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相続 - 解答モード
相続財産を単独で占有し登記を経た場合における相続回復請求権の可否 最大判昭和53年12月20日
概要
判例
判旨:「共同相続人のうちの1人若しくは数人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうちその1人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由(たとえば、戸籍上はその者が唯一の相続人であり、かつ、他人の戸籍に記載された共同相続人のいることが分明でないことなど)があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合にはあたらず、したがつて、その1人又は数人は右のように相続権を侵害されている他の共同相続人からの侵害の排除の請求に対し相続回復請求権の時効を援用してこれを拒むことができるものではないものといわなければならない。」
過去問・解説
(H24 共通 第35問 5)
甲建物を所有していたAが死亡し、Aには子B、C及びDがいるが、遺産分割は未了である場合において、Bが遺産分割協議書を偽造して甲建物についてBへの所有権移転登記をした場合は、C及びDがその事実を知った時から5年以上経過後に当該登記の是正を請求するときでも、Bは、相続回復請求権の5年の短期消滅時効が完成したことを主張することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭53.12.20)は、本肢と同種の事案において、「共同相続人のうちの1人若しくは数人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうちその1人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由…があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合にはあたらず、したがつて、その1人又は数人は右のように相続権を侵害されている他の共同相続人からの侵害の排除の請求に対し相続回復請求権の時効を援用してこれを拒むことができるものではないものといわなければならない。」と判示している。
本肢においても、Bが遺産分割協議書を偽造して甲建物についてBへの所有権移転登記をしていることから、Bは、他に共同相続人がいること、ひいては相続財産のうちBの本来の持分を超える部分が他の共同相続人の持分に属する者であることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称していた場合に当たるといえる。したがって、C及びDがその事実を知った時から5年以上経過後に当該登記の是正を請求するときでも、Bは、相続回復請求権の5年の短期消滅時効(884条前段)が完成したことを主張することができない。
(R1 共通 第35問 ア)
共同相続人A及びBのうち、Bが遺産分割協議書を偽造して、相続財産である甲不動産についてBへの所有権移転登記をした場合、Bは、Aの相続回復請求権の消滅時効を援用することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最大判昭53.12.20)は、本肢と同種の事案において、「共同相続人のうちの1人若しくは数人が、他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうちその1人若しくは数人の本来の持分をこえる部分が他の共同相続人の持分に属するものであることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由…があるわけではないにもかかわらずその部分もまた自己の持分に属するものであると称し、これを占有管理している場合は、もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合にはあたらず、したがつて、その1人又は数人は右のように相続権を侵害されている他の共同相続人からの侵害の排除の請求に対し相続回復請求権の時効を援用してこれを拒むことができるものではないものといわなければならない。」と判示している。
本肢においても、共同相続人A及びBのうち、Bが遺産分割協議書を偽造して、相続財産である甲不動産についてBへの所有権移転登記をしていることから、Bは、他に共同相続人がいること、ひいては相続財産のうちBの本来の持分を超える部分が他の共同相続人の持分に属する者であることを知りながらその部分もまた自己の持分に属するものであると称していた場合に当たるといえる。したがって、Bは、Aの相続回復請求権の消滅時効(884条)を援用することができない。
相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄隠匿行為と相続欠格事由 最三小判平成9年1月28日
概要
判例
判旨:「相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である。けだし、同条5号の趣旨は遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにあるが(最高裁昭和55年(オ)第596号同56年4月3日第二小法廷判決・民集35巻3号431頁参照)、遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条5号の趣旨に沿わないからである。」
過去問・解説
(H22 司法 第34問 3)
判例によれば、相続に関する被相続人の遺言書を破棄した者は、破棄が相続に関する不当な利益を得ることを目的とするものでない場合であっても、相続人となることができない。
(H28 司法 第34問 イ)
判例によれば、相続人による遺言書の破棄又は隠匿は、相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、相続人の欠格事由に当たらない。
身元保証人たる地位と相続 大判昭和18年9月10日
概要
判例
判旨:「身元保証契約ハ保証人ト身元本人トノ相互ノ信用ヲ基礎トシテ成立シ存続スヘキモノナレハ特別ノ事情ナキ限リ該契約ハ当事者其人ト終始スヘキ専属的性質ヲ有スルモノト云フヘク従テ保証人ノ死亡ニ因リ相続開始スルモソノ相続人ニ於テ契約上ノ義務ヲ承継シ相続開始後ニ生シタル保証契約上ノ事故ニ付ソノ責ニ任スルコトナキモノトス(当院昭和2年(オ)第33号同年7月4日判決参照)而シテ身元保証ニ関スル法律ニ於テハ右ニ反スル趣旨ノ特別ナル規定存セサルノミナラス如上ノ帰結ハ身元保証契約ノ性質上自ラ首肯セラルヘクコノ事ハ又既ニ判例ノ示ストコロナレハ敢テ明文ヲ要セストナシタルノ法意ヲ推知スルニ足リ従テ右法律施行ノ前後ニヨリ其ノ解釈ヲ異ニスヘキモノニアラス然レハ右ト同趣旨ニ出テタル原判決ハ正当ニシテ所論ノ如キ違法ナク論旨ハ独自ノ見地ニ於テ批議スルニ帰シソノ理由ナシ。」
家屋賃借人の死亡と内縁の妻の賃借権の承継の有無 最三小判昭和42年2月21日
概要
判例
判旨:「A1は亡Bの内縁の妻であつて同人の相続人ではないから、Bの死亡後はその相続人であるA2ら4名の賃借権を援用してCに対し本件家屋に居住する権利を主張することができると解すべきである(最高裁昭和34年(オ)第692号、同37年12月25日第三小法廷判決、民集16巻12号2455頁参照)。しかし、それであるからといつて、A1が前記4名の共同相続人らと並んで本件家屋の共同賃借人となるわけではない。」
