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債務不履行の責任等
制限種類債権と履行不能 最三小判昭和30年10月18日
総合メモ
不当利得返還債務と履行遅滞 大判昭和2年12月26日
概要
善意の不当利得者の返還債務は期限の定めのない債務であるから、412条3項が適用され、債務者が履行の請求を受けた日から履行遅滞に陥る。
判例
事案:善意の不当利得返還債務が発生した場合において、当該債務が履行遅滞に陥るのはいつなのかが問題となった。
判旨:「被上告人…ハ其ノ要素ニ錯誤アリ無效ナルヲ以テ其ノ對償トシテ上告人…ニ交付シタル金…ハ法律上ノ原因ナクシテ給付シタルモノナルヲ以テ上告人ハ之ニ因リ利益ヲ受ケタルモノトス因テ之カ返還ヲ求ムト云フニ在ルヲ以テ上告人カ惡意ヲ以テ其ノ利益ヲ得タルモノナリトセハ右ノ金額ニ其ノ受領ノ日ヨリ利息ヲ付シテ之ヲ返還セサルヘカラサルモ若善意ニテ右ノ利益ヲ得タルモノトセハ其ノ返還ノ債務ハ期限ノ定メナキモノナレハ民法第412條第3項ニ依リ被上告人ヨリ履行ノ請求ヲ受ケタル時ヨリ遲延利息ヲ支拂フヲ以テ足ルモノト謂ハサルヲ得ス。」
判旨:「被上告人…ハ其ノ要素ニ錯誤アリ無效ナルヲ以テ其ノ對償トシテ上告人…ニ交付シタル金…ハ法律上ノ原因ナクシテ給付シタルモノナルヲ以テ上告人ハ之ニ因リ利益ヲ受ケタルモノトス因テ之カ返還ヲ求ムト云フニ在ルヲ以テ上告人カ惡意ヲ以テ其ノ利益ヲ得タルモノナリトセハ右ノ金額ニ其ノ受領ノ日ヨリ利息ヲ付シテ之ヲ返還セサルヘカラサルモ若善意ニテ右ノ利益ヲ得タルモノトセハ其ノ返還ノ債務ハ期限ノ定メナキモノナレハ民法第412條第3項ニ依リ被上告人ヨリ履行ノ請求ヲ受ケタル時ヨリ遲延利息ヲ支拂フヲ以テ足ルモノト謂ハサルヲ得ス。」
総合メモ
不法行為に基づく損害賠償債務と履行遅滞の時期 最三小判昭和37年9月4日
過去問・解説
(H19 司法 第29問 ア)
不法行為による損害賠償債務は、不法行為の時に履行遅滞に陥る。
不法行為による損害賠償債務は、不法行為の時に履行遅滞に陥る。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭37.9.4)は、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る旨判示している。
判例(最判昭37.9.4)は、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る旨判示している。
(H28 司法 第29問 1)
不法行為による損害賠償債務は、不法行為の時に、催告を要することなく遅滞に陥る。
不法行為による損害賠償債務は、不法行為の時に、催告を要することなく遅滞に陥る。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭37.9.4)は、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る旨判示している。
判例(最判昭37.9.4)は、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る旨判示している。
(R4 司法 第29問 ア)
不法行為による損害賠償債務は、加害者が被害者から請求を受けた時から遅滞に陥る。
不法行為による損害賠償債務は、加害者が被害者から請求を受けた時から遅滞に陥る。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭37.9.4)は、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る旨判示している。
判例(最判昭37.9.4)は、不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る旨判示している。
総合メモ
安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務の履行遅滞となる時期 最一小判昭和55年12月18日
概要
①安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
②安全配慮義務違反の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰藉料請求権を有しない。
②安全配慮義務違反の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰藉料請求権を有しない。
判例
事案:①安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務が発生した場合において、当該債務が履行遅滞に陥るのはいつなのかが問題となった。
②安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が、固有の慰謝料請求権を有するかが問題となった。
判旨:①「原審が認容した請求は…雇傭契約上の安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求であることが…明らかである…。ところで、債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、民法412条3項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきであるから、債務不履行に基づく損害賠償請求についても本件事故発生の翌日…以降の遅延損害金の支払を求めているAらの請求中右遅滞の生じた日以前の分については理由がないというほかはないが、その後の分については、損害賠償請求の一部を認容する以上、その認容の限度で遅延損害金請求をも認容すべきは当然である。
②「次に、Aらは子である亡Bを失ったことによる精神的苦痛に対する慰藉料としてそれぞれ125万円の支払を求め、原審はAら各自につき50万円の限度でこれを認容しているが、亡BとCらとの間の雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者でないAらが雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係上の債務不履行により固有の慰藉料請求権を取得するものとは解しがたいから、Aらは 慰藉料請求権を取得しなかったものというべく、したがって、右50万円について 前記期間の遅延損害金請求を棄却した原判決は結局正当である。」
②安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が、固有の慰謝料請求権を有するかが問題となった。
判旨:①「原審が認容した請求は…雇傭契約上の安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求であることが…明らかである…。ところで、債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、民法412条3項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきであるから、債務不履行に基づく損害賠償請求についても本件事故発生の翌日…以降の遅延損害金の支払を求めているAらの請求中右遅滞の生じた日以前の分については理由がないというほかはないが、その後の分については、損害賠償請求の一部を認容する以上、その認容の限度で遅延損害金請求をも認容すべきは当然である。
②「次に、Aらは子である亡Bを失ったことによる精神的苦痛に対する慰藉料としてそれぞれ125万円の支払を求め、原審はAら各自につき50万円の限度でこれを認容しているが、亡BとCらとの間の雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者でないAらが雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係上の債務不履行により固有の慰藉料請求権を取得するものとは解しがたいから、Aらは 慰藉料請求権を取得しなかったものというべく、したがって、右50万円について 前記期間の遅延損害金請求を棄却した原判決は結局正当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第16問 イ)
安全配慮義務に違反したことを理由として損害賠償を請求する場合には、使用者が負う損害賠償債務は、請求を受けた日が経過した時から遅滞に陥る。
安全配慮義務に違反したことを理由として損害賠償を請求する場合には、使用者が負う損害賠償債務は、請求を受けた日が経過した時から遅滞に陥る。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
(H27 司法 第19問 ア)
安全配慮義務の違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、その義務の違反により損害が発生した時から遅滞に陥る。
安全配慮義務の違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、その義務の違反により損害が発生した時から遅滞に陥る。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
(R2 司法 第20問 イ)
雇用契約上の安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合には、遺族固有の慰謝料を請求することはできない。
雇用契約上の安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合には、遺族固有の慰謝料を請求することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が、安全配慮義務の不履行に基づいて損害賠償を請求した事案において、安全配慮義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰藉料請求権を有しない旨判示している。したがって、遺族固有の慰謝料を請求することはできない。
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が、安全配慮義務の不履行に基づいて損害賠償を請求した事案において、安全配慮義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰藉料請求権を有しない旨判示している。したがって、遺族固有の慰謝料を請求することはできない。
(R2 司法 第20問 エ)
安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、損害発生の時から履行遅滞に陥る。
安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、損害発生の時から履行遅滞に陥る。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
(R6 司法 第18問 ア)
安全配慮義務違反を理由とする債務不履行による損害賠償債務は、債務者が債権者から履行の請求を受けた時から履行遅滞に陥る。
安全配慮義務違反を理由とする債務不履行による損害賠償債務は、債務者が債権者から履行の請求を受けた時から履行遅滞に陥る。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
判例(最判昭55.12.18)は、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、412条3項によりその債務者が債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る旨判示している。
総合メモ
詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済み金員相当額の支払債務が履行遅滞に陥る時期 最二小判平成30年12月14日
概要
詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は、期限の定めのない債務であり、412条により債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
判例
事案:詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務が履行遅滞となる時期が問題となった。
