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詐害行為取消権

詐害行為取消訴訟における資力が回復したことの主張立証時期 大判大正5年5月1日

概要
詐害行為取消の訴えにおいて、債権者は、取消の対象となる行為の際に債務者が無資力であったことを主張立証すれば足り、詐害行為取消権行使の際の債務者の資産状態については、相手方の抗弁がない限り主張立証する必要はない。
判例
事案:詐害行為取消の訴えにおいて、取消の対象となる行為の際に債務者が無資力であったことを超えて、詐害行為取消権行使の際の債務者の資産状態についても、債権者が主張立証する必要があるかが問題となった。

判旨:「詐害行為取消ノ訴ハ債務者カ債権者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル法律行為ノ取消ヲ求ムル訴ナルヲ以テ其取消ヲ求メラルル行為ヲ為シタル当時ニ於テ債務者ノ資産カ負債ヲ償却スルコト能ハサル状態ニ在リタルコトヲ判示スルヲ以テ足ルモノニシテ取消訴権行使当時ノ債務者ノ資産状態ニ付テハ相手方ヨリ特ニ此点ニ付テノ抗弁ナキ限リハ此点ニ渉リ説明判断ヲ為スノ必要ナキモノトス。」
過去問・解説
(H27 共通 第17問 オ)
AがBに対して融資をしていたところ、Bがその所有する建物をBの妻Cに贈与し、その旨の所有権移転登記手続をしたことから、Aが詐害行為取消訴訟を提起した。この場合、Aは、BC間の贈与契約の当時Bが無資力であったことを主張・立証すれば足り、詐害行為取消訴訟の口頭弁論終結時までにBの資力が回復したことは、Cが主張・立証しなければならない。

(正答)

(解説)
判例(大判大5.5.1)は、詐害行為取消の訴えにおいて、債権者は、取消の対象となる行為の際に債務者が無資力であったことを主張立証すれば足り、詐害行為取消権行使の際の債務者の資産状態については、相手方の抗弁がない限り主張立証する必要はない旨判示している。したがって、Aが詐害行為取消訴訟を提起した場合、Aは、BC間の贈与契約の当時Bが無資力であったことを主張・立証すれば足り、詐害行為取消訴訟の口頭弁論終結時までにBの資力が回復したことは、Cが主張・立証しなければならない。
総合メモ

資力の回復と詐害行為取消権 大判大正15年11月13日

概要
詐害行為取消の対象行為の際に債務者が無資力でも、詐害行為取消権行使の際に資力を回復しているならば、詐害行為取消権の行使はできない。
判例
事案:詐害行為取消の対象行為が行われた際には債務者が無資力であったが、詐害行為取消権行使の際には資力を回復しているという場合において、なお債権者が詐害行為取消権を行使することができるかが問題となった。

判旨:「債務者カ其ノ財産ヲ処分シテ得タル対価ハ今ヤ既ニ存セサルモ現在ニ於ケル債務者ノ資力ハ其ノ債務ヲ弁済スルニ充分ナル以上右ノ処分ヲ目スルニ詐害行為ヲ以テシ之ヲ廃罷スヘキ何等ノ必要ト理由トアルコトナシ蓋若爾ラスシテ専ラ処分当時ノ資力ヲノミ観テ以テ其ノ詐害行為ナルト否トヲ判定スヘキモノトセムカ詐害行為廃罷ト云フ制度ハ債権者保護ノ手段ニハ非スシテ寧ロ債務者ニ対スル一ノ懲罰タルノ観ヲ呈スルニ至ラムナリ。」
過去問・解説
(H20 司法 第16問 オ)
法律行為の時に債権者を害する状態であれば、その後の事情によって債権者を害さないこととなっているとしても、詐害行為取消権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(大判大15.11.13)は、詐害行為取消の対象行為の際に債務者が無資力でも、詐害行為取消権行使の際に資力を回復しているならば、詐害行為取消権の行使はできない旨判示している。したがって、法律行為の時に債権者を害する状態であったとしても、その後の事情によって債権者を害さないこととなっている場合には、詐害行為取消権を行使することができない。
総合メモ

詐害行為取消と虚偽表示 大判昭和6年9月16日

概要
詐害行為取消権の目的行為が通謀虚偽表示によるものあっても、当該通謀虚偽表示について「善意の第三者」(94条2項)が存在し、当該第三者を転得者ととらえて、詐害行為取消の訴えを提起するのであれば、債権者と当該転得者との関係においては、通謀虚偽表示に当たる行為であってもなお詐害行為取消の対象となる。
判例
事案:通謀虚偽表示に当たる行為について「善意の第三者」(94条2項)が存在する場合に、当該第三者との関係で、当該行為を詐害行為取消の対象とすることができるかが問題となった。

