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法律行為(総則、意思表示)

第93条

条文
第93条(心裡留保)
① 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
② 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
過去問・解説
(H20 司法 第30問 イ)
心裡留保の場合、相手方が表意者の真意を知らなかったとしても、知らないことについて重大な過失がなければ、その意思表示は有効である。

(正答)  

(解説)
93条1項は、本文において「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。」と規定する一方で、但書において「ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする」と規定している。
したがって、心裡留保の場合、相手方が軽過失にとどまるときであっても、その意思表示は有効である。

(R3 司法 第2問 ア)
表意者がその真意ではないことを知って意思表示をした場合において、相手方が、表意者の真意を具体的に知らなくても、その意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は無効である。

(正答)  

(解説)
93条1項は、本文において「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。」と規定する一方で、但書において「ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする」と規定している。

(R3 司法 第2問 イ)
表意者の意思表示がその真意ではないことを理由として無効とされた場合において、その無効は、善意であるが過失がある第三者に対抗することができる。

(正答)  

(解説)
93条1項は、心裡留保の場合における意思表示の無効にについて規定する一方で、同条2項は、「前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定しているところ、同条2項は、単に「善意」と規定するにとどまり、「善意でかつ過失がない」とまでは規定していない。
したがって、心裡留保の場合における意思表示の無効は、善意であるが過失がある第三者にも対抗することができない。

(R4 司法 第3問 ウ)
心裡留保を理由とする意思表示の無効は、過失のある善意の第三者に対抗することができない。

(正答)  

(解説)
93条1項は、心裡留保の場合における意思表示の無効にについて規定する一方で、同条2項は、「前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定しているところ、同条2項は、単に「善意」と規定するにとどまり、「善意でかつ過失がない」とまでは規定していない。
したがって、心裡留保の場合における意思表示の無効は、善意であるが過失がある第三者にも対抗することができない。

(R5 司法 第5問 オ)
Aがその真意ではないことを知りながらAの所有する甲土地をBに売る旨の意思表示をした場合において、BがAの意思表示が真意ではないことを知ることができたためにAの意思表示が無効であったとしても、善意のCがBから甲土地を買い受けたときは、Aは、Cに対し、その無効を対抗することができない。

(正答)  

(解説)
BがAの意思表示が真意ではないことを知ることができたのだから、「相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを…知ることができたとき」に当たり、Aの意思表示は無効である(93条1項但書)。
もっとも、Cは「善意の第三者」であるから、Aは、Cに対し、その無効を対抗することができない(93条2項)。
総合メモ

第95条

条文
第95条(錯誤)
① 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。 
 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
② 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。 
③ 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。 
 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
④ 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。 
過去問・解説
(H19 司法 第1問 2)
意思表示の動機の錯誤は、その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり、もしその錯誤がなかったならばその意思表示をしなかったであろうと認められる場合に要素の錯誤となるが、表意者に過失があったときには、表意者は錯誤による取消しを主張することができない。

(正答)  

(解説)
95条は、1項において、1号・2号の錯誤に共通する要件として、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」(錯誤の重要性)と規定し、2項において、動機の錯誤に固有の要件として、「前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」(基礎事情の表示及び法律行為の内容化)と規定している。したがって、本肢前半は正しい。
しかし、95条3項は、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。」と規定しており、軽過失にとどまる場合における錯誤取消しまでは否定していない。したがって、本肢後半は誤っている。

(H20 司法 第5問 オ)
他に連帯保証人があるとの債務者の説明を誤信して連帯保証契約を結んだ者は、特にその旨を表示し保証契約の内容としたのでなければ、錯誤取消しを主張することができない。

(正答)  

(解説)
他に連帯保証人があるとの債務者の説明を誤信して連帯保証契約を結んだ場合における錯誤は、「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」(95条1項1号)ではなく、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(同条1項2号)に当たる。
95条2項は、後者の錯誤について、「前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」(基礎事情の表示及び法律行為の内容化)と規定している。
したがって、他に連帯保証人があるとの債務者の説明を誤信して連帯保証契約を結んだ者は、特にその旨を表示し保証契約の内容としたのでなければ、95条2項の要件を満たさないから、錯誤取消しを主張することができない。

(H21 司法 第5問 2)
錯誤による意思表示の表意者に重大な過失があった場合には、表意者は取消しをすることができないが、相手方は取消しをすることができる。

(正答)  

