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占有権(占有権の取得 180条~187条) - 解答モード
取得時効における所有の意思の推定 最一小判昭和58年3月24日
概要
判例
判旨:「民法186条1項の規定は、占有者は所有の意思で占有するものと推定しており、占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が所有の意思のない占有にあたることについての立証責任を負うのであるが(最高裁昭和54年(オ)第19号同年7月31日第三小法廷判決・裁判集民事127号317頁参照)、右の所有の意思は、占有者の内心の意思によつてではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきものであるから(最高裁昭和45年(オ)第315号同年6月18日第一小法廷判決・裁判集民事99号375頁、最高裁昭和45年(オ)第265号同47年9月8日第二小法廷判決・民集26巻7号1348頁参照)、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定し、時効による所有権取得の主張を排斥しなければならないものである。」
過去問・解説
(H26 共通 第5問 ウ)
外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情を証明すれば、所有の意思を否定することができる。
(R5 司法 第7問 イ)
占有取得の原因である権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に所有の意思があるといえない場合であっても、占有者が内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときは、所有の意思があると認められる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.3.24)は、「占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定」することができると判示している。したがって、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情によって外形的客観的に所有の意思があるといえない場合は、占有者が内心において他人の所有権を排斥して占有する意思を有していたときであっても、所有の意思があるとは認められない。
解除条件の成就と占有 最一小判昭和60年3月28日
概要
判例
判旨:「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法162条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H30 共通 第8問 ウ)
Aは、Bが所有する甲土地を解除条件付でBから買い受ける旨の売買契約を締結し、当該売買契約に基づいてBから甲土地の引渡しを受けた。その後、解除条件が成就した場合、Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭60.3.28)は、「売買契約に基づいて開始される占有は、当該売買契約に、残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が附されている場合であつても、民法162条にいう所有の意思をもつてする占有であるというを妨げず、かつ、現に右の解除条件が成就して当該売買契約が失効しても、それだけでは、右の占有が同条にいう所有の意思をもつてする占有でなくなるというものではないと解するのが相当である。」と判示している。したがって、AB間における甲土地の売買契約について解除条件が成就した場合でも、それだけでは、Aの甲土地に対する占有は自主占有でなくなるとは言えない。
占有の要件 最三小判昭和27年2月19日
概要
判例
判旨:「論旨は、Aは右家屋に錠をかけてその鍵を所持するとか標札や貼紙などでBが現に占有することが第三者にもわかるようにしておくとか、いうような方法を講じなかつた、と指摘する。しかし、さような手段を執らなかつたからとて、必ずしも所持なしとは言えない。」
「論旨は、原判決が認定したところによると、右家屋の裏口には外部からの侵入を防ぐに足る何らの措置も講じてなかつたというのだから、たといA方が隣家であつても、所持があつたとは言い得ない、と主張する。しかしA方が隣家であるため、問題の家屋の裏口を常に監視して容易に侵入を制止し得る状況であり、現にBらの侵入に際しAの妻女が制止した事実を原判決が認めたような次第であつて、Aに本件家屋の所持があつたと言い得る。」
過去問・解説
(H21 司法 第8問 イ)
家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるとしても、その所有者がその家屋に錠をかけて鍵を所持し、又は標札や貼紙によって占有中であることを示さなければ、家屋を占有するものとはいえない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭27.2.19)は、家屋の所有者が、当該家屋に錠をかけてその鍵を所持する、あるいは標札や貼紙などで当該所有者が現に占有していることを第三者にもわかるようにするなどの方法を講じていなかったからといって、必ずしも当該所有者に家屋の所持がないとはいえない旨判示したうえで、家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるときは、所有者はその家屋を所持するものといえる旨判示している。したがって、家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にある場合には、その所有者がその家屋に錠をかけて鍵を所持し、又は標札や貼紙によって占有中であることを示していないとしても、なお家屋を占有するものといえる。
金銭の所有権者と占有者 最二小判昭和39年1月24日
概要
判例
判旨:「金銭は、特別の場合を除いては、物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権者は、特段の事情のないかぎり、その占有者と一致すると解すべきであり、また金銭を現実に支配して占有する者は、それをいかなる理由によつて取得したか、またその占有を正当づける権利を有するか否かに拘わりなく、価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである(昭和29年11月5日最高裁判所第2小法廷判決、刑集8巻11号1675頁参照)。」
相続と所有の意思を持った占有の開始 最三小判昭和46年11月30日
概要
判例
判旨:「Aらは、Bの死亡により、本件土地建物に対する同人の占有を相続により承継したばかりでなく、新たに本件土地建物を事実上支配することによりこれに対する占有を開始したものというべく、したがつて、かりにAらに所有の意思があるとみられる場合においては、Aらは、Bの死亡後民法185条にいう「新権原ニ因リ」本件土地建物の自主占有をするに至つたものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H20 司法 第7問 エ)
相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始して、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、相続人は新権原により所有の意思をもって占有を始めたものといえる。
賃借人と所有の意思 最一小判昭和45年6月18日
概要
判例
