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契約の成立、契約の効力、契約上の地位の移転、契約の解除、定型約款
寄託者の報酬支払債務と受寄者の目的物返還債務の同時履行 大判明治36年10月31日
概要
有償寄託の場合において、寄託者の報酬支払債務と受寄者の寄託物返還債務は、双務契約に関する規定に従い、同時履行の関係にあるから、受寄者は寄託者が報酬を提供するまでの間、寄託物の返還を拒むことができる。
判例
事案:寄託者の報酬支払債務と受寄者の目的物返還債務が同時履行の関係にあるかどうかが問題となった。
判旨:「民法第665条ニ依リ寄託ニ準用サルヘキ同法第648条第2項ニ所謂「受任者カ報酬ヲ受クヘキ場合ニ於テハ委任履行ノ後ニアラサレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス」トハ受任者カ其委任セラレタル法律行為ヲ為シタル後仮令ヘハ売買契約締結ノ委任ヲ受ケタル場合ニ於テハ第三者ト其売買ヲ締結シタル後ナラサレハ報酬ヲ請求シ得サルトノ趣旨ニシテ委任者ニ対スル一切ノ義務ヲ履行シタル後ニアラサレハ其請求ヲ為シ得サルトノ趣旨ニアラス而シテ委任者カ受任者ニ対スル報酬支払義務ノ履行ト受任者カ委任者ニ対スル義務ノ履行トニ関シテハ双務契約ニ関スル法則ニ従ヒ委任者カ其義務ニ属スル報酬ヲ提供スルマテハ自己カ委任者ニ対シテ負担スル義務ノ履行ヲ拒ミ得ルモノニシテ従テ有償寄託ノ場合ニ於ケル受寄者モ寄託者カ其約シタル報酬ヲ提供スルマテハ寄託物ノ返還ヲ拒ミ得ル…。」
判旨:「民法第665条ニ依リ寄託ニ準用サルヘキ同法第648条第2項ニ所謂「受任者カ報酬ヲ受クヘキ場合ニ於テハ委任履行ノ後ニアラサレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス」トハ受任者カ其委任セラレタル法律行為ヲ為シタル後仮令ヘハ売買契約締結ノ委任ヲ受ケタル場合ニ於テハ第三者ト其売買ヲ締結シタル後ナラサレハ報酬ヲ請求シ得サルトノ趣旨ニシテ委任者ニ対スル一切ノ義務ヲ履行シタル後ニアラサレハ其請求ヲ為シ得サルトノ趣旨ニアラス而シテ委任者カ受任者ニ対スル報酬支払義務ノ履行ト受任者カ委任者ニ対スル義務ノ履行トニ関シテハ双務契約ニ関スル法則ニ従ヒ委任者カ其義務ニ属スル報酬ヲ提供スルマテハ自己カ委任者ニ対シテ負担スル義務ノ履行ヲ拒ミ得ルモノニシテ従テ有償寄託ノ場合ニ於ケル受寄者モ寄託者カ其約シタル報酬ヲ提供スルマテハ寄託物ノ返還ヲ拒ミ得ル…。」
総合メモ
同時履行の抗弁権と履行の提供の継続及び引換給付判決 大判明治44年12月11日
概要
①双務契約の一方当事者が1度履行の提供をしたにすぎないときには、当該一方当事者が再度履行の提供をしなければ、相手方は同時履行の抗弁権を主張することができる。
②双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所は、引換給付判決をするべきである。
②双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所は、引換給付判決をするべきである。
判例
事案:①双務契約の一方当事者が一度履行の提供をした場合において、その後も相手方が同時履行の抗弁権を主張することができるかが問題となった。
②双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所が引換給付判決をするべきであるかが問題となった。
判旨:①「法律カ双務契約当事者ノ一方ニ同時履行ノ抗弁権ヲ付与シタル所以ハ当事者双方ニ公平ナル結果ヲ得セシメントスル趣旨ニシテ若シ此抗弁権ヲ与ヘサラン乎一方ハ相手方ノ請求ニ応シ完全ノ履行ヲ為ササルヘカラサルニ拘ハラス相手方ハ無資力等ノ為メ遂ニ其債務ノ履行ヲ為ササルカ如キ場合ヲ生シ頗ル不公平ニ陥ルコトアルヘキカ故ニ此不公平ヲ除去セントノ趣旨ニ外ナラス果シテ然ラハ契約当事者ノ一方ハ相手方ノ債務履行ナキ間ハ仮令相手方カ過去ニ於テ一度履行ノ提供ヲ為シタルコトアル場合ニ於テモ尚右ノ抗弁権ニ依リ自己ノ債務ノ履行ヲ拒絶シ得ヘキモノト為ササルヘカラス何トナレハ若シ過去ニ於テ一度債務ノ履行ノ提供アリタルトキハ其提供ノ効果トシテ債権者ヲシテ永久ニ同時履行ノ抗弁権ヲ喪失セシムルモノトセハ例ヘハ其相手方カ提供後ニ至リ其債務ヲ履行スル資力ヲ失ヒタル場合ノ如キハ其無資力者ノ相手方ハ独リ其債務ヲ履行セサルヘカラサルニ拘ハラス無資力者ハ遂ニ其債務ヲ履行セサルカ如キ場合ヲ生シ公平ヲ維持スル能ハサルニ至レハナリ加之債務ノ履行ノ提供ナルモノハ債務者カ自己ノ負担シタル範囲ノ行為ヲ完了スルヲ以テ債権者ノ受領シ得ヘキヤ否ヤヲ問フノ要ナキヲ以テ債権者カ天災其他ノ不可抗力ニ因リ弁済ヲ受クル能ハサル場合ニ於テモ尚債務ノ履行ノ提供ハ完全ニ行ハルルモノナリ而シテ債務履行ノ提供ハ効果トシテ其相手方ノ前記抗弁権ヲ喪失セシムルモノトセハ此場合ニ於テモ尚ホ債権者ハ同時履行ノ抗弁権ヲ喪失スルモノナリト論結セサルヘカラサルモ斯ノ如キハ頗ル不公平ニ陥ルモノニシテ全ク民法第533条ノ精神ニ違背スルモノト為ササルヲ得ス要スルニ一旦履行ノ提供ヲ為シタル者ト雖モ其後ニ至リ相手方ニ対シ其相手方ノ債務ノ履行ヲ強要スルニ当リ其相手方カ同時履行ノ抗弁ヲ提出シタルトキハ直チニ自己ノ債務ノ履行ヲ提供スルカ又ハ自己ノ債務ノ履行ト交換的ニ相手方ノ債務ノ履行ヲ求ムル趣旨ニ一定ノ申立ヲ更正スルカ何レカ其一ヲ為スニアラサルヨリハ其請求ハ到底排斥ヲ免レサルモノナリ…。」
②「同時履行ノ抗弁提出セラレタルトキハ起訴者ハ自己ノ債務ノ履行ト引換ニ非サレハ相手方ノ債務ノ履行ヲ求ムルコトヲ得サル筋合ナルカ故ニ単純ニ相手方ノ債務ノ履行ヲ目的トスル其請求ノ全部ハ之ヲ認容スルコトヲ得スト雖モ自己ノ債務ノ履行ト引換ニ相手方ヲシテ其債務ノ履行ヲ為サシムルコトハ其請求中ニ包含セラルルモノト認メ得ヘキヲ以テ裁判所ハ此ノ如キ場合ニ於テハ起訴者ノ請求ヲ全部排斥スルコトナク双方債務ノ履行ヲ引換ニテ相手方ニ其履行ヲ命スル所ノ裁判ヲ為スヲ至当トス。」
②双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所が引換給付判決をするべきであるかが問題となった。
判旨:①「法律カ双務契約当事者ノ一方ニ同時履行ノ抗弁権ヲ付与シタル所以ハ当事者双方ニ公平ナル結果ヲ得セシメントスル趣旨ニシテ若シ此抗弁権ヲ与ヘサラン乎一方ハ相手方ノ請求ニ応シ完全ノ履行ヲ為ササルヘカラサルニ拘ハラス相手方ハ無資力等ノ為メ遂ニ其債務ノ履行ヲ為ササルカ如キ場合ヲ生シ頗ル不公平ニ陥ルコトアルヘキカ故ニ此不公平ヲ除去セントノ趣旨ニ外ナラス果シテ然ラハ契約当事者ノ一方ハ相手方ノ債務履行ナキ間ハ仮令相手方カ過去ニ於テ一度履行ノ提供ヲ為シタルコトアル場合ニ於テモ尚右ノ抗弁権ニ依リ自己ノ債務ノ履行ヲ拒絶シ得ヘキモノト為ササルヘカラス何トナレハ若シ過去ニ於テ一度債務ノ履行ノ提供アリタルトキハ其提供ノ効果トシテ債権者ヲシテ永久ニ同時履行ノ抗弁権ヲ喪失セシムルモノトセハ例ヘハ其相手方カ提供後ニ至リ其債務ヲ履行スル資力ヲ失ヒタル場合ノ如キハ其無資力者ノ相手方ハ独リ其債務ヲ履行セサルヘカラサルニ拘ハラス無資力者ハ遂ニ其債務ヲ履行セサルカ如キ場合ヲ生シ公平ヲ維持スル能ハサルニ至レハナリ加之債務ノ履行ノ提供ナルモノハ債務者カ自己ノ負担シタル範囲ノ行為ヲ完了スルヲ以テ債権者ノ受領シ得ヘキヤ否ヤヲ問フノ要ナキヲ以テ債権者カ天災其他ノ不可抗力ニ因リ弁済ヲ受クル能ハサル場合ニ於テモ尚債務ノ履行ノ提供ハ完全ニ行ハルルモノナリ而シテ債務履行ノ提供ハ効果トシテ其相手方ノ前記抗弁権ヲ喪失セシムルモノトセハ此場合ニ於テモ尚ホ債権者ハ同時履行ノ抗弁権ヲ喪失スルモノナリト論結セサルヘカラサルモ斯ノ如キハ頗ル不公平ニ陥ルモノニシテ全ク民法第533条ノ精神ニ違背スルモノト為ササルヲ得ス要スルニ一旦履行ノ提供ヲ為シタル者ト雖モ其後ニ至リ相手方ニ対シ其相手方ノ債務ノ履行ヲ強要スルニ当リ其相手方カ同時履行ノ抗弁ヲ提出シタルトキハ直チニ自己ノ債務ノ履行ヲ提供スルカ又ハ自己ノ債務ノ履行ト交換的ニ相手方ノ債務ノ履行ヲ求ムル趣旨ニ一定ノ申立ヲ更正スルカ何レカ其一ヲ為スニアラサルヨリハ其請求ハ到底排斥ヲ免レサルモノナリ…。」
②「同時履行ノ抗弁提出セラレタルトキハ起訴者ハ自己ノ債務ノ履行ト引換ニ非サレハ相手方ノ債務ノ履行ヲ求ムルコトヲ得サル筋合ナルカ故ニ単純ニ相手方ノ債務ノ履行ヲ目的トスル其請求ノ全部ハ之ヲ認容スルコトヲ得スト雖モ自己ノ債務ノ履行ト引換ニ相手方ヲシテ其債務ノ履行ヲ為サシムルコトハ其請求中ニ包含セラルルモノト認メ得ヘキヲ以テ裁判所ハ此ノ如キ場合ニ於テハ起訴者ノ請求ヲ全部排斥スルコトナク双方債務ノ履行ヲ引換ニテ相手方ニ其履行ヲ命スル所ノ裁判ヲ為スヲ至当トス。」
過去問・解説
(H19 司法 第22問 オ)
Aは、Bに対し甲動産を売却したが、Bが代金を支払わないので、Aは、その支払を求めて訴えを提起した。Bによる同時履行の抗弁の主張が認められる場合、Bは、Aに対し、Aから甲動産の引渡しを受けるのと引換えに代金を支払うべき旨が、判決主文に記載されなければならない。
Aは、Bに対し甲動産を売却したが、Bが代金を支払わないので、Aは、その支払を求めて訴えを提起した。Bによる同時履行の抗弁の主張が認められる場合、Bは、Aに対し、Aから甲動産の引渡しを受けるのと引換えに代金を支払うべき旨が、判決主文に記載されなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所は、引換給付判決をするべきである旨判示している。したがって、Bによる同時履行の抗弁の主張が認められる場合、Bは、Aに対し、Aから甲動産の引渡しを受けるのと引換えに代金を支払うべき旨が、判決主文に記載されなければならない。
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所は、引換給付判決をするべきである旨判示している。したがって、Bによる同時履行の抗弁の主張が認められる場合、Bは、Aに対し、Aから甲動産の引渡しを受けるのと引換えに代金を支払うべき旨が、判決主文に記載されなければならない。
(H20 司法 第10問 オ)
甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟において、甲土地の造成工事をしたBは、この工事に基づく請負代金債権の弁済がない事実を主張立証すれば、請求棄却の判決を得ることができる。
甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟において、甲土地の造成工事をしたBは、この工事に基づく請負代金債権の弁済がない事実を主張立証すれば、請求棄却の判決を得ることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が1度履行の提供をしたにすぎないときには、当該一方当事者が再度履行の提供をしなければ、相手方は同時履行の抗弁権を主張することができる旨判示している。本肢においては、甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟において、甲土地の造成工事をしたBは、この工事に基づく請負代金債権の弁済がない事実を主張立証すると、同時履行の抗弁権の成立が認められることとなる。そうすると、引換給付判決がなされることとなり、請求棄却判決を得ることはできない。
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が1度履行の提供をしたにすぎないときには、当該一方当事者が再度履行の提供をしなければ、相手方は同時履行の抗弁権を主張することができる旨判示している。本肢においては、甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟において、甲土地の造成工事をしたBは、この工事に基づく請負代金債権の弁済がない事実を主張立証すると、同時履行の抗弁権の成立が認められることとなる。そうすると、引換給付判決がなされることとなり、請求棄却判決を得ることはできない。
(H26 司法 第16問 エ)
売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが、買主がその受領を拒んだ場合には、その1週間後に売主が買主に対してワインの代金の支払を求めてきたときであっても、買主は、ワインの引渡しとの同時履行の抗弁を主張することができない。
売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが、買主がその受領を拒んだ場合には、その1週間後に売主が買主に対してワインの代金の支払を求めてきたときであっても、買主は、ワインの引渡しとの同時履行の抗弁を主張することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が1度履行の提供をしたにすぎないときには、当該一方当事者が再度履行の提供をしなければ、相手方は同時履行の抗弁権を主張することができる旨判示している。したがって、売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが、買主がその受領を拒んだ場合であっても、その1週間後に売主が買主に対してワインの代金の支払を求めてきたとき、買主は、ワインの引渡しとの同時履行の抗弁を主張することができる。
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が1度履行の提供をしたにすぎないときには、当該一方当事者が再度履行の提供をしなければ、相手方は同時履行の抗弁権を主張することができる旨判示している。したがって、売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが、買主がその受領を拒んだ場合であっても、その1週間後に売主が買主に対してワインの代金の支払を求めてきたとき、買主は、ワインの引渡しとの同時履行の抗弁を主張することができる。
(H27 予備 第11問 エ)
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。AがBに対して宝石代金の支払を求める訴えを提起した場合、Bの同時履行の抗弁が認められるときは、Aの請求は全部棄却される。
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。AがBに対して宝石代金の支払を求める訴えを提起した場合、Bの同時履行の抗弁が認められるときは、Aの請求は全部棄却される。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所は、引換給付判決をするべきである旨判示している。したがって、AがBに対して宝石代金の支払を求める訴えを提起した場合において、Bの同時履行の抗弁が認められるときは、Aの請求は全部棄却されず、引換給付判決がなされる。