(解説)
確かに、95条3項は、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。」と規定しているから、本肢前半は正しい。
しかし、120条2項は、「錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。」と規定しており、ここでは、取消権者に相手方は含まれていない。したがって、本肢後半は誤っている。

(H21 司法 第27問 オ)
Aが所有する甲不動産について、Bを売主とし、Cを買主とする売買契約が成立した場合において、BC間の売買契約成立時に甲不動産の所有権がAに帰属することをCが知らなかった場合には、Cに売買契約の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があるから、Bは、Aから所有権を取得してCに移転する義務を負わない。

(正答)  

(解説)
本肢におけるCの錯誤は、「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」(95条1項1号)ではなく、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(同条1項2号)に当たる。
95条2項は、後者の錯誤について、「前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」(基礎事情の表示及び法律行為の内容化)と規定している。
本肢の事案では、CがBに対して売買契約成立時に甲不動産の所有権がAに帰属していることに関する動機を表示し、それがBC間の売買契約の内容となったといえるような事情は見当たらないから、95条2項の要件を満たさない。
したがって、Cは、錯誤を理由BC間の売買契約を取り消すことはできない。
そうである以上、BC間の売買契約は有効なものとして存続するのだから、Bは、BC間の売買契約に基づく財産権移転債務として、Aから所有権を取得してCに移転する義務を負う(561条)。

(H24 司法 第3問 1)
意思表示の相手方が表意者の錯誤を認識していた場合であっても、表意者において錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、錯誤による取消しを主張することができない。

(正答)  

(解説)
95条3項は、柱書において「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。」と規定し、2号において、「相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。」(共通錯誤)を挙げている。
本肢の事案は共通錯誤に属するから、表意者において錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときであっても、表意者は、錯誤による取消しを主張することができる。

(H24 司法 第3問 5)
意思表示の動機に錯誤があった場合、その意思表示の錯誤による取消しを主張するためには、その動機が表示されていれば足り、その動機が法律行為の内容となっている必要はない。

(正答)  

(解説)
95条2項は、動機の錯誤について、「前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」と規定している。
同条2項は、本来は表意者が引き受けるべき動機の誤りによる不利益を相手方に引き受けさせるためには、動機の表示に加えて法律行為の内容化も必要であるとする改正前民法下の判例法理を明文化する趣旨で、動機の錯誤を理由とする取消しの要件として、同条1項2号該当性に加え、同条2項の要件を設けているとの理由から、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた」とは、「表意者が法律行為の基礎とした事情」が表示を通じて相手方の了承を得ることで当事者間で法律行為の基礎となったことを意味すると解されている(通説的見解)。
したがって、意思表示の動機に錯誤があった場合、その意思表示の錯誤による取消しを主張するためには、その動機が表示されているだけでは足りず、その動機が法律行為の内容となっている必要がある。

(H25 共通 第2問 イ)
被保佐人が、保佐人の同意を得て、自己の不動産につき第三者との間で売買契約を締結したときは、被保佐人がその売買契約の要素について錯誤に陥っており、かつ、そのことにつき重大な過失がない場合でも、その契約の取消しを主張することができない。

(正答)  

(解説)
確かに、被保佐人が、保佐人の同意を得て自己の不動産につき第三者との間で売買契約を締結しているため、被保佐人は、制限行為能力を理由として売買契約を取り消すことはできない(13条1項、4項)。
しかし、この場合であっても、錯誤を理由とする取消しが排斥されるわけではない。
したがって、95条1項及び3項の要件を満たせば、被保佐人は、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。

(H28 司法 第2問 エ)
他にも連帯保証人となる者がいるとの債務者の説明を信じて連帯保証人となった者は、特にその旨が表示され連帯保証契約の内容とされていたとしても、連帯保証契約について錯誤による取消しを主張することができない。

(正答)  

(解説)
他に連帯保証人があるとの債務者の説明を誤信して連帯保証契約を結んだ場合における錯誤は、「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」(95条1項1号)ではなく、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(同条1項2号)に当たる。
95条2項は、後者の錯誤について、「前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」(基礎事情の表示及び法律行為の内容化)と規定している。
他にも連帯保証人となる者がいるとの債務者の説明を信じて連帯保証人となった者は、特にその旨が表示され連帯保証契約の内容とされていれば、95条2項の要件を満たすから、連帯保証契約について錯誤による取消しを主張することができる。