過去問・解説
(H18 司法 第24問 ウ)
前妻Bとの間に既に独立した子CがいるAが、アパートを賃借して内縁の妻Dとともに居住していたが死亡した場合、同アパートの賃借人の権利義務はDが承継する。
(H20 司法 第31問 1)
建物賃借人Aの内縁の妻Bは、Aが死亡した場合、Aの相続人と並んで同建物の共同賃借人となるので、同建物に居住する権利を主張することができる。
不動産の引渡義務が共同相続された場合、相手方は、共同相続人の1人に対して履行を請求することができるか 大判昭和10年11月22日
概要
判例
判旨:「被相続人カ第三者所有ニ係ル不動産ヲ取得シ之ヲ相手方ニ譲渡スヘキ義務ヲ負担セル場合ニ於テ数人ノ相続人カ遺産相続ヲ為シ其債務ヲ承継シタルトキハ各遺産相続人ハ不可分債務ヲ負担スルニ至リ相手方ハ遺産相続人ノ1人ニ対シ全部ノ履行ヲ求メ得ルハ多言ヲ俟タサルノミナラス偶々遺産相続人ノ或者カ其不動産ヲ所有シ居リタル場合ニ於テモ亦渝ルトコロ無シ否斯カルハ相手方トシテモ亦債務者トシテモ寧ロ好都合ニ外ナラス何者相手方ニ於テ右ノ遺産相続人ニ対シ直チニ其債務ノ履行ヲ請求スルトキハ第三者ヨリ之ヲ取得スル手数ノ如キハ此際之ヲ要スルコト無クシテ容易ニ目的ヲ達スルヲ得ヘケレハナリ。」
慰謝料請求権と相続 最大判昭和42年11月1日
概要
判例
判旨:「案ずるに、ある者が他人の故意過失によつて財産以外の損害を被つた場合には、その者は、財産上の損害を被つた場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し、右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。そして、当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰藉料請求権を相続するものと解するのが相当である。けだし、損害賠償請求権発生の時点について、民法は、その損害が財産上のものであるか、財産以外のものであるかによつて、別異の取扱いをしていないし、慰藉料請求権が発生する場合における被害法益は当該被害者の一身に専属するものであるけれども、これを侵害したことによつて生ずる慰藉料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく、民法711条によれば、生命を害された被害者と一定の身分関係にある者は、被害者の取得する慰藉料請求権とは別に、固有の慰藉料請求権を取得しうるが、この両者の請求権は被害法益を異にし、併存しうるものであり、かつ、被害者の相続人は、必ずしも、同条の規定により慰藉料請求権を取得しうるものとは限らないのであるから、同条があるからといつて、慰藉料請求権が相続の対象となりえないものと解すべきではないからである。」
過去問・解説
(H20 司法 第34問 3)
不法行為による生命侵害の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明していなければ、相続人には承継されない。
(H23 共通 第30問 イ)
不法行為による生命侵害の場合、被害者が加害者に対して取得した慰謝料請求権は、被害者の相続人に相続される。
(R1 共通 第34問 エ)
被相続人が他人の過失による交通事故によって即死した場合でも、その事故による被相続人の精神的損害についての慰謝料請求権は、相続の対象となる。
占有と相続 最一小判昭和44年10月30日
概要
判例
判旨:「被相続人の事実的支配の中にあつた物は、原則として、当然に、相続人の支配の中に承継されるとみるべきであるから、その結果として、占有権も承継され、被相続人が死亡して相続が開始するときは、特別の事情のないかぎり、従前その占有に属したものは、当然相続人の占有に移ると解すべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第35問 3)
被相続人が有していた占有権は、相続人が相続財産について事実的支配をしないと、相続されない。
(H23 司法 第10問 5)
所有の意思をもって物を占有していた被相続人から相続人が相続により占有を承継した場合、被相続人が所有の意思をもって占有していたことをその相続人が知った時に、その相続人の占有は、所有の意思のある占有となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭44.10.30)は、「被相続人の事実的支配の中にあつた物は、原則として、当然に、相続人の支配の中に承継されるとみるべきであるから、その結果として、占有権も承継され、被相続人が死亡して相続が開始するときは、特別の事情のないかぎり、従前その占有に属したものは、当然相続人の占有に移ると解すべきである。」と判示している。そして、相続は包括承継である(896条参照)から、相続により占有を承継する場合には、相続人は被相続人と同一の性質を有する占有を承継する。
したがって、所有の意思をもって物を占有していた被相続人から相続人が相続により占有を承継した場合は、被相続人が所有の意思をもって占有していたことをその相続人が知ったか否かにかかわらず、その相続人の占有は、当然に所有の意思のある占有となる。
(R4 司法 第33問 ウ)
土地を権原なく占有していた被相続人が死亡して相続が開始した場合、被相続人のその土地に対する占有は、相続人によって承継されない。
相続人が遺産分割前に遺産である金銭を保管している他の相続人に対して自己の相続分相当の金銭の支払を請求することの可否 最二小判平成4年4月10日
概要
判例
判旨:「相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H23 共通 第34問 イ)
判例によれば、共同相続が生じたとき、相続財産を構成する金銭は、相続開始と同時に各自の相続分に従い当然に分割され、遺産分割の対象とならない。
(H28 共通 第33問 ウ)
共同相続が生じた場合、相続人の1人であるAは、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人Bに対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。
相続財産の共有の性質及び遺産分割の方法 最三小判昭和30年5月31日
概要
判例
判旨:「相続財産の共有(民法898条、旧法1002条)は、民法改正の前後を通じ、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。」
過去問・解説
(H24 共通 第35問 3)
甲建物を所有していたAが死亡し、Aには子B、C及びDがいるが、遺産分割は未了である場合、遺産分割がされる前であっても、甲建物について、B、C及びDの法定相続分に応じた持分の割合により、相続を原因とする所有権移転登記をすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭30.5.31)は、「相続財産の共有(民法898条、旧法1002条)は、民法改正の前後を通じ、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。」と判示している。そうすると、相続が開始すると、個々の相続財産について、各相続人がその法定相続分に応じた持分を有するといえ、遺産分割前においても、各相続人は、自己の持分に基づき所有権移転登記をすることができるといえる。したがって、本肢においては、遺産分割がされる前であっても、甲建物について、B、C及びDの法定相続分に応じた持分の割合により、相続を原因とする所有権移転登記をすることができる。
