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総則 882条~885条
相続財産を単独で占有し登記を経た場合における相続回復請求権の可否 最大判昭和53年12月20日
概要
判例
判旨:「共同相続人のうちの1人若しくは数人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうちその1人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由(たとえば、戸籍上はその者が唯一の相続人であり、かつ、他人の戸籍に記載された共同相続人のいることが分明でないことなど)があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合にはあたらず、したがつて、その1人又は数人は右のように相続権を侵害されている他の共同相続人からの侵害の排除の請求に対し相続回復請求権の時効を援用してこれを拒むことができるものではないものといわなければならない。」
過去問・解説
(H24 共通 第35問 5)
甲建物を所有していたAが死亡し、Aには子B、C及びDがいるが、遺産分割は未了である場合において、Bが遺産分割協議書を偽造して甲建物についてBへの所有権移転登記をした場合は、C及びDがその事実を知った時から5年以上経過後に当該登記の是正を請求するときでも、Bは、相続回復請求権の5年の短期消滅時効が完成したことを主張することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭53.12.20)は、本肢と同種の事案において、「共同相続人のうちの1人若しくは数人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうちその1人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由…があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合にはあたらず、したがつて、その1人又は数人は右のように相続権を侵害されている他の共同相続人からの侵害の排除の請求に対し相続回復請求権の時効を援用してこれを拒むことができるものではないものといわなければならない。」と判示している。
本肢においても、Bが遺産分割協議書を偽造して甲建物についてBへの所有権移転登記をしていることから、Bは、他に共同相続人がいること、ひいては相続財産のうちBの本来の持分を超える部分が他の共同相続人の持分に属する者であることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称していた場合に当たるといえる。したがって、C及びDがその事実を知った時から5年以上経過後に当該登記の是正を請求するときでも、Bは、相続回復請求権の5年の短期消滅時効(884条前段)が完成したことを主張することができない。
(R1 共通 第35問 ア)
共同相続人A及びBのうち、Bが遺産分割協議書を偽造して、相続財産である甲不動産についてBへの所有権移転登記をした場合、Bは、Aの相続回復請求権の消滅時効を援用することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭53.12.20)は、本肢と同種の事案において、「共同相続人のうちの1人若しくは数人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうちその1人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由…があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合にはあたらず、したがつて、その1人又は数人は右のように相続権を侵害されている他の共同相続人からの侵害の排除の請求に対し相続回復請求権の時効を援用してこれを拒むことができるものではないものといわなければならない。」と判示している。
本肢においても、共同相続人A及びBのうち、Bが遺産分割協議書を偽造して、相続財産である甲不動産についてBへの所有権移転登記をしていることから、Bは、他に共同相続人がいること、ひいては相続財産のうちBの本来の持分を超える部分が他の共同相続人の持分に属する者であることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称していた場合に当たるといえる。したがって、Bは、Aの相続回復請求権の消滅時効(884条)を援用することができない。
相続回復請求権と取得時効 最三小判令和6年3月19日
概要
判例
判旨:「民法884条所定の相続回復請求権の消滅時効と同法162条所定の所有権の取得時効とは要件及び効果を異にする別個の制度であって、特別法と一般法の関係にあるとは解されない。また、民法その他の法令において、相続回復請求の相手方である表見相続人が、上記消滅時効が完成する前に、相続回復請求権を有する真正相続人の相続した財産の所有権を時効により取得することが妨げられる旨を定めた規定は存しない。 そして、民法884条が相続回復請求権について消滅時効を定めた趣旨は、相続権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期かつ終局的に確定させることにある(最高裁昭和48年(オ)第854号同53年12月20日大法廷判決・民集32巻9号1674頁参照)ところ、上記表見相続人が同法162条所定の時効取得の要件を満たしたにもかかわらず、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成していないことにより、当該真正相続人の相続した財産の所有権を時効により取得することが妨げられると解することは、上記の趣旨に整合しないものというべきである。 以上によれば、上記表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるものと解するのが相当である。このことは、包括受遺者が相続回復請求権を有する場合であっても異なるものではない。したがって、被上告人は、本件不動産に係る上告人Y1及びAの各共有持分権を時効により取得することができる。」
過去問・解説
(R8 司法 第5問 ア)
相続回復請求の相手方となるべき者が相続財産の占有を継続し、取得時効の要件を満たしても、真正な相続人の相続回復請求権の消滅時効が完成するまでは、当該相続財産の所有権を時効により取得することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判令6.3.19)は、「民法884条所定の相続回復請求権の消滅時効と同法162条所定の所有権の取得時効とは要件及び効果を異にする別個の制度であって、特別法と一般法の関係にあるとは解されない。」とした上で、相続回復請求権の相手方である「表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるものと解するのが相当である。」としている。
したがって、相続回復請求の相手方となるべき者が相続財産の占有を継続し、取得時効の要件を満たした場合には、真正な相続人の相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該相続財産の所有権を時効により取得することができる。