無権代理人を相続した本人は、無権代理行為について追認を拒絶することができる地位にあったことを理由として、無権代理人の責任を免れることができない。
無権代理人を相続した本人は、無権代理行為について追認を拒絶することができる地位にあったことを理由として、無権代理人の責任を免れることができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.7.3)は、「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」と判示している。
判例(最判昭48.7.3)は、「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」と判示している。
総合メモ
無権代理の責任と表見代理の責任 最三小判昭和62年7月7日
概要
無権代理人の責任の要件と表見代理の要件とがともに存在する場合においても、無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張して、117条所定の無権代理人の責任を免れることはできない。
判例
事案:無権代理人の責任の要件と表見代理の要件とがともに存在する場合において、相手方が117条所定の無権代理人の責任を主張してきたことに対して、無権代理人が表見代理の成立を抗弁として主張し、117条所定の無権代理人の責任を免れることができるかが問題となった。
判旨:「表見代理の成立が認められ、代理行為の法律効果が本人に及ぶことが裁判上確定された場合には、無権代理人の責任を認める余地がないことは明らかであるが、無権代理人の責任をもつて表見代理が成立しない場合における補充的な責任すなわち表見代理によつては保護を受けることのできない相手方を救済するための制度であると解すべき根拠はなく、右両者は、互いに独立した制度であると解するのが相当である。したがつて、無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法117条の責任を問うことができるものと解するのが相当である(最高裁昭和31年(オ)第629号同33年6月17日第三小法廷判決・民集12巻10号1532頁参照)。そして、表見代理は本来相手方保護のための制度であるから、無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、右の場合、無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」
判旨:「表見代理の成立が認められ、代理行為の法律効果が本人に及ぶことが裁判上確定された場合には、無権代理人の責任を認める余地がないことは明らかであるが、無権代理人の責任をもつて表見代理が成立しない場合における補充的な責任すなわち表見代理によつては保護を受けることのできない相手方を救済するための制度であると解すべき根拠はなく、右両者は、互いに独立した制度であると解するのが相当である。したがつて、無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法117条の責任を問うことができるものと解するのが相当である(最高裁昭和31年(オ)第629号同33年6月17日第三小法廷判決・民集12巻10号1532頁参照)。そして、表見代理は本来相手方保護のための制度であるから、無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、右の場合、無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 共通 第3問 ウ)
無権代理行為の相手方は、表見代理の主張をしないで、無権代理人に対し履行又は損害賠償の請求をすることができるが、これに対し無権代理人は、表見代理の成立を主張してその責任を免れることができる。
無権代理行為の相手方は、表見代理の主張をしないで、無権代理人に対し履行又は損害賠償の請求をすることができるが、これに対し無権代理人は、表見代理の成立を主張してその責任を免れることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭62.7.7)は、「無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法117条の責任を問うことができるものと解するのが相当である…。」と判示している。したがって、本肢前段は正しい。
もっとも、同判例は、「無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、…無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢後段は誤っている。
判例(最判昭62.7.7)は、「無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し同法117条の責任を問うことができるものと解するのが相当である…。」と判示している。したがって、本肢前段は正しい。
もっとも、同判例は、「無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、…無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢後段は誤っている。
(H29 司法 第5問 オ)
相手方から履行の請求を受けた無権代理人は、表見代理が成立することを理由として無権代理人の責任を免れることはできない。
相手方から履行の請求を受けた無権代理人は、表見代理が成立することを理由として無権代理人の責任を免れることはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭62.7.7)は、本肢と同種の事案において、「無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、…無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭62.7.7)は、本肢と同種の事案において、「無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、…無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」と判示している。
(R6 司法 第4問 エ)
無権代理人の責任の要件と表見代理の要件が共に存在する場合において、相手方が無権代理人に対し履行又は損害賠償を求めたときは、無権代理人は、表見代理が成立することを主張して無権代理人の責任を免れることができない。