判旨:「虚偽行為ノ無効ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得サルヲ以テ今若シ転得者タル第三者ニ於テ債務者ノ行為ノ虚偽表示ナルコトヲ知ラサル場合ナリトセムカ債務者ト受益者トノ間ニ詐害ノ要件具備スル限リ債権者ト転得者トノ関係ニ於テハ虚偽行為ト雖仍ホ同条同項ニ依ル取消ノ目的ト為スコトヲ得ルモノト解スルヲ相当トス。」
過去問・解説
(H30 共通 第17問 エ)
贈与が虚偽表示に該当することを知らない転得者との関係において、当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることはできない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭6.9.16)は、詐害行為取消権の目的行為が通謀虚偽表示によるものあっても、当該通謀虚偽表示について「善意の第三者」(94条2項)が存在し、当該第三者を転得者ととらえて、詐害行為取消の訴えを提起するのであれば、債権者と当該転得者との関係においては、通謀虚偽表示に当たる行為であってもなお詐害行為取消の対象となる旨判示している。したがって、贈与が虚偽表示に該当することを知らない転得者との関係においては、当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができる。
総合メモ

詐害行為の目的物が不可分な場合と取消の範囲 最三小判昭和30年10月11日

概要
詐害行為となる債務者の行為の目的物が不可分であるときは、目的物の価額が、債権者が有する債務者への債権の額を超える場合でも、債権者は、行為の全部を取り消すことができる。
判例
事案:詐害行為取消の対象行為の目的物が不可分で、当該目的物の価額が、債権者が債務者に対して有する債権よりも大きい場合においても、債権者が当該行為の全部を取り消すことができるかが問題となった。

判旨:「民法424条に依る債権者の取消権は、債権者の債権を保全するためその債権を害すべき債務者の法律行為を取消す権利であるから、債権者は故なく自己の債権の数額を超過して取消権を行使することを得ないことは論を待たないが、債務者のなした行為の目的物が不可分のものであるときは、たとえその価額が債権額を超過する場合であっても行為の全部について取消し得べきことは、すでに大審院判決の示したとおりである(明治36年12月7日大審院判決、民録9巻1345頁、大正7年5月18日同判決、民録24巻995頁、大正5年12月6日同判決,民録22巻2373頁、大正9年12月24日同判決、民録26巻2024頁各参照)。」
過去問・解説
(H18 司法 第5問 ウ)
不動産の贈与を詐害行為として取り消す場合には、債権者の債権額がその不動産の価額に満たないときであっても、贈与の全部を取り消すことができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭30.10.11)は、詐害行為となる債務者の行為の目的物が不可分であるときは、目的物の価額が、債権者が有する債務者への債権の額を超える場合でも、債権者は、行為の全部を取り消すことができる旨判示している。契約の目的物が不動産であれば、目的物が不可分な場合といい得るから、不動産の贈与を詐害行為として取り消す場合には、債権者の債権額がその不動産の価額に満たないときであっても、贈与の全部を取り消すことができる。

(H30 共通 第17問 ウ)
詐害行為取消権の対象となる贈与の目的物が不可分なものであるときは、その価額が債権額を超過する場合であっても、贈与の全部について取り消すことができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭30.10.11)は、詐害行為となる債務者の行為の目的物が不可分であるときは、目的物の価額が、債権者が有する債務者への債権の額を超える場合でも、債権者は、行為の全部を取り消すことができる旨判示している。
総合メモ

詐害行為取消権における詐害の意思 最三小判昭和35年4月26日

概要
詐害行為の成立には、債務者がその債権者を害することを知って法律行為をしたことを要するが、必ずしも害することを意図し、若しくは欲してこれをしたことを要しない。
判例
事案:詐害行為が成立するためには、債務者が債権者を害すること意図し若しくは欲していることまで必要とするかが問題となった。

判旨:「詐害行為の成立には債務者がその債権者を害することを知って法律行為をしたことを要するが、必ずしも害することを意図しもしくは欲してこれをしたことを要しないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第16問 イ)
詐害行為の成立には、債務者がその債権者を害することを知って法律行為をしたことを要するが、必ずしも害することを意図してしたことを要しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.4.26)は、「詐害行為の成立には、債務者がその債権者を害することを知って法律行為をしたことを要するが、必ずしも害することを意図し、もしくは欲してこれをしたことを要しない解するのが相当である。」と判示している。

