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抵当権

抵当建物が崩壊した場合における抵当権の範囲 大判大正5年6月28日

概要
抵当不動産たる建物が崩壊して動産となった場合、抵当権は消滅し、崩壊によって生じた動産に対して、その効力は及ばない。
判例
事案:抵当不動産たる建物が崩壊して動産となった場合において、当該動産に抵当権の効力が及ぶかが問題となった。

判旨:「抵当権ノ実行ニ着手スル以前ニ於テ抵当権ノ目的物タル家屋カ天災ノ為メ崩壊シ不動産タル性質ヲ失ヒテ動産ト為リタルトキハ家屋ヲ目的物トセル抵当権ハ之ニ依リ消滅シ崩壊ニ依リ生シタル動産ノ上ニ其効力ノ及ハサルコト勿論ナリトス而シテ民法第372条ニ依リ抵当権ニ準用セラルル民法第304条ノ規定ハ抵当権ノ効力ノ及フ範囲ヲ拡張シテ其目的物タル不動産ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ抵当権設定者ノ受クヘキ金銭其他ノ物ニ対シテモ其払渡又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトニ依リ抵当権ノ効力ヲ保有セシムルコトヲ明ニシタリト雖モ同条ニ所謂其受クヘキ金銭其他ノ物トハ滅失若クハ毀損ニ依リ抵当権設定者カ第三者ヨリ受クヘキ損害賠償金若クハ保険金ノ如キ目的物ノ全部若クハ一部ヲ直接代表スヘキ物ヲ指称スルモノニシテ抵当権ノ目的物タル家屋ノ天災ノ為メニ崩壊シテ動産ニ変シタル如キ場合ヲ包含セサルモノト解スヘク従テ抵当権者ハ斯ル動産ニ対スル強制執行ニ因ル競売代金ノ上ニ其優先権ヲ主張スルコトヲ得サルモノトス。」
過去問・解説
(R1 司法 第15問 エ)
抵当権の目的である建物が天災のため崩壊し動産となった場合、抵当権の効力は、その動産に及ぶ。

(正答)

(解説)
判例(大判大5.6.28)は、抵当不動産たる建物が崩壊して動産となった場合、抵当権は消滅し、崩壊によって生じた動産に対して、その効力は及ばない旨判示している。
総合メモ

抵当権の抹消登記請求権 大判大正8年10月8日

概要
後順位抵当権者は、物権的請求権に基づき、既に消滅した先順位抵当権設定登記の抹消を請求することができる。
判例
事案:後順位抵当権者が、既に消滅した先順位抵当権の設定登記の抹消を請求することができるかどうかが問題となった。

判旨:「上告人ハ自己ノ抵当権設定登記ヲ抹消スルノ手続ヲ為サスト云フニ在リテ斯クノ如ク既ニ弁済ニ因リテ消滅ニ帰シタル本件抵当権ノ設定登記カ尚依然トシテ登記簿上ニ存在スルニ於テハ被上告人ノ如ク登記簿上次順位ニ在ル抵当権者ハ形式ニ於テ上告人ノ次位ニ在ルカ為メニ抵当権ノ行使其他諸般ノ取引上種々ナル障礙ヲ受クルコトヲ免カレサルハ当然ナルヲ以テ被上告人ハ上告人ニ対シテ其消滅セル抵当権ノ設定登記ノ抹消ヲ請求スルノ利益ヲ有シ又上告人ハ其請求ニ応シテ抹消手続ヲ為スノ義務ヲ有スルモノト云ハサル可カラス。」
過去問・解説
(H18 司法 第10問 3)
第1順位の抵当権の被担保債権が弁済されて消滅した場合、付従性に基づいて抵当権は当然に消滅するから、第2順位の抵当権者が第1順位の抵当権の登記の抹消を求める必要はなく、その登記の抹消を内容とする物権的請求権は生じない。

(正答)

(解説)
判例(大判大8.10.8)は、「上告人ハ自己ノ抵当権設定登記ヲ抹消スルノ手続ヲ為サスト云フニ在リテ斯クノ如ク既ニ弁済ニ因リテ消滅ニ帰シタル本件抵当権ノ設定登記カ尚依然トシテ登記簿上ニ存在スルニ於テハ被上告人ノ如ク登記簿上次順位ニ在ル抵当権者ハ形式ニ於テ上告人ノ次位ニ在ルカ為メニ抵当権ノ行使其他諸般ノ取引上種々ナル障礙ヲ受クルコトヲ免カレサルハ当然ナルヲ以テ被上告人ハ上告人ニ対シテ其消滅セル抵当権ノ設定登記ノ抹消ヲ請求スルノ利益ヲ有シ又上告人ハ其請求ニ応シテ抹消手続ヲ為スノ義務ヲ有スルモノト云ハサル可カラス。」と判示している。したがって、第2順位の抵当権者が第1順位の抵当権の登記の抹消を求める必要性はなお存在し、その登記の抹消を内容とする物権的請求権は生じる。

(H28 共通 第14問 4)
第1順位の抵当権者の被担保債権が弁済により消滅した場合、第2順位の抵当権者は、消滅した第1順位の抵当権の抹消登記手続を求めることができる。

(正答)

(解説)
判例(大判大8.10.8)は、後順位抵当権者は、物権的請求権に基づき、既に消滅した先順位抵当権設定登記の抹消登記を請求することができる旨判示している。

(R2 予備 第3問 オ)
Aは、所有する甲土地につき、Bを第1順位とする抵当権及び、Cを第2順位とする抵当権をそれぞれ設定し、その旨の登記がされた。この場合において、甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは、Cは、Bに対し、自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判大8.10.8)は、後順位抵当権者は、物権的請求権に基づき、既に消滅した先順位抵当権設定登記の抹消登記を請求することができる旨判示している。したがって、甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは、Cは、Bに対し、自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる。

(R3 共通 第6問 オ)
甲土地に設定された第1順位の抵当権の被担保債権が消滅したにもかかわらずその登記が抹消されていない場合、甲土地の第2順位の抵当権者は、第1順位の抵当権者に対してその登記の抹消を請求することができない。

(正答)

(解説)
判例(大判大8.10.8)は、後順位抵当権者は、物権的請求権に基づき、既に消滅した先順位抵当権設定登記の抹消登記を請求することができる旨判示している。したがって、甲土地に設定された第1順位の抵当権の被担保債権が消滅したにもかかわらずその登記が抹消されていない場合、甲土地の第2順位の抵当権者は、第1順位の抵当権者に対してその登記の抹消を請求することができる。
総合メモ

抵当権の効力の及ぶ範囲 大判大正14年10月26日

概要
土地の所有者が、土地に抵当権を設定した後、その土地上に立木を植栽した場合、抵当権の効力は、その立木に及ぶ。
判例
事案:土地の所有者が、土地に抵当権を設定した後、その土地上に立木を植栽した場合において、抵当権の効力がその立木に及ぶかどうかが問題となった。

判旨:「土地ニ定著シテ之ト一体ヲ為ス樹木ハ不動産タル性質ヲ有スルモノナリト雖立木ニ関スル法律ノ適用ヲ受クルモノニアラサレハ土地ト分離シ独立シテ抵当権ノ目的ト為スコトヲ得サルハ同法律第2条ノ規定ニヨリ明瞭ナルノミナラス抵当権ハ其ノ目的タル不動産ニ附加シ之ト一体ヲ成シタル物ニ及フ旨ヲ規定シタル民法第370条ニ於テ抵当地上ニ存スル建物ヲ除外シタルニ止リ其ノ地上ニ存スル樹木ヲ除外セサリシ趣旨ニ徴スルモ蓋疑ヲ容レサル所ナリトス故ニ山林ヲ抵当権ノ目的トナシタル場合ニ其ノ地上ニ生立スル樹木ニシテ立木ニ関スル法律ノ適用ヲ受ケサルモノナル以上ハ特ニ之ヲ除外スル旨ノ意思ヲ表示セサル限リ抵当権ハ単ニ地盤ノミニ止ラス之ト一体ヲ成ス樹木ニモ及フモノナリト解スルヲ相当トス。」
過去問・解説
(R1 司法 第15問 イ)
土地の所有者が、土地に抵当権を設定した後、その土地上に立木を植栽した場合、抵当権の効力は、その立木に及ぶ。

(正答)

(解説)
判例(大判大14.10.26)は、土地の所有者が、土地に抵当権を設定した後、その土地上に立木を植栽した場合、抵当権の効力は、その立木に及ぶ旨判示している。
総合メモ

物権的請求権 大判昭和6年10月21日

概要
抵当権者は、抵当権設定者や第三者が抵当権侵害行為を行っている場合には、被担保債権の弁済期が到来しているか否かを問わず、抵当権に基づく物権的請求権として妨害の排除を請求することができる。
判例
事案:抵当権者が、抵当権設定者や第三者が抵当権侵害行為を行っている場合において、被担保債権の弁済期が到来しているか否かを問わず、抵当権に基づく物権的請求権として妨害の排除を請求することができるかが問題となった。

判旨:「抵当権ニ基ク競売開始決定アリタル場合ニハ其ノ送達ニ因リ債権者ノ為メ差押ノ効力ヲ生スルカ故ニ爾後債務者ノ為ス法律行為ニ因ル処分行為ハ之ヲ以テ債権者ニ対抗スルコトヲ得ス従テ右差押ノ現存スル以上ハ更ニ判決ヲ以テ債務者ノ為ス法律行為ニ因ル処分行為ヲ禁止スルコトヲ要セサルハ勿論ナリト雖債務者カ滅失毀損等事実上ノ行為ヲ以テ抵当物ニ対スル侵害ヲ敢行スル場合ニ於テハ其ノ侵害行為カ抵当権者ノ有スル債権ノ弁済期後ナルト或ハ抵当権ノ実行ニ著手シタル後ナルト否トヲ問ハス抵当権者ハ物権タル抵当権ノ効力トシテ之カ妨害ノ排除ヲ訴求シ得ヘキハ当然ナリト云ハサルヲ得ス。」
過去問・解説
(R3 共通 第6問 エ)
Aが所有する甲土地にBのために抵当権が設定され、その登記がされた後、Cは、甲土地上にAが所有する樹木を何の権原もなく伐採し始めた。この場合、Bは、被担保債権の弁済期前であっても、Cに対して伐採の禁止を請求することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判昭6.10.21)は、抵当権者は、抵当権設定者や第三者が抵当権侵害行為を行っている場合には、被担保債権の弁済期が到来しているか否かを問わず、抵当権に基づく物権的請求権として妨害の排除を請求することができる旨判示している。したがって、Cが、甲土地上にAが所有する樹木を何の権原もなく伐採し始めた場合、甲土地の抵当権者であるBは、被担保債権の弁済期前であっても、Cに対して伐採の禁止を請求することができる。
総合メモ

抹消された抵当権の登記の流用の可否 最二小判昭和44年7月4日

概要
被担保債権が消滅し抵当権が消滅した後に、残存する抵登記をその後に発生した債権の担保のために流用することは、その流用後に出現した第三者との関係では許される。
判例
事案:被担保債権が消滅し抵当権が消滅した後に、残存する抵当権とその登記をその後に発生した債権の担保のために流用することが許されるかどうかが問題となった。