遺言がない場合における遺産分割の方法 最三小判昭和62年9月4日
概要
判例
判旨:「遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」
共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力 最一小判平成17年9月8日
概要
判例
判旨:「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第18問 ア)
相続開始から遺産分割までの間に相続財産である賃貸不動産から生ずる賃料債権は、各共同相続人が、その相続分に応じ、分割債権として確定的に取得する。
(R1 共通 第35問 エ)
A及びBが共同相続した甲不動産をAが遺産分割協議により取得した場合において、相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は、その協議で特に定めなかったときは、Aに帰属する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.9.8)は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判示している。したがって、相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は、A及びBがその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、この帰属は、A及びBが共同相続した甲不動産をAが遺産分割協議により取得し、甲不動産について生じた上記賃料債権について、その協議で特に定めなかったという事情に影響されない。
(R4 司法 第33問 オ)
遺産である賃貸不動産から相続開始後に生じた賃料債権は、遺産分割によって当該不動産を取得した者が、相続開始時に遡って取得する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.9.8)は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判示している。
(R6 司法 第35問 エ)
遺産に属する甲建物を共同相続人A及びBのうちAが遺産分割により単独で取得したときは、相続開始から遺産分割までの間に甲建物について生じた賃料債権は、Aがその全額を取得する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.9.8)は、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。」と判示している。したがって、相続開始から遺産分割までの間に甲建物について生じた賃料債権は、A及びBがその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、この帰属は、甲建物を共同相続人A及びBのうちAが遺産分割により単独で取得したという事情に影響されない。
共同相続人の1人が遺産たる特定不動産に対する共有持分権を譲渡した場合と905条の適用又は類推適用の可否 最一小判昭和53年7月13日
概要
判例
判旨:「共同相続人の1人が遺産を構成する特定の不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲り渡した場合については、民法905条の規定を適用又は類推適用することはできないものと解すべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第34問 ア)
AB夫婦の間に子CDがいる場合、判例によれば、Aの死亡後、遺産の分割前に、Cが、Aの遺産に含まれる特定の土地の持分4分の1を第三者Eに売り渡したときは、Dは、その価額及び費用を償還して、Eから当該持分を取り戻すことができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭53.7.13)は、「共同相続人の1人が遺産を構成する特定の不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲り渡した場合については、民法905条の規定を適用又は類推適用することはできないものと解すべきである。」と判示している。そして、905条1項は、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」と規定している。したがって、Aの死亡後、遺産の分割前に、Cが、Aの遺産に含まれる特定の土地の持分4分の1を第三者Eに売り渡したときは、905条1項は適用ないし類推適用されないため、Dは、その価額及び費用を償還して、Eから当該持分を取り戻すことができない。
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者と遺産確認の訴えの当事者適格 最二小判平成26年2月14日
概要
判例
判旨:「遺産確認の訴えは、その確定判決により特定の財産が遺産分割の対象である財産であるか否かを既判力をもって確定し、これに続く遺産分割審判の手続等において、当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することを目的とする訴えであり、そのため、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟と解されているものである(最高裁昭和57年(オ)第184号同61年3月13日第一小法廷判決・民集40巻2号389頁、最高裁昭和60年(オ)第727号平成元年3月28日第三小法廷判決・民集43巻3号167頁参照)。しかし、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり、遺産分割審判の手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないのであるから、その者との間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要性はないというべきである。そうすると、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと解するのが相当である。」
遺産分割協議と合意解除及び再分割協議の可否 最一小判平成2年9月27日
概要
判例
判旨:「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではな…い。」
相続人の一部を除外して行った遺産分割協議の効力 最二小判昭和54年3月23日
概要
判例