無権代理人の責任の要件と表見代理の要件が共に存在する場合において、相手方が無権代理人に対し履行又は損害賠償を求めたときは、無権代理人は、表見代理が成立することを主張して無権代理人の責任を免れることができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭62.7.7)は、本肢と同種の事案において、「無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、…無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭62.7.7)は、本肢と同種の事案において、「無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがつて、…無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできないものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
無権代理行為と相続 最三小判昭和63年3月1日
概要
無権代理人を本人とともに相続した者が、その後更に本人を相続した場合は、当該相続人は本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたのと同様の法律上の地位ないし効果を生じることになる。
判例
事案:無権代理人を本人とともに相続した者が、その後更に本人を相続した場合において、無権代理行為の効力が問題となった。
判旨:「無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、当該相続人は本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。けだし、無権代理人が本人を相続した場合においては、本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、右のような法律上の地位ないし効果を生ずるものと解すべきものであり(大審院大正15年(オ)第1073号昭和2年3月22日判決・民集6巻106頁、最高裁昭和39年(オ)第1267号同40年6月18日第二小法廷判決・民集19巻4号986頁参照)、このことは、信義則の見地からみても是認すべきものであるところ(最高裁昭和35年(オ)第3号同37年4月20日第二小法廷判決・民集16巻4号955頁参照)、無権代理人を相続した者は、無権代理人の法律上の地位を包括的に承継するのであるから、一旦無権代理人を相続した者が、その後本人を相続した場合においても、この理は同様と解すべきであつて、自らが無権代理行為をしていないからといつて、これを別異に解すべき根拠はなく(大審院昭和16年(オ)第728号同17年2月25日判決・民集21巻164頁参照)、更に、無権代理人を相続した者が本人と本人以外の者であつた場合においても、本人以外の相続人は、共同相続であるとはいえ、無権代理人の地位を包括的に承継していることに変わりはないから、その後の本人の死亡によつて、結局無権代理人の地位を全面的に承継する結果になつた以上は、たとえ、同時に本人の地位を承継したものであるとしても、もはや、本人の資格において追認を拒絶する余地はなく、前記の場合と同じく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当であるからである。」
判旨:「無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、当該相続人は本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。けだし、無権代理人が本人を相続した場合においては、本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、右のような法律上の地位ないし効果を生ずるものと解すべきものであり(大審院大正15年(オ)第1073号昭和2年3月22日判決・民集6巻106頁、最高裁昭和39年(オ)第1267号同40年6月18日第二小法廷判決・民集19巻4号986頁参照)、このことは、信義則の見地からみても是認すべきものであるところ(最高裁昭和35年(オ)第3号同37年4月20日第二小法廷判決・民集16巻4号955頁参照)、無権代理人を相続した者は、無権代理人の法律上の地位を包括的に承継するのであるから、一旦無権代理人を相続した者が、その後本人を相続した場合においても、この理は同様と解すべきであつて、自らが無権代理行為をしていないからといつて、これを別異に解すべき根拠はなく(大審院昭和16年(オ)第728号同17年2月25日判決・民集21巻164頁参照)、更に、無権代理人を相続した者が本人と本人以外の者であつた場合においても、本人以外の相続人は、共同相続であるとはいえ、無権代理人の地位を包括的に承継していることに変わりはないから、その後の本人の死亡によつて、結局無権代理人の地位を全面的に承継する結果になつた以上は、たとえ、同時に本人の地位を承継したものであるとしても、もはや、本人の資格において追認を拒絶する余地はなく、前記の場合と同じく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当であるからである。」
総合メモ
無権代理行為と相続 最一小判平成5年1月21日
概要
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。
判例
事案:無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為が当然に有効となるかが問題となった。
判旨:「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を本人に対する関係において有効なものにするという効果を生じさせるものであるから、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解すべきである。そうすると、他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」
判旨:「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を本人に対する関係において有効なものにするという効果を生じさせるものであるから、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解すべきである。そうすると、他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」