判旨:「労働金庫法が58条においてその事業の範囲を明定し、その99条において役員の事業範囲外行為について罰則を設けていること、同法がその会員の福利共済活動の発展およびその経済的地位の向上を図ることを目的としていることに鑑みれば、労働金庫におけるいわゆる員外貸付の効力については、これを無効と解するのが相当であつて、この理は、農業協同組合が組合員以外の者に対し、組合の目的事業と全く関係のない貸付をした場合の当該貸付の効力についてと異るところはない(最高裁判所昭和40年(オ)第348号、同41年4月26日第三小法廷判決、民集20巻4号849頁参照。)。」
 「本件抵当権も、その設定の趣旨からして、経済的には、債権者たる労働金庫の有する右債権の担保たる意義を有するものとみられるから、上告人としては、右債務を弁済せずして、右貸付の無効を理由に、本件抵当権ないしその実行手続の無効を主張することは、信義則上許されないものというべきである。ことに、本件のように、右抵当権の実行手続が終了し、右担保物件が競落人の所有に帰した場合において、右競落人またはこれから右物件に関して権利を取得した者に対して、競落による所有権またはこれを基礎とした権原の取得を否定しうるとすることは、善意の第三者の権利を自己の非を理由に否定する結果を容認するに等しく、信義則に反するものといわなければならない。」
過去問・解説
(H19 司法 第15問 エ)
債務者A所有の不動産上にYが第1順位、Xが第2順位の根抵当権でない抵当権の設定を受け、それぞれ設定登記を行った後、AがYに対する被担保債権をいったん弁済し、その後YがAに同額の新たな貸付を行い、抹消されていなかった第1順位の登記を合意の上新たな貸付債権の担保として流用することにした場合、Xは、Yの抵当権設定登記の抹消を求めることができない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭11.1.14)は、本来は消滅したはずの無効な抵当権の登記を同額の新たな貸付債権の担保として流用した事案において、無効登記の流用の時までに後順位抵当権者等の第三者がその不動産上に正当な利害関係を有するに至った場合には、流用登記は無効である旨判示している。したがって、AがYに対する被担保債権をいったん弁済し、その後YがAに同額の新たな貸付を行い、抹消されていなかった第1順位の登記を合意の上新たな貸付債権の担保として流用することにした場合、当該流用以前にすでに第2順位の抵当権の設定を受けていたXとの関係では、当該流用登記は無効であるから、Xは、Yの抵当権設定登記の抹消を求めることができる。
総合メモ

将来債権である保証人の求償権を担保するための抵当権の設定 最二小判昭和33年5月9日

概要
将来発生する可能性のある条件付債権を被担保債権として、抵当権を設定することも許される。
判例
事案:将来発生する可能性のある条件付債権を被担保債権として、抵当権を設定することが許されるかが問題となった。

判旨:「当事者間の合意によつて、…将来発生の可能性のある条件付債権を担保するため抵当権を設定することも、有効と解すべき…。」
過去問・解説
(H19 司法 第15問 ア)
将来発生するかどうか不確実な債権について根抵当権でない抵当権の設定登記がなされた場合、抵当権設定者は、被担保債権の不存在を理由として、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.5.9)は、将来発生する可能性のある条件付債権を被担保債権として、抵当権を設定することも許される旨判示している。したがって、将来発生するかどうか不確実な債権について根抵当権でない抵当権の設定登記がなされた場合においても、当該抵当権は有効であるから、抵当権設定者は、被担保債権の不存在を理由として、抵当権者に対して、抵当権設定登記の抹消を求めることができない。

(H26 共通 第14問 ア)
保証人の求償権は、主たる債務者が弁済しないときに保証人が弁済することによって生じる将来の債権であるから、保証人の求償権を被担保債権として抵当権を設定することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.5.9)は、将来発生する可能性のある条件付債権を被担保債権として、抵当権を設定することも許される旨判示している。したがって、保証人の求償権を被担保債権として抵当権を設定することもできる。

(R1 共通 第14問 オ)
後日発生すべき貸付金債権を担保するために抵当権を設定する契約がされ、その旨の登記がされた後にその貸付金債権が生じた場合、抵当権はその債権を有効に担保する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭33.5.9)は、将来発生する可能性のある条件付債権を被担保債権として、抵当権を設定することも許される旨判示している。したがって、後日発生すべき貸付金債権を担保するために抵当権を設定する契約がされ、その旨の登記がされた場合、当該抵当権は有効であるから、その後にその貸付金債権が生じた場合、抵当権はその債権を有効に担保する。
総合メモ

抵当権の配当と不当利得返還請求 最二小判平成3年3月22日

概要
抵当権者は、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合であっても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員の返還を請求することができる。
判例
事案:債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者が存する場合において、抵当権者が、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合であっても、当該債権者に対して、自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員について不当利得返還請求をすることができるかが問題となった。

判旨:「抵当権者は、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかつた場合であつても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによつて自己が配当を受けることができなかつた金銭相当額の金員の返還を請求することができるものと解するのが相当である。けだし、抵当権者は抵当権の効力として抵当不動産の代金から優先弁済を受ける権利を有するのであるから、他の債権者が債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けたために、右優先弁済を受ける権利が害されたときは、右債権者は右抵当権者の取得すべき財産によって利益を受け、右抵当権者に損失を及ぼしたものであり、配当期日において配当異議の申出がされることなく配当表が作成され、この配当表に従って配当が実施された場合において、右配当の実施は係争配当金の帰属を確定するものではなく、したがって、右利得に法律上の原因があるとすることはできないからである。」
過去問・解説
(H28 司法 第28問 イ)
抵当権者は、自己の抵当権が設定された不動産について競売がされた場合には、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかったとしても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対し、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員について不当利得返還請求をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.3.22)は、「抵当権者は、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかつた場合であつても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによつて自己が配当を受けることができなかつた金銭相当額の金員の返還を請求することができるものと解するのが相当である。」と判示している。

(R5 司法 第29問 ア)
甲土地につき抵当権の設定を受け、その旨の登記をしたAは、甲土地についての不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合には、Aに対する優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた一般債権者Bに対し、不当利得に基づく返還請求をすることができない。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.3.22)は、「抵当権者は、不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合であっても、債権又は優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた債権者に対して、その者が配当を受けたことによって自己が配当を受けることができなかった金銭相当額の金員の返還を請求することができるものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、Aは、甲土地についての不動産競売事件の配当期日において配当異議の申出をしなかった場合においても、Aに対する優先権を有しないにもかかわらず配当を受けた一般債権者Bに対し、不当利得に基づく返還請求をすることができる。
総合メモ

価格割合に基づく抵当権の存続 最三小判平成6年1月25日

概要
互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合、甲建物又は乙建物を目的として設定されていた抵当権は、丙建物のうち甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。
判例
事案:互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合、甲建物又は乙建物を目的として設定されていた抵当権が存続するかどうかが問題となった。

判旨:「互いに主従の関係にない甲、乙2棟の建物が、その間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合においても、これをもって、甲建物あるいは乙建物を目的として設定されていた抵当権が消滅することはなく、右抵当権は、丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続すると解するのが相当である。けだし、右のような場合、甲建物又は乙建物の価値は、丙建物の価値の一部として存続しているものとみるべきであるから、不動産の価値を把握することを内容とする抵当権は、当然に消滅するものではなく、丙建物の価値の一部として存続している甲建物又は乙建物の価値に相当する各建物の価格の割合に応じた持分の上に存続するものと考えるべきだからである。」
過去問・解説
(R1 共通 第14問 イ)
1人の者が所有する互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物が工事により1棟の丙建物となった場合において、甲建物と乙建物とにそれぞれ抵当権が設定されていたときは、それらの抵当権は、丙建物のうちの甲建物と乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。

(正答)

(解説)
判例(最判平6.1.25)は、「互いに主従の関係にない甲、乙2棟の建物が、その間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合においても、これをもって、甲建物あるいは乙建物を目的として設定されていた抵当権が消滅することはなく、右抵当権は、丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続すると解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ

抵当権者の物上代位権と債権譲渡 最二小判平成10年1月30日

概要
抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
判例
事案:抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた場合において、その後もなお自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるかどうかが問題となった。

判旨:「1 民法372条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は、主として、抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから、右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため、差押えを物上代位権行使の要件とし、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り、右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして、二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。
 2 右のような民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の「払渡又ハ引渡」には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 イ)
Aのために抵当権設定登記がされた後にCに対する賃料債権がBからEに譲渡されてその第三者対抗要件が具備された場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.1.30)は、304条1項但書の「払渡し又は引渡し」の要件の解釈について、「債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、Cに対する賃料債権がBからEに譲渡されてその第三者対抗要件が具備された場合においても、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。

(H19 司法 第14問 3)
抵当権に基づく物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた場合であっても、それより前に抵当権が設定され、第三者に対する対抗要件が備えられていたならば、抵当権者は、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.1.30)は、304条1項但書の「払渡し又は引渡し」の要件の解釈について、「債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、抵当権に基づく物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた場合であっても、それより前に抵当権が設定され、第三者に対する対抗要件が備えられていたならば、抵当権者は、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

(H23 司法 第14問 5)
抵当権者は、物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても、自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.1.30)は、304条1項但書の「払渡し又は引渡し」の要件の解釈について、「債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、抵当権者は、物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても、自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

(H29 司法 第12問 ア)
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.1.30)は、304条1項但書の「払渡し又は引渡し」の要件の解釈について、「債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
総合メモ

一般債権者の差押えと抵当権者の差押えの優劣 最一小判平成10年3月26日

概要
債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合、両者の優劣は、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決すべきである。
判例
事案:債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合における、両者の優劣の判断基準が問題となった。

判旨:「債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ、右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は配当を受けることができないと解すべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 ア)
AのBに対する金銭債権を担保するために、BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された。この登記が、Bの一般債権者DがBのCに対する賃料債権を差し押さえた後にされた場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.3.26)は、「債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ、右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は配当を受けることができないと解すべきである。」と判示している。したがって、Aの抵当権設定登記が、Bの一般債権者DがBのCに対する賃料債権を差し押さえた後にされた場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができない。

(R3 共通 第11問 オ)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。この登記が、AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえ、その差押命令がBに送達された後にされた場合、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.3.26)は、「債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ、右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は配当を受けることができないと解すべきである。」と判示している。したがって、Cの抵当権設定登記が、AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえ、その差押命令がBに送達された後にされた場合、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。
総合メモ

賃借人の転貸賃料債権と抵当権者の物上代位権 最二小決平成12年4月14日

概要
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、当該賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
判例
事案:抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権について、抵当権者が物上代位権を行使することができるかが問題となった。

判旨:「民法372条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する「債務者」には、原則として、抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。けだし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担するものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても、これを「債務者」に含めることはできない。また、転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。もっとも、所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は抵当権の行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は賃貸借を仮装した上で、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には、その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである。
 以上のとおり、抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができないと解すべきであ…る。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 オ)
AのBに対する金銭債権を担保するために、BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された。Bの承諾を得てCがGに建物を転貸した場合、Aは、建物の賃貸借により生ずる果実であるCのGに対する賃料の債権を差し押さえることができる。

(正答)