判旨:「詐害行為取消しの効果は詐害行為取消判決の確定により生ずるものであるが(最高裁昭和34年(オ)第99号同40年3月26日第二小法廷判決・民集19巻2号508頁参照)、その効果が将来に向かってのみ生ずるのか、それとも過去に遡って生ずるのかは、詐害行為取消制度の趣旨や、いずれに解するかにより生ずる影響等を考慮して判断されるべきものである。詐害行為取消権は、詐害行為を取り消した上、逸出した財産を回復して債務者の一般財産を保全することを目的とするものであり、受益者又は転得者が詐害行為によって債務者の財産を逸出させた責任を原因として、その財産の回復義務を生じさせるものである (最高裁昭和32年(オ)第362号同35年4月26日第三小法廷判決・民集14巻6号1046頁、最高裁昭和45年(オ)第498号同46年11月19日第二小法廷判決・民集25巻8号1321頁等参照)。そうすると、詐害行為取消しの効果は過去に遡って生ずるものと解するのが上記の趣旨に沿うものといえる。また、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領金支払債務が、詐害行為取消判決の確定より前に遡って生じないとすれば、受益者は、受領済みの金員に係るそれまでの運用利益の全部を得ることができることとなり、相当ではない。したがって、上記受領金支払債務は、詐害行為取消判決の確定により受領時に遡って生ずるものと解すべきである。そして、上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるということができる。
以上によれば、上記受領金支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当である。」
判旨:「詐害行為取消しの効果は詐害行為取消判決の確定により生ずるものであるが(最高裁昭和34年(オ)第99号同40年3月26日第二小法廷判決・民集19巻2号508頁参照)、その効果が将来に向かってのみ生ずるのか、それとも過去に遡って生ずるのかは、詐害行為取消制度の趣旨や、いずれに解するかにより生ずる影響等を考慮して判断されるべきものである。詐害行為取消権は、詐害行為を取り消した上、逸出した財産を回復して債務者の一般財産を保全することを目的とするものであり、受益者又は転得者が詐害行為によって債務者の財産を逸出させた責任を原因として、その財産の回復義務を生じさせるものである (最高裁昭和32年(オ)第362号同35年4月26日第三小法廷判決・民集14巻6号1046頁、最高裁昭和45年(オ)第498号同46年11月19日第二小法廷判決・民集25巻8号1321頁等参照)。そうすると、詐害行為取消しの効果は過去に遡って生ずるものと解するのが上記の趣旨に沿うものといえる。また、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領金支払債務が、詐害行為取消判決の確定より前に遡って生じないとすれば、受益者は、受領済みの金員に係るそれまでの運用利益の全部を得ることができることとなり、相当ではない。したがって、上記受領金支払債務は、詐害行為取消判決の確定により受領時に遡って生ずるものと解すべきである。そして、上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるということができる。
以上によれば、上記受領金支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R5 共通 第17問 エ)
債権者が受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴えにおいて受領金の返還を請求したときは、その受領金の返還債務は、その請求を認容する判決の確定時に遅滞に陥る。
債権者が受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴えにおいて受領金の返還を請求したときは、その受領金の返還債務は、その請求を認容する判決の確定時に遅滞に陥る。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平30.12.14)は、詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務について、「上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるということができる。」と判示した上で、「以上によれば、上記受領金支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、受領金の返還債務については412条3項が適用されるから、その請求を認容する判決の確定時ではなく、履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
判例(最判平30.12.14)は、詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務について、「上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるということができる。」と判示した上で、「以上によれば、上記受領金支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、受領金の返還債務については412条3項が適用されるから、その請求を認容する判決の確定時ではなく、履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
(R6 司法 第19問 イ)
AがBとの売買契約に基づきBに対して1000万円の代金債権を有している。BがDに対する500万円の貸金債務を弁済した。この場合において、AがDを被告として、弁済の取消しとAへの500万円の支払を求める訴えを提起し、この請求が認容されたときは、Aへの500万円の支払を内容とするDの債務は、判決が確定した時から、履行遅滞に陥る。
AがBとの売買契約に基づきBに対して1000万円の代金債権を有している。BがDに対する500万円の貸金債務を弁済した。この場合において、AがDを被告として、弁済の取消しとAへの500万円の支払を求める訴えを提起し、この請求が認容されたときは、Aへの500万円の支払を内容とするDの債務は、判決が確定した時から、履行遅滞に陥る。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平30.12.14)は、詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務について、「上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるということができる。」と判示した上で、「以上によれば、上記受領金支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当である。」と判示している。本肢においても、Aへの500万円の支払いを内容とするDの債務は、詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務に当たるから、当該債務は、判決が確定した時からではなく、債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
判例(最判平30.12.14)は、詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務について、「上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるということができる。」と判示した上で、「以上によれば、上記受領金支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当である。」と判示している。本肢においても、Aへの500万円の支払いを内容とするDの債務は、詐害行為取消による受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務に当たるから、当該債務は、判決が確定した時からではなく、債権者から履行の請求を受けた時に遅滞に陥る。
総合メモ
損害賠償と履行不能に対する主張立証責任 大判大正14年2月27日
概要
債務者が、履行不能に基づく損害賠償債務を免れるためには、債務者が履行不能について自らの責任にないことを立証する必要がある。
判例
事案:履行不能に基づく損害賠償において、履行不能の帰責性の有無の立証責任が債権者と債務者のいずれにあるか問題となった。
判旨:「給付カ債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ不能ト為リタルトキハ債権者ハ債務者ニ対シテ其ノ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ヘク此ノ場合ニ於テ債権者ハ給付カ不能ト為リタル事実ヲ証明スル責任アルコト論ヲ俟タスト雖給付ノ不能カ債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リタルモノナリヤ否ニ付争アル場合ニ於テ之カ立証ノ責任ノ所在ニ付テハ解釈上疑義ノ存スル所ナリ然レトモ給付ノ不能ニ基ク損害賠償ノ請求権ハ給付不能ニ因リ新ニ発生スルモノニ非スシテ本来ノ債権ト同一権利ニシテ単ニ其ノ内容ヲ変更シタルニ過キサルモノト解スヘキヲ以テ給付ノ不能夫自体ハ給付義務ヲ免レシムルモノニ非ス従テ債務者ニ於テ給付義務ヲ免レムトセハ給付ノ不能カ自己ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因ルコトヲ主張シ且立証セサルヘカラサルモノト解スルヲ相当トス蓋給付不能ノ事実存スルニ於テハ一応債権者ノ過失ヲ推定スルコトヲ得ヘク又之ヲ履行遅滞ノ場合ト対比スルニ債務者カ履行遅滞ノ責ニ任スルニハ其ノ不履行ニ付債務者ニ過失アルコトヲ要スヘク此ノ場合ニ於テハ民法第419条第2項ニ於テ金銭債務ノ履行遅滞ニ付テハ特ニ不可抗力ノ抗弁ヲ為スコトヲ得サル旨ヲ規定セルカ故ニ金銭債務ニ非サル債務ノ履行遅滞ニハ不可抗力ノ抗弁ヲ為シ得ルモノト解セサルヘカラス従テ債権者カ履行遅滞ニ因ル損害賠償ノ請求ヲ為スニハ履行遅滞カ債務者ノ過失ニ基ケルコトヲ証明スルコトヲ要セス債務者ニ於テ義務ヲ免レムトセハ不可抗力ニ基ケル旨ノ証拠ヲ挙クルコトヲ要スルモノナルコト解釈上疑ナキ所ナルヲ以テ前示挙証責任ノ問題ニ付遅滞ノ場合ト給付不能ノ場合トノ間ニ解釈上区別ヲ為スヘキ理論上ノ理由ナク既ニ遅滞ノ場合ニ債務者ニ立証責任アリト為ス以上給付不能ノ場合ニ於テモ亦同様ナリト解スルヲ妥当トスレハナリ。」
判旨:「給付カ債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ不能ト為リタルトキハ債権者ハ債務者ニ対シテ其ノ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ヘク此ノ場合ニ於テ債権者ハ給付カ不能ト為リタル事実ヲ証明スル責任アルコト論ヲ俟タスト雖給付ノ不能カ債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リタルモノナリヤ否ニ付争アル場合ニ於テ之カ立証ノ責任ノ所在ニ付テハ解釈上疑義ノ存スル所ナリ然レトモ給付ノ不能ニ基ク損害賠償ノ請求権ハ給付不能ニ因リ新ニ発生スルモノニ非スシテ本来ノ債権ト同一権利ニシテ単ニ其ノ内容ヲ変更シタルニ過キサルモノト解スヘキヲ以テ給付ノ不能夫自体ハ給付義務ヲ免レシムルモノニ非ス従テ債務者ニ於テ給付義務ヲ免レムトセハ給付ノ不能カ自己ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因ルコトヲ主張シ且立証セサルヘカラサルモノト解スルヲ相当トス蓋給付不能ノ事実存スルニ於テハ一応債権者ノ過失ヲ推定スルコトヲ得ヘク又之ヲ履行遅滞ノ場合ト対比スルニ債務者カ履行遅滞ノ責ニ任スルニハ其ノ不履行ニ付債務者ニ過失アルコトヲ要スヘク此ノ場合ニ於テハ民法第419条第2項ニ於テ金銭債務ノ履行遅滞ニ付テハ特ニ不可抗力ノ抗弁ヲ為スコトヲ得サル旨ヲ規定セルカ故ニ金銭債務ニ非サル債務ノ履行遅滞ニハ不可抗力ノ抗弁ヲ為シ得ルモノト解セサルヘカラス従テ債権者カ履行遅滞ニ因ル損害賠償ノ請求ヲ為スニハ履行遅滞カ債務者ノ過失ニ基ケルコトヲ証明スルコトヲ要セス債務者ニ於テ義務ヲ免レムトセハ不可抗力ニ基ケル旨ノ証拠ヲ挙クルコトヲ要スルモノナルコト解釈上疑ナキ所ナルヲ以テ前示挙証責任ノ問題ニ付遅滞ノ場合ト給付不能ノ場合トノ間ニ解釈上区別ヲ為スヘキ理論上ノ理由ナク既ニ遅滞ノ場合ニ債務者ニ立証責任アリト為ス以上給付不能ノ場合ニ於テモ亦同様ナリト解スルヲ妥当トスレハナリ。」