過去問・解説
(H18 司法 第33問 2)
無権代理人が本人の地位を共同相続した場合、他の共同相続人のだれかが追認をすることに反対すれば、無権代理行為は有効にならない。
無権代理人が本人の地位を共同相続した場合、他の共同相続人のだれかが追認をすることに反対すれば、無権代理行為は有効にならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。
(H21 司法 第6問 オ)
無権代理人が本人を共同相続した場合においては、無権代理人の相続分の限度で無権代理行為は当然に有効になる。
無権代理人が本人を共同相続した場合においては、無権代理人の相続分の限度で無権代理行為は当然に有効になる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。
(H23 共通 第3問 エ)
無権代理人が本人を代理して第三者の貸金債務につき本人名義で連帯保証契約を締結した後、本人が追認も追認拒絶もしないまま死亡し、無権代理人が他の者と共に本人を相続した場合、他の共同相続人全員の追認がなくても、無権代理人が本人から相続により承継した部分について、無権代理行為は有効となる。
無権代理人が本人を代理して第三者の貸金債務につき本人名義で連帯保証契約を締結した後、本人が追認も追認拒絶もしないまま死亡し、無権代理人が他の者と共に本人を相続した場合、他の共同相続人全員の追認がなくても、無権代理人が本人から相続により承継した部分について、無権代理行為は有効となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。したがって、他の共同相続人全員の追認がなければ、無権代理人が本人から相続により承継した部分についても、無権代理行為は有効とならない。
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。したがって、他の共同相続人全員の追認がなければ、無権代理人が本人から相続により承継した部分についても、無権代理行為は有効とならない。
(H26 共通 第4問 オ)
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、他の共同相続人の1人が追認を拒絶したときは、無権代理行為は有効にならない。
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、他の共同相続人の1人が追認を拒絶したときは、無権代理行為は有効にならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。
(R2 司法 第4問 エ)
Aは、Bの代理人と称して、Cとの間でBの所有する土地をCに売却する旨の売買契約を締結したが、実際にはその契約を締結する代理権を有していなかった。売買契約の締結後にAがDと共にBを相続した場合、Dの追認がない限り、Aの相続分に相当する部分においても、売買契約は当然に有効となるものではない。
Aは、Bの代理人と称して、Cとの間でBの所有する土地をCに売却する旨の売買契約を締結したが、実際にはその契約を締結する代理権を有していなかった。売買契約の締結後にAがDと共にBを相続した場合、Dの追認がない限り、Aの相続分に相当する部分においても、売買契約は当然に有効となるものではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。したがって、無権代理人AがDと共に本人Bを相続した場合、Dの追認がない限り、Aの相続分に相当する部分においても、売買契約は当然に有効となるものではない。
判例(最判平5.1.21)は、無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合について、「他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。」と判示している。したがって、無権代理人AがDと共に本人Bを相続した場合、Dの追認がない限り、Aの相続分に相当する部分においても、売買契約は当然に有効となるものではない。
(R4 司法 第33問 エ)
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、相続人全員に不可分的に帰属する。
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、相続人全員に不可分的に帰属する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平5.1.21)は、「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属する」と判示している。
判例(最判平5.1.21)は、「無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属する」と判示している。
総合メモ
無権代理行為と相続 最二小判平成10年7月17日
概要
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。
判例
事案:本人が無権代理行為の追認を拒絶した後に、無権代理人が本人を相続した場合において、無権代理行為が有効となるかが問題となった。
判旨:「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。このように解すると、本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで法律効果に相違が生ずることになるが、本人の追認拒絶の有無によって右の相違を生ずることはやむを得ないところであり、相続した無権代理人が本人の追認拒絶の効果を主張することがそれ自体信義則に反するものであるということはできない。」
判旨:「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。このように解すると、本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで法律効果に相違が生ずることになるが、本人の追認拒絶の有無によって右の相違を生ずることはやむを得ないところであり、相続した無権代理人が本人の追認拒絶の効果を主張することがそれ自体信義則に反するものであるということはできない。」
過去問・解説
(H18 司法 第33問 1)
無権代理人が本人の地位を単独相続した場合、本人が追認を拒絶した後に死亡したときでも、無権代理行為は有効になる。