(解説)
判例(最決平12.4.14)は、「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない」と判示している。したがって、Bの承諾を得てCがGに建物を転貸した場合、Aは、建物の賃借人であるCを同建物の所有者であるBと同視することを相当とする場合でなければ、建物の賃貸借により生ずる果実であるCのGに対する賃料の債権を差し押さえることができない。

(H19 司法 第14問 4)
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、その賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

(正答)

(解説)
判例(最決平12.4.14)は、「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない」と判示している。

(H29 予備 第6問 イ)
AのBに対する債権を被担保債権として、C所有の甲土地について抵当権が設定され、その旨の登記がされている。Cが甲土地をDに賃貸し、さらにDが甲土地をEに転貸したときは、DをCと同視することを相当とする場合を除き、Aは、Dが取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

(正答)

(解説)
判例(最決平12.4.14)は、「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない」と判示している。したがって、Cが甲土地をDに賃貸し、さらにDが甲土地をEに転貸したときは、DをCと同視することを相当とする場合を除き、Aは、Dが取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

(R3 共通 第11問 ウ)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。Bが甲建物をDに転貸した場合、Cは、BをAと同視することが相当であるときを除き、BのDに対する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最決平12.4.14)は、「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない」と判示している。したがって、Bが甲建物をDに転貸した場合、Cは、BをAと同視することが相当であるときを除き、BのDに対する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
総合メモ

抵当権設定登記と賃料債権の相殺と物上代位権 最三小判平成13年3月13日

概要
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。
判例
事案:抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後に、抵当不動産の賃借人が、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することができるかが問題となった。

判旨:「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし、物上代位権の行使としての差押えのされる前においては、賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが、上記の差押えがされた後においては、抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ、物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 エ)
Aのために抵当権設定登記がされるより前にCがBに対して金銭を貸し付けていた場合、Aが賃料債権を差し押さえたときは、Cは、その貸金債権の弁済期が差押え後に到来するものであっても、当該貸金債権と賃料債権との相殺をもってAに対抗することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.3.13)は、「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。」と判示している。本肢においては、Aのために抵当権設定登記がされるより前にCがBに対して金銭を貸し付けていたのであるから、Aが賃料債権を差し押さえたとき、Cは、その貸金債権の弁済期が差押え後に到来するものであっても、当該貸金債権と賃料債権との相殺をもってAに対抗することができる。

(H29 司法 第12問 エ)
抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.3.13)は、「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。」と判示している。

(R3 共通 第11問 ア)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け、その貸金債権の弁済期が到来した場合、AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした後であっても、Bは、Aに対する貸金債権を自働債権とし、Aの賃料債権を受働債権とする相殺をもって、Cに対抗することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.3.13)は、「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け、その貸金債権の弁済期が到来した場合、AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした後は、Bは、Aに対する貸金債権を自働債権とし、Aの賃料債権を受働債権とする相殺をもって、Cに対抗することができない。
総合メモ

一般債権者による差押えと物上代位権の行使 最三小判平成14年3月12日

概要
転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできない。
判例
事案:転付命令に係る金銭債権が抵当権の物上代位の目的となり得る場合において、転付命令の効力と抵当権の物上代位の効力との優劣関係が問題となった。

判旨:「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。けだし、転付命令は、金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として、被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって、転付命令が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法159条3項に規定する差押等をしていないことを条件として、差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項、160条)、他方、抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには、自ら被転付債権を差し押さえることを要し(最高裁平成13年(受)第91号同年10月25日第一小法廷判決・民集55巻6号975頁)、この差押えは債権執行における差押えと同様の規律に服すべきものであり(同法193条1項後段、2項、194条)、同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば、抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いをすべき理由はなく、これを反対に解するときは、転付命令を規定した趣旨に反することになるからである。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 ウ)
Aのために抵当権設定登記がされた後にBの一般債権者FがCに対する既発生の賃料債権を差し押さえ、その債権をFに転付する旨の命令が効力を生じた場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.3.12)は、「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。」と判示している。したがって、Aのために抵当権設定登記がされた後にBの一般債権者FがCに対する既発生の賃料債権を差し押さえ、その債権をFに転付する旨の命令が効力を生じた場合、Aは、同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができない。

(H23 司法 第14問 4)
抵当権者は、一般債権者が物上代位権行使の目的となる債権を差し押さえて転付命令が第三債務者に送達された後であっても、自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.3.12)は、「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。」と判示している。

(H29 司法 第12問 ウ)
抵当権者は、抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が転付命令の確定により差押債権者に移転した場合においても、目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.3.12)は、「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。」と判示している。

(R3 共通 第11問 エ)
AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され、その登記がされている。AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえて転付命令を取得し、その転付命令がBに送達された後は、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.3.12)は、「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは、転付命令の効力を妨げることはできず、差押命令及び転付命令が確定したときには、転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ、抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。」と判示している。したがって、AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえて転付命令を取得し、その転付命令がBに送達された後は、Cは、同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。
総合メモ

建物に設定した抵当権と土地の賃借権 最三小判昭和40年5月4日

概要
借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、原則として、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ。
判例
事案:借地上の建物が抵当権の目的となっている場合において、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶかどうかが問題となった。

判旨:「土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により、競落人が該建物の所有権を取得した場合には、民法612条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき、従前の建物所有者との間においては、右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり、右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である…。けだし、建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となつて一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである。」
過去問・解説
(H24 司法 第15問 2)
借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.5.4)は、借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、原則として、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ旨判示している。

(H25 司法 第16問 2)
AがBから建物所有目的で土地を賃借し、その上にAが建てた甲建物にCのために抵当権を設定した場合、その抵当権の効力は甲建物の従たる権利である当該土地賃借権にも及び、抵当権実行としての競売がされた時に当該土地賃借権も甲建物の買受人Dに移転するから、Dは、Bの承諾がなくても、Bに対し、当該土地賃借権を甲建物の占有権原として主張することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.5.4)は、借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、原則として、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ旨判示している。したがって、AがBから建物所有目的で土地を賃借し、その上にAが建てた甲建物にCのために抵当権を設定した場合、その抵当権の効力は甲建物の従たる権利である当該土地賃借権にも及び、抵当権実行としての競売がされた時に当該土地賃借権も甲建物の買受人Dに移転する。
しかし、612条1項は、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と規定しているところ、本肢におけるAからDへの土地賃借権の移転は、賃借権の譲渡に当たる。したがって、Dは、Bの承諾がなければ、Bに対し、当該土地賃借権を甲建物の占有権原として主張することができない。

(H29 司法 第8問 オ)
A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ、甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に、乙建物にCのための抵当権が設定され、その旨の登記がされた。その後、Bは、Aに対し、その地上権を放棄する旨の意思表示をした。この抵当権が実行され、Dが乙建物を取得した場合、Dは、Aに対し、地上権を主張することができない。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.11.24)は、本肢と同種の事案において、借地権を有する者が、借地上の建物に抵当権を設定した後に借地権を放棄しても、398条の類推適用により、放棄を抵当権者及びその実行により競落人となった者に対抗できない旨判示している。したがって、本肢においても、Bは地上権の放棄を競落人であるDに対抗することができないから、Dは、Aに対し、地上権を主張することができる。

(R1 共通 第14問 ウ)
借地上の建物について抵当権が設定された場合、抵当権の効力は、敷地の賃借権に及ぶことはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭40.5.4)は、借地上の建物が抵当権の目的となっている場合、原則として、建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ旨判示している。
総合メモ

利息・損害金の支払いによる抵当権の消滅請求 大判大正4年9月15日

概要
債務者及びその物上保証人は、被担保債権及び利息債権の全額を弁済しなければ抵当権の消滅をさせることができない。
判例
事案:債務者及びその物上保証人が抵当権を消滅させるには、元本債権だけでなく、利息、損害金の全額を弁済しなければならないのかが問題となった。

判旨:「民法第374条第1項ニ抵当権者カ利息其他ノ定期金ヲ請求スル権利ヲ有スルトキハ其満期ト為リタル最後ノ2年分ニ付テノミ其抵当権ヲ行フコトヲ得ト規定シタルハ惟フニ抵当権者カ其元本債権ト共ニ利息其他ノ定期金ノ請求債権ヲ有スルトキハ定期金債権ハ之ト一体ヲ為ス元本債権ト同順位ニ於テ抵当権ノ目的物ニ付キ優先弁済ヲ受クヘキ権利ヲ有スヘキハ至当ノ条理ナリト雖モ時ノ経過ニ従ヒ其額ヲ増大スヘキ定期金債権ニ付キ此条理ヲ貫徹スルニ於テハ後順位ノ抵当権者ノ債権ノ担保範囲ヲ不安ナラシメ引テ一般債権者ニモ不測ノ損害ヲ蒙ムラシムルニ至ルヘキヲ以テ定期金債権ニ付キ原本債権ト同一順位ニ於テ抵当権者ノ行使シ得ヘキ抵当権ノ範囲ヲ満期ト為リタル最後ノ2年分ニ制限シ因テ他ノ債権者ノ権利ヲ保護セントスル立法ノ趣旨ニ出テタルニ外ナラスシテ之カ為メ抵当権設定者ノ抵当権者ニ対スル関係ニ於テ担保債権ノ範囲ヲ制限スルモノニアラス是レ同項但書ノ文旨ニ徴スルモ明ナリ蓋シ同項但書ニ依レハ定期金ノ債権ニ付テハ其満期ト為リタル最後ノ2年分ヨリ以前ノ部分ニ付テモ特ニ抵当権設定行為ヲ要セス壇ニ満期後特別ノ登記ヲ為スノミニ依リ其順位ヲ以テ抵当権ヲ行使シ得ヘキコトヲ明ニセルニ鑑ムルモ特別ノ登記ヲ為スニアラスンハ他ノ債権者ニ対シ優先弁済ヲ受クルヲ得サルニ止マリ設定当事者間ニ於テハ抵当権ニ依リ担保セラレタル定期金債権ノ存在セルコトヲ前提トセル法意ノ存スル所以ヲ推知スルニ足ルヲ以テナリ従テ抵当権ヲ設定シタル債務者又ハ第三者ハ抵当権者ニ対シ原本債権ト共ニ満期ト為リタル定期金ノ全額ヲ弁済スルニアラサレハ抵当権ヲ消滅セシムルコト能ハサルハ勿論ナルヲ以テ之カ地位ヲ承継シタル抵当不動産ノ第三取得者モ亦之ト同一金額ノ代位弁済ヲ為スニアラサレハ抵当権者ニ対シ抵当権消滅ヲ原因トシテ之カ登記抹消ヲ訴求スヘキ権利ナキヤ明ナリトス。」
過去問・解説
(H29 予備 第6問 ウ)
AのBに対する債権を被担保債権として、C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され、その旨の登記がされている。本件抵当権が根抵当権でない場合において、AがBに対して被担保債権として元本債権のほか3年分の利息債権を有しているときは、Cは、Aに対して、元本債権のほかその最後の2年分の利息債権を弁済すれば、本件抵当権を消滅させることができる。

(正答)

(解説)
判例(大判大4.9.15)は、債務者及びその物上保証人は、被担保債権及び利息債権の全額を弁済しなければ抵当権の消滅をさせることができない旨判示している。したがって、本件抵当権が根抵当権でない場合において、AがBに対して被担保債権として元本債権のほか3年分の利息債権を有しているときは、Cは、Aに対して、元本債権のほかその3年分の利息債権全額を弁済しなければ、本件抵当権を消滅させることができない。
総合メモ