総合メモ
国の国家公務員に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求と同義務違反の事実に関する主張・立証責任 最二小判昭和56年2月16日
概要
安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求する訴訟においては、同義務違反を主張する原告が、同義務の内容を特定し、かつ、同義務違反に該当する事実を主張・立証する責任を負う旨判示している。
判例
事案:国の国家公務員に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求において、義務違反の事実に関する主張立証責任の所在が問題となった。
判旨:「国が国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反し、公務員の生命、健康等を侵害し、同人に損害を与えたことを理由として損害賠償を請求する訴訟において、同義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任は、国の義務違反を主張する原告にある、と解するのが相当である。」
判旨:「国が国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反し、公務員の生命、健康等を侵害し、同人に損害を与えたことを理由として損害賠償を請求する訴訟において、同義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任は、国の義務違反を主張する原告にある、と解するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第16問 ア)
使用者が労働者に対して負担する安全配慮義務に違反したことを理由として損害賠償を請求する訴訟においては、損害賠償を請求する者が、使用者の義務内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。
使用者が労働者に対して負担する安全配慮義務に違反したことを理由として損害賠償を請求する訴訟においては、損害賠償を請求する者が、使用者の義務内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.2.16)は、安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求する訴訟においては、同義務違反を主張する原告が、同義務の内容を特定し、かつ、同義務違反に該当する事実を主張・立証する責任を負う旨判示している。
判例(最判昭56.2.16)は、安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求する訴訟においては、同義務違反を主張する原告が、同義務の内容を特定し、かつ、同義務違反に該当する事実を主張・立証する責任を負う旨判示している。
(R2 司法 第20問 ア)
安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する訴訟においては、原告は、安全配慮義務の内容を特定し、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。
安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する訴訟においては、原告は、安全配慮義務の内容を特定し、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.2.16)は、安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求する訴訟においては、同義務違反を主張する原告が、同義務の内容を特定し、かつ、同義務違反に該当する事実を主張・立証する責任を負う旨判示している。
判例(最判昭56.2.16)は、安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求する訴訟においては、同義務違反を主張する原告が、同義務の内容を特定し、かつ、同義務違反に該当する事実を主張・立証する責任を負う旨判示している。
総合メモ
数量に関する契約不適合における損害賠償責任 最一小判昭和57年1月21日
概要
土地の売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示された場合でも、 その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり契約の目的を達成するうえで特段の意味を有さないときは、売主は、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、損害賠償責任を負わない。
判例
事案:土地の売買契約において契約の対象である土地の面積が表示された場合において、実際の面積が表示よりも小さいことが判明したとき、買主が、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、売主に対して損害賠償請求ができるかが問題となった。
判旨:「土地の売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示された場合でも、 その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、売主は、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、その損害を賠償すべき責めを負わないものと解するのが相当である。」
判旨:「土地の売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示された場合でも、 その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、売主は、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、その損害を賠償すべき責めを負わないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 司法 第26問 1)
売買代金額が、契約の際に表示された目的物である土地の面積を基礎に決められたにもかかわらず実際にはその面積が不足していた場合、売主は、その面積の表示が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しなくても、その土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について損害賠償の責めを負う。
売買代金額が、契約の際に表示された目的物である土地の面積を基礎に決められたにもかかわらず実際にはその面積が不足していた場合、売主は、その面積の表示が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しなくても、その土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について損害賠償の責めを負う。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.1.21)は、「土地の売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示された場合でも、 その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、売主は、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、その損害を賠償すべき責めを負わないものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判昭57.1.21)は、「土地の売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示された場合でも、 その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、売主は、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、その損害を賠償すべき責めを負わないものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
受領遅滞を理由とする契約解除 最二小判昭和40年12月3日
概要
債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することは、特段の事由のない限り許されない。
判例
事案:債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することが許されるかどうかが問題となった。
判旨:「債務者の債務不履行と債権者の受領遅滞とは、その性質が異なるのであるから、一般に後者に前者と全く同一の効果を認めることは民法の予想していないところというべきである。民法414条、415条、541条等は、いずれも債務者の債務不履行のみを想定した規定であること明文上明らかであり、受領遅滞に対し債務者のとりうる措置としては、供託・自動売却等の規定を設けているのである。されば、特段の事由の認められない本件において被上告人の受領遅滞を理由として上告人は契約を解除することができない…。」
判旨:「債務者の債務不履行と債権者の受領遅滞とは、その性質が異なるのであるから、一般に後者に前者と全く同一の効果を認めることは民法の予想していないところというべきである。民法414条、415条、541条等は、いずれも債務者の債務不履行のみを想定した規定であること明文上明らかであり、受領遅滞に対し債務者のとりうる措置としては、供託・自動売却等の規定を設けているのである。されば、特段の事由の認められない本件において被上告人の受領遅滞を理由として上告人は契約を解除することができない…。」
過去問・解説
(H23 司法 第17問 4)
特注品の椅子の製造を請け負った請負人が、目的物を完成させて注文者に届けた場合には、注文者がこれを受領しないときでも、請負人は、特段の事由がない限り当該請負契約を解除することができない。
特注品の椅子の製造を請け負った請負人が、目的物を完成させて注文者に届けた場合には、注文者がこれを受領しないときでも、請負人は、特段の事由がない限り当該請負契約を解除することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭40.12.3)は、債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することは、特段の事由のない限り許されない旨判示している。したがって、特注品の椅子の製造を請け負った請負人が、目的物を完成させて注文者に届けた場合において、注文者がこれを受領しないときでも、請負人は、特段の事由がない限り当該請負契約を解除することができない。
判例(最判昭40.12.3)は、債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することは、特段の事由のない限り許されない旨判示している。したがって、特注品の椅子の製造を請け負った請負人が、目的物を完成させて注文者に届けた場合において、注文者がこれを受領しないときでも、請負人は、特段の事由がない限り当該請負契約を解除することができない。
総合メモ
履行期と履行遅滞 大判昭和5年1月29日
概要
弁済期の定めのない消費貸借契約から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合であっても、その催告の時から相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負う。
判例
事案:弁済期の定めのない消費貸借から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合、履行遅滞責任がどの時点で生じるのかが問題となった。
判旨:「民法第591条第1項ニ於テ消費貸借ノ当事者カ返還ノ時期ヲ定メサリシトキハ貸主ハ相当ノ期間ヲ定メテ返還ノ催告ヲ為スコトヲ得ル旨ヲ定メタルハ借主ヲシテ返還ノ準備ヲ為サシムル為相当ニ猶予期間ヲ許与スル趣旨ニ外ナラサルカ故ニ貸主カ為ス返還ノ催告ニ於テ一定ノ日時若ハ期間ヲ明示セサリシトスルモ其ノ催告ノ時ヨリ借主カ返還ノ準備ヲ為スニ相当ナル期間ヲ経過シタル後ニ於テハ借主ハ最早之カ返還ヲ拒否シ得ヘキ理由ナク従テ履行ヲ為スヘキ時期ハ到来シ爾後借主ハ履行遅滞ノ責ニ任スルモノト解スルヲ相当トス。」