(H26 共通 第17問 イ)
詐害行為取消権が成立するためには、債務者が債権者を害することを意図して法律行為をする必要がある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.4.26)は、「詐害行為の成立には、債務者がその債権者を害することを知って法律行為をしたことを要するが、必ずしも害することを意図し、もしくは欲してこれをしたことを要しない解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ

特定物引渡請求権者と詐害行為取消権 最大判昭和36年7月19日

概要
特定物引渡請求権を有する者も、その目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、特定物債権も究極的には損害賠償債権に変じうるものであり、金銭債権と同様、債務者の一般財産により担保されなければならないものであることから、当該処分行為を詐害行為として取り消すことができる。
判例
事案:特定物引渡請求権を有する債権者が、当該債権を被担保債権として、債務者が行った当該特定物債権の目的物の処分行為を詐害行為として取り消すことができるかが問題となった。

判旨:「民法424条の債権者取消権は、総債権者の共同担保の保全を目的とする制度であるが、特定物引渡請求権(以下特定物債権と略称する)といえどもその目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解するを相当とする。けだし、かかる債権も、窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だからである。」
過去問・解説
(H30 共通 第17問 イ)
不動産の買主は、その売主がその不動産を第三者に贈与した場合、それによって売主が無資力となったとしても、当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができない。

(正答)

(解説)
判例(最大判昭36.7.19)は、特定物引渡請求権を有する者も、その目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、特定物債権も究極的には損害賠償債権に変じうるものであり、金銭債権と同様、債務者の一般財産により担保されなければならないものであることから、当該処分行為を詐害行為として取り消すことができる旨判示している。したがって、不動産の買主は、その売主がその不動産を第三者に贈与した場合、それによって売主が無資力となったのであれば、当該贈与を詐害行為取消権の対象とすることができる。
総合メモ

詐害行為取消権の抗弁での行使 最二小判昭和39年6月12日

概要
424条の詐害行為の取消は、訴えの方法によるべきであり、抗弁の方法によることは許されない。
判例
事案:詐害行為取消を抗弁で主張することが許されるか問題となった。

判旨:「民法424条の詐害行為の取消は訴の方法によるべきものであって、抗弁の方法によることは許されないものと解するのを相当とする。けだし、取消権の行使は相手方に対する裁判外の意思表示によってこれを行うべき場合があり、裁判上の意思表示によってこれを行うべき場合があり、あるいは相手方に対する訴によってこれを行うべき場合があるが、そのいずれの方法によるべきかは、各場合における法律の規定を解釈してこれを定めなければならない。取消しうべき法律行為の取消については民法123条に「相手方ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス」と規定し、否認権の行使については破産法76条に「訴又ハ抗弁ニ依リ破産管財人之ヲ行フ」と規定しているのに反し、詐害行為の取消については、民法424条に「裁判所ニ請求スルコトヲ得」と規定しているから、訴の方法によるべく、抗弁の方法によることは許されないものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H26 共通 第17問 オ)
詐害行為取消権は、訴訟において行使しなければならないが、訴えによる必要はなく、抗弁によって行使することもできる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭39.6.12)は、「民法424条の詐害行為の取消は訴の方法によるべきものであって、抗弁の方法によることは許されないものと解するのを相当とする。」と判示している。
総合メモ

金銭の支払を求める詐害行為取消訴訟手続において、弁済を受けた被告は自己の債権額に対応する按分額の支払を拒むことができるか 最二小判昭和46年11月19日

概要
債務者Aに対してBとCが債権を有しており、そして、AがBに対してのみ弁済をして無資力となったのちに、Cが詐害行為取消権を行使して上記弁済を取り消し、自己に金銭を引き渡すように請求した場合、Bは自己の債権額に対応する按分額の支払いを拒むことができない。
判例
事案:債務者Aに対してBとCが債権を有しており、そして、AがBに対してのみ弁済をして無資力となったのちに、Cが詐害行為取消権を行使して上記弁済を取り消し、自己に金銭を引き渡すように請求した場合において、Bは自己の債権額に対応する按分額の支払いを拒むことができるか問題となった。