判旨:「母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず分娩の事実により当然に発生するものと解すべきであつて(最高裁判所昭和35年(オ)第1189号同37年4月27日第二小法廷判決・民集16巻7号1347頁参照)、母子関係が存在する場合には認知によつて形成される父子関係に関する民法784条但書を類推適用すべきではなく、また、同法910条は、取引の安全と被認知者の保護との調整をはかる規定ではなく、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整をはかる規定であつて、遺産分割その他の処分のなされたときに当該相続人の他に共同相続人が存在しなかつた場合における当該相続人の保護をはかるところに主眼があり、第三取得者は右相続人が保護される場合にその結果として保護されるのにすぎないのであるから、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになつた場合については同法条を類推適用することができないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 共通 第34問 4)
嫡出でない子がいる母の死亡による相続について、その子が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人らがその子の存在を知らないまま、既に遺産分割の協議を成立させていたときは、その子は、他の共同相続人らに対し、価額のみによる支払の請求権を有する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭54.3.23)は、「910条は、取引の安全と被認知者の保護との調整をはかる規定ではなく、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整をはかる規定であつて、遺産分割その他の処分のなされたときに当該相続人の他に共同相続人が存在しなかつた場合における当該相続人の保護をはかるところに主眼があり、第三取得者は右相続人が保護される場合にその結果として保護されるのにすぎないのであるから、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになつた場合については同法条を類推適用することができないものと解するのが相当である。」と判示している。そして、910条は、「相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。」と規定している。
したがって、嫡出でない子がいる母の死亡による相続について、その子が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人らがその子の存在を知らないまま、既に遺産分割の協議を成立させていたときは、910条は類推適用されないから、その子は、他の共同相続人らに対し、価額のみによる支払の請求権を有しない。
遺産分割方法の指定と遺言 最二小判平成3年4月19日
概要
②特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要することなく、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに当該相続人に相続により承継される。
判例
②遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合において、当該遺産が当該相続人に相続により承継されるためには、何らかの行為を要するかが問題となった。
判旨:「被相続人の遺産の承継関係に関する遺言については、遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものであるところ、遺言者は、各相続人との関係にあっては、その者と各相続人との身分関係及び生活関係、各相続人の現在及び将来の生活状況及び資力その他の経済関係、特定の不動産その他の遺産についての特定の相続人のかかわりあいの関係等各般の事情を配慮して遺言をするのであるから、遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合、当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば、遺言者の意思は、右の各般の事情を配慮して、当該遺産を当該相続人をして、他の共同相続人と共にではなくして、単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺贈と解すべきではない。そして、右の「相続させる」趣旨の遺言、すなわち、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は、前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって、民法908条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも、遺産の分割の方法として、このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって、右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」
過去問・解説
(H25 司法 第9問 5)
相続財産のうち、特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言があった場合、その遺言で相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、その不動産の所有権は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により当該相続人に承継される。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。
(R1 共通 第35問 イ)
被相続人が、共同相続人A及びBのうち、Aに甲不動産を相続させる旨の遺言を残して死亡し、その遺言が遺産分割の方法の指定と解される場合であっても、AB間の遺産分割協議を経なければ、Aは甲不動産を取得することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、AB間の遺産分割協議を経ることなく、Aは甲不動産を取得することができる。
(R4 司法 第6問 オ)
Aがその所有する甲土地を相続人Bに承継させる旨の遺言をして死亡した場合には、Bは、Bと共にAを相続したCに対し、登記がなくても、甲土地の単独所有権の取得を対抗することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。そうすると、本肢においては、Bと共にAを相続したCは、Aによる甲土地を相続人Bに承継させる旨の遺言に拘束されるから、899条の2第1項にいう「第三者」に当たらない。したがって、Bは、Cに対し、登記がなくても、甲土地の単独所有権の取得を対抗することができる。
(R6 司法 第35問 ウ)
被相続人が、遺産に属する甲建物を共同相続人A及びBのうちAに承継させる旨の特定財産承継遺言をしたときであっても、Aは、遺産分割手続を経なければ、甲建物を取得することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、「遺言書において特定の遺産を特定の相続人に…「相続させる」趣旨の遺言は、正に…遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから、このような遺言にあっては、遺言者の意思に合致するものとして、遺産の一部である当該遺産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。」と判示している。したがって、本肢においても、Aは、遺産分割手続を経ることなく、甲建物を取得することができる。