判旨:「民法第591条第1項ニ於テ消費貸借ノ当事者カ返還ノ時期ヲ定メサリシトキハ貸主ハ相当ノ期間ヲ定メテ返還ノ催告ヲ為スコトヲ得ル旨ヲ定メタルハ借主ヲシテ返還ノ準備ヲ為サシムル為相当ニ猶予期間ヲ許与スル趣旨ニ外ナラサルカ故ニ貸主カ為ス返還ノ催告ニ於テ一定ノ日時若ハ期間ヲ明示セサリシトスルモ其ノ催告ノ時ヨリ借主カ返還ノ準備ヲ為スニ相当ナル期間ヲ経過シタル後ニ於テハ借主ハ最早之カ返還ヲ拒否シ得ヘキ理由ナク従テ履行ヲ為スヘキ時期ハ到来シ爾後借主ハ履行遅滞ノ責ニ任スルモノト解スルヲ相当トス。」
過去問・解説
(H22 司法 第17問 1)
弁済期の定めのない金銭消費貸借契約から発生した貸金債権は、貸主が相当の期間を定めずに催告をしても、相当の期間を経過した時から遅滞に陥る。
弁済期の定めのない金銭消費貸借契約から発生した貸金債権は、貸主が相当の期間を定めずに催告をしても、相当の期間を経過した時から遅滞に陥る。
(正答)〇
(解説)
判例(大判昭5.1.29)は、返還時期の定めのない消費貸借契約から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合であっても、借主は、その催告の時から相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負う旨判示している。
判例(大判昭5.1.29)は、返還時期の定めのない消費貸借契約から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合であっても、借主は、その催告の時から相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負う旨判示している。
(H27 司法 第23問 エ)
賃貸借契約において当事者が期間を定めなかった場合に貸主が解約の申入れをしたときは、借主は、法定の期間内は目的物を返還しなくても遅滞の責任を負わないが、消費貸借契約において当事者が返還の時期を定めなかった場合に貸主が返還を請求したときは、借主は、直ちに目的物を返還しなければ遅滞の責任を負う。
賃貸借契約において当事者が期間を定めなかった場合に貸主が解約の申入れをしたときは、借主は、法定の期間内は目的物を返還しなくても遅滞の責任を負わないが、消費貸借契約において当事者が返還の時期を定めなかった場合に貸主が返還を請求したときは、借主は、直ちに目的物を返還しなければ遅滞の責任を負う。
(正答)✕
(解説)
617条1項柱書は、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。」と規定している。したがって、賃貸借契約において当事者が期間を定めなかった場合に買主が解約の申し入れをしたときは、617条1項各号に定められた期間を経過するまで、契約は終了しないから、借主は、当該法定の期間内は目的物返還しなくてよく、この期間、遅滞の責任を負わない。よって、本肢前段は正しい。
これに対し、判例(大判昭5.1.29)は、返還時期の定めのない消費貸借契約から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合であっても、借主は、その催告の時から相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負う旨判示している。したがって、消費貸借契約において当事者が返還の時期を定めなかった場合に貸主が返還を請求したときは、借主は、相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負うのであり、直ちに目的物を返還しなければ遅滞の責任を負うわけではない。よって、本肢後段は誤っている。
617条1項柱書は、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。」と規定している。したがって、賃貸借契約において当事者が期間を定めなかった場合に買主が解約の申し入れをしたときは、617条1項各号に定められた期間を経過するまで、契約は終了しないから、借主は、当該法定の期間内は目的物返還しなくてよく、この期間、遅滞の責任を負わない。よって、本肢前段は正しい。
これに対し、判例(大判昭5.1.29)は、返還時期の定めのない消費貸借契約から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合であっても、借主は、その催告の時から相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負う旨判示している。したがって、消費貸借契約において当事者が返還の時期を定めなかった場合に貸主が返還を請求したときは、借主は、相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負うのであり、直ちに目的物を返還しなければ遅滞の責任を負うわけではない。よって、本肢後段は誤っている。
(R5 共通 第17問 ウ)
返還時期の定めがない消費貸借において、貸主が相当の期間を定めないで催告をしたときは、借主は、その催告後相当の期間を経過した時から遅滞の責任を負う。
返還時期の定めがない消費貸借において、貸主が相当の期間を定めないで催告をしたときは、借主は、その催告後相当の期間を経過した時から遅滞の責任を負う。
(正答)〇
(解説)
判例(大判昭5.1.29)は、返還時期の定めのない消費貸借契約から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合であっても、借主は、その催告の時から相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負う旨判示している。
判例(大判昭5.1.29)は、返還時期の定めのない消費貸借契約から生じた債権について、貸主が相当の期間を定めずに返還の催告をした場合であっても、借主は、その催告の時から相当の期間を経過した場合に遅滞の責任を負う旨判示している。
総合メモ
請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について注文者が履行遅滞による責任を負う時期 最三小判平成9年7月15日
概要
請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。
判例
事案:請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について、注文者が履行遅滞による責任を負う時期が問題となった。
判旨:「請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うものと解するのが相当である。
けだし、瑕疵修補に代わる損害賠償債権と報酬債権とは、民法634条2項により同時履行の関係に立つから、注文者は、請負人から瑕疵修補に代わる損害賠償債務の履行又はその提供を受けるまで、自己の報酬債務の全額について履行遅滞による責任を負わないと解されるところ(最高裁平成5年(オ)第1924号同9年2月14日第三小法廷判決・民集51巻2号登載予定)、注文者が瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権として請負人に対する報酬債務と相殺する旨の意思表示をしたことにより、注文者の損害賠償債権が相殺適状時にさかのぼって消滅したとしても、相殺の意思表示をするまで注文者がこれと同時履行の関係にある報酬債務の全額について履行遅滞による責任を負わなかったという効果に影響はないと解すべきだからである。」
判旨:「請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うものと解するのが相当である。
けだし、瑕疵修補に代わる損害賠償債権と報酬債権とは、民法634条2項により同時履行の関係に立つから、注文者は、請負人から瑕疵修補に代わる損害賠償債務の履行又はその提供を受けるまで、自己の報酬債務の全額について履行遅滞による責任を負わないと解されるところ(最高裁平成5年(オ)第1924号同9年2月14日第三小法廷判決・民集51巻2号登載予定)、注文者が瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権として請負人に対する報酬債務と相殺する旨の意思表示をしたことにより、注文者の損害賠償債権が相殺適状時にさかのぼって消滅したとしても、相殺の意思表示をするまで注文者がこれと同時履行の関係にある報酬債務の全額について履行遅滞による責任を負わなかったという効果に影響はないと解すべきだからである。」
過去問・解説
(H22 司法 第25問 2)
判例によれば、請負人が注文者に対して報酬請求をしたのに対して、注文者が目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬債務について、相殺適状時から履行遅滞による責任を負う。
判例によれば、請負人が注文者に対して報酬請求をしたのに対して、注文者が目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬債務について、相殺適状時から履行遅滞による責任を負う。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平9.7.15)は、「請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うものと解するのが相当である。」と判示している。
判例(最判平9.7.15)は、「請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負うものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ
不動産の二重売買の場合において売主の一方の買主に対する債務が履行不能になる時 最一小判昭和35年4月21日
過去問・解説
(H21 司法 第17問 3)
不動産売買契約において、移転登記と引渡しをする約定の期日前に、売主が目的不動産を第三者に売却して当該第三者への所有権移転登記がされた場合、買主は履行不能を理由として直ちに契約を解除することができる。
不動産売買契約において、移転登記と引渡しをする約定の期日前に、売主が目的不動産を第三者に売却して当該第三者への所有権移転登記がされた場合、買主は履行不能を理由として直ちに契約を解除することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.4.21)は、不動産の二重売買の場合において、売主の一方の買主に対する債務は、特段の事情のないかぎり、他の買主に対する所有権移転登記が完了した時に履行不能になる旨判示している。本肢においても、不動産売買契約において、移転登記と引渡しをする約定の期日前に、売主が目的不動産を第三者に売却して当該第三者への所有権移転登記がされた場合、当該売主の目的不動産引渡義務は履行不能(412条の2第1項)となる。したがって、買主は履行不能を理由として直ちに契約を解除(542条1項1号、同項柱書)することができる。
判例(最判昭35.4.21)は、不動産の二重売買の場合において、売主の一方の買主に対する債務は、特段の事情のないかぎり、他の買主に対する所有権移転登記が完了した時に履行不能になる旨判示している。本肢においても、不動産売買契約において、移転登記と引渡しをする約定の期日前に、売主が目的不動産を第三者に売却して当該第三者への所有権移転登記がされた場合、当該売主の目的不動産引渡義務は履行不能(412条の2第1項)となる。したがって、買主は履行不能を理由として直ちに契約を解除(542条1項1号、同項柱書)することができる。
総合メモ
取引時間ではない時刻の弁済の提供と履行遅滞責任 最二小判昭和35年5月6日
総合メモ
受取証書の交付に応じない場合における目的物の引渡し義務と履行遅滞責任 大判昭和16年3月1日
概要
弁済者の弁済と弁済受領者の受取証書の交付とは、同時履行の関係にあるから、弁済者が履行期に弁済の目的物を提供して受取証書の交付を請求したにもかかわらず、弁済受領者がこれに応じないときは、弁済者は、目的物の引渡しをしなくても、遅滞の責めを負わない。
判例
事案:弁済者が履行期に弁済の目的物を提供して受取証書の交付を請求したにもかかわらず、弁済受領者がこれに応じない場合において、弁済者が、目的物の引渡しをせずにこれを留保したとき、遅滞の責任を負うかが問題となった。