(H28 司法 第2問 オ)
Aの所有する甲土地の売買契約が、Bを売主、Cを買主として成立した場合において、Cは、BC間の売買契約締結当時、甲土地がBの所有するものでなければ売買をしない旨の意思表示をしたとしても、BC間の売買契約について錯誤による取消しを主張することができない。

(正答)  

(解説)
本肢におけるCの錯誤は、「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」(95条1項1号)ではなく、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(同条1項2号)に当たる。
95条2項は、後者の錯誤について、「前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」(基礎事情の表示及び法律行為の内容化)と規定している。
Cは、BC間の売買契約締結当時、甲土地がBの所有するものでなければ売買をしない旨の意思表示をしていれば、95条2項の要件を満たす余地があるから、BC間の売買契約について錯誤による取消しを主張できる余地がある。

(R2 共通 第3問 ア)
錯誤を理由とする意思表示の取消しの可否について、錯誤の重要性は、表意者を基準として判断される。

(正答)  

(解説)
95条1項柱書後段は、1号・2号の錯誤に共通する取消し要件として、「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである」ことを定めている。この要件については、表意者保護と相手方保護の調和を図るという趣旨に照らし、①その点につき錯誤がなければ表意者は意思表示をしなかったであろうこと(主観的因果性)と、②通常人を基準としても意思表示をしなかったであろうこと(客観的重要性)を意味すると解されている。
①②のうち②は、表意者を基準として判断されるものではない。

(R2 共通 第3問 エ)
AのBに対する意思表示が錯誤を理由として取り消された場合、Aは、その取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失のCに、その取消しを対抗することができない。

(正答)  

(解説)
95条4項は、「第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定しており、ここでいう「第三者」とは、取消しの前に利害関係を有するに至った者を意味すると解されている。
したがって、AのBに対する意思表示が錯誤を理由として取り消された場合、Aは、その取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失のCに、その取消しを対抗することができない。

(R2 共通 第3問 オ)
AのBに対する意思表示が錯誤に基づくものであって、その錯誤がAの重大な過失によるものであった場合、Aは、BがAに錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除いて、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
95条3項は、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合」でも例外的に錯誤取消しが妨げられない事由として、「相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。」(1号)の他に、「相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。」(2号、共通錯誤)も挙げている。

(R4 司法 第3問 エ)
錯誤による意思表示は、その錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合において、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
95条3項は、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合」でも例外的に錯誤取消しが妨げられない事由の一つとして、「相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。」(2号、共通錯誤)を挙げている。

(R5 司法 第5問 ウ)
AのBに対する意思表示がAの重大な過失による錯誤に基づくものであった場合には、Aに錯誤があることをBが重大な過失によって知らなかったとしても、Aは、錯誤を理由にその意思表示を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
95条3項は、「錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合」でも例外的に錯誤取消しが妨げられない事由の一つとして、「相手方が表意者に錯誤があることを…重大な過失によって知らなかったとき。」(1号)を挙げている。
総合メモ

第96条

条文
第96条(詐欺又は強迫)
① 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
② 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
③ 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
過去問・解説
(H19 司法 第1問 3)
第三者の強迫によって意思表示をした場合、意思表示の相手方が強迫の事実を知っているか、知らなかったことについて過失があった場合に限り、表意者は、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
強迫の場合については、第三者の詐欺(96条2項)のような規定は設けられていない。
したがって、第三者の強迫によって意思表示をした場合、相手方の善意・無過失の有無にかかわらず、表意者は、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。

(H22 司法 第3問 ア)
第三者の強迫によって不動産の売却を承諾した者は、売買の相手方が強迫の事実を知らなかった場合には、その承諾を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
強迫の場合については、第三者の詐欺(96条2項)のような規定は設けられていない。
したがって、第三者の強迫によって意思表示をした場合、相手方の善意・無過失の有無にかかわらず、表意者は、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。

(H23 司法 第1問 2)
第三者によって強迫がされた場合において、意思表示の相手方がその事実を知らないときは、表意者は、その意思表示を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
強迫の場合については、第三者の詐欺(96条2項)のような規定は設けられていない。
したがって、第三者の強迫によって意思表示をした場合、相手方の善意・無過失の有無にかかわらず、表意者は、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。