共同相続された預貯金債権と遺産分割の対象 最大判平成28年12月19日
概要
判例
判旨:「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」
再転相続における相続放棄の順序 最三小判昭和63年6月21日
概要
判例
判旨:「民法916条の規定は、Aの相続につきその法定相続人であるBが承認又は放棄をしないで死亡した場合には、Bの法定相続人であるCのために、Aの相続についての熟慮期間をBの相続についての熟慮期間と同一にまで延長し、Aの相続につき必要な熟慮期間を付与する趣旨にとどまるのではなく、右のようなCの再転相続人たる地位そのものに基づき、Aの相続とBの相続のそれぞれにつき承認又は放棄の選択に関して、各別に熟慮し、かつ、承認又は放棄をする機会を保障する趣旨をも有するものと解すべきである。そうであつてみれば、CがBの相続を放棄して、もはやBの権利義務をなんら承継しなくなった場合には、Cは、右の放棄によつてBが有していたAの相続についての承認又は放棄の選択権を失うことになるのであるから、もはやAの相続につき承認又は放棄をすることはできないといわざるをえないが、CがBの相続につき放棄をしていないときは、Aの相続につき放棄をすることができ、かつ、Aの相続につき放棄をしても、それによつてはBの相続につき承認又は放棄をするのになんら障害にならず、また、その後にCがBの相続につき放棄をしても、Cが先に再転相続人たる地位に基づいてAの相続につきした放棄の効力がさかのぼつて無効になることはないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 司法 第33問 エ)
判例によれば、Aが死亡し(第1相続)、その相続の承認又は放棄をすべき期間中に、Aの相続人であるAの子Bが死亡した場合(第2相続)、Bの相続人であるBの子Cは、第2相続の承認又は放棄をすべき期間中に、第1相続と第2相続についてともに相続の承認をすることができるが、第1相続を放棄して、第2相続のみを承認することはできない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭63.6.21)は、本肢と同種の事案において、「CがBの相続を放棄して、もはやBの権利義務をなんら承継しなくなった場合には、Cは、右の放棄によつてBが有していたAの相続についての承認又は放棄の選択権を失うことになるのであるから、もはやAの相続につき承認又は放棄をすることはできないといわざるをえないが、CがBの相続につき放棄をしていないときは、Aの相続につき放棄をすることができ、かつ、Aの相続につき放棄をしても、それによつてはBの相続につき承認又は放棄をするのになんら障害にならず、また、その後にCがBの相続につき放棄をしても、Cが先に再転相続人たる地位に基づいてAの相続につきした放棄の効力がさかのぼつて無効になることはないものと解するのが相当である。」と判示している。したがって、Cは、第2相続の承認又は放棄をすべき期間中に、第1相続と第2相続についてともに相続の承認をすることができ、また、第1相続を放棄して、第2相続のみを承認することもできる。
相続の放棄申述受理の無効を訴訟において主張することの許否 最三小判昭和29年12月24日
概要
判例
判旨:「家庭裁判所が相続放棄の申述を受理するには、その要件を審査した上で受理すべきものであることはいうまでもないが、相続の放棄に法律上無効原因の存する場合には後日訴訟においてこれを主張することを妨げない。」
921条1号本文による単純承認の効果が生じるための要件 最一小判昭和42年4月27日
概要
判例
判旨:「民法921条1号本文が相続財産の処分行為があつた事実をもって当然に相続の単純承認があったものとみなしている主たる理由は、本来、かかる行為は相続人が単純承認をしない限りしてはならないところであるから、これにより黙示の単純承認があるものと推認しうるのみならず、第三者から見ても単純承認があったと信ずるのが当然であると認められることにある(大正9年12月17日大審院判決、民録26輯2034頁参照)。したがって、たとえ相続人が相続財産を処分したとしても、いまだ相続開始の事実を知らなかったときは、相続人に単純承認の意思があったものと認めるに由ないから、右の規定により単純承認を擬制することは許されないわけであって、この規定が適用されるためには、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことを要するものと解しなければならない。」
過去問・解説
(H25 司法 第35問 ウ)
相続人が、自己のために相続が開始した事実を知りながら、限定承認又は相続放棄をする前に相続財産の全部又は一部を処分した場合、当該処分が保存行為に該当するときであっても、単純承認をしたものとみなされる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭42.4.27)は、921条1号本文の適用について、「この規定が適用されるためには、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことを要するものと解しなければならない。」と判示している。そして、同条本文は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」と規定し、同条1号本文は、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。」と規定している。
したがって、相続人が、自己のために相続が開始した事実を知りながら、限定承認又は相続放棄をする前に相続財産の全部又は一部を処分した場合は、同号本文が規定する場合に当たり、同条本文が適用されるから、原則として、単純承認をしたものとみなされる。
しかし、同号ただし書は、「ただし、保存行為…をすることは、この限りでない。」と規定している。よって、当該処分が保存行為に該当するときは、例外的に、単純承認をしたものとみなされない。
(R4 司法 第35問 ア)
相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産に属する土地を売却したときは、その相続人は、単純承認をしたものとみなされる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭42.4.27)は、921条1号本文の適用について、「この規定が適用されるためには、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことを要するものと解しなければならない。」と判示している。そして、同条本文は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」と規定し、同条1号本文は、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。」と規定している。
