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民法 177条の「第三者」と背信的悪意者 最二小判昭和43年11月15日
概要
AがBに贈与した山林に関し、AB間に、その山林がBの所有に属することを確認し、AはすみやかにBに対しその所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した場合において、Cが立会人としてその示談交渉に関与し、かつ、当該和解条項を記載した書面に立会人として署各捺印した等判示の事情があるときには、同山林を差し押さえたCは、いわゆる背信的悪意者として、Bの当該所有権取得登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないというべきである。
判例
事案:AがBに贈与した山林に関し、AB間に、その山林がBの所有に属することを確認し、AはすみやかにBに対しその所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した場合において、Cが立会人としてその示談交渉に関与し、かつ、当該和解条項を記載した書面に立会人として署各捺印した等判示の事情があるとき、同山林を差し押さえたCがいわゆる背信的悪意者に当たるかが問題となった。
判旨:「実体上物権変動があつた事実を知る者において、右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであつて、民法177条にいう第三者に当たらないものと解すべきところ(最高裁判所昭和31年4月24日第三小法廷判決民集10巻4号417頁、同40年12月21日第三小法廷判決民集19巻9号2221頁、同42年(オ)第564号同43年8月2日第二小法廷判決参照)、原審認定の前示事実によれば、Cは、単に本件山林がAからBに対して贈与された事実を知悉していたというに止まらず、後に生じた右両名間の紛争について自ら立会人としてその解決に努めたうえ、右贈与の事実を確認し、すみやかにその旨の所有権移転登記手続をすべきことを内容とする和解を成立させ、自ら立会人として和解条項を記した書面に署名捺印したというのであり、他方、その後に至つて、自己の債権の満足を得るために、右和解の趣旨に反し、本件山林をAの所有物件として差し押えたというのであるから、Cとしては、Bの本件山林の所有権取得についてその登記の欠缺を主張することは著しく信義に反するものというべきであり、同人は右登記の欠缺を主張するについて正当の利益を有する第三者には当たらないものと解するのが相当である。和解の立会人は、必ずしも和解当事者の当該和解上の義務の履行について、積極的に協力すべき法律上の義務を負うものとはいえないけれども、和解条項を記した書面に立会人として署名捺印することは、そのような和解の成立したことを確認することによつて、その内容となつている法律関係が終局的に確定することを是認するとともに、仮りに後に至つて右和解について紛争が生じるような事態に立ち至つた場合には、自らその内容を証明すること等によつて、紛争を解決すべき立場に立つことを表明したに外ならず、これによつて何らかの利益を受ける等の特段の事情が存在しなくとも、その後に至つて、自らその内容を否認するが如きは、著しく信義に反し、許されないものといわなければならない。」
判旨:「実体上物権変動があつた事実を知る者において、右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであつて、民法177条にいう第三者に当たらないものと解すべきところ(最高裁判所昭和31年4月24日第三小法廷判決民集10巻4号417頁、同40年12月21日第三小法廷判決民集19巻9号2221頁、同42年(オ)第564号同43年8月2日第二小法廷判決参照)、原審認定の前示事実によれば、Cは、単に本件山林がAからBに対して贈与された事実を知悉していたというに止まらず、後に生じた右両名間の紛争について自ら立会人としてその解決に努めたうえ、右贈与の事実を確認し、すみやかにその旨の所有権移転登記手続をすべきことを内容とする和解を成立させ、自ら立会人として和解条項を記した書面に署名捺印したというのであり、他方、その後に至つて、自己の債権の満足を得るために、右和解の趣旨に反し、本件山林をAの所有物件として差し押えたというのであるから、Cとしては、Bの本件山林の所有権取得についてその登記の欠缺を主張することは著しく信義に反するものというべきであり、同人は右登記の欠缺を主張するについて正当の利益を有する第三者には当たらないものと解するのが相当である。