②重複して譲渡担保を設定すること自体は許されるとしても、劣後する譲渡担保に独自の私的実行の権限を認めた場合、配当の手続が整備されている民事執行法上の執行手続が行われる場合と異なり、先行する譲渡担保権者には優先権を行使する機会が与えられず、その譲渡担保は有名無実のものとなりかねないから、このような結果を招来する後順位譲渡担保権者による私的実行を認めることはできない。
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民法 集合動産譲渡担保の設定者による目的物である動産の処分・後順位譲渡担保権による私的実行 最一小判平成18年7月20日 - 解答モード
概要
②重複して譲渡担保を設定すること自体は許されるとしても、劣後する譲渡担保に独自の私的実行の権限を認めた場合、配当の手続が整備されている民事執行法上の執行手続が行われる場合と異なり、先行する譲渡担保権者には優先権を行使する機会が与えられず、その譲渡担保は有名無実のものとなりかねないから、このような結果を招来する後順位譲渡担保権者による私的実行を認めることはできない。
判例
判旨:①「構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては、集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから、譲渡担保設定者には、その通常の営業の範囲内で、譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており、この権限内でされた処分の相手方は、当該動産について、譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができると解するのが相当である。…他方、対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである。」
②「本件物件1については、本件契約1に先立って、A、B及びCのために本件各譲渡担保が設定され、占有改定の方法による引渡しをもってその対抗要件が具備されているのであるから、これに劣後する譲渡担保が、被上告人のために重複して設定されたということになる。このように重複して譲渡担保を設定すること自体は許されるとしても、劣後する譲渡担保に独自の私的実行の権限を認めた場合、配当の手続が整備されている民事執行法上の執行手続が行われる場合と異なり、先行する譲渡担保権者には優先権を行使する機会が与えられず、その譲渡担保は有名無実のものとなりかねない。このような結果を招来する後順位譲渡担保権者による私的実行を認めることはできないというべきである。また、被上告人は、本件契約1により本件物件1につき占有改定による引渡しを受けた旨の主張をするにすぎないところ、占有改定による引渡しを受けたにとどまる者に即時取得を認めることはできないから、被上告人が即時取得により完全な譲渡担保を取得したということもできない。」
過去問・解説
(H27 司法 第14問 イ)
対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が、その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をし、その動産を占有改定の方法により買主に引き渡した場合、買主はその動産の所有権を取得することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.7.20)は、「対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである。」としている。したがって、対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が、その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした本肢においても、買主がその動産を占有改定の方法により引渡しを受けたにとどまり、いまだ当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合ではない以上、買主はその動産の所有権を承継取得することができない。
また、判例(最判昭35.2.11)は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない…。」と判示している。したがって、本肢においても、買主は占有改定の方法により占有を取得しているに過ぎないため、即時取得(192条)は成立せず、買主はその動産の所有権を即時取得により取得することもできない。
(R7 司法 第16問 ア)
AがBから構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保権の設定を受け、占有改定の方法により引渡しを受けた場合において、Bが譲渡担保権の設定について悪意のCに対し集合動産を構成する甲動産を通常の営業の範囲内で売却したときは、Cが承継取得する甲動産の所有権は、Aの譲渡担保権による拘束を受ける。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平18.7.20)は、「対抗要件を備えた集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合、当該処分は上記権限に基づかないものである以上、譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り、当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである。」としている。
本肢の事例では、Aは、占有改定の方法により引渡しを受け、Bから設定を受けた集合動産譲渡担保権が対抗要件を備えるに至っている。したがって、BがCに対し集合動産を構成する甲動産を通常の営業の範囲内で売却したときは、Cが譲渡担保権の設定について悪意であっても、Cが承継取得する甲動産の所有権は、Aの譲渡担保権による拘束を受けない。
(R7 司法 第16問 オ)
AがBから個別の戊動産を目的とする譲渡担保権の設定を受け、占有改定の方法による引渡しを受けた後に、EがBから戊動産につき二重に譲渡担保権の設定を受け、占有改定の方法による引渡しを受けた。この場合に、Eは、その譲渡担保権の被担保債権について不履行があったとしても、Bに対し、私的実行の権限に基づいて戊動産の引渡しを請求することができない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平18.7.20)は、本肢と同種の事案において、「重複して譲渡担保を設定すること自体は許されるとしても、劣後する譲渡担保に独自の私的実行の権限を認めた場合、配当の手続が整備されている民事執行法上の執行手続が行われる場合と異なり、先行する譲渡担保権者には優先権を行使する機会が与えられず、その譲渡担保は有名無実のものとなりかねない。このような結果を招来する後順位譲渡担保権者による私的実行を認めることはできないというべきである。」としている。
したがって、Eは後順位譲渡担保権者に当たるから、その譲渡担保権の被担保債権について不履行があったとしても、Bに対し、私的実行の権限に基づいて戊動産の引渡しを請求することができない。