判例(大判明44.12.11)は、双務契約の一方当事者が債務の履行を請求した場合において、相手方当事者の同時履行の抗弁が認められるときには、裁判所は、引換給付判決をするべきである旨判示している。したがって、AがBに対して宝石代金の支払を求める訴えを提起した場合において、Bの同時履行の抗弁が認められるときは、Aの請求は全部棄却されず、引換給付判決がなされる。
総合メモ
売主の所有権移転登記義務と買主の代金支払義務の同時履行 大判大正7年8月14日
概要
不動産売買において、売主の所有権移転登記義務と買主の代金支払義務とは同時履行の関係にある。
判例
事案:売主の所有権移転登記義務と買主の代金支払義務が、同時履行の関係にあるかが問題となった。
判旨:「按スルニ不動産ノ売買ニ付其登記ヲ為ストキハ買主ハ其所有権取得ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得ヘク其引渡ヲ受クル以前ニ在テモ之ヲ処分スルコトヲ得ヘキヲ以テ例ヘハ売買ノ目的物タル土地ノ境界カ判然セサル等ノ如キ特別ノ事情アルトキ又ハ特約アルトキハ登記ヲ為スモ売主カ目的物ノ引渡ヲ為ス迄ハ買主ニ於テ代金ノ支払ヲ拒ムコトヲ得ヘシト雖モ如上ノ事情存セサルトキハ売買ノ登記ヲ為スト同時ニ買主ハ代金ノ支払ヲ為スヘキモノニシテ売主カ目的物ヲ引渡ササルコトヲ理由トシテ代金ノ支払ヲ拒ムコトヲ得サルヤ当然ノ事理ナリトス。」
判旨:「按スルニ不動産ノ売買ニ付其登記ヲ為ストキハ買主ハ其所有権取得ヲ第三者ニ対抗スルコトヲ得ヘク其引渡ヲ受クル以前ニ在テモ之ヲ処分スルコトヲ得ヘキヲ以テ例ヘハ売買ノ目的物タル土地ノ境界カ判然セサル等ノ如キ特別ノ事情アルトキ又ハ特約アルトキハ登記ヲ為スモ売主カ目的物ノ引渡ヲ為ス迄ハ買主ニ於テ代金ノ支払ヲ拒ムコトヲ得ヘシト雖モ如上ノ事情存セサルトキハ売買ノ登記ヲ為スト同時ニ買主ハ代金ノ支払ヲ為スヘキモノニシテ売主カ目的物ヲ引渡ササルコトヲ理由トシテ代金ノ支払ヲ拒ムコトヲ得サルヤ当然ノ事理ナリトス。」
総合メモ
建物買取請求権と同時履行の抗弁権 大判昭和18年2月18日
概要
建物買取請求権を行使した賃借人は、同時履行の抗弁権又は留置権により、賃貸人が建物代金を支払うまでの間、建物が存する土地の明渡しを拒絶することができる。
判例
事案:建物買取請求権を行使した賃借人は、同時履行の抗弁権又は留置権により、賃貸人が建物代金を支払うまでの間、建物が存する土地の明渡しを拒絶することができるかが問題となった。
判旨:「自己カ所有権又ハ借地権ヲ有スル土地ノ上ニ存スル建物ヲ売渡シタル場合ニ於ケル売主ノ法律上ノ地位権能ノ解釈トシテハ正当ナランモ本件ニ於テハ土地ノ賃借権ハ賃借期間満了ニ依リ消滅シ賃借人タリシ上告人ハ最早該土地ニ付之ヲ占有スル権原ナキニ至リタルモ地上建物ノ買取請求ヲ為シタル為同時履行ノ抗弁又ハ留置権ニ依リ土地賃貸人タル被上告人カ右建物ノ代金ノ支払ヲ為スマデ建物ノ引渡ヲ拒絶シ之ヲ占有スル必要上其ノ敷地(本件土地)ノ占有ヲモ為スモノニシテ被上告人ハ之カ為自己ノ所有土地ノ利用ヲ妨ゲラレ損失ヲ蒙ル結果ト為ルモノトス。」
判旨:「自己カ所有権又ハ借地権ヲ有スル土地ノ上ニ存スル建物ヲ売渡シタル場合ニ於ケル売主ノ法律上ノ地位権能ノ解釈トシテハ正当ナランモ本件ニ於テハ土地ノ賃借権ハ賃借期間満了ニ依リ消滅シ賃借人タリシ上告人ハ最早該土地ニ付之ヲ占有スル権原ナキニ至リタルモ地上建物ノ買取請求ヲ為シタル為同時履行ノ抗弁又ハ留置権ニ依リ土地賃貸人タル被上告人カ右建物ノ代金ノ支払ヲ為スマデ建物ノ引渡ヲ拒絶シ之ヲ占有スル必要上其ノ敷地(本件土地)ノ占有ヲモ為スモノニシテ被上告人ハ之カ為自己ノ所有土地ノ利用ヲ妨ゲラレ損失ヲ蒙ル結果ト為ルモノトス。」
総合メモ
催告期間経過後の弁済の提供と解除権の行使 大判大正6年7月10日
概要
解除権の発生後、解除権の行使前に債務の履行がなされた場合は、債権者は原則として当該債務の履行を拒絶することはできず、解除権を行使することができなくなる。
判例
事案:解除権の発生後、解除権の行使前に債務の履行がなされた場合において、債権者が当該債務の履行を拒絶して、解除権を行使することができるかが問題となった。
判旨:「民法第541条ノ規定ニ従ヒ相当ノ期間ヲ定メテ債務ノ履行ヲ催告シタル場合ニ於テ若シ其期間内ニ履行ナキトキハ茲ニ解除権ヲ発生スルニ止マリ其解除権ノ行使ナキ間ハ契約ハ尚ホ依然トシテ存続スルヲ原則トスルヲ以テ其期間内ニ履行ナキノ一事ヲ以テ当然解除セラルヘキ特別ノ事由ナキ限リハ債権者ハ尚ホ債務ノ履行ヲ請求スルコトヲ得ルト同時ニ債務者モ亦其債務ヲ履行スルコトヲ妨ケサルモノト謂ハサル可カラス故ニ原則トシテハ其期間経過後解除権行使前ニ於ケル債務ノ履行ハ債権者之ヲ拒ムコトヲ得サルモノニシテ既ニ其履行アリタルトキハ解除権ヲ行使スルコトヲ得サルモノト解スルヲ当然トス。」
判旨:「民法第541条ノ規定ニ従ヒ相当ノ期間ヲ定メテ債務ノ履行ヲ催告シタル場合ニ於テ若シ其期間内ニ履行ナキトキハ茲ニ解除権ヲ発生スルニ止マリ其解除権ノ行使ナキ間ハ契約ハ尚ホ依然トシテ存続スルヲ原則トスルヲ以テ其期間内ニ履行ナキノ一事ヲ以テ当然解除セラルヘキ特別ノ事由ナキ限リハ債権者ハ尚ホ債務ノ履行ヲ請求スルコトヲ得ルト同時ニ債務者モ亦其債務ヲ履行スルコトヲ妨ケサルモノト謂ハサル可カラス故ニ原則トシテハ其期間経過後解除権行使前ニ於ケル債務ノ履行ハ債権者之ヲ拒ムコトヲ得サルモノニシテ既ニ其履行アリタルトキハ解除権ヲ行使スルコトヲ得サルモノト解スルヲ当然トス。」
過去問・解説
(H18 司法 第27問 イ)
売主が、売買目的物の引渡しの提供をした上、相当期間を定めて代金の支払を催告した場合、催告期間の経過後、解除権行使前に、買主から弁済の提供を受けたとしても、売主は、これを拒絶して解除権を行使することができる。
売主が、売買目的物の引渡しの提供をした上、相当期間を定めて代金の支払を催告した場合、催告期間の経過後、解除権行使前に、買主から弁済の提供を受けたとしても、売主は、これを拒絶して解除権を行使することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大6.7.10)は、解除権の発生後、解除権の行使前に債務の履行がなされた場合は、債権者は原則として当該債務の履行を拒絶することはできず、解除権を行使することができなくなる旨判示している。したがって、売主が、売買目的物の引渡しの提供をした上、相当期間を定めて代金の支払を催告した場合において、催告期間の経過後、解除権行使前に、買主から弁済の提供を受けたときは、売主は、これを拒絶して解除権を行使することができない。
判例(大判大6.7.10)は、解除権の発生後、解除権の行使前に債務の履行がなされた場合は、債権者は原則として当該債務の履行を拒絶することはできず、解除権を行使することができなくなる旨判示している。したがって、売主が、売買目的物の引渡しの提供をした上、相当期間を定めて代金の支払を催告した場合において、催告期間の経過後、解除権行使前に、買主から弁済の提供を受けたときは、売主は、これを拒絶して解除権を行使することができない。
(H29 共通 第24問 オ)
買主の債務不履行を理由に売主が解除権を取得したとしても、その解除権の行使前に買主がその債務を履行したときは、売主は、その解除権を行使することができない。
買主の債務不履行を理由に売主が解除権を取得したとしても、その解除権の行使前に買主がその債務を履行したときは、売主は、その解除権を行使することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大6.7.10)は、解除権の発生後、解除権の行使前に債務の履行がなされた場合は、債権者は原則として当該債務の履行を拒絶することはできず、解除権を行使することができなくなる旨判示している。
判例(大判大6.7.10)は、解除権の発生後、解除権の行使前に債務の履行がなされた場合は、債権者は原則として当該債務の履行を拒絶することはできず、解除権を行使することができなくなる旨判示している。
総合メモ
未成年者の契約取消しによる原状回復義務に同時履行の関係が認められるか 最三小判昭和28年6月16日
概要
未成年者の契約取消しにより当該契約の当事者が互いに負う原状回復義務については、533条が準用され、同時履行の関係となる。
判例
事案:未成年者の契約取消しにより契約の両当事者が原状回復義務を負う場合において、当該原状回復義務につき同時履行の関係が認められるかが問題となった。
判旨:「未成年者の取消については原審のいう如く契約解除による原状回復義務に関する民法546条に準じ同法533条の準用あるものと解するを相当とする。蓋し公平の観念上解除の場合と区別すべき理由がないからである。未成年者の取消は特に未成年者の利益を保護する為めのものであるから、未成年者に対しては相手方は同時履行の抗弁を主張し得ないものであるとする考え方もないではない。しかし未成年者は随意に一方的に取消し得るのであり、しかも現存利益だけの返還をすればいいのであるから、これによつて十分の保護を受けて居るのである。これに反し相手方は取消されるか否か全く未成年者の意思に任されて居り非常に不利益な位地にあるのであるから、それ以上更に先履行の不利益を与えて迄未成年者に不公平な利益を与える必要ありとはいえない。」
判旨:「未成年者の取消については原審のいう如く契約解除による原状回復義務に関する民法546条に準じ同法533条の準用あるものと解するを相当とする。蓋し公平の観念上解除の場合と区別すべき理由がないからである。未成年者の取消は特に未成年者の利益を保護する為めのものであるから、未成年者に対しては相手方は同時履行の抗弁を主張し得ないものであるとする考え方もないではない。しかし未成年者は随意に一方的に取消し得るのであり、しかも現存利益だけの返還をすればいいのであるから、これによつて十分の保護を受けて居るのである。これに反し相手方は取消されるか否か全く未成年者の意思に任されて居り非常に不利益な位地にあるのであるから、それ以上更に先履行の不利益を与えて迄未成年者に不公平な利益を与える必要ありとはいえない。」
総合メモ
造作買取請求権と留置権・同時履行の抗弁権 最一小判昭和29年7月22日
過去問・解説
(H24 司法 第24問 エ)
建物の賃借人が造作買取請求権の行使をした場合、賃貸人の造作代金支払債務と賃借人の建物引渡債務は、同時履行の関係にある。
建物の賃借人が造作買取請求権の行使をした場合、賃貸人の造作代金支払債務と賃借人の建物引渡債務は、同時履行の関係にある。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭29.7.22)は、造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権で、建物に関して生じた債権ではないから、賃貸人の造作代金支払債務と賃借人の建物明渡債務は、同時履行の関係とならない旨判示している。
判例(最判昭29.7.22)は、造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権で、建物に関して生じた債権ではないから、賃貸人の造作代金支払債務と賃借人の建物明渡債務は、同時履行の関係とならない旨判示している。
(R1 司法 第22問 ウ)
建物賃貸借契約が終了し賃借人が造作買取請求権を行使した場合、賃貸人の造作買取代金支払義務と賃借人の建物明渡義務とは、同時履行の関係にある。
建物賃貸借契約が終了し賃借人が造作買取請求権を行使した場合、賃貸人の造作買取代金支払義務と賃借人の建物明渡義務とは、同時履行の関係にある。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭29.7.22)は、造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権で、建物に関して生じた債権ではないから、賃貸人の造作代金支払債務と賃借人の建物明渡債務は、同時履行の関係とならない旨判示している。
判例(最判昭29.7.22)は、造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権で、建物に関して生じた債権ではないから、賃貸人の造作代金支払債務と賃借人の建物明渡債務は、同時履行の関係とならない旨判示している。
総合メモ
履行の提供と同時履行の抗弁権の消滅 最一小判昭和34年5月14日
総合メモ
債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還との同時履行関係の有無 最一小判平成6年9月8日
過去問・解説
(H27 司法 第14問 ア)
不動産が譲渡担保の目的とされ、譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において、譲渡担保権の設定者は、その譲渡担保権に係る債務の弁済と、その不動産の譲渡担保権者から譲渡担保権の設定者への所有権移転登記手続との同時履行を主張することができない。
不動産が譲渡担保の目的とされ、譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において、譲渡担保権の設定者は、その譲渡担保権に係る債務の弁済と、その不動産の譲渡担保権者から譲渡担保権の設定者への所有権移転登記手続との同時履行を主張することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平6.9.8)は、「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。したがって、不動産が譲渡担保の目的とされ、譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において、譲渡担保権の設定者は、その譲渡担保権に係る債務の弁済と、その不動産の譲渡担保権者から譲渡担保権の設定者への所有権移転登記手続との同時履行を主張することができない。
判例(最判平6.9.8)は、「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。したがって、不動産が譲渡担保の目的とされ、譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において、譲渡担保権の設定者は、その譲渡担保権に係る債務の弁済と、その不動産の譲渡担保権者から譲渡担保権の設定者への所有権移転登記手続との同時履行を主張することができない。
(R2 共通 第14問 イ)
所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは、その債務の弁済をする場合、債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。