土地と建物を所有する者が土地に抵当権を設定した後に建物を第三者に売り渡した場合における法定地上権の成否 大連判大正12年12月14日

概要
抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一であれば、その後、建物の所有者が変わった後に抵当権が実行されても、法定地上権は成立する。
判例
事案:抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一である場合に、その後、建物の所有者が変わった後に抵当権が実行されたとき、法定地上権が成立するかどうかが問題となった。

判旨:「土地及其ノ上ニ存スル建物ノ所有者カ土地又ハ建物ノミヲ抵当ト為シ其ノ一カ抵当権ニ基キ競売セラレ二者其ノ所有者ヲ異ニスルニ至リタル場合ニ於テ建物ノ所有者ハ土地使用ノ権利ナキノ故ヲ以テ建物ヲ収去スルヲ免レスト為サンカ建物ノ利用ヲ害シ一般経済上不利ナルコト論ヲ俟タス民法第388条ハ此ノ不利ヲ避ケンカ為ニ建物所有者ニ地上権ヲ附与シタルモノナレハ土地ノミヲ抵当ト為シタル場合ニ於テハ同条ニ依リ地上権ヲ有スヘキ者ハ競売ノ時ニ於ケル建物所有者ナラサルヘカラス其ノ抵当権設定者タルト否トハ問フ所ニ非ス。」
過去問・解説
(H21 司法 第15問 4)
Aが所有する土地上に、A所有の建物が建てられ、続けて、土地にBのための抵当権が設定され、さらに、AがDに対し建物を譲渡するとともに、AD間で土地の賃貸借契約が締結された後、抵当権が実行された結果、Cが土地の所有者になった場合、土地に建物のための法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大連判大12.12.14)は、本肢と同種の事案において、抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一であれば、その後、建物の所有者が変わった後に抵当権が実行されても、法定地上権は成立する旨判示している。したがって、本肢においても、抵当権が実行された結果、Cが土地の所有者になった場合、土地に建物のための法定地上権が成立する。

(R4 司法 第15問 ア)
甲土地及びその土地上の乙建物を所有していたAが、甲土地に抵当権を設定した後に、乙建物を第三者に譲渡した。その後、抵当権が実行されCが甲土地を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大連判大12.12.14)は、本肢と同種の事案において、抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一であれば、その後、建物の所有者が変わった後に抵当権が実行されても、法定地上権は成立する旨判示している。したがって、本肢においても、抵当権が実行されCが甲土地を取得したときは、法定地上権が成立する。
総合メモ

借地人が借地上の建物に一番抵当権を設定した後に土地の所有権を取得し、建物に二番抵当権を設定した場合における法定地上権 大判昭和14年7月26日

概要
建物に対する第1順位の抵当権設定時点で土地と建物の所有者が異なり、建物に対する第2順位の抵当権設定時点で土地と建物が同一の所有者に帰属していた場合、第1順位の抵当権を実行したときには、法定地上権が成立する。
判例
事案:建物に対する第1順位の抵当権設定時点で土地と建物の所有者が異なり、建物に対する第2順位の抵当権設定時点で土地と建物が同一の所有者に帰属していた場合において、第1順位の抵当権を実行したときに、法定地上権が成立するかどうかが問題となった。

判旨:「法定地上権ニ関スル民法第388条立法ノ趣旨ハ畢意競売ノ結果土地ト建物トカ其ノ所有者ヲ異ニスルニ至リタル場合依然建物ヲ建物トシテ其ノ敷地上ニ存置セシメ以テ之カ所有者並国家経済上ノ利益ヲ保護スルト共ニ延テ抵当権ノ効力ヲ全フセシメントノ律意ニ他ナラスト解スヘク従テ苟クモ本件建物カAニ対シ其ノ抵当権設定アリタル当時ニ於テ該建物所在ノ本件宅地並右建物カ何レモ抵当債務者タルBノ所有ニ属シ居タルコト上掲ノ如クナル以上仮令原審認定ノ如ク本件競売カ他ノ抵当権者即未タ宅地カ右Cノ所有ニ属セサル当時設定セラレタル抵当権者Dノ申立ニ因リタル場合ト雖モ仍前示法条ノ適用アルヘキト同時ニ縦ヘ右競売当時土地ト建物トカ其ノ所有者ヲ異ニスルニ至リタル場合ト雖モ右法条ノ適用ヲ左右スルニ足ラサルヤ多ク疑ヲ容ルヘカラス蓋シ民法第388条ニ所謂競売ノ場合中ヨリ如上ノ場合ヲ除外スヘキモノトセンカ為メニ前示立法ノ目的ハ之ヲ貫徹スルニ由ナキコト敢テ多言ヲ俟タサルヘケレハナリ。」
過去問・解説
(R4 司法 第15問 エ)
A所有の甲土地を賃借してその土地上に乙建物を所有していたBが、乙建物に第1順位の抵当権を設定した後、甲土地をAから譲り受け、次いで乙建物に第2順位の抵当権を設定した。その後、第1順位の抵当権が実行され、Cが乙建物を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭14.7.26)は、本肢と同種の事案において、建物に対する第1順位の抵当権設定時点で土地と建物の所有者が異なり、建物に対する第2順位の抵当権設定時点で土地と建物が同一の所有者に帰属していた場合、第1順位の抵当権を実行したときには、法定地上権が成立する旨判示している。したがって、本肢においても、第1順位の抵当権が実行され、Cが乙建物を取得したときは、法定地上権が成立する。
総合メモ

建物に保存登記がなされていない場合の法定地上権 大判昭和14年12月19日

概要
土地の抵当権設定当時その土地上の建物に保存登記がなかった場合でも、法定地上権が成立する。
判例
事案:土地の抵当権設定当時その土地上の建物に保存登記がなかった場合でも、法定地上権が成立するかどうかが問題となった。

判旨:「民法第388条ハ土地及其ノ地上ノ建物ヲ所有スル者カ土地又ハ建物ノミニ付キ抵当権ヲ設定シタルトキハ競売ノ結果其ノ所有者ヲ異ニスルノ結果ヲ生スヘク斯ル場合ニ於テハ建物ハ之ヲ該地上ヨリ収去スルコトヲ要シ建物トシテ之ヲ利用スルノ由ナキニ至ルヲ以テ国家経済上ノ見地ヨリ建物ノ所有者ノ為メニ地上権ヲ設定シタルモノト見做シ建物トシテノ利用ヲ全タカラシメントスル趣旨ニ出テタルモノナリ而シテ本件ノ場合ノ如ク土地ノミニ付キ抵当権ヲ取得シタル者ハ最初抵当権ノ設定ヲ受ケタルモノナルト後日其ノ権利ヲ譲受ケタルモノナルトヲ問ハス該地上ニ建物ノ存在シタル事実ハ之ヲ了知セルコトヲ通常ノ事例トスル力故ニ競売ノ場合ニ於テ建物ヲ所有スル何人カカ其ノ土地ニ付キ地上権ヲ取得スヘキコトハ当然予期スヘキ所ニシテ斯ル土地ヲ競落シタルモノモ亦同様ナリト謂ハサルヘカラス即チ甲タルト乙タルトヲ問ハス競売ノ当時該建物ヲ所有スル何人カカ存在シ地上権ヲ取得スヘキコトハ之ヲ予期セサルヘカラス然ルニ所有権保存登記ナルモノハ特定ノ所有者カ其ノ所有権ヲ第三者ニ対抗スルノ手段ナレハ建物ニ付キ所有権保存登記ノ存スルト否トハ叙上ノ場合ニ於ケル地上権ノ取得トハ自ラ別個ノ問題ナリト謂フヘク土地ノ抵当権者又ハ競落人ハ保存登記ノ欠缺ヲ主張スルニ付キ正当ノ利益ヲ有セサルモノナリ之ヲ要スルニ抵当権設定当時又ハ其ノ移転登記ノ当時建物ニ付所有権保存登記ノ存セサルコトハ競売ノ場合ニ於テ建物ノ所有者カ地上権ヲ取得スルノ妨ケトナルヘキモノニアラス故ニ論旨ハ理由ナシ。」
過去問・解説
(H26 司法 第15問 3)
Aが所有する甲土地上に、A所有の乙建物が存在し、その後、甲土地にBのための抵当権が設定され、抵当権が実行された結果、Cが甲土地の所有者になった場合、Aが乙建物の所有権の登記をしていなかったときは、甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭14.12.19)は、本肢と同種の事案において、土地の抵当権設定当時その土地上の建物に保存登記がなかった場合でも、法定地上権が成立する旨判示している。したがって、Aが乙建物の所有権の登記をしていなかったとしても、甲土地に乙建物のための法定地上権が成立する。
総合メモ

土地の共有と法定地上権 最一小判昭和29年12月23日

概要
388条により法定地上権が発生するべき事由が、土地の共有者の1人だけについて生じた場合おいては、法定地上権は成立しない。
判例
事案:388条により法定地上権が発生するべき事由が、土地の共有者の1人だけについて生じた場合において、法定地上権が発生するかが問題となった。

判旨:「元来共有者は、各自、共有物について所有権と性質を同じくする独立の持分を有しているのであり、しかも共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから、共有地全体に対する地上権の設定には共有者全員の同意を必要とすること原判決の判示前段のとおりである。換言すれば、共有者中一部の者だけがその共有地につき地上権設定行為をしたとしても、これに同意しなかつた他の共有者の持分は、これによりその処分に服すべきいわれはないのであり、結局右の如く他の共有者の同意を欠く場合には、当該共有地についてはなんら地上権を発生するに由なきものといわざるを得ないのである。
 そして、この理は民法388条のいわゆる法定地上権についても同様であり偶々本件の如く、右法条により地上権を設定したものと看做すべき事由が単に土地共有者の1人だけについて発生したとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘わらずそのものの持分までが無視さるべきいわれはないのであつて、当該共有土地については地上権を設定したと看做すべきでないものといわなければならない。…けだし同条が建物の存在を全うさせようとする国民経済上の必要を多分に顧慮した規定であることは疑を容れないけれども、しかし同条により地上権を設定したと看做される者は、もともと当該土地について所有者として完全な処分権を有する者に外ならないのであつて、他人の共有持分につきなんら処分権を有しない共有者に他人の共有持分につき本人の同意なくして地上権設定等の処分をなし得ることまでも認めた趣旨でないことは同条の解釈上明白だからである。」
過去問・解説
(H30 共通 第14問 オ)
AとBが共有する甲土地上にAが所有する乙建物があるところ、Aが甲土地の共有持分について抵当権を設定した場合において、抵当権の実行によりCがその共有持分を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭29.12.23)は、本肢と同種の事案において、388条により法定地上権が発生するべき事由が、土地の共有者の1人だけについて生じた場合おいては、法定地上権は成立しない旨判示している。したがって、AとBが共有する甲土地上にAが所有する乙建物があるところ、Aが甲土地の共有持分について抵当権を設定した場合において、抵当権の実行によりCがその共有持分を取得したときは、法定地上権が成立する。
総合メモ