判旨:「債権者取消権は、 債務者の一般財産を保全するため、とくに取消債権者において、債務者受益者間の詐害行為を取り消したうえ、債務者の一般財産から逸出したものを、総債権者のために、受益者または転得者から取り戻すことができるものとした制度である。もし、本件のような弁済行為についての詐害行為取消訴訟において、受益者である被告が、自己の債務者に対する債権をもって、上告人のいわゆる配当要求をなし、取消にかかる弁済額のうち、右債権に対する按分額の支払を拒むことができるとするときは、いちはやく自己の債権につき弁済を受けた受益者を保護し、総債権者の利益を無視するに帰するわけであるから、右制度の趣旨に反することになるものといわなければならない。」
過去問・解説
(H18 司法 第5問 オ)
弁済を受けたことにつき詐害行為取消権を行使された者は、自己の債権に係る按分額の支払を拒むことができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭46.11.19)は、弁済を受けたことにつき詐害行為取消権を行使された者が、自己の債権に係る按分額の支払を拒んだ事案において、「弁済行為についての詐害行為取消訴訟において、受益者である被告が、自己の債務者に対する債権をもって、上告人のいわゆる配当要求をなし、取消にかかる弁済額のうち、右債権に対する按分額の支払を拒むことができるとするときは、いちはやく自己の債権につき弁済を受けた受益者を保護し、総債権者の利益を無視するに帰するわけであるから、右制度の趣旨に反することになるものといわなければならない。」と判示し、自己の債権にかかる按分額の支払いを拒むことはできないとしている。
総合メモ

相続放棄と詐害行為取消権 最二小判昭和49年9月20日

概要
相続放棄は、債務者の財産を積極的に減少させる行為ではない上に、一身専属的な身分行為であって他人の意思による強制を許すべきでないから、詐害行為取消権行使の対象とならない。
判例
事案:相続放棄が詐害行為取消権行使の対象となるかが問題となった。

判旨:「相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいっても、また法律上の効果からいっても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によってこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」
過去問・解説
(H18 司法 第5問 イ)
相続放棄は、他の相続人を有利にする場合には、詐害行為取消権の対象となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.9.20)は、「相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいっても、また法律上の効果からいっても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によってこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」と判示している。したがって、相続放棄は、他の相続人を有利にする場合か否かを問わず、詐害行為取消権の対象とならない。

(H23 共通 第18問 2)
相続人の債権者は、相続人が無資力であるにもかかわらず相続放棄をした場合には、詐害行為取消権を行使することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.9.20)は、相続放棄は、債務者の財産を積極的に減少させる行為ではない上に、一身専属的な身分行為であって他人の意思による強制を許すべきでないから、詐害行為取消権行使の対象とならない旨判示している。

(H30 共通 第17問 ア)
相続の放棄は、相続の放棄をした債務者が債務の履行を長期間怠るなど背信性の程度が著しい場合に限り、詐害行為取消権の対象となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭49.9.20)は、「相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいっても、また法律上の効果からいっても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によってこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」と判示している。したがって、相続の放棄は、相続の放棄をした債務者が債務の履行を長期間怠るなど背信性の程度が著しい場合であったとしても、詐害行為取消権の対象とはならない。
総合メモ

不動産の引渡請求権者が債務者による目的不動産の処分行為を詐害行為として取り消す場合と自己に対する所有権移転登記手続請求の可否 最一小判昭和53年10月5日

概要
不動産の引渡請求権者は、目的不動産についてされた債務者の処分行為を詐害行為として取り消す場合に、直接自己に対する所有権移転登記手続を請求することはできない。
判例
事案:不動産の引渡請求権者が、目的不動産についてされた債務者の処分行為を詐害行為として取り消す場合において、直接自己に対する所有権移転登記手続を請求できるか問題となった。

判旨:「特定物引渡請求権(以下、特定物債権と略称する。)は、窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様であり、その目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和30年(オ)第260号同36年7月19日大法廷判決・民集15巻7号1875頁)。しかし、民法424条の債権者取消権は、窮極的には債務者の一般財産による価値的満足を受けるため、総債権者の共同担保の保全を目的とするものであるから、このような制度の趣旨に照らし、特定物債権者は目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできないものというべく、原判決が「特定物の引渡請求権に基づいて直接自己に所有権移転登記を求めることは許されない」とした部分は結局正当に帰する。」
過去問・解説
(H19 司法 第19問 ア)
不動産の引渡請求権者は、債務者が目的不動産を第三者に対して贈与し、所有権移転登記をして無資力になった場合は、当該贈与契約を詐害行為として取り消すことができ、当該第三者に対し、直接自己への所有権移転登記を求めることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.10.5)は、「特定物引渡請求権(以下、特定物債権と略称する。)は、窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様であり、その目的物を債務者が処分することにより無資力となった場合には、該特定物債権者は右処分行為を詐害行為として取り消すことができる」と判示している。したがって、本肢前段は正しい。
しかし、同判例は続けて、「民法424条の債権者取消権は、窮極的には債務者の一般財産による価値的満足を受けるため、総債権者の共同担保の保全を目的とするものであるから、このような制度の趣旨に照らし、特定物債権者は目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできないものというべく、原判決が「特定物の引渡請求権に基づいて直接自己に所有権移転登記を求めることは許されない」とした部分は結局正当に帰する。」と判示している。したがって、本肢後段は誤っている。