所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは、その債務の弁済をする場合、債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平6.9.8)は、「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。したがって、所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは、その債務の弁済をする場合、債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。
判例(最判平6.9.8)は、「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。したがって、所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは、その債務の弁済をする場合、債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。
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代物弁済と原債権の解除による遡及効 最三小判昭和60年12月20日
概要
原債権の発生原因となっている契約が解除された場合、原債権は遡及的に消滅するから、代物弁済による目的物の所有権の移転の効果も遡って失われることになる。
判例
事案:原債権の発生原因となっている契約が解除された場合において、代物弁済による目的物の所有権移転の効果が遡及的に失われるかが問題となった。
判旨:「本件代物弁済契約は、本件賃借権譲渡契約に基づく譲渡代金債務の一部の支払に代える目的でされたものであることが明らかであり、右譲渡契約は、被上告人のした右解除の意思表示により適法に解除され、これによって右譲渡代金債務は遡及的に消滅し、代物弁済契約による本件不動産の所有権移転の効果も遡って失われたものというべきである。」
判旨:「本件代物弁済契約は、本件賃借権譲渡契約に基づく譲渡代金債務の一部の支払に代える目的でされたものであることが明らかであり、右譲渡契約は、被上告人のした右解除の意思表示により適法に解除され、これによって右譲渡代金債務は遡及的に消滅し、代物弁済契約による本件不動産の所有権移転の効果も遡って失われたものというべきである。」
過去問・解説
(H29 司法 第22問 エ)
AのBに対する1000万円の債務(以下「本件債務」という。)について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をした。代物弁済がされて一旦甲土地の所有権がBに移転した後、本件債務の発生原因となった契約が解除された場合でも、甲土地の所有権はBに帰属する。
AのBに対する1000万円の債務(以下「本件債務」という。)について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をした。代物弁済がされて一旦甲土地の所有権がBに移転した後、本件債務の発生原因となった契約が解除された場合でも、甲土地の所有権はBに帰属する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭60.12.20)は、原債権の発生原因となっている契約が解除された場合、原債権は遡及的に消滅するから、代物弁済による目的物の所有権の移転の効果も遡って失われることになる旨判示している。したがって、本件債務について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をし、代物弁済がされて一旦甲土地の所有権がBに移転した後、本件債務の発生原因となった契約が解除された場合、当該代物弁済による甲土地の所有権のBへの移転の効果は遡って失われることになるから、甲土地の所有権はBに帰属せず、Aに帰属することとなる。
判例(最判昭60.12.20)は、原債権の発生原因となっている契約が解除された場合、原債権は遡及的に消滅するから、代物弁済による目的物の所有権の移転の効果も遡って失われることになる旨判示している。したがって、本件債務について、AB間でA所有の甲土地で代物弁済をする合意をし、代物弁済がされて一旦甲土地の所有権がBに移転した後、本件債務の発生原因となった契約が解除された場合、当該代物弁済による甲土地の所有権のBへの移転の効果は遡って失われることになるから、甲土地の所有権はBに帰属せず、Aに帰属することとなる。
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履行遅滞にする催告と解除権を行使するための催告を二重にする必要があるか 大判大正6年6月27日
概要
期限の定めのない債務の履行遅滞を理由に、債権者が催告による解除(541条)をする場合においては、期限の定めのない債務を履行遅滞に陥らせるための「履行の請求」(412条3項)をすれば足り、その後更に、解除権を発生させるための「履行の催告」(541条)をする必要はない。
判例
事案:債権者が、541条の催告による解除をする場合において、期限の定めのない債務を履行遅滞に陥らせるための「履行の請求」(412条3項)をした後、改めて解除権を行使するための「履行の催告」(541条)をする必要があるかが問題となった。
判旨:「債権者カ民法第541条ニ依リ契約ノ解除権ヲ有スルニハ債務ノ不履行即チ債務者ノ付遅滞ヲ前提トスヘキハ勿論ナリト雖モ履行期ノ定メナキ債務ニ在リテハ債務者ヲ遅滞ニ付スルカ為メノ催告ヲ為シタル後更ニ同条所定ノ催告ヲ為スコトヲ要スルモノニ非スシテ債務者カ其過失ニ因ルト否トヲ問ハス債務ヲ履行セサルニ当リ債務者ハ相当ノ期間ヲ定メテ履行ヲ催告シ遅滞ニ付スルト同時ニ其期間内ニ履行ナキトキニ契約ヲ解除シ得ルモノト解スルヲ相当トス蓋シ履行期ノ定メナキ債務ハ契約成立ト同時ニ履行期ニアルモノニシテ債務者ニ履行遅滞ノ責ヲ負ハシムルニハ債権者ノ履行催告ヲ必要ト為スニ止ルモノナレハ債権者カ履行ノ準備ニ要スル期間ヲ定メテ催告ヲ為シ其催告ノ債務者ニ到達シタル以上ハ其日ヨリ債務者ノ遅滞始マリ債務者ハ其期間内ニ債務ヲ履行シ又ハ履行セサルコトヲ得ヘク債務ヲ履行セスシテ期間ヲ経過セハ遅滞ノ効果ニ依リ契約ヲ解除セラルル結果ヲ見ルハ当然ニシテ必スシモ時ヲ異ニシテ2回ノ催告ヲ為スノ要ナシ。」
判旨:「債権者カ民法第541条ニ依リ契約ノ解除権ヲ有スルニハ債務ノ不履行即チ債務者ノ付遅滞ヲ前提トスヘキハ勿論ナリト雖モ履行期ノ定メナキ債務ニ在リテハ債務者ヲ遅滞ニ付スルカ為メノ催告ヲ為シタル後更ニ同条所定ノ催告ヲ為スコトヲ要スルモノニ非スシテ債務者カ其過失ニ因ルト否トヲ問ハス債務ヲ履行セサルニ当リ債務者ハ相当ノ期間ヲ定メテ履行ヲ催告シ遅滞ニ付スルト同時ニ其期間内ニ履行ナキトキニ契約ヲ解除シ得ルモノト解スルヲ相当トス蓋シ履行期ノ定メナキ債務ハ契約成立ト同時ニ履行期ニアルモノニシテ債務者ニ履行遅滞ノ責ヲ負ハシムルニハ債権者ノ履行催告ヲ必要ト為スニ止ルモノナレハ債権者カ履行ノ準備ニ要スル期間ヲ定メテ催告ヲ為シ其催告ノ債務者ニ到達シタル以上ハ其日ヨリ債務者ノ遅滞始マリ債務者ハ其期間内ニ債務ヲ履行シ又ハ履行セサルコトヲ得ヘク債務ヲ履行セスシテ期間ヲ経過セハ遅滞ノ効果ニ依リ契約ヲ解除セラルル結果ヲ見ルハ当然ニシテ必スシモ時ヲ異ニシテ2回ノ催告ヲ為スノ要ナシ。」
過去問・解説
(H25 司法 第20問 1)
解除の要件としての催告は、相手方が履行遅滞に陥った後にしなければならないから、期限の定めのない債務の履行遅滞を理由に契約を解除するには、あらかじめ履行の請求をすることによって当該債務を履行遅滞に陥れた後、改めてその履行の催告をする必要がある。
解除の要件としての催告は、相手方が履行遅滞に陥った後にしなければならないから、期限の定めのない債務の履行遅滞を理由に契約を解除するには、あらかじめ履行の請求をすることによって当該債務を履行遅滞に陥れた後、改めてその履行の催告をする必要がある。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大6.6.27)は、期限の定めのない債務の履行遅滞を理由に、債権者が催告による解除(541条)をする場合においては、期限の定めのない債務を履行遅滞に陥らせるための「履行の請求」(412条3項)をすれば足り、その後更に、解除権を発生させるための「履行の催告」(541条)をする必要はない旨判示している。したがって、期限の定めのない債務の履行遅滞を理由に契約を解除するには、あらかじめ履行の請求をすることによって当該債務を履行遅滞に陥れれば足り、改めてその履行の催告をする必要はない。
判例(大判大6.6.27)は、期限の定めのない債務の履行遅滞を理由に、債権者が催告による解除(541条)をする場合においては、期限の定めのない債務を履行遅滞に陥らせるための「履行の請求」(412条3項)をすれば足り、その後更に、解除権を発生させるための「履行の催告」(541条)をする必要はない旨判示している。したがって、期限の定めのない債務の履行遅滞を理由に契約を解除するには、あらかじめ履行の請求をすることによって当該債務を履行遅滞に陥れれば足り、改めてその履行の催告をする必要はない。
総合メモ
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務と同時履行 最一小判昭和47年9月7日
概要
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある。
判例
事案:売買契約が詐欺を理由として取り消された場合において、当事者双方の原状回復義務が、同時履行の関係にあるかどうかが問題となった。
判旨:「右売買契約は、…Aの取消の意思表示により有効に取り消されたのであるから、原状に回復するため、Bは、Aに対し、本件(1)の土地について右仮登記の抹消登記手続を、本件(2)の土地についてAへ所有権移転登記手続をそれぞれなすべき義務があり、また、Aは、Bに対し、右100万円の返還義務を負うものであるところ、A、Bの右各義務は、民法533条の類推適用により同時履行の関係にあると解すべきであって、Bは、Aから100万円の支払を受けるのと引き換えに右各登記手続をなすべき義務がある…。」
判旨:「右売買契約は、…Aの取消の意思表示により有効に取り消されたのであるから、原状に回復するため、Bは、Aに対し、本件(1)の土地について右仮登記の抹消登記手続を、本件(2)の土地についてAへ所有権移転登記手続をそれぞれなすべき義務があり、また、Aは、Bに対し、右100万円の返還義務を負うものであるところ、A、Bの右各義務は、民法533条の類推適用により同時履行の関係にあると解すべきであって、Bは、Aから100万円の支払を受けるのと引き換えに右各登記手続をなすべき義務がある…。」
過去問・解説
(H24 司法 第24問 ア)
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合において、相互に返還されるべき給付は、同時履行の関係にある。
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合において、相互に返還されるべき給付は、同時履行の関係にある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭47.9.7)は、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。
判例(最判昭47.9.7)は、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。
(H27 予備 第11問 ア)
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。A及びBが各自の債務を履行した後に、第三者Cの詐欺を理由としてBがAB間の売買契約を取り消した場合、AのBに対する宝石代金の返還債務とBのAに対する宝石の返還債務とは、同時履行の関係にある。
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。A及びBが各自の債務を履行した後に、第三者Cの詐欺を理由としてBがAB間の売買契約を取り消した場合、AのBに対する宝石代金の返還債務とBのAに対する宝石の返還債務とは、同時履行の関係にある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭47.9.7)は、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。したがって、A及びBが各自の債務を履行した後に、第三者Cの詐欺を理由としてBがAB間の売買契約を取り消した場合、AのBに対する宝石代金の返還債務とBのAに対する宝石の返還債務とは、同時履行の関係にある。
判例(最判昭47.9.7)は、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。したがって、A及びBが各自の債務を履行した後に、第三者Cの詐欺を理由としてBがAB間の売買契約を取り消した場合、AのBに対する宝石代金の返還債務とBのAに対する宝石の返還債務とは、同時履行の関係にある。
(R2 司法 第23問 ア)
AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された。売買契約において、Aが甲を引き渡した日から1か月後にBが代金を支払うことが定められていた場合であっても、A及びBの債務の履行後に第三者Cの詐欺を理由として契約が取り消されたときの双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。
AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された。売買契約において、Aが甲を引き渡した日から1か月後にBが代金を支払うことが定められていた場合であっても、A及びBの債務の履行後に第三者Cの詐欺を理由として契約が取り消されたときの双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭47.9.7)は、本肢と同種の事案において、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。したがって、A及びBの債務の履行後に第三者Cの詐欺を理由として契約が取り消されたときの双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。