抵当権の実行と法定地上権 最二小判昭和36年2月10日

概要
土地に対する抵当権設定の当時、当該建物は未だ完成しておらず、更地としての評価に基づき抵当権を設定したことが明らかであるときは、たとえ抵当権者において同建物の築造をあらかじめ承認した事実があっても、法定地上権は成立しない。
判例
事案:土地に対する抵当権設定の当時、当該建物は未だ完成しておらず、更地としての評価に基づき抵当権を設定したことが明らかである場合において、抵当権者において同建物の築造をあらかじめ承認した事実があるときに、法定地上権が成立するかどうかが問題となった。

判旨:「民法388条により法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであつて、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するを相当とする。然るに本件建物は本件土地に対する抵当権設定当時完成していなかつたことは原審の確定するところであり、また被上告人が本件建物の築造を予め承認した事実があつても、原判決認定の事情に照し本件抵当権は本件土地を更地として評価して設定されたことが明らかであるから、民法388条の適用を認むべきではな…い。」
過去問・解説
(H21 司法 第15問 1)
Aが所有する土地に、その更地としての評価に基づき、Bのための抵当権が設定され、続けて、土地上にA所有の建物が建てられた後、抵当権が実行された結果、Cが土地の所有者になった場合、土地に建物のための法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.2.10)は、「民法388条により法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであつて、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するを相当とする。」と判示している。したがって、Aが所有する土地に、その更地としての評価に基づき、Bのための抵当権が設定されている以上、続けて、土地上にA所有の建物が建てられた後、抵当権が実行された結果、Cが土地の所有者になったとしても、土地に建物のための法定地上権は成立しない。

(H26 司法 第15問 1)
Aが所有する甲土地に、その更地としての評価に基づき、Bのための抵当権が設定され、その後、甲土地上にA所有の乙建物が建てられた後、抵当権が実行された結果、Cが甲土地の所有者になった場合、Bが抵当権設定時、甲土地上にA所有の乙建物が建てられることをあらかじめ承諾していたとしても、甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.2.10)は、「民法388条により法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであつて、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するを相当とする。…被上告人が本件建物の築造を予め承認した事実があつても、…本件抵当権は本件土地を更地として評価して設定されたことが明らかであるから、民法388条の適用を認むべきではな…い。」と判示している。したがって、Aが所有する甲土地に、その更地としての評価に基づき、Bのための抵当権が設定されている以上、その後、甲土地上にA所有の乙建物が建てられた後、抵当権が実行された結果、Cが甲土地の所有者になった場合において、Bが抵当権設定時、甲土地上にA所有の乙建物が建てられることをあらかじめ承諾していたとしても、甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。
総合メモ

土地と建物の共同抵当と法定地上権 最三小判昭和37年9月4日

概要
土地と建物に共同抵当が設定された場合でも法定地上権が成立する。
判例
事案:土地と建物に共同抵当が設定された場合、388条の「土地又は建物につき抵当権が設定され」の文言に反し、法定地上権が成立しないのではないか問題となった。

判旨:「民法388条は、土地建物の両方が同時に抵当権の目的となっている場合の規定ではないから、右の場合にも類推適用した原判決は、不当に右規定を拡張解釈したものであり、土地所有者の所有権を犯し憲法29条に違反するものであるという。しかしながら、民法388条の適用は、右のような場合でも妨げないことについては、すでに大審院判例(明治38年9月22日、同年(オ)第327号事件判決、昭和6年10月29日、同年(オ)第866号事件判決参照)の認めるところであり、本件においてこれを変更するの要をみない。」
過去問・解説
(H21 司法 第15問 3)
Aが所有する土地上に、A所有の建物が建てられ、続けて、土地と建物にBのための抵当権が共同抵当として設定された後、土地の抵当権のみが実行された結果、Cが土地の所有者になった場合、土地に建物のための法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭37.9.4)は、本肢と同種の事案において、土地と建物に共同抵当が設定された場合でも法定地上権が成立する旨判示している。したがって、土地と建物にBのための抵当権が共同抵当として設定された後、土地の抵当権のみが実行された結果、Cが土地の所有者になった場合、土地に建物のための法定地上権が成立する。
総合メモ

抵当権の実行と土地と建物が同一人所有になった場合における法定地上権の成否 最二小判昭和44年2月14日

概要
抵当権設定当時に、土地及び建物の所有者が異なる場合においては、その土地又は建物に対する抵当権の実行による競落の際、同土地及び建物が同一人の所有に帰していても、388条の規定は適用又は準用されず、法定地上権は成立しない。
判例
事案:抵当権設定時に土地及び建物の所有者が異なっていたが、その抵当権の実行による競落の際、同一人の所有に帰していた場合に法定地上権が成立するか問題となった。

判旨:「本件のように、抵当権設定当時において土地および建物の所有者が各別である以上、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落のさい、たまたま、右土地および建物の所有権が同一の者に帰していたとしても、民法388条の規定が適用または準用されるいわれはなく、これと同一の判断を示した原判決…の結論は、相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第14問 ウ)
Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した。AがBに対し、甲建物を売り渡した後、抵当権が実行され、甲建物をEが買い受けた場合、法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭44.2.14)は、抵当権設定当時に、土地及び建物の所有者が異なる場合においては、その土地又は建物に対する抵当権の実行による競落の際、同土地及び建物が同一人の所有に帰していても、388条の規定は適用又は準用されず、法定地上権は成立しない旨判示している。本肢においても、Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した後、AがBに対し、甲建物を売り渡しているから、抵当権設定当時に、土地及び建物の所有者が異なる場合であるといえる。したがって、その後、抵当権が実行され、甲建物をEが買い受けた場合においては、法定地上権は成立しない。

(H21 司法 第15問 2)
Aが所有する土地上に、土地の使用借主であるDが所有する建物が建てられ、続けて、土地にBのための抵当権が設定され、さらに、Dが死亡したためDの単独相続人であるAが建物を相続した後、抵当権が実行された結果、Cが土地の所有者になった場合、土地に建物のための法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭44.2.14)は、抵当権設定当時に、土地及び建物の所有者が異なる場合においては、その土地又は建物に対する抵当権の実行による競落の際、同土地及び建物が同一人の所有に帰していても、388条の規定は適用又は準用されず、法定地上権は成立しない旨判示している。本肢においても、Aが所有する土地上に、土地の使用借主であるDが所有する建物が建てられ、続けて、土地にBのための抵当権が設定され、その後、さらに、Dが死亡したためDの単独相続人であるAが建物を相続したのであるから、抵当権設定当時に、土地及び建物の所有者が異なる場合であるといえる。したがって、その後、抵当権が実行された結果、Cが土地の所有者になった場合においては、土地に建物のための法定地上権は成立しない。

(R4 司法 第15問 イ)
A所有の甲土地を賃借してその土地上に乙建物を所有していたBが乙建物に抵当権を設定した後、Aが乙建物の所有権を取得した。その後、抵当権が実行されCが乙建物を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭44.2.14)は、抵当権設定当時に、土地及び建物の所有者が異なる場合においては、その土地又は建物に対する抵当権の実行による競落の際、同土地及び建物が同一人の所有に帰していても、388条の規定は適用又は準用されず、法定地上権は成立しない旨判示している。本肢においても、A所有の甲土地を賃借してその土地上に乙建物を所有していたBが乙建物に抵当権を設定した後、Aが乙建物の所有権を取得しているから、抵当権設定当時に、土地及び建物の所有者が異なる場合であるといえる。したがって、その後、抵当権が実行されCが乙建物を取得したとしても、法定地上権は成立しない。
総合メモ

先順位抵当設定当時更地だった場合における後順位抵当権者の抵当権実行と法定地上権 最三小判昭和47年11月2日

概要
土地に対する第1順位の抵当権の設定当時その地上に建物がなく、第2順位の抵当権の設定当時には建物が建築されていた場合に、第2順位の抵当権者の申立により土地が競売されたときは、仮に先順位の抵当権者が建物の建築を承認した事実があっても、同建物のため法定地上権が成立するものではない。
判例
事案:土地に対する第1順位の抵当権の設定当時その地上に建物がなく、第2順位の抵当権の設定当時には建物が建築されていた場合において、第2順位の抵当権者の申立により土地が競売されたとき、法定地上権が成立するかが問題となった。

判旨:「土地の抵当権設定当時、その地上に建物が存在しなかったときは、民法388条の規定の適用はないものと解すべきところ、土地に対する先順位抵当権の設定当時、その地上に建物がなく、後順位抵当権設定当時には建物が建築されていた場合に、後順位抵当権者の申立により土地の競売がなされるときであっても、右土地は先順位抵当権設定当時の状態において競売されるべきものであるから、右建物のため法定地上権が成立するものではないと解される。また、右の場合において、先順位抵当権者が建物の建築を承認した事実があっても、そのような当事者の個別的意思によって競売の効果をただちに左右しうるものではなく、土地の競落人に対抗しうる土地利用の権原を建物所有者に取得させることはできないというべきであって、右事実によって、抵当権設定後に建築された建物のため法定地上権の成立を認めることはできないものと解すべきである。」
過去問・解説
(H26 司法 第15問 2)
Aが所有する甲土地に、Bのための第1順位の抵当権が設定され、その後、Bの承諾を受けて甲土地上にA所有の乙建物が建てられ、さらに、甲土地にCのための第2順位の抵当権が設定された後、Cの申立てに基づいて甲土地の抵当権が実行された結果、Dが甲土地の所有者になった場合、甲土地に乙建物のための法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭47.11.2)は、本肢と同種の事案において、「土地の抵当権設定当時、その地上に建物が存在しなかったときは、民法388条の規定の適用はないものと解すべきところ、土地に対する先順位抵当権の設定当時、その地上に建物がなく、後順位抵当権設定当時には建物が建築されていた場合に、後順位抵当権者の申立により土地の競売がなされるときであっても、右土地は先順位抵当権設定当時の状態において競売されるべきものであるから、右建物のため法定地上権が成立するものではないと解される。」と判示している。したがって、本肢においても、甲土地に乙建物のための法定地上権が成立することはない。

(H30 共通 第14問 イ)
Aが所有する更地の甲土地に第1順位の抵当権が設定された後、甲土地上にAが所有する乙建物が建築され、甲土地に第2順位の抵当権が設定された場合において、第2順位の抵当権の実行によりBが甲土地を取得したときは、法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭47.11.2)は、本肢と同種の事案において、「土地の抵当権設定当時、その地上に建物が存在しなかったときは、民法388条の規定の適用はないものと解すべきところ、土地に対する先順位抵当権の設定当時、その地上に建物がなく、後順位抵当権設定当時には建物が建築されていた場合に、後順位抵当権者の申立により土地の競売がなされるときであっても、右土地は先順位抵当権設定当時の状態において競売されるべきものであるから、右建物のため法定地上権が成立するものではないと解される。」と判示している。したがって、本肢においても、法定地上権は成立しない。
総合メモ

所有権移転登記をしないうちに地上建物に抵当権を設定した場合の法定地上権 最二小判昭和53年9月29日

概要
土地及びその地上建物の所有者が建物につき抵当権を設定したとき、土地の所有権移転登記を経由していなかったとしても、当該抵当権が実行されれば、法定地上権が成立する。
判例
事案:土地及びその地上建物の所有者が、土地につき所有権移転登記を経由しないまま建物に抵当権を設定した場合において、当該抵当権の実行により法定地上権が成立するかが問題となった。