無権代理人が本人の地位を単独相続した場合、本人が追認を拒絶した後に死亡したときでも、無権代理行為は有効になる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。
(H21 司法 第6問 エ)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。
(H23 共通 第3問 オ)
無権代理人が本人所有の土地に抵当権を設定したため、本人が抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟を提起した後死亡し、無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為は、有効とならない。
無権代理人が本人所有の土地に抵当権を設定したため、本人が抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟を提起した後死亡し、無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為は、有効とならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。本人が抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟を提起した行為は、無権代理人が本人所有の土地に抵当権を設定した行為を確定的に無効とする意思表示をしたものと評価できるため、追認拒絶に当たる。したがって、本人が無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡しているため、無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為は、有効とならない。
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。本人が抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟を提起した行為は、無権代理人が本人所有の土地に抵当権を設定した行為を確定的に無効とする意思表示をしたものと評価できるため、追認拒絶に当たる。したがって、本人が無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡しているため、無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為は、有効とならない。
(H26 共通 第4問 イ)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合であっても、その後に無権代理人が本人を相続したときは、無権代理行為は有効になる。
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合であっても、その後に無権代理人が本人を相続したときは、無権代理行為は有効になる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平10.7.17)は、「本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。」と判示している。
(H30 司法 第5問 ア)
無権代理行為について本人が追認を拒絶した後は、本人であっても追認によってその行為を有効とすることができない。
無権代理行為について本人が追認を拒絶した後は、本人であっても追認によってその行為を有効とすることができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.7.17)は、「無権代理人がした行為は、…本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができ」ないと判示している。
判例(最判平10.7.17)は、「無権代理人がした行為は、…本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができ」ないと判示している。
総合メモ
無権代理行為と転付命令 大判昭和5年3月4日
概要
無権代理人が債務者から本人の債権を取り立てて弁済を受領した後、第三者が当該債権を差し押さえて転付命令を得た場合、その後本人が無権代理人による弁済受領を追認するに当たっては、当該差押債権者は、116条ただし書の「第三者」に当たる。
判例
事案:無権代理人が債務者から本人の債権を取り立てて弁済を受領した後、第三者が当該債権を差し押さえて転付命令を得た場合、その後本人が無権代理人による弁済受領を追認するに当たって、当該差押債権者が116条ただし書の「第三者」に当たるかが問題となった。
判旨:「然レトモ追認ハ別段ノ意思表示ナキトキハ契約ノ前ニ遡リテ其ノ效力ヲ生スルモ第三者ノ權利ヲ害スルコトヲ得サルコトハ民法第116條ノ規定スル所ニシテ其ノ第三者ノ權利トハ追認ノ遡及效ニヨリテ侵害セラレ得ヘキ總テノ第三者ノ權利ヲ包含スルモノト解セサル可ラス…Aハ本件賣買代金受領ノ權限ナキニ拘ラス代金ヲ受領シタル處B先代Cハ右代金債權ニ付差押命令竝轉付命令ヲ申請シ該命令ハ大正15年6月6日債務者竝第三債務者ニ送達セラレ其ノ後右Aノ代金受領行爲カ追認セラレタリト云フニ在ルヲ以テ右ノ追認カ遡及效ヲ有スルニ於テハ轉付命令ノ送達ニ依リテ本件代金債權ヲ取得シタルB先代Cノ權利ヲ侵害スヘキコト極メテ明ナルヲ以テ敍上ノ如キ轉付ヲ受ケタル債權者モ亦同條但書ニ所謂第三者ニ該當スルモノト謂ハサル可ラス。」
判旨:「然レトモ追認ハ別段ノ意思表示ナキトキハ契約ノ前ニ遡リテ其ノ效力ヲ生スルモ第三者ノ權利ヲ害スルコトヲ得サルコトハ民法第116條ノ規定スル所ニシテ其ノ第三者ノ權利トハ追認ノ遡及效ニヨリテ侵害セラレ得ヘキ總テノ第三者ノ權利ヲ包含スルモノト解セサル可ラス…Aハ本件賣買代金受領ノ權限ナキニ拘ラス代金ヲ受領シタル處B先代Cハ右代金債權ニ付差押命令竝轉付命令ヲ申請シ該命令ハ大正15年6月6日債務者竝第三債務者ニ送達セラレ其ノ後右Aノ代金受領行爲カ追認セラレタリト云フニ在ルヲ以テ右ノ追認カ遡及效ヲ有スルニ於テハ轉付命令ノ送達ニ依リテ本件代金債權ヲ取得シタルB先代Cノ權利ヲ侵害スヘキコト極メテ明ナルヲ以テ敍上ノ如キ轉付ヲ受ケタル債權者モ亦同條但書ニ所謂第三者ニ該當スルモノト謂ハサル可ラス。」
過去問・解説
(H26 共通 第4問 ア)
本人に代わって弁済を受領する権限がない者が本人の有する債権について本人に代わって弁済を受領した後に、第三者が当該債権を差し押さえて転付命令を得た場合において、その後に本人がその弁済受領行為を追認したときは、当該第三者は、転付命令により当該債権を取得することはできない。