(H23 共通 第18問 5)
不動産の譲渡行為が詐害行為となる場合、詐害行為取消権を行使する債権者は、当該譲渡行為に基づき所有権移転登記を受けた譲受人に対して、直接自己に対する所有権移転登記を求めることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.10.5)は、「民法424条の債権者取消権は、窮極的には債務者の一般財産による価値的満足を受けるため、総債権者の共同担保の保全を目的とするものであるから、このような制度の趣旨に照らし、特定物債権者は目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできないものというべく、原判決が「特定物の引渡請求権に基づいて直接自己に所有権移転登記を求めることは許されない」とした部分は結局正当に帰する。」と判示している。したがって、不動産の譲渡行為が詐害行為となる場合であっても、詐害行為取消権を行使する債権者は、当該譲渡行為に基づき所有権移転登記を受けた譲受人に対して、直接自己に対する所有権移転登記を求めることができない。

(H27 共通 第17問 ア)
AがBに対して融資をしていたところ、Bがその所有する建物をBの妻Cに贈与し、その旨の所有権移転登記手続をしたことから、Aが詐害行為取消訴訟を提起した。この場合に、Aは、BからCへの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができるほか、CからAへの所有権移転登記手続を請求することもできる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭53.10.5)は、「民法424条の債権者取消権は、窮極的には債務者の一般財産による価値的満足を受けるため、総債権者の共同担保の保全を目的とするものであるから、このような制度の趣旨に照らし、特定物債権者は目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできないものというべく、原判決が「特定物の引渡請求権に基づいて直接自己に所有権移転登記を求めることは許されない」とした部分は結局正当に帰する。」と判示している。したがって、Aは、BからCへの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することはできるが、CからAへの所有権移転登記手続を請求することはできない。
総合メモ

離婚に伴う財産分与と詐害行為 最二小判昭和58年12月19日

概要
離婚に伴う財産分与は、768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない。
判例
事案:離婚に伴う財産分与が詐害行為取消権の行使の対象となるかが問題となった。

判旨:「離婚における財産分与は、夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産を清算分配するとともに、離婚後における相手方の生活の維持に資することにあるが、分与者の有責行為によって離婚をやむなくされたことに対する精神的損害を賠償するための給付の要素をも含めて分与することを妨げられないものというべきであるところ、財産分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮すべきものであることは民法768条3項の規定上明らかであり、このことは、裁判上の財産分与であると協議上のそれであるとによって、なんら異なる趣旨のものではないと解される。したがって、分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも考慮すべき右事情のひとつにほかならず、分与者が負担する債務額及びそれが共同財産の形成にどの程度寄与しているかどうかも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解すべきであるから、分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でなく、相手方は、右のような場合であってもなお、相当な財産分与を受けることを妨げられないものと解すべきである。そうであるとするならば、分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第19問 エ)
離婚に伴う財産分与は詐害行為取消権行使の対象となることはないが、離婚に伴う慰謝料支払の合意は詐害行為取消権行使の対象となることがある。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.12.19)は、離婚に伴う財産分与は、768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない旨判示している。したがって、離婚に伴う財産分与は詐害行為取消権行使の対象となることがあるといえるから、本肢前段は誤っている。
これに対し、判例(最判平12.3.9)は、配偶者の一方が、その有責行為及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち当該損害賠償債務の額を超えた部分については、詐害行為取消権行使の対象となる旨判示している。したがって、離婚に伴う慰謝料支払の合意は詐害行為取消権行使の対象となることがあるといえるから、本肢後段は正しい。

(R1 予備 第13問 エ)
離婚に伴う財産分与としてされた財産処分は、詐害行為として取り消されることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.12.19)は、離婚に伴う財産分与は、768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない旨判示している。したがって、離婚に伴う財産分与としてされた財産処分も、当該特段の事情がある場合には、詐害行為として取り消されることがある。
総合メモ

