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占有権(占有権の効力 188条~202条) - 解答モード
建物退去土地明渡しの相手方 最三小判昭和34年4月15日
概要
判例
判旨:「建物は、その敷地を離れて存在し得ないのであるから、建物を占有使用する者は、おのづからこれを通じてその敷地をも占有するものと解すべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第7問 4)
Aが所有する土地上にその土地を利用する権原なくBが建物を所有し、Cがその建物をBC間の賃貸借契約に基づいて占有する場合、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができ、Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.6.17)は、建物収去土地明渡請求の事案において、「土地の所有権にもとづく物上請求権の訴訟においては、現実に家屋を所有することによつて現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているものを被告としなければならないのである。」と判示している。本肢においては、Aが所有する土地上にその土地を利用する権原なくBが建物を所有しているから、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができる。したがって、本肢前段は正しい。
また、判例(最判昭34.4.15)は、建物退去土地明渡請求の事案において、「建物は、その敷地を離れて存在し得ないのであるから、建物を占有使用する者は、おのづからこれを通じてその敷地をも占有するものと解すべきである。」と判示している。本肢においては、Cは、上記のBが所有する建物をBC間の賃貸借契約に基づいて占有しているため、この占有を通じて、Aが所有する土地をも占有しているといえる。したがって、Aは所有権に基づく物権的請求権として、Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。よって、本肢後段も正しい。
192条の善意無過失の意義 最三小判昭和26年11月27日
概要
判例
判旨:「民法192条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し、且つかく信ずるにつき過失のなかつたことを意味する…。」
過去問・解説
(H28 司法 第9問 イ)
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、Bが、当該時計の引渡しの当時、当該時計の所有者がAであることに疑いを持っていたときは、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭26.11.27)は、即時取得の成否が問題となった事案において、「民法192条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し、且つかく信ずるにつき過失のなかつたことを意味する…。」と判示している。この判例の理解に基づけば、取引の相手方が権利者であることに疑いを持っていた場合は、当該相手方が無権利者でないと誤信していたとは言えないため、「善意」(192条)ではないといえる。
Bは、Aからその占有する時計を買い受けた場合において、当該時計の引渡しの当時、当該時計の所有者がAであることに疑いを持っていたことから、「善意」とはいえない。したがって、即時取得の要件を満たさず、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
即時取得と占有改定 最一小判昭和35年2月11日
概要
判例
判旨:「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない(大正5年5月16日大審院判決、民録22輯961頁、昭和32年12月27日第2小法廷判決、集11巻14号2485頁参照)。」
過去問・解説
(H19 司法 第9問 4)
占有改定により占有を取得した者は、動産の即時取得を主張することができない。
(H23 司法 第9問 4)
売買の目的物である動産について占有改定の方法により当該動産の占有を取得した買主は、売主が無権利者であったとしても、売主が無権利者であることについて善意無過失であれば、即時取得により当該動産についての所有権を取得する。
(H28 司法 第9問 ウ)
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、その売買契約の際に、以後AがBのために占有する意思を表示したが、当該時計の引渡しが現実にされていないときは、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、その売買契約の際に、以後AがBのために占有する意思を表示したが、当該時計の引渡しが現実にされていないという場合、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、Bは即時取得により当該時計の所有権を取得することができない。
(R4 司法 第7問 エ)
Aはその所有する絵画甲をBに預けていたが、Bは、Aに無断で、Bが甲の所有者であると過失なく信じているCに甲を売却した。Bは甲の占有を継続し、以後Cのために占有する意思を表示した。その後AがBから甲の返還を受けた場合、CはAに対し、所有権に基づいて甲の引渡しを請求することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Bは甲の占有を継続し、以後Cのために占有する意思を表示しているところ、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、Cに即時取得(192条)は成立せず、甲の所有権を取得できないから、AがBから甲の返還を受けた場合、CはAに対し、所有権に基づいて甲の引渡しを請求することができない。
(R6 司法 第9問 エ)
