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民法 名誉権侵害における慰謝料請求の代位行使の可否 最一小判昭和58年10月6日

概要
名誉を侵害されたことを理由とする被害者の加害者に対する慰藉料請求権は、被害者が当該請求権を行使する意思を表示しただけでいまだその具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は、なお一身専属性を有するものであるが、加害者が被害者に対し一定額の慰藉料を支払うことを内容とする合意又はかかる支払を命ずる債務名義が成立したなど、その具体的な金額が当事者間において客観的に確定したときは、行使上の一身専属性を失い、債権者代位の目的とすることができる。
判例
事案:名誉を侵害されたことを理由とする被害者の加害者に対する慰謝料請求権を、債権者代位の目的とすることができるかが問題となった。

判旨:「名誉を侵害されたことを理由とする被害者の加害者に対する慰藉料請求権は、金銭の支払を目的とする債権である点においては一般の金銭債権と異なるところはないが、本来、右の財産的価値それ自体の取得を目的とするものではなく、名誉という被害者の人格的価値を毀損せられたことによる損害の回復の方法として、被害者が受けた精神的苦痛を金銭に見積ってこれを加害者に支払わせることを目的とするものであるから、これを行使するかどうかは専ら被害者自身の意思によって決せられるべきものと解すべきである。そして、右慰藉料請求権のこのような性質に加えて、その具体的金額自体も成立と同時に客観的に明らかとなるわけではなく、被害者の精神的苦痛の程度、主観的意識ないし感情、加害者の態度その他の不確定的要素をもつ諸般の状況を総合して決せられるべき性質のものであることに鑑みると、被害者が右請求権を行使する意思を表示しただけでいまだその具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は、被害者がなおその請求意思を貫くかどうかをその自律的判断に委ねるのが相当であるから、右権利はなお一身専属性を有するものというべきであって、被害者の債権者は、これを…債権者代位の目的とすることはできないものというべきである。しかし、他方、加害者が被害者に対し一定額の慰藉料を支払うことを内容とする合意又はかかる支払を命ずる債務名義が成立したなど、具体的な金額の慰藉料請求権が当事者間において客観的に確定したときは、右請求権についてはもはや単に加害者の現実の履行を残すだけであって、その受領についてまで被害者の自律的判断に委ねるべき特段の理由はない…から、このような場合、右慰藉料請求権は、…被害者の主観的意思から独立した客観的存在としての金銭債権となり、…債権者代位の目的とすることができるものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第18問 2)
Cに名誉を侵害されたBがCに対して慰謝料の支払を求めて交渉した後、Cが一定額の慰謝料の支払を約する合意が成立したときは、Bの債権者AがBに代位してCに対して慰謝料の支払を求めることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.10.6)は、「加害者が被害者に対し一定額の慰藉料を支払うことを内容とする合意又はかかる支払を命ずる債務名義が成立したなど、具体的な金額の慰藉料請求権が当事者間において客観的に確定したときは、右請求権についてはもはや単に加害者の現実の履行を残すだけであって、その受領についてまで被害者の自律的判断に委ねるべき特段の理由はない…から、このような場合、右慰藉料請求権は、…被害者の主観的意思から独立した客観的存在としての金銭債権となり、…債権者代位の目的とすることができるものというべきである。」と判示している。本肢においても、Cに名誉を侵害されたBがCに対して慰謝料の支払を求めて交渉した後、Cが一定額の慰謝料の支払を約する合意が成立したという事情があるため、具体的な金額の慰藉料請求権が当事者間において客観的に確定したといえる。したがって、BがCに対して有する慰謝料請求権は、その一身専属性を失い、債権者代位の目的とすることができるといえるから、Bの債権者Aは、Bに代位してCに対して慰謝料の支払を求めることができる。

(H23 共通 第30問 オ)
名誉毀損による慰謝料請求権は、被害者がその請求権を行使する意思を表示した後であっても、具体的な金額が当事者間において客観的に確定する前は、被害者の債権者による代位行使の対象とはならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.10.6)は、名誉棄損による慰謝料請求権について、「被害者が右請求権を行使する意思を表示しただけでいまだその具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は、被害者がなおその請求意思を貫くかどうかをその自律的判断に委ねるのが相当であるから、右権利はなお一身専属性を有するものというべきであって、被害者の債権者は、これを…債権者代位の目的とすることはできないものというべきである。」と判示している。

(H28 予備 第9問 ア)
名誉侵害を理由とする慰謝料請求権は、具体的な金額が当事者間において客観的に確定したときは、債権者代位権の目的となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.10.6)は、名誉侵害を理由とする慰謝料請求権について、「加害者が被害者に対し一定額の慰藉料を支払うことを内容とする合意又はかかる支払を命ずる債務名義が成立したなど、具体的な金額の慰藉料請求権が当事者間において客観的に確定したときは、右請求権についてはもはや単に加害者の現実の履行を残すだけであって、その受領についてまで被害者の自律的判断に委ねるべき特段の理由はない…から、このような場合、右慰藉料請求権は、…被害者の主観的意思から独立した客観的存在としての金銭債権となり、…債権者代位の目的とすることができるものというべきである。」と判示している。
総合メモ
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