したがって、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産に属する土地を売却したときは、同号本文が規定する場合に当たり、その相続人は、単純承認をしたものとみなされる。
限定承認と判決主文における留保 大判昭和7年6月2日
概要
判例
判旨:「相続ノ限定承認ハ相続債務及遺贈ニ関スル相続人ノ責任ヲ相続財産ニ限定スルモノニ過キサルヲ以テ相続人ハ限定承認ヲ為シタル場合ニ於テモ毫モ被相続人ノ負担シタル債務ヲ免ルルモノニアラス相続人ハ之ヲ支払フヘキ全部ノ義務ヲ継承シ債権者ハ相続人ニ対シ其ノ全額ノ支払ヲ求メ得ルニ於テ単純承認アリタル場合ト何等差異アルモノニアラス其ノ異ルハ唯限定承認ヲ為シタル場合ニアリテハ相続人ハ其ノ固有ノ財産ヲ以テ右債務ノ弁済ヲ為スヲ要セサルコト即債権者ハ相続債務ニ付キテハ相続人ノ固有財産ニ対シ強制執行ヲ為スコトヲ得サルノ点ニ於テ存ス相続ノ限定承認ハ右ノ如ク債務ノ存在ヲ限定スルモノニアラス単ニ其ノ責任即強制執行ノ範囲ヲ限定スルモノニ過キサルカ故ニ相続ニ関スル給付ノ判決ハ相続ノ限定承認アリタル場合ト雖モ債務ノ全部ニ付キ之ヲ為スヘキモノニシテ相続財産カ総債務ノ弁済ニ不足ナルノ故ヲ以テ其ノ言渡額ヲ制限セラルヘキニアラサルト共ニ其ノ債務ハ又債務者ノ固有財産ニ対シ強制執行ヲ為シ得サルヘキ性質ヲ有スルモノナルカ故ニ其ノ執行力ヲ制限スルカ為メ之ニ対シ相続財産ノ存スル限度ニ於テ之ヲ執行シ得ヘキ旨ヲ表示スル留保ヲ附スルコトヲ相当トス蓋無留保ニテ其ノ言渡ヲ為スモノトセンカ判決ハ当然主文ノ表示スル範囲ノ請求ニ付キ無制限ノ執行力ヲ付与セラレ民法カ相続ノ限定承認ヲ認メタルノ主旨ト相反スルノ結果ヲ発生スヘキヲ以テナリ。」
限定承認者の相続債権者への対抗 最二小判平成10年2月13日
概要
判例
判旨:「不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができないというべきである。けだし、被相続人の財産は本来は限定承認者によって相続債権者に対する弁済に充てられるべきものであることを考慮すると、限定承認者が、相続債権者の存在を前提として自ら限定承認をしながら、贈与者の相続人としての登記義務者の地位と受贈者としての登記権利者の地位を兼ねる者として自らに対する所有権移転登記手続をすることは信義則上相当でないものというべきであり、また、もし仮に、限定承認者が相続債権者による差押登記に先立って所有権移転登記手続をすることにより死因贈与の目的不動産の所有権取得を相続債権者に対抗することができるものとすれば、限定承認者は、右不動産以外の被相続人の財産の限度においてのみその債務を弁済すれば免責されるばかりか、右不動産の所有権をも取得するという利益を受け、他方、相続債権者はこれに伴い弁済を受けることのできる額が減少するという不利益を受けることとなり、限定承認者と相続債権者との間の公平を欠く結果となるからである。そして、この理は、右所有権移転登記が仮登記に基づく本登記であるかどうかにかかわらず、当てはまるものというべきである。」
過去問・解説
(R2 共通 第35問 エ)
不動産の死因贈与の受贈者Aが贈与者Bの相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づくBからAへの所有権移転登記が相続債権者Cによる差押登記よりも先にされたとしても、Aは、Cに対し、その不動産の所有権の取得を対抗することができない。
包括受遺者は存在する場合における951条の適用の可否 最二小判平成9年9月12日
概要
判例
判旨:「遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、 民法951条にいう「相続人のあることが明かでないとき」には当たらないものと解するのが相当である。けだし、同条から959条までの同法第5編第6章の規定は、相続財産の帰属すべき者が明らかでない場合におけるその管理、清算等の方法を定めたものであるところ、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有し(同法990条)、遺言者の死亡の時から原則として同人の財産に属した一切の権利義務を承継するのであって、相続財産全部の包括受遺者が存在する場合には前記各規定による諸手続を行わせる必要はないからである。」
過去問・解説
(H30 司法 第34問 ア)
相続人があることは明らかでないが、相続財産全部の包括受遺者があることは明らかである場合には、相続財産法人は成立しない。
(R5 司法 第35問 ア)
相続人が存在しない場合であっても、相続財産全部の包括受遺者が存在するときは、相続財産法人は成立しない。
952条2項の公告期間内に相続人の申し出をしなかった場合と相続権の主張 最二小判昭和56年10月30日
概要
判例
判旨:「民法958条の規定による公告期間内に相続人であることの申出をしなかつた者は、同法958条の2の規定により、右期間の徒過とともに、相続財産法人及びその後に財産が帰属する国庫に対する関係で失権するのであつて、特別縁故者に対する分与後の残余財産が存する場合においても、右残余財産について相続権を主張することは許されないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H30 司法 第34問 エ)
相続人は、相続人の捜索の公告の期間内に相続人としての権利を主張しなかった場合には、特別縁故者に対する相続財産の分与後、残余財産があったとしても、相続権を主張することができない。
被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者が相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することの可否 最一小判平成11年1月21日
概要
判例
判旨:「1 相続人が存在しない場合(法定相続人の全員が相続の放棄をした場合を含む。)には、利害関係人等の請求によって選任される相続財産の管理人が相続財産の清算を行う。管理人は、債権申出期間の公告をした上で(民法957条1項)、相続財産をもって、各相続債権者に、その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない(同条2項において準用する929条本文)。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することができない(同条但書)。この「優先権を有する債権者の権利」に当たるというためには、対抗要件を必要とする権利については、被相続人の死亡の時までに対抗要件を具備していることを要すると解するのが相当である。相続債権者間の優劣は、相続開始の時点である被相続人の死亡の時を基準として決するのが当然だからである。この理は、所論の引用する判例(大審院昭和13年(オ)第2385号同14年12月21日判決・民集18巻1621頁)が、限定承認がされた場合について、現在の民法929条に相当する旧民法1031条の解釈として判示するところであって、相続人が存在しない場合についてこれと別異に解すべき根拠を見いだすことができない。
したがって、相続人が存在しない場合には(限定承認がされた場合も同じ。)、 相続債権者は、被相続人からその生前に抵当権の設定を受けていたとしても、被相続人の死亡の時点において設定登記がされていなければ、他の相続債権者及び受遺者に対して抵当権に基づく優先権を対抗することができないし、被相続人の死亡後に設定登記がされたとしても、これによって優先権を取得することはない(被相続人の死亡前にされた抵当権設定の仮登記に基づいて被相続人の死亡後に本登記がされた場合を除く。)。
