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民法 意思表示の到達時期 最一小判平成10年6月11日
概要
特定の意思表示が記載された内容証明郵便が受取人不在のために配達することができず、留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人がその内容を充分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく当該内容証明郵便を受領することができたなどの事情の下においては、当該意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。
判例
事案:内容証明郵便を受取人が受け取らず、差出人に還付された場合において、意思表示の到達が認められるかが問題となった。
要旨:「(一)隔地者に対する意思表示は、相手方に到達することによってその効力を生ずるものであるところ(民法97条1項)、右にいう「到達」とは、意思表示を記載した書面が相手方によって直接受領され、又は了知されることを要するものではなく、これが相手方の了知可能な状態に置かれることをもって足りるものと解される(最高裁昭和33年(オ)第315号同36年4月20日第1小法廷判決・民集15巻4号774頁参照)。
(二)ところで、本件当時における郵便実務の取扱いは、(1)内容証明郵便の受取人が不在で配達できなかった場合には、不在配達通知書を作成し、郵便受箱、 郵便差入口その他適宜の箇所に差し入れる、(2)不在配達通知書には、郵便物の差出人名、配達日時、留置期限、郵便物の種類(普通、速達、現金書留、その他の書留等)等を記入する、(3)受取人としては、自ら郵便局に赴いて受領するほか、配達希望日、配達場所(自宅、近所、勤務先等)を指定するなど、郵便物の受取方法を選択し得る、(4)原則として、最初の配達の日から7日以内に配達も交付もできないものは、その期間経過後に差出人に還付する、というものであった(郵便規則74条、90条、平成6年3月14日郵郵業第19号郵務局長通達「集配郵便局郵便取扱手続の制定について」別冊・集配郵便局郵便取扱手続272条参照)。
(三)前記一の事実関係によれば、Aは、不在配達通知書の記載により、B弁護士から書留郵便(本件内容証明郵便)が送付されたことを知り(右(二)(2)参照)、その内容が本件遺産分割に関するものではないかと推測していたというのであり、さらに、この間B弁護士を訪れて遺留分減殺について説明を受けていた等の事情が存することを考慮すると、Aとしては、本件内容証明郵便の内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができたというべきである。また、Aは、本件当時、長期間の不在、その他郵便物を受領し得ない客観的状況にあったものではなく、その主張するように仕事で多忙であったとしても、受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって(右(2)(3)参照)、さしたる労力、困難を伴うことなく本件内容証明郵便を受領することができたものということができる。そうすると、本件内容証明郵便の内容である遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、 Aの了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点でAに到達したものと認めるのが相当である。」
要旨:「(一)隔地者に対する意思表示は、相手方に到達することによってその効力を生ずるものであるところ(民法97条1項)、右にいう「到達」とは、意思表示を記載した書面が相手方によって直接受領され、又は了知されることを要するものではなく、これが相手方の了知可能な状態に置かれることをもって足りるものと解される(最高裁昭和33年(オ)第315号同36年4月20日第1小法廷判決・民集15巻4号774頁参照)。
(二)ところで、本件当時における郵便実務の取扱いは、(1)内容証明郵便の受取人が不在で配達できなかった場合には、不在配達通知書を作成し、郵便受箱、 郵便差入口その他適宜の箇所に差し入れる、(2)不在配達通知書には、郵便物の差出人名、配達日時、留置期限、郵便物の種類(普通、速達、現金書留、その他の書留等)等を記入する、(3)受取人としては、自ら郵便局に赴いて受領するほか、配達希望日、配達場所(自宅、近所、勤務先等)を指定するなど、郵便物の受取方法を選択し得る、(4)原則として、最初の配達の日から7日以内に配達も交付もできないものは、その期間経過後に差出人に還付する、というものであった(郵便規則74条、90条、平成6年3月14日郵郵業第19号郵務局長通達「集配郵便局郵便取扱手続の制定について」別冊・集配郵便局郵便取扱手続272条参照)。
(三)前記一の事実関係によれば、Aは、不在配達通知書の記載により、B弁護士から書留郵便(本件内容証明郵便)が送付されたことを知り(右(二)(2)参照)、その内容が本件遺産分割に関するものではないかと推測していたというのであり、さらに、この間B弁護士を訪れて遺留分減殺について説明を受けていた等の事情が存することを考慮すると、Aとしては、本件内容証明郵便の内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができたというべきである。また、Aは、本件当時、長期間の不在、その他郵便物を受領し得ない客観的状況にあったものではなく、その主張するように仕事で多忙であったとしても、受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって(右(2)(3)参照)、さしたる労力、困難を伴うことなく本件内容証明郵便を受領することができたものということができる。そうすると、本件内容証明郵便の内容である遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、 Aの了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点でAに到達したものと認めるのが相当である。」
過去問・解説
(H30 司法 第3問 オ)
特定の意思表示が記載された内容証明郵便が受取人不在のために配達することができず、留置期間の経過により差出人に還付された場合、受取人がその内容を十分に推知することができ、受領も困難でなかったとしても、当該意思表示が受取人に到達したものと認められることはない。
特定の意思表示が記載された内容証明郵便が受取人不在のために配達することができず、留置期間の経過により差出人に還付された場合、受取人がその内容を十分に推知することができ、受領も困難でなかったとしても、当該意思表示が受取人に到達したものと認められることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平10.6.11)は、特定の意思表示が記載された内容証明郵便が受取人不在のために配達することができず、留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人がその内容を充分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく当該内容証明郵便を受領することができたなどの事情の下においては、当該意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる旨判示している。
判例(最判平10.6.11)は、特定の意思表示が記載された内容証明郵便が受取人不在のために配達することができず、留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人がその内容を充分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく当該内容証明郵便を受領することができたなどの事情の下においては、当該意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる旨判示している。