(H23 司法 第1問 4)
表意者が相手方の詐欺により意思表示をして契約が成立した場合、その契約によって生ずる相手方の債務が未履行であっても、表意者は、その意思表示を取り消さない限り、詐欺を理由として自らの債務の履行を拒絶することができない。

(正答)  

(解説)
96条1項は、「詐欺…による意思表示は、取り消すことができる」と規定しているから、詐欺による意思表示であっても、取り消されない限り有効に存続するから、表意者は、契約に基づく債務を負うことになる。
したがって、表意者は、その意思表示を取り消さない限り、詐欺を理由として自らの債務の履行を拒絶することができない。

(H23 司法 第1問 5)
買主が売主を欺罔して土地の所有権を譲り受けた場合、売主が詐欺による意思表示の取消しをする前に、詐欺の事実を知らないでその土地について抵当権の設定を受けた者がいるときであっても、売主は、その意思表示を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
「善意でかつ過失がない第三者」がいる場合であっても、表意者は、96条1項に基づいて詐欺による意思表示を取り消すことができ、その取消しを「第三者」に対抗できないだけである(96条3項)。

(H25 共通 第2問 ウ)
第三者の詐欺によって相手方に対する意思表示をした者は、相手方が第三者による詐欺の事実を知らなかった場合にも、その詐欺によって生じた錯誤が錯誤取消しの要件を満たすときは、相手方に対し、その意思表示の取消しを主張することができる。

(正答)  

(解説)
96条2項の詐欺取消しの要件を満たさない場合でも、錯誤取消しの要件を満たしているのであれば、表意者は、95条1項に基づき、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができる。

(H26 共通 第2問 ア)
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において、相手方がその事実を知っていたときには、その意思表示を取り消すことができるが、第三者が強迫を行った場合においては、相手方がその事実を知らなかったときでも、その意思表示を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
強迫の場合については、第三者の詐欺(96条2項)のような規定は設けられていない。
したがって、第三者の強迫によって意思表示をした場合、相手方の善意・無過失の有無にかかわらず、表意者は、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる

(H26 司法 第37問 ウ)
消費者契約(消費者と事業者との間で締結される契約)において、事業者の詐欺により消費者がした意思表示は、取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
消費者契約法11条1項は、「消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法及び商法…の規定による。」と規定しているから、消費者契約においても、詐欺取消しの要件を満たせば、表意者は、96条1項に基づき、事業者の詐欺を理由としてその意思表示を取り消すことができる。

(H28 司法 第2問 イ)
相手方の詐欺により法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤が生じ、その錯誤により意思表示をした場合であっても、表意者は、錯誤による意思表示の取消しを主張することができる。

(正答)  

(解説)
詐欺取消し(96条1項)と錯誤取消し(95条1項)は、二者択一的な関係に立つものではなく、それぞれの要件を満たす限り、いずれも主張することができる。

(R3 司法 第2問 エ)
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知らなかったとしても、それを知ることができたときは、表意者は、その意思表示を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
96条2項は、「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる」と規定している。

(R3 司法 第2問 オ)
強迫による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(正答)  

(解説)
96条は、3項において、詐欺による取消しの場合について、「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」として、第三者保護規定を設けているが、強迫により取消しの場合については、第三者保護規定を設けていない。したがって、強迫による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者にも対抗することができる。

(R3 司法 第7問 イ)
Aがその所有する甲土地をBに売却した後、Bが甲土地をCに転売し、それぞれその旨の登記がされた。その後、Aは詐欺を理由としてBとの売買契約を取り消した。Cは、Aの売買の意思表示が詐欺によることを過失なく知らなかった場合、甲土地の所有権の取得を妨げられない。

(正答)  

(解説)
Cは、Bからの転売により、詐欺取消しの前に利害関係を有するに至った者として「第三者」(96条3項)に当たり、かつ、Aの売買の意思表示が詐欺によることを過失なく知らなかったのだから、「善意でかつ過失がない第三者」として保護される。
したがって、Aは、詐欺を理由とするBとの売買契約の取消しを、Cに対抗することができない。
よって、Cは、甲土地の所有権の取得を妨げられない。