判例(最判昭47.9.7)は、本肢と同種の事案において、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。したがって、A及びBの債務の履行後に第三者Cの詐欺を理由として契約が取り消されたときの双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。
(R5 司法 第23問 エ)
不動産の売買契約の履行として売主への代金の支払と買主への所有権移転登記がされた後、売主が第三者の詐欺を理由として売買契約を取り消した場合、代金返還義務と所有権移転登記の抹消登記手続義務とは、同時履行の関係にある。
不動産の売買契約の履行として売主への代金の支払と買主への所有権移転登記がされた後、売主が第三者の詐欺を理由として売買契約を取り消した場合、代金返還義務と所有権移転登記の抹消登記手続義務とは、同時履行の関係にある。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭47.9.7)は、本肢と同種の事案において、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。したがって、不動産の売買契約の履行として売主への代金の支払と買主への所有権移転登記がされた後、売主が第三者の詐欺を理由として売買契約を取り消した場合、代金返還義務と所有権移転登記の抹消登記手続義務とは、同時履行の関係にある。
判例(最判昭47.9.7)は、本肢と同種の事案において、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、533条の類推適用により、同時履行の関係にある旨判示している。したがって、不動産の売買契約の履行として売主への代金の支払と買主への所有権移転登記がされた後、売主が第三者の詐欺を理由として売買契約を取り消した場合、代金返還義務と所有権移転登記の抹消登記手続義務とは、同時履行の関係にある。
総合メモ
抵当債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続との同時履行関係の有無 最三小判昭和57年1月19日
過去問・解説
(H24 司法 第24問 イ)
金銭消費貸借契約に基づく貸金債務の弁済と当該債務の担保のためにされた抵当権設定登記の抹消登記手続は、同時履行の関係にある。
金銭消費貸借契約に基づく貸金債務の弁済と当該債務の担保のためにされた抵当権設定登記の抹消登記手続は、同時履行の関係にある。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.1.19)は、「債務の弁済と該債務担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、前者が後者に対し先履行の関係にあるものであって、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。
判例(最判昭57.1.19)は、「債務の弁済と該債務担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、前者が後者に対し先履行の関係にあるものであって、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。
(R3 共通 第13問 オ)
債務の弁済と、当該債務の担保として設定された抵当権の設定登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係に立つ。
債務の弁済と、当該債務の担保として設定された抵当権の設定登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係に立つ。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.1.19)は、「債務の弁済と該債務担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、前者が後者に対し先履行の関係にあるものであって、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。
判例(最判昭57.1.19)は、「債務の弁済と該債務担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、前者が後者に対し先履行の関係にあるものであって、同時履行の関係に立つものではないと解すべきである…。」と判示している。
総合メモ
諾約者が第三者に対して有する債権について債務免除をする契約と「第三者のためにする契約」 大判大正5年6月26日
概要
諾約者が第三者に対して有する債権について債務免除をする契約を締結した場合、受益者が受益の意思表示をすれば、債務免除の効力が生じる。
判例
事案:諾約者が第三者に対して有する債権について債務免除をする契約を締結した場合において、債務免除の効力が生じるためには、受益者による、受益の意思表示が必要かが問題となった。
判旨:「民法第537条ハ其明文上当事者ノ一方ニ於テ第三者ニ給付ヲ約シタル場合ノミニ付キ規定セルカ如シト雖法律カ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ノ第三者ニ対スル効力ヲ特ニ此場合ニノミ限定シタルモノト解スヘキ理由ナキカ故ニ当事者間ノ契約ニ於テ其一方カ第三者ニ対シテ有スル債権ヲ免除スルコトヲ約シタル場合ト雖亦其契約ハ有効ニシテ此場合ニ於テハ第三者ノ受益ノ意思表示アリタルトキヨリ免除ノ効力ヲ生スルモノト解スヘキモノトス蓋シ法律カ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ニ効力ヲ認メタル所以ノモノハ社会各般ノ取引上之ヲ必要トスルニ出テタルモノト為スヘキカ故ニ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ノ内容カ其給付タルト免除タルトニ於テ毫モ解釈ヲ異ニスヘキ理由ナケレハナリ。」
判旨:「民法第537条ハ其明文上当事者ノ一方ニ於テ第三者ニ給付ヲ約シタル場合ノミニ付キ規定セルカ如シト雖法律カ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ノ第三者ニ対スル効力ヲ特ニ此場合ニノミ限定シタルモノト解スヘキ理由ナキカ故ニ当事者間ノ契約ニ於テ其一方カ第三者ニ対シテ有スル債権ヲ免除スルコトヲ約シタル場合ト雖亦其契約ハ有効ニシテ此場合ニ於テハ第三者ノ受益ノ意思表示アリタルトキヨリ免除ノ効力ヲ生スルモノト解スヘキモノトス蓋シ法律カ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ニ効力ヲ認メタル所以ノモノハ社会各般ノ取引上之ヲ必要トスルニ出テタルモノト為スヘキカ故ニ第三者ノ利益ノ為メニスル契約ノ内容カ其給付タルト免除タルトニ於テ毫モ解釈ヲ異ニスヘキ理由ナケレハナリ。」
過去問・解説
(H18 司法 第23問 エ)
Aが宝石をBに売り、代金の支払に代えて、BがCに対して有する債権を放棄するとの契約を締結した場合、判例によると、Cが受益の意思表示をすれば、BのCに対する債務免除の意思表示を要せずに、Cの債務は消滅する。
Aが宝石をBに売り、代金の支払に代えて、BがCに対して有する債権を放棄するとの契約を締結した場合、判例によると、Cが受益の意思表示をすれば、BのCに対する債務免除の意思表示を要せずに、Cの債務は消滅する。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大5.6.26)は、本肢と同種の事案において、諾約者が第三者に対して有する債権について債務免除をする契約を締結した場合、受益者が受益の意思表示をすれば、債務免除の効力が生じる旨判示している。したがって、Aが宝石をBに売り、代金の支払に代えて、BがCに対して有する債権を放棄するとの契約を締結した場合、判例によると、Cが受益の意思表示をすれば、その時点で債務免除の効力が生じるから、BのCに対する債務免除の意思表示を要せずに、Cの債務は消滅する。
判例(大判大5.6.26)は、本肢と同種の事案において、諾約者が第三者に対して有する債権について債務免除をする契約を締結した場合、受益者が受益の意思表示をすれば、債務免除の効力が生じる旨判示している。したがって、Aが宝石をBに売り、代金の支払に代えて、BがCに対して有する債権を放棄するとの契約を締結した場合、判例によると、Cが受益の意思表示をすれば、その時点で債務免除の効力が生じるから、BのCに対する債務免除の意思表示を要せずに、Cの債務は消滅する。
総合メモ
第三者のためにする契約の受益の意思表示の代位行使 大判昭和16年9月30日
概要
第三者のためにする契約がされた場合における受益者の受益の意思表示は、当該受益者に対して債権を有する債権者が、自己の債権を保全するため、債権者代位により代位行使をすることができる。
判例
事案:第三者のためにする契約がされた場合において、受益者が受益の意思表示をしていないとき、当該受益者に対して債権を有する債権者が、当該受益の意思表示を代位行使することができるかが問題となった。
判旨:「第三者ノ為ニスル契約ニ付第三者カ諾約者ニ対シテ受益ノ意思表示ヲ為スコトヲ得ヘキ地位ハ一種ノ形成権ニ外ナラサルカ故ニ第三者ノ債権者カ自己ノ債権ヲ保全スル為メ第三者ニ属スル権利ヲ行使スル必要アル場合ニ於テハ第三者ニ代位シテ右受益ノ意思表示ヲ為シ得ルモノト解スルヲ相当トス。」
判旨:「第三者ノ為ニスル契約ニ付第三者カ諾約者ニ対シテ受益ノ意思表示ヲ為スコトヲ得ヘキ地位ハ一種ノ形成権ニ外ナラサルカ故ニ第三者ノ債権者カ自己ノ債権ヲ保全スル為メ第三者ニ属スル権利ヲ行使スル必要アル場合ニ於テハ第三者ニ代位シテ右受益ノ意思表示ヲ為シ得ルモノト解スルヲ相当トス。」
過去問・解説
(H28 司法 第23問 ウ)
Aは、Bとの間で、Aの所有する著名な陶芸家の銘が入った絵皿をBに300万円で売り、代金はBがCに支払うとの合意をした。Cに対して債権を有するDは、AB間の売買契約が締結された後、Cが受益の意思表示をせず、かつ無資力である場合には、Cに代位して受益の意思表示をすることができる。
Aは、Bとの間で、Aの所有する著名な陶芸家の銘が入った絵皿をBに300万円で売り、代金はBがCに支払うとの合意をした。Cに対して債権を有するDは、AB間の売買契約が締結された後、Cが受益の意思表示をせず、かつ無資力である場合には、Cに代位して受益の意思表示をすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(大判昭16.9.30)は、第三者のためにする契約がされた場合における受益者の受益の意思表示は、当該受益者に対して債権を有する債権者が、自己の債権を保全するため、債権者代位により代位行使をすることができる旨判示している。したがって、Cに対して債権を有するDは、AB間の売買契約が締結された後、Cが受益の意思表示をせず、かつ無資力である場合には、Cに代位して受益の意思表示をすることができる。
判例(大判昭16.9.30)は、第三者のためにする契約がされた場合における受益者の受益の意思表示は、当該受益者に対して債権を有する債権者が、自己の債権を保全するため、債権者代位により代位行使をすることができる旨判示している。したがって、Cに対して債権を有するDは、AB間の売買契約が締結された後、Cが受益の意思表示をせず、かつ無資力である場合には、Cに代位して受益の意思表示をすることができる。
総合メモ
期間内の履行と契約の解除 大判明治45年5月4日
概要
期間を定めて債務の履行を催告するのと同時に、その期間内に履行がないときは契約を解除する旨の意思表示をした場合には、その期間の経過によって解除権が発生すると同時に、改めて解除の意思表示を要することなく、解除の効果が発生する。
判例
事案:契約の一方当事者に債務不履行があった場合において、催告期間内に履行しなければ契約を解除する旨の意思表示を他方当事者がしたときは、その催告期間内に履行がなければ、改めて解除の意思表示をしなくても、解除の効果が発生するかが問題となった。
判旨:「期間ヲ定メテ契約履行ノ催告ヲ為スト同時ニ其期間内ニ履行ナキトキハ契約ヲ解除スル旨ノ意思表示ヲ為スハ法律ノ禁止スル所ニアラサレハ此場合ニハ其期間ノ経過ニ因リ契約解除権発生スルト同時ニ契約解除セラルルモノニシテ既ニ当院判例ノ存スル所ナリ(明治43年12月9日同年オ第294号事件判決)。」
判旨:「期間ヲ定メテ契約履行ノ催告ヲ為スト同時ニ其期間内ニ履行ナキトキハ契約ヲ解除スル旨ノ意思表示ヲ為スハ法律ノ禁止スル所ニアラサレハ此場合ニハ其期間ノ経過ニ因リ契約解除権発生スルト同時ニ契約解除セラルルモノニシテ既ニ当院判例ノ存スル所ナリ(明治43年12月9日同年オ第294号事件判決)。」
過去問・解説
(H24 共通 第6問 オ)
契約の一方当事者に債務不履行があった場合において、催告期間内に履行しなければ契約を解除する旨の意思表示を他方当事者がしたときは、その催告期間内に履行がなければ、改めて解除の意思表示をしなくても、解除の効果は発生する。
契約の一方当事者に債務不履行があった場合において、催告期間内に履行しなければ契約を解除する旨の意思表示を他方当事者がしたときは、その催告期間内に履行がなければ、改めて解除の意思表示をしなくても、解除の効果は発生する。
(正答)〇
(解説)
判例(大判明45.5.4)は、期間を定めて債務の履行を催告するのと同時に、その期間内に履行がないときは契約を解除する旨の意思表示をした場合には、その期間の経過によって解除権が発生すると同時に、改めて解除の意思表示を要することなく、解除の効果が発生する旨判示している。したがって、契約の一方当事者に債務不履行があった場合において、催告期間内に履行しなければ契約を解除する旨の意思表示を他方当事者がしたときは、その催告期間内に履行がなければ、改めて解除の意思表示をしなくても、解除の効果は発生する。
判例(大判明45.5.4)は、期間を定めて債務の履行を催告するのと同時に、その期間内に履行がないときは契約を解除する旨の意思表示をした場合には、その期間の経過によって解除権が発生すると同時に、改めて解除の意思表示を要することなく、解除の効果が発生する旨判示している。したがって、契約の一方当事者に債務不履行があった場合において、催告期間内に履行しなければ契約を解除する旨の意思表示を他方当事者がしたときは、その催告期間内に履行がなければ、改めて解除の意思表示をしなくても、解除の効果は発生する。
総合メモ
反対給付の提供をしないでした催告に基づく解除の効力 最三小判昭和29年7月27日
概要