Aは、Bから預かっているB所有のパソコン甲を自らの所有物であると偽ってCに売り、Cとの間で、以後AがCのために甲を占有する旨の合意をした。この合意の時に、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたときは、Cは、甲の所有権を即時取得する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。
Aは、B所有のパソコン甲を自らの所有物であると偽ってCに売却する際、Cとの間で、以降AがCのために甲を占有する旨の合意をしているところ、これは占有改定(183条)による占有取得に当たる。したがって、この合意の時に、Aが甲の所有者であるとCが過失なく信じていたとしても、占有改定による占有取得では即時取得は成立しないため、Cは、甲の所有権を即時取得することができない。
即時取得における無過失の立証責任 最一小判昭和41年6月9日
概要
判例
判旨:「思うに、右法条にいう「過失なきとき」とは、物の譲渡人である占有者が権利者たる外観を有しているため、その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し、かつこのように信ずるについて過失のないことを意味するものであるが、およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第9問 3)
占有者から動産を譲り受けてその占有を取得した者は、即時取得を主張するために、自己に過失がないことを立証しなければならない。
(H27 共通 第13問 1)
Aが、A所有の甲動産を占有するBに対し、所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ、Bは、Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定されるから、Bは、質権の即時取得の成立を基礎付ける事実を主張・立証する必要はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭41.6.9)は、即時取得(192条)の成否が問題となった事案において、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」と判示している。そうすると、Bは、甲動産につきCが無権利者であることについて善意であることにつき「過失がない」ことを立証する必要はないといえるが、推定されない他の即時取得の成立を基礎づける事実(「取引行為」によって「動産の占有を始めた」こと(192条))については、なお主張・立証する責任を負う。したがって、Bは、なおこれらの、質権の即時取得の成立を基礎づける事実を主張・立証する必要がある。
(H28 司法 第9問 ア)
Aがその占有する時計をBに売却した場合において、Bが、即時取得により当該時計の所有権を取得したことを主張するためには、当該時計の引渡しの当時、自己に過失がなかったことを立証しなければならない。
競売と即時取得 最三小判昭和42年5月30日
概要
判例
判旨:「執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であつても、競落人は、192条の要件を具備するときは、同条によつて右動産の所有権を取得できるものと解すべきである。」
過去問・解説
(R1 司法 第7問 エ)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。この場合において、Bの債権者により甲が強制競売に付され、Fは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、甲を競落し、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
道路運送車両法による登録を抹消された自動車と即時取得 最二小判昭和45年12月4日
概要
判例
判旨:「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、同法5条1項および自動車抵当法5条(昭和44年法律第68号による改正前のもの)の規定により所有権の得喪ならびに抵当権の得喪および変更につき登録を対抗要件とするものではなく、また同法20条により質権の設定を禁じられるものではないのであるから、取引保護の要請により、一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。
そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、同法16条(昭和44年法律第68号による改正前のもの)の規定により抹消登録を受けた場合においても同様である。」
過去問・解説
(R1 司法 第7問 ア)
Aは、その所有する動産甲をBに保管させていた。この場合において、Bは、甲をCに売却し、Cは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が道路運送車両法による登録を抹消された自動車であった場合、Cは、即時取得により甲の所有権を取得することができない。
指図による占有移転と即時取得 最三小判昭和57年9月7日
概要
判例
判旨:「Aが右寄託者台帳上の寄託者名義の変更によりBから本件豚肉につき占有代理人をCとする指図による占有移転を受けることによつて民法192条にいう占有を取得したものであるとした原審の判断は、正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H28 予備 第5問 オ)
Aは、甲をBに賃貸していたところ、Bが甲をCに寄託した。その後、BがAに無断で甲をDに売却するとともに、Cに対し以後Dのために甲を占有するように命じた。Dは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、Cによる甲の占有を承諾した。この場合、Aは、Dに対し、甲の返還を求めることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.9.7)は、指図による占有移転の方法による占有取得は、「動産の占有を始めた」(192条)に含まれる旨判示している。BがAに無断で甲をDに売却するとともに、Cに対し以後Dのために甲を占有するように命じ、Dは、Cによる甲の占有を承諾しており、このことから、Dは、指図による占有移転(184条)の方法によって甲の占有を取得したといえる。そうすると、甲がBの所有物であると過失なく信じているDは、即時取得(192条)により甲の所有権を取得するから、反対にAは、甲の所有権を失う。したがって、この場合、Aは、Dに対し、甲の返還を求めることができない。