(R4 司法 第3問 オ)
相手方に対する意思表示について第三者が強迫を行った場合には、相手方がその事実を知ることができなかったとしても、その意思表示は取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
強迫の場合については、第三者の詐欺(96条2項)のような規定は設けられていない。
したがって、第三者の強迫によって意思表示をした場合、相手方の善意・無過失の有無にかかわらず、表意者は、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
総合メモ

第97条

条文
第97条(意思表示の効力発生時期等)
① 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
② 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
③ 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
過去問・解説
(H19 司法 第1問 1)
解除の意思表示は、相手方が了知したときにその効力を生ずる。

(正答)  

(解説)
97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定している。「到達」とは、意思表示が相手方の支配領域内に置かれることで足りると解されている。したがって、解除の意思表示の効力発生には、相手方の現実の了知までは不要である。

(H21 司法 第23問 ア)
A(東京在住)は、友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで、AはBに対し、4月1日、そのための手紙を出し、この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。本件手紙が「甲などお手持ちの掛け軸について、お譲りくださるお気持ちはありませんでしょうか」というものであり、これに対し、Bが4月4日、「100万円でよろしければ甲をお譲りします」という返事の手紙を出し、この手紙が4月6日にAに届いたところ、AがBに、4月7日、「甲を100万円でお譲りくださるとのこと、ありがとうございます」という手紙を出し、この手紙が4月9日にBに届いた場合、甲の売買契約は4月6日に成立する。

(正答)  

(解説)
522条1項は、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定している。本問では、Bの「100万円でよろしければ甲をお譲りします」との返事が申込みにあたり、Aの「甲を100万円でお譲りくださるとのこと、ありがとうございます」との返事が申込みに対する承諾に当たる。そして、97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と定めているから、上記の承諾についての手紙がBに届いた日である4月9日に甲の売買契約が成立することになる。なお、Aの「甲などお手持ちの掛け軸について、お譲りくださるお気持ちはありませんでしょうか」という手紙は申込みの誘引にすぎない。

(H21 司法 第23問 イ)
A(東京在住)は、友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで、AはBに対し、4月1日、そのための手紙を出し、この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。本件手紙が「甲を100万円でお譲りください」というものであり、これに対し、Bが4月4日、「100万円で甲をお譲りします」という返事の手紙を出し、この手紙が4月6日にAに届いた場合、甲の売買契約が4月4日に成立する。

(正答)  

(解説)
522条1項は、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定しており、97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定している。本問では、契約の申し込み(Aの「甲を100万円でお譲りください」という手紙)に対する承諾(Bの「100万円で甲をお譲りします」という手紙)がAに到達した4月6日に契約が成立する。

(H21 司法 第23問 ウ)
A(東京在住)は、友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで、AはBに対し、4月1日、そのための手紙を出し、この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。本件手紙は「甲を100万円でお譲りください」というものであり、これに対し、Bが4月4日、「120万円でよろしければ甲をお譲りします」という返事の手紙を出し、この手紙が4月6日にAに届いたところ、AがBに、4月7日、「それでは120万円で甲をお譲りください」という手紙を出し、この手紙が4月9日にBに届いた場合、甲の売買契約が4月9日に成立する。

(正答)  

(解説)
522条1項は、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定している。また、528条は、「承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす」と規定している。そして、97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定している。そうすると、Bの「120万円でよろしければ甲をお譲りします」という手紙が新たな申込みとみなされることになり、かかる申込み対する承諾であるAの「それでは120万円で甲をお譲りください」という手紙がBに届いた4月9日に甲の売買契約が成立することになる。

(H23 司法 第2問 ア)
意思表示の効力は、相手方に到達した時に生ずるから、契約が成立するのは、承諾の意思表示が相手方に到達した時である。

(正答)  

(解説)
97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定している。

(H23 司法 第2問 エ)
契約の申込みに対し承諾の意思表示を発した後、到達前に承諾者が死亡した場合、相手方が承諾者死亡の事実を知っていれば、承諾の意思表示が到達しても契約は成立しない。

(正答)  

(解説)
97条3項は、「意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し…たときであっても、そのためにその効力を妨げられない」と規定している。

(H23 司法 第2問 オ)
承諾期間の定めのある契約の申込みであっても、申込みの到達前又は到達と同時であれば撤回することができる。

(正答)  