判旨:「弁済者カ其ノ弁済ニ対シ受取証書ノ交付ヲ請求スル所以ノモノハ弁済ノ有無ニ付争アリタル場合ニ其ノ弁済事実ノ立証資料ニ供セントスルニ在ルモノナルカ故ニ弁済ト引換ニ其ノ交付ナクンハ受取証書ハ其ノ効用ヲ全フセサルヘク従テ請求アルニ於テハ受取証書ハ弁済ト引換ニ之カ交付ヲ要スルモノト謂ハサルヘカラス然ラハ弁済者カ弁済ヲ為サントスルニ当リ受取証書ノ交付ヲ請求シタルニ拘ラス弁済受領者カ之ヲ応諾セサルニ於テハ弁済者ハ弁済ノ為メ現実ニ為シタル提供物ヲ保留シ得ルモノト云フヘク此ノ場合弁済者ハ提供物ヲ交付セサルコトニ付正当ノ理由アルモノニシテ遅滞ノ責ヲ負フコトナキモノトス。」
判旨:「弁済者カ其ノ弁済ニ対シ受取証書ノ交付ヲ請求スル所以ノモノハ弁済ノ有無ニ付争アリタル場合ニ其ノ弁済事実ノ立証資料ニ供セントスルニ在ルモノナルカ故ニ弁済ト引換ニ其ノ交付ナクンハ受取証書ハ其ノ効用ヲ全フセサルヘク従テ請求アルニ於テハ受取証書ハ弁済ト引換ニ之カ交付ヲ要スルモノト謂ハサルヘカラス然ラハ弁済者カ弁済ヲ為サントスルニ当リ受取証書ノ交付ヲ請求シタルニ拘ラス弁済受領者カ之ヲ応諾セサルニ於テハ弁済者ハ弁済ノ為メ現実ニ為シタル提供物ヲ保留シ得ルモノト云フヘク此ノ場合弁済者ハ提供物ヲ交付セサルコトニ付正当ノ理由アルモノニシテ遅滞ノ責ヲ負フコトナキモノトス。」
総合メモ
期限の定めがない債務と弁済期 大判大正6年10月20日
過去問・解説
(H18 司法 第22問 5)
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合において、両債務とも無利息で弁済期の定めがないが、甲債務が乙債務より先に成立した場合、AがBに150万円を支払ったが、ABともに弁済の充当指定をしなかったときは、50万円が甲債務の弁済に、100万円が乙債務の弁済に充当される。
AがBに対して100万円の甲借入金債務と200万円の乙借入金債務を負っている場合において、両債務とも無利息で弁済期の定めがないが、甲債務が乙債務より先に成立した場合、AがBに150万円を支払ったが、ABともに弁済の充当指定をしなかったときは、50万円が甲債務の弁済に、100万円が乙債務の弁済に充当される。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大6.10.20)は、弁済期の定めのない債務は、債権者がいつでも弁済を請求することができるから、常に弁済期にあり、弁済期の定めのない債務が二つあるときは、債務発生の日時が早いものをもって、先に弁済期が到来したものと解する旨判示している。本肢においては、甲借入金債務と乙借入金債務の双方とも弁済期の定めがないが、甲債務が乙債務より先に成立しているため、甲債務をもって、先に弁済期が到来したものといえる。
ここで、488条4項柱書は、「弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第一項又は第二項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。」と規定し、同項3号は、「債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。」と規定している。本肢においては、甲借入金債務と乙借入金債務の双方とも無利息であるから、「債務者のために弁済の利益が相等しいとき」に当たる。そして、上記の通り、甲借入金債務をもって、先に弁済期が到来したものといえることから、AがBに150万円を支払ったが、ABともに弁済の充当指定をしなかったときは、甲借入金債務に優先的に充当される。したがって、100万円が甲債務の弁済に、50万円が乙債務の弁済に充当される。
判例(大判大6.10.20)は、弁済期の定めのない債務は、債権者がいつでも弁済を請求することができるから、常に弁済期にあり、弁済期の定めのない債務が二つあるときは、債務発生の日時が早いものをもって、先に弁済期が到来したものと解する旨判示している。本肢においては、甲借入金債務と乙借入金債務の双方とも弁済期の定めがないが、甲債務が乙債務より先に成立しているため、甲債務をもって、先に弁済期が到来したものといえる。
ここで、488条4項柱書は、「弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第一項又は第二項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。」と規定し、同項3号は、「債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。」と規定している。本肢においては、甲借入金債務と乙借入金債務の双方とも無利息であるから、「債務者のために弁済の利益が相等しいとき」に当たる。そして、上記の通り、甲借入金債務をもって、先に弁済期が到来したものといえることから、AがBに150万円を支払ったが、ABともに弁済の充当指定をしなかったときは、甲借入金債務に優先的に充当される。したがって、100万円が甲債務の弁済に、50万円が乙債務の弁済に充当される。
総合メモ
自衛隊の自動車の運転者が運転上の注意義務を怠ったことにより生じた同乗者の死亡事故と国の当該同乗者に対する安全配慮義務違反の成否 最二小判昭和58年5月27日
概要
自衛隊員が、同隊の自動車を運転し、任務を終了した帰途、通常の注意義務を怠ったことにより同乗者を死亡させたとしても、それだけでは国に当該同乗者に対する安全配慮義務違反があるとはいえない。
判例
事案:自衛隊員が自動車運転上の注意義務に違反して同乗者を死亡させた場合において、国の安全配慮義務違反が認定されるかが問題となった。
判旨:「国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている(最高裁昭和48年(オ)第383号同50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁)。右義務は、国が公務遂行に当たって支配管理する人的及び物的環境から生じうべき危険の防止について信義則上負担するものであるから、国は、自衛隊員を自衛隊車両に公務の遂行として乗車させる場合には、右自衛隊員に対する安全配慮義務として、車両の整備を十全ならしめて車両自体から生ずべき危険を防止し、車両の運転者としてその任に適する技能を有する者を選任し、かつ、当該車両を運転する上で特に必要な安全上の注意を与えて車両の運行から生ずる危険を防止すべき義務を負うが、運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。」
判旨:「国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている(最高裁昭和48年(オ)第383号同50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁)。右義務は、国が公務遂行に当たって支配管理する人的及び物的環境から生じうべき危険の防止について信義則上負担するものであるから、国は、自衛隊員を自衛隊車両に公務の遂行として乗車させる場合には、右自衛隊員に対する安全配慮義務として、車両の整備を十全ならしめて車両自体から生ずべき危険を防止し、車両の運転者としてその任に適する技能を有する者を選任し、かつ、当該車両を運転する上で特に必要な安全上の注意を与えて車両の運行から生ずる危険を防止すべき義務を負うが、運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第16問 ウ)
安全配慮義務は、使用者が労働者の生命及び健康等の安全を確保する包括的な義務であるから、使用者の履行補助者が道路交通法に基づいて負うべき注意義務に違反した場合には、その注意義務違反を理由として、使用者の安全配慮義務違反が認められる。
安全配慮義務は、使用者が労働者の生命及び健康等の安全を確保する包括的な義務であるから、使用者の履行補助者が道路交通法に基づいて負うべき注意義務に違反した場合には、その注意義務違反を理由として、使用者の安全配慮義務違反が認められる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.5.27)は、本肢と同種の事案において、「運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。」と判示している。したがって、使用者の履行補助者が道路交通法に基づいて負うべき注意義務に違反した場合でも、その注意義務違反を理由として、使用者の安全配慮義務違反は認められない。
判例(最判昭58.5.27)は、本肢と同種の事案において、「運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。」と判示している。したがって、使用者の履行補助者が道路交通法に基づいて負うべき注意義務に違反した場合でも、その注意義務違反を理由として、使用者の安全配慮義務違反は認められない。
(R2 司法 第20問 オ)
国の公務員である運転者Aが公務遂行中に道路交通法上の通常の注意義務に違反して自動車事故を起こし、同乗していた国の公務員Bが負傷した場合、国は、Bに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負う。
国の公務員である運転者Aが公務遂行中に道路交通法上の通常の注意義務に違反して自動車事故を起こし、同乗していた国の公務員Bが負傷した場合、国は、Bに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負う。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.5.27)は、本肢と同種の事案において、「運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。」と判示している。したがって、国の公務員である運転者Aが公務遂行中に道路交通法上の通常の注意義務に違反して自動車事故を起こし、同乗していた国の公務員Bが負傷した場合でも、国は、Bに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負わない。
判例(最判昭58.5.27)は、本肢と同種の事案において、「運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。」と判示している。したがって、国の公務員である運転者Aが公務遂行中に道路交通法上の通常の注意義務に違反して自動車事故を起こし、同乗していた国の公務員Bが負傷した場合でも、国は、Bに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負わない。
総合メモ
宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事故につき会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任があるとされた事例 最三小判昭和59年4月10日
概要
会社が、夜間にも、その社屋に高価な反物、毛皮等を多数開放的に陳列保管していながら、社屋の夜間出入口にのぞき窓やインターホンを設けていないため、くぐり戸を開けてみなければ来訪者が誰であるかを確かめることが困難であり、そのため来訪者が無理に押し入ることができる状態となり、これを利用して盗賊が侵入し宿直員に危害を加えることのあるのを予見しえたにもかかわらず、盗賊防止のための物的設備を施さず、また、宿直員を新入社員1人としないで増員するなどの措置を講じなかったような事実関係の下で、1人で宿直中の侵入社員が勤務中にくぐり戸から侵入した強盗に殺害されたときは、第三者の故意の加害行為が介在していても、会社は安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う。
判例
事案:社屋に強盗が侵入し労働者を殺害した場合において、会社に安全配慮義務違反が認められるかが問題となった。