判旨:「…Aが本件建物…につきB…のために抵当権を設定した当時、右建物及びその敷地である本件土地…は、ともにAの所有に属していたが、本件土地については所有権移転登記を経由していなかったというのである。右事実関係のもとにおいて、抵当権の実行により本件建物を競落したCが法定地上権を取得するものとした原審の判断は、正当として是認することができ(最高裁昭和45年(オ)第989号同48年9月18日第三小法廷判決・民集27巻8号1066頁参照)、原判決に所論の違法はない。」
過去問・解説
(H30 共通 第14問 エ)
Aが甲土地及びその上の乙建物を所有しているが、甲土地の所有権移転登記をしていなかったところ、乙建物に抵当権が設定され、抵当権の実行によりBが乙建物を取得したときは、法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.9.29)は、本肢と同種の事案において、土地及びその地上建物の所有者が建物につき抵当権を設定したとき、土地の所有権移転登記を経由していなかったとしても、当該抵当権が実行されれば、法定地上権が成立する旨判示している。したがって、甲土地の所有権移転登記をしていなかったとしても、乙建物に抵当権が設定され、抵当権の実行によりBが乙建物を取得したときは、法定地上権は成立する。

(R4 司法 第15問 オ)
Aが甲土地及びその土地上の乙建物を所有していた。この場合において、甲土地の登記名義が前所有者Bのままであったとしても、乙建物に抵当権が設定され、抵当権の実行によりCが乙建物を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.9.29)は、本肢と同種の事案において、土地及びその地上建物の所有者が建物につき抵当権を設定したとき、土地の所有権移転登記を経由していなかったとしても、当該抵当権が実行されれば、法定地上権が成立する旨判示している。したがって、甲土地の登記名義が前所有者Bのままであったとしても、乙建物に抵当権が設定され、抵当権の実行によりCが乙建物を取得したときは、法定地上権が成立する。
総合メモ

一番抵当権設定当時は土地と建物の所有者が異なっていたが、二番抵当権が設定された当時は双方の所有者が同一となった場合における法定地上権 最二小判平成2年1月22日

概要
土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しない。
判例
事案:土地を目的とする一番抵当権設定当時は土地と地上建物の所有者が異なっていたが、後順位抵当権設定当時は同一人の所有に帰していた場合に、法定地上権が成立するかが問題となった。

判旨:「土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。けだし、民法388条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に 設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものであるが、土地について 一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていない場合には、一番抵当権者は、法定地上権の負担のないものとして、土地の担保価値を把握するのであるから、後に土地と地上建物が同一人に帰属し、後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。」
過去問・解説
(R4 司法 第15問 ウ)
A所有の甲土地を賃借してその土地上にBが乙建物を所有していたところ、Aが甲土地に第1順位の抵当権を設定した後、甲土地をBに譲渡し、次いでBが甲土地に第2順位の抵当権を設定した。その後、第2順位の抵当権が実行され、Cが甲土地を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平2.1.22)は、本肢と同種の事案において、「土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢においても、第2順位の抵当権が実行され、Cが甲土地を取得したとしても、法定地上権は成立しない。
総合メモ

共有持分と法定地上権 最三小判平成6年12月20日

概要
地上建物の共有者のうちの1人である土地共有者の債務を担保するため、土地共有者の全員が共同して各持分に抵当権を設定した場合に、抵当権の実行により当該土地共有者1人だけについて388条本文の事由が生じたとしても、他の共有者らがその持分に基づく土地に対する使用収益権を事実上放棄し、右土地共有者の処分にゆだねていたことなどにより法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しない
判例
事案:地上建物の共有者の1人である土地共有者の債務を担保するため、土地共有者の全員が各持分に共同して抵当権を設定した場合において、当該抵当権が実行されたとき、法定地上権が成立するかか問題となった。

判旨:「共有者は、各自、共有物について所有権と性質を同じくする独立の持分を有しているのであり、かつ、共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから、土地共有者の1人だけについて民法388条本文により地上権を設定したものとみなすべき事由が生じたとしても、他の共有者らがその持分に基づく土地に対する使用収益権を事実上放棄し、右土地共有者の処分にゆだねていたことなどにより法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しないといわなければならない(最高裁昭和26年(オ)第285号同29年12月23日第一小法廷判決・民集8巻12号2235頁、最高裁昭和41年(オ)第529号同44年11月4日第三小法廷判決・民集23巻11号1968頁参照)。」
過去問・解説
(R3 司法 第7問 ウ)
AとBが、甲建物及びその敷地である乙土地をそれぞれ共有していたところ、乙土地のAの共有持分に抵当権が設定された。その後、その抵当権が実行され、Cがそれを買い受けた場合、甲建物のために乙土地上に地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平6.12.20)は、本肢と同種の事案において、「土地共有者の1人だけについて民法388条本文により地上権を設定したものとみなすべき事由が生じたとしても、他の共有者らがその持分に基づく土地に対する使用収益権を事実上放棄し、右土地共有者の処分にゆだねていたことなどにより法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しないといわなければならない…。」と判示している。したがって、本肢においても、乙土地のAの共有持分に設定された抵当権が実行され、Cがそれを買い受けたとしても、甲建物のために乙土地上に地上権は成立しない。
総合メモ

共同抵当権と法定地上権 最三小判平成9年2月14日

概要
所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後建に物が取り壊され、土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない。
判例
事案:所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて新建物が建築された場合においても、法定地上権が成立するか問題となった。

判旨:「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。けだし、土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合、抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから、抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが、建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが、抵当権設定当事者の合理的意思であり、抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば、抵当権者は、当初は土地全体の価値を把握していたのに、その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって、不測の損害を被る結果になり、抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。なお、このように解すると、建物を保護するという公益的要請に反する結果となることもあり得るが、抵当権設定当事者の合理的意思に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。」
過去問・解説
(H21 司法 第15問 5)
Aが所有する土地上に、A所有の甲建物が建てられ、続けて、土地と甲建物にBのための抵当権が共同抵当として設定され、さらに、甲建物が取り壊されて同土地上にA所有の乙建物が新しく建築された後、乙建物に抵当権が設定されないまま、土地の抵当権が実行された結果、Cが土地の所有者になった場合、土地に乙建物のための法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平9.2.14)は、本肢と同種の事案において、「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。」と判示している。
本肢においては、新しく建築された乙建物に抵当権が設定されないまま、土地の抵当権が実行されているため、「特段の事情」は存しない。したがって、土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

(H26 司法 第15問 4)
Aが所有する甲土地上に、A所有の乙建物が建てられ、その後、甲土地と乙建物にBのための第1順位の共同抵当権がそれぞれ設定され、さらに、乙建物が取り壊されて甲土地上にA所有の丙建物が建てられた場合、その後、丙建物にBのための第1順位の共同抵当権が設定され、甲土地の抵当権が実行された結果、Cが甲土地の所有者になったときであっても、甲土地に丙建物のための法定地上権は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平9.2.14)は、本肢と同種の事案において、「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。」と判示している。
本肢においては、新たに建てられた丙建物の所有者は、土地の所有者と同一のAであり、かつ、丙建物が建築された時点で甲土地に第1順位の抵当権を有していたBが、丙建物についても第1順位の共同抵当権の設定を受けているから、「特段の事情」が存するといえる。したがって、この場合において、甲土地の抵当権が実行された結果、Cが甲土地の所有者になったときは、甲土地に丙建物のための法定地上権が成立する。

(H30 共通 第14問 ア)
Aが所有する甲土地及びその上の乙建物にBのために共同抵当権が設定された後、乙建物が取り壊され、甲土地上に新たにAが所有する丙建物が建築されて、丙建物につきCのために抵当権が設定された場合において、甲土地に対するBの抵当権の実行によりDが甲土地を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平9.2.14)は、本肢と同種の事案において、「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。」と判示している。
本肢においては、新たに建築された丙建物につき、甲土地の抵当権者Bではなく、Cのために抵当権が設定されているにすぎないから、「特段の事情」は存しない。したがって、この場合において、甲土地に対するBの抵当権の実行によりDが甲土地を取得したとしても、法定地上権が成立する。

(R6 司法 第28問 イ)
注文者Aが請負人Bに甲建物の建築を請け負わせた。Bが建築を完成しAに引き渡した甲建物の品質が請負契約の内容に適合しない場合において、Aがその不適合を理由として修補に代わる損害賠償を請求したときは、Aは、特段の事情のない限り、その提供を受けるまで、損害相当額を限度として報酬の支払を拒むことができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平9.2.14) は、「請負契約において、仕事の目的物に瑕疵があり、注文者が請負人に対して瑕疵の修補に代わる損害の賠償を求めたが、契約当事者のいずれからも右損害賠償債権と報酬債権とを相殺する旨の意思表示が行われなかった場合又はその意思表示の効果が生じないとされた場合には、民法634条2項により右両債権は同時履行の関係に立ち、契約当事者の一方は、相手方から債務の履行を受けるまでは、自己の債務の履行を拒むことができ、履行遅滞による責任も負わないものと解するのが相当である。しかしながら、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等に鑑み、右瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払を拒むことが信義則に反すると認められるときは、この限りではない。」と判示している。
したがって、Bが建築を完成しAに引き渡した甲建物の品質が請負契約の内容に適合しない場合において、Aがその不適合を理由として修補に代わる損害賠償を請求したときは、Aは、特段の事情のない限り、その提供を受けるまで、損害相当額を限度とするにとどまらず、報酬全額の支払を拒むことができる。
総合メモ

法定地上権成立の可否 最二小判平成19年7月6日

概要
土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者が異なることになった場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立する。
判例
事案:土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者が異なることになった場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときには、法定地上権が成立するかが問題となった。

判旨:「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立するというべきである。その理由は、次のとおりである。
 上記のような場合、乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては、仮に甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば、法定地上権は成立しない結果となる(前掲平成2年1月22日第二小法廷判決参照)ものと予測していたということはできる。しかし、抵当権は、被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって、甲抵当権が被担保債権の弁済、 設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから、乙抵当権者としては、そのことを予測した上、その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって、甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって、法定地上権が成立することを認めても、乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。そして、甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから、競売による法定地上権の成否を判断するに当たり、甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると、民法388条が規定する「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する」旨の要件(以下「同一所有者要件」という。)の充足性を、甲抵当権の設定時にさかのぼって判断すべき理由はない。
 民法388条は、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており、競売前に消滅していた甲抵当権ではなく、競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。」
過去問・解説
(H24 司法 第13問 3)
建物が存する土地を目的として、先順位の甲抵当権及びこれと抵当権者を異にする後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が被担保債権の弁済により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.7.6)は、本肢と同種の事案において、「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立するというべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、甲抵当権が被担保債権の弁済により消滅した後に、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至ったのであるから、この場合は、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立する。

(H30 共通 第14問 ウ)
Aが所有する甲土地上にBが所有する乙建物があるところ、甲土地にCのために第1順位の抵当権が設定された後、Bが甲土地の所有権を取得し、甲土地にDのために第2順位の抵当権を設定した場合において、Cの抵当権が弁済により消滅し、その後、Dの抵当権の実行によりEが甲土地を取得したときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.7.6)は、本肢と同種の事案において、「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立するというべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、Cの抵当権が弁済により消滅し、その後、Dの抵当権の実行によりEが甲土地を取得したときは、法定地上権が成立する。
総合メモ