(解説)
97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定している。そうすると、申込みの意思表示の到達前であれば申込みを撤回することができる。もっとも、523条1項本文は「承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない」と規定していることから、承諾期間の定めのある契約の申込みについては、申込みの到達前又は到達と同時であっても撤回することができないとも思える。しかし、同条の趣旨は、承諾期間に対する相手方の信頼を保護して申込みの撤回により生じる不測の損害を防止することにある。かかる趣旨からすると申込みの到達前であれば承諾期間に対する相手方の信頼は生じていないのであるから、523条1項の適用はないと解される。したがって、承諾期間の定めのある契約の申込みであっても、申込みの到達前又は到達と同時であれば撤回することができると解される。

(H28 共通 第3問 エ)
AがBに対し契約解除の通知を発した後、Aが行為能力を喪失した場合、Bがその事実を知っていたとしても、当該契約解除の効力は生じる。

(正答)  

(解説)
97条3項は、「意思表示は、表意者が通知を発した後に…行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」と規定している。

(H28 共通 第3問 オ)
AがBに対し契約承諾の通知を発した後、Aが行為能力を喪失した場合、Bがその事実を知っていたとしても、当該契約は成立する。

(正答)  

(解説)
97条3項は、「意思表示は、表意者が通知を発した後に…行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」と規定している。

(R2 司法 第22問 ウ)
Bは、Aによる契約の申込みに対し、承諾の通知を発した後に死亡したが、Aは、その承諾の通知の到達前にB死亡の事実を知っていた場合、契約は成立していない。

(正答)  

(解説)
97条3項は、「意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し…たときであっても、そのためにその効力を妨げられない」と規定している。

(R3 共通 第3問 イ)
Aは、Bに対して契約を解除する旨の通知書を何度も発送したが、Bは、正当な理由なく、その受取を拒んだ。この場合、Aがした解除の意思表示は、到達したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
97条2項は、「相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす」と規定している。

(R3 共通 第3問 ウ)
Aは、Bに対して契約を解除する旨の通知書を発送した後に死亡し、その後、その通知書がBのもとに到達した。この場合、Aがした解除の意思表示は、その効力を妨げられない。

(正答)  

(解説)
97条3項は、「意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し…たときであっても、そのためにその効力を妨げられない」と規定している。

(R3 共通 第3問 エ)
Aは、Bに対して契約を解除する旨の通知を電子メールで発信したが、通信システムの不具合によりその通知はBに到達しなかった。この場合、Aがした解除の意思表示は、その効力を生ずる。

(正答)  

(解説)
97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定している。

(R6 司法 第24問 ア)
Aが隔地者Bに対して申込みをし、Bが承諾の通知を発した場合は、Bがその後に承諾を撤回する通知を発し、これが承諾の通知よりも先にAに到達したときであっても、契約が成立する。

(正答)  

(解説)
97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」と規定している。到達主義により、撤回する通知が承諾の通知より先に到達したなら承諾を撤回することができる。本問ではBの承諾の撤回の通知が先に到達しているから契約成立前に撤回できることとなる。
総合メモ

第98条

条文
第98条(公示による意思表示)
① 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
② 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成8年法律第109号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも1回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
③ 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
④ 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
⑤ 裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。
過去問・解説
(H22 司法 第2問 ウ)
Aから動産甲を購入する旨の契約を締結したBが、契約締結時に代金のうち一部を支払い、その後、残代金の弁済を提供して動産甲の引渡しを求めたにもかかわらずAがこれに応ぜず、それから相当期間が経過した後にAがその住所を去って行方が分からなくなった。BがAとの売買契約を解除する旨の意思表示は、公示の方法によってすることができるが、BがAの所在を知らないことについて過失があったときは、公示による意思表示は到達の効力を生じない。

(正答)  

(解説)
98条1項は、「意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。」と規定しているところ、本肢の事案では、「相手方の所在をすることができないとき」に当たるから、BがAとの売買契約を解除する旨の意思表示は、公示の方法によってすることができる。
しかし、98条3項は、本文において「公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。」と規定する一方で、但書において「ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。」と規定している。本肢の事案では、BがAの所在を知らないことについて過失があったのだから、「表意者が相手方…の所在を知らないことについて過失があったとき」に当たるから、公示による意思表示は到達の効力を生じない。