契約当事者双方の給付が同時履行の関係にある場合、一方当事者が反対給付の履行の提供をしないでした催告は、相手方を履行遅滞に陥れさせることができず、当該催告に基づく契約解除は、その効力を生じない。
判例
事案:契約当事者双方の債務が同時履行の関係にある場合において、一方当事者が反対給付の履行の提供をしないで催告に基づく契約解除をした場合、当該解除が効力を生ずるかが問題となった。
判旨:「本件においては、売買の残代金支払と所有権移転登記、建物明渡並に動産引渡とは同時履行の関係にあるものと言うべきであり、反対給付の提供なき上告人の右残代金支払の催告は被上告人を遅滞に陥らしめるに足らず、従つてこの催告に基く解除は効力を生じ得ないものである。」
判旨:「本件においては、売買の残代金支払と所有権移転登記、建物明渡並に動産引渡とは同時履行の関係にあるものと言うべきであり、反対給付の提供なき上告人の右残代金支払の催告は被上告人を遅滞に陥らしめるに足らず、従つてこの催告に基く解除は効力を生じ得ないものである。」
過去問・解説
(H27 司法 第21問 ウ)
売買契約における双方の債務の履行期が同じである場合において、その履行期が経過したときであっても、一方の当事者は、自己の債務について弁済又はその提供をしなければ、債務不履行に基づく契約の解除をすることができない。
売買契約における双方の債務の履行期が同じである場合において、その履行期が経過したときであっても、一方の当事者は、自己の債務について弁済又はその提供をしなければ、債務不履行に基づく契約の解除をすることができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭29.7.27)は、契約当事者双方の給付が同時履行の関係にある場合、一方当事者が反対給付の履行の提供をしないでした催告は、相手方を履行遅滞に陥れさせることができず、当該催告に基づく契約解除は、その効力を生じない旨判示している。したがって、売買契約における双方の債務の履行期が同じである場合において、その履行期が経過したときであっても、一方の当事者は、自己の債務について弁済又はその提供をしなければ、債務不履行に基づく契約の解除をすることができない。
判例(最判昭29.7.27)は、契約当事者双方の給付が同時履行の関係にある場合、一方当事者が反対給付の履行の提供をしないでした催告は、相手方を履行遅滞に陥れさせることができず、当該催告に基づく契約解除は、その効力を生じない旨判示している。したがって、売買契約における双方の債務の履行期が同じである場合において、その履行期が経過したときであっても、一方の当事者は、自己の債務について弁済又はその提供をしなければ、債務不履行に基づく契約の解除をすることができない。
(H27 予備 第11問 オ)
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。BがAに対して宝石の引渡債務の履行遅滞に基づく損害賠償を求める訴えを提起した場合、Bが宝石の代金債務の弁済の提供をしていないときは、Bの請求は全部棄却される。
AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意された。BがAに対して宝石の引渡債務の履行遅滞に基づく損害賠償を求める訴えを提起した場合、Bが宝石の代金債務の弁済の提供をしていないときは、Bの請求は全部棄却される。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭29.7.27)は、「売買の残代金支払と…動産引渡とは同時履行の関係にあるものと言うべきであり、反対給付の提供なき上告人の右残代金支払の催告は被上告人を遅滞に陥らしめるに足ら」ないと判示している。本肢においては、AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意されているから、Aの宝石の引渡債務と、Bの宝石の代金債務とは、同時履行の関係にある。したがって、BがAに対して宝石の引渡債務の履行遅滞に基づく損害賠償を求める訴えを提起した場合において、Bが宝石の代金債務の弁済の提供をしていないときは、Aの宝石の引渡債務は未だ履行遅滞に陥っていないから、Bの請求は全部棄却される。
判例(最判昭29.7.27)は、「売買の残代金支払と…動産引渡とは同時履行の関係にあるものと言うべきであり、反対給付の提供なき上告人の右残代金支払の催告は被上告人を遅滞に陥らしめるに足ら」ないと判示している。本肢においては、AがA所有の宝石を代金100万円でBに売却した際、その宝石の代金債務と宝石の引渡債務の履行期を同一とすることがAB間で合意されているから、Aの宝石の引渡債務と、Bの宝石の代金債務とは、同時履行の関係にある。したがって、BがAに対して宝石の引渡債務の履行遅滞に基づく損害賠償を求める訴えを提起した場合において、Bが宝石の代金債務の弁済の提供をしていないときは、Aの宝石の引渡債務は未だ履行遅滞に陥っていないから、Bの請求は全部棄却される。
総合メモ
催告に際して履行がなければ解除する旨の通知の必要性 最一小判昭和48年4月19日
過去問・解説
(H29 共通 第24問 ウ)
売主が目的物を引き渡したが、買主が代金を履行期の経過後も支払わない場合において、売主が買主に対して相当の期間を定めて債務の履行の催告をしたとしても、売主がその催告に際して履行がなければ解除する旨の通知をしていないときは、売主は、相当期間の経過後も当該売買契約を解除することができない。
売主が目的物を引き渡したが、買主が代金を履行期の経過後も支払わない場合において、売主が買主に対して相当の期間を定めて債務の履行の催告をしたとしても、売主がその催告に際して履行がなければ解除する旨の通知をしていないときは、売主は、相当期間の経過後も当該売買契約を解除することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.4.19)は、「民法541条にいわゆる催告の内容は、一定期間内に履行すべき旨を示せば足り、履行がなければ契約を解除する旨を附言する必要はないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、売主が目的物を引き渡したが、買主が代金を履行期の経過後も支払わない場合において、売主が買主に対して相当の期間を定めて債務の履行の催告をしたのであれば、売主がその催告に際して履行がなければ解除する旨の通知をしていないとしても、売主は、相当期間の経過後、当該売買契約を解除することができる。
判例(最判昭48.4.19)は、「民法541条にいわゆる催告の内容は、一定期間内に履行すべき旨を示せば足り、履行がなければ契約を解除する旨を附言する必要はないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、売主が目的物を引き渡したが、買主が代金を履行期の経過後も支払わない場合において、売主が買主に対して相当の期間を定めて債務の履行の催告をしたのであれば、売主がその催告に際して履行がなければ解除する旨の通知をしていないとしても、売主は、相当期間の経過後、当該売買契約を解除することができる。
総合メモ
停止条件と解除 大判明治43年12月9日
概要
債権者が相当な期間を定めて催告をし、当該期間内に履行がないことを停止条件として解除の意思表示をした場合、当該解除は有効である。
判例
事案:債権者が相当な期間を定めて催告をし、当該期間内に履行がないことを停止条件として解除の意思表示をした場合にいおいて、当該解除が有効であるかどうかが問題となった。
判旨:「契約当事者ノ一方カ民法第541条ニ依リ為ス所ノ契約解除ハ必スシモ催告ヲ為スニ方リ定メタル期間内ニ相手方カ債務ヲ履行セサルヲ待テ始メテ為スコトヲ得ルモノニ非ス其期間内ニ履行セサルコトヲ条件トシテ催告ト共ニ為シタル解除ノ意思表示モ亦有効ナリトス何トナレハ是レ法律ノ禁スル所ニ非サルノミナラス其意思表示ハ其条件成就シ解除権ノ発生スルニ至テ始メテ其効力ヲ生シ其前ニ遡リテ効力ヲ生スルニ非サレハ解除権発生後ニ於テ為シタルト債務者ノ利害上何等択ム所ナケレハナリ。」
判旨:「契約当事者ノ一方カ民法第541条ニ依リ為ス所ノ契約解除ハ必スシモ催告ヲ為スニ方リ定メタル期間内ニ相手方カ債務ヲ履行セサルヲ待テ始メテ為スコトヲ得ルモノニ非ス其期間内ニ履行セサルコトヲ条件トシテ催告ト共ニ為シタル解除ノ意思表示モ亦有効ナリトス何トナレハ是レ法律ノ禁スル所ニ非サルノミナラス其意思表示ハ其条件成就シ解除権ノ発生スルニ至テ始メテ其効力ヲ生シ其前ニ遡リテ効力ヲ生スルニ非サレハ解除権発生後ニ於テ為シタルト債務者ノ利害上何等択ム所ナケレハナリ。」
過去問・解説
(H22 司法 第5問 エ)
相当の期間を定めて催告をするのと同時に、その期間内に履行されないことを停止条件として解除の意思表示をしても、その解除は無効である。
相当の期間を定めて催告をするのと同時に、その期間内に履行されないことを停止条件として解除の意思表示をしても、その解除は無効である。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明43.12.9)は、相当の期間を定めて催告をするのと同時に、その期間内に履行されないことを停止条件として解除の意思表示をした場合、当該解除は有効である旨判示している。
判例(大判明43.12.9)は、相当の期間を定めて催告をするのと同時に、その期間内に履行されないことを停止条件として解除の意思表示をした場合、当該解除は有効である旨判示している。
(H25 司法 第20問 4)
解除の意思表示に条件又は期限を付すことはできないから、債権者が相当な期間を定めて催告をし、当該期間内に履行がないことを停止条件として解除の意思表示をしたとしても、解除の効力は生じない。
解除の意思表示に条件又は期限を付すことはできないから、債権者が相当な期間を定めて催告をし、当該期間内に履行がないことを停止条件として解除の意思表示をしたとしても、解除の効力は生じない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明43.12.9)は、相当の期間を定めて催告をするのと同時に、その期間内に履行されないことを停止条件として解除の意思表示をした場合、当該解除は有効である旨判示している。
判例(大判明43.12.9)は、相当の期間を定めて催告をするのと同時に、その期間内に履行されないことを停止条件として解除の意思表示をした場合、当該解除は有効である旨判示している。
総合メモ
催告の方法 大判昭和15年9月3日
概要
履行遅滞による契約解除のための催告(541条本文)に当たり、債務者に対して債務の履行を促せば足り、履行がなければ解除する旨の通知までは要しない。
判例
事案:履行遅滞による契約解除のための催告(541条本文)をする場合において、履行がなければ解除する旨の通知が必要であるかが問題となった。
判旨:「民法第541条所定ノ契約解除ノ前提タル履行ノ催告自体ニ不履行ノ場合契約ヲ解除スヘキ旨ノ警告ヲ包含スルコトヲ要スルモノニ非サルコトハ同法条ノ文言ニ徴スルモ明白ナリ蓋シ当事者ノ一方ヨリ履行ノ催告ヲ受ケナカラ相当期間内ニ其ノ債務ヲ履行セサル相手方ハ之カ為契約ヲ解除セラルルコトアルヘキコトヲ自ラ予期セサルヘカラサルヤ固ヨリ当然ナレハナリ。」
判旨:「民法第541条所定ノ契約解除ノ前提タル履行ノ催告自体ニ不履行ノ場合契約ヲ解除スヘキ旨ノ警告ヲ包含スルコトヲ要スルモノニ非サルコトハ同法条ノ文言ニ徴スルモ明白ナリ蓋シ当事者ノ一方ヨリ履行ノ催告ヲ受ケナカラ相当期間内ニ其ノ債務ヲ履行セサル相手方ハ之カ為契約ヲ解除セラルルコトアルヘキコトヲ自ラ予期セサルヘカラサルヤ固ヨリ当然ナレハナリ。」
総合メモ
金銭債務の履行の請求と金額の明示の必要性 大判昭和9年6月2日
概要
541条に基づく催告による解除をする場合において、履行の催告は債権者が履行を求める債務の内容を債務者に知らせることができる程度のものであれば足り、当該債務が金銭債務であっても、必ずしもその金額を明示する必要はない。
判例
事案:541条に基づく催告による解除をする場合において、履行の催告をするとき、履行を求める相手方の債務が金銭債務であれば、その金額を明示する必要があるかが問題となった。
判旨:「民法第541条カ債務ノ不履行ヲ原因トスル契約解除ノ前提トシテ相当ノ期間ヲ定メタル履行ノ催告ヲ必要ト為シタル所以ノモノハ之ニ依リテ債務者ニ履行ヲ為スノ機会ヲ与ヘ契約解除ニ因ル不利益ヲ免ルルコトヲ得セシメント欲シタルモノニ外ナラサルカ故ニ該催告ハ債権者カ履行ヲ求ムル債務ノ内容ヲ債務者ニ知ラシムル程度ノモノタレハ足リ給付ノ目的カ金銭ナル場合ニ於テモ其ノ金額ノ如キハ必スシモ之ヲ明示スルコトヲ要スルモノニ非スト解スルヲ相当トス。」
判旨:「民法第541条カ債務ノ不履行ヲ原因トスル契約解除ノ前提トシテ相当ノ期間ヲ定メタル履行ノ催告ヲ必要ト為シタル所以ノモノハ之ニ依リテ債務者ニ履行ヲ為スノ機会ヲ与ヘ契約解除ニ因ル不利益ヲ免ルルコトヲ得セシメント欲シタルモノニ外ナラサルカ故ニ該催告ハ債権者カ履行ヲ求ムル債務ノ内容ヲ債務者ニ知ラシムル程度ノモノタレハ足リ給付ノ目的カ金銭ナル場合ニ於テモ其ノ金額ノ如キハ必スシモ之ヲ明示スルコトヲ要スルモノニ非スト解スルヲ相当トス。」
総合メモ
解除権の行使と返済の提供の継続 大判昭和36年6月22日
概要
双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、当該契約を解除しようとする当該契約の一方当事者の反対給付の履行の提供は、催告において指定した履行期日になされれば足りる。
判例
事案:双務契約上の両債務が同時履行の関係に立つ場合において、当該契約を解除しようとする当該契約の一方当事者は、いつまでに反対給付の履行の提供をすればよいかが問題となった。
判旨:「Aは…催告において指定した履行期である…日に同時履行の関係において自己の負担する債務すなわち所有権移転登記をするについて必要な書類をととのえた上でB宅に赴き、残代金の支払を求めたが全額の支払を拒絶されたので、契約解除の意思表示をしたというのであるから、Aは右意思表示をなすについての履行の提供をなし了つたものというべく、従つて本件契約解除には所論の欠点ありというを得ない。所論は、…履行期日には何ら履行の提供はなかつたというが、本件のような場合は、…催告において指定された履行期日にBの履行の提供あれば足るのであつて、それ以前のことは問うところではないのである。」
判旨:「Aは…催告において指定した履行期である…日に同時履行の関係において自己の負担する債務すなわち所有権移転登記をするについて必要な書類をととのえた上でB宅に赴き、残代金の支払を求めたが全額の支払を拒絶されたので、契約解除の意思表示をしたというのであるから、Aは右意思表示をなすについての履行の提供をなし了つたものというべく、従つて本件契約解除には所論の欠点ありというを得ない。所論は、…履行期日には何ら履行の提供はなかつたというが、本件のような場合は、…催告において指定された履行期日にBの履行の提供あれば足るのであつて、それ以前のことは問うところではないのである。」