判旨:「雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に 配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解するのが相当である。もとより、使用者の右の安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものであることはいうまでもないが、これを本件の場合に即してみれば、A社は、B一人に対し昭和53年8月13日午前9時から24時間の宿直勤務を命じ、宿直勤務の場所を本件社屋内、就寝場所を同社屋1階商品陳列場と指示したのであるから、宿直勤務の場所である本件社屋内に、宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入できないような物的設備を施し、かつ、万一盗賊が侵入した場合は盗賊から加えられるかも知れない危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、これら物的施設等を十分に整備することが困難であるときは、宿直員を増員するとか宿直員に対する安全教育を十分に行うなどし、もって右物的施設等と相まって労働者たるBの生命、身体等に危険が及ばないように配慮する義務があつたものと解すべきである。
そこで、以上の見地に立つて本件をみるに、前記の事実関係からみれば、A社の本件社屋には、昼夜高価な商品が多数かつ開放的に陳列、保管されていて、休日又は夜間には盗賊が侵入するおそれがあつたのみならず、当時、A社では現に商品の紛失事故や盗難が発生したり、不審な電話がしばしばかかつてきていたというのであり、しかも侵入した盗賊が宿直員に発見されたような場合には宿直員に危害を加えることも十分予見することができたにもかかわらず、A社では、盗賊侵入防止のためののぞき窓、インターホン、防犯チエーン等の物的設備や侵入した盗賊から危害を免れるために役立つ防犯ベル等の物的設備を施さず、また、盗難等の危険を考慮して休日又は夜間の宿直員を新入社員一人としないで適宜増員するとか宿直員に対し十分な安全教育を施すなどの措置を講じていなかつたというのであるから、A社には、Bに対する前記の安全配慮義務の不履行があつたものといわなければならない。そして、前記の事実からすると、A社において前記のような安全配慮義務を履行しておれば、本件のようなBの殺害という事故の発生を未然に防止しえたというべきであるから、右事故は、A社の右安全配慮義務の不履行によつて発生したものということができ、A社は、右事故によつて被害を被つた者に対しその損害を賠償すべき義務があるものといわざるをえない。」
判旨:「雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に 配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負っているものと解するのが相当である。もとより、使用者の右の安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものであることはいうまでもないが、これを本件の場合に即してみれば、A社は、B一人に対し昭和53年8月13日午前9時から24時間の宿直勤務を命じ、宿直勤務の場所を本件社屋内、就寝場所を同社屋1階商品陳列場と指示したのであるから、宿直勤務の場所である本件社屋内に、宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入できないような物的設備を施し、かつ、万一盗賊が侵入した場合は盗賊から加えられるかも知れない危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、これら物的施設等を十分に整備することが困難であるときは、宿直員を増員するとか宿直員に対する安全教育を十分に行うなどし、もって右物的施設等と相まって労働者たるBの生命、身体等に危険が及ばないように配慮する義務があつたものと解すべきである。
そこで、以上の見地に立つて本件をみるに、前記の事実関係からみれば、A社の本件社屋には、昼夜高価な商品が多数かつ開放的に陳列、保管されていて、休日又は夜間には盗賊が侵入するおそれがあつたのみならず、当時、A社では現に商品の紛失事故や盗難が発生したり、不審な電話がしばしばかかつてきていたというのであり、しかも侵入した盗賊が宿直員に発見されたような場合には宿直員に危害を加えることも十分予見することができたにもかかわらず、A社では、盗賊侵入防止のためののぞき窓、インターホン、防犯チエーン等の物的設備や侵入した盗賊から危害を免れるために役立つ防犯ベル等の物的設備を施さず、また、盗難等の危険を考慮して休日又は夜間の宿直員を新入社員一人としないで適宜増員するとか宿直員に対し十分な安全教育を施すなどの措置を講じていなかつたというのであるから、A社には、Bに対する前記の安全配慮義務の不履行があつたものといわなければならない。そして、前記の事実からすると、A社において前記のような安全配慮義務を履行しておれば、本件のようなBの殺害という事故の発生を未然に防止しえたというべきであるから、右事故は、A社の右安全配慮義務の不履行によつて発生したものということができ、A社は、右事故によつて被害を被つた者に対しその損害を賠償すべき義務があるものといわざるをえない。」
過去問・解説
(H22 司法 第16問 エ)
労働者の勤務場所に第三者が侵入して労働者に危害を加えた場合には、その第三者による故意の加害行為が介在していることから、使用者は、安全配慮義務違反による損害賠償責任を負うことはない。
労働者の勤務場所に第三者が侵入して労働者に危害を加えた場合には、その第三者による故意の加害行為が介在していることから、使用者は、安全配慮義務違反による損害賠償責任を負うことはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭59.4.10)は、労働者の勤務場所に第三者が侵入して労働者を殺害した事案において、「A社には、Bに対する前記の安全配慮義務の不履行があつたものといわなければならない。そして、前記の事実からすると、A社において前記のような安全配慮義務を履行しておれば、本件のようなBの殺害という事故の発生を未然に防止しえたというべきであるから、右事故は、A社の右安全配慮義務の不履行によつて発生したものということができ、A社は、右事故によつて被害を被つた者に対しその損害を賠償すべき義務があるものといわざるをえない。」と判示して、使用者の安全配慮義務違反による損害賠償責任を認めた。したがって、第三者による故意の加害行為が介在していても、使用者は、安全配慮義務違反による損害賠償責任を負うことがある。
判例(最判昭59.4.10)は、労働者の勤務場所に第三者が侵入して労働者を殺害した事案において、「A社には、Bに対する前記の安全配慮義務の不履行があつたものといわなければならない。そして、前記の事実からすると、A社において前記のような安全配慮義務を履行しておれば、本件のようなBの殺害という事故の発生を未然に防止しえたというべきであるから、右事故は、A社の右安全配慮義務の不履行によつて発生したものということができ、A社は、右事故によつて被害を被つた者に対しその損害を賠償すべき義務があるものといわざるをえない。」と判示して、使用者の安全配慮義務違反による損害賠償責任を認めた。したがって、第三者による故意の加害行為が介在していても、使用者は、安全配慮義務違反による損害賠償責任を負うことがある。
総合メモ
元請企業につき下請企業の労働者に対する安全配慮義務が認められた事例 最一小判平成3年4月11日
概要
下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほぼ同じであった等の事実関係の下では、元請企業は、信義則上、労働者に対し安全配慮義務を負う。
判例
事案:元請企業について、下請企業の労働者に対する安全配慮義務が認められるかが問題となった。
判旨:「Aの下請企業の労働者がAの甲造船所で労務の提供をするに当たっては、いわゆる社外工として、Aの管理する設備、工具等を用い、事実上Aの指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容もAの従業員…とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係の下においては、Aは、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負うものである…。」
判旨:「Aの下請企業の労働者がAの甲造船所で労務の提供をするに当たっては、いわゆる社外工として、Aの管理する設備、工具等を用い、事実上Aの指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容もAの従業員…とほとんど同じであったというのであり、このような事実関係の下においては、Aは、下請企業の労働者との間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、右労働者に対し安全配慮義務を負うものである…。」
過去問・解説
(H22 司法 第16問 オ)
安全配慮義務は、特別な社会的接触の関係に入った当事者間において信義則上認められるものであるから、元請企業が下請企業を用いる場合には、元請企業は、下請企業に雇用される労働者に対しても、安全配慮義務を負うことがある。
安全配慮義務は、特別な社会的接触の関係に入った当事者間において信義則上認められるものであるから、元請企業が下請企業を用いる場合には、元請企業は、下請企業に雇用される労働者に対しても、安全配慮義務を負うことがある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.11)は、下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほぼ同じであった等の事実関係の下では、元請企業は、信義則上、労働者に対し安全配慮義務を負う旨判示している。したがって、元請企業が下請企業を用いる場合には、元請企業は、下請企業に雇用される労働者に対しても、信義則上、安全配慮義務を負うことがある
判例(最判平3.4.11)は、下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほぼ同じであった等の事実関係の下では、元請企業は、信義則上、労働者に対し安全配慮義務を負う旨判示している。したがって、元請企業が下請企業を用いる場合には、元請企業は、下請企業に雇用される労働者に対しても、信義則上、安全配慮義務を負うことがある
(R2 司法 第20問 ウ)
元請企業は、下請企業に雇用されている労働者に対しても、特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある。
元請企業は、下請企業に雇用されている労働者に対しても、特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.11)は、下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほぼ同じであった等の事実関係の下では、元請企業は、信義則上、労働者に対し安全配慮義務を負う旨判示している。したがって、元請企業は、下請企業に雇用されている労働者に対しても、特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある。
判例(最判平3.4.11)は、下請企業の労働者が元請企業の作業場で労務の提供をするに当たり、元請企業の管理する設備工具等を用い、事実上元請企業の指揮監督を受けて稼働し、その作業内容も元請企業の従業員とほぼ同じであった等の事実関係の下では、元請企業は、信義則上、労働者に対し安全配慮義務を負う旨判示している。したがって、元請企業は、下請企業に雇用されている労働者に対しても、特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある。
総合メモ
宿泊客がフロントに預けなかった物品の滅失毀損等につきホテル側に故意又は重大な過失がある場合とホテルの損害賠償義務の範囲を制限する宿泊約款の定めの適用 最二小判平成15年2月28日
概要
宿泊客がフロントに預けなかった物品等で事前に種類及び価額の明告のなかったものが滅失、毀損するなどしたときに、ホテルの損害賠償義務の範囲を一定の金額の限度に制限する宿泊約款の定めは、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合には適用されない。
判例
事案:ホテルに持ち込んだものの、フロントに預けなかった物品、金銭及び貴重品について、ホテル側にその種類及び価額の明告をしなかった場合において、当該物品、金銭及び貴重品にホテルの故意または重大な過失によって滅失、棄損等の損害が発生したとき、賠償金額を一定程度に限定する特則が有効に適用されるかが問題となった。
