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民法 共同不法行為者の1人と被害者との間で成立した訴訟上の和解における債務の免除の効力が他の共同不法行為者に対しても及ぶ場合 最一小判平成10年9月10日
概要
共同不法行為の被害者が共同不法行為者の1人に対してした損害賠償義務の免除の意思表示が、他の共同不法行為者の損害賠償義務をも免除する意思を含んでいると認められるときには、当該他の共同不法行為者に対しても残債務の免除の効力が及ぶ。
判例
事案:共同不法行為者の1人と被害者との間で成立した訴訟上の和解における債務の免除の効力が、他の共同不法行為者に対しても及ぶ場合があるかが問題となった。
判旨:「1 AとBが共同の不法行為により他人に損害を加えた場合において、AがBとの責任割合に従って定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、Aは、Bの負担部分について求償することができる(最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁、最高裁昭和63年(オ)第1383号、平成3年(オ)第1377号同年10月25日第二小法廷判決・民集45巻7号1173頁参照)。
2 この場合、AとBが負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であるから、AとCとの間で訴訟上の和解が成立し、請求額の一部につき和解金が支払われるとともに、和解調書中に「Cはその余の請求を放棄する」旨の条項が設けられ、CがAに対し残債務を免除したと解し得るときでも、連帯債務における免除の絶対的効力を定めた民法437条の規定は適用されず、Bに対して当然に免除の効力が及ぶものではない(最高裁昭和43年(オ)第431号同48年2月16日第二小法廷判決・民集27巻1号99頁、最高裁平成4年(オ)第1814号同6年11月24日第一小法廷判決・裁判集民事173号431頁参照)。
しかし、Cが、右訴訟上の和解に際し、Bの残債務をも免除する意思を有していると認められるときは、Bに対しても残債務の免除の効力が及ぶものというべきである。」
判旨:「1 AとBが共同の不法行為により他人に損害を加えた場合において、AがBとの責任割合に従って定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、Aは、Bの負担部分について求償することができる(最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁、最高裁昭和63年(オ)第1383号、平成3年(オ)第1377号同年10月25日第二小法廷判決・民集45巻7号1173頁参照)。
2 この場合、AとBが負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であるから、AとCとの間で訴訟上の和解が成立し、請求額の一部につき和解金が支払われるとともに、和解調書中に「Cはその余の請求を放棄する」旨の条項が設けられ、CがAに対し残債務を免除したと解し得るときでも、連帯債務における免除の絶対的効力を定めた民法437条の規定は適用されず、Bに対して当然に免除の効力が及ぶものではない(最高裁昭和43年(オ)第431号同48年2月16日第二小法廷判決・民集27巻1号99頁、最高裁平成4年(オ)第1814号同6年11月24日第一小法廷判決・裁判集民事173号431頁参照)。
しかし、Cが、右訴訟上の和解に際し、Bの残債務をも免除する意思を有していると認められるときは、Bに対しても残債務の免除の効力が及ぶものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第30問 エ)
Aが所有し運転するタクシーに、Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し、AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により、Aには50万円の損害が、Bには80万円の損害が、Cには100万円の損害が、それぞれ生じ、当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で、Bが8割であり、また、Cの負傷にはCの過失がないものとする。CがAに対して損害賠償債務全額を免除したときでも、Cは、Bの債務を免除する意思を有していなければ、Bに対し100万円全額を請求することができる。
Aが所有し運転するタクシーに、Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し、AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により、Aには50万円の損害が、Bには80万円の損害が、Cには100万円の損害が、それぞれ生じ、当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で、Bが8割であり、また、Cの負傷にはCの過失がないものとする。CがAに対して損害賠償債務全額を免除したときでも、Cは、Bの債務を免除する意思を有していなければ、Bに対し100万円全額を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.9.10)は、共同不法行為の被害者が共同不法行為者の1人に対してした損害賠償義務の免除の意思表示が、他の共同不法行為者の損害賠償義務をも免除する意思を含んでいると認められるときには、当該他の共同不法行為者に対しても残債務の免除の効力が及ぶ旨判示している。本肢においては、CがAに対して損害賠償債務全額を免除したが、Cは、Bの債務を免除する意思を有していない。したがって、原則通り、当該免除の効力はBに及ばない(441条)。よって、Cは、Bに対し100万円全額を請求することができる。
判例(最判平10.9.10)は、共同不法行為の被害者が共同不法行為者の1人に対してした損害賠償義務の免除の意思表示が、他の共同不法行為者の損害賠償義務をも免除する意思を含んでいると認められるときには、当該他の共同不法行為者に対しても残債務の免除の効力が及ぶ旨判示している。本肢においては、CがAに対して損害賠償債務全額を免除したが、Cは、Bの債務を免除する意思を有していない。したがって、原則通り、当該免除の効力はBに及ばない(441条)。よって、Cは、Bに対し100万円全額を請求することができる。
(H29 共通 第30問 ウ)
Aが運転するタクシーとBが運転するタクシーが衝突する交通事故(以下「本件事故」という。)が発生し、Aが運転するタクシーの乗客Cが負傷し、Cに300万円の損害が生じた。本件事故についての過失割合は、Aが4割で、Bが6割であり、Cに過失はなかった。Bが、Cとの間で、BがCに対して200万円を支払うとともに、CがAの損害賠償債務及びBのその余の損害賠償債務を免除する旨の和解契約を締結した場合であっても、Cは、Aに対し、100万円の支払を求めることができる。
Aが運転するタクシーとBが運転するタクシーが衝突する交通事故(以下「本件事故」という。)が発生し、Aが運転するタクシーの乗客Cが負傷し、Cに300万円の損害が生じた。本件事故についての過失割合は、Aが4割で、Bが6割であり、Cに過失はなかった。Bが、Cとの間で、BがCに対して200万円を支払うとともに、CがAの損害賠償債務及びBのその余の損害賠償債務を免除する旨の和解契約を締結した場合であっても、Cは、Aに対し、100万円の支払を求めることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平10.9.10)は、共同不法行為の被害者が共同不法行為者の1人に対してした損害賠償義務の免除の意思表示が、他の共同不法行為者の損害賠償義務をも免除する意思を含んでいると認められるときには、当該他の共同不法行為者に対しても残債務の免除の効力が及ぶ旨判示している。本肢においては、Bが、Cとの間で、BがCに対して200万円を支払うとともに、CがAの損害賠償債務及びBのその余の損害賠償債務を免除する旨の和解契約を締結しており、当該和解契約は、Aの損害賠償義務をも免除する意思を含んでいると認められる。したがって、当該和解契約中の免除の効力はAにも及ぶから、Cは、Aに対し、100万円の支払を求めることができない。
判例(最判平10.9.10)は、共同不法行為の被害者が共同不法行為者の1人に対してした損害賠償義務の免除の意思表示が、他の共同不法行為者の損害賠償義務をも免除する意思を含んでいると認められるときには、当該他の共同不法行為者に対しても残債務の免除の効力が及ぶ旨判示している。本肢においては、Bが、Cとの間で、BがCに対して200万円を支払うとともに、CがAの損害賠償債務及びBのその余の損害賠償債務を免除する旨の和解契約を締結しており、当該和解契約は、Aの損害賠償義務をも免除する意思を含んでいると認められる。したがって、当該和解契約中の免除の効力はAにも及ぶから、Cは、Aに対し、100万円の支払を求めることができない。