2 相続財産の管理人は、すべての相続債権者及び受遺者のために法律に従って弁済を行うのであるから、弁済に際して、他の相続債権者及び受遺者に対して対抗することができない抵当権の優先権を承認することは許されない。そして、優先権の承認されない抵当権の設定登記がされると、そのことがその相続財産の換価(民法957条2項において準用する932条本文)をするのに障害となり、管理人による相続財産の清算に著しい支障を来すことが明らかである。したがって、管理人は、被相続人から抵当権の設定を受けた者からの設定登記手続請求を拒絶することができるし、また、これを拒絶する義務を他の相続債権者及び受遺者に対して負うものというべきである。
以上の理由により、相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができないと解するのが相当である。」
法人の相続財産の分与請求権 名古屋高裁平成28年11月28日
概要
判例
判旨:「本件は、被相続人が入所していた施設を運営する抗告人が、被相続人の特別縁故者に該当するとして、被相続人の相続財産の分与を求めた…事案である。
抗告人は、被相続人の療養看護に努めた者として、民法958条の3第1項にいう特別縁故者に当たるというべきであり、精算後残存する被相続人の相続財産は、その全部を抗告人に分与するのが相当であると認められる。」
共有持分権と相続 最二小判平成元年11月24日
概要
判例
判旨:「昭和37年法律第40号による法の一部改正により、特別縁故者に対する財産分与に関する法958条の3の規定が、相続財産の国庫帰属に至る一連の手続の中に新たに設けられたのであるが、同規定は、本来国庫に帰属すべき相続財産の全部又は一部を被相続人と特別の縁故があった者に分与する途を開き、右特別縁故者を保護するとともに、特別縁故者の存否にかかわらず相続財産を国庫に帰属させることの不条理を避けようとするものであり、そこには、被相続人の合理的意思を推測探究し、いわば遺贈ないし死因贈与制度を補充する趣旨も含まれているものと解される。 そして、右958条の3の規定の新設に伴い、従前の法959条1項の規定が法959条として「前条の規定によつて処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。」と改められ、その結果、相続人なくして死亡した者の相続財産の国庫帰属の時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされ、従前の法959条1項の特別規定である法255条による共有持分の他の共有者への帰属時期も右財産分与手続の終了後とされることとなったのである。この場合、右共有持分は法255条により当然に他の共有者に帰属し、法958条の3に基づく特別縁故者への財産分与の対象にはなりえないと解するとすれば、共有持分以外の相続財産は右財産分与の対象となるのに、共有持分である相続財産は右財産分与の対象にならないことになり、同じ相続財産でありながら何故に区別して取り扱うのか合理的な理由がないのみならず、共有持分である相続財産であっても、相続債権者や受遺者に対する弁済のため必要があるときは、相続財産管理人は、これを換価することができるところ、これを換価して弁済したのちに残った現金については特別縁故者への財産分与の対象となるのに、換価しなかった共有持分である相続財産は右財産分与の対象にならないということになり、不合理である。さらに、被相続人の療養看護に努めた内縁の妻や事実上の養子など被相続人と特別の縁故があった者が、たまたま遺言等がされていなかったため相続財産から何らの分与をも受けえない場合にそなえて、 家庭裁判所の審判による特別縁故者への財産分与の制度が設けられているにもかかわらず、相続財産が共有持分であるというだけでその分与を受けることができないというのも、いかにも不合理である。これに対し、右のような場合には、共有持分も特別縁故者への財産分与の対象となり、右分与がされなかった場合にはじめて他の共有者に帰属すると解する場合には、特別縁故者を保護することが可能となり、 被相続人の意思にも合致すると思われる場合があるとともに、家庭裁判所における 相当性の判断を通して特別縁故者と他の共有者のいずれに共有持分を与えるのが妥当であるかを考慮することが可能となり、具体的妥当性を図ることができるのである。
したがって、共有者の1人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、法958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法255条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。」
過去問・解説
(H27 予備 第5問 3)
AとBが各2分の1の割合で甲土地を共有している。Aが死亡し、その相続人の不存在が確定するとともに、甲土地がAの特別縁故者に対する財産分与の対象にもならなかったときは、Aの有していた甲土地の持分はBに帰属する。
(H30 司法 第34問 ウ)
共有者の1人が相続人なくして死亡した場合において、相続債権者及び受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は他の共有者に帰属し、特別縁故者への財産分与の対象にはならない。
(R4 司法 第34問 ア)
甲土地の共有持分がAの相続財産に属する場合において、Aに相続人がおらず、かつAの債権者も受遺者もいないときは、その持分は他の共有者に帰属し、特別縁故者への分与の対象とならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平元.11.24)は、共有者の1人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、958条の2の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、当該財産分与がされず、当該共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、255条により他の共有者に帰属することになる旨判示している。したがって、甲土地の共有持分がAの相続財産に属する場合において、Aに相続人がおらず、かつAの債権者も受遺者もいないときは、その持分は特別縁故者への分与の対象となり、当該分与がされず、当該持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときに初めて、他の共有者に帰属する。
自筆証書遺言における押印を指印で行うことの適否 最一小判平成元年2月16日
概要
判例