(R2 共通 第8問 ウ)
Aは、B所有の宝石をBから賃借して引渡しを受けた上、宝石をCに預けていたが、宝石をDに売却し、Cに対し、宝石を今後Dのために占有するよう命じ、Dがこれを承諾した。この場合、Dは、宝石がA所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなかったとしても、即時取得により宝石の所有権を取得することはない。
登録を受けている自動車と即時取得 最二小判昭和62年4月24日
概要
判例
判旨:「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、登録が所有権の得喪並びに抵当権の得喪及び変更の公示方法とされているのであるから(同法5条1項、自動車抵当法5条1項)、民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」
過去問・解説
(H19 司法 第9問 5)
登録を受けている自動車については、動産の即時取得の規定は適用されない。
(H23 司法 第9問 1)
即時取得の規定は、取引の相手方を保護する制度であるが、道路運送車両法による登録を受けている自動車については、その登録が抹消されない限り即時取得の規定の適用はない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭62.4.24)は、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、…民法192条の適用はないものと解するのが相当であ…る。」と判示している。
これに対し、判例(最判昭45.12.4)は、「道路運送車両法による登録を受けていない自動車は、…一般の動産として民法192条の規定の適用を受けるべきものと解するのを相当とする。」と判示した上で、「そして、この理は、道路運送車両法により登録を受けた自動車が、…抹消登録を受けた場合においても同様である。」と判示している。
したがって、道路運送車両法による登録を受けている自動車については、その登録が抹消されない限り即時取得の規定の適用はないといえる。
(H28 司法 第9問 オ)
Aがその占有する中古自動車をBに売却し、現実に引き渡した場合において、当該中古自動車につき道路運送車両法による登録がされていたときは、Bは、即時取得により当該中古自動車の所有権を取得することができない。
盗品又は遺失物の回復とその間の所有者 大判大正10年7月8日
概要
②193条にいう「回復」とは、占有者が一旦その盗品・遺失物について即時取得した所有権その他の本権を回復するということではなく、単に占有物の返還をすることを意味する。
判例
②193条にいう「回復」の意義が問題となった。
判旨:「民法第193条ハ平穏公然善意無過失ニ動産ノ占有ヲ始メタル場合(即法文ニ所謂前条ノ場合)ト雖モ若シ其物カ盗品又ハ遺失物ナルトキハ占有者ハ盗難又ハ遺失ノ時ヨリ2年内ニ被害者又ハ遺失主ヨリ回復ノ請求ヲ受ケサルトキニ限リ始メテ其物ノ上ニ行使スル権利ヲ取得スト云ウ旨趣ニシテ従テ又回復ト云ウハ占有者カ一旦其物ニ付キ即時ニ取得シタル所有権其他ノ本権ヲ回復スルノ謂ニ非ス単ニ占有物ノ返還ト云ウコトヲ意味スルモノニ外ナラス欺カル解釈ヲ採ラサル可カラサルコトハ占有ノ不任意喪失ト云ウ点ニ於テ畢竟同一ニ帰著スル場合ノ規定タル同法第195条ノ行文トノ対照上明白ナルノミナラス法文ニ依レハ所謂回復請求権ヲ有スル者ハ即被害者又ハ遺失主ナルコトニ徴スルモ亦明白ナリ何者被害者又ハ遺失主トハ単ニ盗難又ハ遺失ニ依リ不任意ニ其占有ヲ喪失シタル者ヲ意味スルニ止マリ決シテ何等カ其物ニ付キ本権ヲ有スル者タルヲ必要トセサルコトハ言ヲ竢タサル所ナルヲ以テ今若シ回復ト云ウコトハ本権ノ回復ヲ指スモノトセムカ其帰スルトコロ自己カ始メヨリ之ヲ有セサル権利ヲ回復スト云ウカ如キ極メテ奇異ナル結果ヲ観ルニ至ル可ケレハナリ。」
過去問・解説
(H18 司法 第14問 オ)
Aがその所有するギター(以下「甲」という。)をBに貸していたところ、無職のCが金に困ってBから甲を盗み、自分の物だと称して友人のDに売却した。Dは、甲がCの所有物だと過失なく信じて、その引渡しを受けた。この場合、Bが盗まれた時から2年間は、Dは、甲の所有権を取得することができない。
(R2 共通 第8問 オ)
Aは、BがCから賃借していた宝石を盗み、Dに贈与した。Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合、Bは、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(大判大10.7.8)は、193条にいう「回復」とは、占有者が一旦その盗品・遺失物について即時取得した所有権その他の本権を回復するということではなく、単に占有物の返還を受けることを意味する旨判示している。この判例の理解によれば、193条の「被害者」は、所有者その他の本権者に限られず、賃借人や受寄者などの、所有権その他の本権を有しない占有者を含むと解される。
本肢においては、Aが、BがCから賃借していた宝石を盗み、Dに贈与し、Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合、Dは当該宝石について、192条の要件を満たす占有を始めた者であるといえる。そして、当該宝石は「盗品」に当たり、Bは当該宝石の賃借人であるから「被害者」に当たる。したがって、Bは、193条の要件を満たすから、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる。
商人から買い受けた者と即時取得 最三小判平成12年6月27日
概要
判例