判旨:「占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきであ…る。」
過去問・解説
(R3 司法 第8問 ウ)
AがB所有の動産甲を無断でCに賃貸した後、Cの責めに帰すべき事由によって甲が損傷した場合、Bから甲の返還を求められたCは、甲の所有者がAであると過失なく信じていたとしても、その損害の全部の賠償をしなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭45.6.18)は、「占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきであ…る。」と判示している。したがって、Cは、Aから賃貸借により甲を取得しているため、当該賃貸借が、AがB所有の動産甲を無断でCに賃貸したものであって法律上効力を生じない場合であったとしても、Cの動産甲に対する占有は他主占有であるといえる。
ここで、191条は、「占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。」と規定している。上記の通り、Cの動産甲に対する占有は他主占有であるため、Cは「所有の意思のない占有者」であるといえ、同条ただし書が適用される。
したがって、Cの責めに帰すべき事由によって甲が損傷した場合、甲の所有者がAであると過失なく信じていたとしても、その損害の全部の賠償をしなければならない。
相続と取得時効 最三小判平成8年11月12日
概要
判例
判旨:「他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合において、右占有が所有の意思に基づくものであるといい得るためには、取得時効の成立を争う相手方ではなく、占有者である当該相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を自ら証明すべきものと解するのが相当である。けだし、右の場合には、相続人が新たな事実的支配を開始したことによって、従来の占有の性質が変更されたものであるから、右変更の事実は取得時効の成立を主張する者において立証を要するものと解すべきであり、また、この場合には、相続人の所有の意思の有無を相続という占有取得原因事実によって決することはできないからである。」
過去問・解説
(H22 司法 第7問 イ)
他主占有の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合、その占有が所有の意思に基づくものでないことについて、取得時効の成立を争う者が主張立証しなければならない。
他主占有と占有権限の立証責任の所在 最三小判昭和35年3月1日
概要
判例
判旨:「Aが本件土地を所有しかつその登記を経由していること、右土地上にBの所有する建物が存在し、Cがこれに居住してその敷地を占有していることは、いずれも原判決の確定するところであり、Cは、BがAから本件土地を使用貸借により借り受けてその地上に前記建物を建築し、Cがこれを賃借したと主張し、Aはこれを争つているのである。この場合、Cの前記正権原の主張については、Cに立証責任の存することは明らかであり、Cは占有者の権利推定を定めた民法188条の規定を援用して自己の正権原をAに対抗することはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第10問 1)
所有者が占有者に対して占有物の返還を求める場合、原告は、被告の占有が権原に基づかないことを立証する必要はなく、被告が自己に正当な占有権原のあることを立証しなければならない。
(H21 司法 第8問 ウ)
占有者が占有物について行使する権利は適法に有するものと推定されるが、土地の所有者から占有者に対する土地明渡請求訴訟において、占有者が当該土地に賃借権を有すると主張しても、占有者が賃借権を有し、その賃借権に基づき土地を占有する事実は推定されず、占有者は、賃借権を取得し、その賃借権に基づき土地を占有する事実を立証する必要がある。
(正答)〇
(解説)
188条は、「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する」と規定している。したがって、本肢前段は正しい。
これに対して、判例(最判昭35.3.1)は、他人の所有物を占有する正権原があるとの主張がされた場合には、当該占有権原の存在につき、その主張をする者に立証責任があると解すべきであり、占有者の権利推定を定めた188条を援用して自己の占有権原を所有者に対抗することはできない旨判示している。したがって、土地の所有者から占有者に対する土地明渡請求訴訟において、占有者が当該土地に賃借権を有すると主張しても、占有者が賃借権を有し、その賃借権に基づき土地を占有する事実は188条により推定されず、占有者は、賃借権を取得し、その賃借権に基づき土地を占有する事実を立証する必要がある。よって、本肢後段も正しい。
相続人は187条1項の承継人に含まれるか 最二小判昭和37年5月18日
概要
判例
判旨:「民法187条1項は「占有者ノ承継人ハ其選択ニ従ヒ自己ノ占有ノミヲ主張シ又ハ自己ノ占有ニ前主ノ占有ヲ併セテ之ヲ主張スルコトヲ得」と規定し、右は相続の如き包括承継の場合にも適用せられ、相続人は必ずしも被相続人の占有についての善意悪意の地位をそのまま承継するものではなく、その選択に従い自己の占有のみを主張し又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができるものと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H20 司法 第34問 5)
相続人は、被相続人の占有についての善意・悪意の地位を当然に承継する。
(R2 司法 第36問 ウ)
占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる。
(R5 司法 第7問 ア)
相続人は、所有権の時効取得を主張するに際し、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができる。
権利能力なき社団の法人化と取得時効の起算点 最二小判平成元年12月22日
概要
判例
判旨:「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用されるものと解すべきであるから、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点と選択することができる。」
過去問・解説
(H22 司法 第7問 ウ)
権利能力なき社団の占有する不動産を、法人格を取得した以降、当該法人が引き継いで占有している場合には、当該不動産の時効取得について、その法人格取得の日を起算点として主張することはできない。
(H30 共通 第8問 エ)
甲土地を占有していた権利能力なき社団が一般社団法人になった場合、その一般社団法人は、甲土地の取得時効を主張するに際して、権利能力なき社団として占有した期間を併せて主張することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平元.12.22)は、「民法187条1項は、いわゆる権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用される」と判示している。したがって、甲土地を占有していた権利能力なき社団が一般社団法人になった場合についても、187条1項が適用される。
そして、同項は「占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。」と定めている。よって、当該一般社団法人は、甲土地の取得時効を主張するに際して、権利能力なき社団として占有した期間を併せて主張することができる。