後順位抵当権者がいない場合における共同抵当権の配当 大判昭和10年4月23日

概要
同一の債権の担保として共同抵当にとられた複数の土地が1人の所有にかかる場合において、後順位抵当権者がいなくとも、392条1項の規定が適用され、各土地の価格に応じて債権の負担が按分される。
判例
事案:1人の共有にかかる複数の不動産が、同一の債務の担保として共同抵当にとられた場合において、後順位抵当権者がいないとしても、392条1項の適用があるのかが問題となった。

判旨:「…民法第392条第1項ハ当該不動産ニ対シ後順位抵当権ノ存スル場合ニ限リ其ノ適用アリト為スヘキ何等ノ根拠ヲ規定自体ノ上ニ見出シ得サルノミナラス例ヘハ本件ニ於テ第三物件ノ所有者カ偶々第一第二物件ノソレト別人ナリトセンニ若シ所論ノ如キ配当方法ヲ採ルトキハ後日此等人々ノ間ニ求償ノ関係ヲ生シ(民法第351条第501条第3号第4号)徒ラニ手数ヲ重複且繁雑ナラシムル以外何等ノ得ルトコロナキハ睹易キノ道理ナリ。」
過去問・解説
(R5 司法 第14問 ア)
Aは、Bに対して有するα債権の担保として、甲土地及び乙土地について第1順位の抵当権を共同抵当として有している。甲土地及び乙土地がBの所有である場合において、両土地についてAの抵当権が実行され、同時にその代価を配当すべきときは、後順位抵当権者がいないとしても、各土地の価額に応じて債権の負担を按分する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭10.4.23)は、同一の債権の担保として共同抵当にとられた複数の土地が1人の所有にかかる場合において、後順位抵当権者がいなくとも、392条1項の規定が適用され、各土地の価格に応じて債権の負担が按分される旨判示している。したがって、甲土地及び乙土地がBの所有である場合において、両土地についてAの抵当権が実行され、同時にその代価を配当すべきときは、同項が適用されるから、後順位抵当権者がいないとしても、各土地の価額に応じて債権の負担を按分することとなる。
総合メモ

抵当権の放棄と異時配当 大判昭和11年7月14日

概要
甲不動産と乙不動産に共同抵当権を有している共同抵当権者が乙不動産の抵当権を放棄した場合、当該共同抵当権者は、もし当該放棄がなければ甲不動産の後順位抵当権者が乙不動産について392条2項により代位できた金額分、甲不動産について優先弁済を受けられなくなる。
判例
事案:共同抵当権者が、後順位抵当権の存在する1つの抵当権を放棄した場合、抵当権を放棄していない不動産から全額の配当を受けることができるか問題となった。

判旨:「抵当権ノ一部(即チ同一債権ノ担保タル数個ノ抵当不動産中ノ或モノニ対スル抵当権)ヲ抛棄シタリトテ其ノ残部ノ抵当権(即チ爾余ノ不動産ニ対スル抵当権)ハ勿論存在スルカ故ニ其ノ行使ヲ為シ得サルノ道理無シ唯本件ノ如キ場合ニ於テハ抵当権ヲ実行シ競売代金ノ配当ヲ為スニ当リ先順位抵当権者ハ其ノ抛棄ノ目的タル抵当物件ノ価額ニ準シ次順位抵当権者ニ対シ優先弁済ヲ受クルヲ得サルハ必シモ多言ヲ俟タス這ハ民法第392条及第504条ノ法意ヲ類推スルニ依リテ知ルヲ得ヘシ例ヘハAハ其ノ債権ノ為メ甲及乙不動産ニ対シ一番抵当権ヲ有シBハ其ノ債権ノ為メ甲不動産ニ対シ二番抵当権ヲ有ストセムニAカ乙不動産ニ対スル抵当権ヲ抛棄シタルトキハ他日甲不動産ニ対スル抵当権ヲ実行シ其ノ競売代金ヲ配当スル場合ニ若シ右ノ抛棄無カリシナラハBカ民法第392条第2項ニ依リ乙不動産ニ付キ代位ヲ為スヲ得ヘカリシ限度ニ於テAハBニ対シ優先弁済ヲ受クルヲ得サルモノトス。」
過去問・解説
(H28 司法 第15問 4)
Aは、Bに対する600万円の債権を担保するため、B所有の甲土地及び乙土地に、第1順位の共同抵当権を有している。Cは、Bに対する400万円の債権を担保するため、甲土地に、第2順位の抵当権を有している。競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は、甲土地につき500万円、乙土地につき1000万円であり、また、各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。Aが乙土地に設定された抵当権を放棄した後に、甲土地に設定された抵当権が実行された場合、Aは200万円の配当を受け、Cは300万円の配当を受けることができる。

(正答)

(解説)
判例(大判昭11.7.14)は、本肢と同様の事案において、甲不動産と乙不動産に共同抵当権を有している共同抵当権者が乙不動産の抵当権を放棄した場合、当該共同抵当権者は、もし当該放棄がなければ甲不動産の後順位抵当権者が乙不動産について392条2項により代位できた金額分、甲不動産について優先弁済を受けられなくなる旨判示している。
 本肢において、Aが乙土地について抵当権を放棄していない場合において、まず甲土地につき抵当権が実行され、次いで乙土地について抵当権が実行されたときには、392条2項が適用される結果、まず、同項前段により、Aが甲土地から500万円の配当を受けることになり、次に、Bは同項後段により、同時配当であればAが乙土地から配当を受けた400万円から、Aの抵当権の残りである100万円を差し引いた300万円についてAに代位して配当を受けることができるといえる。
 そうすると、Aが乙土地に設定された抵当権を放棄した後に、甲土地に設定された抵当権が実行された場合は、Aは甲土地について300万円分優先配当を受けられなくなるといえる。したがって、同抵当権の実行により、Aは200万円の配当を受け、Cは300万円の配当を受けることができるといえる。
総合メモ

先順位共同抵当権者が抵当権の一部を放棄した場合における次順位抵当権者との優劣 最一小判昭和44年7月3日

概要
甲乙不動産の先順位共同抵当権者が、甲不動産には次順位の抵当権が設定されているのに、乙不動産の抵当権を放棄し、甲不動産の抵当権を実行した場合であっても、乙不動産が物上保証人の所有であるときは、先順位抵当権者は、甲不動産の代価から自己の債権の全額について満足を受けることができ、一方、後順位抵当権者は物上保証人所有の土地に対する抵当権について代位することができない。
判例
事案:甲乙不動産の先順位共同抵当権者が、甲不動産には次順位の抵当権が設定されているのに、乙不動産の抵当権を放棄し、甲不動産の抵当権を実行した場合において、乙不動産が物上保証人の所有であるとき、甲不動産の後順位抵当権者が物上保証人所有の土地に対する抵当権について代位することができるかどうかが問題となった。

判旨:「債権者が…甲、乙2個の不動産に第1順位の共同抵当権を有し、その後右甲不動産に第2順位の抵当権が設定された場合、共同抵当権者が甲不動産についてのみ抵当権を実行したと…い…う…例で乙不動産が第三者の所有であつた場合に、たとえば、共同抵当権者が乙不動産のみについて抵当権を実行し、債権の満足を得たときは、右物上保証人は、民法500条により、右共同抵当権者が甲不動産に有した抵当権の全額について代位するものと解するのが相当である。けだし、この場合、物上保証人としては、他の共同抵当物件である甲不動産から自己の求償権の満足を得ることを期待していたものというべく、その後に甲不動産に第2順位の抵当権が設定されたことにより右期待を失わしめるべきではないからである(大審院昭和2年(オ)第933号、同4年1月30日判決参照)。これを要するに、第2順位の抵当権者のする代位と物上保証人のする代位とが衝突する場合には、後者が保護されるのであつて、甲不動産について競売がされたときは、もともと第2順位の抵当権者は、乙不動産について代位することができないものであり、共同抵当権者が乙不動産の抵当権を放棄しても、なんら不利益を被る地位にはないのである。したがつて、かような場合には、共同抵当権者は、乙不動産の抵当権を放棄した後に甲不動産の抵当権を実行したときであつても、その代価から自己の債権の全額について満足を受けることができるというべきであり、このことは、保証人などのように弁済により当然甲不動産の抵当権に代位できる者が右抵当権を実行した場合でも、同様である。」
過去問・解説
(R5 司法 第14問 イ)
Aは、Bに対して有するα債権の担保として、甲土地及び乙土地について第1順位の抵当権を共同抵当として有している。甲土地がBの所有であり、乙土地がCの所有であって、甲土地には第2順位の抵当権者Dがいる場合において、Aが甲土地のみについて抵当権を実行し、その代価からα債権の全部の弁済を受けたときは、Dは、乙土地についてAに代位してその抵当権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭44.7.3)は、本肢と同種の事案において、甲乙不動産の先順位共同抵当権者が、甲不動産には次順位の抵当権が設定されているのに、乙不動産の抵当権を放棄し、甲不動産の抵当権を実行した場合であっても、乙不動産が物上保証人の所有であるときは、後順位抵当権者は物上保証人所有の土地に対する抵当権について代位することができない旨判示している。したがって、甲土地がBの所有であるのに対し、乙土地が物上保証人Cの所有であるならば、Aが甲土地のみについて抵当権を実行し、その代価からα債権の全部の弁済を受けたとき、Dは、乙土地についてAに代位してその抵当権を行使することができない。
総合メモ

共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合の後順位抵当権者の民法392条2項後段による代位の可否 最二小判平成4年11月6日

概要
共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属し、甲不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲不動産の代価のみを配当するときは、後順位抵当権者は、392条2項後段の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が同条1項の規定に従い乙不動産から弁済を受けることができた金額に満つるまで、先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する抵当権を行使することができる。
判例
事案:共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する場合において、片方の不動産の抵当権が実行された場合に、当該不動産の後順位抵当権者が、392条2項後段の規定に基づいて、先順位の共同抵当権者に代位して、他方の不動産に対する抵当権を行使することができるかが問題となった。