過去問・解説
(H25 司法 第20問 2)
双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合において、一方の当事者が相当の期間を定めて催告をしたときは、その当事者は、当該期間中弁済の提供を継続しなければ契約を解除することはできない。
双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合において、一方の当事者が相当の期間を定めて催告をしたときは、その当事者は、当該期間中弁済の提供を継続しなければ契約を解除することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判昭36.6.22)は、双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、当該契約を解除しようとする当該契約の一方当事者の反対給付の履行の提供は、催告において指定した履行期日になされれば足りる旨判示している。したがって、双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合において、一方の当事者が相当の期間を定めて催告をしたときは、その当事者は、催告において指定した履行期日までに1度履行の提供をすれば契約を解除することができ、当該期間中弁済の提供を継続する必要はない。
判例(大判昭36.6.22)は、双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、当該契約を解除しようとする当該契約の一方当事者の反対給付の履行の提供は、催告において指定した履行期日になされれば足りる旨判示している。したがって、双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合において、一方の当事者が相当の期間を定めて催告をしたときは、その当事者は、催告において指定した履行期日までに1度履行の提供をすれば契約を解除することができ、当該期間中弁済の提供を継続する必要はない。
総合メモ
目的物の返還及び賃料の支払いの択一的な催告 最三小判昭和40年3月9日
概要
賃貸借終了を原因とする賃貸借目的物明渡等の請求をしつつ、第2次的に、賃貸借が存続しているとすれば所定の期限までに未払賃料の支払をする旨催告した場合には、当該催告は、これに応じて債務者が賃料を提供しても債権者において受領する意思が認められないような特段の事情のないかぎり、有効である。
判例
事案:賃貸借終了を原因とする賃貸借目的物明渡等の請求をしつつ、第2次的に、賃貸借が存続しているとすれば所定の期限までに未払賃料の支払をする旨催告した場合において、当該催告が有効であるかどうかが問題となった。
判旨:「本件土地賃貸借契約は…期間の満了によつて終了しているとして、…本件土地の明渡を求め、かつ、…賃料…同額の損害金の支払を求める趣旨のものであり、第2次的に、もし本件土地賃貸借契約が存続しているとすれば、…9年間分の賃料…支払を求める旨の催告をするものであることを当事者間に争いのない事実として確定したうえ、右第2次的になされた賃料の催告も、その履行を求めている債務の内容は明白であつて何らあいまいな点はなく、これによつて上告人Aとしては何ら不利益を受けることはないから、催告としての効力に欠けるところはないと判断しているのである。そして、この判断は、Aが右予備的催告に応じて前示賃料を提供してもBにおいてこれを受領する意思があると認められないような特段の事情が認定されていない原判示のもとでは、正当というべきである。」
判旨:「本件土地賃貸借契約は…期間の満了によつて終了しているとして、…本件土地の明渡を求め、かつ、…賃料…同額の損害金の支払を求める趣旨のものであり、第2次的に、もし本件土地賃貸借契約が存続しているとすれば、…9年間分の賃料…支払を求める旨の催告をするものであることを当事者間に争いのない事実として確定したうえ、右第2次的になされた賃料の催告も、その履行を求めている債務の内容は明白であつて何らあいまいな点はなく、これによつて上告人Aとしては何ら不利益を受けることはないから、催告としての効力に欠けるところはないと判断しているのである。そして、この判断は、Aが右予備的催告に応じて前示賃料を提供してもBにおいてこれを受領する意思があると認められないような特段の事情が認定されていない原判示のもとでは、正当というべきである。」
総合メモ
特約よりも短い期間を指定してした催告 最三小判昭和44年4月15日
概要
債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合であっても、債務者が催告の時から相当の期間を経過してもなお債務を履行しないときには、債権者は契約を解除することができる。
判例
事案:債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合において、債権者が契約を解除することができるかが問題となった。
判旨:「債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合であつても、債務者が催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときには、債権者は契約を解除することができるものと解すべきである。」
判旨:「債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合であつても、債務者が催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときには、債権者は契約を解除することができるものと解すべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第23問 オ)
履行すべき相当の期間を定めない催告も有効であり、催告の後、客観的に見て相当な期間を経過すれば解除権が発生する。
履行すべき相当の期間を定めない催告も有効であり、催告の後、客観的に見て相当な期間を経過すれば解除権が発生する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭31.12.6)「債務者が遅滞に陥つたときは、債権者が期間を定めず履行を催告した場合であつても、その催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときは契約を解除することができる…。」と判示している。したがって、履行すべき相当の期間を定めない催告も有効であり、催告の後、客観的に見て相当な期間を経過すれば解除権が発生する。
判例(最判昭31.12.6)「債務者が遅滞に陥つたときは、債権者が期間を定めず履行を催告した場合であつても、その催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときは契約を解除することができる…。」と判示している。したがって、履行すべき相当の期間を定めない催告も有効であり、催告の後、客観的に見て相当な期間を経過すれば解除権が発生する。
(H21 司法 第26問 エ)
履行遅滞による契約の解除をするに先立ち、期間を定めて履行の催告をしたが、その期間が不相当に短かった場合であっても、催告時と解除時の間に相当な期間が経過していれば、解除は有効である。
履行遅滞による契約の解除をするに先立ち、期間を定めて履行の催告をしたが、その期間が不相当に短かった場合であっても、催告時と解除時の間に相当な期間が経過していれば、解除は有効である。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭44.4.15)は、「債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合であっても、債務者が催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときには、債権者は契約を解除することができるものと解すべきである。」と判示している。
判例(最判昭44.4.15)は、「債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合であっても、債務者が催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときには、債権者は契約を解除することができるものと解すべきである。」と判示している。
(H25 司法 第20問 3)
債務者が履行遅滞に陥った後に債権者が不相当な期間を定めて催告をした場合であっても、債務者が履行の催告に応じず、相当な期間が経過した後に解除の意思表示がされたときは、解除の効力が生ずる。
債務者が履行遅滞に陥った後に債権者が不相当な期間を定めて催告をした場合であっても、債務者が履行の催告に応じず、相当な期間が経過した後に解除の意思表示がされたときは、解除の効力が生ずる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭44.4.15)は、「債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合であっても、債務者が催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときには、債権者は契約を解除することができるものと解すべきである。」と判示している。
判例(最判昭44.4.15)は、「債務不履行を理由とする契約解除の前提としての催告に定められた期間が相当でない場合であっても、債務者が催告の時から相当の期間を経過してなお債務を履行しないときには、債権者は契約を解除することができるものと解すべきである。」と判示している。
総合メモ
遺産分割協議と541条による解除の可否 最一小判平成元年2月9日
概要
共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が協議において負担した債務を履行しないときであっても、当該債務にかかる債権を取得した他の相続人は、541条により当該遺産分割協議を解除することができない。
判例
事案:共同相続人間で遺産分割協議が成立した場合において、相続人の1人が協議において負担した債務を履行しないとき、当該債務にかかる債権を取得した他の相続人が、541条により当該遺産分割協議を解除することができるかが問題となった。
判旨:「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても、他の相続人は民法541条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。けだし、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は右協議において右債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解すべきであり、しかも、このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。」
判旨:「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても、他の相続人は民法541条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。けだし、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は右協議において右債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解すべきであり、しかも、このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。」
過去問・解説
(H28 共通 第33問 ア)
共同相続人であるAとBの間で遺産分割協議が成立した場合において、Aがその協議において負担した債務を履行しないときであっても、BはAの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできない。
共同相続人であるAとBの間で遺産分割協議が成立した場合において、Aがその協議において負担した債務を履行しないときであっても、BはAの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平元.2.9)は、「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても、他の相続人は民法541条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、共同相続人であるAとBの間で遺産分割協議が成立した場合において、Aがその協議において負担した債務を履行しないときであっても、BはAの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできない。
判例(最判平元.2.9)は、「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても、他の相続人は民法541条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、共同相続人であるAとBの間で遺産分割協議が成立した場合において、Aがその協議において負担した債務を履行しないときであっても、BはAの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできない。
総合メモ
他人物売買の解除と買主の使用利益返還義務 最二小判昭和51年2月13日
概要
売買契約に基づき目的物の引渡を受けていた買主は、旧561条により同契約を解除した場合でも、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還しなければならない。
判例
事案:他人の権利の売買契約が旧561条により解除された場合において、目的物の引渡しを受けていた買主が、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還しなければならないかが問題となった。