和解の立会人は、必ずしも和解当事者の当該和解上の義務の履行について、積極的に協力すべき法律上の義務を負うものとはいえないけれども、和解条項を記した書面に立会人として署名捺印することは、そのような和解の成立したことを確認することによつて、その内容となつている法律関係が終局的に確定することを是認するとともに、仮りに後に至つて右和解について紛争が生じるような事態に立ち至つた場合には、自らその内容を証明すること等によつて、紛争を解決すべき立場に立つことを表明したに外ならず、これによつて何らかの利益を受ける等の特段の事情が存在しなくとも、その後に至つて、自らその内容を否認するが如きは、著しく信義に反し、許されないものといわなければならない。」
過去問・解説
(H30 司法 第10問 ウ)
AがA所有の甲土地をBに売却したが、代金の支払をめぐってAB間で争いを生じ、その後、Bが甲土地の所有権を有することを確認する旨の示談が成立した場合において、当該示談に立会人として関与し、示談書に立会人として署名捺印していたCが、AからBに所有権移転登記がされる前に、Aに対する債権に基づいて、A名義の甲土地を差し押さえ、その旨の差押えの登記がされたときは、Bは、Cに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。
AがA所有の甲土地をBに売却したが、代金の支払をめぐってAB間で争いを生じ、その後、Bが甲土地の所有権を有することを確認する旨の示談が成立した場合において、当該示談に立会人として関与し、示談書に立会人として署名捺印していたCが、AからBに所有権移転登記がされる前に、Aに対する債権に基づいて、A名義の甲土地を差し押さえ、その旨の差押えの登記がされたときは、Bは、Cに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭43.11.15)は、本肢と同種の事案において、「Cは、単に本件山林がAからBに対して贈与された事実を知悉していたというに止まらず、後に生じた右両名間の紛争について自ら立会人としてその解決に努めたうえ、右贈与の事実を確認し、すみやかにその旨の所有権移転登記手続をすべきことを内容とする和解を成立させ、自ら立会人として和解条項を記した書面に署名捺印したというのであり、他方、その後に至つて、自己の債権の満足を得るために、右和解の趣旨に反し、本件山林をAの所有物件として差し押えたというのであるから、Cとしては、Bの本件山林の所有権取得についてその登記の欠缺を主張することは著しく信義に反するものというべきであり、同人は右登記の欠缺を主張するについて正当の利益を有する第三者には当たらないものと解するのが相当である。」と判示している。本肢においても、Aに対する債権に基づいて、A名義の甲土地を差し押さえ、その旨の差押えの登記をしたCは、AB間の示談に立会人として関与し、示談書に立会人として署名捺印していたことから、背信的悪意者に当たり、177条の「第三者」に当たらない。したがって、AからBに所有権移転登記がされる前においても、Bは、Cに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。
判例(最判昭43.11.15)は、本肢と同種の事案において、「Cは、単に本件山林がAからBに対して贈与された事実を知悉していたというに止まらず、後に生じた右両名間の紛争について自ら立会人としてその解決に努めたうえ、右贈与の事実を確認し、すみやかにその旨の所有権移転登記手続をすべきことを内容とする和解を成立させ、自ら立会人として和解条項を記した書面に署名捺印したというのであり、他方、その後に至つて、自己の債権の満足を得るために、右和解の趣旨に反し、本件山林をAの所有物件として差し押えたというのであるから、Cとしては、Bの本件山林の所有権取得についてその登記の欠缺を主張することは著しく信義に反するものというべきであり、同人は右登記の欠缺を主張するについて正当の利益を有する第三者には当たらないものと解するのが相当である。」と判示している。本肢においても、Aに対する債権に基づいて、A名義の甲土地を差し押さえ、その旨の差押えの登記をしたCは、AB間の示談に立会人として関与し、示談書に立会人として署名捺印していたことから、背信的悪意者に当たり、177条の「第三者」に当たらない。したがって、AからBに所有権移転登記がされる前においても、Bは、Cに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。