判旨:「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が遺言の全文、日附及び氏名を自書した上、押印することを要するが(民法968条1項)、右にいう押印としては、遺言者が印章に代えて拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)をもって足りるものと解するのが相当である。けだし、同条項が自筆証書遺言の方式として自書のほか押印を要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ、右押印について指印をもって足りると解したとしても、遺言者が遺言の全文、日附、氏名を自書する自筆証書遺言において遺言者の真意の確保に欠けるとはいえないし、いわゆる実印による押印が要件とされていない文書については、通常、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識に照らすと、文書の完成を担保する機能においても欠けるところがないばかりでなく、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがあるものというべきだからである。もつとも、指印については、通常、押印者の死亡後は対照すべき印影がないために、遺言者本人の指印であるか否かが争われても、これを印影の対照によつて確認することはできないが、もともと自筆証書遺言に使用すべき印章には何らの制限もないのであるから、印章による押印であつても、印影の対照のみによつては遺言者本人の押印であることを確認しえない場合があるのであり、印影の対照以外の方法によつて本人の押印であることを立証しうる場合は少なくないと考えられるから、対照すべき印影のないことは前記解釈の妨げとなるものではない。」
自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為と遺留分侵害請求 最一小判平成14年11月5日
概要
判例
判旨:「自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は、民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできないと解するのが相当である。けだし、死亡保険金請求権は、指定された保険金受取人が自己の固有の権利として取得するのであって、保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく、これらの者の相続財産を構成するものではないというべきであり(最高裁昭和36年(オ)第1028号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)、また、死亡保険金請求権は、被保険者の死亡時に初めて発生するものであり、保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであって、死亡保険金請求権が実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることもできないからである。」
過去問・解説
(H29 共通 第35問 2)
自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が、死亡の半年前に死亡保険金の受取人を相続人の1人に変更した場合、遺留分権利者は、その変更行為が遺留分侵害に当たるとして遺留分侵害額支払請求をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平14.11.5)は、改正前民法下における遺留分減殺請求について、「自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は、民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできないと解するのが相当である。」と判示しており、改正民法下における遺留分侵害額請求(1046条)についても同様に解されている。したがって、自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が、死亡の半年前に死亡保険金の受取人を相続人の1人に変更した場合であっても、遺留分権利者は、その変更行為が遺留分侵害に当たるとして遺留分侵害額支払請求をすることはできない。
遺留分減殺請求権の方法 最一小判昭和41年7月14日
概要
判例
判旨:「遺留分権利者が民法1031条に基づいて行う減殺請求権は形成権であつて、その権利の行使は受贈者または受遺者に対する意思表示によってなせば足り、必ずしも裁判上の請求による要はなく、また一たん、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生ずるものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H23 司法 第36問 4)
遺留分侵害額請求権は裁判外の意思表示で行使することができる。
遺留分減殺請求と遺産分割の対象となる相続財産 最二小判平成8年1月26日
概要
判例
判旨:「遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合、遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者が取得した権利は遺留分を侵害する限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するところ(最高裁昭和50年(オ)第920号同51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁)、遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。
特定遺贈が効力を生ずると、特定遺贈の目的とされた特定の財産は何らの行為を要せずして直ちに受遺者に帰属し、遺産分割の対象となることはなく、また、民法は、遺留分減殺請求を減殺請求をした者の遺留分を保全するに必要な限度で認め(1031条)、遺留分減殺請求権を行使するか否か、これを放棄するか否かを遺留分権利者の意思にゆだね(1031条、1043条参照)、減殺の結果生ずる法律関係を、相続財産との関係としてではなく、請求者と受贈者、受遺者等との個別的な関係として規定する(1036条、1037条、1039条、1040条、1041条参照)など、遺留分減殺請求権行使の効果が減殺請求をした遺留分権利者と受贈者、受遺者等との関係で個別的に生ずるものとしていることがうかがえるから、特定遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しないと解される。そして、遺言者の財産全部についての包括遺贈は、遺贈の対象となる財産を個々的に掲記する代わりにこれを包括的に表示する実質を有するもので、その限りで特定遺贈とその性質を異にするものではないからである。」
持戻し免除の意思表示と遺留分算定の基礎となる価格 最一小判平成24年1月26日
概要
判例
判旨:「遺留分減殺請求により特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が減殺された場合、持戻し免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度で失効し、当該贈与に係る財産の価額は、上記の限度で、遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H29 共通 第35問 3)
特別受益に当たる贈与について、贈与者である被相続人がその財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)をした場合であっても、その贈与の価額は遺留分算定の基礎となる財産の価額に算入される。