判旨:「…本件ホテルの宿泊約款には、「宿泊客が当ホテル内にお持込みになった物品又は現金並びに貴重品であってフロントにお預けにならなかったものについて、当ホテルの故意又は過失により滅失、毀損等の損害が生じたときは、当ホテルは、その損害を賠償します。ただし、宿泊客からあらかじめ種類及び価額の明告のなかったものについては、15万円を限度として当ホテルはその損害を賠償します。」という規定があった(以下、この但書のことを「本件特則」という。)。」
「本件特則は、宿泊客が、本件ホテルに持ち込みフロントに預けなかった物品、現金及び貴重品について、ホテル側にその種類及び価額の明告をしなかった場合には、ホテル側が物品等の種類及び価額に応じた注意を払うことを期待するのが酷であり、かつ、時として損害賠償額が巨額に上ることがあり得ることなどを考慮して設けられたものと解される。このような本件特則の趣旨にかんがみても、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合に、本件特則により、被上告人の損害賠償義務の範囲が制限されるとすることは、著しく衡平を害するものであって、当事者の通常の意思に合致しないというべきである。したがって、本件特則は、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合には適用されないと解するのが相当である。」
判旨:「…本件ホテルの宿泊約款には、「宿泊客が当ホテル内にお持込みになった物品又は現金並びに貴重品であってフロントにお預けにならなかったものについて、当ホテルの故意又は過失により滅失、毀損等の損害が生じたときは、当ホテルは、その損害を賠償します。ただし、宿泊客からあらかじめ種類及び価額の明告のなかったものについては、15万円を限度として当ホテルはその損害を賠償します。」という規定があった(以下、この但書のことを「本件特則」という。)。」
「本件特則は、宿泊客が、本件ホテルに持ち込みフロントに預けなかった物品、現金及び貴重品について、ホテル側にその種類及び価額の明告をしなかった場合には、ホテル側が物品等の種類及び価額に応じた注意を払うことを期待するのが酷であり、かつ、時として損害賠償額が巨額に上ることがあり得ることなどを考慮して設けられたものと解される。このような本件特則の趣旨にかんがみても、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合に、本件特則により、被上告人の損害賠償義務の範囲が制限されるとすることは、著しく衡平を害するものであって、当事者の通常の意思に合致しないというべきである。したがって、本件特則は、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合には適用されないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R3 司法 第16問 ア)
債務者は、一切損害賠償責任を負わない旨の免責条項がある場合でも、債務者が故意に債務を履行しなかったときには、当該免責条項による免責が認められない。
債務者は、一切損害賠償責任を負わない旨の免責条項がある場合でも、債務者が故意に債務を履行しなかったときには、当該免責条項による免責が認められない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平15.2.28)は、宿泊客がフロントに預けなかった物品等で事前に種類及び価額の明告のなかったものが滅失、毀損するなどしたときに、ホテルの損害賠償義務の範囲を一定の金額の限度に制限する宿泊約款の定めは、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合には適用されない旨判示している。したがって、債務者は、一切損害賠償責任を負わない旨の免責条項がある場合でも、債務者が故意に債務を履行しなかったときには、当該免責条項による免責が認められないといえる。
判例(最判平15.2.28)は、宿泊客がフロントに預けなかった物品等で事前に種類及び価額の明告のなかったものが滅失、毀損するなどしたときに、ホテルの損害賠償義務の範囲を一定の金額の限度に制限する宿泊約款の定めは、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合には適用されない旨判示している。したがって、債務者は、一切損害賠償責任を負わない旨の免責条項がある場合でも、債務者が故意に債務を履行しなかったときには、当該免責条項による免責が認められないといえる。
総合メモ
営業利益相当の損害に対する損害賠償請求 最二小判平成21年1月19日
概要
店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により営業ができなかった場合でも、賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたにもかかわらず、措置を行わなかった場合には、措置が取れた時期以降の損害のすべてを416条1項の「通常生ずべき損害」に当たるとして損害賠償請求をすることはできない。
判例
事例:店舗の賃貸人の債務不履行により賃借人に損害が生じた場合において、賃借人が損害を回避減少できたのにしなかったとき、賃貸人が発生した損害すべてについて賠償責任を負うか問題となった。
判旨:「事業用店舗の賃借人が、賃貸人の債務不履行により当該店舗で営業することができなくなった場合には、これにより賃借人に生じた営業利益喪失の損害は、債務不履行により通常生ずべき損害として民法416条1項により賃貸人にその賠償を求めることができると解するのが相当である。しかしながら、…本件本訴が提起された時点では、本件店舗部分における営業の再開は、いつ実現できるか分からない実現可能性の乏しいものとなっていたと解される。他方、Aが本件店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は、本件店舗部分以外の場所では行うことができないものとは考えられないし、前記事実関係によれば、Aは、…保険金の支払を受けているというのであるから、これによって、Aは、再びカラオケセット等を整備するのに必要な資金の少なくとも相当部分を取得したものと解される。
そうすると、遅くとも、本件本訴が提起された時点においては、Aがカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく、本件店舗部分における営業利益相当の損害が発生するにまかせて、その損害のすべてについての賠償をBらに請求することは、条理上認められないというべきであり、民法416条1項にいう通常生ずべき損害の解釈上、本件において、Aが上記措置を執ることができたと解される時期以降における上記営業利益相当の損害のすべてについてその賠償をBに請求することはできないというべきである。」
判旨:「事業用店舗の賃借人が、賃貸人の債務不履行により当該店舗で営業することができなくなった場合には、これにより賃借人に生じた営業利益喪失の損害は、債務不履行により通常生ずべき損害として民法416条1項により賃貸人にその賠償を求めることができると解するのが相当である。しかしながら、…本件本訴が提起された時点では、本件店舗部分における営業の再開は、いつ実現できるか分からない実現可能性の乏しいものとなっていたと解される。他方、Aが本件店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は、本件店舗部分以外の場所では行うことができないものとは考えられないし、前記事実関係によれば、Aは、…保険金の支払を受けているというのであるから、これによって、Aは、再びカラオケセット等を整備するのに必要な資金の少なくとも相当部分を取得したものと解される。
そうすると、遅くとも、本件本訴が提起された時点においては、Aがカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく、本件店舗部分における営業利益相当の損害が発生するにまかせて、その損害のすべてについての賠償をBらに請求することは、条理上認められないというべきであり、民法416条1項にいう通常生ずべき損害の解釈上、本件において、Aが上記措置を執ることができたと解される時期以降における上記営業利益相当の損害のすべてについてその賠償をBに請求することはできないというべきである。」
過去問・解説
(H27 共通 第15問 ウ)
営業用店舗の賃貸人が修繕義務の履行を怠ったために賃借人がその店舗で営業をすることができなかった場合、賃借人は、これにより生じた営業利益の喪失による損害の賠償を、債務不履行により通常生ずべき損害として請求することができるが、賃借人が営業をその店舗とは別の場所で再開するなどの損害を回避又は減少させる措置を何ら執らなかったときは、そのような措置を執ることができた時期以降に生じた損害の全ての賠償を請求することはできない。
営業用店舗の賃貸人が修繕義務の履行を怠ったために賃借人がその店舗で営業をすることができなかった場合、賃借人は、これにより生じた営業利益の喪失による損害の賠償を、債務不履行により通常生ずべき損害として請求することができるが、賃借人が営業をその店舗とは別の場所で再開するなどの損害を回避又は減少させる措置を何ら執らなかったときは、そのような措置を執ることができた時期以降に生じた損害の全ての賠償を請求することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平21.1.19)は、「事業用店舗の賃借人が、賃貸人の債務不履行により当該店舗で営業することができなくなった場合には、これにより賃借人に生じた営業利益喪失の損害は、債務不履行により通常生ずべき損害として民法416条1項により賃貸人にその賠償を求めることができると解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢前段は正しい。
そして、同判例は、店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により営業ができなかった場合でも、賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたにもかかわらず、措置を行わなかった場合には、措置が取れた時期以降の損害のすべてを416条1項の「通常生ずべき損害」に当たるとして損害賠償請求をすることはできない旨判示している。したがって、本肢後段も正しい。
判例(最判平21.1.19)は、「事業用店舗の賃借人が、賃貸人の債務不履行により当該店舗で営業することができなくなった場合には、これにより賃借人に生じた営業利益喪失の損害は、債務不履行により通常生ずべき損害として民法416条1項により賃貸人にその賠償を求めることができると解するのが相当である。」と判示している。したがって、本肢前段は正しい。
そして、同判例は、店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により営業ができなかった場合でも、賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたにもかかわらず、措置を行わなかった場合には、措置が取れた時期以降の損害のすべてを416条1項の「通常生ずべき損害」に当たるとして損害賠償請求をすることはできない旨判示している。したがって、本肢後段も正しい。
総合メモ
特別損害の予見時期 大判大正7年8月27日
概要
損害賠償請求における「特別の事情によって生じた損害」(416条2項)の予見時期は、債務不履行時である。
判例
事案:損害賠償請求における「特別の事情によって生じた損害」について、予見時期をいつの時点と解するかが問題となった。
判旨:「法律カ特別事情ヲ予見シタル債務者ニ之ニ因リ生シタル損害ヲ賠償スルノ責ヲ負ハシムル所以ノモノハ特別事情ヲ予見シタルニ於テハ之ニ因ル損害ノ生スルハ予知シ得ヘキ所ナレハ之ヲ予知シナカラ債務ヲ履行セス若クハ其履行ヲ不能ナラシメタル債務者ニ其損害ヲ賠償セシムルモ過酷ナラスト為スニ在レハ特別事情ノ予見ハ債務ノ履行期迄ニ履行期後ノ事情ヲ前知スルノ義ニシテ予見ノ時期ハ債務ノ履行期迄ナリト解スルヲ正当トス。」
判旨:「法律カ特別事情ヲ予見シタル債務者ニ之ニ因リ生シタル損害ヲ賠償スルノ責ヲ負ハシムル所以ノモノハ特別事情ヲ予見シタルニ於テハ之ニ因ル損害ノ生スルハ予知シ得ヘキ所ナレハ之ヲ予知シナカラ債務ヲ履行セス若クハ其履行ヲ不能ナラシメタル債務者ニ其損害ヲ賠償セシムルモ過酷ナラスト為スニ在レハ特別事情ノ予見ハ債務ノ履行期迄ニ履行期後ノ事情ヲ前知スルノ義ニシテ予見ノ時期ハ債務ノ履行期迄ナリト解スルヲ正当トス。」
過去問・解説
(H23 司法 第17問 5)
