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民法 200条2項但書にいう「侵奪の事実を知っていたとき」 最一小判昭和56年3月19日
概要
200条2項ただし書にいう「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」といい得るためには、承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があったことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであって、これによっては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知っていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があったかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、「侵奪の事実を知っていたとき」に当たるとは言えない。
判例
事案:200条2項ただし書にいう「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈が問題となった。
判旨:「占有者がその占有の侵奪者の特定承継人に対して占有回収の訴を提起することができるのは、その者が右侵奪の事実を知つて占有を承継した場合に限られるが、この場合侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」
判旨:「占有者がその占有の侵奪者の特定承継人に対して占有回収の訴を提起することができるのは、その者が右侵奪の事実を知つて占有を承継した場合に限られるが、この場合侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 司法 第10問 2)
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが目を離した隙に、Dが甲を盗み出した上、自己の物と偽ってEに売却し、引き渡した。甲にはA大学図書館の蔵書印が押捺されており、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていた場合であっても、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
A大学の図書館所蔵の書籍甲を、同大学教授Bが借り出し、図書館と同一の構内にある自己の研究室で利用していた。Bが目を離した隙に、Dが甲を盗み出した上、自己の物と偽ってEに売却し、引き渡した。甲にはA大学図書館の蔵書印が押捺されており、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていた場合であっても、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りない」と判示している。Eは、Bの甲に対する占有を侵奪したDの「特定承継人」(200条2項本文)であるから、Bが、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めるためには、Eが「侵奪の事実を知っていたとき」(同項ただし書)でなければならない。しかし、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていたにとどまり、占有の侵奪があったことの認識はなかった。したがって、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」には当たらず、同ただし書の要件を満たさないため、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りない」と判示している。Eは、Bの甲に対する占有を侵奪したDの「特定承継人」(200条2項本文)であるから、Bが、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めるためには、Eが「侵奪の事実を知っていたとき」(同項ただし書)でなければならない。しかし、Eは、Dが甲を横領したものであると考えていたにとどまり、占有の侵奪があったことの認識はなかった。したがって、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」には当たらず、同ただし書の要件を満たさないため、Bは、Eに対し、占有回収の訴えにより甲の返還を求めることはできない。
(H26 予備 第5問 1)
Aが所有して占有する動産を奪ったBは、この動産をCに売って引き渡した。Cは、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかった。このとき、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
Aが所有して占有する動産を奪ったBは、この動産をCに売って引き渡した。Cは、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかった。このとき、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかったにとどまり、少なくとも何らかの形での侵奪があったことについての認識を有していたとはいえないから、「承継人が侵奪の事実を知っていた」(同項ただし書)とはいえない。したがって、同ただし書の要件を満たさず、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができない。
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Bが動産の所有者でないことを過失により知らなかったにとどまり、少なくとも何らかの形での侵奪があったことについての認識を有していたとはいえないから、「承継人が侵奪の事実を知っていた」(同項ただし書)とはいえない。したがって、同ただし書の要件を満たさず、AはCに対して占有回収の訴えを提起することができない。
(R2 司法 第9問 イ)
Aは、底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のパソコンをBに窃取された。その後、Bは、パソコンの外観に変更を加えることなく、パソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
Aは、底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のパソコンをBに窃取された。その後、Bは、パソコンの外観に変更を加えることなく、パソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Cはパソコンの譲渡を受けた際、盗難の事情を知らなかったのであるから、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」に当たらない。したがって、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。
判例(最判昭56.3.19)は、200条2項ただし書の「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」という要件の解釈について、「侵奪を知つて占有を承継したということができるためには、右の承継人が少なくともなんらかの形での侵奪があつたことについての認識を有していたことが必要であり、単に前主の占有取得がなんらかの犯罪行為ないし不法行為によるものであつて、これによつては前主が正当な権利取得者とはなりえないものであることを知つていただけでは足りないことはもちろん、占有侵奪の事実があつたかもしれないと考えていた場合でも、それが単に1つの可能性についての認識にとどまる限りは、未だ侵奪の事実を知つていたものということはできないと解するのが相当である。」と判示している。Cは200条2項本文の「特定承継人」に当たるところ、Cはパソコンの譲渡を受けた際、盗難の事情を知らなかったのであるから、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」に当たらない。したがって、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない。