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民法 権利濫用禁止の原則 大判昭和10年10月5日

概要
所有権に対する微小な侵害が生じている一方で、その侵害除去のためには莫大な出費を要する場合において、第三者が不当な利得を得ることを企図して別段の必要なくして侵害にかかる物件を買収し、所有者として、侵害者に対し、侵害除去を迫ると同時に、当該物件を巨額な代金で買い取るように要求し、他の一切の協調に応じない旨の主張をしている事情があるときには、侵害除去の請求は、権利の濫用に当たるから認められない。
判例
事案:Aが、温泉施設の引湯管が埋設されている土地を買い受けた上で、同温泉施設の経営者Bに対して提起した、所有権に基づく妨害排除としての引湯管の撤去を求める訴えが、権利の濫用に当たるかが問題となった。

判旨:「所有権ニ対スル侵害又ハ其ノ危険ノ存スル以上所有者ハ斯ル状態ヲ除去又ハ禁止セシムル為メ裁判上ノ保護ヲ請求シ得ヘキヤ勿論ナレトモ該侵害ニ因ル損失云フニ足ラス而モ侵害ノ除去著シク困難ニシテ縦令之ヲ為シ得トスルモ莫大ナル費用ヲ要スヘキ場合ニ於テ第三者ニシテ斯ル事実アルヲ奇貨トシ不当ナル利益ヲ図リ殊更侵害ニ関係アル物件ヲ買収セル上一面ニ於テ侵害者ニ対シ侵害状態ノ除去ヲ迫リ他面ニ於テハ該物件其ノ他ノ自己所有物件ヲ不相当ニ巨額ナル代金ヲ以テ買取ラレタキ旨ノ要求ヲ提示シ他ノ一切ノ協調ニ応セスト主張スルカ如キニ於テハ該除去ノ請求ハ単ニ所有権ノ行使タル外形ヲ構フルニ止マリ真ニ権利ヲ救済セムトスルニアラス即チ如上ノ行為ハ全体ニ於テ専ラ不当ナル利益ノ掴得ヲ目的トシ所有権ヲ以テ其ノ具ニ供スルニ帰スルモノナレハ社会観念上所有権ノ目的ニ違背シ其ノ機能トシテ許サルヘキ範囲ヲ超脱スルモノニシテ権利ノ濫用ニ外ナラス従テ斯ル不当ナル目的ヲ追行スルノ手段トシテ裁判上侵害者ニ対シ当該侵害状態ノ除去並将来ニ於ケル侵害ノ禁止ヲ訴求スルニ於テハ該訴訟上ノ請求ハ外観ノ如何ニ拘ラス其ノ実体ニ於テハ保護ヲ与フヘキ正当ナル利益ヲ欠如スルヲ以テ此ノ理由ニ依リ直ニ之ヲ棄却スヘキモノト解スルヲ至当トス。」
過去問・解説
(H20 司法 第1問 エ)
「妨害により所有権が侵害されても、生じた損失が軽微であり、妨害を除去することが著しく困難で、多大の費用を要する場合には、不当な利益を獲得する目的で妨害の除去を求めることは許されない」という記述は、権利濫用禁止の原則について述べているものである。

(正答)

(解説)
判例(大判昭10.10.5)は、所有権に対する微小な侵害が生じている一方で、その侵害除去のためには莫大な出費を要する場合において、第三者が不当な利得を得ることを企図して別段の必要なくして侵害にかかる物件を買収し、所有者として、侵害者に対し、侵害除去を迫ると同時に、当該物件を巨額な代金で買い取るように要求し、他の一切の協調に応じない旨の主張をしている事情があるときには、所有権に対する侵害の除去の請求は、権利の濫用に当たり認められない旨判示している。
総合メモ
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