債権譲渡の通知に対する詐害行為取消権行使の可否 最二小判平成10年6月12日

概要
債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とすることができない。
判例
事案:債権譲渡の通知が、詐害行為取消権行使の対象とすることができるかが問題となった。

判旨:「債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。けだし、詐害行為取消権の対象となるのは、債務者の財産の減少を目的とする行為そのものであるところ、債権の譲渡行為とこれについての譲渡通知とはもとより別個の行為であって、後者は単にその時から初めて債権の移転を債務者その他の第三者に対抗し得る効果を生じさせるにすぎず、譲渡通知の時に右債権移転行為がされたこととなったり、債権移転の効果が生じたりするわけではなく、債権譲渡行為自体が詐害行為を構成しない場合には、これについてされた譲渡通知のみを切り離して詐害行為として取り扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることは相当とはいい難いからである(大審院大正6年(オ)第538号同年10月30日判決・民録23輯1624頁、最高裁昭和54年(オ)第730号同55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号110頁参照)。」
過去問・解説
(H30 共通 第17問 オ)
債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とならない。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.6.12)は、「債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とならない解するのが相当である。」と判示している。

(R5 司法 第18問 ウ)
Bは、Aとの間で売買契約を締結する前に、Eに対する債権をFに譲渡していたものの、その譲渡についての確定日付のある証書によるEへの通知は、Aの売買代金債権の発生後にされた。この場合、Aは、当該通知について詐害行為取消請求をすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.6.12)は、「債務者が自己の第三者に対する債権を譲渡した場合において、債務者がこれについてした確定日付のある債権譲渡の通知は、詐害行為取消権行使の対象とならない解するのが相当である。」と判示している。したがって、Bが、Aとの間で売買契約を締結した後、Fに対する債権譲渡についての確定日付のある証書によるEへの通知を行った場合でも、Aは、当該通知について詐害行為取消請求をすることができない。
総合メモ

遺産分割協議と詐害行為取消権 最二小判平成11年6月11日

概要
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得る。
判例
事案:遺産分割協議が詐害行為取消権の行使の対象となるかが問題となった。

判旨:「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。」
過去問・解説
(H19 司法 第19問 イ)
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得る。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.6.11)は、「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。」と判示している。

(H26 共通 第17問 ア)
共同相続人間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権の対象とならない。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.6.11)は、「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。」と判示している。

(R6 司法 第35問 オ)
遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象とすることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.6.11)は、「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。」と判示している。
総合メモ

離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意が詐害行為に該当する場合の取消しの範囲 最一小判平成12年3月9日

概要
①離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、768条3項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消すことができる。
②配偶者の一方が、その有責行為及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち当該損害賠償債務の額を超えた部分については、詐害行為取消権行使の対象となる。
判例
事案:離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意と、慰謝料を支払う合意が詐害行為取消権の行使の対象となり得るか、また、その範囲が問題となった。

判旨:①「離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない(最高裁昭和57年(オ)第798号同58年12月19日第二小法廷判決・民集37巻10号1532頁)。このことは、 財産分与として金銭の定期給付をする旨の合意をする場合であっても、同様と解される。
 そして、離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、右特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものと解するのが相当である。」
 ②「離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は、配偶者の一方が、その有責行為及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として発生した損害賠償債務の存在を確認し、賠償額を確定してその支払を約する行為であって、新たに創設的に債務を負担するものとはいえないから、詐害行為とはならない。しかしながら、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第5問 ア)
離婚に伴う慰謝料支払の合意は、その金額が不当に過大な場合には、相当な範囲を超える部分を詐害行為として取り消すことができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平12.3.9)は、配偶者の一方が、その有責行為及びこれによって離婚のやむなきに至ったことを理由として負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち当該損害賠償債務の額を超えた部分については、詐害行為取消権行使の対象となる旨判示している。したがって、離婚に伴う慰謝料支払の合意は、その金額が不当に過大な場合には、相当な範囲を超える部分を詐害行為として取り消すことができる。

(H26 共通 第17問 ウ)
債務超過の状態にある者が離婚に伴う財産分与として配偶者に金銭の給付をする旨の合意は、その額が財産分与として不相当に過大で、財産分与に仮託された財産処分と認められる事情がある場合、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消すことができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平12.3.9)は、離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、768条3項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消すことができる旨判示している。

(R5 予備 第14問 オ)
離婚した当事者の協議により合意された財産分与は、不相当に過大であっても、詐害行為として取り消されることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判平12.3.9)は、離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、768条3項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消すことができる旨判示している。
総合メモ