判旨:「盗品又は遺失物(以下「盗品等」という。)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という。)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。けだし、民法194条は、盗品等を競売若しくは公の市場において又はその物と同種の物を販売する商人から買い受けた占有者が同法192条所定の要件を備えるときは、被害者等は占有者が支払った代価を弁償しなければその物を回復することができないとすることによって、占有者と被害者等との保護の均衡を図った規定であるところ、被害者等の回復請求に対し占有者が民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒む場合には、被害者等は、代価を弁償して盗品等を回復するか、盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には盗品等の所有者として占有取得後の使用利益を享受し得ると解されるのに、被害者等が代価の弁償を選択した場合には代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、占有者の地位が不安定になること甚だしく、両者の保護の均衡を図った同条の趣旨に反する結果となるからである。また、弁償される代価には利息は含まれないと解されるところ、それとの均衡上占有者の使用収益を認めることが両者の公平に適うというべきである。」
過去問・解説
(H23 司法 第9問 5)
動産が盗品であることについて善意無過失で競売により取得してこれを占有している者は、被害者から当該盗品の返還請求を受けたとしても、競売代金相当額の支払を被害者から受けるまでは盗品の引渡しを拒むことができ、当該盗品の使用利益相当額を被害者に支払う必要もない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平12.6.27)は、「盗品又は遺失物(以下「盗品等」という。)の被害者又は遺失主(以下「被害者等」という。)が盗品等の占有者に対してその物の回復を求めたのに対し、占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う権限を有すると解するのが相当である。」と判示している。
本肢においては、動産が盗品であることについて善意無過失で競売により取得してこれを占有している者は、194条の規定の要件を満たすため、被害者から当該盗品の返還請求を受けたとしても、競売代金相当額の支払を被害者から受けるまでは盗品の引渡しを拒むことができる。
そして、当該占有者は、上記の判例の理解に基づけば、当該盗品の使用収益を行う権限を有するから、当該盗品の使用利益相当額を被害者に支払う必要もない。
一般財団法人における理事の返還請求権 最二小判昭和32年2月22日
概要
判例
判旨:「法人の代表者は法人の機関であり、したがつて法人の代表者が法人の業務上なす物の所持は法人そのものの占有、すなわち法人の直接占有と解すべく、またこの場合代表者は所論民法197条後段の代理占有者でもないと解するを相当とする。」
過去問・解説
(H22 司法 第8問 ウ)
一般財団法人の理事が専ら法人の業務として管理している物を他人が侵奪した場合において、その他人に対し占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は、その一般財団法人であり、理事個人ではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭32.2.2)は、「法人の代表者は法人の機関であり、したがつて法人の代表者が法人の業務上なす物の所持は法人そのものの占有、すなわち法人の直接占有と解すべく、またこの場合代表者は所論民法197条後段の代理占有者でもないと解するを相当とする。」と判示している。そうすると、一般財団法人の理事が専ら法人の業務として管理している物は、当該一般財団法人が直接占有している物であると解され、理事は197条後段の「他人のために占有する者」にも当たらない。
したがって、当該物を他人が侵奪した場合において、その他人に対し占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は、当該物を直接占有しているその一般社団法人であり、当該物を直接占有しておらず、同条後段の「他人のために占有する者」にも当たらない理事個人ではないといえる。
占有回収の訴えにおける「占有を奪われたとき」 大判大正11年11月27日
概要
判例
判旨:「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス故ニ占有者カ他人ニ任意ニ物ノ占有ヲ移転シタルトキハ仮令其ノ移転ノ意思カ他人ノ欺罔ニ因リテ生シタル場合ナリトスルモ占有侵奪ノ事実アリト謂フヲ得ス。」
過去問・解説
(H26 司法 第10問 3)
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合、Bは、Fに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大11.11.27)は、「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス。」と判示している。この判例の理解によれば、占有者が遺失した物を他人が拾った場合は、200条1項の「占有を奪われたとき」に当たらないといえる。
したがって、Bが研究室から自宅に甲を持ち帰る途中、電車内に甲を置き忘れたところ、Fがこれを拾得して現に所持している場合は、「占有を奪われたとき」に当たらず、Bは、Fに対し、同項の占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(R2 司法 第9問 エ)