不動産の売買における売主の債務不履行において、特別の事情によって生じる損害については、債務者は、その債務の成立時に当該特別の事情を予見し、又は予見することができた場合に限り、賠償責任を負う。
不動産の売買における売主の債務不履行において、特別の事情によって生じる損害については、債務者は、その債務の成立時に当該特別の事情を予見し、又は予見することができた場合に限り、賠償責任を負う。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大7.8.27)は、損害賠償請求における「特別の事情によって生じた損害」の予見時期は、債務不履行時である旨判示している。したがって、債務者は、その債務の成立時ではなく、債務不履行時に当該特別の事情を予見し、又は予見することができた場合に限り、賠償責任を負う。
判例(大判大7.8.27)は、損害賠償請求における「特別の事情によって生じた損害」の予見時期は、債務不履行時である旨判示している。したがって、債務者は、その債務の成立時ではなく、債務不履行時に当該特別の事情を予見し、又は予見することができた場合に限り、賠償責任を負う。
(R3 司法 第15問 ウ)
特別の事情によって生じた損害については、当事者がその事情を現に予見していたときに限り、債権者は、その賠償を請求することができる。
特別の事情によって生じた損害については、当事者がその事情を現に予見していたときに限り、債権者は、その賠償を請求することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大7.8.27)は、損害賠償請求における「特別の事情によって生じた損害」の予見時期は、債務不履行時である旨判示している。そして、416条2項は、「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」と規定している。したがって、特別の事情によって生じた損害については、当事者がその事情を現に予見していたときではなく、債務不履行時に予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
判例(大判大7.8.27)は、損害賠償請求における「特別の事情によって生じた損害」の予見時期は、債務不履行時である旨判示している。そして、416条2項は、「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」と規定している。したがって、特別の事情によって生じた損害については、当事者がその事情を現に予見していたときではなく、債務不履行時に予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
総合メモ
金銭債務の不履行に基づく損害賠償 最一小判昭和48年10月11日
概要
債権者は、金銭を目的とする債務の履行遅滞により、約定または法定の利率以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求することはできない。
判例
事案:金銭を目的とする債務の履行遅滞により、約定又は法定の利率以上の損害が生じた場合において、当該損害が生じたことを立証して、その賠償を請求することができるかが問題となった。
判旨:「民法419条によれば、金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、法律に別段の定めがある場合を除き、約定または法定の利率により、債権者はその損害の証明をする必要がないとされているが、その反面として、たとえそれ以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求することはできないものというべく、したがって、債権者は、金銭債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求することはできないと解するのが相当である。」
判旨:「民法419条によれば、金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、法律に別段の定めがある場合を除き、約定または法定の利率により、債権者はその損害の証明をする必要がないとされているが、その反面として、たとえそれ以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求することはできないものというべく、したがって、債権者は、金銭債務の不履行による損害賠償として、債務者に対し弁護士費用その他の取立費用を請求することはできないと解するのが相当である。」
総合メモ
当事者が損害賠償の額を予定した場合における過失相殺の可否 最一小判平成6年4月21日
概要
当事者が420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は過失相殺をするべきである。
判例
事案:当事者が420条1項により損害賠償額の予定をした場合において、なお債務不履行に関して債権者に過失があったときに、裁判所が過失相殺(418条)をするべきかが問題となった。
判旨:「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である…。」
判旨:「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H27 共通 第15問 エ)
当事者が債務不履行について損害賠償の額を予定している場合、裁判所は、その損害賠償の予定額を増減することはできず、過失相殺により賠償額を減額することもできない。
当事者が債務不履行について損害賠償の額を予定している場合、裁判所は、その損害賠償の予定額を増減することはできず、過失相殺により賠償額を減額することもできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.4.21)は、「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である…。」と判示している。
判例(最判平6.4.21)は、「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である…。」と判示している。
(R3 司法 第16問 イ)
損害賠償の額を予定する条項がある場合には、過失相殺による減額がされることはない。
損害賠償の額を予定する条項がある場合には、過失相殺による減額がされることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.4.21)は、「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である…。」と判示している。
判例(最判平6.4.21)は、「当事者が民法420条1項により損害賠償額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これを斟酌すべきものと解するのが相当である…。」と判示している。
総合メモ
不動産の所有権移転義務の履行不能による損害賠償額の算定の基準時 最一小判昭和47年4月20日
概要
売買契約の目的物である不動産の価格が売主の所有権移転義務の履行不能後も騰貴を続けているという特別の事情があり、かつ、履行不能の際に売主がそのような特別の事情の存在することを知っていたかまたはこれを知りえた場合には、買主が当該不動産を転売して利益を得るためではなくこれを自己の使用に供するために買い受けたものであるときでも、買主は、売主に対し、当該不動産の騰貴した現在の価格を基準として算定した損害額の賠償を請求することができる。
判例
事案:買主が自己の使用に供するために買い受けた不動産の価格が売主の所有権移転義務の履行不能後も騰貴を続けている場合における、同義務の履行不能による損害賠償額の算定の基準時が問題となった。
判旨:「およそ、債務者が債務の目的物を不法に処分したために債務が履行不能となつた後、その目的物の価格が騰貴を続けているという特別の事情があり、かつ、債務者が、債務を履行不能とした際、右のような特別の事情の存在を知つていたかまたはこれを知りえた場合には、債権者は、債務者に対し、その目的物の騰貴した現在の価格を基準として算定した損害額の賠償を請求しうるものであることは、すでに当裁判所の判例とするところである(当裁判所昭和36年(オ)第135号同37年11月16日第二小法廷判決・民集16巻11号2280頁参照。)。そして、この理は、…買主がその目的物を他に転売して利益を得るためではなくこれを自己の使用に供する目的でなした不動産の売買契約において、売主がその不動産を不法に処分したために売主の買主に対する不動産の所有権移転義務が履行不能となつた場合であつても、妥当するものと解すべきである。けだし、このような場合であつても、右不動産の買主は、右のような債務不履行がなければ、騰貴した価格のあるその不動産を現に保有しえたはずであるから、右履行不能の結果右買主の受ける損害額は、その不動産の騰貴した現在の価格を基準として算定するのが相当であるからである。」
判旨:「およそ、債務者が債務の目的物を不法に処分したために債務が履行不能となつた後、その目的物の価格が騰貴を続けているという特別の事情があり、かつ、債務者が、債務を履行不能とした際、右のような特別の事情の存在を知つていたかまたはこれを知りえた場合には、債権者は、債務者に対し、その目的物の騰貴した現在の価格を基準として算定した損害額の賠償を請求しうるものであることは、すでに当裁判所の判例とするところである(当裁判所昭和36年(オ)第135号同37年11月16日第二小法廷判決・民集16巻11号2280頁参照。)。そして、この理は、…買主がその目的物を他に転売して利益を得るためではなくこれを自己の使用に供する目的でなした不動産の売買契約において、売主がその不動産を不法に処分したために売主の買主に対する不動産の所有権移転義務が履行不能となつた場合であつても、妥当するものと解すべきである。けだし、このような場合であつても、右不動産の買主は、右のような債務不履行がなければ、騰貴した価格のあるその不動産を現に保有しえたはずであるから、右履行不能の結果右買主の受ける損害額は、その不動産の騰貴した現在の価格を基準として算定するのが相当であるからである。」
過去問・解説
(R6 司法 第18問 エ)
乙土地の売買において、売主がその所有権移転義務を履行不能とした場合には、売主が履行不能時に乙土地が騰貴しつつあることを知っていたとしても、買主が転売目的を有していなければ、買主は、売主に対し、乙土地の騰貴した現在の価格を基準としてその債務の履行に代わる賠償請求をすることができない。
乙土地の売買において、売主がその所有権移転義務を履行不能とした場合には、売主が履行不能時に乙土地が騰貴しつつあることを知っていたとしても、買主が転売目的を有していなければ、買主は、売主に対し、乙土地の騰貴した現在の価格を基準としてその債務の履行に代わる賠償請求をすることができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭47.4.20)は、売買契約の目的物である不動産の価格が売主の所有権移転義務の履行不能後も騰貴を続けているという特別の事情があり、かつ、履行不能の際に売主がそのような特別の事情の存在することを知っていたかまたはこれを知りえた場合には、買主が当該不動産を転売して利益を得るためではなくこれを自己の使用に供するために買い受けたものであるときでも、買主は、売主に対し、当該不動産の騰貴した現在の価格を基準として算定した損害額の賠償を請求することができる旨判示している。したがって、売主が履行不能時に乙土地が騰貴しつつあることを知っていた場合には、買主が転売目的を有していなくても、買主は、売主に対し、乙土地の騰貴した現在の価格を基準としてその債務の履行に代わる賠償請求をすることができる。
判例(最判昭47.4.20)は、売買契約の目的物である不動産の価格が売主の所有権移転義務の履行不能後も騰貴を続けているという特別の事情があり、かつ、履行不能の際に売主がそのような特別の事情の存在することを知っていたかまたはこれを知りえた場合には、買主が当該不動産を転売して利益を得るためではなくこれを自己の使用に供するために買い受けたものであるときでも、買主は、売主に対し、当該不動産の騰貴した現在の価格を基準として算定した損害額の賠償を請求することができる旨判示している。したがって、売主が履行不能時に乙土地が騰貴しつつあることを知っていた場合には、買主が転売目的を有していなくても、買主は、売主に対し、乙土地の騰貴した現在の価格を基準としてその債務の履行に代わる賠償請求をすることができる。