本人に代わって弁済を受領する権限がない者が本人の有する債権について本人に代わって弁済を受領した後に、第三者が当該債権を差し押さえて転付命令を得た場合において、その後に本人がその弁済受領行為を追認したときは、当該第三者は、転付命令により当該債権を取得することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭5.3.4)は、本肢と同種の事案において、無権代理人が債務者から本人の債権を取り立てて弁済を受領した後、第三者が当該債権を差し押さえて転付命令を得た場合、その後本人が無権代理人による弁済受領を追認するにあたっては、当該差押債権者は、116条ただし書の「第三者」に当たる旨判示している。したがって、本肢における第三者も、同ただし書きにより保護されるため、当該第三者は、転付命令により、差し押さえた債権を所得することができる。
判例(大判昭5.3.4)は、本肢と同種の事案において、無権代理人が債務者から本人の債権を取り立てて弁済を受領した後、第三者が当該債権を差し押さえて転付命令を得た場合、その後本人が無権代理人による弁済受領を追認するにあたっては、当該差押債権者は、116条ただし書の「第三者」に当たる旨判示している。したがって、本肢における第三者も、同ただし書きにより保護されるため、当該第三者は、転付命令により、差し押さえた債権を所得することができる。
総合メモ
他人の権利を無断で処分した場合における無権代理行為 最二小判昭和37年8月10日
概要
ある物件につき、何ら権利を有しない者が、当該物件を自己の権利に属するものとして処分した場合において、真実の権利者が当該処分を追認したときは、同処分は、116条本文の類推適用により、処分の時に遡って効力を生じる。
判例
事案:ある物件につき、何ら権利を有しない者が、当該物件を自己の権利に属するものとして処分した場合において、真実の権利者が当該処分を追認したとき、同処分の効力は生じるかが問題となった。
判旨:「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずるものと解するのを相当とする(大審院昭和10年(オ)第637号同年9月10日云渡判決、民集14巻1717頁参照)。」
判旨:「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずるものと解するのを相当とする(大審院昭和10年(オ)第637号同年9月10日云渡判決、民集14巻1717頁参照)。」
過去問・解説
(H18 司法 第14問 ア)
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。Aは、CD間の売買契約を追認すれば、Dに代金を請求することができる。
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。Aは、CD間の売買契約を追認すれば、Dに代金を請求することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭37.8.10)は、「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずる…。」と判示している。したがって、AがCD間の売買契約を追認したときは、当該契約の時に遡って当該契約の効力が生じる。
もっとも、当該契約によりDに代金を請求することができるのは、当該契約の売主であるCである。当該契約の当事者でないAは、当該契約を追認したとしても、Dに対する代金支払請求権を取得するわけではないため、Dに代金を請求することはできない。
判例(最判昭37.8.10)は、「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずる…。」と判示している。したがって、AがCD間の売買契約を追認したときは、当該契約の時に遡って当該契約の効力が生じる。
もっとも、当該契約によりDに代金を請求することができるのは、当該契約の売主であるCである。当該契約の当事者でないAは、当該契約を追認したとしても、Dに対する代金支払請求権を取得するわけではないため、Dに代金を請求することはできない。
(H25 司法 第5問 エ)
AがB所有の動産をBから何らの代理権も与えられていないのにその代理人としてCに売却した場合には、Bがこれを追認すれば、BC間の売買契約は契約時にさかのぼって有効となるが、AがB所有の動産をBに断りなく自分の物としてCに売却した場合には、Bがこれを追認すると、その追認の時に新たにAC間の売買契約が締結されたものとみなされる。
AがB所有の動産をBから何らの代理権も与えられていないのにその代理人としてCに売却した場合には、Bがこれを追認すれば、BC間の売買契約は契約時にさかのぼって有効となるが、AがB所有の動産をBに断りなく自分の物としてCに売却した場合には、Bがこれを追認すると、その追認の時に新たにAC間の売買契約が締結されたものとみなされる。
(正答)✕
(解説)
113条1項は、「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。」と規定し、116条本文は、「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と規定している。したがって、本肢前段は正しい。
もっとも、判例(最判昭37.8.10)は、「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずる…。」と判示している。したがって、AがB所有の動産をBに断りなく自分の物としてCに売却した場合に、Bがこれを追認すると、当該売買契約は契約時にさかのぼって効力を生ずる。よって、本肢後段は誤っている。
113条1項は、「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。」と規定し、116条本文は、「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。」と規定している。したがって、本肢前段は正しい。
もっとも、判例(最判昭37.8.10)は、「或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法116条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずる…。」と判示している。したがって、AがB所有の動産をBに断りなく自分の物としてCに売却した場合に、Bがこれを追認すると、当該売買契約は契約時にさかのぼって効力を生ずる。よって、本肢後段は誤っている。