Aは、自己の所有する自転車をBに詐取された。この場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大11.11.27)は、「民法第200条第1項ノ「占有者カ其ノ占有物ヲ奪ハレタルトキ」トハ占有者カ其ノ意思ニ因ラスシテ物ノ所持ヲ失ヒタル場合ヲ指称スルモノナレハ占有侵奪ノ事実アルニハ占有者自ラ占有ノ意思ヲ失ヒタルニ非サルコトヲ要ス故ニ占有者カ他人ニ任意ニ物ノ占有ヲ移転シタルトキハ仮令其ノ移転ノ意思カ他人ノ欺罔ニ因リテ生シタル場合ナリトスルモ占有侵奪ノ事実アリト謂フヲ得ス。」と判示している。したがって、Aは、自己の所有する自転車をBに詐取されているが、これは200条1項の「占有を奪われたとき」には当たらない。よって、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができない。
200条2項但書にいう「侵奪の事実を知っていたとき」 最一小判昭和56年3月19日
概要
判例
判旨:「占有者がその占有の侵奪者の特定承継人に対して占有回収の訴を提起することができるのは、その者が右侵奪の事実を知つて占有を承継した場合に限られるが、この場合侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 司法 第10問 2)
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが目を離した隙に、Dが甲を盗み出した上、自己の物と偽ってEに売却し、引き渡した。甲にはA大学図書館の蔵書印が押捺されており、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていた場合であっても、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りない」と判示している。Eは、Bの甲に対する占有を侵奪したDの「特定承継人」(200条2項本文)であるから、Bが、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めるためには、Eが「侵奪の事実を知っていたとき」(同項ただし書)でなければならない。しかし、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていたにとどまり、占有の侵奪があったことの認識はなかった。したがって、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」には当たらず、同ただし書の要件を満たさないため、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(H26 予備 第5問 1)
Aが所有して占有する動産を奪ったBは、この動産をCに売って引き渡した。Cは、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかった。このとき、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかったにとどまり、少なくとも何らかの形での侵奪があったことについての認識を有していたとはいえないから、「承継人が侵奪の事実を知っていた」(同項ただし書)とはいえない。したがって、同ただし書の要件を満たさず、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができない。
(R2 司法 第9問 イ)
Aは、底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のパソコンをBに窃取された。その後、Bは、パソコンの外観に変更を加えることなく、パソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Cはパソコンの譲渡を受けた際、盗難の事情を知らなかったのであるから、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」に当たらない。したがって、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
占有の訴えと本権に基づく反訴許否 最一小判昭和40年3月4日
概要
判例
判旨:「民法202条2項は、占有の訴において本権に関する理由に基づいて裁判することを禁ずるものであり、従つて、占有の訴に対し防禦方法として本権の主張をなすことは許されないけれども、これに対し本権に基づく反訴を提起することは、右法条の禁ずるところではない。」
占有回収の訴えと占有の継続 最三小判昭和44年12月2日
概要
判例
判旨:「民法203条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり、ただ、占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 共通 第14問 イ)
留置権者が目的物の占有を奪われた場合、留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実の占有を回復すれば、留置権は消滅しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭44.12.2)は、「占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である。」と判示している。そうすると、302条本文は、「留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。」と規定しているものの、留置権者が目的物の占有を奪われた場合において、留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実の占有を回復すれば、現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されるから、同条本文は適用されず、留置権は消滅しない。
(H26 予備 第5問 2)
Aが所有して占有する動産を奪ったBが、この動産をCに売って引き渡した。AがCに対して占有回収の訴えを提起した場合、Aは、占有回収の訴えを提起したことにより占有を継続していたとみなされる。
(R4 共通 第11問 オ)
留置権者が留置物の占有を奪われたとしても、占有回収の訴えによってその物の占有を回復すれば、留置権は消滅しない。