判旨:「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うものであり、この理は、他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、民法561条の規定により該契約が解除された場合についても同様であると解すべきである。けだし、解除によつて売買契約が遡及的に効力を失う結果として、契約当事者に該契約に基づく給付がなかつたと同一の財産状態を回復させるためには、買主が引渡を受けた目的物を解除するまでの間に使用したことによる利益をも返還させる必要があるのであり、売主が、目的物につき使用権限を取得しえず、したがつて、買主から返還された使用利益を究極的には正当な権利者からの請求により保有しえないこととなる立場にあつたとしても、このことは右の結論を左右するものではないと解するのが、相当だからである。」
判旨:「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うものであり、この理は、他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、民法561条の規定により該契約が解除された場合についても同様であると解すべきである。けだし、解除によつて売買契約が遡及的に効力を失う結果として、契約当事者に該契約に基づく給付がなかつたと同一の財産状態を回復させるためには、買主が引渡を受けた目的物を解除するまでの間に使用したことによる利益をも返還させる必要があるのであり、売主が、目的物につき使用権限を取得しえず、したがつて、買主から返還された使用利益を究極的には正当な権利者からの請求により保有しえないこととなる立場にあつたとしても、このことは右の結論を左右するものではないと解するのが、相当だからである。」
過去問・解説
(H28 司法 第24問 イ)
甲土地の売買契約がAを売主、Bを買主として締結され、AからBに甲土地の引渡しがされたが、甲土地がCの所有であった場合において、Aが甲土地の権利をCから取得してBに移転することができないことを理由にBが甲土地の売買契約を解除したときは、Bは、Aに対し、その解除までの間の甲土地の使用利益を返還しなければならない。
甲土地の売買契約がAを売主、Bを買主として締結され、AからBに甲土地の引渡しがされたが、甲土地がCの所有であった場合において、Aが甲土地の権利をCから取得してBに移転することができないことを理由にBが甲土地の売買契約を解除したときは、Bは、Aに対し、その解除までの間の甲土地の使用利益を返還しなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭51.2.13)は、「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うものであり、この理は、他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、民法561条の規定により該契約が解除された場合についても同様であると解すべきである。けだし、解除によって売買契約が遡及的に効力を失う結果として、契約当事者に該契約に基づく給付がなかったと同一の財産状態を回復させるためには、買主が引渡を受けた目的物を解除するまでの間に使用したことによる利益をも返還させる必要がある」と判示している。
改正民法下における561条は、「他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と定めるにとどまり、解除権の発生を認めていないが、売主が同条に定める義務を履行せず、あるいは履行不能となった場合には、541条、542条による解除が可能となる。そして、上記判例の理解は、改正民法下における、売主が561条が定める義務に違反した場合の541条、542条による解除の場合にも同様に妥当すると解されている。
したがって、Aが甲土地の権利をCから取得してBに移転することができないことを理由にBが甲土地の売買契約を解除したときは、Bは、Aに対し、その解除までの間の甲土地の使用利益を返還しなければならない。
判例(最判昭51.2.13)は、「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うものであり、この理は、他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、民法561条の規定により該契約が解除された場合についても同様であると解すべきである。けだし、解除によって売買契約が遡及的に効力を失う結果として、契約当事者に該契約に基づく給付がなかったと同一の財産状態を回復させるためには、買主が引渡を受けた目的物を解除するまでの間に使用したことによる利益をも返還させる必要がある」と判示している。
改正民法下における561条は、「他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」と定めるにとどまり、解除権の発生を認めていないが、売主が同条に定める義務を履行せず、あるいは履行不能となった場合には、541条、542条による解除が可能となる。そして、上記判例の理解は、改正民法下における、売主が561条が定める義務に違反した場合の541条、542条による解除の場合にも同様に妥当すると解されている。
したがって、Aが甲土地の権利をCから取得してBに移転することができないことを理由にBが甲土地の売買契約を解除したときは、Bは、Aに対し、その解除までの間の甲土地の使用利益を返還しなければならない。
総合メモ
解除と登記 最一小判昭和33年6月14日
概要
①545条1項の解除には合意解除も含まれる。
②545条1項ただし書の「第三者」が同ただし書によって保護されるためには、当該第三者が所有権を取得した場合においては、その所有権について対抗要件を具備していることが必要である。
②545条1項ただし書の「第三者」が同ただし書によって保護されるためには、当該第三者が所有権を取得した場合においては、その所有権について対抗要件を具備していることが必要である。
判例
事案:①545条1項の解除に合意解除が含まれるかが問題となった。
②545条1項ただし書の「第三者」が同ただし書によって保護されるためには、取得した所有権についての対抗要件を備える必要があるのかが問題となった。
判旨:①「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが、それが契約の時に遡つて効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから、右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。」
②「しかしながら、右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。けだし右第三者を民法177条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すべき何らの理由もないからである。してみれば、被上告人の主張自体本件不動産の所有権の取得について登記を経ていない被上告人は原判示の合意解約について右にいわゆる権利を害されない第三者として待遇するを得ないものといわざるを得ない」
②545条1項ただし書の「第三者」が同ただし書によって保護されるためには、取得した所有権についての対抗要件を備える必要があるのかが問題となった。
判旨:①「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが、それが契約の時に遡つて効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから、右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。」
②「しかしながら、右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。けだし右第三者を民法177条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すべき何らの理由もないからである。してみれば、被上告人の主張自体本件不動産の所有権の取得について登記を経ていない被上告人は原判示の合意解約について右にいわゆる権利を害されない第三者として待遇するを得ないものといわざるを得ない」
過去問・解説
(H19 司法 第11問 1)
AからB、BからCへ土地が順次売却された後、AB間の売買契約が合意解除された場合、Cは、所有権移転登記を経由していなくても、その所有権の取得をAに対し主張することができる。
AからB、BからCへ土地が順次売却された後、AB間の売買契約が合意解除された場合、Cは、所有権移転登記を経由していなくても、その所有権の取得をAに対し主張することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭33.6.14)は、「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが、それが契約の時に遡つて効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから、右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。」と判示した上で、「しかしながら、右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、AからB、BからCへ土地が順次売却された後、AB間の売買契約が合意解除されているから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。しかし、Cが所有権移転登記を経由していない場合には、その所有権の取得をAに対し主張することができない。
判例(最判昭33.6.14)は、「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが、それが契約の時に遡つて効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから、右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。」と判示した上で、「しかしながら、右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、AからB、BからCへ土地が順次売却された後、AB間の売買契約が合意解除されているから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。しかし、Cが所有権移転登記を経由していない場合には、その所有権の取得をAに対し主張することができない。
(H23 司法 第28問 2)
AがBに不動産を売却し、さらにBがCに当該不動産を売却した後、AB間の売買契約をAが解除した場合において、Cが保護されるためには、Cは、自己の権利の取得について登記を備えていることを要する。
AがBに不動産を売却し、さらにBがCに当該不動産を売却した後、AB間の売買契約をAが解除した場合において、Cが保護されるためには、Cは、自己の権利の取得について登記を備えていることを要する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、AがBに不動産を売却し、さらにBがCに当該不動産を売却した後、AB間の売買契約をAが解除したのであるから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。したがって、Cが保護されるためには、Cは、自己の権利の取得について登記を備えていることを要する。
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、AがBに不動産を売却し、さらにBがCに当該不動産を売却した後、AB間の売買契約をAが解除したのであるから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。したがって、Cが保護されるためには、Cは、自己の権利の取得について登記を備えていることを要する。
(H25 司法 第10問 エ)
甲土地がAからB、BからCに順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除された場合、Cは、Aに対し、所有権移転登記をしなくても甲土地の所有権取得を主張することができる。
甲土地がAからB、BからCに順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除された場合、Cは、Aに対し、所有権移転登記をしなくても甲土地の所有権取得を主張することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭33.6.14)は、「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが、それが契約の時に遡つて効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから、右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。」と判示した上で、「しかしながら、右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、甲土地がAからB、BからCに順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除されているから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。しかし、Cは、Aに対し、所有権移転登記をしなければ甲土地の所有権取得を主張することができない。
判例(最判昭33.6.14)は、「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが、それが契約の時に遡つて効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから、右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。」と判示した上で、「しかしながら、右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、甲土地がAからB、BからCに順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除されているから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。しかし、Cは、Aに対し、所有権移転登記をしなければ甲土地の所有権取得を主張することができない。