判旨:「共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属し、甲不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲不動産の代価のみを配当するときは、後順位抵当権者は、民法392条2項後段の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が同条1項の規定に従い乙不動産から弁済を受けることができた金額に満つるまで、先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する抵当権を行使することができると解するのが相当である。けだし、後順位抵当権者は、先順位の共同抵当権の負担を甲・乙不動産の価額に準じて配分すれば甲不動産の担保価値に余剰が生ずることを期待して、抵当権の設定を受けているのが通常であって、先順位の共同抵当権者が甲不動産の代価につき債権の全部の弁済を受けることができるため、後順位抵当権者の右の期待が害されるときは、債務者がその所有する不動産に共同抵当権を設定した場合と同様、民法392条2項後段に規定する代位により、右の期待を保護すべきものであるからである。甲不動産の所有権を失った物上保証人は、債務者に対する求償権を取得し、その範囲内で、民法500条、501条の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が有した一切の権利を代位行使し得る立場にあるが、自己の所有する乙不動産についてみれば、右の規定による法定代位を生じる余地はなく、前記配分に従った利用を前提に後順位の抵当権を設定しているのであるから、後順位抵当権者の代位を認めても、不測の損害を受けるわけではない。」
過去問・解説
(H25 司法 第21問 イ)
同一の物上保証人が所有する甲土地及び乙土地に第1順位の共同抵当権が設定されている場合において、甲土地の代価のみが先に配当されたときは、甲土地について第2順位の抵当権を有していた者は、当該配当によりその被担保債権の全額について弁済を受けた場合を除き、共同抵当に関する民法の規定に定める限度で、乙土地に設定された第1順位の抵当権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.11.6)は、本肢と同種の事案において、「共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属し、甲不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲不動産の代価のみを配当するときは、後順位抵当権者は、民法392条2項後段の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が同条1項の規定に従い乙不動産から弁済を受けることができた金額に満つるまで、先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する抵当権を行使することができると解するのが相当である。」と判示している。したがって、甲土地について第2順位の抵当権を有していた者は、当該配当によりその被担保債権の全額について弁済を受けた場合を除き、共同抵当に関する民法の規定(392条2項後段)に定める限度で、乙土地に設定された第1順位の抵当権を行使することができる。

(R5 司法 第14問 オ)
Aは、Bに対して有するα債権の担保として、甲土地及び乙土地について第1順位の抵当権を共同抵当として有している。甲土地及び乙土地がCの所有であって、甲土地には第2順位の抵当権者Dがいる場合において、Aが甲土地のみについて抵当権を実行し、その代価からα債権の全部の弁済を受けたときは、Dは、乙土地についてAに代位してその抵当権を行使することができない。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.11.6)は、本肢と同種の事案において、「共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属し、甲不動産に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲不動産の代価のみを配当するときは、後順位抵当権者は、民法392条2項後段の規定に基づき、先順位の共同抵当権者が同条1項の規定に従い乙不動産から弁済を受けることができた金額に満つるまで、先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する抵当権を行使することができると解するのが相当である。」と判示している。本肢においても、甲土地及び乙土地が物上保証人Cの所有であって、甲土地には第2順位の抵当権者Dがいる場合において、Aが甲土地のみについて抵当権を実行しているから、Aがその代価からα債権の全部の弁済を受けたときは、Dは、392条2項後段の規定に従い、乙土地についてAに代位してその抵当権を行使することができる。
総合メモ

土地賃貸借契約の合意解除と第三者に対する対抗要件 大判大正14年7月18日

概要
土地を賃借し、その土地上に建物を所有している者が、その建物に抵当権を設定した場合には、土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したとしても、土地の賃貸人は、当該解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができない。
判例
事案:土地を賃借し、その土地上に建物を所有している者が、その建物に抵当権を設定した場合において、土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したとき、土地の賃貸人が、当該解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができるかが問題となった。

判旨:「建物ノ抵當權設定者カ元他人ノ土地ニ付適法ニ賃借權ヲ有セシカ爲其ノ地上ニ建物ヲ建設シ之ヲ抵當ト爲シタル場合ニ於テ其ノ後賃貸人タル土地所有者ト合意シ以テ賃貸借契約ヲ解除シタリトスルモ右賃貸借ノ終了ハ抵當權者ニ對抗スルヲ得サルモノト解スヘク從テ抵當權ノ實行ニ依リ該建物ノ競落シタル者ハ建物ノ所有權ヲ取得スルト同時ニ土地ノ所有者ニ對シ賃借人トシテ其ノ儘土地ヲ占有使用シ得ル權利アルモノト解スヘキナリ蓋シ斯ノ如ク解スルニ非サレハ土地ト建物ト其所有者ヲ異ニセル場合ニ建物ヲ抵當ト爲スコトハ實際上行ハレ難キニ至ルヘク我法制上建物ノミノ抵當ヲ認メタル立法ノ趣旨ニ副ハサルコトトナルヘケレハナリ尚此ノ事實タルヤ民法第388條第398條ノ規定ノ趣旨ヨリ推スモ察スルニ難カラス。」
過去問・解説
(H20 司法 第14問 ア)
Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した。A及びBは、土地賃貸借契約を合意解除した。この合意解除に基づいて土地賃貸借契約が終了したことを、BはCに対抗することができない。

(正答)

(解説)
判例(大判大14.7.18)は、「建物ノ抵當權設定者カ元他人ノ土地ニ付適法ニ賃借權ヲ有セシカ爲其ノ地上ニ建物ヲ建設シ之ヲ抵當ト爲シタル場合ニ於テ其ノ後賃貸人タル土地所有者ト合意シ以テ賃貸借契約ヲ解除シタリトスルモ右賃貸借ノ終了ハ抵當權者ニ對抗スルヲ得サルモノト解ス…。」と判示している。したがって、Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合において、A及びBが、土地賃貸借契約を合意解除したとしても、この合意解除に基づいて土地賃貸借契約が終了したことを、BはCに対抗することができない。

(H26 共通 第14問 イ)
土地を賃借し、その土地上に建物を所有している者が、その建物に抵当権を設定した場合であっても、土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したときは、土地の賃貸人は、その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判大14.7.18)は、「建物ノ抵當權設定者カ元他人ノ土地ニ付適法ニ賃借權ヲ有セシカ爲其ノ地上ニ建物ヲ建設シ之ヲ抵當ト爲シタル場合ニ於テ其ノ後賃貸人タル土地所有者ト合意シ以テ賃貸借契約ヲ解除シタリトスルモ右賃貸借ノ終了ハ抵當權者ニ對抗スルヲ得サルモノト解ス…。」と判示している。
総合メモ

抵当権に基づく妨害排除請求権の行使 最一小判平成17年3月10日

概要
①抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても、抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり、その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる。
②抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。
判例
事案:①所有者から占有権原の設定を受けて抵当不動産を占有する者に対して抵当権に基づく妨害排除請求をすることができるかが問題となった。
 ②抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合において、抵当権者が、当該占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるかが問題となった。

判旨:①「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる(最高裁平成8年(オ)第1697号同11年11月24日大法廷判決・民集53巻8号1899頁)。そして、抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても、その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら、抵当不動産の所有者は、抵当不動産を使用又は収益するに当たり、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである。」
 ②「また、抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第10問 5)
抵当権の設定された土地が不法に占有されている場合、抵当権者は、その占有者に対し、抵当権に基づいて妨害の排除を求めることができるばかりでなく、自己に明渡しを求めることもできる。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる。」と判示している。したがって、本肢前段は正しい。
もっとも、同判例は、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。したがって、抵当権者が、抵当権に基づいて自己に明渡しを求めることができるのは、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合に限定され、無条件で明渡しを求めることはできない。よって、本肢後段は誤っている。

(H20 司法 第14問 エ)
Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した。AがFに対して、抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸した場合、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態のときでも、Cは抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してFに対し直接自己に甲建物の明渡しを求めることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても、その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができるものというべきである。」と判示した上で、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。
本肢においては、AがFに対して、抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸しているから、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合に当たるといえる。したがって、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態のときは、Cは抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してFに対し直接自己に甲建物の明渡しを求めることができる。

(H28 司法 第7問 エ)
判例によれば、抵当不動産の所有者Aから占有権原の設定を受けてこれを占有するBに対し、抵当権者Cが抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することができる場合、Aにおいて抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できないときには、Cは、Bに対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを請求することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。したがって、抵当権者Cが抵当権に基づく妨害排除請求権を行使することができる場合、Aにおいて抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できないときには、Cは、Bに対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを請求することができる。

(H30 司法 第12問 オ)
抵当権者は、目的物が不法に占有された場合であっても、不法占有者に対して、抵当権に基づいて目的物を直接自己に明け渡すよう求めることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.3.10)は、「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として、上記状態の排除を求めることができる…。」と判示した上で、「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり、抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には、抵当権者は、占有者に対し、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである。」と判示している。したがって、抵当権者は、目的物が不法に占有された場合、不法占有者に対して、抵当権に基づいて目的物を直接自己に明け渡すよう求めることができる場合がある。
総合メモ

根抵当権と極度額 最一小判昭和48年10月4日

概要
根抵当権者は、後順位担保権者など配当を受けることのできる第三者がなく、競売代金に余剰が生じた場合においても、極度額を越える部分について、当該競売手続においては、その交付を受けることができない。
判例
事案:根抵当権者が、後順位担保権者など配当を受けることのできる第三者がなく、競売代金に余剰が生じた場合において、極度額を越える部分について、当該競売手続においてその交付を受けることができるかが問題となった。

判旨:「根抵当権についての極度額の定めは、単に後順位担保権者など第三者に対する右優先弁済権の制約たるにとどまらず、さらに進んで、根抵当権者が根抵当権の目的物件について有する換価権能の限度としての意味を有するものであって、その結果、根抵当権者は、後順位担保権者など配当をうけることのできる第三者がなく、 競売代金に余剰が生じた場合でも、極度額を越える部分について、当該競売手続に おいてはその交付をうけることができないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H30 司法 第15問 ウ)
根抵当権者は、根抵当権を実行した場合、当該競売手続において極度額を超える部分について配当を受けることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判平48.10.4)は、「根抵当権についての極度額の定めは、単に後順位担保権者など第三者に対する右優先弁済権の制約たるにとどまらず、さらに進んで、根抵当権者が根抵当権の目的物件について有する換価権能の限度としての意味を有するものであって、その結果、根抵当権者は、後順位担保権者など配当をうけることのできる第三者がなく、 競売代金に余剰が生じた場合でも、極度額を越える部分について、当該競売手続に おいてはその交付をうけることができないものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ

建物の共有者の1人がその敷地を所有する場合と法定地上権の成否 最三小判昭和46年12月21日

概要
建物の共有者の1人がその建物の敷地たる土地を単独で所有する場合において、同人が当該土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者が当該土地を競落したときは、当該土地に法定地上権が成立する。
判例
事案:建物の共有者の1人がその敷地を単独で所有する場合において、同人が当該土地に抵当権を設定し、当該抵当権が実行され、第三者が当該土地を競落したとき、法定地上権が成立するかが問題となった。

判旨:「建物の共有者の1人がその建物の敷地たる土地を単独で所有する場合においては、同人は、自己のみならず他の建物共有者のためにも右土地の利用を認めているものというべきであるから、同人が右土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者が右土地を競落したときは、民法388条の趣旨により、抵当権設定当時に同人が土地および建物を単独で所有していた場合と同様、右土地に法定地上権が成立するものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R6 司法 第16問 エ)
Aが所有する甲土地に抵当権が設定された当時、甲土地の上にAとBが共有する乙建物が存在していた場合において、その抵当権の実行として甲土地の競売がされたときは、法定地上権が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭46.12.21)は、本肢と同種の事案において、「建物の共有者の1人がその建物の敷地たる土地を単独で所有する場合においては、同人は、自己のみならず他の建物共有者のためにも右土地の利用を認めているものというべきであるから、同人が右土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者が右土地を競落したときは、民法388条の趣旨により、抵当権設定当時に同人が土地および建物を単独で所有していた場合と同様、右土地に法定地上権が成立するものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、Aが所有する甲土地に抵当権が設定された当時、甲土地の上にAとBが共有する乙建物が存在していた場合において、その抵当権の実行として甲土地の競売がされたときは、法定地上権が成立する。
総合メモ