(R3 共通 第3問 オ)
Aは、Bに対して契約を解除する旨の通知書を発送しようとしたが、Bの所在を知らず、公示の方法によって解除の意思表示をした。この場合、Bの所在を知らないことについてAに過失があったとしても、Aがした解除の意思表示は、その効力を生ずる。

(正答)  

(解説)
98条1項は、「意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる」と規定している。そして、98条3項は、「公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない」と規定している。


98条1項は、「意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。」と規定しているところ、本肢の事案では、「相手方の所在をすることができないとき」に当たるから、Aは、Bに対して、公示の方法によって契約解除の意思表示をすることができる。
しかし、98条3項は、本文において「公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。」と規定する一方で、但書において「ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。」と規定している。したがって、Bの所在を知らないことについてAに過失があった場合、「表意者が相手方…の所在を知らないことについて過失があったとき」に当たるから、Aが公示の方法によってした解除の意思表示は、その効力を生じない。
総合メモ

第98条の2

条文
第98条の2(意思表示の受領能力)
 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。 
 一 相手方の法定代理人
 二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
過去問・解説
(H22 司法 第1問 イ)
意思表示の相手方が意思表示を受けた時に未成年者であったときは、その意思表示は効力を生じない。

(正答)  

(解説)
98条の2本文は、「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に…未成年者…であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」と規定するにとどまり、意思表示の有効性を否定しているわけではない。そのことは、未成年者であっても、法定代理人の同意を得ることにより、自ら意思表示をして法律行為ができるとされている(5条1項本文)からも、窺われる。
したがって、意思表示の相手方が意思表示を受けた時に未成年者であったときであっても、その意思表示は有効である。

(H23 予備 第1問 イ)
未成年者又は成年被後見人を相手方として意思表示をした者は、法定代理人がその意思表示を知る前は、その未成年者又は成年被後見人に対してその意思表示に係る法律効果を主張することができない。

(正答)  

(解説)
98条の2は、本文において「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」と規定する一方で、その例外として、但書1号において、相手方の法定代理人がその意思表示を知った後はこの限りでない旨を規定している。
本肢では、法定代理人がその意思表示を知る前における意思表示の対抗可能性が問題となっているため、原則通り、未成年者又は成年被後見人を相手方として意思表示をした者は、その未成年者又は成年被後見人に対してその意思表示に係る法律効果を主張することができない。

(H28 共通 第3問 イ)
AがBから契約解除の意思表示を受けた時にAが成年被後見人であった場合、Aの成年後見人CがBの契約解除の意思表示を知るまで、当該契約解除の効力は生じない。

(正答)  

(解説)
98条の2は、本文において「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」と規定する一方で、その例外として、但書1号において、相手方の法定代理人がその意思表示を知った後はこの限りでない旨を規定している。
本肢では、Aの成年後見BがBの契約解除の意思表示を知る前における意思表示の対抗可能性が問題となっているため、原則通り、当該契約解除の効力は生じない。

(R3 共通 第3問 ア)
Aが未成年者であるBに対して契約を解除する旨の通知書を発送したところ、Bがその通知書を受け取り、Bの法定代理人がその解除の意思表示を知るに至った。この場合、Aは、その意思表示をもってBに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
98条の2は、本文において「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」と規定する一方で、その例外として、但書1号において、相手方の法定代理人がその意思表示を知った後はこの限りでない旨を規定している。
本肢では、Bの法定代理人がその解除の意思表示を知るに至った後における意思表示の対抗可能性が問題となっているため、例外として、Aは、その意思表示をもってBに対抗することができる。

(R4 司法 第2問 イ)
成年被後見人AがBの意思表示を受けた場合、Aの後見人Cがその意思表示を知った後は、Bは、その意思表示をもってAに対抗することができる。

(正答)  

(解説)
98条の2但書は、「相手方の法定代理人」(同条1号)が意思表示の相手方である成年被後見人が意思表示を受けたことを知った後は、その意思表示をもってその相手方に対抗することができないと規定している。したがって、Bは、その意思表示をAに対抗することができる。

98条の2は、本文において「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。」と規定する一方で、その例外として、但書1号において、相手方の法定代理人がその意思表示を知った後はこの限りでない旨を規定している。
本肢では、Aの後見人Cがその意思表示を知った後における意思表示の対抗可能性が問題となっているため、例外として、Bは、その意思表示をもってAに対抗することができる。
総合メモ