(H30 司法 第10問 イ)
AがA所有の甲土地をBに売却し、その代金が未払である間に、AからBへ所有権移転登記がされた後、Bが、Bの代金未払の事実を知っているCに甲土地を売却し、その旨の所有権移転登記がされた場合において、AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除したときは、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。
AがA所有の甲土地をBに売却し、その代金が未払である間に、AからBへ所有権移転登記がされた後、Bが、Bの代金未払の事実を知っているCに甲土地を売却し、その旨の所有権移転登記がされた場合において、AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除したときは、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。さらに、同ただし書の「第三者」として保護されるためには、主観的要件は要求されない。
本肢においては、AがA所有の甲土地をBに売却し、その代金が未払である間に、AからBへ所有権移転登記がされた後、Bが、Cに甲土地を売却し、その後AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除しているから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。そして、BからCへの甲土地の売却について、所有権移転登記がされているから、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。Cが、Bの代金未払の事実を知っていることは、結論に影響を及ぼさない。
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。さらに、同ただし書の「第三者」として保護されるためには、主観的要件は要求されない。
本肢においては、AがA所有の甲土地をBに売却し、その代金が未払である間に、AからBへ所有権移転登記がされた後、Bが、Cに甲土地を売却し、その後AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除しているから、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。そして、BからCへの甲土地の売却について、所有権移転登記がされているから、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。Cが、Bの代金未払の事実を知っていることは、結論に影響を及ぼさない。
(R1 司法 第24問 ウ)
AとBは、平成31年4月1日、A所有の中古自転車(以下「甲」という。)を、同月10日引渡し、同月20日代金支払の約定でBに売却する旨の売買契約を締結した。Aは、Bに対し、平成31年4月10日、甲を引き渡したが、Bは、同月20日を経過しても代金を支払わず、同月21日、事情を知らないCに甲を売却し、引き渡した。この場合において、Aが相当の期間を定めて催告してもBが代金を支払わないときは、Aは、Bとの間の売買契約を解除し、Cに対し、甲の返還を求めることができる。
AとBは、平成31年4月1日、A所有の中古自転車(以下「甲」という。)を、同月10日引渡し、同月20日代金支払の約定でBに売却する旨の売買契約を締結した。Aは、Bに対し、平成31年4月10日、甲を引き渡したが、Bは、同月20日を経過しても代金を支払わず、同月21日、事情を知らないCに甲を売却し、引き渡した。この場合において、Aが相当の期間を定めて催告してもBが代金を支払わないときは、Aは、Bとの間の売買契約を解除し、Cに対し、甲の返還を求めることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。この判例の理解は、売買契約の目的物が動産である場合にも妥当すると解されている。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、AとBは、平成31年4月1日、A所有の甲を、Bに売却する旨の売買契約を締結し、Bは、同月21日、事情を知らないCに甲を売却しているから、この場合において、Aが、Bとの間の売買契約を解除するときは、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。そして、Cは、Bから、甲の引渡しを受けているため、対抗要件を備えている(178条)。したがって、Aは、Bとの間の売買契約を解除しても、Cに対し、甲の返還を求めることができない。
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。この判例の理解は、売買契約の目的物が動産である場合にも妥当すると解されている。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、AとBは、平成31年4月1日、A所有の甲を、Bに売却する旨の売買契約を締結し、Bは、同月21日、事情を知らないCに甲を売却しているから、この場合において、Aが、Bとの間の売買契約を解除するときは、Cは同ただし書の「第三者」に当たる。そして、Cは、Bから、甲の引渡しを受けているため、対抗要件を備えている(178条)。したがって、Aは、Bとの間の売買契約を解除しても、Cに対し、甲の返還を求めることができない。
(R2 司法 第7問 ウ)
A所有の甲土地をAがBに売却し、更にBがCに売却し、それぞれその旨の登記がされた場合において、その後、AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したときは、Aは、Bの代金不払の事実を知らないCに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
A所有の甲土地をAがBに売却し、更にBがCに売却し、それぞれその旨の登記がされた場合において、その後、AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したときは、Aは、Bの代金不払の事実を知らないCに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、A所有の甲土地をAがBに売却し、更にBがCに売却し、それぞれその旨の登記がされた場合において、その後、AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したのであるから、Cは同ただし書の「第三者」に当たり、所有権移転登記も備えている。したがって、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
判例(最判昭33.6.14)は、「遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。」と判示した上で、「その第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであつて、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。」と判示している。そして、545条1項ただし書の「第三者」とは、解除以前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者、すなわち、解除前の第三者に限定される。
本肢においては、A所有の甲土地をAがBに売却し、更にBがCに売却し、それぞれその旨の登記がされた場合において、その後、AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したのであるから、Cは同ただし書の「第三者」に当たり、所有権移転登記も備えている。したがって、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
総合メモ
土地賃借権が抵当権の目的となっている場合における賃料不払いによる賃借権の解除 最一小判昭和48年11月29日
過去問・解説
(H20 司法 第14問 オ)
Aは土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した。Aは、甲建物に対する抵当権設定後、長期にわたりBに対する賃料の支払を怠った。土地賃借権は、従たる権利として抵当権の目的となっているから、Bは土地賃貸借契約を解除することができない。
Aは土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した。Aは、甲建物に対する抵当権設定後、長期にわたりBに対する賃料の支払を怠った。土地賃借権は、従たる権利として抵当権の目的となっているから、Bは土地賃貸借契約を解除することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.11.29)は、「賃借人の賃料不払による土地賃貸借契約の解除については、借地上の建物の抵当権者は民法545条の第三者に該当しないと解すべきである。」と判示している。したがって、Aは土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合であっても、Bは当該土地賃貸借契約の解除がされる場合において、545条1項ただし書の「第三者」には当たらないから、Aが、甲建物に対する抵当権設定後、長期にわたりBに対する賃料の支払を怠ったのであれば、Bは541条により、土地賃貸借契約を解除することができる。
判例(最判昭48.11.29)は、「賃借人の賃料不払による土地賃貸借契約の解除については、借地上の建物の抵当権者は民法545条の第三者に該当しないと解すべきである。」と判示している。したがって、Aは土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合であっても、Bは当該土地賃貸借契約の解除がされる場合において、545条1項ただし書の「第三者」には当たらないから、Aが、甲建物に対する抵当権設定後、長期にわたりBに対する賃料の支払を怠ったのであれば、Bは541条により、土地賃貸借契約を解除することができる。
総合メモ
契約締結に先立つ信義則上の説明義務 最二小判平成23年4月22日
概要
契約の一方当事者が、契約の締結に先立ち信義則上の説明義務に違反して契約の締結に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合でも、当該当事者は契約上の債務不履行責任を負うことはない。
判例
事案:契約の一方当事者が、契約の締結に先立ち信義則上の説明義務に違反した場合において、当該当事者が契約上の債務不履行責任を負うかどうかが問題となった。
判旨:「契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。
なぜなら、上記のように、一方当事者が信義則上の説明義務に違反したために、相手方が本来であれば締結しなかったはずの契約を締結するに至り、損害を被った場合には、後に締結された契約は、上記説明義務の違反によって生じた結果と位置付けられるのであって、上記説明義務をもって上記契約に基づいて生じた義務であるということは、それを契約上の本来的な債務というか付随義務というかにかかわらず、一種の背理であるといわざるを得ないからである。契約締結の準備段階においても、信義則が当事者間の法律関係を規律し、信義則上の義務が発生するからといって、その義務が当然にその後に締結された契約に基づくものであるということにならないことはいうまでもない。」
判旨:「契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。
なぜなら、上記のように、一方当事者が信義則上の説明義務に違反したために、相手方が本来であれば締結しなかったはずの契約を締結するに至り、損害を被った場合には、後に締結された契約は、上記説明義務の違反によって生じた結果と位置付けられるのであって、上記説明義務をもって上記契約に基づいて生じた義務であるということは、それを契約上の本来的な債務というか付随義務というかにかかわらず、一種の背理であるといわざるを得ないからである。契約締結の準備段階においても、信義則が当事者間の法律関係を規律し、信義則上の義務が発生するからといって、その義務が当然にその後に締結された契約に基づくものであるということにならないことはいうまでもない。」
過去問・解説
(R6 司法 第18問 オ)
契約の一方当事者Aが、契約締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を他方当事者Bに提供しなかったときは、 Aは、Bに対し、Bが当該契約を締結したことにより受けた損害につき当該契約上の債務不履行による賠償責任を負う。
契約の一方当事者Aが、契約締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を他方当事者Bに提供しなかったときは、 Aは、Bに対し、Bが当該契約を締結したことにより受けた損害につき当該契約上の債務不履行による賠償責任を負う。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平23.4.22)は、「契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。」と判示している。したがって、契約の一方当事者Aが、契約締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を他方当事者Bに提供しなかったときであっても、Aは、Bに対し、Bが当該契約を締結したことにより受けた損害につき当該契約上の債務不履行による賠償責任を負わない。
判例(最判平23.4.22)は、「契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。」と判示している。したがって、契約の一方当事者Aが、契約締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を他方当事者Bに提供しなかったときであっても、Aは、Bに対し、Bが当該契約を締結したことにより受けた損害につき当該契約上の債務不履行による賠償責任を負わない。